二千百二十二話 温かな崎長味噌とエヴァの微笑
キュベラスが展開した巨大な石門<異界の門>を潜り抜ける。
視界を覆っていた魔界の澱んだ闇が晴れ、代わりに広大なドーム状の空間が眼前に広がった。
【レン・サキナガの峰閣砦】に到着。
天守閣の最上階に位置する『大楼閣』だ。
見上げれば天井には本物の星空と見紛うばかりの巨大なプラネタリウムのような幻想的な光景が広がっている。
先に石門を潜っていた幽影魔族、ファントム・アルフの数千の民たちは、広間のあちこちで座り込んでいた。
壮麗な建築美もだが、魔界の辺境とは別次元の安全な空氣に圧倒されているんだろう。
「……ここが、避難場所……凄い。空に星が……」
フェドゥが震える声で呟き、長老バマラと隻眼の婆も信じられないといった様子で周囲を見渡していた。ヴィーネ、エヴァ、キュベラスたちは出迎えていたマルコと挨拶していく。
黒猫も、俺の肩から離れ、マルコたちの足下を駆けていた。
板の間を素早く駆けているが、曲がって後ろ脚を滑らせるのは、普通の猫と同じだな。面白い。
そこに大楼閣の奥にある重厚な襖が静かに開くと、見知った顔が姿を現した。
「――陛下! お帰りなさいませ!」
この砦の主のレンだ。
二十一番目の<筆頭従者長>。
和風と西洋風の意匠が美しく融合した鎧を身に纏う。
黒髪を揺らして駆け寄ってきた。
彼女の太腿に刻まれた『闘争:権化』と『鬼化:紅』の刺青が、かすかに魔力の脈動を見せている。
その後ろから、皆と挨拶していた監獄主監のルミコが、素早い忍者のような歩法で付き従っていた。
「おう、レン、ルミコ。急な大所帯で押し掛けて悪いな」
「とんでもございません。キュベラス殿からの事前の血文字で、大まかな事情は把握しております。……ファントム・アルフの皆様ですね。よくぞご無事で」
レンは恭しく一礼し、俺からフェドゥたちへと視線を向ける。
その凛とした当主としての威厳に幽影魔族たちは少し畏まったように頭を下げた。
「フェドゥ、彼女がこの峰閣砦の当主、レン・サキナガだ。俺の頼れる<筆頭従者長>の一人でもある。ここなら【闇神異形軍】の闇神リヴォグラフ側の戦力に他の諸侯だろうが、手出しはできない」
「……はい! レン様、どうかよろしくお願いいたします」
フェドゥが深く頭を下げると、レンは優しく微笑んで頷いた。
「えぇ、安心してください。……ルミコ、指示通りに」
「ハッ! 直ちに」
ルミコが短く応じると、彼女の合図で大楼閣の壁際に控えていた砦の者たち、魔技班や上草影衆の面々が一斉に動き出した。
中央に鎮座する巨大な円形エレベーターが、重厚な魔導の駆動音と共にゆっくりと上昇してくる。
ルミコは、
「皆様、これより地下の【地下大回廊】――円形闘技場へとご案内いたします。あそこなら数千の人数でも余裕を持って収容でき、十分な休息を取ることが可能です。順番にエレベーターへお乗りください!」
的確で無駄のない誘導により、怯えていた幽影魔族たちは混乱することなく、スムーズにエレベーターへと乗り込んでいく。
レンの統治能力と、部下たちの練度の高さが窺える見事な手際だ。
「……さすがだな、レン。統制が完璧に取れている」
「お褒めに預かり光栄です、陛下。そして、陛下の<筆頭従者長>として、この程度の差配ができなくては名折れですから」
レンは誇らしげに微笑む。
その様子を、ヴィーネやキュベラスも頼もしそうに見つめていた。
「にゃお~」
黒猫がレンの足下へ擦り寄り、喉を鳴らす。
レンは目を細め、相棒の頭を優しく撫でた。
「ロロ様もお疲れ様でした。地下で美味しい魔獣肉を用意しておりますよ」
相棒は見上げて、瞼を閉じて開き、
「ンン、にゃお、にゃ~」
嬉しそうに鳴いて、尻尾をピンと立てた。
俺たちも最後のエレベーターに乗り込み、砦の地下深くへと下降する。
到着した先は、巨大な岩壁に囲まれた【地下大回廊】。
普段は武闘大会が行われる円形闘技場だが、今は見事な避難所へと様変わりしていた。
岩壁の観客席には急ごしらえの毛布や敷物が用意され、中央の広場では、大きな鍋がいくつも火にかけられている。
そこから漂ってくるのは、香ばしくもどこか懐かしい匂い。
「味噌料理は前に出した、あれか」
「はい。今回は『崎長味噌』をふんだんに使った、メイジナ大平原の野菜と魔獣肉の特製豚汁風鍋です。ルミコたちが腕によりをかけて仕込みました」
レンが誇らしげに胸を張る。
昔、源左味噌と崎長味噌で元祖争いをした時のことを思い出す。
思わず笑みがこぼれた。
「それは美味そうだ。源左サシィが聞いたらまた対抗心を燃やしそうだがな」
「ふふ、サシィ殿の源左味噌も絶品ですが、疲れた体には我が家の崎長味噌の甘みが染み渡るはずですわ」
配給の列に並んだフェドゥや長老バマラたちが、温かい木の器を受け取る。
湯氣を立てる琥珀色の汁を一口啜った瞬間――。
「……あぁ……」
長老バマラの目から大粒の涙が溢れ出した。
隻眼の婆も、無言のまま震える両手で器を包み込み、噛み締めるように肉と汁を味わっている。
フェドゥの師匠格であるその老婆の顔にも、深い安堵の色が浮かんでいた。
「……温かい。血と恐怖の匂いがしない、本当に……優しい味がします」
フェドゥが涙声で呟きながら、ほっこりとした笑顔を見せた。
魔界の過酷な辺境で、常に命の危険に晒されていた彼らにとって、この一杯の温かい味噌汁は、何よりの救いとなったのだろう。
「良かったですね、ご主人様」
ヴィーネが俺の顔を見上げて優しく微笑む。
「あぁ。ひとまずは、彼らの安全は確保できたな」
俺もルミコから渡された器を受け取り、口に運び――。
崎長味噌の深いコクと魔獣肉の旨味を堪能した。
戦いの疲労がじんわりと溶けていくのを感じながら――。
円卓を囲むように座ったレン、ヴィーネ、キュベラス、そしてエヴァ、キサラたちへと向き直った。
「さて、レン。飯を食いながらで悪いが、少し現状のすり合わせと、今後の話をしよう」
レンは真剣な表情へと切り替わり、姿勢を正した。
キュベラスが、
「レン、私たちは先程、【穿山ウアンの戦場】の様子を窺ってきました。トトグディウス、ボシアド、デサロビアの軍勢が、リヴォグラフ本隊と総力戦を繰り広げています。あの規模の戦火、この【メイジナ大平原】へも余波が及ぶ可能性がありますが」
「えぇ、キュベラス殿。既に前線のソウゲンやシバから報告を受けています。現在、魔皇獣咆ケーゼンベルス様とバーソロンが【バーヴァイ地方】から平原にかけての警邏を強化しており、防衛線は盤石です」
先程偵察してきた情報を口にする。
レンの力強い返答に頷きつつ、安堵していると――大回廊の入り口が俄かに騒がしくなった。
「「「ウォォォン!」」」
黒狼たちの遠吠えと共に、一人の女性が足早に近づいてくる。
艶やかな装束に身を包み、洗練された人型に近い美貌を持つその女性は、百足魔族の第一王女ギュルアルデベロンテだった。
「シュウヤ様! 遅れましたわ!」
「よう、メイジナ大平原を駆けてきたか」
「ふふ、はい、黒狼隊と共にメイジナ大平原を急ぎ駆け、こちらへ合流いたしました」
「そのようだ。追いついてくれて助かる。傷場に転移陣を用意するのもありだな」
「はい、すでに、転移陣構築の準備に入っておりますが、まだまだです。素材は豊富にあるんですが」
「レンやサシィの源左の魔族に、デラバイン族、百足高魔族ハイデアンホザーにも魔術師はいるとは思うが、それでも無理か」
「はい、さすがにクナさんたちのような、超がつくほどの時空属性魔法を扱える大魔術師級はそうそういないのです」
なるほど。
「そして、ファントム・アルフの方々の救出、お見事でございます」
頷き、巨大な周辺の魔地図をチラッと見てから、
「おう、傷場の往復に加えて、この【メイジナの大街】から【メイジナ大街道】、【サネハダ街道街】や【ケイン街道】……さらにメイジナ大平原やバーヴァイ地方、極めつけに【デアンホザーの地】の行き来まで、随分と忙しそうだな」
皆が頷くと、第一王女ギュルアルデベロンテは、
「はい、そのご報告があります。妹のベベアルロンテ共々、惑星セラのフロルセイル各国、リョムラゴン王国やタータイム王国への魔傭兵派遣とベヒビア鉱山の利権管理は厳格に進めております。光魔ルシヴァルの資金源、そして情報網として、着実に機能し始めておりますわ」
頷いた。『百足の覚醒』のおかげで、彼女たちの社会構造そのものが進化し、大同盟の強固な基盤となっていることを示していた。
「よくやってくれている」
そして、不思議そうに俺たちの会話を聞いていた長老バマラに向け、
「彼女、実は百足高魔族ハイデアンホザーの姫様、第一王女ギュルアルデベロンテなんだ」
「え?」
「な、なんと……」
「「「ええ?」」」
食事をしていた幽影魔族のファントム・アルフたちがギョッと目を見開き、ざわめきが広がった。長老バマラは、改めて、第一王女の姿を凝視、
「あぁ、なるほど、人族系だが、言われて見れば、百足高魔族ハイデアンホザーの名残が随所に……」
「しかし、あのような恐ろしい異形の魔族が、なぜあんな美しい人型に……!」
「あっ、先程の『百足の覚醒』の効能です」
「「「あぁ」」」
「「なるほど」」
「たしかに話には数度、これが効果か……納得だ……」
「「ふむぅ」」
長老バマラが器を取り落としそうになるのを、隻眼の婆が「落ち着けバマラ」と魔杖で小突いて制している。
メタモルフォーゼ的に変化をしている第一王女の見た目は、そりゃ驚くか。
第一王女は周囲の反応を氣にすることなく優雅に一礼した。
そこで、第一王女ギュルアルデベロンテから、円卓の端に控えていた恐王ノクターの連絡役、大眷属、魔秘書官長ゲラに視線を移し、
「……ゲラ、もう報告済みだと思うが、惑星セラのレフテン王国のネレイスカリ姫、サーマリア王国のソーグブライト王太子、オセべリア王国のシャルドネ侯爵。各国の代表を集めての平和協定は成った。レフテン王国でのネレイスカリ派への支援、ありがたく思っている。そして、恐王ノクターとホーブスルタンと進めている『恐光魔通商協定』の現状はどうなっている?」
魔秘書官長ゲラは頷く。
「はい、シュウヤ様。大眷属ケスタの尽力により、【メイジナ大街道】沿いの専用醸造所の建設は極めて順調です。更に、バーソロン様を通じて【魔商人連合】のデン・マッハら穏健派との利権調整も上手くまとまりつつあります。『百足の覚醒』の流通経路は、確固たるものになるでしょう」
「了解した」
レンたちを見る。
ヴィーネ、ユイ、キュベラスが巨大な魔地図に印を付けて、説明していた。
特にここから遠く離れた南東、大平原コバトトアル、穿山ウアンの戦場などに、多く付いていた。
「……次にレン。キュベラスたちが見た【穿山ウアンの戦場】の戦局だが、あえて聞く。この砦や大平原への影響はどうだ?」
レンは、俺を見て頷く。
真剣な表情へと切り替わり、姿勢を正した。
「……大平原コバトトアルはここから南東で遠いですから、今のところは、この光魔ルシヴァルの領域、バーヴァイ地方とメイジナ地方には及んでおりません。魔皇獣咆ケーゼンベルス様と魔裁縫の女神アメンディ様、バーソロンとサシィも、防衛線を厚く敷いて警戒にあたっております」
「あぁ、そうだろうな」
と言うと、レンは、掲示板のような魔道具に出現させている魔地図に指揮棒を当て、
「はい、バーヴァイ地方の南、東と隣接している狩魔の王ボーフーン、厖婦闇眼ドミエル、魔蛾王ゼバルの領域を超えた先が、大平原コバトトアルですからね」
魔地図を見て頷いた。
「しかし、トトグディウス、ボシアド、デサロビア、リヴォグラフ、それらの軍隊の激突の余波は、幾重にも連鎖し、複数の波となって重なり合うことにより、巨大な津波を引き起こしかねない」
レンの言葉に呼応するように、魔地図に視覚的な演出が加わる。
それは、敵対する神々や諸侯の勢力が、赤黒い波紋となって光魔ルシヴァルの領域へ押し寄せてくる、生々しいシミュレーション映像だった。
レンは、魔道具の上の魔地図に指を当て、その演出を黒板の文字を消すように消し、
「――また、同時に警戒すべきは、敵方の先行部隊による地盤への破壊工作です。魔界の岩盤を意図的にズラす工作は、人工的に群発地震を引き起こすことと同義。遠距離から特定の断層へ極大の収束魔法を撃ち込む、あるいは、熱線や呪詛を放ち地下水脈を急激に蒸発、沸騰させる……。更に、そうして中から脆くなった地盤の要所に遅延式の魔導爆薬を仕掛け、連続的に起爆させれば、連鎖反応で大地震と大津波を簡単に誘発できます。最悪の複合災害の引き金になりますからね」
レンの言葉には、さまざまな意味があるだろうとは理解した。
隣にいたエヴァは「ん」と不安そうな表情を浮かべて、唇に右手の人差し指を当てていた。そんなエヴァの左手の甲に優しく右手を載せ、『大丈夫だ、あくまでも敵の攻撃予想にすぎない』ということを心で思う。
エヴァは直ぐに、天使の微笑を浮かべてくれた。
メルが手元の資料をまとめながら、
「はい、強引な力技を防ぎ続けている現状、遠くからの、特殊な波長の振動大魔法などで地脈の圧力を狂わせるという手法は、過去の大戦でも使われた凶悪な戦術です。敵の知恵――否、狡猾さと、魔科学、魔術学、魔導学といった技術力は、闇神リヴォグラフ側の戦力ならば余裕で到達できているはずです。無論、こちらにも強固な防御結界や対処できる人員が配置されているため状況は変わってきますが、あらゆる可能性を想定しておくのが防衛の基本ですからね」
皆が頷く。
「とはいえ憂慮すべき事態ばかりではありません。先日、総長たちが魔蛾王ゼバルの軍勢を打ち破り、ムガラ墓群を制圧した効果がここにきて生きています。アチたちの活躍もあり、東方の脅威が消え去ったことで、吸血神ルグナド様や恐王ノクター様、悪夢の女神ヴァーミナ様が安全地帯を大きく拡大させていますからね」
補足するとヴィーネも頷いて、レンと目配せし、
「はい。神々や諸侯が穿山ウアンで互いに潰し合い、リヴォグラフの戦力がそこに釘付けになっている間に、我ら光魔ルシヴァルの大同盟は、着実に魔界での地盤を盤石にしている状態です」
腕を組み、大きく頷いた。
かつて魔界の片隅から始まった勢力が、今や神々の領域をも凌駕するほどの安定した勢力圏を築き上げている。
情報を整理し終えたところで、レンがフェドゥたち幽影魔族に視線を向けた。
「陛下。彼らファントム・アルフの今後の処遇ですが……彼らの隠密能力は極めて優秀です。魔技班に組み込める人材はいるはず。黒鳩連隊と黒騎虎銃隊、内政が得意な方ならば、煉極組への配属も考えられます。そして、現在建設中の醸造所の防衛や、魔傭兵事業の新たな人員として、我が砦に迎え入れるのはいかがでしょうか。流通経路の護衛や諜報に、大いに役立つはずです」
レンの提案は理にかなっている。
だが、ヴィーネたちが偵察に出ている間、俺はエヴァやキサラと共に、長老バマラや隻眼の婆と話し合い、光魔ルシヴァルという存在の在り方について深く語り合っていた。
すると、フェドゥが弾かれたように立ち上がり、俺の前に進み出た。
「レン様のお言葉、大変ありがたく存じます。ですが……!」
フェドゥは真剣な眼差しで俺を見上げ、その場に深く跪いた。
「私たちは、シュウヤ様のお傍で……光魔ルシヴァルの血を賜り、直接あなた様のために働きたいのです! 絶望の淵から故郷を救い出してくださったその御恩……この命と魂を懸けてお返しさせてください!」
彼女の真っ直ぐな直訴に、大回廊にいるファントム・アルフたちも一斉に居住まいを正し、俺へ向けて深く頭を垂れた。
「砂城タータイムに住んでもらうこともできるが、魔界とセラを行き交う俺たちだ。戦場になる場合もある。今は、レンたちの厚意を受けてくれたらありがたい。そこで、もし良かったらだが、フェドゥ、マガリディの二人を<従者長>に迎え入れたい。どうだろう」
「「「おぉ」」」
「是非ともにお願いいたします! 血の家族になりたいです!」
フェドゥの言葉に頷いた。
「では、塔烈中立都市セナアプアにいるマガリディをここに連れてくるよ。家族たちにも会いたいだろうからな」
「はい!」
フェドゥが涙を拭い、弾けるような笑顔で力強く頷いた。
その様子を温かく見守っていたヴィーネたちと視線を交わし、アイテムボックスからゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡を取り出し設置。
「すぐ戻る。レン、バーソロン、サシィ、フェドゥたちを頼む」
「ハッ、お任せください」
「「はい」」
相棒の黒猫が「にゃっ」と鳴いて肩に飛び乗る。
ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡に魔力を通す。ヴィーネとエヴァを伴って波打つ鏡面の中へと足を踏み入れると、一瞬にしてバーヴァイ城の城主の間へと帰還した。
そこには、結構な面子が揃っていた。
デラバイン族の衛兵と、光魔騎士グラド。
<古兵・剣冑師鐔>のシタン。
古魔将アギュシュタン。
<筆頭従者>ソフィー。
<筆頭従者>ノノ。
【グラナダの道】の魔鋼族ベルマランのミューラー隊長。
イスラと、バスラート、ヴァイスン、モイロ、トクルの隊員。
ミウ、ポーさん、ムクラウエモンらの姿もある。
なかでも、光魔騎士グラド、シタン、古魔将アギュシュタンの三名は群を抜いた巨躯を誇り、その佇まいは異様なまでに渋すぎる。
どうやら城主の間では、ちょうど防衛に関する会議が行われている最中だったようだ。
魔裁縫の女神アメンディ様の姿は見えない。先程の報告にもあった通り、厖婦闇眼ドミエルの勢力を警戒し、前線に出ているのだろう。
「あっ!!」
「「陛下!」」
「「主!!」」
「「「シュウヤ様!」」」
ゴウール・ソウル・デルメンデスの鏡は背後に置いたまま、逸早く間合いを詰めてきた光魔騎士グラドとシタンとアギュシュタンに向け、
「よっ、いつも防衛に力を入れてもらってありがとうな」
と感謝の想いで声をかけた。
「陛下! ありがたき言葉です!」
「ハッ、主!」
「オォ! オオイナル、我ガ主!」
シタンは魔豪大剣ビララフの太い柄を両手で持ち、切っ先を床に向けて、騎士らしい重厚な構えで臣下の礼をとってみせた。
やはり、魔界専属の漆黒武者、格好いい朧武者にしか見えない。
「にゃお~」
肩にいる相棒も胸を張り、ドヤ顔で光魔騎士グラドたちに挨拶するように鳴いている。
続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。
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