三百五十七話 空旅※
2022/5/4 17:44 修正
棚引く雲を裂くような陽の光が暖かい――。
相棒は速度を上げ、雲を抜けて空を駆けた――風が気持ちいい――。
肩の竜頭装甲を意識し、防護服はタンクトップに変化させた。肩のハルホンクも小型版になっている。
この美しい蒼穹と涼しい風は最高だな。
一氣に気分爽快、今まで鬱蒼とした樹海が多かったからなぁ。暖かい陽もいい!
背後から、
「あの巻き毛はどこかで見たことが……樹海のボルチッドかな? 珍しい……」
ハイグリアの声が後ろから聞こえるが、特に反応しない。
皆を乗せてゆっくりと飛行する神獣ロロディーヌと共に空の旅を楽しむ。
そして、相棒も『ぽかぽか』、『あったかい』、『そら』、『すき』と、ほのぼのとした気持ちを伝えてくれた。
「あぁ、暖かくて気持ちいい」
「ンン――」
太陽の神が俺たち全員に祝福の光を送っているようだ。
そうこうしているうちに、右の雲から漏れた光が粒子状に変化し、淡い虹を描く。
美しい虹と雲。虹は屈折してきらめき、雲は色とりどりに変化した。
右の雲から漏れた光が分散し、淡い虹が造られた、美しい虹と雲だ。
虹は屈折しながら煌めく。雲の色彩が淡く輝きながら陰影が深まると神々しい光を放つ女性の頭部が浮かぶが、すぐに消えてしまった。本当に太陽神が俺たち全員を祝福してくれた? 暖かい光に美しい女性だった。
しかし、今の女性の頭部、顔に変化した不思議な雲は、俺以外誰も気付いていなかった。神獣のロロディーヌでさえも気付いていない?
……相棒は違う方向を見ていた。すると、相棒が見ていた空間が湾曲し、不自然な光景が……なんだ? 怪物と黒髪の女性? え? ミア?
あ、消えてしまった……。
闇鯨ロターゼに乗って飛んでいるキサラも気付いていない。
神のような幻影も、一瞬現れたミアも、だれも気付いていなかった。
……不思議な現象が続く。
ミアの方は慌てた様子だったが杖を持っていたし……。
あれは現実じゃないのか?
俺はシェイルの死蝶人から変な影響を受けていたりするんだろうか。
それともシュミハザーの血を飲んだ影響か?
わからないが、女神の方も幻?
消えた女神は三日月の冠を被っていた。長い白髪に一対の短い鹿角も……。
白い魔眼から続く筋が通った高鼻は誇らしげだった。
胸元が開けた白ローブと、袖から出た長い両手の掌。
その掌の上に、ミニチュアの惑星と月が浮く。
自然と雲と溶け合うように儚く消えゆく女神の姿か。
この世界は混沌に満ちて非常に危険だが……同時に美しく儚いモノを内包した素晴らしい世界なんだ。
と、強く認識した――前髪が揺れる。
風だ。心地の好い向かい風が全身を駆け抜けていく。
そこにロターゼの姿が視界に入る。
勿論、その闇鯨ロターゼに乗ったキサラも一緒だ。
乗ったというより、キサラはロターゼの額の上に腰かけている。
最初に彼女を見た時と似たスタイル。
足を組んだ「考える人」のポーズだ。
パンティーが見えそうで見えない。
神獣ロロディーヌを、いや、俺を守るようにキサラとロターゼは飛んでくれていた。
そして、彼女の熱情を感じさせる蒼い視線はずっと続いている。
まぁ、黒マスクが似合うキサラの忠誠は受け入れたからな。
「勝手にしろ、己の自由だ。今は帰還を急ぐ」
と冷たく言っただけで帰還を優先させた。
彼女はその時に「はっ」と丁寧に抱拳して頭を下げていた。
しかし、背後がうるさいなぁ。
と、触手綱手を持ちながら振り向くと……。
小熊太郎がいた。
魔法の衣はもう解除しているが、相変わらず小熊である。
「ぷゆゆ!」
と、捻れ杖を掲げたぷゆゆだ。
ロロディーヌの背中に乗っている皆へ挨拶をしていた。
そして、全員が何をする間もなく……。
ぷゆゆは、謎のモガ&ネームスと意気投合。
ま、モガはペンギンのような見た目だ。
ぷゆゆの見た目も小さい熊、テディベア、動く着ぐるみダンサーだからな。
特にネームスと仲良くなった。
ネームスはゆっくりとした動作で、自分の頭部をぷゆゆに寄せる。
そのぷゆゆは巨大なネームスの頭部が近付いてきても警戒もせずに、
「ぷゆ! ぷゆゆゆ~」
と、言葉を投げかけてから小さい手足でネームスの頭部に抱きついていた。
ネームスの双眸であるクリスタルの瞳が気に入ったか?
抱きつく仕草がテディベアのようでマジ可愛い……。
ぷゆゆは軽快な足取りで小さい足を交差させてから、飛び跳ねるようにネームスの肩へ乗り移っては、
「――ぷゆゆぅ~」
と、ネームスの肩に乗りながら話しかけていた。
そのまま岩の塊にも見える項部分を小さい足でトコトコと歩き反対の肩へ向かう。
「わたしはネームス!」
ネームスは肩を揺らしながら頭部を傾ける。
瞼に生えた木枝が重そうなクリスタルの瞳をぱちぱちさせながら、ぷゆゆを追う。
ネームスは肩に刻まれている楓の文字を見せたいのかな。
楓さんも大変だな。
内心『楓という名前なのに、わたしはずっとネームス……』
と、考えていたりするんだろうか。
だとしたら可哀想だ。
あの様子だと、今までずっと「わたしはネームス」しか喋れていないはずだ。
巨大な腕で、地面に文字を打ち込もうとしても、細かい操作は難しいようだし……。
そんなネームスは、クリスタルの瞳の瞼がゆっくりと閉じて開いている。
さらに体をゆっくりと揺らして、ネームスなりのアピールをしていた。
あのコミュニケーションがぷゆゆに理解ができるかどうか。
瞼を閉じて開くのモールス信号とか?
まぁ、仮に転生者だとしてもモールス信号を覚えている人なんてそうはいないか。
「ぷゆ?」
「わた、しは、ネームス」
「ぷゅ! ぷゆぅ~ん」
と、謎の会話を繰り返す。
そのあと、ぷゆゆはネームスの太い足に興味を持った。
捩じり杖の柄頭でネームスの足を興奮して小突き出す。
すると、モガが怒り出し、ぷゆゆと喧嘩を始めてしまった。
そこにハイグリアが反応。
「くるくる毛の樹海獣人! 喧嘩はよくない! ここは空中で神獣様に包まれているとはいえ、身内の争いは旧神たちを呼び寄せてしまうぞ」
ぷゆゆはボルチッドという名の種族らしい。
ま、小熊だが。
古代狼族は旧神ゴ・ラードやオークたちとも争いがあるらしいからな。
「女獣人、声がでかい」
「ぷゆゆぅ?」
「う、そんな目で見つめてくるな……毛が」
ハイグリアはぷゆゆの瞳と毛が気に入ったのか瞳を輝かせながら呟く。
古代狼族らしい素早い所作で、ぷゆゆに近付く。
だが、ぷゆゆも速い、逃げ出した。
アッリとタークも逃げるぷゆゆが面白いのか、追い掛けるように交ざり出す。
飛行を続けていたロロも騒がしくなった背中の上が気になるらしい……。
触手を皆の体へ伸ばしてきた。
くすぐったり悪戯するようにかき混ぜてくる。
触手手綱を握る俺にも、悪戯触手はやってきた。
頭の毛をめちゃくちゃにしては……なぜか耳朶を優しく引っ張り離れていく。
はは、可愛い。
たぶんロロは、俺が前に耳をマッサージしたお返しのつもりだろう。
そのまま触手が全員に絡み出すと、乱闘に発展していた。
その乱闘を止めに、
「先手は万手じゃ」
と語るトン爺とインディアン風の衣装を着たバング婆が入る。
片腕と片脚だけの包帯だらけの謎の少年も参加。
無理するなと言いたいが……。
続いて、種を腰に巻き付けたドワーフと樵のエブエも駆け寄る。
余計ハチャメチャな騒ぎに……。
太ったエルフ女性が神獣の触手の感触にびっくりしたのか、
「いやぁ」
と、叫んでヒルのような舌を持つ鱗人と衝突。
鱗人の女性は飛行しているロロディーヌから落ちそうになった。
助けようとしたが、ラグレンのような大柄のマウリグが先に動く。
その落ちそうになった鱗人を太い腕で抱えるように助けていた。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうマウリグ……」
マウリグと鱗人は見つめあって、いいムードになっている。
その光景に名作「美女と野獣」の映画を思い出した。
抱き合い見つめ合う二人を見て、貧相な格好の少女リデルは微笑んでいる。
微笑むリデルは喧噪に混ざっていない。
小さい指でロロの触手の裏側の肉球のモミモミを楽しんでいた。
うん、正解だ。
肉球という小さい幸せが一番だな。
リデルとは気が合うかもと考えていると、
「小熊ァ! ネームスを小突くな! 蝶々といい、だいたい、その杖の先端の小さい怪物はなんだ!」
「わたしは、ネームス」
「ぷゆゆゆっ、ぷゆっ!」
「……言葉がわからん! あ、噛み付いてるだと! まさかネームスの足をヘンテコな杖の素材にしようと目論んでいるのか?」
「ぷゆ?」
「そんなくりくりした目で、頭を傾げても、俺は騙されねぇぞ! その可愛い小熊の下には、凶暴な王熊ギュオンダンが潜んでいるに違いねぇ!」
「ぷゆゆっ!」
モガの語るギュオンダンとはなんだ。
S級とかA級の熊型モンスターか?
「――んおお、俺にまで杖をむけてくるな! うああ、小さいモンスターを出す気じゃあるまいな! んな、蝶々だと!? ネームス、俺を助けろ!」
「わ、た、しはネームス」
「ぷゆゆゆゆ~」
「あ~、小熊ァァ、またネームスの足に! 博士と助手のドワーフみたいに、ネームスの腕と足を切ろうとしたら、このシジマ街で慣らした、文字通りの鳴剣で泣かすぞ」
モガの洒落か。
巫山戯ているのか、本気なのか分からない。
勢いだけなら、ぷゆゆと決闘でもする雰囲気だ。
だが、ペンギンと小熊が争う姿は面白いかもしれない。
そして、モガの身に着けている胡桃色の羽織りは似合う。
彼のサイズに合わせるような特注品だろう。
その歌舞伎風の小さいモガとの会話を思い出した。
今から少し前。
ロロディーヌで空へ上がる直前のことだ。
◇◇◇◇
「シュウヤ、そう帰還を急ぐなってばよ! あそこに突き刺さっている業物の剣、お宝を忘れているぞ」
「あれか。欲しいのか?」
「いや、いらん。知っているように俺とネームスはもうお宝満載だ」
そのアイテム群は気になるところだが、俺に鑑定は無理だしな。
「そっか」
「シュウヤが身を挺してがんばった結果の戦利品だぞ」
「戦利品か、そういうモガの目つきが……」
「おい、俺たちは冒険者仲間だぞ。【剣王モガとネームス】の名を忘れてないか? それに恩人のシュウヤの報酬をぶんどるような真似はしない」
真剣な表情だ。
『俺は焼き鳥じゃねぇ』と凄んでいた言葉を、ペルネーテでのやりとりを思いだす。
だから本気だろう。
「……巨人シュミハザー曰く、魔剣シャローという名がつく魔剣らしいが、俺はもう神剣サラテンを手に入れたしなぁ」
「欲がねぇ男だ。拾わねぇなら俺が拾っておく。だがもらいはしねぇ。試させてもらうだけで、あとで返すからな?」
と、モガが話をしたから、
「おう、いいぞ」
と了承。
モガは岩に刺さった魔剣の柄頭を掴んで引き抜く。
剣身に紫色と黒が混じっていた。
モガは鼻がひくつく。
「何か匂うな、この剣……」と呟くモガ。
大事そうに抱えた瓶盥の箱の中へその匂ったと語る魔剣をしまう。
◇◇◇◇
と、思い出している間にも、モガとぷゆゆの喧嘩は続く。
ハイグリアと子供たちも加わった。
そして、側にいたトン爺が、
「この預かった石のような種と単眼の丸っこい樹木は、料理に使えるのかのぅ」
イグルードと魔侯爵君を、料理の素材にどうか?
と、トン爺は俺に聞いてきた。
イグルードの種は、石状態なのか、沈黙を続けている。
だが、魔侯爵アドなんたらのほうは、恐怖を感じたらしい。
樹木で押さえた口元を一生懸命に動かしつつ逃げだそうとしている。
「トン爺、それは大事なもんだ。一見は団栗に見えるが、食べ物じゃない。あとで俺が直に調べるから、ちゃんと持っててくれ」
「了解した。英雄の大事な物だ。わしの命よりも大事に扱おう」
恐縮したように見えるトン爺。
哲学好きのトン爺の姿を見ると、こっちまで恐縮してしまう。
と、そんな会話中も周りはうるさい……。
ざわざわ、わーわーわー、あーあー、ぷゆゆーっと。
もう、はちゃめちゃな喧噪が続く。
ということで、皆の会話は無視だ。
俺は相棒の触手手綱の握りを強くした。
空にはモンスターが多い。
だから、冷静に空を移動するタクシー運転手を目指すんだ。
ま、俺は俺で空の景色を堪能しつつ内実は……。
キサラの美しい姿を満喫していた。
彼女のすらりとした美しいモデル足は目の保養になる。
それに、太股が見え隠れするのがいい。
美女と青空の組み合わせは最高だな。
と、空旅を楽しんでいく。
さぁて、そろそろキッシュの村に着く頃合いか。
眼下に馬のような突出した岩が見えれば……すぐに分かるはず。
【馬崖岩】という名だっけか。
と、その岩を探そうと下を見るが……。
まだ見えない。
ま、このままロロディーヌに任せて飛行していれば、すぐに着くだろう。
んじゃ、この間に、スキルの確認と能力のチェックをしとくか。
ステータス。
名前:シュウヤ・カガリ
年齢:23
称号:亜神封者ノ仗者new
種族:光魔ルシヴァル
戦闘職業:霊槍血鎖師:仙技見習い
筋力25.6→26敏捷25.8→26.3体力23.6→24.0魔力28.9→30.1器用23.4→24.1精神31.3→31.8運11.6
状態:普通
シュミハザーとイグルードに魔侯爵君と戦ったし、そりゃ上がるよな。
忘れずに<鎖>のマークが変わった称号をタッチ。
※亜神封者ノ仗者※
※水神の加護と亜神グラースの欠片が融合した者※
※時空系魔法効果微上昇、超異現象歩進、全ての成長補正+※
水神の加護とグラースの一部を吸収した結果か。
そして、前にも一度見たが、戦闘職業の<霊槍血鎖師>をタッチ。
※霊槍血鎖師※
※是空霊光の槍法を歩む槍武人※
※超複雑怪奇な条件を達成後に覚える希少戦闘職業の一つ※
※嘗て、空谷無音の槍魔術師と言われたアーソロス・フォルトナーが獲得した<霊槍使い>系に連なる上位の戦闘職業※
※愛の女神アリアに恋をした<光ノ使徒>が一人の霊王チリムの霊槍が装備可能※
※融通無碍の精神は周りに畏怖の念を抱かせるだろう※
空谷無音の槍魔術師のアーソロス・フォルトナーとは誰だよ。
前にも『〝魔軍夜行〟を、ただ一人生き延びた伝説の魔槍騎士デラハ・ヴェルゼイが最初に就いていたとされる幻の戦闘職業である』とかあったが、似たような感じなのかな。
一応、表示されるか分からないが――。
アーソロス・フォルトナーをタッチしてみた。
※アーソロス・フォルトナー:聖戦士に分類される英雄※
※イギル・ブラッディとは従兄弟※
お、表示された。
だが、これだけだ。英雄の人物名だけか。
昔どっかで聞いたか見たような気がしたが、女神アリアなら分かる。
そんな女神に恋をした霊王チリムとやらの霊槍が装備可能なのか。
愛の女神アリアといえば、だ。
ヘカトレイルの近郊にある迷宮の一つ、ペル・ヘカ・ラインの依頼を一緒にこなして冒険をしたスコラたちはどうしているかなぁ。
ドワーフのイグと虎獣人のアルベルトのコンビも気になる。
スコラたちは【アリアの放浪者】のクランへと誘ったんだろうか。
皆、元気だといいが……。
さて、次はスキルだ。
スキルステータス。
取得スキル:<投擲>:<脳脊魔速>:<隠身>:<夜目>:<分泌吸の匂手>:<血鎖の饗宴>:<刺突>:<瞑想>:<生活魔法>:<導魔術>:<魔闘術>:<導想魔手>:<仙魔術>:<召喚術>:<古代魔法>:<紋章魔法>:<闇穿>:<闇穿・魔壊槍>:<言語魔法>:<光条の鎖槍>:<豪閃>:<血液加速>:<始まりの夕闇>:<夕闇の杭>:<血鎖探訪>:<闇の次元血鎖>:<霊呪網鎖>:<水車剣>:<闇の千手掌>:<牙衝>:<精霊珠想>:<水穿>new:<水月暗穿>new
恒久スキル:<天賦の魔才>:<光闇の奔流>:<吸魂>:<不死能力>:<暗者適応>:<血魔力>:<魔闘術の心得>:<導魔術の心得>:<槍組手>:<鎖の念導>:<紋章魔造>:<水の即仗>:<精霊使役>:<神獣止水・翔>:<血道第一・開門>:<血道第二・開門>:<血道第三・開門>:<因子彫増>:<従者開発>:<大真祖の宗系譜者>:<破邪霊樹ノ尾>:<夢闇祝>:<光邪ノ使徒>:<仙魔術・水黄綬の心得>:<封者刻印>new:<超脳・朧水月>new:<サラテンの秘術>new
エクストラスキル:<翻訳即是>:<光の授印>:<鎖の因子>:<脳魔脊髄革命>:<ルシヴァルの紋章樹>:<邪王の樹>
最初は攻撃スキルをタッチ。
※水穿※
※水槍流技術系統:基礎突き。上位系統は亜種を含めれば、数知れず※
※<刺突>系に連なる槍スキル。水の属性が付加され物理威力が上昇。水場の環境に限り体躯の踏み込み速度も上昇※
水槍流? 風槍流とは違うのか。
アキレス師匠からは王槍流、豪槍流、風槍流しか聞いてないが。
タンダールの武神寺にはそんな流派が?
ま、武神寺に存在しなくても、南マハハイム地方以外にそんな流派が存在するということだろう。
続いて、この技をタッチ。
※水月暗穿※
※<超脳・朧水月>が作用した独自槍武術:上位系統亜種※
※感覚と速度が増す、異常な踏み込み速度だからこそ可能な低い体勢からの上段足刀を交えた円月槍技法。連携の蹴りは途中でキャンセルが可能だが、その分、<水月暗穿>の威力は落ちる※
独自か、俺の閃きから生まれた蹴りと連動した攻撃技。
次は<鎖>系。
※封者刻印※
※霊体を<鎖>で封じる能力上昇※
※他の<鎖>系能力の微上昇効果も持つ※
<鎖の念導>とかも効果が上がったのか?
さっきの三節棍や大盾を含めて、<鎖>のイメージの組み上げ速度が上がったような気もしていた。
派生元のエクストラスキル<鎖の因子>をタッチ。
※鎖の因子※
→特殊派生破甲<血鎖の饗宴>
→<鎖の念導>
→特殊派生破突<光条の鎖槍>
→<因子彫増>
→特殊派生血探<血鎖探訪>
→特殊派生血闇<闇の次元血鎖>
→特殊派生血光<霊呪網鎖>
→特殊派生刻印<封者刻印>
→????
<鎖の因子>はすげぇ。
スキルが覚えやすいのか?
さぁて、次だ。
※超脳・朧水月※
派生元を見てみよう。
エクストラスキルの<脳魔脊髄革命>をタッチする。
※脳魔脊髄革命※
→<脳脊魔速>
→<超脳・朧水月>
→????
ちゃんと、切り札の下に追加されてある。
※超脳・朧水月※
※獲得条件に<超脳魔軽・感覚>が必須※
※更に視覚完全不可状態、水属性、高能力値、高精神耐性、水神の加護<水の即仗>に同系統初期スキル<暗水無月>が求められる※
※恒久スキルだがスキルと同じ感覚で使用可能※
※(信仰の度合いで)意識すれば、足裏に水の儀仗(信仰)が発生し、回避性能上昇※
※また、水場限定で感覚・身体回避性能が飛躍的に上昇し残心も昇華※
※水神アクレシスの幻影が時折、登場する場合もある※
回避技か。
身体速度が上がるんだろうし、やはり<脳脊魔速>に似ている。
そして、水神様……。
すまんが、俺はおっぱい教の教典を心に持つ。
神の摂理を知る者だと自負がある。
膨らんだ乳から小ぶりな乳まで、万国共通に至福なことをしたいと考えているエロなんだ。
それでもいいなら信仰を続けるが……。
その瞬間、ヘルメじゃないが、足裏から変な水が発生したような気がした。
……が、気のせいか。
最後はこれだな。
※サラテンの秘術※
※掌に傷を生む、神界から地上に堕ちたサラテンが主と認めた者の証拠※
※高能力値or<投擲術>or戦闘職業:<魔技使い>系統の高い熟練が必須とされる※
※シークレットウェポン系秘術:秘宝神具サラテン剣の操作が可能※
意思があるのか分からないが、俺はサラテンに認められたんだな。
キッシュのサイデイル村まで、まだ時間が掛かる。
その間に、このサラテンの傷がある掌でもチェックするか。
秘術とやらを少しだけ確認しちゃおっと。
そんな軽い気持ちで、掌の中に納まった神剣サラテンを意識しながら……。
俺の新しい運命線ちゃんはどうなったのかなーと掌を見る。
カザネが手相を鑑定したら驚くかな?
すると、掌の傷がゆっくりと開いていく。
閉じていた仏の瞼が開くような動き……だっ――イテェェェェッ!
――神剣が飛びだしてきやがった!!
髪が切られたどころじゃねぇ。
痛い……額の一部から頭蓋を削っていきやがった……。
おかげで、目の前が血で真っ赤だ。すぐに一部の血は吸収し、傷は回復したが――。
「ひぁぁぁ」
「しゅ、シュウヤ様の頭がぁぁ!」
というか、ハイグリアが悲鳴を、飛んでいたキサラが闇鯨を蹴ってすっ飛んできた。
魔女槍も宙に投げていた。
その魔女槍はロロディーヌの炎を弾いた時と同じく、防御フィールドを周囲に展開させてキサラの後から宙を移動してくる。
しかし、周りも血塗れなので唖然としていた。
すぐにすべての血を吸収、神獣ロロディーヌの背中の上で繰り広げられていた喧噪したハチャメチャな空気が一変して静かになったが、すぃーんとした空気。
サラテンが飛翔している空から吹く風が冷たく感じた。
相棒の触手と黒毛が風で揺れていく。
ハイグリアとキサラは動揺してるのか、俺の視界を埋めるように頭部を確認してきた。
髪の毛の再生速度は遅いから余計に傷があるんじゃないかと心配したような二人。
もう血はないが、なでなでと俺の頭部を触りまくり、確認してくる。
なんかハイグリアは抱きついて体をこすりつけてくるんだが……。
キサラはグレートサスケではない、グレートなおっぱいで俺の二の腕を挟むと、上下させてくる……。
更に、ぷゆゆが俺の足に、頭にネームスがクリスタルの瞳を寄せてきた。
クリスタルの瞳から涙が零れ落ちる。
心配してくれているのか?
ネームスはそのままゆったりと動き、皆に囲まれている俺の血濡れた頭を拭くように巨腕を当ててきた。
少し痛い気もするが、これはこれで……気持ちがいいかもしれない。
だが、キサラだ。俺の腕を挟む巨乳の感触がたまらん……。
砂漠の薔薇を感じさせる花系の匂いと白檀が混ざったような、香り。
「いい香りだ」
「……ふふ、シュウヤ様、これはチャンダナの香水です」
「へぇ」
上目遣いのキサラ。
黒マスクに備わる黒宝石が揺れながら覗く蒼い双眸が、また、いい!
キッシュ、すまない……。
キサラの巨乳さんに埋没するかも。
……は、これが、第二次ハーレム大戦ということか!?
そんなエロ刹那――グアァァァァァ。
壮大な痛みのツッコミが――。
ハイグリアの銀爪?
いや、違う。ハイグリアは興奮して匂いつけに必死だ。
痛みの元は肩。肩に神剣サラテンの刃が……。
上空を飛翔していた神剣サラテンが戻ってきたのはいいが……。
俺の肩に突き刺さってきた。
なんなんだ、サラテン!
掌にもどるべき孔があるだろうが。
というか空中でキサラに蹴られた闇鯨にもサラテンは刺さっていたらしい……。
闇鯨ロターゼが「また孔が空いた……」と哀し気に呟いていた。
「ロターゼ、すまんなー」
「ふん……キサラの主様だからな、我慢する……」
闇鯨ロターゼ。
巨大な額の端に黒い血管の筋が浮いている。
本当に我慢しているらしい。
見た目はマッコウクジラで潜水艦って感じだが、実はいいやつか?
しかし、このサラテン君、さんか、わからないが……。
ある程度の操作は可能だけど、コントロールが上手くいかない。
未知の感覚……。
近未来に例えるとドローンを操る感覚といえばしっくりとくるかもしれない。
こりゃ扱うのに苦労しそうだと、抱きついている皆を優しく引き離してから、再び、そのドローン的な神剣サラテンを肩から引き抜く。
「シュウヤ、また血が。でもその剣はいったい……」
「神剣サラテン。シュミハザーが持っていた物。見ての通り扱いに苦労している」
「――あぁん、美味しい……そのホフマンを含めてシュミハザーたちと戦ったので知っています。運命を斬り作るといわれている神剣……うふん……運命神に傷を与えたと聞きました」
キサラは俺の飛び出た血の<血魔力>を指で掬い舐めながら語る。
光と闇の属性が濃い光魔ルシヴァルの血を好むか、恍惚とした表情を浮かべて舌で丁寧に指を舐める仕草はエロい。というか吸血鬼みたいだが、違うんだよな。
ま、詳しい話は後だ。運命神アシュラーに傷を与えたサラテンを見る。
「これが神に傷を……」
説明に神界堕ちとあったのは事実か。
元は神界にあったアイテムなのかもしれない。
キサラに、
「……あぁ、その曰くなサラテンに、俺は認められて秘術を得た」
と、発言してから、その神剣サラテンを意識。
すると、サラテンは手元から勝手に離れて空に飛翔していく――。
視界はないから感覚だけでの操作……。
こりゃ、難易度が高すぎる……。
魔線を必要としない導魔術に近い操作感覚。
そんなサラテンの訓練をしながら、ゆっくりと飛行を続けた。
途中の食事は俺とトン爺が担当。
トイレやらなんやらは、その都度、地上に降りて済ませた。
それから数日。
「ンン、にゃおお~」
やっとキッシュの村に着いたらしい。
神獣ロロディーヌが『着いたにゃ~』と鳴く。
旋回を始めていた。
どれくらい離れていたんだ?
ま、いいか。やっと眼下に馬の岩が見えてきた!
「皆ーー、着いたぞ! あの馬頭の岩の先だ」
「わ~~、空からだと綺麗ね!」
「本当だ、馬崖岩! ぼくたちの村の近く!」
キッシュの故郷。
キッシュ……子供たちを助けたぞ。
よし、今日のサラテンの訓練は止めだ。
慎重にサラテンを意識しながら掌の傷の中へ戻す……。
そこに……懐かしい魔素が急激に近付いてくるのを感じ取る。
これはヘルメだ!
「――閣下アァァァァァ」
「槍使いと、黒猫。」1巻~11巻が発売中。
コミックス版も2巻が6月27日に発売。




