四百四十二話 ロロディーヌの鼻に付着した輝く枯れ葉
「考えか。元より神獣様が捕まえた窃盗団のメンバーだから、シュウヤに譲ろう」
「ありがとう。それじゃ、この穴から降りて窃盗団の仲間を追おうか」
ハイグリアは自身の顎先に指を置く。
『うーん』と、考える仕草を取った。
そして、人差し指を伸ばし、
「――わたしたちだけで、ツラヌキ団の大捕り物か!」
「そうだ」
「あなた様、がんばりましょう」
ジョディの言葉に頷く。
「シュウヤ、地下の窃盗団のメンバーを捕まえるとして、そのノイルランナーの尋問は?」
エルザはそう聞いてきた。
そして、マスク越しに自身の左腕へと視線を誘導する。
彼女は左腕に何かしらの尋問に特化したような、相手の情報を引き出せる能力があるということを示している?
ま、たまたまか。
「……ここだと目立つから、後だ。そして、ツラヌキ団の仲間のようなノイルランナーたちを通りで見た。だから地下から潜入しているツラヌキ団の数は少人数。または、個人と推測できる。だから地下の探索をしよう。ということで、ロロ――そのノイルランナーを背中に乗せておけ――」
黒豹に腕を伸ばしながら指示を出す。
「にゃぁ」
黒豹は頭部を頷くように上下させる。
そして、首元から伸ばしている触手で雁字搦めにしている小柄獣人を背中の上に運ぶ。
無理やりだが、窃盗団のメンバーを乗せていた。
「エルザとアリス。一緒に来るか?」
「愚問だな。神姫と知り合えた。この絆は大事にしたい。そして、力を示し有能なところも見てもらわねば」
「うん、エルザのいうとおり!」
「きゅ!」
「イターシャもついていくと、話をしているようです」
イターシャと友となったジョディが鼬語を通訳。
鼬語があるのか不明だが。
ジョディの首に巻き付いているイターシャはすこぶる可愛い。
『器よ! 妾も同意する! 神獣が掘った岩と土の残骸は、何かしらの神々の残骸も混じっているぞ! だが、妾を止めたような岩石は、ここにはぬぁい!』
へぇ――。
この土と葉に褐鉄鉱のような石の残骸は……神々の残骸も混じっているんだ。
だとしたら俺が回収した神剣サラテンを止めた石素材は貴重かもしれないな。
今も胸ポケットに入っている石素材はエヴァでも溶かすことはできなかった。
ペルネーテのスロザに回し鑑定か。
それともミスティに渡すか……。
と、考えたところで、
『……目的は石や岩の素材じゃないからな?』
『分かっている……だから、妾をつこうてほしい……』
サラテン。いきなり訛ったニュアンスの切ない念話に切り替えてきた。
『使う時になったら使うまでだ』
サラテンとの念話を切り上げた。
黒豹が触手の一つがアリスに向かう。
「――あうっ」
アリスの小さい体に触手が巻き付く。
黒豹は慎重にアリスを自身の側に運んでいた。
一緒に地下に降りるなら自分がアリスを運ぼうと気を回したらしい。
さすがは周囲を魅了する吼え声を持つ黒豹さんだ。
黒豹の左右にアリスと小柄獣人が触手にぶら下がった状態となった。
「ロロ。暇な時に、そこの半透明な幕の焼肉店で一緒に肉を食べよう。そして、団子と豆茶は予備に買ってあるからな」
「にゃぉ~」
黒豹は喜ぶように頭部を揺らしながら鳴いた。
鼻先の表面に付着している輝く枯れ葉が揺れ動く。
枯れ葉を取ってあげたいが、あとにしよう。
「んじゃ、先に穴の先を確認して戻ってくる――」
と<鎖>を意識。
両手首の<鎖因子>のマークから少しだけ<鎖>を伸ばしながら、穴の中に突入した。
ぬめったような風が前髪を撫でた刹那、体に風を感じながら地下の底に着地。
ドッとした鈍い音が響く。
アーゼンのブーツ底から感じる感触は、固い。
体勢を整えながら周囲を確認、地下らしく暗いが……。
黒豹が作った穴から落ちてくる輝く枯れ葉のお陰で、周囲は少しだけ明るい。
幅はまぁまぁ、広いか。
前後にある地下の洞穴から反響した不気味な音が耳奥に響いてくる。
蜘蛛の巣があちこちにあった。
空気は澱んでいない。
地下独特の冷風が頬を撫でていく。
同時に、湿った土の臭いが鼻を衝いた。
霊廟の奥から漂ってくるような風だ。
ホルカーバム、ペルネーテと同じアンダーシティ的な地下の動脈があるのかもしれない。
ま、ここは樹海といっても……。
標高が高いサイデイル村とは違う。
ここは樹海の底といえる窪地に存在する狼月都市ハーレイアだ。
その地下だからな……実はペルヘカライン大回廊と繋がっている?
地下にあるオーク帝国の領域と繋がっているかもだ。
更に地底神たちの魔神帝国の勢力の地下都市の何処かと繋がっているかもしれない。
フェーン独立都市同盟の第六軍団を指揮していたナズ・オン将軍のような軍団を指揮する存在は、無数にいるはず。他にも旧神ゴ・ラードの領域が近かったり?
駄菓子屋のイートインスペースで食べていた時に、
『傷を負ったことは名誉。わしも旧神ゴ・ラードに通じる樹海道要衝の一つ【頭蓋の池】の防衛で、中隊長サッシン様と共に蜻蛉の軍団から街道を守ったぞ』
と、顎髭を生やした往年な古代狼族の兵士が語っていた。
要衝と、この場所は離れていると思うが、蜻蛉型のモンスターがいるかもしれない。
と、頭上の穴を見る。天から射すような淡い一条の光。
輝く枯れ葉が、その周囲を美しく舞う。
綺麗な光景だが、井戸の底から空を見る気分となった。
蜘蛛の糸が落下してきたら、お釈迦様ありがとう。
といった、カンダタの気分かもしれない。
さて、有名な話を思い出したところで……。
一応、皆のために、ちゃんとした光源も用意する。
三角形が平面に並ぶ指輪を意識し、指で指環の表面を触った。
光源が生まれ出ると同時に壁を確認。
壁の中に砂利を含んだジグザグとした細い水分と気泡が含んだ空洞がある。
その細長い空洞の中を綺麗な真珠のような丸石が滾転。
デボンチッチのような形の化石も埋まって飛び出ている。
杖の形の岩もあった。
断層の一部か。
これも神々の残骸が混じっている?
『妾を出して突き刺してみるのも一興ぞ!』
『今はいい、鑑賞のみ!』
『ぐぬぬぬ』
模様が綺麗だな――と。
<鎖>で簡易ペダルのような足場を作る。
<導想魔手>の歪な魔力の手も発動――。
その<導想魔手>を蹴る。
上方へ壁の方へと一気に跳躍した。
穴の壁面も右足の底で捉えて、その側面をッ蹴り上げる――。
身を捻りながら、穴から飛び出す形となって地表に戻ると同時にヘルメ立ちを真似したポーズを取り、
「――底は大丈夫だ」
腰を捻りながら、そう宣言するように喋った。
小型ヘルメも俺と同じポーズを取る。
『閣下、素晴らしいポージングです! ふふ――』
楽しげなヘルメだ。
そんなポーズを崩しながら、手でジェスチャーを取り、
「ただ、意外に落差がある。ハイグリアとエルザは、これに乗れ――ジョディとロロは直でも大丈夫だろう」
彼女たちの足下に<鎖>製のスケートボードを向かわせる。
「はい」
「地下に向かうぞ。イターシャも」
「きゅっ」
イターシャが返事をした直後。
エルザが、俺が<鎖>で作ったスケートボード風の足場の物体を見て、
「……不思議な足場だな」
そう聞いてきた。
「不安か?」
「――いや、そういうことじゃない。その優しさに乗ろうか」
エルザは笑ったようなニュアンスで、そう語る。
そして、俺の<鎖>製の足場に片足を乗せてきた。
身を寄せてきたエルザから武人としての気配と同時に女性としての身の軽さを感じ取る。
そのエルザが、
「アリスは大丈夫か?」
と、黒豹の触手が巻き付いているアリスの様子を見ながら、聞いていた。
「うん! この触手あったかくて、もちもちしているの!」
「にゃ~」
「ううう、仲間の場所は喋らないぞ!」
黒豹の触手が捕らえている小柄獣人の言葉だ。
ツラヌキ団は、窃盗、盗賊の類だと思うが……。
仲間と絆があるようだ。
少し、彼女たちの背景が気になった。
そして、ユイと似た黒色のローグ風の衣装に、触手が見事に食い込んでいる。エロい。
しかし、今は無視だ。
とりあえず、簡易的な尋問は下に降りてからだな。
「ンン――」
「では――」
『先に向かうにゃ~』的な小さい喉声を発した黒豹が先に降りる。
続いて、髪飾りを揺らしながらのジョディが、穴に突入――。
和風ジャケットの背中側から翼のような白蛾たちが飛び散った。
白蛾の軌跡が宙に残る。
穴の中から、アリスと小柄獣人の悲鳴が聞こえた。
エルザが心配そうに俺に黒い瞳を向けてくる。
俺は一応、無難な笑顔を浮かべて対応。
ま、黒豹を信用するしかない。
すると、近くに居たハイグリアが、元気良く片手を頭上に伸ばした。
拳で、天を突く。
「――皆、ここのできごとは、内緒だぞ!!」
お立ち台に立ってはいないが、そんな感じの表情を浮かべながら、皆に、謎の宣言をしていた。
ここは通りの真ん中だ。
いくらなんでも〝内緒にしろ〟は、無理だと思うが……。
神獣としての黒豹が穴を掘った影響もある。
道路工事をするような感じだし。
即興の音楽劇を展開した。
だから皆が黙っているとは思えない。
とくに、あの不思議楽器を持ちながら、とんがり帽子をかぶったソンゾルとテルポッドの樹海獣人たちは、お喋りが好きそうだし……。
そんな疑問をよそにハイグリアは、満足そうに微笑む。
「よーし、シュウヤ。ここに乗ればいいのだな?」
「そうだよ」
ハイグリアは嬉しいらしい。
生き生きと双眸を輝かせて、乗り気だ。
俺が頷くと、尻尾を左右に揺らしながら、軽くスキップ。
そして、俺の<導想魔手>の上に片足を乗っけて着地した。
刹那――。
反対側に居たエルザを凝視するハイグリア。
エルザのアウトローマスクから不気味な魔糸が飛び出ているのを見た途端。
目を細めて機嫌を悪くする。
だがしかし――俺の匂いを嗅ぐように脇腹の位置へと顔を寄せて抱きついてくる。
そして、小鼻をひくひくとさせて、
「シュウヤの匂いは、いい……」
そう、短く呟くハイグリア。
機嫌はすぐに直った。
エルザは白火を纏った芒のような紋様を瞳に浮かべながら、
「ふっ、モテるのだな……」
と、呟く。
照れるのでエルザの言葉に応えず、
エルザとハイグリアを抱き寄せる形で、穴の下に突入。
『ヘルメも出ろ――』
『はい』
落下中に、俺の左目から液体状のヘルメが飛び出る――。
瞬時に宙の位置で、ヘルメが女体化。
ヘルメと同時に俺も着地した。
ヘルメの両手から伸びる輝く紐の群れが洞窟内を燦々と照らす。
光源が別個にあるとはいえ<珠瑠の花>は便利だ。
しかし、その輝く紐を使い……。
ハイグリアの尻尾をヘルメが悪戯している。
「精霊様! わたしの尻尾は遊び道具ではないのです!」
と、敬礼しながら踵を返し挨拶するハイグリアが面白い。
一応、<夜目>を意識――。
洞窟の前後を確認。
壁の模様はさっきと変わらず。
アドゥムブラリをドローンのように飛ばして、前か後ろに行かせてみるか?
リサナは……サイズ的に無理か。
洞窟の幅に嵌って、「出れなくなりました!」とか、悲鳴を上げるかもしれない。
わざわざ、嵌りにいくアホ行為を想像したら面白かったが。
そんなことを想像していると、膝頭と太股に黒豹の頭の感触を得る。
「ンン、にゃお~ん」
鼻先を伸ばしながら鳴いている黒豹だ。
髭が生えている鼻元がぷっくりと膨れている。
不機嫌と分かるが、興奮しているようだ。
この鼻に付着した『輝く枯れ葉を取って~』と甘えるようにアピールしてきた。
アリスはもう触手から解放されている。
エルザの隣に立ちながら周囲の壁を確認しては、エルザと会話していた。
小声で、
「聖杯の道……」
「アルデルの道に似ているな」
途切れ途切れだが、聞こえてきた。
ジョディが聞き耳を立てていることが分かる……。
あの二人は謎が多い。
興味が尽きないから、もっと仲良くなろう。
ガラサスの蟲ともコミュニケーションを取ってみたい。
小柄獣人の方は、宙の位置でぶら下がって、仏頂面を浮かべている。
ダックスフンド系の犬耳を持つ窃盗団のメンバー。
耳は可愛い。
しかし、つり上がった眉と少し尖った唇から、勝気な雰囲気を感じとった。
双眸はくりくりとしているから可愛いけど。
血獣隊のサザーの姿を思い出すが、性格は正反対かな。
さて、
「ロロ、今、葉を取ってやる」
「にゃ、にゃぁん」
黒豹も無邪気な嬉しそうな声を発して、二本の後脚を使い立ち上がった。
後ろ脚が少し震えているところが、また、可愛い。
そして、口からピンク色の舌を鼻先へと伸ばす。
俺も腕を伸ばした瞬間――。
鼻に付着した輝く枯れ葉は、囁くような葉音を立てる。
輝く枯れ葉は、俺と黒豹の行動を読んでいたように、鼻先から優しくふんわりと浮かびながら離れた――。
何だ? 意識ある葉なのか?
すると、輝く枯れ葉から、チカチカとした黒と白の点滅した閃光が生まれ出る。
黒と白の閃光の一部は、瞬く間に宿り木のように形を変えた。
宿り木はくるくると旋回。
旋回し湾曲した宿り木は縦縞の線を出す。
そして、その縦縞の線を囲うように黒色の輝きを放つ額縁のような四角い枠に変化を遂げた。
「これは……」
驚いたジョディ。
大きな鎌刃を持つ長柄を片手に出現させる。
その大鎌を振るいながら、身を捻り半身の姿勢で武器を構えた。
腰元のフムクリの妖天秤が揺れている。
「きゅ」
ジョディの肩に移動していたイターシャも、胸元から銀色の針、もとい、銀色の爪楊枝を伸ばす。
「ほぅ……」
と、エルザが感心するように呟きながら、大剣に手を当てている。
そして、外套からガントレットで覆う左腕を出していた。
さらにアウトローマスクの首元から飛び出ている蛇のような魔布たちが、アリスの周囲を囲っている。
「わぁ……はっぱさんが、黒い木になって四角い形になった!」
守られているアリスは幼い手を伸ばし、普通に興奮。
「枠の前の樹は、失われていた……小月の方樹槍? まさか、ウリ……」
ハイグリアが小声で呟く。
黒色の枠に形を変えたが、寄り木のようなモノを知っているようだ。
「閣下、あれは……」
ヘルメも驚いている。
「にゃお~」
黒豹は普通に鳴いている。
しかし、暁闇の宙に……。
輝く黒色の木枠が現れるとは……。
ややメタル色の強い黒色の枠の中は、テレビの走査線のような縦縞模様がみっしりと詰まっている。
その縦縞を見透かすように黒色の枠の中を凝視していると……。
まだ残っていた輝きを発していた枯れ葉は、自らの白と黒の閃光に飲まれるように消失。
枯れ葉を飲み込んだ白色と黒色の閃光は、黒枠の中心点へと集中する。
その途端――。
黒枠の中から淡い色合いのあぶくの塊たちが、ひしめくように浮かび現れた。
それら、あぶくの塊群は、ラクダの瘤と似た丸い膜のような不思議なモノを形成していくと、縦縞模様と重なり混ざっていく。
混ざったモノは淡い色の紙?
古い映写機の幻灯機が淡い色合いの幻想を映すような……。
そこはかとない和風の雰囲気を持った幻想的な紙芝居でも始まりそうな予感がした。
だが、まだファジーな変化が続く。
え、人型?
黒色の枠の中に淡い色合いの人の輪郭が生まれた……。
やがて、暗がりを生かすような不思議な質感を持った女性の幻影となる。
その女性は傷だらけだ……。
元々は格式高そうな緋毛氈の衣装を着ていた?
元は格式高そうな服だし、女神様?
さっき見かけた神々しい女性と少しだけ顔が似ているような気もする。
似ているが、全身に凄まじい傷が……。
一般の女性が見たら倒れちゃいそうな傷痕ばかり……。
血塗れの姿を持つ女神様のような幻影だ。
全身の傷痕と、黒色の木枠からの光景から……。
一瞬、悪夢の女神ヴァーミナのことが脳裏に過った。
だが、俺の首の傷は反応していない。
だから魔界セブドラに棲む悪夢の女神ヴァーミナの干渉ではないだろう。
胸ポケットにホルカーの欠片もさっきから揺れ続けているが、これはずっと揺れていることが多い。
欠片と、この現象とは結び付かないだろう。
傷ついた女神様のような幻影は静止画のように止まっている。
が、俄に動き出す――。
黒い縦縞の枠を生かすように、紙芝居のような質のモーションが、ゆっくりとアニメーションしていった。
飛び出す絵本のような感じで面白い。
傷ついた箇所から血が噴出するような演出も加わった。
白黒だからあまり血というリアルさはない。
が……痛々しさが凄く伝わってくる。
この女神様は、何十、何百、を超えた武器によって身に攻撃を受けたんだろうか……。
しかし、その表情は……穏やかだ。
傷を受けているとは思えないぐらい澄み切っている。
名月の心境といったように。
双眸は慈愛の眼だ。
優しく下々の民を眺めているようにも見えた。
続いて、そんな慈愛の眼を持つ傷つき弱っている女神様のような幻影のことを……。
悲しげな眼差しで見つめながら支えている神々しい女性も現れた。
この後から出現した神々しい女性は、傷ついている女神様と違って綺麗な姿だ。
あ、この女性……似ている。
さっき輝く枯れ葉から幻影を見せていた……。
あの神々しい女性の方か?
前の洞穴の方を指していた女性だ。
ということは、この新しく出現した女性も女神様かな?
傷ついている女神様と同じように格式高そうな衣装なんだが……。
半身がリサナのように透けた衣装だった。
程良い大きさの胸を覗かせている。
美しい乳頭さんから、ビームでも発射してきそうなぐらいに、立っている乳首さんが見えてしまった。
――男として、反応してしまう。
思わず、こんにちは!
と、そんな乳房を露わにした女神様の双丘さんへと心の中で、敬礼するように挨拶した瞬間――。
その女神様と、視線がかち合った。
かち合ってしまった。
雀斑が婀娜っぽい女神様だ。
その途端、女神様のような美人さんは、驚いたようにカッと目が見開く。
すぐに胸元を手で隠し、怒った表情を浮かべてから腕を払う仕草を取った――。
すると、腕の先の宙に亀裂めいたエフェクトが走ると、同時に、空間が歪んだ――。
歪んだ空間から瞬く間に、闇のカーテンが生まれ出る。
いや、闇じゃない。
星々の明るさを内包した、多次元空間の先にあるような宇宙的な何かだった。
次元軸がずれたような感じだろうか。
腕から下の空間が、闇を潰す勢いで、種々雑多な光粒子を纏った星々が誕生するような煌めきがカーテンの中から生まれ出ていく。
星がまばゆく輝いていた。
これは、腕を振るった乳首が立っている女神様の力の表れなのか?
もう、紙芝居のような色合いじゃない。
その煌めきの中に、独自魔力のような質のある虹色が混じった銀色の枯れ葉群と、三日月、上弦の月、十五夜の月といった様々な月の模様が現れて消えていった。
すると、急に落ち着く女神様。
その傷を負っていない双丘を魅せていた女神様が、儀礼的に微笑みかけてくる。
『……我の胸を見た縁を感じる混沌の王者よ。そして、ホルカーの神聖な匂いを持つ者よ。この先を……』
と、洞窟の先を指す。
女神様の指先から、銀粉のようなモノが舞い散っていた。
指を指した洞窟の先の壁に変化が現れる。
象牙のような色合いを持つ長柄らしき物が壁から生えるように突き出てきた。
槍が埋まっていた?
そうした不可思議な現象が続いた瞬間、
『ウォォォン、ウォォーン、ウォォォン』
野性味ある狼の連鎖した鳴き声が響くと二体の女神様の幻影が消失した――。
黒豹も狼の音が聞こえたらしい。
耳を立てながら動かしていた。
女神様の幻影が消えた宙を眺めている。
これも神感現象楽進の効果かな?
黒豹にも効果があるのか不明だが。
俺の称号:覇槍ノ魔雄は、こういった効果の他にもスキルのような力もある。
「にゃぉ~ん」
鼻先の輝く枯れ葉は消えたが、どこか寂し気に鳴く黒豹さん。
「今の現象は……」
ジョディもさっきからずっと驚いている。
ひくひくと頬が引き攣っていた。
「双月神ウラニリ様と双月神ウリオウ様だ。そして、神狼ハーレイア様とその眷属様の声だと思う」
神姫らしい厳しさを持ったハイグリアの表情だ。
その彼女が発した言葉に、全員が注目した。
すると、彼女の背後に、ゆらりとゆらりとした巨大銀狼の幻影が現れる。
さらに、イターシャの色合いに近い白狼たちも続々と彼女の背後から浮かび上がってきた。
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