五百九十八話 <御槍導技>ってか?
イモリザに大柄な魔剣士を任せるとして――。
<魔闘術>の配分を変えながら火球と雷球を避けた。
相棒のロロディーヌは背後の骨種族に襲いかかっている。
アルルカンの把神書は月の形をした魔力刃を敵に飛ばす。
俺たちが一時的に味方に回ったアニュイル人たちのフォローか。その把神書に守られるアニュイル人の戦士たちはリャイシャイを守る陣形となった。前に掲げた盾と盾を合わせ、その隙間から槍の穂先を前に出していた。北欧のバイキングの戦士団か、またはローマの歩兵集団のテストゥド。そのような軍隊の盾を重視する歩兵戦術を彷彿とさせる。
あの盾を使えば、ある程度の魔法攻撃を防ぐことは可能だと思うが、さすがに魔法相手では分が悪すぎる。だからこそアルルカンの把神書がフォローしているんだろう。そのアルルカンの把神書と魔線で繋がるユイの片腕。火球と雷球を連続的に出した杖持ちの魔法使いを注視――。
魔法使いの双眸は煌びやかに点滅。
更にローブから金色の魔印が滲み出るように浮かぶ。
すると、金色の魔印が出現している黒色のローブより濃い漆黒色の魔力を体に纏った。漆黒色の魔力が背景と重なり煌びやかな双眸と金色の魔印が際立つ。そのローブを着ている魔法使いが愉悦めいた表情を俺に見せた。そいつめがけて――<光条の鎖槍>を発動。杖持ち魔法使いは「チッ、霊槍使いめが、魔法も優秀か――」
そう舌打ちしながら円形の防御魔法を展開しつつ後退。
五発の<光条の鎖槍>が、その素早い杖持ちの魔法使いを追尾する。あの動きの速い魔法使いに光槍が効くか?
効きそうにない。そう予想しながら<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動――。
俺自身は逃げた杖持ち魔法使いは追わず。
風槍流『片折り棒』の前進歩法を実行――。
標的は、ルエルを押さえつけている、エロい、もとい変質者の骨種族だ。
――貴重なおっぱいを乱暴に扱った骨種族め。
だが、<血液加速>に対応する相手かもしれない――右手の握りを意識。
魔槍杖バルドークを前に伸ばす肩と腕を微妙に動かすフェイクを入れながら――肩の竜頭金属甲を意識――。
魔竜王バルドークの蒼色の片眼から不意打ちの氷礫を出す。
その氷礫が右側の骨種族の双眸を貫く。
「ぐあ――」
ルエルを押さえていた変態骨種族は、頭部を両手で押さえた。
同時に左のほうの骨種族に向け小銃を撃つイメージで手首をスナップ――左手首の因子マークから出た<鎖>が一条の雷光の如く骨種族の頭部を貫き破壊する。頭部があった場所に黒色の微かな血と骨が散った――。
足下のルエルの体に、黒色の血が付着した<鎖>を巻き付け――。
「きゃ――」
と、強引に俺の背後に退かせた。
おっぱいさんを傷つけないように気をつけたが傷を負ったかも知れない。
が、今は我慢してくれ――。
ルエルに絡む<鎖>を消すと同時に右側に出た俺は――目を潰した骨種族野郎の頭部を下から突き上げるイメージで――右足のトレースキックを喰らわせる――。
アーゼンのブーツのつま先が、両手で頭部の目元を押さえていた骨種族の両腕を捉える。
ウエスタン風のアーゼンのブーツは硬い。
骨種族の両腕は蹴りの衝撃に負けた。
ベキッと音を立て両腕が内側に凹み折れた。
そのまま額の頭蓋骨にアーゼンのブーツのつま先が突き刺さる。
と、頭蓋骨を粉砕。
散った骨の破片がブーツの表面を焦がす。
「体術もある! 動きが速まったぞ――」
蹴りを見た骨種族の言葉は右の奥から――。
ネズミ花火のような細かな火花を纏う大きな火球を放ってきた。
<光条の鎖槍>から逃げた杖持ち魔法使いの魔法攻撃ではない。
その火球を放った右の骨種族とは幸い距離がある。
今はトレースキックの体勢を生かすとしよう。
右足を下げ――竹を縦に斬るように蹴る。
――踵落としだ。
頭部を失い倒れゆく死体の肩に、その踵の蹴りを喰らわせた。
更に魔力を魔槍杖に込める。
竜魔石の柄頭で手前の地面を突く。
棒高跳びでも行うように前進――。
死体の肩を踏み台代わりに、地面に突き刺さる氷の両手剣が後端から伸びている魔槍杖を握りながら、その隠し剣の勢いを加えて高く跳躍した――。
そんな俺を狙ったように迫るネズミ花火を纏ったような大きな火球を<血鎖の饗宴>で踏みつけ火球を蒸発させるように消す――。
続けて身に迫った雷球。
雷球から迸る魔力火花の熱がハルホンクの一部を焦がすのを感じながら避けた。
雷球を出した骨種族の魔法使いへと<血鎖の饗宴>をプレゼント。
骨種族は魔剣を使い<血鎖の饗宴>を斬ろうとする。
<血液加速>を実行する俺の速度に対応してきた骨種族だったが、さすがに<血鎖の饗宴>を斬ることはできず。
骨種族は血鎖に巻かれると、魔剣を残し蒸発した。
伸びきった<血鎖の饗宴>を消去。
俺は魔槍杖の後端から発した氷の両手剣を連れて飛翔する。
足下の<導想魔手>を蹴って空中で方向転換。
飛翔する俺を追尾するネズミ花火を纏う火球が身に迫った。
その火球を隠し剣が捉え切断――。
ネズミ花火を纏う大きな火球――。
移り変わる視界の中――。
その魔法を繰り出してきた魔法使いを注視。
<血液加速>に対応した優秀な奴。
――あいつだ。
黄金色の炎が縁取る頭巾をかぶっている。
<血鎖の饗宴>を繰り出す。
が、その炎の頭巾をかぶる骨種族は避けた。
素早い、ウェーズ・ドルライ会の戦力は個人差がある。
それぞれに一長一短の能力だ。
今度は<鎖>を連続して射出する。
火球を連続して射出しながら<鎖>を避ける炎の頭巾をかぶる骨種族。
とりあえず下の炎の頭巾は後回し――。
<血液加速>を解除。
周囲を警戒。
――再び<導想魔手>を蹴り、方向転換。
戦場を把握――。
『……器よ、三叉法具を発動するのじゃ』
『分かった』
サラテンは何をしているのか、どんな状況か、
想像はできる。が、今は問わない。
<神剣・三叉法具サラテン>――。
『でかした!』
視界に居ない神剣サラテンの思念は無視。
<導想魔手>を足場に利用しつつ――空から戦場の把握を続ける。
地形は霊魔神殿が左奥、そこからウェーズ・ドルライ会のメンバーが現れ続けている。
下はイモリザが作った陥没した地帯。
右手前のほうは角ありのアニュイル人たち。
アニュイル人の数も多い。
最初は戦いとなったが、俺たちを味方として動いてくれている。
――話をしてよかった。
だが、ウェーズ・ドルライ会は――。
その……骨種族たちの仲間のルエルさんは、奇怪フィナプルスに滅ぼされた都市のことを言っていた。
世界を滅ぼすとフィナプルスを呼んでいたが、さすがにすべての都市が滅ぼされたわけではないはず。
そこから推測するに……。
骨種族ことウェーズ・ドルライ会たちが暮らす都市は他にもある?
もしかしたら、ウェーズ・ドルライ会とは……。
奇怪フィナプルスのデカブツとアニュイル人と戦うための精鋭部隊とか?
そう思考したあと――。
<導想魔手>を蹴り――身に迫った大きな火球を避けた。
魔槍杖を再召喚。
その魔槍杖バルドークを、大きな火球を繰り出した炎の頭巾をかぶる魔法使いに向けた。
手強いが空は飛べないようだ。
距離と戦場把握のため、ここからいくか――。
魔槍杖を消去してから右手を翳す――。
<水神の呼び声>を発動――。
続けて無詠唱の《連氷蛇矢》を発動――。
瞬く間に、指先から、グラドパルスのような氷の矢が誕生――。
同時に<夕闇の杭>を繰り出す。
グラドパルス級の《連氷蛇矢》が突進。
その周囲を<夕闇の杭>が追尾するように向かう。
二つの魔法を連続的に放った。
頭巾から黄金色の炎を発している魔法使いは、連続した魔法とスキルのコンボに反応。
魔力を宿した指で魔法陣を描く。
中空に積層型魔法陣を展開した。
大きな氷槍状の《連氷蛇矢》と<夕闇の杭>を、その積層型魔法陣で凌いでいく。
――強力な防御魔法だ。
黄金色の炎を宿す頭巾の炎が積層型魔法陣の要で魔力の源か。
頭巾の炎が小さくなるたびに積層型魔法陣が小さくなった。
頭巾の炎は、魔力電池ってか?
積層型魔法陣とその魔力電池の炎が、どの程度持つか不明だが……。
<光条の鎖槍>から逃げた杖持ちの魔法使いといい……。
この炎の頭巾をかぶる魔法使いも有能だ。
と、感心したのも束の間――積層型魔法陣は削れる。
あっさりと突き抜けた《連氷蛇矢》と<夕闇の杭>。
炎の頭巾をかぶる魔法使いの体を突き抜ける。
やけに太い《連氷蛇矢》だったからな。
<水神の呼び声>効果か。
地面を穴ぼこだらけにした。
優秀な炎の頭巾とローブに骨種族の体は散り散りとなる。
――ゼレナード&アドホックが如何に強かったか。
大魔術師系の怪物だったと認識できる。
何も言うことなく、その炎の頭巾をかぶっていた骨種族の魔法使いは散った。
ま、油断はしない。
杖持ちの魔法使いとイモリザと互角に戦う魔剣士がいる。
そのイモリザと大柄な魔剣士との戦いに黒豹ロロディーヌが加勢に加わった。
遊んでいない相棒だ。
決着は時間の問題だろう。
その刹那――。
石粒を纏う神剣サラテンが迅速な勢いで戻ってきた。
その石粒をふるい落とすようにぶれると、またも加速。
「わははは――」
大柄な魔剣士は相棒の触手から出た骨剣と前足の爪を防いだが、神剣サラテンは、その頭部をあっさりと穿つ、強い! そのまま「ニャン公、のけぇい!」と沙が叫ぶと――。
一つの神剣から三つに分離する三つの長剣――。
その長剣を握る幻影姿の沙・羅・貂が現れた。
大柄な魔剣士の体を切り刻む沙・羅・貂。
華麗な剣術だ。凶悪な強さだが、凄く頼もしい。
時々、アレだが……。
「ンン、にゃお~」
「わぁ、凄い剣術! ぶんぶん丸~♪」
相棒とイモリザが楽しそうな声をあげる。
残るは――逃げた杖持ち魔法使い。
俺は足下に展開した<導想魔手>越しに、地面でうずくまって怯えているルエルを見て……。
腰に備わる銀チェーンを触った。
――閃光のミレイヴァル、出ろ――。
肝心の杖持ち魔法使いは円形の防御魔法を展開。
その魔法陣に、二つの<光条の鎖槍>が突き刺さっている。
閃光を発していた。
三つの<光条の鎖槍>は対処したらしい。
その二つの光槍の後部から出たイソギンチャクの光網から脱した魔法使い。
あの骨野郎の名はワイティワンとか言ったか。
ミレイヴァルは地面に着地しながら現れる。
俺は両手から<鎖>を出す。
同時にウェーズ・ドルライ会と戦うアニュイル人たちの動きを把握しようと視線を巡らせた。
開いたアルルカンの把神書は、海獣系の哺乳類っぽい幻想的な動物を召喚していた。
淡い色彩のオットセイ。
ゴールデンイエローのアザラシ。
二体の幻獣か不明だが、幻想的な動物はスパイク状の粒を周囲に出して、アニュイル人たちを守っている。
アルルカンの把神書は、鮫といい海系の幻想生物を召喚できるのか?
ユイの片腕は把神書の下で待機中。
しかし、面白い能力だ。
暫し、いや、見ない――。
ミレイヴァルの周囲と、地面に転がるルエルを守るため<鎖>の壁を生成した――。
<光神の導き>が輝くように<鎖>の表面に梵字のマークが生まれ出る。
「――よう、ミレイヴァル。いきなりで悪いが骨種族は敵。味方が額に一本角を生やす種族だ。しかし、足下の骨種族を助けたようにすべてが敵ではない。基本は俺たちに向けて攻撃をしてくる奴だけ、状況を見て対処しろ」
「はッ」
ミレイヴァルは銀色と朱色の聖槍シャルマッハを構えつつ周囲を把握。
色白の細い左足が前に出る。
魅力的な構えだ。
ここからだとデコルテとノースリーブの間にある乳房さんが見えた。
色白なお肌さんとおっぱいさん、こんにちは!
乳房の下を支える長い赤布さんも風に揺れている。
前にも思ったが、あの赤色の布か紐のようなモノは、素晴らしい重さを体感しているはずだ。
細い腰ベルトと銀色の金具とチェーンの繋がりが格好いい。
ミレイヴァルの右手の甲に浮かぶのは、俺の<霊珠魔印>と同じマーク。
左手の甲は紫色と黄土色の炎を宿す。
左手は少し恐怖を抱かせるが……。
ミレイヴァルは光の騎士だな。
そして、足下のルエルを見たミレイヴァルは頭部を上げた。
薄桃色の瞳が綺麗だ。
「――陛下、この者を守るのですね」
「そうだ、名はルエル。頼む――」
「お任せを――」
頷くと同時に守りの<鎖>を消去。
「ワイティワンは凶悪な金手骨使いです。骨の大魔獣も使います。気をつけて!」
ルエルさんはそう忠告してくれた。
金手骨?
標的の杖持ち魔法使いことワイティワンを睨む。
「……裏切り者が……」
ワイティワンはそう喋る……。
そのワイティワンの上空に移動――。
先と同じく、ワイティワンは、煌びやかな双眸と金色の魔印が際立つ。
そのワイティワンは、片手に握る杖を掲げた。
もう片手で魔の文字を宙に生み出す。
それを大人しく見ているほど馬鹿じゃない。
<鎖>と<血鎖の饗宴>を向かわせた――。
だが、杖の下部が湾曲すると、そこから蛇のような胴体を持つ猛獣が出現し<鎖>に噛みついて防ぐ。
更に虎のような猛獣はぐるぐる回転しながら、血鎖に絡みつく。
<血鎖の饗宴>は止まった。
刹那、<鎖>と<血鎖の饗宴>から直に魔力を吸われた。
即座に俺は<鎖>と<血鎖の饗宴>を解除。
そのままワイティワンは、中空に浮かぶ魔の文字に向け、掲げた杖を当てる。
「いきなり奥の手を使わされるとはな……」
と、呟くと、宙に魔力の波紋が生まれた。
湾曲していた長杖は、元の大きさに戻っている。
その魔の波紋から骨の大柄魔獣が出現――。
四肢に巨悪そうな闇の炎を纏う骨の大柄魔獣か。
「奇怪骨獣ゾリコム。あやつを仕留めろ――」
骨の大柄魔獣は頭部が異常に長細い。
その長細い口が開く。
内部にある無数の細かな牙を露出して、何十にも割れた舌を出した。
「ガァァァァァ」
と、奇怪骨獣ゾリコムは、口を広げて咆哮。
宙に居る俺に向け飛翔しながら突撃してくる。
あの舌から、飛び道具があるのかもしれない。
「にゃご!」
相棒が怒ったような声を出す。
「ロロ、大丈夫だ――」
と相棒の動きを止める。
<鎖>と<血鎖の饗宴>を防ぐ杖を持つワイティワンだ。
あの獣も普通ではないと警戒を強めたんだろう。
『――妾が仕留めるか?』
『いや、俺がやる』
――長引かせるつもりはない。
ヘルメの<精霊珠想>も<仙丹法・鯰想>もない。
学び見るリスクを減らす――速攻だ。
<鎖>と《氷弾》を連続して射出――。
狙いは奇怪骨獣ゾリコムとワイティワン。
ま、ただの牽制だ――<導想魔手>を蹴る。
左右の手に魔槍杖と神槍を召喚。
更に<導想魔手>に聖槍アロステを召喚。
その<導想魔手>を布石にしない。
下降する俺は、その聖槍アロステに乗った――。
奇怪骨獣ゾリコム目がけて――突貫。
『な、なんと! <御剣導技>か?』
見せかけのな――。
言うならば<御槍導技>か?
と念話は送らず、視界に迫る骨の大柄魔獣を見る――。
生活魔法の水をばらまく。
ヘルメの水幕をイメージ。
<鎖>を避けたゾリコムの頭部に水をぶっかける。
まさかの猫騙し的な行為に、驚いたのか不明だが、奇怪骨獣ゾリコムは長細い口を閉じた――。
その不意を突く――。
再び<血液加速>。
俺は聖槍アロステを蹴り加速した。
まずは<血穿>の魔槍杖バルドークを前方に繰り出した――奇怪骨獣ゾリコムは対応できず。嵐雲の矛が奇怪骨獣ゾリコムの長細い口と衝突し、口から下顎を溶かすように直進する。嵐雲の矛が奇怪骨獣ゾリコムの血肉を穿つ振動が魔槍杖バルドークの柄から掌に伝わってきた。奇怪骨獣ゾリコムが纏っていた闇の炎は、俺の血が降りかかると爆発。喉元ごと胸が吹き飛んだ奇怪骨獣ゾリコムは仰け反る。
その仰け反った奇怪骨獣ゾリコムの胴体に<水穿>の神槍ガンジスの方天画戟と似た穂先が穿った。奇怪骨獣ゾリコムは、穿たれても、まだ生きているように動く。
骨の大柄魔獣だからタフだ。内臓と肉腫めいた触手が蠢いている。
再生速度が速い。魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを一旦、消した刹那、手で肉腫めいた触手を掴みつつ《氷刃》を発動。
肉腫を魔法で斬りながら<導想魔手>が握る聖槍アロステで<牙衝>を繰り出す。
脊髄らしき一部を貫いて内臓に突き刺さる聖槍アロステを踏み台にして跳躍――。
再び《氷刃》で肉腫を斬りつけながら――。
前転しつつ魔槍杖と神槍を両手に召喚するや否や<水雅・魔連穿>を発動――。
間をあけず魔槍杖と神槍の連続突きを喰らわせる。
<刺突>を混ぜての連突だ。
奇怪骨獣ゾリコムの内臓群は散るように消失するが、大きい。
さすがに奇怪フィナプルスのような超大型ではないが――。
連撃は止めない――肉と骨を抉るに抉る――。
ドドドドドと鈍い音を響かせながら内臓と背骨の一部は地面と衝突した。
聖槍アロステを消去しつつ<導想魔手>を足場にしながら<血鎖の饗宴>も浴びせた。
<血鎖の饗宴>に触れた肉腫群は蒸発。
俺は魔槍杖と神槍で、まだ残っている骨と肉塊を突き続けながら着地――。
奇怪骨獣ゾリコムの本体らしき肉と背骨らしき部位は地面と激しく衝突――。
地面に縫われる形となった奇怪骨獣ゾリコム。
もう再生はしない。
大量の血肉が周囲に散らばった、その血を吸う――。
血が螺旋状に俺の周囲を行き交う間に、一端、二槍を消去――。
再び両手に魔槍杖と神槍を召喚――。
左足を前に出して構える。
少し遅れて<導想魔手>が握る聖槍アロステの十字矛をワイティワンに向けた。
スキルは得られていないが……。
我流の三槍流亜種といったところか。
俺はすぐに魔手太陰肺経を意識しつつ体内魔力を活性化。
魔力を練りに練りつつ深呼吸。
毒にもなりえるぐらいの質の魔力を体内の丹田から体に巡らせていく。
「……奇怪骨獣ゾリコムを一瞬で――」
驚くワイティワンは宙に生み出した魔法陣から違う、何かを出す――。
不意打ちのつもりのようだが――。
――自然と出鼻を挫くべく突貫していた。
――黒影のようなモノは<血穿>が捉え破壊。
――骨の牙の群れは<水穿>が捉え破壊。
腕から出た眼球の群れは――。
――『合わせ羽・改』から三槍の<双豪閃>が破壊。
ワイティワンは骨種族の大魔術師か?
魔導師とか普通の魔法使いのレベルじゃねぇ。
「――ひぃあぁ――」
近づく俺を見て、怯えたワイティワンは悲鳴を上げる。
しかし、ローブから金色の魔印を出現させた――。
すぐに反応した俺は――。
<導想魔手>が握る聖槍アロステを消去。
歪な魔力の手でパーの形を作って七本の指の<導想魔手>もわざとらしく消した。
<鎖>を射出。ワイティワンは金色の魔印で、俺の<鎖>を止めてきた。
そのタイミングで<鎖>を消去。
<光穿・雷不>を思い浮かべるが――。
『枝預け』の心意気で、魔槍杖と神槍を<投擲>――。
「いくぞ――」
「な!?」
無手で間合いを詰めてくる俺だ。
驚くワイティワン。
先の、怯えた表情はフェイクか。
気にせず前傾姿勢で突貫だ――。
その瞬間、ワイティワンのローブに浮かんでいた金色の魔印が、金色の骨の腕となる。
<鎖>を止めた金色の魔印だ。
金色の骨の腕は魔槍杖バルドークと衝突。
魔槍杖の<投擲>を、その金色の骨の腕で防いだかに見えたが、金色の骨の腕はぶれるように振動。
異質なひび割れる音を響かせる。
金色の骨の腕は嵐雲の矛の衝撃に負けるように後退。
地面へと激しく衝突しビクッと跳ねると魔槍杖バルドークに吸収されるように消失した。
その際、悲鳴のようなモノを響かせる。
――地面がドゴッと音を立て陥没した。
一方、神槍ガンジスはワイティワンの長杖を破壊しながら、そのワイティワンの腕を貫いていた。蒼色の槍纓の糸のような線の一つ一つが魔法の文字を貫いている。綺麗だが、神槍ガンジスも、また普通ではない。
ワイティワンは、失った片腕を、もう片方の腕で押さえている。
「――ぐあ……つ、強い。霊槍使い……様、お、おゆ――」
謝罪するような態度だ。
だが、そのワイティワンは急激に背中を膨らませる。
魔力も活性化。切り札か?
速度を加速させた――かなり速い――。
ワイティワンは、無事な右腕の甲に備わる杖から別の骨牙を生やす。
――嗤うワイティワン。
「ウケケ――」
と、その骨牙の切っ先で俺の頭部を突き刺そうとしてきた。
カウンター狙いか。
小賢しいが、ワイティワンは強い。
俺も速度を上げよう――<脳脊魔速>を発動――。
紅玉環を触り武装魔霊アドゥムブラリを出した。
その紅玉環から微かに出たアドゥムブラリの額にAを刻む――。
<ザイムの闇炎>を発動しつつ頭部を傾ける。
<霊血装・ルシヴァル>の頬防具で、ワイティワンの繰り出した骨牙を噛むように、その骨牙が俺の首下に流れていく。
ワイティワンの刃がずれて首に傷を喰らうが構わねぇ――同時に右腕を突き出していた。
――正拳突きの<蓬茨・一式>のクロスカウンター。
蓬茨魔拳流技術系統:基礎突き。
骨の頭部のワイティワンの顔面に闇炎の魔拳が衝突――
「ぶぇアァ――」
奇声は骨が潰れる音に収束。
ワイティワンの頭部は陥没し、破裂した。
敏捷性と魔力を増やす効果の<ザイムの闇炎>は強力だ。
しかし、まだ、何かあるかもしれない――。
油断なく、キサラの貫手法を実践――。
倒れゆく死体のワイティワンに<死の心臓>を喰らわせた――。
ワイティワンの心臓を抉り取る。
骨種族だが、心臓だけに血は大量だ。
血を吸い寄せるようにワイティワンの心臓を握り潰した――。
暫し……間。
<脳脊魔速>の時間が終了――。
ふう……奇怪フィナプルス戦よりも魔力を消費した感が強い……。
その直後、まだ残っていた骨種族たちウェーズ・ドルライ会のメンバーたちは逃走していく。素早い者もいるから侮れない。
勝ち鬨を上げているアニュイル人。
魔槍杖と神槍を回収していると、皆が駆け寄ってくる。
「にゃ~」
黒猫が俺の足に頭部を擦りつけてきた。
「やったぁ~敵のリーダーを滅殺! 使者様は強い~♪」
「おう。まだ油断はするなよ」
と、忠告はする。
帰る前にフィナプルスの魔心臓を試すからな……。
この魔心臓で、何かが、また起こるかもしれない。
その前にルエルさんと少し話をしようか。
だが、まずは可愛い相棒の頭部をなでなでする――。
続きは来週。
HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。」最新刊の9巻が発売中。
コミックファイア様から「槍使いと、黒猫。」1巻が発売中。




