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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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2110/2118

二千百九話 和平の胎動と黒豹の拍手

 魔導要塞の事件から二日後――。

 魔傭兵団アレグションの残党狩りと捕虜の情報から、背後のピサード大商会、サーマリア王国のロルジュ公爵、ラスニュ侯爵、元塔烈中立都市セナアプア上院評議委員ドイガルガの名が上がる。


 レザライサは、

「ピサード大商会の連中は、分かりやすく協力を申し出てきたが、あまり関係のない街道の警備に回したぞ。しかし、白を切れると思い込んでいるのがな……」

 

 ピサード大商会の連中を潰したいんだろう。

 レザライサの瞳に宿る鋭い光が、裏切り者への容赦ない敵意を物語っていた。氣持ちは分かるが、サーマリア王国と複数の大商会が絡むうえに、関係のない者たちも多い。

 俺は、レザライサとペレランドラ、そしてヴィーネたちの顔ぶれを順に見てから、

「潰したところで損な役回りが増えるのは、この都市の中小の商会だ。世話人たちが裏を取っているのは分かっているが、今は、あえて後回しでいい。【血月布武】に手を出したことは、ゆっくりと粛々に、な?」

 

 俺の提案に、皆が静かに頷く。

 だが、レザライサは不敵な笑みを浮かべ、


「ハッ、ゆっくりか。父だけでなく、すでにエキュサルと魔弓を付かせて、すぐに狩れる位置にいるんだが……」

「……今は泳がせよう。向こうも両建てが効かないと分かれば、こちら側に大きく傾く。そして、傾いたままにできるだろう。そうすればペレランドラたちの商会にも大きくプラスに働く」

「敵の敵は味方か。了解した。泳がせよう。しかし、その天秤が向こう側に傾いたら……」

 

 レザライサは、言葉の代わりに指を首筋に当てて横に引くジェスチャーを見せた。その仕草には、獲物を待つ捕食者のような冷徹さが漂っている。

 俺は頷いて、


「あぁ、そうだな」

 

 返すと同時に、レザライサが耳元に指先を触れた。

「味方とルシエンヌたちからだ……」

 

 頷いた。ヴィーネたちと視線を交わすと、彼女たちの表情にも微かな緊張が走る。


「平和に繋がれば良いんですが」

「ん」

「サーマリア王国側も、ヒュアトス亡き後も、権力争いは激化しているようだからな」

 

 皆が神妙な顔付きで同意する。

 すると、魔通貝で連絡を取り合っていたレザライサが、表情を引き締め、


「槍使い、サーマリア王国側が会合前に一度、接触したいようだ」


 と告げてきた。


「了解したが、今からか?」

「あぁ、今からだ」

「了解、会いに行こう。使節団がいる魔塔はどこかな」

「魔塔の迎賓館だ、行こうか」

「おう」

 

 俺はレザライサたちと共に立ち上がった。

 レベッカ、エヴァ、ユイ、ヴィーネ、メル、カルード、キサラ、ママニ、サラ、ベリーズも付いてくるように傍に寄ってきた。クレインとカットマギーは血文字でカリィたちと連絡を取っている。


「ンン――」

 

 相棒が先に、ペントハウスの出入り口から先に外に出た。

 植物園の外に並ぶ植木に頬を擦り付けてから、体を徐々に神獣の大きさに変えていく。

 少し興奮しているのか、植物園の建物の屋根の角張ったところにも頬を勢いよく擦り付けていくから、植物園の窓が振動で揺れていた。

 

 俺たちもペントハウスから屋上に出た。

 そこで待機していた相棒の背に乗る。


 宙を行き交う飛空挺と飛行士隊の数は多い。

 そして、巨大な黒虎の背から見下ろすエセル大広場には、夜に開かれるサーカス会場がキラキラと輝いている。屋台の数も多く、利用する客もかなりの人数だ――。


 神獣ロロディーヌは風を切りセナアプア上層に位置する、重厚な造りの魔塔の迎賓館へと降下した。

 通り沿いに着地すると、周囲の視線が集まるが、構わず皆で降りる。

 

 迎賓館の大きな扉を開け、静まり返ったロビーを通る。

 柱と柱の間を抜けて、廊下を歩いて、奥にある執務室へと向かう。

 先導するレザライサが小声で補足した。


「サーマリア王国の代表団は、突き当たりの部屋だ」

「はい、こちらです」

「あぁ」

 

 クリドススの案内でロビーの広間に極秘裏に用意された執務室へと通される。

 扉が開いた先、重厚な調度品に囲まれた部屋には、三人の男たちが静かに待ち構えていた。


 中央の豪奢な椅子に深く腰掛けていた男が立ち上がり、


「――ようこそ、貴方がシュウヤ殿! さぁ、そこの席に座ってください。あ、私はソーグブライトです」


 と早速に挨拶してくれた。


「はい、お邪魔します」


 サーマリア王国第一王太子ソーグブライトか。

 かつてうつけ者と噂された男だが、物腰柔らかい。

 だが、その双眸に宿る光は猛禽のように鋭さもあった。

 隠しきれない覇王の器を感じさせる。

 ソーグブライトは、傍にいる男を見て、


「隣にいるのは、我が陣営の軍師、名はアドルフ・タカノ」

「はい、シュウヤ殿、初めまして、【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の名は重に聞き及んでおります」


 と、頭を下げたアドルフ。

 知的な眼鏡の奥に冷徹な光を宿す方だ。

 その視線は、俺の実力を値踏みするような鋭さがある。


 そして――王太子の背後、死角に溶け込むように佇む一人の剣士か。

 ソーグブライトは、


「……では、改めて光魔ルシヴァルの宗主、シュウヤ・カガリ殿。魔塔の『掃除』、見事な手際だった。このソーグブライト、サーマリア王国を代表して礼を言う」


 王太子は深い敬意を込めて頭を下げる。


「礼には及ばない。俺たちにとっても、三日後の和平会合を邪魔されるのは困りますから」

「フッ、頼もしいことだ」


 ソーグブライトが笑みを深めると背後に控えていた剣士が抑えきれない敵意をわずかに滲ませた。

 その体から噴出した炎の魔力が揺らめき四つの腕の形となった。

 形は『炎幻の四腕』と似ているが……さて、その男が、


「……殿下。彼らの武威は認めますが、やはり納得がいきません。この和平会合の裏で糸を引くオセベリアの女狐、シャルドネと手を結ぶなど。奴は現在進行形で、我が国の古都市ムサカを焦土に変えている元凶の一人です」


 剣士の言葉には血を吐くような無念が籠もっていた。

 レザライサが魔剣ルギヌンフの柄を分かりやすく触る。

 ユイは両手にアゼロス&ヴァサージを召喚した。


 だが、軍師のアドルフが眼鏡のブリッジを押し上げ、冷ややかに諭す。


「レオン殿。お気持ちは分かりますが、大局を見誤ってはなりません。我々の真の敵は外ではなく、内……戦争を『金蔓』として利用し、不当に肥え太るロルジュ公爵ら軍需派の腐敗貴族たちです」

「アドルフの言う通りだ、レオン。……私はあの女狐を信用などしていない。所詮は他国の侯爵だ。しかし、盤面をひっくり返すためには、奴の持つ野心と莫大な財力を利用する必要がある。毒を以て、より強大な毒を制す。……あのムサカの地で、お前の父祖が見殺しにされたような悲劇を二度と繰り返さないためにな」


 王太子の静かだが重い言葉に、レオンと呼ばれた剣士は奥歯を噛み締め、深く頭を垂れた。

 父祖が見殺しか。レオンと呼ばれた男は俺を見て、謝るように会釈。

 そして、王太子を見て、


「……出過ぎた口を叩きました。我が命、そして我が炎は、殿下の覇道のために」

「うむ」


 レオンか。彼の特異な炎の魔力とムサカでの悲劇、もしや、レンブラントと関係が?

 一緒に来ていたユイが、


「シュウヤ、もしかして、彼は……」


 と呟いた。頷くとレオンが俺たちを見る。

 王太子ソーグブライトは、


「シュウヤ殿、レオンに何か?」

 

 と聞いてきたから、


「はい、その炎の魔力と父祖が見殺しされた悲劇とは……」

 

 一歩踏み込んで聞いてみた。王太子ソーグブライトは、


「レオンの祖先は、サーマリア王国の建国に関わった炎幻、魔神レンブラントの血筋と言われているのです」

「「「……おぉ」」」


 ヴィーネたちから声があがる。エヴァが、


「ん、〝炎幻の四腕〟は〝黒衣の王〟と共にシュウヤが持つ」


 頷くと、ヴィーネも、


「はい、驚きですね。ここで魔神バーヴァイ様の願いの魔神レンブラントの血筋と〝炎幻の四腕〟が、繋がるとは!」

「あぁ、サーマリア王国かムサカに出向く必要があると思っていた」

「「はい」」


 ソーグブライトとレオンとアドルフが、そんな風に語っている俺たちを凝視。

 ソーグブライトが、


「シュウヤ殿、魔神レンブラント様をご存じで?」


 と聞いてきたから頷いた。同時に魔界の【古バーヴァイ族の集落跡】の出来事を想起した。

 

 ……当時、祭壇では、魔神バーヴァイ様の幻影のみ出現し……。

 魔神レンブラント様は登場しなかった。


 俺は、当時の魔神バーヴァイ様の幻影に、


『……〝炎幻の四腕〟の魔神レンブラント様ですが、この場に魔神レンブラント様は出現しない理由があるのですか?』

『色々とある……』

『聞かせてくれますか?』

『ふむ……我の幻影が保っていられるか不明だが、それでもいいか?』

『はい』

『魔神レンブラントは、神格を失っている。たかが人族と魔族の女のためにだ』

『え……神格を……では、周囲の〝炎幻の四腕〟は』

『神格を失っても、尚も健在な理由は、セラでレンブラントの血脈は脈々と続いているからだ……魔王レンブラントとしてな……セラの南マハハイム地方にあるサーマリア王国という名は聞いたことがあるか? 人族の国だが、数多くの魔王級の存在が建国に関わっている国なのだが……』


 その事象を思い出し、


「はい、魔界セブドラの【古バーヴァイ族の集落跡】にあった魔神バーヴァイ様と魔神レンブラント様の関係のある遺跡で、魔神バーヴァイの幻影が出現し、これを授かっていた」


 アイテムボックスから〝炎幻の四腕〟の彫像(スタチュー)を取り出した。

 直ぐに彫像は反応を示し、表面に刻まれた微細な紋様が赤く明滅すると、炎系統の魔力が発生し、生き物のようにゆらゆらと揺らめき磁石に吸い寄せられる鉄屑のごとく真っ直ぐにレオンへとその触手を伸ばした。


 それは自らの半身を見つけたかのような印象だ。

 同時に、レオンの体から立ち昇っていた炎の魔力も呼応。

 彫像の明滅に呼応するように動いては、その一部の魔力が離れて彫像の炎の魔力と繋がっていた。

 

「こ、これは……ッ!?」


 レオンは驚愕に目を見開き、己の体から溢れ出す炎を抑えきれない様子で一歩前へ出た。

 彼の背後に浮かんでいた不完全な『炎の四腕』の幻影が、彫像の放つ魔力と共鳴したように音が響く。

 キィン、キィィンと周波数で呼吸を合わせるような音、波長を送り、より濃密な形を取ろうと蠢いている。


 それを見て、頷き、


「魔神バーヴァイ様から、これを相応しいレンブラントの血族に渡すよう頼まれていました。……貴方が武人レンブラント、ひいては魔神レンブラントの正統な末裔なら、これを受け取る権利があるはずです。いや、これこそが貴方を呼んでいるようですね」


 そう言って熱を帯びた〝炎幻の四腕〟の彫像をレオンへと差し出した。

 レオンは震える両手を伸ばし、


「……おぉ、魔神、レンブラントの遺産……」


 と、呟きながら、畏れ多くも愛おしむような手つきで、そっとその彫像を受け取った。

 刹那――彫像が眩い炎の光となって砕け散る――。無数の赤い粒子が宙を舞う。

 大太鼓の重低音がドンッドンッ、ドゥン、ドンッドンッと数度、どこからともなく響いた。赤い粒子が大太鼓を叩く魔人か、魔神の幻影を模ると、豪快に、撥を振るい、大太鼓を叩く。また叩く、その太古を音は、太古から続くような野太い音――その野太い音は、大氣、時空、セラの宇宙次元に干渉しているような印象を抱くほどの重低音だった。すると、その幻影は赤い光を帯びた無数の赤い魔力粒子に変化し、レオンの胸へと吸い込まれていく。再び、ドォン、と重厚な魔力の波動が執務室を揺らした。


「おおぉぉぉ……ッ!」

「「おぉぉ」」


 ソーグブライト王太子が、そして背後の眷族たちが、その光景に圧倒されたように声を上げた。

 レオンの全身を包む炎の魔力が、質、量ともに爆発的に跳ね上がる。

 背後で揺らめいていた不確かな幻影に血管のような魔力線が走る、一瞬で、実体を持った禍々しくも美しい四つの魔腕へと結実した。かつて神と呼ばれた存在の純然たる権能の顕現だ。


 ヴィーネは、


「約六百年の時を経ての返還……」

「はい、血脈の正当なる後継者。魔神レンブラントの復活と言えましょう。無論、神格はないと分かりますが、魔族、魔人としての力は相当、上昇したはず」


 ヴィーネとキサラの言葉に頷いた。

 レオンは、己の体、両手を見て、


「力が……失われていた我が一族の真の力が、今……!」


 と言うと、両手の拳を握り締め、炎の四腕もまた同じように力強く拳を握る。

 やがて炎がゆっくりと彼の体内へと収束、レオンは感極まった表情を浮かべた。涙ぐむと、片腕で、涙を拭い――俺に向かって前進、片膝の頭で勢いよく床を突いた。


 頭を垂れたレオンの背後に魔神バーヴァイ様の幻影と魔神レンブラント様の幻影が、笑顔でこちらを見ている幻影が出現し、消える。


 ……良かった。レオンは、

 

「――シュウヤ殿……否、我が一族の恩人様! この御恩、生涯忘れません。我が父祖が守りたかったもの、そして無念……すべてをこの炎で晴らしてみせます。私が、サーマリアの闇を斬り裂く剣となりましょう」


 彼の瞳には、迷いのない忠誠と決意の炎が燃えていた。

 頷いて、


「はい、期待しています。魔神バーヴァイ様もレンブラント様も喜んでくれるはずです」

「ん、良かった」

「はい、仕事を果たせた。魔神バーヴァイ様と、その子孫たちも喜ぶでしょう」


 エヴァとキサラの言葉に皆が頷く。

 微笑むと、ソーグブライト王太子が立ち上がり、満足げに頷いた。

 

「まさに天の配剤、否、シュウヤ殿の持つ数奇な運命が引き寄せた必然か……素晴らしい。本当に感謝する……そして、この贈り物に対する借りは必ず……」


 王太子は再び深く頭を下げた。

 アドルフもまた、眼鏡の奥で驚きと敬意の眼差しを向けてから、


「はい、ありがとうございます!」


 やや遅れてレオンも、「あ、ありがとうございます!!」


 と、三者がお辞儀をしてくる。


「とんでもない、レオン殿も立ってください――」


 と手を差し伸べる。


「あ、いえ――大恩人様、内なる想いが溢れて、もっともっと敬服の想いが……」

「レオン殿、その想いを平和に活かしましょう。今は対等の立場ですし、さ、立ってください」

「……あ、はい」


 と立ってもらう。

 三者を見て、


「俺も渡すように魔神バーヴァイ様に頼まれていた。その因果の果てのです。また、争いを終わらせたいという、互いの想いが、今回の事象を引き寄せたと考えましょう」


 と語ると、三者たちは目を合わせ微笑しては頷く。

 軍師アドルフは、


「……シュウヤ殿。これで我々の『矛』はより鋭く研ぎ澄まされた。三日後の【天空閣】、我々サーマリアは必ずや腐敗を断ち切り、新たな時代を拓いてみせよう」

「はい。俺たちも、会合当日に湧いて出るネズミ共は容赦なく掃除させてもらいます。この平和への道を、金と権力のために邪魔する連中を許すつもりはありませんから」

「心強い。シャルドネ侯爵、そしてネレイスカリ姫とも、盤石の体制で交渉に臨めるというものだ」


 俺とソーグブライト王太子は、互いの覚悟を確かめ合うように、力強く視線を交わした。

 背後では、ヴィーネ、キサラ、エヴァ、キサラ、ユイたちが、静かに、しかし誇らしげに微笑んでいる。レザライサも不敵な笑みを浮かべ、拍手を始めると、皆がそれに続く。


 相棒の黒豹(ロロ)も「ンンン――」と喉声を響かせながら、器用に伸ばした複数の触手を、まるで人の手のように使い、その裏にあるプニプニとした肉球同士を打ち鳴らして拍手を模倣し始めた。


 可愛い肉球の拍手を何回もしてくれた。

 ぺちぺちと響く愛らしい音に、レベッカが堪えきれないといった様子で身を乗り出す。


「ふふ! もうっロロちゃん可愛すぎ!」


 レベッカは目を輝かせ、身を乗り出してロロの頭を撫でようとしている。

 その微笑ましい光景に、俺も内心では彼女と共に相棒を愛で倒したい衝動に駆られたが、王太子たちの手前、辛うじて理性を保ち自重した。


 黒豹(ロロ)は、


「ンン、にゃお」


 と足下に寄り添い、短く鳴いた。

 漆黒の毛並みが陽光を弾き、その喉の鳴りから相棒の充足感が伝わってくる。

 ヴィーネは、


「楽しみですね」


 頷くとキサラも


「はい、何事もないと良いのですが」


 と発言した。皆の瞳には、静かな昂揚が宿っている。


「あぁ、できることはした。残り一日の警邏はカリィたちに任せ、俺たちは、ゆっくりとエセル大広場のお洒落なカフェで待つとしようか?」

「おっ、しゅうやん、良い~女子力を理解している! ナイス~」

「ん、楽しみ」

「ふふ、はい!!」


 レベッカの弾んだ声に、エヴァとヴィーネも顔を見合わせ、その頬を期待に緩める。

 殺伐とした魔塔での『掃除』を終えた後の甘い休息。それは彼女たちにとって、何よりの活力になるだろう。

 と、皆の軽い会話を聞いていた王太子側から笑い声が響いていく。

 レベッカは恥ずかしそうに頬を朱に染めているが、王太子は、


「いやいや、こちらとしては、シュウヤ殿たちとこうして会話できる。それだけで楽しい氣分を得ています。まさに『知己を得る』。そんな氣分ですので、氣になさらず」

「あ、はい!」

「にゃ~」


 レベッカの返事に頷いたソーグブライトは結構なイケメンさんだ。


 すると、相棒が王太子に頭部を寄せていく。

 そんな相棒に一瞬驚きに目を見開いたソーグブライトだったが、豪快に笑うと、黒豹(ロロ)の頭部を撫でていく。


 その黒豹(ロロ)は、ひとしきり撫でられると満足したのか、するりとその手を抜けて俺の元へと戻ってきた。


 それを見た王太子は、俺たちのやり取りを眩しそうに見つめてくる。

 その双眸には、一国の王太子としての打算を越えた、純粋な親愛の情が宿っていた。

 利害関係を抜きにした一人の武人としての『知己』への敬意がそこにはある。


 これから三日後、セナアプアの最上層【天空閣】で、オセベリア、サーマリア、レフテンの三国による歴史的な和平会合が開かれる。

 その舞台裏で蠢く軍需産業系の残党や大商会の暗躍を、すべて叩き潰す覚悟だ。


 役者は揃い、進むべき道は示された。

 背負うべき宿命と、守るべき平和への決意を胸に、俺たちは【天空閣】へと至る最後の一歩を踏み出す。後は、ただ本番を待つのみだ。

続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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