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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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四百六十五話 サザーとアラハの再会

「姉さんだ――」


 大門の前に居たサザーは嬉しそうに叫ぶ。

 身の軽さを生かすようにアラハの下へと駆け寄った。

 <従者長>としてあらゆる能力が上がっているサザー。

 そして、ジャージャーの靴効果で少し体が浮いている彼女は妖精のような特性を生かす――。


 ――動きが速い。

 袈裟斬りの軌道の剣術を思わず想像した。

 そのサザーとアラハの下へと走る。


 サザーの上服は子供サイズの薄い蒼色の服。

 名前はプロロングルス。

 背嚢と繋がる胸ベルトも見える。

 肩口から剣の柄も見えた。

 あの武器は迷宮の宝箱から手に入れた水の妖精の双子剣(イスパー&セルドィン)


 そして、アラハと同じくダックスフンド系の耳だ。

 羊のような体毛も変わらない。

 モコモコしていそうだ。


 蒼い服をより可愛らしく見せていた。


「サザー、サザーなのね!」

「――うん、ボクだよ!」


 抱き合えばいいのに……。

 二匹、いや、二人の小柄獣人(ノイルランナー)は見つめ合いながら両手を握り合っている。


 ま、小柄獣人(ノイルランナー)らしいのかな。

 アラハとサザーは互いに泣いて一言、二言、語り合った。


 少し間を置いてから抱き合う。

 アラハの背中が大きく見えた。

 ま、気のせいだろう。

 彼女の黒衣から背中が透けている。

 小豆色の混じった下着の襞が肩甲骨に沿うように伸びている。


 ようやくか……微笑ましい。

 暫く、再会を果たした姉妹の様子を皆が見つめていた。


 風が彼女たちを優しく包む。

 タンポポのような種子と一緒に羊の毛が空を舞った。

 羊の毛と花々の種子が美しい涙のように彼女たちに降り注ぐ。


『ふふ、精霊ちゃんたちも愛を感じているようです……』

『そっか、精霊たちも粋なことをする』

『はい、わたしたちも、アラハたちの命を救ってあげたいですね』

『あぁ……』


 すると、

 ……後ろからロロとポポブムの場違いの楽しそうな鳴き声が響く。

 さらに、マギットがアジュールにじゃれ出したのか、野太い声で悲鳴を上げるアジュール。


 その様子に興味を抱くが、今はサザーとアラハだ。


「……姉さん、生きてて好かった。故郷の家族は死んだと思ってたから」

「大移動の時ね。隊長や生きていた同胞たちは、生き残ったわたしを幸運の象徴として見るようになったけど……わたし以外の家族は死んでしまった。ナルンもセヌも……」

「だからこそ! 姉さんが生きている! と血文字で聞いた時、すごくびっくりしたんだから」

「わたしだって奴隷に落ちたと聞いた時は……それより、今は魔石収集の仕事をメインにしているって聞いたわよ」

「うん、しかも戦いの最中だった。なんとか対峙している腐肉騎士は倒せたけど動揺しちゃって……ママニ隊長に叱られちゃった」

「ふふ、一流の剣士だったサザーの言葉とは思えないわね」

「ボクだって油断はする。それにボクは、同胞から……」

「……うん」

「剣士として生きてこなかったら……ボクは……あの時……」


 サザーは苦い思い出を無理に思いだそうとしているのかもしれない。

 口を震わせながら語っていた。


「いいのよ。もう……何も言わないで……」


 サザーとアラハの姉妹は互いに涙を流す。

 再び肩を寄せ合い抱き合った。

 そのアラハはサザーを肩で抱きながらも顔を上向かせて血獣隊の面々を見ていく。


「……今の仲間を大切にしなさい」


 ママニはアラハの言葉を受け……。

 隊長としての厳しい表情、いや元からか。

 そんな表情を浮かべてから、サザーの姉の言葉に同意するように、強く首を縦に振る。


 フーは姉妹の姿を見て泣いていた。

 ビアは舌が長い。


「うん、仲間というか、皆はもうボクの家族なんだ。ご主人様はね……ボクを新しい家族に迎え入れてくれたんだよ」


 サザー。俺を見ながら泣くなよ。

 彼女がどんな思いで奴隷として売られたか。

 俺に買われたのか……。

 それを想像したら、俺も自然と……瞳に涙が溜まっていく。


『閣下……』


 左目に宿るヘルメに俺の思いが伝わったようだ。

 視界に現れた小型のヘルメも泣いている。


「……知ってる、光魔ルシヴァルの<従者長>ね。隊長から注意を受けるぐらい何回も聞いちゃった。一緒だった吸血鬼の方々に睨まれちゃったし」

「その隊長の名って、あの、オフィーリアさん?」

「うん、ツラヌキ団になる前はハウザンド高原で有名だった魔獣使い。蒼穹の魔獣乗りとして有名だった方よ」

「オークタイラントを倒した八名の英雄の一人。ソサリーの長老も彼女を認めたと聞いたことがある。そんな凄い方が……」

「……そう、個人の戦闘能力も高かったからこそ、ケマチェンとフェウに捕まったのかもしれない」

「だからツラヌキ団、窃盗団のリーダーに……姉さんの体にも白色の紋章を埋め込まれたと……」

「そう。知っていると思うけどケマチェンという魔術師に紋章を喰らった。大隊長が言うには、〝死の旅人〟たちの背後に白色の貴婦人という存在が居ると聞いたけど……正直、仲間たちの命をゴミのように扱ったケマチェンとフェウのほうが、憎い……人族が嫌いになりそう」


 こき使われていたアラハたちがそう思うのは当然だ。


「……あ、うん。でも、大隊長って?」

「サザー、その大隊長(・・・)ってのは、俺のことらしい」

「あ、そうなのですね。ご主人様が言うなら確実。姉さんたちを苦しめている大本は、やはり、白色の貴婦人なのですね」


 俺はサザーの言葉を聞いて、頷く。


「大本の白色の貴婦人は過去にも狼月都市ハーレイアに対して、ちょっかいを出していたようだからな……」


 目的は宝物庫の中身か不明だが。


『樹海は様々な勢力が存在していますからね』


 そうだな。

 白色の貴婦人が裏で暗躍しているだけが樹海ではない。


 地上の勢力は蜻蛉のモンスター軍団としか、まだ知らない旧神ゴ・ラード。

 樹怪王の軍勢。

 クエマとソロボから聞いたオーク帝国は大支族たちが地上を含めて地下で勢力を争っている。

 ペル・ヘカ・ライン大回廊と繋がる地下道はオーク帝国の支族たちが利用している情報からすると、至るところにあるようだしな。

 そして、やや離れているがヒノ村と近いヴァライダス蟲宮に棲む蟻たちの存在もある。

 バルドーク山は竜の住み処だ。


 さらにいえば樹海は人族の国、オセベリア王国の領土内だ。

 未探索地域開拓依頼の魔竜王討伐依頼にもあったように冒険者の数と軍隊の質は馬鹿にできない。

 グリフォン隊のセシリーも居るし。

 樹海の南部、八支流があるアルゼの街はヒエジ・ゼン・トニライン伯爵が治めている。

 現在はフレデリカという娘が領主代行らしいが……。

 美人さんなら会いたい。


『……そうだ。現実は過酷……しかし、俺たちは俺たちのできることをすればいい』

『はい』


 そう、過酷な環境下にあるサイデイルだが、皆のお陰で少しずつ発展している。


 俺はペルネーテと同じくサイデイルに留まるつもりはない。

 

 光魔ルシヴァルの<筆頭従者長>となったキッシュ。

 そして、戦力が整いつつあるサイデイルなら背水の陣の心構えで何事にも挑めば……。

 俺が居なくても大丈夫だと思う。

 さらにキッシュ側の視点だと、ハイグリアのお陰で樹海最大勢力の古代狼族と正式な同盟をサイデイルは組めたことになる。これは大きい。懸念の一つは減ったといえる状況だ。


 まさに「後顧の憂いなし」だろう。


 しかしな……白色の貴婦人の暗躍を知った。

 そんな環境が環境なだけに、まだまだ心配だ。

 だからこそキッシュたちが安心して過ごせる環境となるまで……。

 俺はできる限りのことはする。

 

 そう思いながら――。

 新しい月狼環ノ槍を皆に見せるように持ち上げた。


「……美しい刃だ」

「柄の魔法印字も素敵」

「棟に当たる部位に環がある」

「前に主が訓練の時に使用していた緑の斧のような感じか」


 物珍しそうに目を細めたビア。

 俺の握る月狼環ノ槍を見てトフィンガの鳴き斧にたとえてきた。

 意外に鋭い。


 確かにヘルメも『トフィンガ系ですね』と前に話をしていた。


「少し似ているかな。まぁ槍の武器だから形状はまったく違うが」


 一時期……。

 トフィンガの鳴き斧を装備してハンカイ先生から斧を習っていた時、ビアも模擬戦に参加した。


「……それが新しい槍。月狼環ノ槍。神界系に部類する神槍ということでしょうか」


 フーが指摘してくる。


「どうだろうか。魔槍技:攻ノ型・<影狼ノ一穿>という技を覚えられるようだから、魔槍系って感じもする」


 そう発言した途端、金属の環たちがキーンと金切り音を立て揺れる。

 同時に穂先の金属環から狼の幻影が出現。


 俺に幻影が向かってきた。

 黒き狼の幻影は俺の身を突き抜けていく――。

 柄のルーン文字が輝きを発した。


 しかし、皆、今の狼の幻影は見えていないようだ。


 そして、この槍の昔の使い手は……。

 アルデルという名の古代狼族と聞いた。

 呪われた聖杯を使うヒヨリミ様はそのアルデルと(つがい)


 夫婦だった、恋人だったからこそ……。


 古代狼族を守護する双月神ウラニリ様、双月神ウリオウ様、神狼ハーレイア様の神界側の三神が……。

 神獣ロロディーヌと俺に、この月狼環ノ槍を託したのだろう。


 そして、吸血鬼ハンターのノーラが教えてくれたハーベスト神話。

 吸血神ルグナド、王樹キュルハ、宵闇の女王レブラの魔界側との大規模な争い。

 その結果、傷ついた姿となった双月神ウラニリ様を地下で見た。


 不思議な黒色の枠を持つ四角いウィンドーに映った女神。

 ハイグリアはその四角い枠を方樹槍と語っていた。


 傷ついた姿を白黒の映像で皆へと見せた。

 しかし、不思議と傷ついた体と違って、その女神の表情は穏やかだった。

 女神としての根源を表すかのような表情を浮かべていた……。

 そう……『憎しみと痛みは、すべて、わたしが引き受けます』といったような雰囲気があった。

 ……ウラニリ様を潰した魔界側の三神と白色の貴婦人や旧神ゴ・ラードを含めた多種多様な勢力は関係するんだろうか。


 ま、これは当事者じゃない限り分からないだろう。

 単に、白色の貴婦人、旧神ゴ・ラード、樹怪王、オーク帝国、人族側、他の獣人たち、年代や順番はバラバラだと思うが、古代狼族に対して喧嘩を売るような関係があったりなかったりしたんだろうと予想。


 地下で見た俺たちを誘ったもう一人の双月神ウリオウ様も、


『……我の胸を見た縁を感じる混沌の王者よ。そして、ホルカーの神聖な匂いを持つ者よ。この先を……』


 と語り掛けてきた。

 俺の胸ポケットに入っているホルカーの欠片を指摘したのか?

 それともホルカーバムの大樹を再生させた俺のことを意味する言葉だろうか。


 ホルカーバムの茄子紺の夜空を思い出す。

 ……皓々たる月明かり。

 あの時、双月神はしっかりと俺の行動を見ていたんだろう。


 そう考えたところで抱擁に満足したアラハとサザーは体を離す。

 そのタイミングを見計らったように、


「主――」

「「ご主人様――」」


 ビアとママニにフーが叫びながら側に寄ってくる。

 ママニは胸元に手を当て敬礼をしてから床の石畳を片膝で突いた。

 背中に装着した大型円盤武器のアシュラムが見えた。

 手裏剣の形に見えなくもない。


 そんなアシュラムの表面に無数の傷痕がある。

 迷宮で彼女たちは奮闘したようだ。


 巨大なチャクラムを持つイセスと少し似た円盤の外側に刃が付いた武器だ。 


 勿論、墓掘り人のイセスが扱うチャクラムの方は中心に穴があったし武器の詳細は違うが。


「……よ、お前たち。魔石収集の仕事中に悪いな。そして、血文字で連絡した通り急ぎの案件だ。休憩が必要なら待つが、どうする?」


 俺の声を聞いたママニは、


「――ご主人様、何を言われますか!」


 と、ガバッと勢いよく頭部を上げながら叫ぶ。

 虎の種族らしい首元に生えた黄色の髭たちが揺れていた。

 他の部族との違いが首下の模様にあるようにも見えたが、詳しくは分からない。

 現在は普通のママニの姿。

 肩口が露出し虎獣人(ラゼール)らしい体毛が見えていた。 

 ゴッドトロール素材を生かした殻製のレザーアーマーを装備している。


 その彼女が着ている白色の外表を覆う甲は特別だ。

 鎧の伸縮性は高い。

 特異体と<従者長>の力が加わった巨大獅子の姿へと変身したママニの状態となっても壊れない。


 やはり、ユニーク級とはいえ二十階層の白銀色の宝箱から出た優秀なマジックアイテムだ。


 すると、そのママニの隊長としての大声に反応したサザー。

 素早く回転しながら俺の側に来た。

 皆と同様に片膝で地面を突く。


 戦場、もとい、狩り場でママニの指示が染みついているようだ。

 アラハ、家族との再会を果たしたばかりだってのに。


 ママニはサザーの行動を見て、頷くと、話を続けた。


「休憩など必要ありません! そして、これほどの嬉しさはないのです! ご主人様はわたしたちを頼ってくれた! なぁ、皆! 零八血獣隊としてこれほどの誉れはあろうか!」


 ママニは隊長らしく皆へと発破を掛ける。


「――そうです。白色の貴婦人と、その配下の【死の旅人】の人族たちを打倒しましょう!」


 サザーが続いた。

 もこもこの毛が可愛い。

 頭を下げながら語る彼女の背中から水の双子剣(イスパー&セルドィン)の柄と鞘を覗かせていた。


 彼女はペルネーテの迷宮の八層を経験済み。

 冒険者の前に立派な剣士だということを改めて認識する。


「その通りだ! 我も気合いが入るぞ!! そして、主よ。迷宮外の仕事を我らに用意するとは、よほどの敵のようだな」


 蛇人族(ラミア)らしいビアは口から長細い舌をひょろひょろと伸ばしながら語る。

 彼女の着ている鎧に不自然な孔があった。

 背中側に固定した投げ槍の先端が肩口から伸びている。


 蛇人族(ラミア)としての特徴のある蛇の腹は太い。

 重厚な騎士風な姿のビア。


 ある種、投げ槍が旗に見える。

 戦場の旗持ち。


 そのビアの気合いある言葉に対して、俺は頷き、


「そうだ。まだ未知数だが、血文字で話をしたように白い紋章を扱う」

「ご主人様、わたしたちを存分にこき使ってください。邪界で活躍した以上に樹海の地でも活躍してみせます」


 エルフとしての長耳の特徴を生かす姿のフー。

 女性らしい声で語ってくれた。


 切れ端があるが、ゴッドトロール製の外套が似合う。

 肌に密着したブリガンダインも至る所に孔と傷があるが、基本、形は変わらない。

 白色の甲が目立つ殻製の鎧服だ。


 胸元の孔を隠すように、上辺りにボルドー色の小さいハートマークのブローチがあった。

 魔力を内包した小悪魔風の心臓アイテム。


 血文字で報告を受けてない。

 迷宮で手に入れたのか、または、独自に買ったようだ。


 そんなフーとビアを見ながら、


「……おう、フーもビアも皆、元気そうだ」

「はい! 土の魔法系統に<血魔力>を混ぜる実験魔法は順調です」


 彼女は土属性の魔法に<血魔力>系の技術を合わせるといった新しい攻撃魔法を模索している。


 そして、土系の魔法書を買い魔法を覚えたようだ。

 その証拠に、腰元の真鍮製のキーフックと繋がったスクロールの束が見えた。


 無詠唱で魔法を発動できるスクロールの方を優先したのか?

 <血魔力>があるからその方が手っ取り早いか。

 俺がそう分析しながらフーを注視していると、


「主! 我も強くなったぞ! 戦闘職業が血騎蛇士から血騎蛇角帥になったのだ!」


 ビアが宣言。


「ほぅ、ちきだかくし、か。長いな。元、ストロー何たらとかの長い部族を含む名前だったことが原因か?」


 と、冗談で語るとすぐにビアの長い口が開く。


「――ストローではない!」


 ビアは歯牙を覗かせながら口の中から長い舌を伸ばし、


「昔の名は、グリヌオク・エヴィロデ・エボビア・スポーローポクロンである!」


 太い蛇腹を生かすような蛇人族(ラミア)の声。

 手に持つ魔盾の上部から突き出たようにも見えた蛇舌の勢いが凄い。


 舌の飛び出る速度と早口の速度が上がったような気がした。

 そして、挑発技や麻痺の魔眼を喰らったわけじゃないが……。


「わ、分かった」


 と、少しビアの迫力に押された俺。

 長い舌を使った技とか開発しそう。

 そのうち<刺突>風の舌突きをモンスターに噛ますかもしれない。


 ジョディ風、元死蝶人風に先が尖る口に変形したら怖いが、ま、そんな変形はしないだろう。


 そんなビアが、


「主、迷宮で我が助けた冒険者ラグーから学んだ<蛇薔薇斬り>のスキルと、この胴体を見よ!」


 自慢するように宣言したビアが片手に握るシャドウストライク。

 シャムシール系の反った刃の切っ先を下に向けてから斜め上へと持ち上げる。

 そこから真一文字に宙を斬ってからの垂直斬りを行った。


 豪快で素早い剣筋。

 その際、血色の薔薇がシャドウストライクの周囲に舞った。


 同時に元蛇人族(ラミア)らしい蛇腹から突起物が伸びていた。

 スパイクを生やすとは、フライングボディプレスでも繰り出す気なのか。


 そして、あの鎧の孔はスパイク用ということか。

 重騎士だから突進に使えるし前衛らしいな。

 蛇人族(ラミア)と光魔ルシヴァルの<従者長>としての、種族的な進化もあるのか?

 戦闘職業に角の名があった理由かな。


「ビアとフーが話す通りです。血獣隊の名に恥じない戦いをしたいと、皆、奮い立っています!」

「了解した。そして、俺以外からも血文字で細かい情報は得ているから説明の必要はないが、する。相手は白い紋章を操る白色の貴婦人だ」


 そこで間を空ける。

 エヴァとレベッカを含めて皆を見ながら、


「ザープの情報によると元賢者。魔術師系のようだ。ジョディと引き分けたホフマンのような狡猾さを持つかもしれない相手。強敵なことは確実だ。配下のケマチェンとフェウも人族と聞く。しかし、普通じゃないだろうと予想はできる。遊び人っぽい連絡役のロンハンも優秀だろう……彼は……」


 と、アラハに視線を向ける。

 アラハは小柄獣人(ノイルランナー)らしく犬耳を揺らしながら頷いていた。


「扇子と杖がメイン武器らしいが、ま、どちらにせよ死の旅人はツラヌキ団に対して指示を出し聖ギルド連盟の追っ手を退ける力もある。この件からしても、ただの烏合の衆とは違うだろう。厳しい戦いとなる可能性が高い。だからこそ、今後の血獣隊の働きに期待をしている」

「「はいッ」」


 皆の気合い声を確認し、振り返った。

 ロロとポポブムの様子を見る。


「――ロロ。そろそろ戻ってこい」

「にゃおぉ」

「プボプボォ」


 ポポブムの後頭部に乗ったロロディーヌ。

 触手をポポブムの首に回し銜のように操作するロロディーヌ。


 ポポブムを黒猫が操る図の状態で、こっちに向かってきた。


 ヴェロニカも来る。

 彼女はマギットを捕まえて、胸元に抱えている。


 アジュールも走り寄ってきた。

 近くに来た黒猫(ロロ)はポポブムの頭から滑るように降りてくる。


「プボプボォ」


 そのまま皆と距離を取ると、一気に巨大化。


 大門の天辺がある屋根に頬を寄せて壊しそうな巨大な神獣ロロディーヌとなった。


 一瞬で、孔雀が羽を伸ばすように触手群を展開。

 肉球マークの可愛さという絢爛さを持った触手群は皆の体を一瞬で捕らえた。


「きゃ――」

「うあ――」

「うぉ――」


 ロロディーヌの背中の上に運ばれて皆は乗っていく。

 アジュールは敬礼して見守っていた。


「アジュールもここの警備を頼むぞ」

「承知!」


 俺も神獣ロロの触手に捕まると、一気に逆さま視点となった。

 人形のように運ばれる際――。

 中庭の丘のような場所に設置したクラブアイスが眠る墓石と壁際の端にある新しいヘルメ神像が視界に入る。

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