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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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二千百五十五話 天地鳴動の王城前、異形のキメラ群との戦い


 サーマリア王国の王城を囲っていた半透明の膜は縮小し続けている。

 外縁部にいたソーグブライト王太子側の軍も順調に進めるだろう――。

 地下から再度侵入するかと思ったが、地響きが響き、俺たちの前方の床、地面が王城に沿って、巨大な蛇かモグラが、こちらに進んでくるように地盤沈下していった。一部は崩落し、多数の犠牲者が出てしまっている。


 地下水脈の道は塞がれたかな――。

 <超能力精神(サイキックマインド)>で崩れた建物の残骸を防ぎ――。

 <武行氣>で低空を飛翔しながら、崖となって崩落に飛び込み、左手で子供と、その母を右手で掴んで救う――。

 

 左右の<鎖の因子>から<鎖>を射出――。

 血だらけとなっていた爺さんの体に<鎖>を絡ませては、レオンたちが率いていた部隊があるところに<仙魔・龍水移>――。


 転移し、子供と母と爺さんを降ろし、即座に《水癒(ウォーター・キュア)》と《水浄化ピュリファイウォーター》を行った。水球は崩れて皆に魔法のシャワーが降りかかった、一瞬で、子供と母とお爺さんの傷は消えていく。


「――ん、私も、この辺りの人々を助ける」

「了解した、光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスも呼ぶ」

「ん、シュウヤたちはロルジュ公爵を倒しに先に行っていい」

「おう――」


 闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの指輪を触り、魔力を込めた。

 指輪からはいつもと同じく二つの糸が宙へ伸び弧を描くように地面へ付着。

 グルガンヌの幻影と共に一瞬で光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスが出現。


「閣下、敵は何処に!」

「閣下の前衛はこのアドモスに!」


 二人に向かって頷き、「見ての通り、いつもの戦場だが、攻城戦に近いか――」と言いながら魔槍杖バルドークをぐわりと回してから、切っ先を王城に向け、


「――ここはサーマリア王国、王都ハルフォニア。そして、敵は、ロルジュ公爵とその部下だ」

「「承知!」」


 光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスは王城を見据える。

 そこに、


『ご主人様、飛空艇と空魔法士隊、本陣回りに撤退、防御を固めるようです。今そちらに向かいます』

『了解した』


 王城辺りから土煙が舞うと、重装兵たちがこちらに向かってくるのが見えた。

 救出活動をがんばっていたハイグリアたちが応戦し、レオンたちが身構え、


「シュウヤ殿、王城、最後の大部隊だろう。倒すぞ――」


 レオンが背に展開した『炎幻の四腕』を猛烈に燃え上がらせ、迫り来る重装兵の壁へと単騎で突っ込んでいく。

 炎の巨大な腕が振るわれるたび、重装の盾ごと兵士たちが宙を舞い、陣形が瞬時に瓦解した。


 ガリウスは、


「ハッ、力を増したという噂は本当のようだ――」


 と、言いながら、青白い魔剣から魔刃を繰り出し、落下してきた飛空艇を両断する。

 そのまま前に出て、ロルジュ公爵側のサーマリア王国の重装兵の槍を避け、左の槍をも弾き、身を捻りながら、右にいる重装兵の肩口に魔剣を振るい落とし、両断して倒し、左にいた重装兵の突き出した槍を、華麗に跳躍して避けてはジャンピング突きで、その重装兵の首を穿ち、引く動作の魔剣で、首から胴体を斬り落とし、着地と同時に前に出ていく。


 ガリウスの魔剣師としてのレベルは高い――。

 

 左手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出し、サザー、ユイのフォロー――。

 跳躍し、魔矢を避けたところで、ヘルメとグィヴァが連携しながら、戦うのが見えた。


 <一碧万頃>の水の膜に雷状の魔刃が連なって大規模に展開、小型飛行艇に乗った多数の兵士たちがそれに捕まって動けなくなっていた。


 巨大な血剣の群れを扱うファーミリアが、動けなくなった者たちに触れて、干からびさせる。

 シキは、両手から魔法球と小さな水晶時計の幻影を発生させる。


 それらが重なると、見知らぬ異世界が映し出され、その異世界から体長二メートル前後の異界の獣、怪物が召喚される。


 <溯源刃竜のシグマドラ>だろう。


 溯源刃竜のシグマドラの上部は、鰐のものか、形容しがたい頭蓋骨が複数集積し融合したような異様な姿をしている。


 下部には幻影を発する複数の布と繊維質の群れがあり、ユラユラと揺れていた。

 その繊維質の群れは複数の脚として蛇腹機動で忙しなく蠢き、蔓脚のようにもウネウネと動く。獅子舞のような奇異な動きを見せるシグマドラは、飛空艇を貫いてキサラの背後を守り、さらには急降下してカルードをフォローしつつ、瓦礫に体当たりして粉砕し、ハビラたちによる一般人の救出を援護していた。


 そこにアドリアンヌの《闇炉彗炎球ブラック・コメットファイア》が炸裂するのが見えた。

 魔塔のような建物の中部に連続して炸裂。

 爆風の横型の雲が広がって、魔塔が倒れ掛かってしまうが、その倒れた魔塔の一部をアドリアンヌの体から出た燕尾服を着たピアニストの魔人の片腕から迸った閃光が消し飛ばしていた。


 飛翔するアドリアンヌは氣にせず、魔神魚を展開させ、〝白金剛樹檻ポリア〟を生み出し、敵型の兵士を捕らえては、ハイグリアたちの戦いをサポートしていた。


 ドラゴンのペルマドンとナイトオブソブリンは、瓦礫を丁寧に吹き飛ばすと、互いに半透明な魔力フィールドを出して一般の方々を覆った。物理的な防御でもあるのか、周囲の瓦礫を一切寄せ付けていない。


 <血魔力>の性質ではない。レベッカが持つ城隍神レムランの竜杖が輝いているところを見るに、あの杖独自の防護魔法だろうか。


 ホフマンは半身を<血魔力>で構成した、炎、霧にも見える異質な、独自の心象世界の<血道第三・開門>の<ヴァルプルギスの夜>を展開させて、背後から出現した新手の大海賊と邪道流の魔剣師、魔剣士を捕食するように倒していた。時折、吸血鬼(ヴァンパイア)ハンターの爺さんが、「あの者は吸血鬼(ヴァンパイア)!!!」と発狂して攻撃を繰り返したが、エヴァの紫と光を帯びた<血魔力>を浴びた爺さんは、大人しくなってくれた。


 ユイ、カルード、ハンカイも得物で相対、フーが空から反対側の崖となっている地形にいた少女を助けているのを視認しつつ、皆を助けたい想いを胸に抱きながらも、ここを彼らに任せ、主力となる皆へ――。


「ゼメタス、アドモス! 俺たちも続く!」


 右手の<鎖の因子>から<鎖>を射出し、ヴィーネたちの背後にいた小型飛空艇に乗っていたサーマリア王国の兵士の頭部を穿ち倒す。


「ハッ!」

「お任せを!」


 光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスが、愛馬である巨大な骨馬ヒョードルとザレアドを駆り、地を蹴った。

 二人の兜の前立てと頭頂部の日の出のような旭日が輝く。

 背に翻る星屑のマントが星々のような煌めきを残した。

 ゼメタスは、<黒沸ノ大闘魂>を発動させたか、凄まじい威圧感を放ちながら突撃する。


 ゼメタスが名剣・光魔黒骨清濁牙を構え、愛盾・光魔黒魂塊で敵の槍衾を容易く弾き飛ばす。


「私たちの道を防ぐことはできん――」


 <月影走り>の神速で敵陣の懐へ潜り込み、名剣から<月虹斬り>と<夜叉ノ衝き>を連続で繰り出し、重装兵の分厚い鎧を紙切れのように斬り裂き、穿っていく。


「閣下に戦いをしかけるとは――」


 アドモスは名剣・光魔赤骨清濁牙を振るい、愛盾・光魔赤魂塊を構えて猛進。

 <暗紅ノ盾打突>で重装兵たちを盾ごと豪快に吹き飛ばし、<疾風打ち>の鋭い連撃を叩き込む。

 二人が放つ<赤北風もののふ>、<黒南風もののふ>たる武の極致が、公爵軍の残党を瞬く間に蹂躙していった。


 魔槍杖バルドークを片手に、ガリウスたちと共に開かれた道を一氣に駆け抜ける。


 皆の活躍を視界に収めつつ――。

 《氷縛柩(アイシクル・コフィン)》を連発し、光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスのフォローを行う。


 ファジアルが駆けては魔槍を振るい、ロルジュ公爵側の兵士を倒すのも見えた。


 すると、地盤沈下で崩落した前方の地面が、内側から爆発するように吹き飛んだ。


「――何が来る?」


 レオンが炎の剣を構え、ガリウスも青白い魔剣を正眼に据える。

 濛々たる粉塵の中から、ズズン、ガシャンという、生物の足音と重機械の駆動音が混ざり合ったような異様な重低音が響いてきた。


 粉塵を切り裂いて姿を現したのは、おぞましい異形の群れだ。


 巨大なムカデや装甲モグラ、蝙蝠といった複数の地下魔獣の肉体が無秩序に縫い合わされている。

 彼らの肉体には、キャタピラ、巨大な掘削ドリル、多関節の油圧アームといった第一世代の宇宙文明の採掘用魔機械が、骨肉の一部として完全に融合し、機械装甲を形成している。

 大昔に地下で稼働していた無骨な採掘魔道具が分解吸収され、そのまま装甲や武器として取り込まれている形だ。


 そして、それら『古きキメラ』たちの額や胸部には、不気味な蒼緑色の魔力を脈動させる巨大なクリスタルが深く埋め込まれていた。


「あれは……旧神の魔力が封じられたクリスタルか」


 ガリウスが赤い双眸を細め、忌々しげに吐き捨てる。

 そこに霊魔宝箱鑑定杖を持ったラムーが、素早く、隣に来て、


「シュウヤ様、鑑定に成功しました。あのクリスタルは、旧神ヴェガル。その名の旧神の魔力が内包されています。詳しい能力などは出ませんでしたが、ロルジュ公爵たち、軍産複合体がムサカの地で得ていた物で、間違いないでしょう」

「了解した、ありがとうラムー」

「はい」


 遺物。

 第一世代の宇宙の魔機械も関係があるのか?

 それと旧神の魔力。旧神ヴェガルは初耳。

 まさかムサカの地下には、【知能を有した群生旧神の間】のような場所があるのか?


 そして、ロルジュ公爵が地下で飼い慣らしていた『奥の手』というわけか。


「ギガァァァァッ!」


 キメラの一体が、複数の獣の鳴き声が混ざったような咆哮を上げ、床の大理石をキャタピラで削りながら猛スピードで突進してきた。

 太い油圧アームが振り上げられ、先端の回転ドリルが俺たちをミンチにすべく迫る。


「マイロードの御前に穢らわしい! <血滅・虎牙>!」


 前に躍り出たカルードが、流剣フライソーを逆手に構えて迎撃する。

 カルードは迫るドリルの回転力を利用するように、半身でその軌道を滑らせ、大回廊の太い柱を蹴って壁面を駆け上がった。

 そのまま天井付近から落下する勢いを乗せ、虎の牙の如き下から上への強烈な十字斬りを放つ。


 ガキィィィンッ!


 硬質な破砕音と共に、キメラの太い魔機械アームが根元から十文字に切断され、魔力オイルを撒き散らしながら吹き飛んだ。俺もそのカルードの横に出て、飛来してきた雷槍魔法を魔槍杖バルドークで防ぐ。


 同時に、魔槍杖バルドークに<血魔力>を込めて、雷槍魔法を繰り出した魔術師に<投擲>。

 宙を直進した魔槍杖バルドークは、魔術師の腹をぶち抜いて、建物の壁に突き刺さった。

 それを<握吸>で引き寄せる。


「マイロード、ありがとうございます」

「おう、まだまだ敵は多い――」


 飛翔してきた龍の頭が密集したようなキメラを<鎖型・滅印>の二つの<鎖>で貫いて倒した。


「遅い――」


 ユイがアゼロスとヴァサージの双剣を抜き放ち、<銀靱・壱>の神速でキメラの死角へと潜り込む。

 大回廊に転がる瓦礫や折れた柱の破片を足場に立体的な機動を見せた。

 キメラが背の装甲板から小型の掘削ブレードを乱射していくが、ユイは白銀の魔力の靱帯を、宙に編み上げるように展開し、それをトランポリンのように蹴って軌道を鋭角に変える。

 そのまま、キメラの胸部装甲の隙間――生身の魔獣の肉が露出している部分へ、双剣を深々と突き立てた。


「ギ、ギャアァ……」

「光の裁きを」


 機能不全に陥ったキメラの頭上からヴィーネが急降下してきた。

 古代邪竜ガドリセスと戦迅異剣コトナギを構え、<光魔銀蝶・武雷血>を発動。

 雷状の血の魔力と銀色の蝶の幻影を周囲に発生させ、<雷飛>のような速度で、キメラに近付く。

 古代邪竜ガドリセスと戦迅異剣コトナギの切っ先を、その額に埋め込まれていた魔力クリスタルに突き立てていた。


 強烈な雷撃がクリスタル内部で暴発し、キメラは内から紫電に焼かれて完全に沈黙した。


「にゃごぉ」


 黒豹(ロロ)が咆哮を上げ、巨大な黒虎(ロロ)へと姿を変えると、正面から別の多脚型キメラに突撃し、その強靭な顎で敵の魔機械装甲をバキバキと噛み砕く。

 キメラが多数の機械腕で反撃しようとするが、相棒は背から無数の触手骨剣を展開し、それらを的確に絡め取ってへし折っては、至近距離から、紅蓮の炎を吐き出した。


 敵の魔獣部分を激しく燃焼させた。

 更に、戦場に響き渡るような怪音が空を切り裂く。

 シャナが上空から舞い降り、群がるキメラたちに向けて<血ノ鳴魔声(ブラッド・ハヴァオス)>を放った。

 特殊な血の音波が魔機械の駆動音をかき消し、融合した魔獣の三半規管を激しく狂わせる。


 キメラたちが苦悶の咆哮を上げて一斉に足並みを乱した。


 そこに、金髪をなびかせたルマルディが滑り込む。

 傍らに浮遊する『アルルカンの把神書』が、「神獣ぅぅぅ――」と言いながら猫の足跡のマークを明滅させながら陽氣にページを羽ばたかせた。

 開かれたページから放射状の魔線が噴き出し、それが巨大な鮫の頭部へと変化する。

 鮫は濃密な魔力を内包した魔息を吐きながら突進し、動きの鈍ったキメラの装甲ごと、魔獣の肉体を豪快に噛み砕いて喰らい尽くした。

 相棒も聞こえているように、


「にゃごぉ」


 と鳴いて、触手骨剣を振るって、飛行型キメラと、バイクのような小型飛空艇に乗っている兵士を穿つ。


 ――その相棒に合わせ、シャナとルマルディの横を飛んで、敵の攻撃を避け、滑るように着地しては再び駆ける。

 宙に浮かび上がっていた丸いキメラへ肉薄し、魔槍杖バルドークで<魔皇・無閃>を繰り出し、両断して倒す。


 その横を飛び、またも飛び、避け、滑るように着地、駆けては――。

 両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出し、<鎖>を建物の壁と岩壁に突き刺し、一氣に収斂――。

 近くにいた大海賊の魔剣師の腹を石突で潰すように倒し、短剣使いの突きを柄で受けながら、<豪閃>の紅斧刃を短剣使いの頭部に喰らわせ、倒すまま後退――。

 <隻眼修羅>と<闇透纏視>に掌握察で戦場、地形を把握していく。

 

 ――相棒の触手が飛来、それをキャッチし、腕に絡むまま、スイングバイ――というように、遠心力を乗せるまま高い屋根の上に一氣に跳躍、移動しながら、目の前にいた射手へと魔槍杖バルドークを振るう――。


 射手の首にシュッと吸い込まれた紅斧刃の<魔皇・無閃>が、その首を刎ねた。


 そのまま屋根を滑るように降りて――着地した近くには、


「ガハハハッ! 面白ェオモチャじゃねぇか!」

「うむ、我らの力試しには丁度良い!」

「迅速に倒すまで――」


 ハンカイとバフハールが、豪快に笑い駆けていた。

 ミレイヴァルも<霊珠魔印>を輝かせながら前進し、聖槍シャルマッハの<一式・閃霊穿>で、丸い魔機械装甲の中心を穿つ。


 ハンカイは金剛樹の斧を大上段に構え、迫り来る重量級のキメラのキャタピラ部分を真っ向から叩き割る。

 バフハールは<夜伏外套>を展開し、影のような魔力でキメラを覆う。

 と、ゼロコンマ数秒の間の後、超高速の突進から幻魔百鬼刀を振るう――。


 キメラの魔機械の関節部を正確に打ち砕く。

 崩れたキメラの魔機械の群れ、ミレイヴァルたちは氣にせず、姿勢を下げたバフハールを飛び越えるまま聖槍シャルマッハを下から振るい、バフハールの右上に現れていたキメラを下から上に両断して倒す。


 その横で戦っている獄魔槍のグルド師匠が、


「ムサカの遺跡の品がここにも活かされるとはな――」


 獄魔槍を豪快に振り回し、キメラが放った重いドリルの突きを真っ向から槍の柄で受け止め、その圧倒的な腕力で強引に弾き返した。

 

 体勢を崩したキメラの胴体へ、岩を砕くような重い一撃を叩き込み、魔機械の装甲ごと深くひしゃげさせる。


 俺は、右を相棒に任せ、ハンカイが<投擲>した金剛樹の斧を見ながら前に出た。

 装甲を持つ魔獣のサーベルタイガーに近づく。

 魔獣は口を拡げ、そこから漆黒の魔刃を繰り出してきた。

 大きい駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を前面に出す。

 魔刃を、大きい<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を盾にして、防ぎながら前進――。

 大量に魔力を得たところで、駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。


 魔獣を凝視しつつ、速やかに、<血液加速(ブラッディアクセル)>を強め<雷飛>をも使う。

 間合いを詰めながら、魔獣の頭部へと魔槍杖バルドークの<血刃翔刹穿>を繰り出した。

 突き出た紅矛が、サーベルタイガーの歯牙を突き抜けた刹那、穂先から出た無数の血刃が、魔獣の頭部を突き抜けて、背後の多腕型キメラたちにも衝突していく。


 そして、左右からカリィが飛び上がり、怪士ノあやかしを<投擲>。

 キメラの装甲の間に怪士ノあやかしが突き刺さると、それをキメラごと引き寄せ、戻ってきた怪士ノあやかしの短剣ごと、ヨーヨーのストリングマウント技の半回転する蹴り技をキメラに喰らわせ、キメラを浮かせ、乱雑に回転していた短剣の怪士ノあやかしを華麗に掴みながら、浮かせたキメラの体をその怪士ノあやかしで斬り刻んでいた。


 そのカリィの下にいたユイの背後を狙うキメラを<鎖>でぶち抜き、右上にいた飛行型キメラには相棒が飛び掛かって喰らう、更に、俺は――。

 ユイの左上に跳び、飛行型キメラ魔機械のユンボのような存在に近づき<血龍仙閃>――。

 紅斧刃で分厚い鋼を両断し、飛行型キメラを倒した。


 魔軍夜行ノ槍業の師匠たちも、それぞれの流派の極致を見せつけていた。

 

 ソー師匠が、無覇と夢槍を振るい、足が長いキメラの片足ずつを両断し、残りの丸い胴体を無覇と夢槍で突き刺していた。<妙神・角突き>か。


 獄魔槍流のグルド師匠は、


「ヒャッハァ! 魔城ルグファントの攻防を思い出すぜ――」


 と、<獄魔破豪>を繰り出し、複数の魔獣型キメラを屠る。

 骨装具・鬼神二式を装備した悪愚槍流のトースン師匠は、〝魂喰いのイーター〟から骨の魔弾をぶちかます。

 雷炎槍エフィルマゾルを持つシュリ師匠も<雷炎縮地>から、<雷炎槍・瞬衝霊刃>を繰り出した。


 そして、シュレゴス・ロードの姿も漆黒の影となって飛来し、飛行型キメラに<鬼塊>を喰らわせて、魔力を吸収していくのが見えた。


 <影星・飛怪槍>を繰り出した飛怪槍流グラド師匠は、柱に片手で着地。

 飛怪槍が宙空を行き交い、キメラが放出した、ドローン型爆弾を宙空ですべて穿ち抜く。


 その近くの建物の陰にいた魔獣型の兵士をヴィーネの光線の矢が仕留める。

 それを見ながらブルドーザーのような装甲が付いた魔獣キメラたちの群れに、正面から近付く。

 数体の魔獣キメラは「ギャガァァァ」と咆哮、頭部が裂け、裂けた口から無数の乱杭歯を伸ばしてきたが――。

 魔槍杖バルドークで<紅蓮嵐穿>――。

 

 体と魔槍杖バルドークから龍の形をした<血魔力>と魑魅魍魎の魔力の嵐が噴出し、秘奥が宿る魔槍杖バルドークごと次元速度で直進――数体の魔獣キメラの乱杭歯ごと、背後の建物と瓦礫ごと地面を穿つ。

 

 即座に魔槍杖バルドークを消し、<超能力精神(サイキックマインド)>――。

 俺たちに飛来した魔矢と雷球を宙空で防ぐ。


 左斜め前にいた獄魔槍流のグルド師匠は、獄魔槍を盾に、大型のゴーレム型キメラの一撃を防ぎ、他のキメラから奪った巨大な鋼を、常識外れの軌道で振り回す。

 力任せに振るった二つの得物で、大型のゴーレム型の頭部を粉砕すると、巨大な鋼と獄魔槍を何度も振るうまま前進しては左右のゴーレム型キメラに激突させ、吹き飛ばす。


 グルド師匠の体から噴出した魔力と、二つとなった得物から噴出した衝撃波のような魔力は、理不尽な獄魔槍の炎となって、地面を這い、周囲にいたキメラ型の魔獣たちを吹き飛ばしていく。


 柱のようなモノが飛来した――。


「――ハッ、アレは任せろ」


 一陣の風が吹き抜けた。

 妙神槍流のソー師匠は、<雷炎縮地>をも超えると言われる神速の移動技、<魔略・妙縮飛>か。

 瞬きする間もなく、柱を蹴り飛ばしながら跳躍し前進した人型魔剣師たちに向かう。

 一人の背後を取ると、無覇と夢槍による<妙神・角突き>と<妙神・飛閃>の極限まで洗練された連撃を放ち、周囲の人型魔剣師たちを薙ぎ払っていく。

 

 強者らしき射手もいたが、その射手はユイが仕留めた。

 魔獣型のキメラもソー師匠に向かうが、


「王都を戦場に変えた公爵は万死に値する――」


 怒りのイルヴェーヌ師匠の声だ。

 彼女の槍の穂先が、白銀の月光を思わせる神聖な魔力を帯びる。

 俺の<断罪ノ月弧>や<断罪槍・月霊刃>の源流。

 イルヴェーヌ師匠が槍を一閃させると、冷徹で苛烈な月の刃が魔獣型を両断し、罪を浄化するように切り裂いていった。


「ふふっ、下の守りがおろそかよ!」


 同じく女性の師匠、雷炎槍流のシュリ師匠が猛烈な紫電と炎を纏って躍動する。

 <雷炎縮地>で敵の懐へ潜り込んだシュリ師匠は、下段の攻防に特化した<雷猫柳>と<雷払雲>を連続で繰り出し、新手の黒装束を着た連中の足を、的確に刈り取っていく。

 そして、体勢を崩した敵の群れに向け、正眼からの必殺の突き――<朧雷穿>が雷鳴と共に放たれ、数人の敵をまとめて黒焦げの灰へと変えた。


 その先では、飛行型のキメラと、巨大なメイスを持つ人型キメラを相手に、ヴィーネとユイが激しい連携を見せていた。ヴィーネが<光魔銀蝶・武雷血>の雷の魔力を纏いながら跳躍し、古代邪竜ガドリセスで飛行型キメラの鋼の翼を両断する。同時に、落下してきた機体をユイが<銀靱・壱>の神速で迎え撃ち、アゼロスとヴァサージの双剣でメイス持ちの人型キメラの装甲ごと、十文字に斬り裂いていた。


「シュウヤ、ここは任せて!」

「ご主人様、道は開きました!」


 二人の間を抜けるように、大きく頷いて地を蹴る。

 相棒の黒豹(ロロ)、レオン、ガリウス、カルードたちと共に、崩れかけた王城の正門を突破し、広大な城内へと足を踏み入れた。


 大理石の床と豪奢な彫刻が施された太い柱が並ぶ、巨大なエントランスホール。

 棒手裏剣のような物が、多数飛来した。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を使い、相棒とカルードを無数の飛び道具から守る。


「マイロード、ありがとうございます」

「ンン」


 不気味なほど静まり返っている。

 外の大乱戦の喧騒が、分厚い石壁に遮られて遠く聞こえるのみ。


「……飛び道具を寄越した奴らはロルジュの懐刀か」


 レオンが炎の剣を肩に担ぎ直し、周囲を鋭く睨みつける。

 ガリウスも青白い魔剣を正眼に据え、警戒を強めた。


 広間の奥、上階へと続く大階段の前に、一人の男が静かに立ち塞がっている。

 一切の装飾を省いた漆黒の装束。

 その両手には、周囲の光を吸い込むような、独特の反りを持つ二振りの黒い刃が握られていた。


 彼から放たれるのは、圧倒的な魔力の密度と、極限まで研ぎ澄まされた冷徹な殺意。


「……ここまで辿り着いたことは褒めてやろう。だが、我が主、ロルジュ公爵閣下の御前にこれ以上進ませるわけにはいかん」

「お前は?」


 と、俺が聞くと、


「……名乗ったところで――」

 

 また棒手裏剣を<投擲>してきた。

 更に間髪入れず、男の左手から火球と雷球が連続して生み出され、苛烈な勢いでこちらへ殺到してくる――。

 

続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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