五百一話 救出
『閣下、ここから先はまだ調べていないです』
『了解』
その間にも黒豹は走り、武器類が納まっている倉庫を通り抜けた。
魔素の反応が増えていく――。
<無影歩>を維持し、メイド服を着た人たちに注意をしながら……。
できるだけ死角を利用するように忍び足を意識し、廊下を進んだ。
穀物系の匂いが漂ってきた。右に樽が積み重なった部屋もある。ワインセラーか?
受動的な長期熟成用の貯蔵庫ならば凄く美味しいワインがあるかもしれない。
阿酒精強化ワインの味を想像した……ゴクッと唾を飲み込むほど期待してしまうが我慢。奥に人の気配がしたから部屋の探索はしない。通路を進む。調理場も近くにあるようだ、焼き肉の香ばしい匂いも漂う。腹が鳴りそうだから危険だ、先を進む!
黒豹はこの肉の臭いに釣られていない良い子だ。すると、「ンン――」その黒豹が喉声を発して立ち止まった。そこは右と左に分かれた大きな分岐道。
ユイは左に足先を向ける。黒豹は右に向かった。
「あ、待って、ロンハンはこっち。他の魔力の動きもある」
ユイがそう喋ってきた。続いて、ヴィーネが、
「左は幹部たちが住まう層に繋がっているかもしれません。もしくは会議室のような場所に集結している可能性も」
と指摘してくる。銀色の虹彩はユイの指摘した廊下の先に警戒するように向けられていた。ヴィーネのトレードマークの銀仮面は前髪の上とオデコに乗った形だ。頬には<銀蝶の踊武>のマークがある。ガドリセスの剣は鞘に納まっていた。
翡翠の蛇弓を構えているから現時点ではエクストラスキルを温存するつもりのようだ。しかし、ユイも仮面を頭部に乗せているからか、二人の纏う雰囲気は似ている。
ユイの言葉を聞いていた黒豹は右の通路内で待っていたが、突然、壁に触手を突き刺す。掌握察に敵の気配は感じないが……。
黒豹は触手を収斂して壁に張り付く。
忍者のように壁走りをしたいとか、単にノイルランナーたちの臭いはこちら側と知らせたいだけかな。触手を支えに壁を器用に歩く黒豹から視線をそらし皆に視線を向けて、
「ユイとヴィーネとジョディはロンハンを含めた幹部たちを追ってくれ。もしかしたら、古代狼族から回収した秘宝を直にゼレナードとやらに渡すかもしれない。貴重な品だからな」
「うん。隠れながらよね?」
「そうだ。ルッシーと<無影歩>の効果が続いているとはいえ、まだ人質は助けていないのだからな」
ルッシーがポケットの縁から跳躍。
転けそうになっている。
そのルッシーを見たユイは微笑んでから、
「理解した。襲撃のタイミングを知らせて」
「おう。タイミングは血文字で知らせるとして、ノイルランナーたちの救出後、何事もなければ合流しよう」
「分かりました」
「合流したら成長している剣術を見せてあげるから」
「フムクリの妖天秤を用いた<魔絶>で周囲の気配を断っていますから攻撃となった際は、ユイさんとヴィーネさんの攻撃は鮮烈な不意打ちとなるはずです」
ジョディの言葉に、首に巻き付くイターシャも反応。
首を斜め上に上げて頷いていた。ヴィーネも頷く。
そして、
「……敵の幹部は青年の魔物使い以外にも居るでしょうし、人族以外にも未知の敵は居るはずです。力を合わせましょう」
「そうですね。そして、ユイさんとヴィーネさん。あなた様からの指示の伝達は素早くお願いしますね」
「うん、任せて」
ユイは神鬼・霊風を持ち上げる。柄の頭をジョディとヴィーネに向けた。ジョディも大きな鎌の柄頭を神鬼・霊風の太刀の柄頭と合わせる。柄から微かな金属音を響かせた。
ヴィーネも翡翠の蛇弓の和弓でいう末弭を合わせた。武器を交わす三人は笑顔。
不思議な構図だが眷属たちは頼もしい。
「んじゃ、血文字で連絡する。ロロ、案内を頼む」
「にゃ――」
黒豹は壁を蹴って前方へ向けて跳躍。
神獣、黒豹としての黒天鵞絨のような毛が美しい内腹に魅了される。
そうして地面に着地したロロディーヌが、颯爽と走り出す。
その見事な後ろ姿と菊門に、ふと、ある光景が脳裏をよぎった。
以前、尻にこびりついていた神獣らしい巨大うんちさんを取ろうと、跳び箱でも跳ぶような姿勢で、地面に尻を付けながら前進していた姿を思い出した。
口元が緩む。必死な黒豹さんを思い出し、笑いながら、壁伝いに小部屋が連綿と続く廊下を進む――。
魔力の動きはないし、部屋の確認はしない。ぐるっと回るように進むと今度は左に進む。今度は右の階段を下がる――またジグザクか。
ホフマンたち一党が作り上げていた施設のように巨大だ……。
――お?
廊下の先に魔素の反応が複数あった、黒豹も動きを止めた。
触手の先端から象牙色の骨剣が何回も出し入れをくり返している。
この先に敵かノイルランナーたちが居るということだろう。
<無影歩>を意識しながら……。
壁に手を当てながらゆっくりと黒豹と共に廊下を歩いた。
見えた……敵が居た。急ぎ――右肩を壁に当て体を隠す。
黒豹も俺の足に寄り添う形で壁と足に隠れた。
<無影歩>は発動中だが、条件反射的に体を隠していた。
ゆっくりと廊下の奥を覗き込むと――居た。ガラス張りの部屋だ。
ノイルランナーたちを発見。
「ンン」
黒豹もかすかな喉声を発した。
尻尾で足を叩き後脚で俺のブーツの甲を踏み踏みしてくる黒豹ロロディーヌ。
そして、上向いてドヤ顔を披露してきた。
鼻息を荒くして背中側に転びそうな黒豹さんだ。
ドヤ顔を許そう。廊下の突き当たりはガラス面の部屋。
そこにノイルランナーたちが囚われていた。
メイド風の格好をした者たちも廊下を行き交っている。
やはり、一階の出入り口付近でロンハンを出迎えたメイドたちと格好が違う。地下には武器を持つメイドたちは居ないようだ。
ここに来るまでのメイドたちと同じで、皆、武器を持っていない。
魔素も普通の人族ばかり。獣人やエルフも居るかもしれないが……。
そんなメイドの衣装を着た者たちが屯する部屋は左にあった。
ノイルランナーが閉じ込められているガラスの部屋を外から監視できるようにガラス窓と穴が沢山あいている、特殊な部屋だった。
もしかしたら、マジックミラーとかあるのかな。
看守側とか捜査官が犯人の様子を見るような部屋かもしれない。
マジックミラー越しに取調室の様子が見える隣室って感じかな。
魔線が繋がっているし魔道具的なモノでガラスの部屋の管理をしているようだ。
しかし、あの人質が閉じ込められているガラスの部屋に出入り口が見当たらない……床に白い紋章魔法陣が敷かれていた。
椅子と机と食料に書物もあるし、カードゲームで遊んだ跡もある。
ヴィーネとママニから聞いていた通りの部屋だ。
ケマチェンとフェウが会話していた時に、オフィーリアが魔道具越しに見ていた部屋で間違いないだろう。
『閣下、隙間もなさそうに見えます』
『出入り口はない、密閉空間か。空気孔はあると思うが……』
『あ、隅に小さい穴がありますね。あそこならわたしでも侵入できそうです』
だめだったら派手にガラスをぶち抜くか……。
まずは、手前の部屋を調べることにしよう。
『メイド風の衣裳を着た者たちの尋問は、ゼレナードが知る確率が高まるから無理として、手前の部屋も怪しい』
『はい』
『壁をぶち抜くなら妾に任せろ』
『サラテンなら、言うと思ったが、それは最終的にどうしようもない場合だ』
『分かっておる』
左の掌の内部に棲むだろうサラテンと思念の会話をしながら黒豹にアイコンタクト――……<無影歩>の能力を生かすように前進した。
『ヘルメ、メイドたちを気絶させるのを頼む』
『はい』
左目から飛び出していくヘルメ。
地面を這うように移動していくヘルメの液体は、中心がスライムのように少しだけ持ち上がり、そこから煌びやかな魔力の手を出現させた。その魔力の美しい手から振るわれると、その手から黒い霧のような魔力が発生し、黒い霧がメイドたちの頭部を捕らえていった。黒い霧を吸い込んだメイド風の格好をした者たちは悲鳴もあげず一斉に倒れていく。
そうして、廊下の敵勢力を一瞬で倒したヘルメは廊下に並ぶ扉の下から部屋に侵入した。
すると、部屋に居たメイドたちか戦士か傭兵か、不明な存在たちを、あっという間に何事もなく全員を気絶させたと理解。超がつく優れた傭兵なら対処してくるはずだし、倒れたのは、普通のメイドさんかな。<無影歩>とルッシーにヘルメも成長しているし、エリボル邸の時よりも難易度は低いかもしれない。警戒音も鳴らない。
ガラスの部屋の中に閉じ込められていたノイルランナーたちも、白色の貴婦人側のメイドたちが倒れたことに気付いて、ここに誰かが侵入したと理解したようだ
皆、興奮している。しかし、俺は<無影歩>中。
ノイルランナーたちは俺の存在に気付いていない。
頭部をかしげているノイルランナーが多い。不可解そうに廊下の先を見ていた。
俺の姿は見えていないということだろう。が、まだ急がない。
ヘルメが侵入したガラスの部屋と連結している部屋の扉を開けた。
黒豹も付いてくる。部屋の内部は明るい。天井の鮟鱇の形をした明かりだ。
白色の貴婦人は深海魚マニアなのか?
天井の横にガラスの部屋へと続いているだろう空気の穴を見つけた。
左の手前は、食料か豆でも入っていそうな麻袋が積まれている。
壁には生活用品が積まれた棚もあった。
中央には、四角い机と椅子に寝台が並ぶ。
椅子に座っていただろうメイド服を着た者たちが床に倒れていた。
四角い机の上には、食べかけのシリアル系の食事が入った皿たちと、鮟鱇の形をしたランタンがある。
資料のような書類が積まれた棚もあった。
女体化しているヘルメは、棚の小さい扉を器用に水を飛ばして開けていく。
棚の中身をチェックしていた。
「甘菓子に蜜があります! ふふ」
楽しげなヘルメは、ひさしぶりにこの部屋に来て、いつも生活しているように美人の嫁さん的な雰囲気を醸し出す、後ろ姿に魅了された。群青色の長髪は美しい。
グラマーでスリムな体にフィットした水着の上に羽織るのは、羽衣のような魔法の衣裳が少し変化している。水飛沫を発している細長い腕はバレエダンサーのように先端にまで美意識が込められていると錯覚してしまう。そのヘルメの手にはレジーが使っていた魔槍は握られていない。左目に居る時に自慢するように両手に短槍として持っていたが……。
まだ実戦投入は早いのか、ただの、幻だったのか、不明だ。
そんな美しいヘルメは地面を差した。指先は、食料の袋と小さいお盆が並ぶ机の手前に向けられている。そこには白色の魔法陣があった。ノイルランナーたちが囚われているガラスの部屋へと伸びた魔線と繋がっている魔法陣か。
「この魔法陣から隣のガラスの部屋へと転移ができるようです」
「状況的にそうだろう。しかし、ガラスの部屋への転移は俺の存在が大本にバレてしまうリスクがある。違う場所に転移してしまう可能性もあると思うし。だから、ノイルランナーたちを助けるとして……ヘルメ、水状態で、このアイテムを持てるか?」
と、クナから手渡されている超貴重なスクロールを手渡す。
「はい、ヴェニューゾーンで格納が可能です」
アイテムボックス風か、血をストックできるしな。
ま、細かくは聞くまい。
「おう。頼む。そのスクロールを持って穴からガラスの部屋の内部に侵入してくれ。ノイルランナーたちの救出を頼む」
「分かりました」
「スクロールは魔力を込めたらすぐに発動するようだから巻き込まれないように注意しろ。クナ曰く、スクロールだからこそ可能らしいが、時空属性の有無に関係なく使えるスクロールは超貴重らしいからな」
「はい」
頷くと、ヘルメはスクロールを自身の体内に包んで液体となった。
スクロールを心臓部で圧縮しているのか?
不明だが、謎だ。
そのキラキラと輝く液体のまま、左上の隅にある空気孔から隣のガラス部屋に向かっていく。
通風孔らしい狭い通路内にヘルメの反応がある。
俺は左から右へと移動するヘルメの位置を把握しながら……。
足下に転がるメイドたちを起こさないように慎重に部屋から外に出た。
黒豹はもう廊下に出ていた。
ノイルランナーたちの様子をガラス面越しに見ている。
触手はガラス面に向かわせていない。後脚を揃えて、人形のように前足を揃えながら、自らの尻尾をその前足に巻き付かせている。可愛いマフラーのように足に巻いていた。
別段寒くないし、ある種の警戒、臨戦態勢といった感情だろうか。
ちゃんと俺たちの行動を理解している相棒ちゃんだ。見た目は凜々しさのある黒豹だが。
俺もガラスの部屋を凝視していく。ガラスの部屋を映していた魔道具がある。
オフィーリアが演技をした時に映っていた。
魔道具にカメラのようなモノは見当たらないが……。
上部は人族の頭部を模倣したような鏡のようなモノ?
下部は……蝋のような人体が幾つも溶け合って重なり合って新種の筋肉質なスライムが集結したような肉布団。気色の悪い形も歪なモノだ……。
そんな下部を持つ監視カメラのような魔道具は、俺の姿を捉えていない。
<無影歩>が機能しているということだろう。
ガラス面の向こう側で、はしゃいで騒いでいるノイルランナーたちに向けて――。
〝静かに〟と意思を込めて口に人差し指を当てる。
当然、ノイルランナーたちは俺の行動に気付かない。
「声も聞こえないし、仕方ない」
俺は両手を使い……できる限り一カ所に集まるようにジェスチャーを行った。
当たり前だがノイルランナーたちは気づきもしない。
一瞬<無影歩>を解除しようか……。
と、悩むが止めておいた。
その直後、ガラスの部屋の空気孔から液体が現れた。
――ヘルメだ。液体状のヘルメは輝いている。
液体を凝視したら小さいヴェニューたちが泳いでいた。
ヘルメの姉妹たち、<闇蒼霊手ヴェニュー>。
俺の<霊槍血鎖師>と<霊血の泉>に霊気系の魔力がヘルメの力と組み合わさったから生まれた? ヘルメの細長い手の中には、俺が預けたスクロールがあった。
――失敗したらどんなことになるか。不安になった。
だが、今は常闇の水精霊ヘルメに賭ける――ノイルランナーたちはヘルメの液体に氣付いていない。通風孔から出た液体ヘルメは、自身の液体から分離した液体を部屋の内部に広げた。その液体の動きは無重力空間を行き交う液体のよう。
宙を進む液体は、瞬時に、急拡大しながらノイルランナーたちを包む。
――液体に包まれたノイルランナーたちが、驚きに目を見開く。
液体の中で溺れるように慌てふためくノイルランナーたち。
暴れているノイルランナーもいて、各自、苦しそうな表情だ。
溺れるように慌てふためき、苦しげにもがく者もいる。まずいか――と息を呑んだ、その時。彼らの表情から苦悶が消え、困惑の色が浮かんだ。
液体呼吸か。前世でもパーフルオロカーボンを用いた治療方法は有名だった。
将来的に深海調査や宇宙の調査でも役に立つかもと思われていたっけか。
昔を思い出しつつノイルランナーたちの様子を窺うが、大丈夫そうだ。
しかし、水で部屋を埋め尽くす勢いだし器用なヘルメだな。
水の精霊なんだから当たり前だが。刹那、液体のヘルメは転移スクロールを使った。
巨大な水滴に包まれているようなノイルランナーたちは、転移スクロールから漏れた閃光に包まれて姿を消したヘルメも一緒に転移してしまった?
すると、黒豹が狼のように頭部を上向かせて、
「にゃ、にゃおぉぉぉ~ん」
喜んでいるような声で、吼えた。気持ちは分かる。と、
『来た、液体と一緒に皆が来たッ、魔法陣をクナが解除した!』
おお。やった。
『――おっけ、よしよーし、オフィーリアたちの魔法陣も解除したんだな?』
『ん、消えた。皆、びしょ濡れだけど抱き合っている。けど、クナが倒れた。無理したみたい。魔道具だけの力では距離が離れているツラヌキ団のメンバーたちと、ノイルランナーたちの魔法陣の解除は難しかったみたい。わたしも力を貸したけど、その際、クナは、〝シュウヤ様が、この無理をするわたしを知れば、惚れちゃう? ふははははー〟と邪悪な気持ちを抱いていた。だから思わずクナをわたし離れちゃった。その時に床に頭部をぶつけたクナは血が……今、ハンカイが珍しく、そのクナの面倒をみているハンカイは、〝お前は俺が殺すんだ、勝手に死ぬな! 〟って必死になってた』
クナはいつも通りか。はは、しかし、ハンカイ……。
『クナを頼む』
『うん』
『ごしゅさま、姉の紋章魔法陣が消え、きえましたーー』
よかった。
サザーも嬉しいだろう。
『サザー、秋風亭の魔法陣は破壊したか?』
『はい、もう破壊済みです』
よっしゃ! 第一段階は成功だ。
血文字で頼りになるアルゼ方面の隊長にも連絡だ。
『カルード、魔法陣を崩せ。破壊しろ』
『はい』
カルードの短い血文字が霧散すると、液体のヘルメが背後から来る。
空気孔から戻ってきたようだ。よかった。ヘルメの本体は無事。
転移した液体は一部のみだったようだ。
振り向くと液体ヘルメが、にゅるりと膨れながら盛り上がる。
その膨れた先端がぐにょりと俺の方向に曲がると、液体ヘルメの先端が、スパイラル機動をとりながら俺の左目に突入――。
ヘルメが左目に納まった。
毎回だが、この、零コンマ何秒も掛かっていない精霊の機動は凄まじい。
『閣下、プランBに移行ですね』
『おう』
俺は自然と頷く。
すると、目の前にカルードの血文字が浮かぶ。
『マイロード、フレデリカの屋敷にある魔法陣を破壊』
続いて、フーも
『ご主人様、魔法陣破壊は完了です。ビアに助けられました。詳しくは後ほど』
フーに絡んだ相手か。ま、後だな。
そして、皆に向けて、
『皆、プランBに移行する。派手に暴れろ』
『了解。わたしたちの進む迷路のような通路もメイド風の人族たちが居たからね、ロンハンが居る場所は、まだまだ奥の方だから、わたしたちは先にこのまま進む』
『任せて、蒼炎で建物をぶち抜く』
『了解、ゼクスを展開する。キサラさんにも知らせたから』
『ご主人様、バーレンティンたちと伏兵がないか警邏します』
返事の血文字が次々と来た。
さぁて、俺も暴れるとして……まずはユイたちの方に向かうとしよう。
「相棒、分かっていると思うが、ノイルランナーたちとツラヌキ団たちを無事に助けることに成功した。後は暴れるだけだぞ」
「ンンン、にゃ、にゃおおおん」
元気よく鳴きながら、くるっと反転した黒豹姿のロロディーヌ。
触手は弧を描いて俺の頭上を越えていく。しかし、その直後、目の前のガラスの部屋が輝く。床に敷かれてあった魔法陣を含めて、ガラスの部屋の全体が強く輝いて点滅し、振動すると警報音が響き渡る。施設の内部からの音だ。
明日も更新予定です。
槍猫7巻発売中! 応援よろしくお願いします。




