四百九話 ルシヴァル卓球大会
ムーは寝る時間だ。
すると、ドココさんが「ムーちゃん専用の新服を用意してあげますからね。シュウヤさん、ムーちゃんのお泊まりは大丈夫ですか?」と聞いてきた。
「そもそも、ムーの自由だ」
「……」
眠そうなムーは頷くと、小さい手でドココさんの肉厚な手を掴む。
そのムーは綺麗な衣装が似合う眷属たちとサラたちが着る衣服を見て、自らの服と比べていた。ムーは眠そうだったが不機嫌そうな顔色だ。
一応は女の子か。
「ムーを頼みます」
「はい。デオゼ氏族というオーク氏族たちが身に着けていた鎧武具も見せてあげるから」
クエマとソロボの情報にあったデオゼ氏族。
手造の神ゲンオゼを信仰する一派。鎧作りと服作りに定評がある。
とキッシュたちに報告済みだ。
そうして、ムーとリデルを連れたドココさんたちは俺の家を出る。
ドミドーンさんとミエさんの博士&助手コンビもトン爺と木の実の研究をすると語り家を出た。ブッチ氏も、
「あ、ミエさん、待ってください。一緒にこの料理を――」
と、ミエさんを追いかけていった。
シェイルを寝かそうとしても寝てくれない。
一階の端にあるソファに待機させると、シェイルは床に置いた猫の人形で遊ぶ。
サナさんとヒナさんは二階で寝てもらった。
そこから皆で深夜すぎまで、久しぶりのバカ騒ぎ。
第三の腕と化したイモリザを披露しては、アドゥムブラリこと、ぶらぶらを使った卓球を教えていった。
そして、「ここにルシヴァル卓球部を設立する」と、宣言。
当然、皆『卓球部とは何ぞや?』といった疑問符を頭の上に浮かべていた。
俺は<邪王の樹>を用いたペンホルダーのラケットを使い――。
偉大な『はみちんサーブ』を教えていく。
その際黒猫が漢の大事な部分が気になったのか、猫パンチを繰り出してきた。正直、痛かったが……。
分かりやすく入念にサーブを説明したが、卓球の面白さが皆へダイレクトに伝わると……一気に盛り上がった。
そうして、【紅虎の嵐】たちと眷属たちも加わった、特別で、えっちな、ムフフン会話の混ざった楽しい卓球大宴会へと発展を遂げる。
◇◇◇◇
「おれは、ピンポン玉じゃねぇピコ!」
「――ん、ぶらぶらピコ助丸、アタック!」
ピンポン玉と化したアドゥムブラリはエヴァの振るった強烈なラケットと衝突。強烈なドライブ回転の掛かったスマッシュだ。
「――ブラァァッ」
叫び声は空気を孕んだ強烈な音波となった。
ネームスはびっくりして腕を伸ばし、家の邪界樹木の壁に穴を空ける。
そのピンポン玉は対決していたベリーズのコート内にしっかりと入り跳ね返る。
跳ね返った先はベリーズの巨大な双丘が目立つ胸元さんだ。
見事におっぱいと衝突したアドゥムブラリ君。
衣装に隠れた巨大双丘さんは、ぽよよんっとした音が響くように揺れる。
「ふふ」
ベリーズは微笑む。
アドゥムブラリは「……偽魔皇の擬三日月が潰れてしまった……我が生涯に一片の悔いなし」と語りながら、床に落ちていく。
どこでその言葉を覚えたのやら……。
しかし、偽魔皇の擬三日月が潰れたというが……。
自身の毬のような丸い体がぷっくりと膨らむと、ブーメランの飾りも風船が膨らむように元に戻っている。
「11対5で勝負ありだな」
俺はアドゥムブラリの状況を見て、うらやましいと思いながらも冷静に審判役をこなした。
「ん、わたしの勝ち」
エヴァは細い二の腕を上げてポーズを取る。
そのまま紫魔力で包んだラケットでサージロンの球を打ち上げていった。
「エヴァはラケットの使い方が上手い」
「うん、上手~。棒術を扱うだけはある!」
レベッカが天井のスレスレを行き交うサージロンの球を見上げながら褒めていた。
「ん、先生の技、フェンロン流棒術!」
エヴァがトンファーを学んでいたエルフの師匠の棒術か。
先生は綺麗な女性らしいし、いつか会ってみたいもんだ。
すると、卓球勝負のなりゆきを見守っていた紅虎の嵐の隊長サラが、
「エヴァさんの足下に穴が空いたけど、足の底に付く金属の杭を活かすスピンアタック? だとしたらエヴァさんの足は特別製ね」
耳をぴくぴくと動かしながらエヴァのことを褒めていた。
当然だ。エヴァは超能力者であり、足に冴えるターンピックを持つ。
そして、キサラも、
「お見事です」
そう喋りながら拍手をしていた。
キサラと目が合うと、微笑んでくれた。
その母性のあるキサラは黒マスクに備わる黒宝石を揺らしつつ俺の隣に座ってくる。左肩に体重を預けて寄りかかってくれた。
……いい匂いだ。
砂漠地方に伝わる〝チャンダナの香水〟だったかな。
……マスク越しの双眸だが、いつもより双眸が美しい。
磨き立てたばかりの蒼い宝石のような輝き。
キサラの体重と胸の感触を同時に味わっていると……。
今度は俺の右腕側からサラが寄り添ってきた。サラもいい匂いだ。
小さいネコ耳がぴくぴくと動いて上目遣いで見つめてくる。
「わたしは、ネームス」
ネームスも近付いてきた。が、動きは遅い。
途中でモガに「ネームス、桃栗三年柿八年、林檎はにこにこ二十五年、人生五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなりってな」と、どっかで聞いたことのある言葉が響く。
モガに話しかけられてネームスは動きを止めていた。
俺はキサラとサラの温もりという至福を楽しむ。
が、しかし……ルシェルとベリーズが睨んできた。
更に、シュヘリアとレベッカに……ハイグリアからも視線が……。
俺は気にせず卓球のことを、
「……エヴァは<筆頭従者長>だからな」
と発言。
「わたしも器用なほうだと思ったけど、完敗よ」
ベリーズはラケットをふりふりしながらそう話すと、視線を傾ける。
そんな彼女の足元には、衝撃を受けて起き上がれない素振りを見せるぶらぶら君がいた。姿を元に戻したアドゥムブラリ。
ベリーズが気付いていないと思っているのか。
足の匂いを嗅ぐような奇妙な動きを繰り返しては……。
「ふがふが」
と、音を立てていた。
そんな怪しい単眼球のいやらしい行動を見てもベリーズは嫌な顔一つせず。綺麗なお姉さん風に妖艶な笑みを湛えながら「大丈夫? ピコ助君」と、優し気に語りかけていた。
「大丈夫だって、シュウヤの紅ピコ助は、亜神の攻撃を喰らっても死ななかったし」
「くぅぅ、あれは痛かったんだぞ……主のぐりぐり並にな?」
「ん、でも、おっぱいに喜んでぶつかってた。シュウヤのエロを継いだ?」
「ぶらぶらエロピコ魔王に改名しよっか?」
今度はレベッカが命名。トロピカルで、トロピコって感じだな。
カリブ海の孤島でメキシカン帽子をかぶったアドゥムブラリの姿を思い浮かべる。
手はないが、燦々とお日様が当たるビーチに寝そべりながらジュースを飲む単眼球の姿は……似合うかもしれない。
「ふふ、いいですね~。あっ、わたしの足にも……」
ルシェルの足にも擦り寄るアドゥムブラリ。
「えい!」
と、掬うように蹴ったルシェル。アドゥムブラリは宙に上がった。
宙でヘルメに捕まるアドゥムブラリ。
「アドゥム・ピコ助・エロピコ魔王・ぶらぶら丸・ブラリ。閣下の眷属候補に手を出してはだめですよ」
「……ふざけろ、ふざけろ、フザケロヨ! 俺の名前はそんなに長くない! 嘗ては上流家庭の生まれだったのだぞ」
興奮して言葉が変なアドゥムブラリ。
「分かったから、落ち着け」
「主、すまん。美女を見るとつい、な……空の王者アムシャビス族はモテたのだ……」
「へぇ、モテモテか」
「そうなのだ。俺のアムシャビスの紅光は……紅い流星。魔界では俺の固有魔法によって子守歌が作られていたんだぞ」
虚勢を張って顎を上げているアドゥムブラリ。
ヘルメの手から離れた。
背中の小さい翼をはたはたと動かして、飛翔していく。
紅い流星というように、三倍へと加速しているわけではないが、かわいらしい。
そのまま笑っていたシュヘリアの頭部近くに飛んでいく。
「わたしに何か用か? エロ玉殿」
「くっ、お前まで新しい名を……これでも俺は、乾いた硬質な空気を作れる魔侯爵だったのだが!」
「べらんめぇ! 威勢のいいぶらぶらの玉だ。で、騎士といえばシュウヤ。お前の沸騎士たちをこの宴会に呼ばないのか?」
モガはトン爺の料理を食べながらそう質問してきた。
焼きそば風の縮れた野菜を食べていたモガ。
「呼んでもいいが、あいつらも魔界で修行やらがあるし、小さいながらにも領域を持つ〝騎士〟だからな?」
すると、細長い金色の眉をピクリと動かして反応したシュヘリア。
彼女は俺と闇の獄骨騎に視線を向けてから熟考……考え込んでいた<血双魔騎士>シュヘリアは間をあけて魅力的な桃色の唇を動かすと、
「陛下の沸騎士様たち――」
頭を下げつつ俺の知らない魔界騎士らしい専用の礼儀作法を取りつつ、
「先の戦いで、お姿を拝見しました」
と語っていた。キッシュを含めた皆、今のシュヘリアの動きに注目した。その注目を受けた凛々しさを持つ<血双魔騎士>シュへリア。
俺の騎士という言葉と沸騎士という先輩に当たる存在が気になるようだ。また視線を俺の指輪に向ける。
「……あの魔獣に乗って戦った時か。デルハウトともう一人の女魔界騎士もいたな」
『あの時の血肉じゃな? まぁまぁの味であったのじゃ』
左手の内の瞳が開くように、サラテンが疼く。
……敵とはいえ、綺麗な女魔族を殺してしまった。
「はい、名はエミリアです。戦好きの魔界騎士が満足に武器を抜くこともできず、専用魔獣ムグごと散りました。そんな彼女に加護を授けた〝暗剣の風スラウテル様〟も激怒していることでしょう」
初耳だ。暗剣の風とか聞くと盗賊とか暗殺者の神っぽい。
恐王ノクターとはまた違う系列なのかな。スラウテル様は俺を憎むか……。
『スラウテル? 知らぬ神の名じゃな。妾と同じく封じられた神かの?』
『さぁ? 血は与えないぞ?』
『フン! 器よ! 妾をなんと心得ておるのじゃ!』
昔は神界セウロス側だったとは思うが、今ではな、血肉を求める衣が似合う妖怪少女たち? と考えたが……念話では伝えない。
「暗剣の風スラウテル様か。セブドラの神もたくさんいるんだな。先ほども少し話をしたが、魔皇シーフォのような存在は他にも?」
「シーフォ様の名はあまり知らないです。神格落ちした魔界の神々は無数に存在します」
「例えば?」
「……天魔帝メリディア、魔皇ラプンツィル、狂神獣センシバル、恐王ブリトラ、欲望の王魔トドグ・ゴグ……四」
「ん? ちょい待った。メリディア? メリアディとは違うのか?」
ルビアを寵愛する魔界セブドラの神は、魔命を司るメリアディだった。
「関係があるのか不明ですが魔命を司るメリアディ様とは姿が瓜二つと言われていますね。秘宝書〝夜の歌〟に歌われた一節があるとか? 遥か昔の魔界大戦で大暴れしたという逸話もあるようです」
「次元が裂けるほどの魔界大戦は、広い地域の至るところで昔から何度も起きている。俺の地方では名が通っていたシーフォ様だが、知らない魔界騎士がいても、なんら不思議ではない。魔界も神界も広いのだ。川も山も谷も火山も闇も大全世界なのだ」
アドゥムブラリの言葉に頷く。
指輪というか指の防具に近い闇の獄骨騎を触った。シュへリアの視線に応えるように、沸騎士たちも出すとしよう。
「ん、ぼあぼあを呼ぶの?」
「呼んでみようかと」
そして、いつものように沸騎士たちを誕生させた。
「アドモスであります。閣下、何なりとお申し付けください」
「ゼメタス、今、ここに! わたしたちの敵は……」
ぜメタスとアドモスは勢いよく口上を述べるが、途中で気付く。
部屋のまったりムードに。
「ここは閣下の家……戦いではないのですね」
「しかし、眷属様たちも集結しておられる」
「そうだよ。模擬戦でもない。お前たちを呼んだのは彼女を紹介するためだ」
厳つい沸騎士たちはシュヘリアを見た。
眼窩に宿る炎の瞳は猛禽類の爪が無数に集結したようにも見えて恐怖を抱かせる。
「知っていると思うが新しい仲間となった元魔界騎士のシュヘリアだ」
沸騎士たちからシュへリアへと視線を移し、
「シュヘリア、左が赤沸騎士アドモス、右が黒沸騎士ゼメタス。この沸騎士たちは、俺の進化した魔道具と繋がっている」
沸騎士たちの前で、頭を下げて片膝を突くシュヘリア。
「ハイッ――黒沸騎士ゼメタス様、赤沸騎士アドモス様。わたしの名はシュヘリア。陛下専用の<血双魔騎士>となりました。沸騎士様、今後ともよしなに……」
「にゃんお~」
沸騎士たちではなくて、黒猫が挨拶した。
しかも、シュヘリアの肩の上に乗っている。
そのまま触手を肩と首に引っ掛けて小さい体を支えながら……。
シュヘリアの後ろに束ねた金髪へ向けて一回、二回と、左フック気味の猫パンチを当てていた。
「ロロ殿様はお気にいりのようですな」
ゼメタスの表情は分からないが、口調から笑ったようにも感じる。
「……ぅん、ぁ」
シュヘリアは肉球の感触を首筋に味わい、
ぶるりと体を震わせる。その震えを助長するように、細い項にお豆型触手がくっついた。シュヘリアは、くすぐったいのを我慢するように悩ましい仕草を取る。
「シュヘリア殿! 我らこそよろしく頼む。だが、閣下の守りは我らの担当!」
目の保養となったが、沸騎士たちには関係がない。眼窩に宿る炎を拡大させるように凄まじい気迫を見せつけながらの喋り声だ。
「私もアドモスと同様だ! 〝閣下防衛骨甲陣〟の要の右前衛の位置を譲る気はない」
位置が決まっていたのか。
閣下防衛骨甲陣という戦術があるらしい。
「しかし、シュヘリア殿は偉大な閣下の魔力と血を引く。閣下直属の魔界騎士」
「ふむ。ゼメタスと同意見だ。しかし、だ」
「然りアドモス。わたしたちも〝沸騎士〟、負ける気はない……」
ゼメタスとアドモスは、はもりだした。
「ふはは、そうだ。「我らは!」「らは!」閣下の「沸騎士である!」である!」
重低音がはもって重なり、独特のアカペラ音楽のようになっている。
「おう! 魔界八将が敵になろうとも」
「閣下の前に立ちふさがる敵は塵と化す!」
俺の左右の位置に仁王のように立つ沸騎士たち。
「素晴らしい動き。まさに、インペリアルガードと呼ぶべき存在ですね」
してやったりと、ニヤリと笑みを浮かべるヘルメさん。
彼女の考えていることは……だいたい想像が付く。ヘルメの野望とか?
尻のポーズの完成度とか……たぶんどちらもか。
沸騎士たちの挨拶が終わったところで、
「……沸騎士様に後れを取らぬように務めを……」
後ろ髪が叩かれて気になっているシュへリアだったが、沸騎士たちに丁寧な挨拶をした。すると、夢中になって叩いている黒猫の姿に萌えたレベッカが、
「ロロちゃん! わたしも金色の髪なんだから!」
「あら、わたしも金色の髪。そして、レベッカさんより長いわよ?」
ベリーズはレベッカの髪から胸元に……視線を向ける。
互いに冷たい視線を合わせていた。空気が凍るような少しの間、が……また、何とも言えない。レベッカの冷たい目とベリーズの勝ち誇った目が衝突した……指摘はしない。ルシェルとサラは笑っている。
モガは見て見ぬふりをしてネームスの足に生えた葉を弄っている。
「ん、ロロちゃん。後ろに纏めた髪型が好き?」
エヴァがそんな空気を壊すように両手を膝頭に当てながら黒猫にキスするような勢いで体勢を前にかがめる。
冷戦を繰り広げていたベリーズとレベッカもエヴァと同じポーズで黒猫を見た。そのベリーズは襟付きの革と絹を合成したような洒落た衣装を着ている。肩の防具のパーツが老舗ブランドが手掛けたようなアンティーク調。弓戦士として戦える服だ。
黒猫も彼女たちへと顔を向けた。
「ンン、にゃ?」
不思議そうに鳴いて『何だにゃ?』というように頭を傾ける。
そして、プイッと頭部を横に向け再びシュヘリアの金髪へと視線を戻す。
揺れているシュヘリアの纏まった髪の方が気になるようだ。
黒猫はそのまま、天井に吊るしたパンチングボールを連続で打つように金色の髪へ向けて連続パンチを繰り出していった。
俺はエヴァとベリーズの膨らんだ双丘さんを注目。
まずはベリーズ。彼女のデコルテから続く魅力的な白い乳房さんは圧倒的な存在感を放つ。その乳房の上部分の皮膚には血管が浮き出ていた。
――素晴らしい。思わず巨乳の神にお祈りを捧げるようにベリーズを拝んでしまった。続いてエヴァの胸元にも視線を向ける。
胸元の乳房がくっきりと浮かぶ服を留めている釦が弾け飛びそうだ。
こちらも素晴らしい……が、今はエロタイムではない。
沸騎士とアドゥムブラリにシュへリアがいるんだ。
魔界のことを語ってもらうとしよう。
「……沸騎士たち。魔界での状況を簡単な範囲でいいから説明を頼む」
「はっ、現在、我らの小さい領域は、グルガンヌから離れた東南地方、ソンリッサが屯する滝壺がある場所の……更に奥地にあります」
沸騎士の言葉に続いて、シュヘリアも、
「……グルガンヌの東南地方と言いますと、魔公アリゾン公が治める領域」
「地獄火山デス・ロウから、だいぶ離れているな」
黒猫に怯えて黙っていたアドゥムブラリも、シュヘリアに合わせたように呟く。額からAの文字は消えていた。時間によって消えるのか。
そのアドゥムブラリ。何かを思い出すように……単眼球を左斜め上へと向ける。重そうな瞼を閉じては、開く。コミカルな単眼球と口だが……。
その表情には渋さがあった。魔侯爵だった頃の面影が少し見えた気がする。
彼と契約した時にも話をしたが……もし順調に魔界への進出が成功したら……アムシャビス族として過ごしていた故郷を目指すのもいいかもしれない。
名前的に死神ベイカラと関係がありそうな地獄火山デス・ロウや魔大竜ザイムには興味がある。魔界セブドラ自体に興味があると言えばいいか。
「瞼が重いぜ……魔力を補給だ、主」
珍しく早口を止めたアドゥムブラリは静かな口調で、そう語ると……。
紅玉環の指輪に戻った。この指輪を装備し続けたら<早口>が覚えられる。
覚えたら魔法書を買うとしよう。どのくらい時間が掛かるのか分からないが。そこから黙っていたハイグリアとキッシュを含めた皆とサイデイル村の方針を話し合っていく。モガ&ネームスは家に帰り沸騎士たちにも魔界に帰ってもらったところで……。
「さて、シュウヤ。今日はここに泊まるが……」
女性陣たちの中で一早くキッシュが宣言、キッシュの小振りな唇はいつ見ても魅力的だ。すると、偶然かキッシュの視線の先に彼女の妹のラシュさんが浮いていた。勿論、幽霊だ。半透明でもない。ほぼ透明なラシュさんを俺は見られる。中に浮くラシュさんは、俺にウィンクを寄越す。
彼女も俺に触ることはできない。そのあとは……。
紅虎の嵐の女性陣と眷属たちとの、イチャツキタイムとなった。
ロロディーヌが呆れるか分からないが……ラシュさんは確実に呆れている。
烈しい一夜は過ぎていく。幸い、この惑星の夜は長い。




