二千百五十九話 暗剣の風スラウテルの共鳴
窓辺から王都の夜明けを見つめていると、背後の廊下から複数の足音が慌ただしく近づいてきた。
「――シュウヤ!」
ひしゃげた魔鋼の扉を越えて飛び込んできたのは、銀色の残像を引くハイグリアだった。
彼女の後ろには、ダオンとリョクライン、そして神姫隊の古代狼族たちが油断なく銀爪を構えて続いている。 彼女たちの『銀爪式獣鎧』には激戦の痕跡と返り血がこびりついているが、その瞳には勝利の光が宿っていた。
「ハイグリア、ダオン、リョクライン。やったな」
ハイグリアは『銀爪式獣鎧』を煌めかせ、神狼ハーレイアの幻影を生む。その幻影が雄々しく口を拡げ、『ウォォォン』と響かせてきた。
「ンン、にゃ~」
黒猫は、即座に反応し鳴く。
神狼ハーレイアの幻影は、主を労うかのように銀爪式獣鎧の中へと吸収されて消えた。どうやらその霊的な幻影は、俺と相棒にしか見えなかったらしく、他の皆は氣付いていない。
ハイグリアは、
「……あぁ! ドイガルガの護衛や、城内に潜んでいた【ロゼンの戒】の残党、あらかた片付けた。ルマルディやヴィーネたちが空の部隊を降伏させているから、もうこの城に組織的な抵抗勢力は残っていない」
ハイグリアが兜部分を解除し、美しい銀髪を揺らして歩み寄ってくる。
「「ハッ! シュウヤ様とハイグリア様と共闘でき、光栄の至りに存じます!」」
ダオンとリョクラインが誇らしげに胸を張り、恭しく頭を下げた。俺たちの背後や死角を守り、共に王城を落とした彼女たちの武威は間違いなくこの勝利の大きな立役者だ。
だが、ハイグリアは視線を強め、ドイガルガにゆっくりと近づき、両手の銀爪を伸ばす。
「……ドイガルガ! やっとだ、やっとお前を……」
鋭そうな銀剣爪の切っ先をドイガルガの眼前に向けて、
「ひ、ヒィィ……」
ヘルメの<珠瑠の花>が放つ光の紐で雁字搦めに縛り上げられたドイガルガは、絶望と恐怖でガタガタと震え上がっている。
ヘルメわざとハイグリアの銀爪にドイガルガの首を誘導させたな。
「待った、ハイグリア、今、殺すのは無しだ。ヘルメも危ないことはしないように」
「ふふ、はい」
ヘルメは輝く紐の<珠瑠の花>を操作し、ドイガルガをこちら側の足下に戻した。
ハイグリアは俺を見る。
顔色には『なぜだ』という文字が現れていた。
片目から涙を流れながら、ドイガルガの醜態を見下ろし、
「……私たちの【狼月都市ハーレイア】を汚した大本がこいつなのだぞ……こいつは、ラスアピッドを囮に、バーナンソー商会、獣人傭兵商会のヘヴィル商会そのものを使い捨てにし、逃げ続けていた……許せん……」
ハイグリアたちが活動していた湾岸都市テリアや王都ハルフォニアなどの追跡劇では色んなことがあったんだろうとは思う。だが、
「……あぁ、それでもだ」
「姫」
「……姫様」
リョクラインとダオンもハイグリアの殺氣を沈めるように頭部をわずかに左右に振っている。
リョクラインは、
「この男が知っているだろう【幻獣ハンター協会】との繋がり、あのルーブが吐いた情報との辻褄合わせもあります。後、【闇の枢軸会議】に連なる連絡網は、貴重です」
リョクラインの言葉にハイグリアは沈黙し、俺を見てから、かすかに頷いて、目を瞑る。
そして、目を開けると、怯えているドイガルガを冷たい眼差しで睨んでから、静かに溜め息を吐く。
「……そうだな……」
と呟き、<魔闘術>系統を弱めた。
銀爪式獣鎧を衣服型に変更し、両手から伸びていた銀爪を収めて、深呼吸を行う。
俺を見て、頷き合った。
その落ち着いたハイグリアに、
「ハイグリア、神姫の仕事を、見事にやり遂げたな。ヒヨリミ様も喜ぶだろう」
「あぁ、私も久しぶりに、やった感がある。ふふっ……」
と笑顔を見せる。ハイグリアの力の抜けた笑顔を見て、ダオンとリョクラインは、はにかんだ。
「……ではドイガルガへの尋問を行う」
「うむ!」
すると影から音もなく進み出たホフマンが恭しく一礼した。
「メシア、よろしいか」
「おう」
ホフマンは燕尾服の裾を優雅に翻し、狂熱を帯びた瞳でドイガルガを覗き込む。
「……このような見苦しい鼠の虚言を聞く必要などありません。私の<脳切血盗>をお使いください。この男の脳髄から、逃亡した残党の隠れ家も、ピサード大商会の裏帳簿も、すべて根こそぎ奪い尽くして御前に献上いたしましょう。証拠さえ手に入れば王太子の覇道には十分かと……クククッ」
ホフマンの指先が鋭利な血のナイフへと変質する。
と言っても、脅かすだけだろう。
「ホフマン、脅しはそれで十分だ」
と、エヴァを見る。
ふわりと浮遊していたエヴァが、
「ん、あまり脅すと、公的な『生き証人』として使えなくなるし、わたしが見る」
身を乗り出し、恐怖で震えるドイガルガの頭へ、そっと優しく両手を添えた。
「大丈夫……痛くないから。ただ、本当のことを教えて」
天使のような微笑みと共に、エヴァの瞳が神秘的な紫色の光を帯びる。
<紫心魔功>の発動だ。
紫色の魔力がエヴァとドイガルガを繋ぐ。
ドイガルガは、「……温かい……」と呟いて、呆けた。
その精神の最深部へと滑らかにエヴァの紫色の魔力が浸透していると分かる。
ドイガルガの瞳から恐怖の焦点が消える。
エヴァは「ん……ピサード大商会のエイドナのこと、彼女の弱み、重要な情報と、軍需派の大商会、商会の繋がりを教えて、ううん、考えるだけで、いい……」と呟くように問うていく。
「【幻獣ハンター協会】とのやりとりは誰に任せていたの? 空極の空戦魔導師のラスアピッドはどうして、貴方に付き従っていたの?」
その言葉にルマルディたちも興味深そうにドイガルガとエヴァを見ている。
アルルカンの把神書は相棒を乗せたまま黙って浮いている。珍しい。
エヴァは、わずかに息を吐いてからドイガルガから離れた。
読み取った情報を整理するように、その場で頷いて、俺を見る。
「……ん。ピサード大商会のエイドナたちが隠し持っている別の大規模な利権……ローデリア海に面した秘密港と、地下造船所の座標が分かった。それに、王都から逃亡した軍需派の残党たちが集まるセーフハウスの場所も。……全部、私の頭の中に記録した」
エヴァが手を離すと、ドイガルガは糸が切れたように意識を手放して床に崩れ落ちる。
その間にも、ペレランドラは、<血魔力>の<魔念大魚>を生み出しながらそんなドイガルガを睨み続けていた。
エヴァの報告に、ドイガルガを睨みつけていたペレランドラの顔色に強い決意が宿った。
俺はペレランドラからエヴァへと視線を移し、
「……ナイスだ、エヴァ。ピサード大商会も軍需派の残党も、これで根絶やしにできる」
「ん」
「うん、これで、塔烈中立都市セナアプアの裏側もすっきりとするわね」
レベッカの言葉にペレランドラが深く頷く。
「はい……ネドーとドイガルガ……これで、〝泡の浮遊岩〟、〝網の浮遊岩〟、〝烈戒の浮遊岩〟で死んでいった者たちも浮かばれます。評議員の一人として、今日ほど誇らしい氣分となった日はありません……すべて、皆さんのおかげです」
そうだな……。
皆、それぞれに目が合うと、頷く。そして、塔烈中立都市セナアプアの方角か定かではないが、大きい窓硝子から覗く空を見ては、黙祷を行っていく。
すると、美しい銀髪を旭日に照らしながら飛来してきたヴィーネが、
「――ご主人様、城外に残っていた残党との戦闘も完全に終結です」
「おう、了解した。ご苦労さん」
「はい」
ヴィーネの胸元に手を当ての会釈を見ていたレオンとガリウスも、感嘆の息を漏らした。
事後処理の目処が立ったところで、部屋の出入り口を見た。
「ちょい、下の大広間と廊下のところに戻る」
「お供します」
「うん」
「倒したプルトーのところか」
「そうだ」
「俺も行こう」
ヴィーネとユイとカルードと、そのレオンを連れて部屋を出た。
先ほどプルトーと死闘を演じた廊下に戻る。
そこには、俺の<支え串・天涯>によって胸を穿たれ、両腕が吹き飛んで息絶えたプルトーの骸があった。
「……最期に『暗剣の風スラウテルの加護か』と言っていた」
吹き飛んだプルトーの両腕から外れ落ちていた、奇妙な意匠の腕甲を拾い上げる。
漆黒の金属に風の紋様が刻まれ、強力な魔風を逆噴射させていた特異な魔道具だ。
「……【暗剣の風スラウテル】の装備の一部ですね」
カルードが神妙な面持ちでそれを見つめる。
アイテムボックスを開き、以前入手し、保管していた〝暗剣の風スラウテルの胸甲〟と〝スラウテルの魔風盾〟を取り出した。
すると――。
暗剣の風スラウテルの腕甲と暗剣の風スラウテルの胸甲とスラウテルの魔風盾が共鳴したように風を吹き出し始めて浮かぶ。
互いの存在を認識したかのように激しく共鳴し始めた。
キィィンッと甲高い音が鳴り響く。
漆黒のアイテムから突如として暗緑色と銀色の魔風が巻き起こる。
「なッ!?」
「シュウヤ、氣をつけて!」
ユイが声を上げるが、その魔風に殺氣や攻撃性はない。
渦巻く魔風の魔力は、部屋の中央でホログラムのような立体的な幻影を結び始めた。
最初に映し出されたのは、荒涼とした魔界セブドラの大地。
常に暴風が吹き荒れ、巨大な剣の形をした奇岩が無数に突き刺さっている前人未到の遺跡の光景だ。
暗剣の風スラウテル……その力の源流、あるいは真の遺産が眠る場所への『導き』?
だが、幻影はそれだけでは終わらなかった。
プルトーの腕甲の裏側に隠されるように縫い込まれていた、血に塗れた古い手記の切れ端がポロリと床に落ちた。
「ん」
エヴァがそれを拾うと、
「あ……」
自然とエヴァは紫色が多い<血魔力>を体から放出。 エヴァは、恍惚的な表情を浮かべて、頷く。
血に塗れた古い手記の切れ端から何かを読み取ったようだ。
エヴァは、
「ん、過去の記憶が見えた」
刹那、エヴァが拾って見せた切れ端が、指先からふわりと離れて、宙に浮かぶ三つの〝暗剣の風スラウテル〟の装備が放つ魔力と繋がった。
途端に、その魔力の中に別の光景が映り始めた。
――どこかの高台、坂道の下には建物の群れ。
ユイが、
「ここ王都ハルフォニアよ」
「ふむ」
幻影は建物の一角を注視するようにパンアップとパンダウンを繰り返し、やがて孤児院らしき建物へとズームインしていった。
ボロボロの服を着た子供たちが、一人の青年に群がって笑い声を上げている。
黒装束を脱ぎ、質素な平服に着替えたプルトーの姿だった。
『ほらよ、今日は肉だ。喧嘩せずに分けろよ』
彼がどさりと置いた木箱には、新鮮な食料や衣服、そして冬を越すための魔導石がたっぷりと詰まっていた。
子供たちに援助していたのか。
そこに綺麗な女性が現れ、
『いつも子供たちのために、ありがとうございます』
『いや、いいさ……では、これで――』
『あ、待ってください。サーマリア王国にも貴方のような聖人がいるのですね。今日こそは、貴方の名を聞かせてくださいますか?』
『……』
プルトーが片手を上げると、フォーカスアウトするように、映像がぼやけ、プルトーの低くかすれた声が、
『……我らは影。親父殿の創る光を護るため、幾つもの喉笛を掻き切ってきた。戦争を起こせば孤児が増える。だが、その度に私は、雨の泥濘に取り残され、親の骸に取り縋って泣き叫ぶ幼い日の自分を造り出している。……この孤児院への寄付は、ただの自己満足だ。私の偽善であり、血塗られた手に対する滑稽な贖罪に過ぎない。だが……私が地獄へ落ちた後、誰があの子供たちを雨から護るというのか――』
手記の言葉を読み上げるように響き渡る。
幻影だった魔力は、静かに霧散した。
「……プルトー……」
ユイが、悲しげに瞳を伏せた。
カルードもまた、静かに目を閉じ、深く息を吐き出す。
レオンも、
「……あいつも、根っからの人殺しだったわけではないのか。護るべきものがあり、奪った命への負い目があったからこそ、修羅の道を歩むしかなかったと……」
レオンの言葉に、誰もが沈黙した。
彼ら影に生きた者たちの罪は決して消えない。
だが、その魂のすべてがどす黒く腐っていたわけではないという事実が、胸の奥に重く残る。
「……ユイ、カルード、レオンもだが、先程の孤児院の場所は分かるかな」
「たぶん、王都の東区ね」
「ふむ……」
ユイとカルードの言葉に、レオンは、
「第七スラムの端には、小さな神聖教会跡地がある」
知っているようだ。
「了解した。では、ペレランドラや【天凜の月】の資金を使い、その孤児院への支援を引き継ごうか。あいつが命懸けで護ろうとしたものくらい、俺たちが面倒を見てやってもいいだろう」
俺の言葉に、ユイがハッと顔を上げ、すぐに優しく、救われたような笑みを浮かべた。
「……シュウヤ、ありがとう」
「ん」
エヴァは涙を浮かべて頷いた。
「マイロードのその深い慈悲に、我らも救われる思いです」
カルードが深く頭を下げる。
手元の暗剣の風スラウテルの装備をアイテムボックスへと収納した。
魔界セブドラの風吹き荒れる遺跡……そして、王都に残された孤児たち。
プルトーという一人の男が遺したものは、俺たちを次なる運命へと導いているようだった。
「そろそろソーグブライト王太子たちも、ここにやってくるかな」
城外から吹き込んできた清々しい朝の風を感じつつ、ロルジュ公爵の執務室に戻ってから、割れていた大きい窓硝子に縁に手を当て、
「少し外の様子を見てくる」
「「「はい」」」
「ンン――」
「お供します――」
相棒とファーミリアと共に外に出た。
□■□■
飛空艇はどこで用意用意したのか分からないが、その残骸はあちこちに落ちている。
暫し、王都ハルフォニアの空と、眼下の景色を堪能。
すると、王城の正門前、すでに鎮圧が完了しつつある広場へと降り立つと、凄まじい殺氣と魔力が衝突している一角があった。
レオンたちも王城から離れたようで、集まっている。
「――たとえセウロスの神々が許しても、我は許さん! エーグバイン家の名にかけて、お前たちを滅する!!」
全身から聖なるオーラを放つ白髪の吸血鬼ハンターの爺が、十字の聖鉄びしを構え、数多の蝙蝠の群れから実体化した一団と対峙していた。
その中心に立つのは流麗な漆黒のドレスを纏い、妖艶な微笑を浮かべる美女。
「あれは、ミドランドのエミルです」
ファーミリアの言葉に頷いた。
<血魔力>からしても他の吸血鬼とは異なる。
その近くに着地し、争っているところに向かう。
「――五月蠅い羽虫ね。私たちはもうこの泥沼の遊戯から降りるというのに」
エミルが気怠げに指を鳴らそうとした刹那――。
<雷飛>で両者の間に割って入った。
魔槍杖バルドークを軽く構え、双方を牽制する。
「そこまでだ。王都の掃除はもう終わった。無駄な血を流す必要はない」
「お、お主……! 吸血鬼首魁の一人だぞ、なぜ、庇う!?」
「爺さん、アンタの孫娘、ノーラのためにも無茶はするなと言ったはずだぞ」
と、静かに告げると、吸血鬼ハンターの爺は驚愕に目を見開き、構えをわずかに緩めた。
だが、それ以上に劇的な反応を示したのは、女帝エミルの側だった。
彼女の深紅の瞳が、俺の姿、特に首筋の辺りへと釘付けになり、全身を小刻みに震わせた。
「……圧倒的で、そして恐ろしいほどに甘美な魔力の氣配……まさか、貴方が……」
俺の放つ氣配を察知したエミルは、一歩、また一歩と熱に浮かされたようにフラフラと歩み寄り、周囲の警戒も忘れてその場にふわりと片膝をついた。
始祖の十二支族の一つであるミドランド家の女帝が、俺に対して臣下の礼を取った。
「エミル様!?」
「なっ、ミドランドの女帝が……人族の前に膝を突いただと!?」
吸血鬼たちと、レオンとガリウスたちが驚愕の声を上げる。
ハイグリアの耳もピンと立っていた。
エミルの瞳は、俺の首筋に深く刻まれた<吸血神・愛咬・血楔>を正確に捉えていた。
「……噂には聞いておりました。我らが創造主、吸血神ルグナド様の<筆頭従者長>たちを次々と身内に迎え入れ、あまつさえ、あの気高き吸血神ルグナド様に『愛咬』を許された、唯一無二の光魔ルシヴァルの宗主様……」
エミルの言葉に、背後のファーミリアが、静かに胸を張り、相棒の黒猫が「にゃおぉ~」と誇らしげに鳴いて、ドヤ顔を示す。
吸血鬼ハンターの爺は「きゅ、吸血神と繋がりを持つ光の存在ということか……わしの想像を超えている……」と完全に戦意を喪失し、腰を抜かしかけている。
そこで、エミルを見て、
「……エミルだったな。あんたたちミドランド家は、ガリウスとの盟約で動いていたと聞いている。その事象だが、今のように、もうサーマリアの『裏の均衡』は終わった」
「えぇ。理解しております」
「悪いが、この吸血鬼ハンターは、ノーラのお爺ちゃんで、俺の知り会いだ。だから、戦いは止めてもらう」
「はい、仰せのままに、貴方様という『真なる夜の太陽』を前にして、我々のような放浪の身が逆らう道理など微塵もございません」
エミルはうっとりとした、どこか熱を帯びた眼差しで俺を見上げる。
「世界の均衡は、もはやサーマリアなどの小さな国にはありません。すべては、貴方様の、絶対的な光と闇を中心に回り始めている……此度の無礼、平にご容赦を。我らミドランド家は、光魔ルシヴァル、その【天凜の月】の覇道に一切の刃を向けぬことを、ここに誓いましょう。そして、ファーミリア、貴女たちも、元氣そうでなによりですわ」
「そちらも」
「「……」」
ファーミリア、ホフマン、ルンス、アルナードも会釈していく。
「ふふ、では、後ほど、ガリウスたちと会談があるので、また、いずれお会いしましょう」
エミルはもう一度深く頭を下げるとガリウスたちとアイコンタクトを交わす。
分かりやすく<血魔力>を周囲に展開、分泌吸の匂手か。
エミルと<筆頭従者>と思われる男性が、エーグバインの爺さんの足下に、短剣と長剣を放る。「謝罪の印に、それはお返しします――」と頭を下げる。
爺さんは、「……謝罪……」と信じられない目でエミルたちを凝視。
エミルたちは、微笑む。
と、再び、俺たちに会釈をしてから、蝙蝠の群れとなって朝の空へと溶けるように去っていった。
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