六百二話 善悪の相克と詩神書の爆誕
<召喚霊珠装・聖ミレイヴァル>を発動。
赤十字架群がミレイヴァルを包む。鎧と服の模様には、正三角形の金属が無数に並ぶ。よく見ると、フラワーオブライフのエッグオブライフにニコラテスラの369の印に曼荼羅の意味があるような模様があったが、光の騎士たる姿だ。これで魔心臓から何かが出ても対処は比較的に楽となる。
素直に本契約ができて皆の下に帰れるといいが、しかし、まだだ。
喜ぶアニュイル人たちに向けて、
「――モリモリさんとリャイシャイ。俺たちはここまでです」
「あ、シュウヤ様」
「霊槍使い殿……」
アニュイル人たちが何を望んでいるかは分かる。
俺にできることは今のように戦うことだけだが……魔心臓を使うにしても、何が起こるか不明だ。巻き込みたくはない。相棒に頼むとするか。
「ロロ、姿を大きくしてくれ」
「にゃ~」
と、瞬く間に巨大なドラゴンとグリフォンが合体したような姿に変身した。
首元から腹にかけて螺旋した魔線を伴う触手網が髭のように揺れていく。
その触手の一つ一つに狼のような神獣マークが波紋のように浮かぶ。
凜々しい。洞窟を圧迫するような巨大な神獣ロロディーヌだ。
「おぉ」
「おったまげた」
「強烈な神獣だ、お、俺を操るだけはある……ぱ、把神ショック」
アルルカンの把神書は震えている。
「……」
神獣を見て、腰を抜かすアニュイル人たち。
モリモリさんも驚く。リャイシャイは震えていた。
とりあえず、モリモリさんに、
「安全圏にまで皆さんを送りたいですが、戦いに、ご迷惑でしたら……」
「……いえ、迷惑なんてとんでもない。我らも陣に戻らねば」
「では、地上に出るとして、戦場になっていない場所まで、皆さんを運びたいと思いますが、この辺にそういった隠れられる場所はありますか?」
「左の【ラルラデルの森】に【ソルフェノスの森】なら奇怪が多く生息していますが、我らの陣地と近い。そこなら安全のはずです」
「分かりました。では、その森がある辺りに向かいましょう。ロロディーヌの背中に乗ってください。相棒、また一仕事を頼む」
「にゃお~」
神獣ロロディーヌが皆を誘導するように触手を皆の体に絡めて乗せた。
波群瓢箪をアイテムボックスに戻した。
左の掌に神剣の姿に変身した羅が突入してくる。
俺も相棒の背中に飛び乗った――神獣の背中の黒毛が包む皆の様子を把握。
『善い宴であったぞ、妾はよき器を得たものだ』
『そうか、沙も少し可愛くなったな』
『な、なんだと!? す、少しなのか!』
シャットアウト――。
楽しげな声と気持ちよさげな声が連続的に響く。
リャイシャイの声は可愛いが、戦士の野郎の感じた声は聞きたくない。
天然のモコモコとフッサフサを堪能できる黒毛ソファだからなぁ。
足下も柔らかいピンクな肌だし、たまらんだろう。
「うふふ♪ わぁ~♪ もみもみ~♪」
黒毛に包まれたイモリザの位置はすぐに分かった。
潜水艦の潜望鏡のような形の銀毛が、背中の黒毛から飛び出している。
鮫が黒毛の中を泳いでいるように見えた。もさもさと黒毛が動く。俺もダイブしたい。 ミレイヴァルは黒毛の上で転がされている。楽しそうなミレイヴァル。
騎士としての表情の印象が強かったが、初めて見る表情は可愛かった。
アルルカンの把神書は俺の頭上に浮いている。ユイの片腕も無事。
ガルモデウスの書を握るユイの手を労ろうとしたが、相棒の触手に捕まった。
神獣は俺を自身の頭に運ぶ。
――そこにあった操縦桿の触手を握ると、ニュルッと
触手の先端が動いて首に付く。
相棒と感覚を共有した直後――。
ロロディーヌは地面を蹴って跳躍した。
俺は円状にくり抜かれた壁を把握。
神獣は速度を上げながら触手を壁に刺し収斂させる。左右の触手を使いロッククライマーの如く壁を登っては、その壁を後脚で蹴り潰し跳躍――。
瞬く間に穴を脱出した。
夜空を突き抜け宇宙にまで到達はしない――。
夜空を滑空するように旋回――。
いい風が出迎える。
月のような惑星を探すが……見当たらない。
ロロディーヌは旋回を続ける。
頃合いを見て加速――。
大気も地球やセラと変わらない。
音速めいた音が轟いた。
霊魔神殿の五重の塔のような建物を通り過ぎた。
――俺がこの世界に立ち降りた神殿。
然らばだ。霊魔神殿は見えなくなった。
短い間だったが、ルエルの顔が忘れられない。
無事を祈る。
間もなくモリモリさんが話をした森が見えてきた。
「ロロ――」
「ンン――」
モンスターが多い。ここでは奇怪か。
幹の樹皮に付着した両足は普通だが、上半身は無数の蛇たちで構成された怪物。奇怪フィナプルスの小型版といった印象だ。
神獣ロロディーヌはそれらモンスターを樹木ごと押しつぶしながら豪快に着地する――更に硬質化した尻尾を振るう。
周囲の樹木を薙ぎ倒し簡易的な空き地を瞬く間に作り上げた。
相棒が樹海を切り倒して、サイデイルの城下町の下地を作ったことを思い出す。少し頭部を上げたロロディーヌ。
「ンン、にゃお~ん」
と、鳴き声を発した。
一瞬でアニュイル人たちを地面に下ろす。
俺は膝頭を、相棒の頭部に突けて、その頭部を撫でていく。
「ありがとな」
「ンン」
神獣は触手ではなく、長い耳を俺に差し向けてきた。
長い耳の内側に生えている産毛とその地肌は温かい。
その長い耳が離れてから、俺は相棒の頭部から跳躍。
皆が居る場所に着地した。
光の騎士のような佇まいのミレイヴァルは片膝を地面に突けた。
礼儀正しい。イモリザが真似をして両膝と額で勢いよく地面を突く。
その地面を陥没させていたのはご愛敬――。
ハンマーのような銀髪にツッコミを入れたくなったが、自重した。
すると、アニュイル人の皆が――。
ミレイヴァルと同じように片膝の頭で床をつけて頭を下げてきた。
「皆さん、顔をあげてください。ミレイヴァルとイモリザもだ」
「はっ」
「はい~」
遅れてモリモリさんたちも立ち上がった。
「シュウヤ様、ありがとうございました」
「はい、助けられてよかった」
「その笑みを見ると安らぎを覚えます」
大人びたリャイシャイの言葉に頷く……正直言えば皆を救いたかった、殺し合うしかなかったドルライ人も……それは傲慢か。
「……霊槍使いの伝説は本当だったと皆に伝えましょう。奇怪フィナプルスはウェーズ・ドルライ会のメンバーが召喚した霊槍使いに倒されたと……」
「それは……」
「シュウヤ様、いいのです。我らと争う憎きウェーズ・ドルライ会の一派が、霊槍ノ御使い召喚ノ儀を実行したからこそ、伝説が本当だったからこそ、今がある。しかし、奇怪フィナプルスが倒れようとも、他の仲間は……我らの言葉を信じようとしないでしょう。憎きドルライ人は、バモットを殺し、リャイシャイ様を誘拐し殺そうとした事実もありますから尚のこと。しかし、我らは違う。シュウヤ様が助けたドルライ人。そのドルライ人が居たから、我らは助かった。この事実は紛うことなき真実なのですから……そして、伝説を信じるならば、世界を救うという言葉もまた、真実であり事実」
語尾のタイミングでモリモリさんは思案顔となる。
戦士団の方々もまた同じ顔だ。いや、不満がある顔だ。
当然だろう、殺し合う戦争中だ。リャイシャイは優しげに俺たちを見る。
モリモリさんは茨の道を進む気か……憎しみがあっても、事実は事実として受け入れる。
自らの死が懸かって、必死に殺しに来る相手がドルライ人だ。
その行為は、非常に勇気が居る。他のアニュイル人から迫害を受けようとも真実を伝えるつもりのようだ。
ある意味、戦争で死ぬよりも酷なことだと思うが……モリモリ爺さんの眼力は強い。
「モリモリさんとアニュイル人の皆、健闘を祈ります。そして、リャイシャイ、少しいいか?」
「はい! なんでしょう」
と、嬉しそうに聞いてくる。
「その、腹の出来物と病気のことだが、治療を試していいかな」
「どうぞ。霊薬ヘリオンも効かず、回復薬に回復魔法も効かないと思いますが」
リャイシャイが寝ている間に、水の回復魔法は試したから知っている。
アイテムボックスから聖花の透水珠に水差しを取り出した。
リャイシャイの可愛らしい小さい角を見ながら……。
ひょっとしたら……との思いつきで、
「この聖花の透水珠は、俺の知る限り最高の回復薬。だが、それを試す前に、ちょいと、血の実験をする」
「血? 分かりました……」
「怖がらずに見といてくれ。皆もいいですか?」
「「はい」」
アニュイル人たちの返事を聞きながら<血魔力>を操作。
水差しに俺の血を入れた。
「そこに横になってくれるかな」
「はい」
水差しを、リャイシャイの腹の部分に向けた。
血を垂らす――と、リャイシャイの角の付近から閃光が迸る。
続いて、腹の出来物が数個、ポロリと落ちた。
病状が酷い箇所から、ジュアッと音が鳴って白い泡が噴き、中から蠢く小さいムカデのようなモノがうじゃうじゃと溢れ出た。
ムカデは、俺の血から逃げていく。
呪いの作用か病原菌なのか?
気色悪いが、俺の光魔ルシヴァルの血が効いた。
しかも、しぶとく地面を這い回って生きている。
ポケットがうるさいぐらいに揺れる。
ホルカーの欠片だ。
「にゃご――」
その小さいムカデは神獣の炎で浄化。
ポケットの揺れは収まった。
……よかった。アーレイとヒュレミの陶器製の猫人形に、奇怪フィナプルスの魔心臓が破裂しそうな勢いだったから少し焦った。
「ええ??」
「リャイシャイ様!」
「――皆、大丈夫です! 少し痛いですが、病気が改善されてます……」
「治った……」
完全には治っていないと思うが……。
「「おおおおおおおおおおおおおお」」
「こ、こ、これは、き、奇跡ですか……」
「奇跡だ」
「奇怪フィナプルスだけではなく、奇病まで治すとは……」
「シュウヤ様の血が治療薬ということか……」
「……霊槍使い様が、世界を救うという伝説は真実だった!」
「なんてことだ!」
「ドルライ人たちの言葉は正しかったのか!?」
「だが、俺たちを殺しまくっている連中だぞ!」
「リャイシャイを誘拐した連中だ! 俺の家族を殺した奴らなんて……しかし、奇病が治ったのなら……」
「……事実。伝説は事実だということだ」
「我らの救世主はドルライ人たちをも救うことになる。なんということだ……」
「戦争が終わるぞ」
「あぁ、そうだ。戦争が終わる。また、昔の……」
「戦争が、お、わる……」
「本当に……?」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「やった、やったぁぁぁぁぁ」
数人の戦士以外の方々が発狂するように喜び合う。まだ確実に治ったとは言えない。ドルライ人の突然死が改善されたかも分からない。
喜び半分だが、殺し合う種族同士の争いに<刺突>を打ち込むことは、できたと思いたい。セクハラを受けながらも必死にがんばったルエルも、これで報われるといいが……そして、効いたのなら、この聖花の透水珠は必要なさそうだ。仕舞っておこう。
「では、この俺の血が入った水差しを数十個、ここに、置いておきますから――」
血を注ぎ終わったところで、
「イモリザとミレイヴァル、相棒の背中に乗れ」
「はい」
「はいです~」
相棒の背中に乗った二人を確認。
俺はアニュイル人たちに向けて、
「では、俺たちはこれで……」
「シュウヤ様……わたしは……」
「リャイシャイ。もし、戦争が終わって危険がないと判断できたのなら、ルエルというドルライ人を探してくれ。そして、君の魔骨相秘術が世界を救ったと伝えてくれたら嬉しい」
「……はい」
リャイシャイは俺の言葉を聞いて動揺していた。
その件には突っ込まず、モリモリさんに視線を向け、
「モリモリさん。俺の血をもっとたくさん置いておくべきと思いますが、さすがにこれ以上は、俺が干からびてしまうので、それで勘弁を」
「何を仰るか! 伝説どころの話ではないですぞ。自らを犠牲に、我らの戦争を終わらせようとする、偉大なる救世主様……我らは、我らは……」
モリモリさんは泣いてしまった。
俺も思わず涙ぐむが、まだ確実に戦争が終わったわけではない。
俺の行為は、所詮、切っ掛けに過ぎない。
今後の平和は、アニュイル人とドルライ人の相互努力にかかっている。
気を引き締めながら、
「……その血は争いの火種にもなりうる代物。そして、ここからは、若造の何も知らない無知さ所以の言葉ですので、聞き流す感覚で聞いてください……」
「忠告をくださるのですな。構いませんぞ」
モリモリさんは、お爺さんだ。
恐縮してしまうが、あえて、
「……これはドルライ人にも言えることですが、戦争を望み、血を好むアニュイル人も居るかもしれない」
同じアニュイル人たちを貶しているわけではないが……。
「我らを慮る優しい言葉ですな。ですが、その優しさは必要ありません。恥ずかしながら、我らアニュイル人もドルライ人と同じ攻撃的本能に喜びを見いだす心と残酷さを持ち合わせます。我には我らの刑罰があり、疚しい良心を持つ。シュウヤ様が仰った存在以上の、倒錯的に殺しを楽しむ者も存在する……憎きドルライ人と同様に、我らもまた愚の世で生きているのです。憎愛、美醜に、善悪は相克……家族を殺された同胞が素直に武器を納めるわけがない。ですが、我らは他人を理解し寛容さを学ぶ努力をしなければ……」
「はい、受容が鍵となるのはどこも変わりませんね」
ある種、諦観さを感じさせるが、それが世だ。
「受容……深い言葉です。であればこそ、この血を用いて奇病が治るのならば、無駄な戦争は、いずれは止まることでしょう。いや、我らがしっかりすれば、必ず争いは止められる!」
モリモリさん。
涙を流しながら語る言葉は眼力と同様に力強い。
「そうですね、モリモリさんとリャイシャイに、この場のアニュイル人の行為を信じていますよ」
「ありがとう。その言葉を聞くだけで、我らは癒やされる」
「はい、本当に……」
リャイシャイの頬と首がまだらに赤くなっていた。
リャイシャイは恥ずかしそうに視線を逸らして、また視線を向けてくる。
俺が微笑むと、挙動不審に視線を泳がせた。
「では、そろそろ」
「……シュウヤ様が……待って――」
勇気を出して近寄ってきたが、恥ずかしそうに俺の手前で動きを止めていた。
「リャイシャイ」
「――シュウヤ様が居なくなると思うと、心が空虚に……病気が癒やされましたが、癒やしがたい淋しさを覚えます」
「ごめんな。俺にできることは――」
「あっ――」
と、頬にキスをしてあげた。
すぐに踵を返す――。
「それでは、皆さん、然らば――」
リャイシャイの甲高い声が背後から響く。
戦士たちの分厚い声も轟いたが、相棒は加速した。
手綱を掴みつつ、迅速に夜空を駆け抜けていく。
◇◇◇◇
数時間後、崖が稜線となった場所に出た。
海だ。海に到達した。
牛のような形をした巨大魚が空を飛ぶ。
下の灰色の岩場に打ち寄せる波飛沫は、黒っぽい色合いに変化していた。
大陸の端に到着したのか不明だが……。
それにしても美しい景色だ。
雲間から射す光は、まさに天使の梯子。
「……太陽と雲の鎹か、稲穂のような雲に掛かる鳥の群れ……まさに、実るほど頭の下がる稲穂かな……フィナプルスの夜会が作る泡沫の世、千辛万苦の争いの世ではあるが……譬えようがない美しさだ」
「優秀な把神書様も、気に入ったか。フィナプルスの夜会を」
「……」
沈黙は肯定か?
とは聞かない。
「お前は気に入ったようだな」
「ルエルとリャイシャイが生きる世だ」
「他人の世話を焼くより、お前はやるべきことがあるだろう」
「んなことは百も承知」
「そうだな……俺も感傷的になったようだ」
頁を捲るように開いたアルルカンの把神書。
その開いた頁から海に向け鎖で繋がれていた幻想的な女性に近い半妖の魚を出した。落下していく女性半妖の魚。
鎖は途中で切れる。女性半妖は一瞬、迷ったような表情を浮かべると、手話でアルルカンの把神書にメッセージを送る。
そして、海に飛び込んで見えなくなった。
「然らばだ、ゼオナ」
「理由は聞かないが、いいのか?」
「チッ、今の俺に優しい言葉をかけるんじゃねぇ……」
「悪かったな」
「……ルマルディがあっさりと堕ちる理由かよ!」
「なんでルマルディが出てくる」
「気にすんな、士は己を知る者の為に死すって奴だ」
声が泣いている?
ゼオナって解放した女と何かあるのか。
「……答えろよ、恥ずかしいだろうが! はぁ……」
と、中空を先に進むアルルカンの把神書は、
「すべてをあるがままに受容し、この世界で生きて門戸を成す。ってのも面白いかもしれねぇ、な……」
「……詩人アルルカン爆誕、いや、詩神書爆誕か」
「ぐぬお、把神ショック」
アルルカンの把神書は、最近お気に入りの把神ショックと呟くと、黙って聞いていたミレイヴァルの傍に寄る。
その遠い空に、十字の形をした光が浮かぶ。
魔十字とはあれか?
アルルカンの把神書とイモリザとミレイヴァルに向け、
「休憩はここまでだ。空のここで、魔心臓に魔力を込めてもいいが、地面で行う――」
「「はい」」
「賛成だ。足場があるほうが槍使いの実力は遺憾なく発揮される」
相棒は崖の一つに着地した。
アルルカンの把神書は先に下降。
俺たちも続いて、降りた。
ポケットから魔心臓を取り出す――。
重い……。
「さて、皆とアルルカンの把神書、準備はいいか?」
「にゃお」
黒猫は肩だ。
「はいっ、奇怪が現れたら、先陣はお任せください――」
聖槍シャルマッハを構えるミレイヴァル。
格好よくて美人さんの女性は最高だな。
にこやかなイモリザも銀髪を聖槍シャルマッハに揃えるように伸ばし、
「――準備万全♪ シャキッとした面で還りましょう」
と、左腕で作った拳を俺に向けて元気よく語る。
可愛い。
「にゃ~」
相棒が、その可愛さに釣られたように、触手をイモリザの拳に合わせていた。
「うふふ」
「にゃお~」
アルルカンの把神書も、
「おう、帰るぜぇ! ルマルディまってろ!! が、まずは、お前の眷属の片腕が持つガルモデウスの書だな――」
ガルモデウスの書を握るユイの片腕が俺の目の前に来た。
「んでは、本契約を実行する。この奇怪フィナプルスの魔心臓に魔力を込める――」
魔力を込めた瞬間――魔心臓が振動し、重さが倍増する。
両手でなんとか持てる重さになると魔心臓から魔線が膨れ上がり空に向かう。その魔線は夜空を十字に裂く――十字の奥から神々しい光が溢れ出た。その光り輝く十字の中から逃げるように現れたのは――典型的な背中に翼を生やした天使か? ――いや、魔女?
続きは来週です。
HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻が発売中。
コミックファイア様から「槍使いと、黒猫。」1巻~3巻発売中。




