五百九十六話 奇怪フィナプルスとの戦い
「お望みの連続キッスはしてないが」
沙・羅・貂に、俺の声は聞こえていないか。
『器よ、今だ、<法具>を意識しろ――』
『おうよ、<神剣・三叉法具サラテン>』
思念でスキルを発動。
丹田に集中した魔力が膨れ上がり全身にその魔力が行き交う。
三叉魔神経網が活性化した。
そして、新たな魔力ブーストを得た沙・羅・貂の三人娘。
天女のような沙・羅・貂が着る羽衣が煌めいた。
三つの軌跡を宙に残す。
それは三頭立ての馬車のトロイカのようだ。
馬ならぬ長剣に乗った沙・羅・貂の三人娘は宙を駆けていく。
トロイカ風のあれは『御剣導技』の一つなのか?
沙・羅・貂は重なり離れバレルロール風の機動を繰り返す。
螺旋しつつ宙を舞う華麗な三人の身に迫る巨大雷火球も、また、強烈な攻撃――。
しかし、あっさりと、その巨大雷火球は粉砕された。
粉砕された巨大雷火球は散り散りになった。
その散る魔力を吸い取った沙・羅・貂。
三人娘は、雷と火の特異な放電現象を纏う。
熱雷と走り火の魔力を纏う彼女たちは一つの巨大な長剣に見えた。
まさに神剣・サラテン。
「ガァァ」
「ギャゴァァァァ」
「ヌゴァァァ」
攻撃が通じなかった奇怪フィナプルス。
超大型巨人風に叫ぶ。
それにしても巨大な胴体だ。
体の全長は何十メートルあるんだろうか。
超巨大だから迫力がある。
その奇怪フィナプルスの、ヒドラのような多頭の群れは、ぐわりぐわらりと蠢く。
そのヒドラのような多頭の一つが宙を舞う沙・羅・貂の動きを追う。
キングヒドラってか?
サラテンの機動が速いのもあるが……。
他の多頭を支える細長い首と絡まりそうになっていた。
しかし、奇怪フィナプルスの首はくっ付いて分裂しながら離れた。
敵ながら便利だ。
そのまま反対方向を向いた奇怪フィナプルスの頭の一つが口を広げる。
竜のような顎が目立つ巨大な口。
その口から雷属性を帯びた魔力密度の高い火球を吐き出す。
旋回する沙・羅・貂を、その巨大雷火球が追尾した。
長剣に乗った沙・羅・貂は身を翻し華麗にターン。
逆に、その追尾してきた巨大雷火球に突貫し、いとも簡単に貫く。
その三人が乗る長剣はサーフィンの板のようだ。
水曜日はスイスイスイといったように波乗り機動の沙・羅・貂の三人は迅速に奇怪フィナプルスの多頭の一つに近付いた。
沙は、全身から炎のオーラめいた魔力を噴出。
羅は、目元から漆黒色と水銀色の粒が円に密集した魔力を出した。
貂は、複数ある尻尾を更に増やす。
『『『<御剣・三種ノ太刀>』』』
思念を揃えた沙・羅・貂は重なりつつ多頭の一つの蛇型頭部とすれ違う――。
ビクンッと一度強く震えた奇怪フィナプルス。
その蛇型頭部は静止した。
静止した巨大な蛇型頭部の一つに、三つの縦線が生まれ、四つに裂かれるように分裂した。
蛇型頭部と細長い首は四つの肉塊となる。
切れ味の鋭さを物語る断面から赤黒い血が迸った。
強烈なスキル、三枚おろしか。
俺の左手の<シュレゴス・ロードの魔印>も蠢く。
神獣ロロディーヌに騎乗した状態で、左手を下方に傾けた。
相棒も俺の意思をくみ取った。
旋回しながら奇怪フィナプルス側へと胴体を傾ける。
「――神獣は、ペガサスかグリフォンのような姿だなぁ」
と、アルルカンの把神書の言葉を耳にしながら、
『――出ろ、シュレゴス・ロード』
『承知――』
左手の運命線の傷の周囲を刻む魔印から魔力が溢れる。
それは半透明の蛸足の魔力触手――。
半透明の蛸足は奇怪フィナプルスの多頭と細長い首を一つに纏めるように絡みついた。
巨大な胴体のブロック体の肩にも、蛸足がぐにょりぐにょりと絡む。
ブロックの一部にも絡まる。
奇怪フィナプルスは、蛇型頭部で超大型のデカブツ。
それを纏めてしまう半透明の蛸足。
吸盤が付いた蛸の足というシンプルな姿だが、シュレゴス・ロードもまた凄いな。
と、その刹那――。
掌にある<シュレゴス・ロードの魔印>と同じ魔印が眼前に浮かぶ。
「おい! それは旧神の類いか? 魔印瞑道の力も使えるのか……どうりで俺が……」
アルルカンの把神書が<シュレゴス・ロードの魔印>を解説している。
『今だ。主たち、纏めてデカブツを粉砕しろ!』
『サラテン、避難しとけ――』
『了解した。器よ、派手にやるのだな』
『おう』
サラテンたちは避難。
そして、ロロディーヌに、
『ロロ、炎で巨大デカブツの多頭を消毒だ――』
相棒はすぐに喉を膨らませる。
いつもと少し違う。
馬のような嘶きを発しつつ、その膨らませた喉を振動させた。
そして、黒馬の頭部を――。
身動きが取れない奇怪フィナプルスに向けた。
口を広げたロロディーヌ。
その口から先の空間が、湾曲したように、蜃気楼めいたモノが見えた。
相棒の口から発する凄まじい熱のせいだろう。
「ニャゴアァァァ」
と、神獣らしい強烈な紅蓮地獄の息吹を発した。
奇怪フィナプルスに絡みついている半透明の蛸足のシュレゴス・ロードごと、奇怪フィナプルスの多頭は紅蓮の波頭に飲み込まれる。
――うひゃぁ、熱いし、痛い……。
ヘルメが居ないから凄まじい熱風だ。
俺の前髪と皮膚の一部が焦げていた。
「ンン」
相棒も触手の一部と鬣が燃えていた。
すぐに生活魔法の水で冷やす。
瞬時に再生する皮膚と鬣の生えた後頭部。
毛並みを確認するように相棒を撫でてあげた。
『たのしい』『ぼあぼあ』『きえた』『あつい』『あつい』『楽しい』『ぐっじょんば』
相棒が嬉しい気持ちを寄越す。
理解不能な感情もあったが、そこはご愛敬。
『見事だ神獣様! 我の足ごと、多頭が丸々消えた!』
シュレゴス・ロードが思念を寄越してきた。
『遠慮のない相棒の炎だからな。しかし、デカブツの胴体と下半身が残っている……』
『敵は超大型だ……仕方ない。ではもう一度、我が魔力足を出し、動きを止めるか?』
シュレゴス・ロードがそう思念を寄越す。
奇怪フィナプルスに大ダメージを喰らわせたが……その奇怪フィナプルスは超大型だ。
溶けた脊髄と砂時計が合体したような歪な巨大器官から新しい肉腫のような触手が四方八方へと伸びていた。
再生している。
直に叩くしかないだろう。
『直に、俺が仕留める』
シュレゴス・ロードにそう思念を伝えてから――。
両手に魔槍杖と神槍を召喚――。
キサラから習い途中の魔闘術系技術<魔手太陰肺経>を意識――。
近々距離格闘系技術。
これは槍武術に応用可能。
体内魔力を活性化させつつ神槍と魔槍杖で円を描く――。
すると、怪しい光を発したアルルカンの把神書が、
「ひゅぅ~♪ 奇想めいた魔力の流れに二槍流か。神魔の濃い臭いがある……二槍流・神魔の構えか?」
俺の二槍流を見て、そう評した。
偶然か?
ハイグリアと同じことを……。
神姫ハイグリアも神狼ハーレイア様に愛されている。
彼女も特別なセンスを持つのかもしれない。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの穂先を、奇怪フィナプルスに向ける。
相棒は、俺の二槍流の動きを見て、俺の意思をくみ取った。
凜々しい黒馬ロロディーヌは旋回する。
黒毛の鬣を泳がせつつ頭部を奇怪フィナプルスに向けた。
すると、
「俺もいくぜぇ――<把・月反刃>」
アルルカンの把神書だ。
開いたページから月の形をした魔紋が浮かぶ。
その魔紋は魔力刃となって奇怪フィナプルスに飛翔していった。
奇怪フィナプルスの肉腫の群れを一瞬で切り刻む。
「すげぇな、それでも力が抑えられているのか?」
「いや、抑えられていない。お前が俺を使役して、扱っているんだからな」
「使役した覚えはないが」
「今の俺を見て、よく言うぜ……そのルマルディが預けた大事な同極の心格子に適応していやがるくせによ」
この同極の心格子か。
ルマルディさんは、ハートとか、言っていた。
あの金色の髪といい、美人で綺麗だったし、好みだ。
「……迅速に奇怪フィナプルスを仕留めて、皆の下に戻るか。ルマルディさんとも話がしたい」
「話だけか?」
「……」
野暮なことは言わない。
さて、頭部は消えたが、仕留めるとしても大型過ぎる……。
再生途中だったが、先端が尖る肉腫の群れが、俺たちに迫った。
アルルカンの把神書が反応。
先に出た俺たちを、月の魔力刃で、フォローしてくれた。
ユイの片腕が揺れている。
ちゃんとガルモデウスの書は握った状態だ。
しかし、敵の奇怪フィナプルスもデカブツで強い――。
肉腫触手の数は異常だ――。
再生が一々速い――。
「ンン」
黒馬の相棒ロロディーヌは鬣付近から触手を出す。
それらの触手は戦闘機のミサイルのサイドワインダーの如く前方に伸びていく。
ロロディーヌの触手ミサイルの先端から飛び出た骨剣の群れが、無数の肉腫触手を一度に貫いた。
貫かれた奇怪フィナプルスの肉腫触手は、パッと音を立て散る。
相棒は、その血飛沫ごと芳醇な魔力を吸い取った。
そうして、奇怪フィナプルスの肩付近に迫ることができた。
巨大な奇怪フィナプルスの肩はブロック状。
槍圏内に入った――攻撃するとして、<鎖型・滅印>や<魔狂咆閃>でもいいが。
神獣一体のランスチャージを意識。
神獣ロロディーヌとの連携技。
<魔連・神獣槍翔穿>を繰り出した。
神獣槍武術系統:上位亜種突き。
魔槍杖バルドークの螺旋型の紅矛。
神槍ガンジスの方天戟の白銀の矛。
――その魔槍杖と神槍が奇怪フィナプルスの肩の形状をしたブロックの体を捉えた。
相棒も全身から触手を周囲に伸ばす。
ランスチャージに貫かれた奇怪フィナプルスの肩部位は木っ端微塵。
そのブロックの体は、岩のようなモノと血肉が混じる異質なモノ。
凄まじい血飛沫と粉塵の量だ。
周囲を暗くする。
だが、魔槍杖と神槍のコラボ突きでもある技の勢いは衰えない。
<魔連・神獣槍翔穿>の威力を物語るように奇怪フィナプルスの胴体の一部を貫いた。
しかし、相手は超大型巨人級、ゴジラ級だ。
技の威力もあって、血飛沫と粉塵の量も並じゃない。
俺と相棒に、その血と粉塵が大量に纏わり付く。
血と魔力を吸うが追いつかない。
粘液のブレーキゾーンに突入した感じだ――。
<魔連・神獣槍翔穿>の勢いが止まった。
相棒は血を吸い取りながら、黒豹の姿に変身。
乗っていた俺も降りた。
しかし、俺たちの勢いが止まっても、右手に握る魔槍杖バルドークは喜ぶ。
血飛沫と魔力を吸い寄せては不気味な唸り声を発していた。
紅色に輝く表面。
オッドアイの髑髏たちが、カラカラと音を立て、振るえながら嗤う。
メファーラの力を宿す髑髏の模様たちだ。
このバルドークは、ずっと前にハルバードから特別な穂先に変化した。
紅斧刃の部分が湾曲しながら嵐雲を模る矛。
一方、静かな神槍ガンジスは白銀色の方天戟。
中央に煌めく剣のような矛と、その矛の左右に均等に並び立つ三日月の刃。
この神槍ガンジスには、魔力を込めているから振動している。
魔槍杖と神槍を見ながら……。
俺と相棒は、周囲の血肉と魔力を吸い取る。
――足下も内臓群だ。
血流か分からないが……。
足下の一部の表面は透けてクリスタルの粒が流れているのが見えた。
右手の魔槍杖の矛で、地面を突く。
血のようなモノが噴出した。
が、奇怪フィナプルスの触手攻撃が激しくなるだけか――。
迫る触手攻撃を、魔槍杖で払いつつ前進――。
中級:水属性の《氷矢》を実行――。
途中、<無影歩>を実行した。
一瞬、攻撃が止んだ。
だが、俺たちの位置を把握しているような正確な攻撃が来る。
アルルカンの把神書とユイの片腕にも攻撃が向かうから<無影歩>は解除。
体の奥は内臓迷宮のような作りだ。
まぁデカブツだ。仕方ない――。
「弱点は分かっていると思うが、魔力が集まっている&魔力が行き交う場所だろう」
アルルカンの把神書が指摘する。
「セオリー通りならそうだな」
魔力が強い、魔素が集まっている場所に向かう。
内臓からわらわらと、肉腫の人型が現れる。
「ここは俺が対処しよう」
アルルカンの把神書が魔法の鮫のような生物を繰り出して活躍。
本が開くたびに、人形のような生物が動くさまは面白い。
ラファエルの魂王の額縁のような特殊な力があるのか?
魔法だと思うが……。
先に進みながら、人型の肉腫を一掃。
そのタイミングで、水の生活魔法を散らし<水神の呼び声>を発動――。
ユニーク級の霧の蜃気楼の指輪に魔力を通す。
その蒸気が、残っていた血肉を吹き飛ばすように散った。
「人型が減ったが、触手の攻撃が増えたな――」
そして、俺と相棒の分身を無数に作る。
だが、分身たちは一瞬で消された。
奇怪フィナプルスの反撃だ。
俺が身に纏う霧の鎧は吸われていないが、分身の霧はすべて吸われた。
吸い取ったのは、脊髄の一部のような突起物。
疎らにクリスタルの粒を内包していた。
ここが奇怪フィナプルスの体内だとすると……。
あれは、ナチュラルキラー細胞のような絶対防衛機構か?
更に、その一部が変形すると、ラケット状の生殖器触手を繰り出してきた。
生殖器には、みっしりと牙が生えて、上部に御豆ちゃんがあり、液体が零れていた。
怖いがエロい!
そのエロい攻撃には、<光条の鎖槍>で対応。
光槍が生殖器に突き刺さる。
突き抜け際に、厭らしい音が響くが構わねぇ。
突き抜けた<光条の鎖槍>は、スカート部位に突き刺さって止まった。
続いて、骨牙が生えた細い触手の群れが迫る。
アルルカンの把神書が、先程と同じく月の形をした魔力刃を出してフォローしてくれた。
「ありがとう」
「ククク」
「ンン、にゃ」
頼りになるアルルカンの把神書だ。
黒豹の姿に変身していた相棒も触手を出して撫でていた。
「……」
ピクピクと書物を揺らすアルルカンの把神書。
声は出さないが、書物の猫マークは朱色に点滅していた。
萌えている?
面白い。
そうして、肉腫迷宮的な奇怪フィナプルスの奥に向かう。
俺が前衛、相棒が強襲前衛、後衛にアルルカンの把神書だ。
相棒の位置とアルルカンの把神書の位置に気をつけながら――<血鎖の饗宴>を操作。
血鎖が、あらゆる血肉と骨と内臓を貫く。
強引に道を作り上げる。
内臓迷宮が俺たちごと喰らうように、骨牙を伸ばしてくる。
その周囲を睨みながら……。
骨牙の群れを<血鎖の饗宴>がぶち抜いていった。
更に、真横から振るわれてくる長い触手。
その触手を、神槍ガンジスの<水穿>で破壊した。
魔槍杖バルドークの<牙衝>で足下から飛び出た触手を突いて破壊。
サーカスの芸人にでもなったように、避け、踊り、攻撃を繰り返し、内臓迷宮を進む。
相棒も炎と触手で迫り来る肉塊を破壊していく。
だいぶ進んだが……。
――今も、奇怪フィナプルスの骨牙触手を魔槍杖の<血穿>でぶち抜く。
更に天井と底から罠のような触手床が迫ったが、側転で真横に飛びつつ<血鎖の饗宴>で、天井の触手床を破壊し、足下の触手床に、<光条の鎖槍>と<夕闇の杭>を喰らわせて、内臓の床をえぐるように破壊。
先に進む。
――<水穿>。
水の蒸気を纏う神槍ガンジスの矛が、人型の肉腫怪物の胸元を貫いた。
その左手が伸びきったところを、狙うように迫る触手攻撃――。
その触手を相棒が前に出て打ち払う。
フォローしてくれた。
やはり、魔力が強まった部分に進んだせいか。
抵抗が激しくなったような気がする。
俺たちは巨大な奇怪フィナプルスの弱点部位に迫った?
一端、両手から魔槍杖と神槍を消去。
代わりに前に出た相棒ロロディーヌが触手を展開してくれた。
見た目は黒豹でさっきより小さいが、神獣だ。
奇怪フィナプルスも骨牙を生やした触手だが、相棒の触手骨剣には敵わない。
ロロディーヌの触手骨剣は、奇怪フィナプルスの骨牙触手を確実に粉砕し破壊していく。
奇怪フィナプルスの内臓迷宮は、しびれを切らしたように――。
今度は触手の代わりに、肉塊が飛んできた。
が、逆にその肉塊を足場に利用――。
肉塊を蹴り飛ばし飛翔する相棒――。
俺も<導想魔手>を足場に利用して、相棒のあとに続いた。
勿論、アルルカンの把神書も一緒だ。
奇怪フィナプルスの内臓が密集した体の内部へと前進。
左手に消していた神槍ガンジスを召喚――。
そのタイミングで左右から槍状の骨牙が生えてきた。
俺を狙うような骨牙。
その骨牙を避けながら観察しつつ、反転。
横に回転しながら、アーゼンのブーツの踵で骨牙を蹴り上げ破壊。
その衝撃を利用し跳ぶ――。
――移り変わる視界。横の内臓群の壁を蹴り、また反対側に飛びながら前方に湧いていた人型肉腫の頭部を<夕闇の杭>で狙う。
連続したヘッドショットが決まった。
数体を一度に沈めた。
同時に、内臓群に弱点の部位がないかと探す。
右の壁から生えた鞭を振るうかのような触手には<邪王の樹>で迎撃。
身をひねりながら<導想魔手>で壁を殴る。
攻撃しながら前進。
同時に<血鎖の饗宴>で下から迫った骨牙触手を防ぐ――。
「相棒と、アルルカン、とりあえず奥に進む」
「にゃお~」
「了解した」
ユイの片腕も頷くように傾いた。
少し湾曲した内臓群の道を破壊しながら進む。
すると、脊髄と砂時計のような形が混じる器官の一部が見えた。
さっきと少し形が違う。
とっさに壁に肩を当てながら退いて戻る。
ロロとアルルカンの把神書を見た。
「――ロロとアルルカン、後退だ。魔法で破壊する」
「にゃぁ」
「おうよ」
烈級:水属性の《氷竜列》を放つ。
周囲が一瞬で凍り付く。
龍頭を象った列氷は、多頭の氷竜となって螺旋突貫。
瞬く間に、脊髄のような巨大器官は凍り付く。
<邪王の樹>の樹の礫を飛ばす。
凍った内臓を破壊した。
コアのような魔力密度の高い内臓が露出した。
菱形、フィナプルスの夜会の表面にあったような魔印が刻まれてある。
あれが心臓部か?
「シュウヤ、見事な魔法だ。あれがフィナプルスの心臓だろう。もしかしたら、あれがあればこのフィナプルスの夜会と本契約ができるかもしれん――」
その直後、足下から不意打ちの肉腫の手が伸びてきた。
が、警戒が強まっている俺は反応――。
右手に握る魔槍杖バルドークに魔力を送る。
柄頭の竜魔石から伸びる氷の両手剣――。
それが、肉腫の手を貫いた。
「――本契約をするつもりはないな」
「そ、そうか。な、なぁ、今の不意打ちの攻撃は予見していたのか?」
「いや、アドレナリンが大量に分泌中なんだろう。天然の<脳脊魔速>中だ」
「……」
「おい、冗談だ。ラリってないからな?」
「分かっている。凄まじい戦闘感覚だと思っただけだ」
「そっか。褒められるのは嬉しい。さて、あの心臓はアイテムとしてもらうか。相棒、背後を頼む」
「ンン」
奇怪フィナプルスの心臓。
フィナプルスの夜会の心臓?
分からないが、その心臓らしい部位は、無数の肉腫と骨のような部位の奥だ――。
両手から魔槍杖と神槍を消しながら、前傾姿勢で前進。
間髪を容れず――<仙魔術>を意識。
<白炎仙手>を実行。
一瞬<死の心臓>と迷うが、使わない。
内臓の周りを無数の<白炎仙手>の貫手が貫く。
そして、まだ器官がこびりついているが――。
<導想魔手>を実行!
その魔印が刻まれた菱形心臓を魔力の歪な手で掴む――。
周囲の肉と器官が繋がっているが、強引に、引きちぎった。
よーし!
菱形心臓を抜き取ることに成功!
刹那、一気に周囲の内臓のような肉壁めいたモノが腐り散る。
儚げな視界となりつつも<導想魔手>が握る菱形心臓を左手に移した。
<導想魔手>を消去。
フィナプルスの夜会の書物に魔力を込めた時と同じく……。
……重い菱形心臓だ。
膨大な魔力が内包されていることは確実。
「にゃごぁぁ」
相棒が、とどめといわんばかりに火炎を吐いた。
塵ごと周囲が一気に焼失したが。
まだ足下が残っている。
と、その瞬間、床も一瞬で塵となった。
当然、足場も失う。
ロロディーヌの火炎の影響ってよりは、腐った影響だろう。
塵が世界に浸みゆくように消えていく。
俄に<導想魔手>を発動――。
その<導想魔手>を蹴って高く跳びながら、周囲を観察した。
足下に移動させた<導想魔手>に着地。
風を受けつつ眼下を確認……。
巨大なビルが崩壊した直後のように、もうもうと粉塵が立ちこめる。
その粉塵を見たアルルカンの把神書が、
「これは俺がなんとかしよう、<把・風影ノ場>――」
と、圧力鍋の内部を表現するような、強力な風魔法が、周囲の粉塵を吹き飛ばす。
下で戦っていた種族たちも吹き飛んでいた。
その瞬間、まだ戦っていた骨種族と角あり種族の戦いは止まる。
俺が助けた少女を守っていた沸騎士とイモリザの姿を把握。
旋回中の沙・羅・貂の姿もあった。
続きは来週。
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