二百四十八話 竜魔騎兵団第二軍団長
馬と獅子が融合している神獣ロロディーヌに跨がり乗っているヴィーネに、新魔竜王鎧と肩にある竜頭の甲のハルホンクのことを説明。
肩の竜を象った口から暗緑色の厚い布を自由に出し入れを行い、服の模様を作るように遊ぶ。
「鎧とコートを自由自在に体に展開が可能とは便利です、衣装変換魔道具。暗緑色と白銀の枝模様が綺麗です……」
ヴィーネはそう語ると長い耳がピンと伸びた。
青白い指で、俺の暗緑色の服と金色が交じる釦と金具と白い枝模様をなぞって弄っていた。
そのヴィーネは相棒が少し速度を速めると、直ぐに長い耳が下に下がり、少しだけ縮む。
すると、神獣ロロディーヌが王子の屋敷に到着。
正門を飛び越えて、王子屋敷の敷地に進入していた。
王子専属の衛兵たちが、神獣ロロディーヌの姿と俺の姿を見て、
「あぁー、この間の奴か」
「王子のお気に入り冒険者、トップクランのメンバーではないらしいが」
「六大トップとはいえば、青腕宝団の集団を円卓通りで見たことあるぞ」
「俺は黄色鳥の光の美人隊長をこの目で間近で見たぜ! なんとかハートという名の女獣人」
「聞いた聞いた。非番の時だから会えなかったんだよなぁ」
「そりゃ残念だったな。もう二度と見れねぇと思うぜ、ペルネーテを離れるとか」
「あぁ。しかも俺たち警備兵にも金貨と美味い酒とか色々配っていったそうじゃないか」
「王子に挨拶が終わってからな、俺たちにもちゃんとプレゼントを配ってくれた優しい獣人美人だった」
俺たちに興味をなくした兵士たち。
美人冒険者の会話を始めていく。
そんな兵士たちの奥、屋敷の手前では大騎士のレムロナとガルキエフがいた。もう一人背の高い騎士もいた。
「……少し、挨拶してくる」
「はい、ついていきます……」
ヴィーネはダークエルフ。
元々青白い皮膚だが、余計に青く見えた。
長い耳は少し縮んで少し下に向いている元気のない状態だ。
そんなことを考えながら神獣ロロディーヌから華麗に下りた。
ヴィーネが降りてくるのを、先に待つ。
彼女は紅いサンダルブーツが目立つ綺麗な長足を上げて、降りてくるが、やはり転びそうに――よろめいていたので支えてあげた。
「あ、ありがとうございます」
「いいよ、ロロは気持ちよく速度を出していたからな」
皆が降りたので、馬獅子から姿を黒猫の姿へ戻していた黒猫。
「にゃ?」
不思議そうに小顔を斜めに傾けながら俺たちへ紅いつぶらな瞳を向けてきた。
紅い目の中にある黒い点が、またカワイイ。
「ロロはおりこーさんといったんだよ」
「にゃお」
黒猫は肩に戻ってくると、髭を頬に擦りつけてくる。
そんなやりとりをしてから、大騎士たちがいる場所へ向かった。
「こんにちは」
「シュウヤ殿、可愛い使い魔も一緒か」
「シュウヤっ、殿下に用か? それとも……」
ガルキエフとレムロナは深刻な表情で話していたようだが、気軽に挨拶してきた。
「はい、迷宮から珍しいアイテムを手に入れましたので、王子殿下に見て頂こうかと」
「なんだ、殿下の方か……珍しいアイテムなら殿下も喜びましょう」
レムロナは顔を少し赤らめて残念そうに呟いてから、にこやかに語る。
「レムロナ殿、こちらの方は?」
そう話すのは、眼窩の彫りが深い中年のイケメン男性。
口元には布マスクを装着している。
他の大騎士の白いマークとは違う。緑色の竜マークがついた特殊布だ。
色違い魔道具で口元を隠していた。
「バーラル殿、こちらは王子殿下と契約をしている冒険者Bランクのシュウヤ・カガリ、凄腕の槍使いです」
レムロナが紹介してくれた。
「どうも、シュウヤです」
「なるほど、王子殿下のお楽しみたちの一人か。私は竜魔騎兵団第二軍団長バーラル・コルザードと申します」
軍のお偉いさんときたか。
彼らが険しい顔色だったのは、戦争の近況報告でもしていたのかも。
「……竜魔騎兵団第二軍団長様でしたか、これはご無礼を」
「気にするな。シュウヤは殿下と直接契約をしているのだから、かなり優秀な冒険者なのだな」
「槍に自信があります」
「……槍か。ハッキリとモノをいう態度。ふむ、体格といい雰囲気もある……」
バーラル・コルザードさんは軍人らしい鋭い目付きで、俺の観察を始めていた。
「わたしはシュウヤ殿と一戦を交えたいぞ……」
ガチムチさんのガルキエフが、そういうが、その視線は黒猫を捉えた状態だ。
「ほぅ、ガルキエフ殿が、そこまでの興味を抱く者ですか……」
「いえいえ、ただの冒険者ですので」
騎兵団長のお偉いさんが興味を得たような顔付きで見てきたので、無難に逃げておく。
「そのような人材ならば、我が竜魔騎兵隊に欲しいですな」
勧誘が始まりそうだ。話題を無理にかえよう。
レムロナとフランが前に語っていた負け戦の情報を聞いてみるか。
「……突然、失礼ですが、戦場での情報は少しだけ聞いております。あれから、好転はしたのでしょうか」
「……いや」
厳しい表情に戻したバーラルは、俺だけでなく、レムロナにも視線を向けた。
「……布告人が情報を流しているので、一般市民もある程度は……耳にしている筈です」
「ふむ、その通りで……芳しくない。だが、戦とは水モノ。まだまだこれからだ」
「わたし共もすぐに駆け付ける所存」
ガルキエフも戦場にでるらしい。
「……武人ガルキエフの参戦は素直に心強い」
「腕がなります」
「はい、では、そろそろ前線に戻ります。作戦の詳細は、先ほどお話をした通りということで……」
「了解した。帝国にグリフォン丘を越えさせません」
「はい」
ガルキエフとレムロナの大騎士は、竜魔騎兵団第二軍団長バーラル・コルザードに話を合わせている。
「では、皆さま方、これにて失礼する――ファンファンッ!」
ファンファン?
「ガォォォ――」
「おぉ」
鞍を乗せた緑色のドラゴンが走って来たので驚いた。
バーラルの声に反応したらしい。ファンファンが竜の名前か可愛いかも。
彼の喉から口にかけてある布が光っていたので、大騎士と同じようにドラゴンと繋がっているのだろう。
バーラルはドラゴンの鞍上に華麗に飛び乗り、手綱を掴む。
ドラゴンは横へ翼を広げると、一気に飛び立っていった。
戦況のことを聞いてみるかな。
「……レムロナ様、この間、少し話をされていましたが、戦況はそんなに?」
「様、か……」
レムロナはもっと気軽に呼んで欲しいようだが、一応、彼女はお偉いさんだ。
そして、ここは王子の屋敷であり、彼女は職務中。
「……レムロナ様、いつか個人的なところでは……」
家での会話の件を含めて話す。
「……う、うん、ハヤク好転してほしい……ものだ。い、いや、何を言わすのだ」
レムロナは、ぽうっと顔を赤らめながら語っていた。
「……レムロナ様が勝手に」
「う、うむ。済まない……ゴホンッ」
わざと咳き込み、気を取り直すレムロナ。
「……戦況は確かに悪い。この間、妹と一緒に状況を話したように、西の王国領土の大半を失った。そして、わたしが助けられた件も含めて、この都市だけでも行方不明事件、殺人事件、問題は山積みなのだ……」
行方不明事件は、帝国の工作員絡みの事件もあるか。
ヴィーネと同様に西方フロング商会の足取りは、白の九大騎士でも掴めなかったらしいが……衛兵隊とかは、あまり役に立っていないのか?
「……衛兵隊を合わせても追いつきませんか?」
「無論だ。白の九大騎士、第二青鉄騎士団を合わせても追いつかない」
そういうことか。
しかし、内側ばかりを見ていてもな。外から帝国がきたら否が応でも戦うだろうし……。
「……レムロナ様も戦場に出られるので?」
「当面はガルキエフ大騎士が率いる手勢のみの参戦となる。しかし、ラドフォード帝国は特陸戦旅団、戦鋼鬼騎師団だけでなく、未知なる部隊も投入してらしいので……正直どうなるか分からない」
「なあに、心配はいらん。戦線は間延びし、後方も混乱中と聞く」
不安気なレムロナに、ガルキエフが安心しろ。とでもいうように語る。
しかし、後方が混乱中だと? さり気なく重要機密を漏らしているような……。
これはレムロナ救出の件を知り、俺を信用しているからこその話か。
もしかして、大騎士推薦の話が本格的に進んでいる?
「分散しているところの各個撃破ですね」
「……そうだ。戦意が落ちた帝国の兵など、我らホワイトナインの精強なる重騎馬隊が蹴散らしてみせようぞ。ルルザックの地を踏ませることはない」
ガルキエフはレムロナの言葉に頷く。
騎馬隊を用いた戦術が得意なのかな、相当に自信があるようだ。
「はい、ガルキエフ殿。期待をしております」
「うむ。わたしが留守の間、王子を頼む。大きな憂いが消えたとはいえ、帝国の工作員のこともある」
「そうですね。しかし、帝国は、西のフロルセイル七王国、南のセブンフォリア王国とも争いがあった筈なのに、どうしてここまでの部隊を投入出来たのか、不思議でなりません」
レムロナは思案気な顔を浮かべた。
ガルキエフから、俺に対しても視線を送ってくる。
「そんな情報を俺に与えていいんですか?」
「いい、シュウヤなら何処にも漏らさないだろう? そこの従者仲間も重々承知しているはず」
「はい、ご主人様が命令しない限りは」
ヴィーネの問いに黙って頷くレムロナ。
「……お二方の話を聞く限り、ルルザックも危うそうに思えます」
と、レムロナとガルキエフへ戦争の話を振ると、ガルキエフが口を動かす。
分量が少ないですが、1月11日まで連続0時投稿です。
皆様、お待たせいたしました! 「槍使いと、黒猫。」ついに書籍化です!
正式タイトルは「槍使いと、黒猫。1」
出版社ホビージャパンのレーベル、HJノベルス様より、2017年2月22日(水)発売予定です。




