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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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二千百二十五話 飛ぶ手紙と初めての魔法都市エルンストの絶景


「メトちゃんたちが魔界にいて、少し寂しいけど! ロロちゃんなら、わたしを選ぶはずよ!」

「ん、負けない、わたし」

「わたしさね、神獣ロロよ、わたしを選べば、特別なカソジックをあげよう」


 クレインの言葉に黒猫(ロロ)は首を傾げては、皆が呼ぶので、迷っては、ストレスが溜まったように、己の首元を、後ろ脚で掻き始めていた。


 ペントハウスのリビングで相棒が誰が膝を選ぶか選手権を繰り返す。


 そんなこんなで、ファントム・アルフのフェドゥとマガリディを新たな<従者長>として迎え入れ、少しの休息を取っていたところに――。


 塔ナイトレーンの防衛線を再構築し終えた大魔術師アキエ・エニグマが訪ねてきた。

 彼女の表情は、先程までの激戦の疲労を感じさせないほど晴れやかだ。


「シュウヤさん、忙しかったらごめんなさいね」

「いや、大丈夫だ」

「良かった。これを、アウグスト様から、貴方へどうしてもすぐに渡してほしいと託されたものがあるの」


 アキエが手を差し出すと、彼女の掌の上でパタパタと光の翼を羽ばたかせている小さな羊皮紙が、ひとりでに俺の目の前へと飛んできた。


「「「え?」」」

「ンン」

「「おぉ」」

「まぁ!」

「ん、驚き」

「「飛ぶ手紙!?」」

「不思議♪」

「ほぉ」

「新しいペット!?」


 ヴィーネたちだけでなく、バフハールや師匠たちも目を丸くしている。

 相棒がすかさず前足を伸ばして猫パンチを繰り出すが、見事に空を切った。

 翼を持つ羊皮紙は、目の前で上下左右に素早く飛び回り、相棒の鋭い爪から器用に逃げ回っている。


 相棒は連続跳躍、「ンン――」カンフーキャット化して、面白い。

 レベッカが、「ロロつぁぁぁん!」と興奮し、ロロハンターと化したが、捕まえられず。

 それも面白くて笑ってしまった。

 氣を取り直して、


「……これは、生きてるのか?」

「ふふ、あ、それは『言霊定着法』で記された【輪の真理】からの正式な招待状よ。エルンストにおける最高位の公文書。それによると……シュウヤさんたち【天凛の月】を、本会議執行員として迎え、貴方には臨時大魔術師(アークメイジ)の称号と正式認証の魔印を授与するそうよ」

「「「えっ」」」

「本物……ぐふふ」


 ヴィーネ、エヴァ、レベッカたちが驚きの声を上げる。

 クナは怪しく笑っていた。

 

「臨時とはいえ、大魔術師か」

「はい。オセべリア王国と【幻瞑暗黒回廊】で貴方たちが示してくれた武威と救済が、議長やアウグスト様たちの心を動かしたということ。それに、ラジヴァンの<魔魂回生>の儀式も、貴方の到着を待ってから行うと言っていたわ」


 なるほど。ラジヴァンは、あのエッジガルバの中で待ちぼうけを食らっているわけか。


「……そういうことなら、待たせるわけにはいかないな。それに、【魔法都市エルンスト】には一度行ってみたいと思っていたところだ」

「ん、魔法の都市。すごく興味ある」

「うんうん! どんな魔道具や魔法の施設があるのか、楽しみね!」


 エヴァとレベッカが目を輝かせる。

 ヴィーネも銀色の瞳を細め、穏やかに微笑んだ。


「ご主人様が臨時大魔術師……ふふ、誇らしいですね。護衛として、わたしも同行いたします」

「行きましょう」

「うん、ホムンクルスに魔導人形(ウォーガノフ)も氣になる」


 クナとミスティの言葉に頷いた。


「にゃお~」


 黒猫(ロロ)も俺の肩に飛び乗り、行く氣満々で喉を鳴らした。


「では、アキエ、案内を頼めるか?」

「はい、喜んで! エルンストへ向かう極秘の転移装置がある場所、魔塔ソフィアステラに案内します。本部の【大魔塔グラン・オラクル】の近くです」

「アキエ、わたしも見ていいのです?」

「クナも勿論、ついてきてください。信頼の証しとして、当然です」


 アキエの言葉を聞いたクナがこちらを見上げ、ニコッと満足げな笑みを浮かべた。

 彼女なら、見聞きした魔術や錬金術のシステムを瞬時に解析し、コピーすることも可能だからだろう。


 皆でペントハウスを屋上から出た。

 植物園をチラッと見たアキエは、


「ケイもここに来たがりましたが、わたしたちの一派としてエルンストに今はいます」

「了解した」


 アキエの案内の元、皆で飛翔し、セナアプアの魔法ギルド本部近くの【大魔塔グラン・オラクル】へと向かう。


 大魔塔グラン・オラクルは、大きい魔塔と浮遊岩が連結してできていた。

 中層区画の出入り口の一つで、多数の飛空挺も止まっている停留所に着地した。


 一般の魔術師たちが行き交う賑やかな回廊を抜けて、魔塔ソフィアステラの前に移動する。

 その魔塔は、こじんまりとした魔塔で倉庫のような印象を受けた。

 出入り口には、ラバに乗った怪しい魔術師が巨大な煙管を吸い、魔煙を吐いている。


 アキエは、


「ドード・マハカナン。中を利用します」

「アキエ……」


 ドードは呟き、俺たちを見て、


「なるほど、了解した」


 ドードは振り向くと指を鳴らす。一瞬で背後の空間が歪み円形の扉が出現。

 その出入り口の円形の扉が開くと、


「こちらです――」


 皆で進んだ。

 アキエは壁にカモフラージュされた行き止まりの空間で足を止めた。

 彼女が壁の特定のレンガに魔力を流し込むと、音もなく石壁がスライドし、無機質な金属の通路が現れる。


「ここからが最高機密のエリア。大魔術師の認証がないと入れないのです」


 歩くたびに、足下が輝く。

 肩にいた黒猫(ロロ)が「ンン」と鳴いて、通路に着地すると、床の匂いを嗅いでから、トコトコと歩いていく。肉球の印が床に生まれては、魔線が宙空に浮かぶ。

 綺麗な魔線は、誘導線のように俺たちを導いてくれていた。

 

 その魔線を捕まえようと跳躍している黒猫(ロロ)が先を進む。


 通路の奥には、厚さ数十センチはあろうかという重厚な魔鋼の扉があった。

 扉の表面には幾重にも重なる魔法陣が刻まれ、中央には水晶のレンズが埋め込まれている。


 アキエがレンズの前に立つと、赤い光線が彼女の網膜と魔力波形をスキャンした。


『――大魔術師アキエ・エニグマ。生体認証、及び魂の波長を確認。多重防衛プロトコルを解除します』


 機械的な合成音声が響き、ガチャンッ! と重低音を立てて扉が開く。

 中に広がっていたのは、床一面に緻密な転移陣が描かれたドーム状の部屋だった。


「これが【魔法都市エルンスト】へ直結する極秘の転移装置。さぁ、乗って」


 俺たちが転移陣の上に立つと、アキエが起動の詠唱を行う。

 陣と左右の巨大な柱が青白く発光し、視界が光に包まれた。


 浮遊感とわずかな空間のねじれを感じた後、光が収束する。

 転移した先は、先程までの無機質な部屋とは打って変わり、大理石と金箔で彩られた豪奢なエントランスホールだった。


「ここは……?」

「エルンストの『迎賓館』よ。各国の王族や、大魔術師クラスの賓客を招くための施設」


 アキエに促されて外へ出ると、目の前に広がっていたのは、ネオ・バロック様式の壮麗な宮殿だった。左右対称の美しい外観。中央のドーム屋根には青銅の彫刻が飾られ、前庭には澄んだ水を噴き上げる巨大な魔導噴水が設置されている。


 迎賓館というか、建物そのものが一つの巨大な魔導具に思える。

 それほどまでに重厚な魔力を放っていた。


「見事な造りだ」

「ん、綺麗。でも、空のほうがもっとすごい」


 エヴァが指差す先迎賓館のバルコニーの横には、透明なクリスタルで造られた円筒形の乗り物が待機していた。


「あれは『クリスタルバス』。エルンストの宙空を移動するための魔導昇降システムよ。これで真理の塔まで向かいましょう」


 クリスタルバスに乗り込むと、扉が閉まり、ふわりと重力を忘れたように機体が浮き上がる。

 透明な円筒形の床と壁越しに、エルンストの絶景が一氣に視界へ飛び込んできた。


「「「わぁ……!」」」


 レベッカとヴィーネが歓声を上げる。

 眼下には、巨大な魔導書を開いたような形をした奇抜な建造物群が立ち並び、色とりどりの魔導蒸気が街の隙間から立ち上っている。

 そして見上げる天空には、都市全体を覆うように、巨大な幾何学魔法陣が天体の軌道のようにゆっくりと回転していた。


 黒猫(ロロ)も「ンン――」喉声を鳴らし、前に移動。

 クリスタルバスの壁面に前足をかけ、流れる景色を興味津々に見つめている。

 アキエが少しだけ影のある笑みを浮かべた。

 眼下を流れる外縁部に近い通りや、人々が行き交う大通りの商店街は、他の大都市の喧騒と変わらない。

 だが、北側に視線を移せば、塔烈中立都市セナアプアにも似た巨大な浮遊岩と、宙に浮かぶガラスの魔塔が幾重にも連なっている。ペンタゴン型の巨大な建造物も見え、そこからは幾何学模様の魔線が宙空に向かって無数に放たれていた。

 その間を縫うように、空魔法士隊らしき編隊が規則正しく飛行している。

 一方、南側には巨大なゴミ処理場のような施設が口を開け、東側には、濃密な魔力を吐き出す煙突を備えた、化学工場さながらの魔科学施設が林立していた。


「……これが魔法の最高峰【魔法都市エルンスト】か。北側は塔烈中立都市セナアプアと似ている」

「えぇ。北側は魔法学院も多いですし、魔法大学もあります。有名なのがエルンスト大学です」

「エルンスト大学は知っている。昔、〝魔法基本大全〟を読んだことがあった」


 俺がそう言うと、ユイと目が合う。

 ユイも昔を思い出したのか、頬を朱に染めて、


「もうっ……」


 と少し不満げだが、可愛い。

 ヴィーネが、


「アキエ、パブラマンティ教授は、生きているのでしょうか」

「はい、〝魔法基本大全〟の作者の一人ですね。生きていますよ」

「「おぉ」」

「え? それは本当なんですの?」


 情報通、闇社会のフィクサーで、闇のリストを知っているクナが驚いている。

 その事もあり、皆がの視線が、アキエに注がれた。

 アキエは、少し面を食らったような表情を浮かべ、


「あ、はい。外には一千年近く出ていないはずなので、もう死んでいると思っている大魔術師たちもいるはずです」

「「……」」

「なるほど、通りで!」


 クナは一人、納得していた。

 ミスティは、


「氣になる。わたしも知っているし、魔法の基礎体系を広めた功績は大きいはず」

 

 と、レベッカを見ながら語るとレベッカは、


「うん、生きた伝説だからね、まさか生きているとは思わなかった」

「はい、〝魔法基本大全〟を作ったのは偉大な方です」


 キサラの言葉に皆が頷くと、レベッカが、


「挨拶に行きたいけど、忙しいのかな」


 アキエは、


「シュウヤ様たちなら、直ぐには無理ですが、会えるはずです。後ほど、手配してみます。そして、皆さん用の宿泊施設は複数用意済みです。高級宿の魔塔フルムーン、魔塔モモルアーン、霓裳カフカンの魔宿、迎賓館にも泊まれます」


「あぁ、手配ありがとう。アキエの案内ならどこでもいいぞ」

「ん、楽しみ」

「うんうん、魔法の街の宿なんてワクワクする!」

「後で観光しましょう!」

「はい!」

「「うん!」」

「ん!」


 エヴァとレベッカが目を輝かせていた。

 キサラたちも興奮気味だ。


『閣下、皆が観光するとは外に出たいです』

『御使い様、わたしも後で、外に出たいです』


 左目にいる常闇の水精霊ヘルメと右目にいる闇雷精霊グィヴァの念話に


『了解した』


 と念話を送る。和やかな空氣の中、クリスタルバスはエルンストの中心部へと向かって滑るように飛行していく。

 その途中――。

 <掌握察>と<闇透纏視>が、眼下の入り組んだ路地裏に漂う濃密な魔力の残滓を捉えた。


「……ん?」

「にゃ~」


 相棒も鳴いて反応したが、下のほう、スチーム排気管から漏れる魔力、蒸氣の陰……。

 そこには、ただならぬ魔力がぶつかり合った痕跡――。

 鋭利な刃物で空間を切り裂いたような氣配と、何かが爆ぜたような不気味な冷氣が入り混じった残滓が漂っていた。


「シュウヤ、何かいた?」

「……下の路地裏に、やけに濃密な魔力の残滓が残っていた。ただの魔術師の喧嘩じゃない。何かが派手にぶつかり合って、散った後のような氣配だ」

「へぇ……エルンストの治安維持部隊でも動いたのかしら?」


 レベッカの言葉に、アキエは少しだけ影のある笑みを浮かべた。


「……この街の光は強いけれど、その分、裏社会の闇もまた深いのよ。【闇のリスト】に載るような始末屋や、異端の魔術師たちが暗躍している。きっとその手の連中の縄張り争いでしょうね。見ての通り、巨大都市。治安維持の部隊も国のように役人たちがいるけれど、今の【魔術総武会】には、そこまで完全に管理する余裕はない」

「なるほどな。どこも裏の顔があるのは同じか」

「えぇ、注意が必要なのは、腐敗がどの程度進んでいるか、ね。ま、その腐敗も大魔術師(アークメイジ)故に、その本質が強者で無い限り、あまり意味(・・)がないけれど。ふふ」


 大魔術師アキエ・エニグマらしい言い回し。

 

 そんな会話を交わしているうちに、クリスタルバスは都市の中心部にそびえ立つ巨大な建造物――【真理の塔】の最上層部へと到着した。

 専用の魔導ゲートが開き、機体がゆっくりと内部のプラットフォームへ着地する。


「到着よ。アウグスト様たちが待っているわ」


 扉が開き、クリスタルバスから降り立つ。

 そこは、宙に浮かぶ巨大な魔導水晶の放つ青白い光に照らされた、すり鉢状の円形議場だった。

 星の運行を司る古の賢者たちの儀式を思わせる荘厳な空間。

 議席には、先日の【幻瞑暗黒回廊】の死闘を生き抜いた大魔術師たちが集結していた。


「――おお! シュウヤ殿、よくぞ来てくれた!」


 議長席からふわりと浮上し、真っ先に出迎えてくれたのは古代ドワーフの大魔術師アウグストだ。その後ろから、議長のベリル・エルレイやダルケル・ロケロンアたちも恭しく頭を下げる。


「アウグストさん、ベリル議長。招待状、ありがたく受け取らせてもらった」

「うむ! 貴殿ら【天凛の月】を、本会議執行員として、そしてシュウヤ殿を臨時大魔術師(アークメイジ)として迎えることは、我ら【魔術総武会】の総意じゃ。……じゃが、堅苦しい挨拶は後回しにしよう。待たせすぎると、あの馬鹿者がすねるからのう」


 アウグストが豪快に笑いながら、議場の中央に設けられた祭壇を指し示した。

 そこには、俺が渡した赤黒い魔力を放つ魔槍エッジガルバと、小型のピラミッド型の魔術数秘術〝霊夢封印〟、そして〝分霊秘奥箱〟が安置されている。


「ラジヴァンの<魔魂回生>だな」

「いかにも。シュウヤ殿、そして光魔ルシヴァルの皆様。特等席で見ていくがよい。これぞ、我ら【輪の真理】が誇る生命錬成の極致じゃ」


 アウグストが祭壇の前に立ち、両手を高く掲げた。

 彼の周囲に、九つの知恵の輪――<九紫ノ環>が出現し、複雑な軌道を描きながら高速で回転し始める。


「――始原の泥より出でし魂よ、真理の環を巡り、今再び肉の器へと還れ。<魔魂回生>!」


 アウグストの詠唱と共に、祭壇に突き立てられた魔槍エッジガルバから赤黒い魔力が間欠泉のごとく激しく噴き上がった。


 同時に〝霊夢封印〟と〝分霊秘奥箱〟の蓋が開き、中から半透明なラジヴァンの上半身と、揺らめく魂の残滓がふわりと宙へ浮かび上がる。

 直ぐに<九紫ノ環>がその魂を囲むように展開し、失われた下半身を濃密な魔力で強引に編み上げ始めた――バチバチと激しい紫電が弾け、膨大な魔力が物理的な肉体へと変換される重低音が、荘厳な議場の空気をビリビリと震わせた。


 やがて、光が収束する。

 祭壇の上に立っていたのは、見覚えのある荒々しい風貌の男――大魔術師ラジヴァンだった。


「……ふぅ。やっと息が吸えるぜ。上半身だけで箱の中に閉じ込められるのは、もう御免だ」


 ラジヴァンは首の骨をゴキリと鳴らし、己の真新しい下半身を確かめるように軽く足踏みをする。そして、祭壇から魔槍エッジガルバを引き抜くと、俺の方を見てニヤリと不敵に笑った。


「よぉ、槍使い――」


 と<魔闘術>系統を強めて、俺との間合いを潰したラジヴァン。

 一瞬の速さに、ヴィーネたちが身構えるが、ラジヴァンは片膝の頭を勢いよく床に突けた。


「――約束通り届けてくれたこと、本当に感謝している。絶剣イゼハを討った件も含めて、様々に……槍使い、シュウヤ殿、改めて……ありがとうござました!!」


 辺りが水を打ったように静まり返る。

 周囲を取り囲む他の大魔術師(アークメイジ)たちは、一様に驚愕の色を浮かべていた。

 離れた席にいた大魔術師キュイジーヌに至っては、呆然と手からワイングラスを床に取り落としている。あの傲岸不遜なラジヴァンが頭を下げるのは、それほどまでにあり得ない光景なのだろう。だが、

 

「ハハッ、氣にするな。あんたが生きていると知って、アウグストの爺さんも喜んでいたからな」

「カカッ! 誰が喜ぶか! この馬鹿者が無茶ばかりするから、わしの寿命が縮むのじゃ!」


 アウグストが憎まれ口を叩きながらも、その顔には安堵の笑みが浮かんでいた。

 ラジヴァンは、アウグストの物言いに肩で笑ってから、顔を上げた。


「ラジヴァンも立ってくれ」

「あぁ」


 と、立ち上がるが、肩をすくめている。

 大魔術師アキエ・エニグマが、


「本当に無事なのね」

「あぁ、保険が利いた」

「良かった」


 その言葉にラジヴァンは、頬を掻いている。

 照れたのか、ラジヴァンは、


「まあ、そういうこった。で、借りは必ず返す。……それに、お前とはまだサシでやってなかったからな。いずれ、俺のエッジガルバとお前のその神槍、どっちが上か決めようぜ?」

「あぁ、その時は手加減なしでいかせてもらうぞ」


 互いに武人としての獰猛な笑みを浮かべ、視線を交わす。

 その様子を見ていたベリル議長が、一つ咳払いをして場を締めた。


「ラジヴァンの無事も確認できたところで……シュウヤ殿。改めて、我ら【魔術総武会】は、貴殿ら光魔ルシヴァルとの強固な協力関係を望む。これからの魔界、そしてセラの闇を払うために」


 頷いた。


続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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