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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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302/2032

三百一話 接触と姫

2024/03/03 11時04分 修正

「お前が槍使いか?」

 声の質はやや甲高くしゃがれた声。髪型はオールバックで、睫毛が長く漆黒の瞳を持つイケメンだった。その漆黒の瞳には闇を感じたが、魔眼系のスキルを発動中かな。

 額に装着するサークレットも普通ではない装備だ。膨大な魔力を内包している。サークレットの中央の飾りは鷹かグリフォン系の精巧なデザインが施されている。黒いマントも似合うし強そうな雰囲気だ。その男に、

「……そうだが」

 と無難に答えた。

『閣下、あの額のサークレットは、マギットが封じられている物に近いです』

『へぇ、何かが封じられている物か』

『はい』


 ヘルメもサークレットのことを指摘してきた。

 そんなサークレットを装備している男の隣と背後に立つ面子も強そうだ。

 全身が鋼鉄の甲冑装備を着ている方もいる。

 鉄仮面で頭部がすっぽりと覆われているから、呼吸はどうしているんだろう。

 鉄製の顔の造形は見事だ。

 猫獣人(アンムル)の三つ目は魔力を宿す。

 魔察眼で俺たちの魔力の観察かな、魔眼系統のスキルを発動させたようだ。

 その猫獣人(アンムル)は乳房の膨らみを擁した女性らしい鎧を着ている。

 間合いを計っている? 歩幅を微妙に変えた猫獣人(アンムル)か、武芸者の気配だ。

 隣にいる全身が鋼鉄の甲冑を身に着けている人も歩き方は他とは違う。

 肺呼吸が必要ない生命体なのか? と思わせるほどに全身を見事な甲冑装備で覆われている。そんな体重が重いだけではない、武に精通した歩法で歩いていた。

 すると、中心にいる方、マントが似合う人物が口を開く。

「……俺の名はガルロ、少し話がしたい。付いてきてくれるか?」

 ガルロさんか。そのガルロさんに、

「少し待ってください」

 と言って、皆の意見を聞こうと振り返った。半身の姿勢で皆を見る。

 エヴァたちと月の残骸のメンバーは頷いて、

「ん、反対」

 エヴァは反対。しかし、戦うつもりはあるらしく、薄らと紫色の魔力を体から出している。足下から影のような魔力を前方に展開させて、ガルロさんたちの下に向かわせていた。

 ガルロさん、猫獣人、鋼鉄人の三人は、その地面を影のように這って移動する紫色の魔力に警戒を示す。一歩、二歩後退した。

「わたしは別にいい」

 ユイは賛成。神鬼・霊風の鞘の下緒を握り、目貫された柄巻きに左手を添えている。

 ベイカラの瞳は発動させていないが、ユイの態度から……『いつでもこの魔刀を抜くわよ?』という意思表示を感じた。

「総長が決めてください」

「マスター、簡易ゴーレムを展開していい?」

「戦うなら血剣で滅多刺しにする」

 メル、ミスティ、ヴェロニカも戦う気らしい。

 ミスティとヴェロニカは頷きあっている。

「ご主人様、闇ギルドです。オークション中ですから、中立が守られているとはいえ所詮は、口約束。罠かもしれないです」

『その通り、反対です。襲撃かもしれません』

 精霊ヘルメはヴィーネの厳しい言葉に同意。

「血獣隊は指示に従います」

「ボクだって、お姉さま方のお仕事を手伝いたい」

「……ご主人様の役に立ってみせる」

「我は新しい戦闘奴隷のほうが気になる」

 ママニとフーは双眸を血に染めている。

 サザーはユイとヴィーネに目配せ。その最中、ビアは紺碧君を睨む。

 長細い舌を蛇のように伸ばしていた。

「我に興味があるのか?」

「ぬぬ、我は我の言葉ぞ」

 紺碧君は環状の頭部にある無数の眼の半分をビアへ向けていた。

 皆の反応は様々だ。すると、

「……槍使い。これは罠ではない」

 漆黒の瞳を持つイケメンさんが語る。

 その際、サークレットの鷹の頭部に嵌まる目の宝石が怪しく光った。

「単に、影翼(我ら)の仲間にならないか? という勧誘だ」

 勧誘目的、なのか? しかし、いきなり仲間といわれても……既に俺は仲間たちに囲まれている。だから、

「……無理だ」

「了解した――」

 漆黒の瞳を持つイケメンは、顔に喜色を浮かべながら黒マントを靡かせ踵を返す。

 仲間を連れて離れた。

 どこの組織か分からないが、あっさりと引き下がった。

「シュウヤが総長で盟主と知っておきながらの、誘いだったのよね?」

「たぶんな」

 レベッカが不思議そうな表情を浮かべていた。

 彼女は「ふーん、へんなの」と、いいながら茶色の布を拳に巻いて、そのままシャドーボクシングを始めていく。詳しく言えば、正拳突き。

 一方、ヴェロニカは双眸を充血させつつ、

「わたしは逆に、俺たちの「軍門に下れ」と強く言ってほしかったなァ」

 と、片手を伸ばし、人差し指を俺へ伸ばして可愛いポーズを決めながら語る。

 吸血鬼(ヴァンパイア)の美少女ではあるが、女としての妖艶さも醸し出しているから、魅力的だ。すると副長のメルが俺をチラッと見てから、ヴェロニカに、

「ヴェロニカ調子に乗らないの~、総長は新しい奴隷の世話があるのです、明日には第二部のオークションにも参加する予定もあります、今は余計な仕事は増やしたくないはずです」

 と代弁してくれた。良い副長だ

「ヴェロっ子はすぐに調子に乗るからねぇ。しかし、あの連中から手練れの雰囲気を感じたのも、また事実。あたいたちを無視していたのが、癇に障ったけど」

 ベネットの言葉に、頷いていたミスティが反応。

「最初からマスターを誘うことを目的としていたようね。わたしは全身が鎧の人物が気になったわ。触って溶かしてみたい。どんな金属か一目見ただけじゃ判断できなかったし」

 戦いの最中でも溶かせるなら凄いと思うが。

 ミスティは勝ったあとのことを想像しているのかな。

「ん、魔力が感じられたから、練魔鋼に似ているかも」

「エヴァはそう感じたんだ。なら触ればあの金属をもらえそうね」

「二人はすぐに金属の話に持っていくんだから……」

「あら、ユイ、貴女だって、猫獣人(アンムル)の長剣に注目していたでしょ。特に腰にあった業物」

「バレたか。うん。わたしの神鬼・霊風と似たような太刀かもしれない。それに他の三剣も並ではなさそう。剣を合わせたらどんな戦いになるか……わたしの二刀の技術がどこまで通じるか試してみたい」

「……総長の家族たちはヴェロっ子と同様に好戦的だねぇ。あたいとメルだけだね。冷静なのは……」

「ン、にゃあ」


 黒猫(ロロ)はべネットの言葉の後、馬獅子型へ変身。


「ロロ様も『わたしもニャ』といいたい?」

「いや、単に家に帰って『ポポブムの頭に乗りたいニャ』とかだろう」

「ううん、シュウヤの懐に居る『猫ちゃんズと中庭で遊びたいニャ』?」

 そこから黒猫(ロロ)の気持ちの代弁大会が始まり、

「かもな――」

 と笑いながらロロディーヌの背中の上へ飛び乗ってから、

「買ったばかりの沈黙を続けている紺碧君も居るし、ゆっくりとしたペースで家に帰ろうか。先ほどの奴らが、俺たちの尾行をしてくるか確認したいし」

 と、頭が環という紺碧の百魔族の様子を見ながら語る。彼とは契約したので、もう首輪は掛けられていないが、奴隷のマークである痣は胸の上部にあった。しかし、紺碧の百魔族は、ビアと話しただけであまり喋ろうとしない……口があるのに。

「……了解しました。一応、追跡専門の……」

 メルはベネットとヴェロニカに視線を向ける。

「はいはい、お仕事だね」

「仕事、頑張ろう♪」

 ベネットとヴェロニカは頷き合いハイタッチ。

「総長、血星海たちとの盟約の連絡協議のほか、細かい仕事があるので事務所に戻ります。第二部が始まる明日の夜、またここで」

「了解、また明日」

「総長、またねー、追跡してくる」

「ヴェロニカ、相手は未知の闇ギルド。何かあったら血文字で連絡してこい」

「わたしのこと心配?」

「当たり前だろう」

 と言うと、ヴェロニカは、少し跳躍し、宙空でくるりと舞う。

スカートがふんわりと風を孕む。華麗にステップを踏みつつ隣にいるメルに寄りか掛かるように、

「わぁ~、メル、聞いた? お仕事やめて総長と一緒にランデブーしていい?」

「……へぇ」

 メルは冷然とした目と態度。

 それを見たヴェロニカは表情を強張らせた。

「……怖い顔をしないで、ちゃんと指示に従うから」

「うん。分かれば宜しい。おりこーです」

 と、発言したメルは、表情を切り替えるように、満面の笑み。ヴェロニカもニコッと笑みを浮かべてから、

「うん♪ ということで、総長と皆、まったね~♪」

「またな」

「ん、元気なヴェロっ子先輩。また」

「じゃあね~、お仕事ガンバァ」

 エヴァとレベッカは腕を小さく左右に振ってヴェロニカへ声援を送る。

 ヴェロニカも俺たちの方へ振り向いて、細い腕をふりふりしながらメルと一緒に離れていった「……」ヴィーネは静観。

「月の残骸も同盟相手が増えたから仕事が増えたのかも」

 ミスティが呟く。

 彼女はメルとヴェロニカが姿を消した屋敷の玄関口を見つめていた。

「細かい取り決めがありそうだからな。俺もオークションが終わったらレザライサと話し合いがある」

「天凛堂だっけ、名前だけなら聞いたことがある」

「八頭輝が泊まる高級宿とミライは喋っていた」

「聞いたことがあるわ。主人はSランク冒険者だったはず」

 レベッカは知っていた。

「へぇ、Sランク冒険者が主人なら泊まる側としては安心できそうだ」

「その宿なら遠くから見たことある。ペルネーテの東側で縦長の建物は数が少ないから目立つ」

 エヴァの店も東側だったな。

「それじゃ、帰ろう。紺碧の百魔族もついてこい」

「――カカカッ、よう、月の残骸たち」

 特徴ある声が響く。

 ノクターの誓いの盟主、猫獣人(アンムル)のホクバ・シャフィードだ。

「何か用ですか?」

 馴れ馴れしく近付いてくるホクバと彼の部下たち。

 首輪に繋がれた女性も連れている。

「お前が槍使い、【月の残骸】のリーダーのシュウヤ・カガリだな。血長耳、【星の集い】、【海王ホーネット】、【月の残骸】の闇ギルド四同盟、血星海月連盟を作り上げた張本人」

 四同盟? 血星海月連盟、そんな呼び名がついていたのか。 

「自然とそうなっただけです。それで何か用ですか?」

 あの女性はどうして首輪を掛けられているんだろう。

「ん? この女が気になるのか?」

「――きゃ、ぐぇ」

 と、また鎖を引っ張り、女性を地面に転ばせて、女性の細い腹を蹴っていた。

 貴重な女性を……癇に障る。

「……シュウヤ、怒っている……」

「……目が……わたしたちは退いておきましょう」

「うん、マスターが怖い……」

 眷属たちは俺の怒気を感じ取り、そんなことを言いながら、神獣ロロディーヌに乗っている俺の周りから離れていった。

 当たり前だが……顔に出ていたらしい。

 そして、ホクバに敬語は不要だ。

「お前の趣味に付き合っていられないんだが?」

 ホクバへ向けて視線を強めた。

「何だ? おもしれぇな。会合の時とは雰囲気がまるで違うじゃねぇか」

 何が面白いのか分からないが、ホクバは俺の表情を見て嗤う。

 が、警戒したらしく、左肩に魔力を集めていた。

 肩の蟷螂の形をした白い複眼から突起物を出現させている。

 左の上腕の手に、杭刃の棒をを持つ。

 左の下腕の手に時計のような魔道具を持っていた。 

 どれもマジックアイテムだろう。袖の中に隠し持っていた?

 それとも、腕環型アイテムボックスかな。

「……察しろ。それよりお前の趣味なんて見たくないと言ったんだが? 耳がないのか?」

「カカカッ、迫力あるねぇ、やはり八頭輝に成り上がるだけはあるようだ」

「……目障りだ。さっさと俺の前から消えろ」

 顎をくいっと動かし、消えろ。と意味を込めて視線を外へ飛ばす。

「いやだな」

 ホクバか。もう一度警告は出しておく。

「これ以上俺と関わるつもりなら、それ相応のリスクを孕むと心得ろ」

「……この女に対する反応が極端だな。もしや、レフテン王国と【月の残骸】は繋がりがあるのか?」

 ホクバは勘違いしたのか、そんなことを聞いてきた。

「……」

 鎖で繋がれた女も立ち上がりながら俺の顔を見てくる。

 着ている服は下着姿なのは変わらない。しかし、気品を感じるのは何故だろう。清楚な印象が強い。レフテン王国と繋がりがある女性? 名はネレイスカリだった、あ、思い出した。誘拐された姫の名前ではないか?

 ノクターの誓いはレフテン王国王都ファダイクを本拠とする大手の闇ギルド。

 状況からして、やはりあの姫さんで間違いないだろう。

 死んだヒュアトスは宰相の手に渡ったと語っていたが、闇ギルドの手に堕ちていたと。

 ノクターの誓いは、宰相の手駒の一つかもしれない。

 姫だと判断したが、そのことは口にしない。 

「……レフテン? その女性とは面識はない」

「なら、気にすることはねぇだろうが。ネレイスカリはこの黒髪の男を知っているか?」

「……」

 ネレイスカリはホクバの言葉に答えない。

 碧眼の双眸は俺を捉えたままだ。

 彼女の澄んだ青い瞳から……何かを訴えかけているような気がした。

「――おい、呼んでいるんだ」

「――きゃ」

 ホクバはネレイスカリが無視して、俺の瞳を見ているのが気に食わないのか、また鎖をひっぱり彼女を転ばせている。このホクバ……一々奴隷を痛めつけないと気が済まないのか?

「……存じていません」

「あ? 聞こえねぇなァ」

 ネレイスカリは羞恥の顔を浮かべて、ホクバに近付いていく。

 彼女は猫獣人(アンムル)の彼に身を寄せながら、耳元で、

「彼のことは知りません」

 と、ホクバに報告していた。

「ってことは、ただの女好きの反応か。この女が欲しいのか?」

 ニタリと歯を見せながら俺に向けて語るホクバ。

 わかりきった事を……こいつは俺を挑発しているのだろうか。

 美人さんに悪いが、要らないと口に出そうと思った時、

「――そこの貴方、わたしを貰ってください」

 首輪の鎖を伸ばしながら、俺の元に走り寄ってくるネレイスカリ。

 必死な表情を浮かべて喋ってきた。

「おい、誰が喋れといった――」

 またか――ホクバは、また彼女の首輪から繋がる鎖を引っ張ろうとしたので、腰に差してあるムラサメブレードの柄巻を左手で抜きながらロロディーヌから素早く降りていた。 前傾姿勢でネレイスカリに近付き、首輪から伸びている鎖を右手で握って、その鎖を引き、ホクバを引っ張りあげる。

「――くおっ」

 ホクバは予想外の力だったのか、片腕が引っ張られ体勢を崩した。

 そこで左手に握る鋼の柄巻へ魔力を通す。ぶぅんと、音を響かせながらムラサメブレードの光刀を発生させた。狙いは勿論ネレイスカリの首輪から伸びている鎖だ。

 左手に握ったムラサメブレードを斜め上へ動かし狙った鎖を真下から斬り上げた。

 体勢を崩したホクバの片腕に絡みながらネレイスカリへ伸びていた鎖は途中で焼き切れて切断されると地面に落ちていく。微かに鉄の焦げる匂いが漂う。

 ネレイスカリは鎖が消えた瞬間、自由になった身体で俺の下に走り寄ってくると、背中側に回ってきた。左手に握る鋼の柄巻に魔力を送るのを止めて光刀を消してから、その柄巻を腰に差し戻す。

「大丈夫?」

「ん、後はシュウヤに任せて」

「首輪の大本も溶かしちゃうから」

「ありがとう」

 眷族たちに介抱されていく。

 血獣隊はホクバの部下に対して牽制しようと構えていた。

 ネレイスカリは自由に動けるので、やはり正式な奴隷ではなかったようだ。

「……何しやがる」 

 体勢を直したホクバが悔しそうに睨みを利かせて喋っていた。

 まぁ、怒るのは当然だが……事前に忠告は行った。

 それに彼女は俺に対して貰ってください。と語ってきた。

 それは助けてくださいと同じと勝手に判断。

「……お前は俺に女が欲しいのかと聞いていたな? その問いに答えよう。そうだ。欲しい。だからこの女は貰っておく」

「俺の所有物だ。返せ」

「嫌だ。ネレイスカリといった女も、俺に貰ってくださいと話をしたからな」

 俺の言葉を聞いた猫獣人(アンムル)のホクバは、醜く顔を歪ませる。

「ふざけろよ。八頭輝が他人の奴隷にちょっかいを出すとか聞いたことねぇ。しかも、俺も八頭輝だぞ!」

「だからどうした」

 八頭輝の立場などいらねぇし、直ぐにでもメルに譲る。

「……気に入らないな」

「気に食わないのはお互い様だろう。お前の行動は人を不快にさせることを学べ」

「く、中立を守るオークション中だという事を忘れてないだろうな?」

「忘れてないからこそ、今、ホクバ――お前の首が繋がっているんだぞ? 紳士な猫好きが相手で命拾いしたな」

 俺は首に手を当てとんとんと軽くチョップする動作を繰り返す。

 ホクバは三つの目で俺を双眸と手の動きを見つめてきた。

「……その態度と目、本気か」

 そこに、ホクバが連れていた部下たちが増えた。通りに控えていたらしい。

「当たり前だ。それに事前に警告はした」

「そうかい、そうかい。お前はレフテンを敵に回したのと同じだ。オークションの後が楽しみだな」

 猫獣人(アンムル)のホクバは三つの目を鋭くさせて、俺たちを睨む。

 だが、部下たちへ手を泳がせ退けと指示を出すと、自らも武具を仕舞い四腕を無手に戻していた。さすがに八頭輝の一人。狂ったように襲い掛かってはこなかった。

「あぁ、楽しみだ」

 ホクバは俺の言葉を無視。

 切断された鎖を投げ捨てると、地面を蹴り、踵を返し退いていった。

 オークション後、ノクターの誓いが集団で俺の事を襲撃に来るか?  

 否、そんな安直で馬鹿な野郎なら既に攻撃を仕掛けているだろう。

 それにホクバは四同盟を知っている。【月の残骸】に手を出せば四つの闇ギルドと敵対関係に至る可能性も考慮するはずだ。それは抑止力に繋がる。このまま【ファダイク】に戻り、背後にいると予想される宰相へオークション絡みの委細報告が先かな。しかし、勝手に宰相とホクバを結び付けたが……実は関係がなく、むしろ敵対関係だったりするかもしれない。後で助けたネレイスカリからレフテン王国の権力事情の詳細を聞いてから判断するとしよう。

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