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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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2119/2162

二千百十八話 薄紫肌の銀髪女魔族フェドゥ


「「「ウォォォン!」」」


 出迎えたのは黒狼の群れたちと、黒狼隊のパパス、リューリュ、ツィクハル。

 そして光魔騎士ファトラと第一王女ギュルアルデベロンテと百足魔族デアンホザーの多数の兵士と百足高魔族ハイデアンホザーの親衛隊。魔皇メイジナと神魔の女神バルドークと〝巧手四櫂〟の面々がいた。


 魔皇獣咆ケーゼンベルスはいない。

 サシィやレガナ、レン、バーソロンは【レン・サキナガの峰閣砦】にいるようで、ここにはいない。


「「「シュウヤ様!」」」

「「シュウヤ様、お帰りなさいませ」」

「主、お帰りだ」


 皆に、


「おう、ただいまだ。簡単に報告すると、サーマリア王国やオセベリア王国などの人族側が、セナアプアで平和協定を結ぶことに成功した。その後、【幻瞑暗黒回廊】から闇神リヴォグラフ側の戦力が乱入してきたが、参戦して下界への被害は最小限に食い止めている」

「さすがお見事です」

「あぁ。直ちに崩壊しかかっていた魔塔ナイトレーンから突入し、【異形のヴォッファン】の軍も破った。今は各魔塔の出入り口の確保を行っている段階だ」


 要点を伝えてから、フェドゥとマガリディたち幽影魔族の経緯を告げる。

 フェドゥは周囲の景色と立ち並ぶ面々を交互に見比べ、ハッとしたように息を呑んだ。


「皆様――」


 慌てた様子で、深く頭を下げていた。

 白銀の髪が揺れると、ヴィーネが、


「皆には、後ほど血文字で委細を送りますので」


 その発言にキサラも、


「〝光紋の腕輪〟と〝光陣の宝珠〟により即座に通信が可能になりましたが、魔次元の紐のようにセラと魔界での通信会話も、完璧にできるようになれば良いんですが」

「それはたしかに。今でもできることはできる。砂城タータイムの広間、〝星霜の運行盤アストロラーベ・クロノス〟と魔皇碑石をシュウヤ様が用いれば可能」


 ヴィーネの言葉に頷く。

 光魔騎士ファトラは、


「はい、セラと魔界の時間差は昔に比べたら楽ですよ。そして、捕虜を得たのですね。しかも、闇神リヴォグラフ側の戦力だった魔族を、即座に救いに動くとは、素晴らしい判断です」

 

 と発言すると、


「【幻瞑暗黒回廊】の風通しが良くなったのは良きことだ」


 そのパパスの言葉に、


「「たしかに!」」


 リューリュたちが声を揃えて同意すると、


「「「はい!」」」

「【異形のヴォッファン】の強者たちの撃破はめでたい」

「「はい、おめでとうございます」」

「「なるほど」」


 周囲の面々も同様に発言していく。

 そんな皆越しに、周囲を把握すると、傷場を中心に、広場の体裁が整えられてあった。

 櫓と兵舎、ポポブムとにた魔獣たちの飼育小屋、マバオン用の乳搾り施設、そうした建物が増えて、街道も整備されてあった。

 フェドゥは、


「……ここはかつて魔界王子テーバロンテが支配していた傷場ですよね。やはり、貴方たちが噂に聞く、テーバロンテを打ち破った『光魔ルシヴァル』……」


 俺たちには分かりきったことだが、フェドゥには、なにもかもが新鮮か。

 その視線が、俺の隣に立つヴィーネ、ユイ、キサラ、エヴァ、そしてキュベラスへと向けられる。圧倒的な魔力を放ちながらも、涼しげな表情を崩さない美しき女戦士たち。


 そして、フェドゥは俺を凝視してくる。

 細い銀の眉に、銀色と蒼色が混じる瞳。

 すっと通った鼻筋に小さな唇と細い顎のラインが彼女の美しさを際立たせている。

 薄い紫色の肌の大半を隠す、露出の少ない黒いナノメタル繊維のような防護服は、首元のデザインが洒落ており、そこから覗く銀のインナーは、細いワイヤーが鎖骨の横を通り背へと伸びていて、目を惹かれた。薄い紫色の肌が、そのワイヤーと反応して少し魔力を発している。


「……闇神リヴォグラフ様の軍勢を幾度も退けた実力は、本物……」


 と呟く。

 フェドゥの瞳には畏怖があるが、かすかな光も宿っているようにも見えた。


「ンン、にゃお」


 黒猫(ロロ)は鳴いて黒豹と化した。

 そして、フェドゥに向けて、


「それで、幽影魔族の集落だが、どこを経由するのが一番近いかな。今出す――」


 アイテムボックスから〝レドミヤの魔法鏡〟を取り出し設置し魔力を通した。


 記憶している魔界側の転移先リストが表示される。


 【魔界:メリアディの書網零閣】

 【魔界:ルグファント森林】

 【魔界:ヴァルマスクの大街】

 【魔界:アムシャビス族の秘密研究所の内部】

 【魔界:メリアディの荒廃した地】

 【魔界:エルフィンベイル魔命の妖城の冥界の庭】

 【魔界:メリアディ要塞の大広間】

 【魔界:レン・サキナガの峰閣砦】

 【魔界:骨鰐魔神ベマドーラーの内部】

 【魔界:南華大山山頂部】

 【魔界:ガルドマイラ魔炎城】の城主の間

 【魔界:ウラニリの大霊神廟の遺跡】

 【魔界:【源左サシィの槍斧ヶ丘】の奥座敷の庭】

 【魔界:テーバロンテの王婆旧宮の大広間】

 【惑星セラ:フロルセイル地方、西マハハイム地方、傷場の地】

 【惑星セラ:塔烈中立都市セナアプア、魔塔ゲルハット屋上】

 【惑星セラ:マハハイム地方十二樹海のサイデイル】

 【魔界:グィリーフィル地方・傷場】

 【惑星セラ:北マハハイム地方魔境の大森林、元皇都キシリア】

 【惑星セラ:北マハハイム地方、聖都サザムンド】

 【惑星セラ:北マハハイム地方、金アロステの丘、光の神殿】

 【惑星セラ:ゴルディクス大砂漠、犀湖都市、宿屋】

 【惑星セラ:ゴルディクス大砂漠、犀湖都市、人神アーメフの大神殿内部】

 【惑星セラ:ゴルディクス大砂漠、突岩の街フーディと暁の墓碑の密使の地下神殿と大仙人の時の揺り籠】

 【惑星セラ・ゴルディクス大砂漠、ダモアヌン山】

 【惑星セラ・イーゾン山、八峰大墳墓】

 【惑星セラ・マハハイム山脈・ゴルディーバの里】

 【惑星セラ・旧エイジハル血院遺跡・元【暗夜十三の執行者】の地下基地】


 リストを見たフェドゥは、少し考え込んでから一点を指差した。


「ここです。この【ルグファント森林】。私たちの集落は辺境の深い森の中にあります。ここからなら、空を飛べばすぐに辿り着けるはずです」

「ルグファントの森林……」

「ここでルグファントの森林とは少し驚きました」


 キサラとヴィーネの言葉に頷く。


「たしかにここでルグファントの森林に向かうことになるとは、思わなかった。

「ん、グラド師匠にシュリ師匠たちを呼ぶ?」

「俺たちも見学はしたいが、今は、幽影魔族、ファントム・アルフの集落を優先しよう」

「ん」

「そうですね」


 皆の返事に頷きながら〝レドミヤの魔法鏡〟の【魔界:ルグファント森林】を選択する。

 〝レドミヤの魔法鏡〟から魔力が噴き出て後方へ広がるや否や、周囲の【デアンホザーの地】の世界を切り取ったように鬱蒼と生い茂る巨大な魔樹の群れ。その枝葉が天を覆い隠し、昼間であっても薄暗い【ルグファント森林】に変化を遂げていた。

 その転移場所と、今、俺たちがいる場所の境目の空間は、ゆらゆらと揺らいでいる。


「おぉ……転移魔道具も……」


 フェドゥの言葉に頷きながら神魔の女神バルドークたちを見て、


「バルドークにパパスたちは、ここの発展を頼むぞ」

「「「はい!」」」


 フェドゥに、


「フェドゥ、俺たちもルグファントの森林は初めてだ。不備があったらすまない」


 と素直に言うと、フェドゥは、一瞬、きょとんとしてから、微笑み、


「とんでもない。救いに動いてくれているだけでも、ありがたいのです」

「了解した。では行こう」


 と笑顔を向けると、フェドゥは笑顔となって、「ハッ――」と敬礼を行う。


 そのフェドゥに頷いてから腕を〝レドミヤの魔法鏡〟の先に広がるルグファントの森林に向けてから、皆で〝レドミヤの魔法鏡〟の中に踏み込む。


 振り返ると、〝レドミヤの魔法鏡〟の向こう側に展開していた【デアンホザーの地】にいる光魔騎士ファトラたちの姿が見えた。その〝レドミヤの魔法鏡〟を仕舞う。

 

 太陽の光とは異なる冷たい銀光が照らし出す、不思議な暗さに包まれた魔夜世界。

 肺を満たす魔界特有の重く濃密な空氣が、ここが紛れもなくルグファント森林であることを肌で実感させる。


 相棒は、一瞬で、神獣ロロディーヌに変化――。


「え……」


 と、巨大な神獣の姿を見たフェドゥは驚く。

 皆は苦笑、キュベラスとキサラは周囲を警戒するように魔杖から赤い魔刃をブゥゥゥンと生み出していた。渋いプラズマにも見える魔剣、ムラサメブレード・改系の武器だ。


 神獣(ロロ)は、頭部を東のほうに向けている。

 たしかにそこから複数の魔素があり、魔塔、尖塔の一部が木々の間から覗かせていた。

 とりあえず、フェドゥに視線を向けてから、


「フェドゥ、案内を頼むとして……少し歩くがよいかな」

「あ、はい」

「「はい」」

「ンン」


 巨大な相棒が喉音を響かせ、先を歩む。

 四肢の重みで、森の土が凹んでいくが、途中から足音が消えていた。

 その相棒に案内されるまま、歩みを進めると、森の開けた場所に出た。

 ――遥か遠方に巨大な城の威容が見えた。


「「おぉ」」

「ご主人様、あれが、魔城ルグファント……」

「だろうな……」

「ん、驚き」


 あれが、かつて師匠たちが拠点としていた魔城ルグファント。

 だが、様子がおかしい。


 <闇透纏視>と<隻眼修羅>を発動し、遠くの魔城を凝視する。

 廃墟となっているはずの城は、周囲の環境を歪めるほどの禍々しい魔力に包まれていた。

 城の尖塔には巨大な紫黒の靄が巻き付き、明らかに『諸侯クラス』の何者かが陣取り、この地を新たな巣として利用している氣配がある。


「今は、廃墟でないのですね」

「あぁ。何かが棲み着いている。それも、相当な大物が」

 

 皆が頷いた。

 魔軍夜行ノ槍業の八槍卿――飛怪槍流グラド師匠、断罪槍流イルヴェーヌ師匠、獄魔槍流グルド師匠、悪愚槍流トースン師匠、雷炎槍流シュリ師匠、女帝槍レプイレス師匠、妙神槍流ソー師匠、塔魂魔槍のセイオクス師匠。


 その師匠たちの悲願の一つが、魔城ルグファントの奪還。

 大切な拠点だ。キサラがダモアヌンの魔槍を握り直し、


「シュウヤ様。あの城にいる者たちも、掃除しますか?」

 

 頭部を左右にふり、


「否だ。先程も言ったがフェドゥの集落が先。だが、いずれは師匠たちと共に乗り込むさ」

「はい!」

「ん、師匠たちのために」

「そうね。その時は私も全力で手伝うわ」


 エヴァとユイも力強く頷く。

 魔城から視線を外し、フェドゥへと向き直った。


「ンン、にゃおぉ」


 相棒も鳴いて、フェドゥを見やる。

 フェドゥの長い銀髪が相棒の荒い吐息を受け、持ち上がって靡いていた。

 その神威を伴う圧倒的な巨躯に、フェドゥは息を呑むように、触手手綱を受け取ると、「きゃぁぁ」と悲鳴が響いたように、触手が全身に絡んだフェドゥは、あっと言う間に相棒の頭部に運ばれた。


 皆も相棒の頭部へと飛び乗る。

 相棒の頭部には、黒毛の座布団のような物が作られ、そこにフェドゥは座っていた。

 フェドゥは唖然としつつも、相棒の触手の肉球に、背を撫でられている。


 そのフェドゥに手を差し出し、


「フェドゥ、方角を教えてくれるとありがたい」

「は、はい!」


 フェドゥは俺の手を取り立ち上がる。

 フェドゥと共に相棒の鼻先に移動し、フェドゥは、「この方角です。闇神リヴォグラフ側の戦力は勿論、諸侯、魔界の神々の勢力に、モンスターも多いので……」


 フェドゥの腕先を凝視し、


「危険は、俺たちが対処しよう」


 と告げてからフェドゥを見やると、

 フェドゥは頬を朱に染め「……はい」と静かに返事をした。

 神獣ロロディーヌも、ムクッとした動きで、その方角に頭部を向けた。

 鼻先にいるフェドゥの背を片手で支えながら、相棒の首元付近に移動する。

 神獣ロロディーヌは、フワッと浮かぶと、森の木々を揺らして飛翔を開始した。


 上空に出ると、魔界特有の混沌とした景色が眼下に広がった。

 

「近くには闇神リヴォグラフの領域、十層地獄の王トトグディウスの領域、その間には穿山ウアンの戦場があるので危険です……」

「あぁ、そんなことは百も承知。その危険な状況、敵の戦力が分かる程度で教えてくれ」


 フェドゥは頷く。

 

「はい、幽影魔族の集落の森の周りは、たぶんですが、まだゴルム・ザードの軍勢が固めているはずですが、あの一帯は、暴虐の王ボシアド、悪神デサロビア、魔界王子ライアン、宵闇の女王レブラ、そして十層地獄の王トトグディウス……これら強大すぎる勢力の領域が重なり合う『緩衝地帯』でもありますので、もしかしたらわたしたちの記憶は、すでに過去のものになっている可能性もあります。言うのが遅くて……すいません」


 ま、急ぎたい氣持ちは当然だからな。


「……だからこそゴルム・ザードのような多眼魔将が、お前たちのような小規模な集落を制圧して、前線基地か盾代わりにしようとしているわけか」

「はい……少しでも派手に動けば、他の領域の主たちを刺激するかもしれません」


 フェドゥが不安げに周囲の空を見渡す。

 だが、その不安を拭い去るように、キュベラスがふわりと微笑みかけた。


「フェドゥさん、心配はいりませんよ」


 キュベラスは肩に乗る桃色のリスのケニィを撫でながら、


「シュウヤ様はとてもお優しく、そして誰よりも頼りになるお方です。他の勢力が横槍を入れてこようと、関係ありません。ね、ケニィ?」

「キュキュッ!」


 ケニィが愛らしく鳴くと、巨大な相棒も振動させ、「ンンン」と喉声で応えた。

 重低音のゴロゴロとした喉音を響かせてくる。

 

「おう、他所から文句が出たなら、そいつらも戦うことになるだろう」

「……はいっ!」


 フェドゥの顔から迷いが消え、決意の色が浮かんだ。

 神獣ロロディーヌが爆発的な速度で魔界の空を切り裂く。

 眼下の荒野では、神獣の氣配に怯えた末端の魔族やモンスターたちが、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っていくのが見えた。


 やがて、前方に黒紫の葉を茂らせた鬱蒼とした森が見えてきた。

 だが、その上空には不吉な黒煙が立ち昇り、風に乗って微かな悲鳴と焦げた肉の匂いが運ばれてくる。


「凄い、もうあそこです! 私の故郷が……!」


 眼下を見下ろせば、森の木々がなぎ倒され、集落の家屋が業火に包まれていた。

 そこを蹂躙しているのは、体中に無数の目玉を蠢かせ、魔獣と融合したような異形の兵士たち――多眼魔将ゴルム・ザードの配下どもだろう。


 二眼二腕と二眼四腕の、人型の将校魔族もいる。

 先程エヴァが二人の記憶を映像として見ていた通りの魔族たちだ。

 

 彼らは逃げ惑う幽影魔族たちを追い詰め、残虐な笑い声を上げながら槍や剣を突き立てようとしている。


 まさに地獄絵図。


「……相棒、派手に挨拶してやれ」

「にゃごぁぁぁッ!!」


 神獣ロロディーヌが急降下しながら、咆哮と共に極太の紅蓮の炎を吐き出した。

 空を覆う劫火が、集落を囲んでいた目玉と魔獣が融合したような異形兵たちを頭上から真っ向から飲み込む。


「「「ギェェェェッ!?」」」


 異形たちの悲鳴が響き、密集していた敵の陣形が一瞬にして崩壊し、炭化した死体が散らばった。


「行くぞ!」


 皆で、炎の余波を抜けるように、ロロディーヌの背から地上へと飛び降りた。


「キュベラス、逃げ遅れた者たちの避難を頼む!」

「お任せください! ――<異界の門>!」


 キュベラスが着地と同時に全身から<血魔力>を放出し、両手を掲げる。

 集落の広場に巨大な石門が出現し、彼女はケニィと共に逃げ惑う幽影魔族たちを門の向こうの安全圏へと誘導し始めた。敵が妨害しようと迫るが、キュベラスは空間魔法で敵の足下を歪め、動きを完全に封じ込める。


「邪魔よッ!」


 ユイが<銀靱・壱>の神速で戦場を駆け抜ける。

 イギル・ヴァイスナーの双剣が銀色の残像を描き、悲鳴を上げる暇も与えずに異形兵たちの首を次々と刎ね飛ばした。反転しては逆袈裟を行い、加速しながらまた横の紫電一閃――。


 流れるような剣術で、数秒の間に、数十人が斬られていく。

 と、思えば、片足を軸に急ストップからの横に回転し、軸をずらしながらの袈裟斬りが、将校クラスの魔族の肩口から胸元に決まっていた。


 見事なターン、エヴァ的に言えば、冴えている。

 そのユイの左を狙っていた射手の魔族を左手の<鎖の因子>から出した<鎖>でぶち抜く。

 《(スノー)命体鋼(・コア・フルボディ)》を発動させ、《氷縛柩(アイシクル・コフィン)》と《氷刀魚沼アイスソードフィッシュ・マーシュ》を展開――。


 十八番の《氷竜列(フリーズドラゴネス)》をも使い、多頭の氷竜を衝突させて、戦場に雪化粧を造り上げた。一氣に多数の異形の魔族たちを氷漬けにした。


 ヴィーネは翡翠の蛇弓(バジュラ)から光線の矢を射出。

 異形兵を次々に射貫き、前に出ては<羅迅剣>を繰り出して、翡翠の蛇弓(バジュラ)の光線の弦を剣にように使って薙ぎ払ってから<光魔銀蝶・武雷血>を発動。

 雷状の<血魔力>を纏い、古代邪竜ガドリセスと戦迅異剣コトナギの双閃が、無数の目を持つ巨漢の魔族を十字に切り裂く。


「往きなさい――<補陀落ポータラカ>!!」


 キサラが放ったダモアヌンの魔槍が、一直線に並んだ敵兵の胴を次々と貫き、螺旋状のフィラメントが内側から敵を拘束し粉砕していく。


「ん、右は任せて――」


 エヴァが浮遊し、<霊血導超念力>で崩れた家屋の瓦礫と白皇鋼(ホワイトタングーン)の刃を複合させ、密集する敵部隊の頭上へと隕石のように叩き落とした。


 着地と同時に<血鎖の饗宴>を発動する。

 足下から波頭のように展開した無数の血鎖が、残存する異形兵たちの胴や四肢を容赦なく貫く。蜂の巣に変えるだけでなく、まるで巨大な粉砕機に巻き込まれたかのように一瞬にして敵を血飛沫へと変えていった。

 血が森の土を濡らす前に吸収――右手へ魔槍杖バルドークを召喚する。

 逃げようと背を向けた隊長クラスの魔族へ向け、<雷飛>を発動――。

 間合いを一瞬で零とした刹那、そのまま左足で地面を踏み潰しながら<魔雷ノ風穿>を放つ。

 雷風を纏った一撃が分厚い背を穿ち、肉を焦がす鋭い音が響いた。


 魔槍杖バルドークを上向かせて死体を吹き飛ばし、魔矢を右に移動し避け、次なる標的の射手たちを見据え、<雷光瞬槍>で距離を詰める。

 射手の持つ四つの瞳に俺の姿が映るのを見ながら<魔皇・無閃>――。

 その首を刎ね飛ばし、更に巨大な魔網を投げようとしていた部隊へ向け、魔槍杖バルドークに<血魔力>を込め<投擲>する――。

 

 直進した魔槍杖バルドークは神魔の女神バルドークの幻影を放ちながら、闇神リヴォグラフの幻影を放った大きい魔網ごと、それを展開させていた敵と敵部隊の中心をぶち抜き、地面に深く突き刺さった。ドッと地面がクレイモアが破裂するように飛び散る。


 ユイとヴィーネが左右交差するように駆け、近くにいる魔族たちを斬り伏せる。

 相棒と共に駆け、魔槍杖バルドークを<握吸>で吸い寄せては、《氷縛柩(アイシクル・コフィン)》で左にいた魔術師の火球を防ぐと、相棒が「にゃご!」と紅蓮の炎を吐いて、魔術師の魔法防御の盾ごと、魔術師を燃焼、炭化させ倒す。


 集落を蹂躙していた数百の部隊は、圧倒的な力の前に沈黙した。


「……すごい。これが、光魔ルシヴァルの力……」


 キュベラスの背後で保護された幽影魔族たちが、信じられないものを見るように俺たちを見つめている。フェドゥも涙を浮かべながら、同胞たちの無事を確認して安堵の表情を見せた。


 だが、戦いはまだ終わっていない。

 森の奥から先ほどの兵士たちとは比較にならない、濃密で悍ましい魔力が這い寄ってくるのを感じた。


「……ほう。まさかこんな辺境の森に、余興の相手が現れるとはな」


 バキバキと無数の巨木がへし折られる轟音。

 立ち籠める土煙を割って<暗黒魔力>を纏った小山のような巨躯が姿を現した。

 その全身を覆う巨大かつ無数の眼球が、一斉にこちらをギョロリと睨みつけてくる。

 多眼魔将ゴルム・ザードか。

 悪神デサロビア系の眷族にも見える悍ましい姿だが、おそらく闇神リヴォグラフ側に与する戦力だろう。


続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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