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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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2108/2118

二千百七話 脳脊魔速の閃き、神槍・烈業抜穿

 □■□■


 ここは魔塔魔導要塞、通称【貴族館】の屋上。

 

 ガスマスク状の魔防護マスクを装備している彼の名はアンソムニア、通称、魔弾き。魔傭兵団アレグションを率いている。

 そして、皆、特殊仕様のブーストスラスターを備えた装甲付き魔導鎧を身に着けている。背面の排熱ダクトからは、陽炎のように熱氣が立ち上っている。


 魔傭兵団アレグションは、ピサード大商会の副会長レバノン、戦闘理事の一人エイドナ、戦闘理事補佐パパラセルなどから直に出資を受けている戦争屋集団であり『猟犬』の一つ。


 時にはロルジュ公爵筋の【ロゼンの戒】に加わることもあり、今までにサーマリア王国軍側で従軍した回数は数え切れない。実質的に、ピサード大商会の私設部隊における主軸と言っていい。

 今回の任務は、サーマリア王国ロルジュ公爵からの依頼を受けたレバノンより下された特務。

 巨額の事前報酬と引き換えに、レフテン王国王太子ソーグブライトの暗殺、オセべリア王国のシャルドネの暗殺、そして三カ国平和会議そのものを破綻させること。

 

 そろそろ下からの定時連絡か。

 そして、三日後の平和交渉締結に向けて、俺たちの動きに【天凛の月】、【血星海月雷吸宵闇・大連盟】共が黙っているわけがないが……。

 

 これも任務……。


 アンソムニアがそう思考した矢先、足下でかすかな振動が起きた。

 ここで地震?

 上界の浮遊岩大陸が揺れるってのはあまりないが……。

 アンソムニアは、


「レブア、トーマス、下を見てこい」

「「はい」」

 

 アンソムニアの指示を受けた二人が足場の端、メンテナンスハッチへ向かおうとした刹那――。

 外に見知らぬ巨大な黒豹と、黒髪の男が颯爽と現れた。


「げ……黒髪に、あれが【天凛の月】の槍使いか!」


□■□■



 垂直の闇を抜けた先――視界が一氣に開けた。

 同時に、意識のスイッチを切り替える。

 <血道第三・開門>、<血液加速(ブラッディアクセル)>による血管の奔流。<闘気玄装>や<水月血闘法>をはじめとする武仙の呼吸法を多重起動。

 全身の細胞が沸き立ち、<闇透纏視>と<隻眼修羅>によって世界の情報量が爆発的に増大した。


 空魔法士隊らしき存在が多い。敵だろう。


 ――円形の広大な空間。

 天井はドーム状の強化ガラスで覆われ、不気味な紫色の月光が降り注いでいる。中央には、脈打つように明滅する巨大な結晶体が鎮座している。

 結晶体を守るように立つ人物は強そうに見えた。そして、皆、背にジェットパックのような推進装置を背負っている。空魔法士隊ではないのか、魔傭兵たちだな。

 

 魔傭兵の飛行集団か。

 魔機械の体も備えているように見える。


 重装甲の陸戦キメラもいた。


「げ……黒髪に、あれが【天凛の月】の槍使いか!」


 ヒートソード、高周波ブレード系のツーハンデッドソードを持つ魔傭兵が叫ぶ。ガスマスク状の面頬防具か。口元はかなり渋い。


「敵だ!」

「侵入者!」


 魔傭兵たちが一斉に魔剣と魔銃の銃口をこちらに向けた。

 魔銃から火花が散ると魔弾が飛来した。

 

 即座に大きい駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>をエヴァたちに残し、左に移動し魔弾を避ける。

 皆も上と右に移動し、エヴァは「ん、シュウヤ、大丈夫――」と金属音が響く、白皇鋼(ホワイトタングーン)を展開したようだ。


 魔傭兵たちは魔銃以外にも魔剣や魔槍を扱う――。

 魔剣や魔槍の穂先は様々で、真っ赤なサーベル状、ナギナタ状の鋼の柄巻のムラサメブレード・改系の武器もある。


 そこから<バーヴァイの魔刃>のような魔刃が飛来した。

 大きい駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を前に運び、それらの飛び道具を防いでいく。


 すると、背後から


「シュウヤ殿、結晶体が〝共鳴増幅器〟です」


 アルフォードの声に頷いた。

 そこに、「ンン」と喉声を発した黒豹(ロロ)の背から白銀の髪のヴィーネが躍り出る。


 翡翠の蛇弓(バジュラ)の光の弦に一瞬に光線の矢が出現。

 その背後の右後方からヘルメは十八番の《氷槍(アイシクル・ランサー)》を、ヴィーネの死角の方向に居た魔傭兵に繰り出していく。


 キッカは低空飛行で近付いた速度の速い魔傭兵の魔剣の斬り落としを、上段に構えた魔剣・月華忌憚で受けた直後に、右肘を下げ、月華忌憚の剣身を下から上に閃くように振り払い、魔傭兵の腕と首を斬り落とす。

 背負っていた魔導スラスターのような魔道具も切断され爆ぜ散った。

 破片がキッカと背後にいたエヴァとアルフォードにも向かうが、黒豹(ロロ)が体を張って守る。

 

 両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出した――。

 宙を直進した二つの<鎖>は右を飛行している一人の魔傭兵の体を穿つ――。


 他の魔傭兵も狙った――。

 一体、二体と二つの<鎖>で、魔傭兵の体を貫いては、下に誘導――。

 そのまま鉄の床にぶつけるように倒していった。


 ジェットパックのような推進力を発している魔機械も貫くと、爆ぜることが多い――続いて、装甲の薄い魔傭兵で、速度が他より早い隊長クラスの魔傭兵がキッカの<バーヴァイの魔刃>と相棒の触手骨剣の攻撃を避けているが氣になった。


 <鎖の念導>の念働のまま二つの<鎖>を――。

 その隊長クラスに向かわせたが、あっさりと避けられた。

 その背後にいた魔傭兵の片腕に一つの<鎖>が引っ掛かり、もう一つの<鎖>の先端が、その魔傭兵をヘッドショット――。

 グシャリ、と兜ごと頭部が潰れる音が響く。

 その間にもヴィーネも光線の矢を射出していく。

 二つ、三つと<速連射>だろう。

 

「なっ、速す――」


 狼狽える魔傭兵たちの頭部に吸い込まれるように光線の矢が突き刺さった。

 光線の矢から緑の魔力で構成された小型の蛇が、その頭部に侵入すると一瞬で爆発していく。


 他の魔傭兵たちが、巨大な相棒ごと狙い始める。

 と、俺には、正面から魔傭兵たちが片手半剣のようなビーム状のサーベルを突き出してくる。それを雷式ラ・ドオラで防ぎ――。

 魔槍杖バルドークで<魔雷ノ風穿>――。

 魔傭兵の下腹部と足を消し飛ばし、雷式ラ・ドオラで上半身を払った。


 <握吸>と<勁力槍>を再発動、<双雷浸透>も発動させる。


 次の魔傭兵のビーム状のサーベルを魔槍杖バルドークの柄で防ぎ、雷式ラ・ドオラで<雷式・血光穿>を繰り出した。

 血と光の魔力が放電しているような雷式ラ・ドオラの穂先が魔傭兵が持つビーム状のサーベルを貫き、その胸に深く突き刺さる。

 雷式ラ・ドオラが刺さった箇所からドッと音を響く。

 と、刺さった箇所を基点に装甲ごと、魔傭兵の上半身が膨れ上がり爆発――。


 ヴィーネは、翡翠の蛇弓(バジュラ)を掲げる。

 紫電の魔力が広がり、幾重にも織り込まれた紫電の網と化した。

 表面には無数の蛇が這い回る。

 その紫電の網が、相棒たちに飛来した魔弾や魔刃を弾いて、ジジジッという音と共に瞬時に蒸発させていく。

 そのヴィーネに向かい、装甲が分厚い大柄の魔傭兵が低空飛行で向かう。


「ヴィーネ――」


 右手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出。

 大柄の魔傭兵は盾を掲げ<鎖>を防ぎながら、<ヘグポリネの紫電幕>を展開しているヴィーネに近付く。


「大丈夫です――」


 ヴィーネは翡翠の蛇弓(バジュラ)を消し後退。否、床を蹴り前進。

 ガドリセスの剣は出していないが、再び翡翠の蛇弓(バジュラ)を召喚したヴィーネは接近戦を挑んできた大柄の魔傭兵に、翡翠の蛇弓(バジュラ)の両端に魔刃を展開させ、舞うように踏み込み、


「――<羅迅剣>」


 すれ違いざま、踊るような回転斬撃。

 大柄の魔傭兵の盾を持つ腕に、首が、切断されて宙を舞った。


「――空ばかり見ていると足元が疎かになるぞ」


 キッカだ。疾走し、抜刀した魔剣・月華忌憚が紫紺の軌跡を描く。

 重装甲のキメラのような魔傭兵が腕を振り下ろすが、キッカは、その懐へ幽鬼のように滑り込んでいた。神速の逆袈裟斬り。


 <血瞑・速烈剣>か。


 硬質な装甲ごとキメラの胴を斜めに両断し血振るいもせずに次の標的へ向かい、真横に魔剣・月華忌憚を払い、突き出された三つの魔剣を上部に弾くと、魔剣・月華忌憚の柄を掌の上で、くるくる回しつつ前進し、三つの魔剣を弾くと、その得物を持っていた魔傭兵たちの片腕を細断――。


「「げぇ」」

「ぐぇあぁ」


 悲鳴を上げた魔傭兵たちの頭部が宙を舞う。

 流れるような血剣術がその魔傭兵たちの首に決まっていた。


「――私も、お役に立ちましょう」


 ビーサも続く。

 彼女は蛇腹剣のごときラービアンソードを鞭のようにしならせ、遠間から敵集団を牽制。不規則にうねる刃が、敵の足止めを行うと同時に、彼女の後頭部の器官から微細な魔力糸が放たれた。


「絡め取れ――」


 不可視の糸が敵の関節に巻き付き、動きを強制的に停止させる。

 そこへ、ラービアンソードの切っ先が正確に延髄を貫いた。


 皆、いい動きだ。


「相棒――」

「にゃごぉ」


 頼もしい仲間たちの猛攻に合わせ、俺と相棒も敵陣の中央へ雪崩れ込む。

 黒豹(ロロ)が紅蓮の炎を吐き散らしながら暴れ回り、魔槍杖バルドークを旋回させ、増幅器の前で指揮を執るツーハンデッドソードを持つ男を凝視。


「……チッ、」


 指揮官らしき男が、余裕の笑みを崩さずにこちらを見据える。

 と、手首から短剣が飛来。

 それを雷式ラ・ドオラで防ぐと、右から、否、左に転移するような速度で間合いを潰しながら、ブーストスラスターを噴かし、転移に近い速度で、再度間合いを潰してくる。巨大なツーハンデッドソードによる刺突が喉元へ迫った。


 後退し、切っ先を見るようにスウェイの動きで避け、返す刀ならぬ、返す槍――雷式ラ・ドオラで<雷穿>を繰り出す。

 だが、男はツーハンデッドソードをわずかに寝かせ、その剣身に穂先を滑らせるようにして<雷穿>の威力を受け流した。

 ――巧いが、即座に魔槍杖バルドークで<闇雷・一穿>――。

 雷属性を有した<血魔力>が全身から迸る。俺自身が闇雷の槍となったような魔槍杖バルドークの穂先が、魔傭兵の体に向かうが、スラスターを瞬間的に吹かし、バックステップで離脱していた。

 

 <闇雷・一穿>は当たらず。


 ツーハンデッドソードと似た武器を扱う男は、ガスマスク状の面頬防具の排気口から、紫と漆黒の魔力を帯びた魔息をシュウッと吐き出し、俺を凝視した。


「……お前が、【血星海月雷吸宵闇・大連盟】のしかも【天凛の月】の盟主、槍使いだな。名はシュウヤ……」

「その通り、で、お前は? ついでに組織名も教えてくれるとありがたい」

「名は、アンソムニア、魔傭兵団アレグションを率いている――」


 名乗りと同時、またしても奴の手首から短剣が射出された。

 首を傾け軌道を逸らす。直後、アンソムニアの左右と背後から他の魔傭兵たちが湧き出し、ビーム状のナギナタを突き出しながら低空飛行で迫ってきた。

 

 複数の光刃を魔槍杖バルドークの柄で受け止め、<龍神・魔力纏>を発動――。

 力で拮抗させながらジリジリと下がる。


 凌ぎきれなかった切っ先が下腹部を覆うダモアヌンブリンガーの装甲を掠め、激しい火花を散らした。


 更に前の三人の背後から、別の魔傭兵たちが仲間を跳び越え、上段からナギナタを振り下ろしてくる――<魔手回し>と同時に、爪先の半回転と腰の捻りを利用し、押し込まれていた光刃を跳ね上げた。敵の上体が仰け反り、絶好の隙が生まれる。

 すかさず、魔槍杖バルドークと雷式ラ・ドオラによる<双豪閃>を放つ。

 雷式ラ・ドオラの薙ぎ払い、魔槍杖バルドークの薙ぎ払いが、前にいるビーム状のナギナタを持っていた魔傭兵の胸に決まり吹き飛ばした。分断された肉体が左右に吹き飛ぶ。半身の姿勢を維持したまま、流れるように回転して後退を続けた。

 

 直後、俺を追う魔傭兵たちがナギナタを突き出し追撃してくるのを視界の端で捉え、全身から一氣に<血魔力>を放出させた。


 同時に薄い氷縛柩(アイシクル・コフィン)を前方に展開し、血の霧と共に魔傭兵たちの視界を奪う。そのまま前へ踏み込み、魔槍杖バルドークの両手持ちへと切り替え、渾身の<刃翔鐘撃>を繰り出した――。

 轟音。重い一撃で《氷縛柩(アイシクル・コフィン)》をぶち抜き、正面にいた魔傭兵の腹をも深々と貫いた。


 左右正面の魔傭兵たちは、


「今だ、皆で一斉に――」

「「「おう」」」


 魔傭兵の胸元を突き出したままの魔槍杖バルドークを、活かす。柄を撓らせるように右へ左へと動かし、左右からのナギナタ刃と柄の打撃を、魔槍杖バルドークの柄で弾きながら前進した。


「――ぐぇ」

「げぇ」

「ぐぉ」

「ぐぉ――」


 魔傭兵たちは、弾かれた反動で、仰け反ったがスラスターを活かし体勢を整えて反撃を寄越す。それらの――すべての攻撃を、魔槍杖バルドーク一本で防ぐ。


 すると、動きを合わせた魔傭兵たちが一斉にナギナタ刃を振り下ろしてくる。

 タイミングを見て、撓らせるように扱った魔槍杖バルドークを捻り上げ、一部のナギナタ刃を柄で受け流しつつ<魔経舞踊・蹴殺回し>へと繋げた。


 両足の回し蹴りが左右の魔傭兵の頭部を捉え、兜ごと粉砕して吹き飛ばす。

 そのまま跳躍。下から俺を狙ったナギナタの刃を、宙空で回避すると、その刃の根元――螻蛄首を両足で踏みつけ着地した。

 ――ガィィン! と床に刃ごと踏み付け、動きを封じる。

 そして、そのまま両足の甲で敵のナギナタの柄を挟み込んだ。

 腰の捻りと足の筋力だけで、奪ったビームナギナタを振り回す。

 予想外の軌道を描いたビーム刃が、斜め左右から迫っていた魔傭兵たちの足下を薙ぎ払った。


「「「げぇ」」」


 両足を切断された魔傭兵は転倒、足下に落ちたナギナタを蹴り飛ばした。

 矢のように飛んだナギナタの石突が、奥にいた魔傭兵の腹に深々と突き刺さる。

 

「ぐぇ」


 魔傭兵はくの字になって彼方へ吹き飛んだ。

 左手の雷式ラ・ドオラを<投擲>――左の魔傭兵の腹に突き刺さる。

 魔槍杖バルドークで背後に回っていた魔傭兵のナギナタ刃を弾き、横回転しながら<血龍仙閃>――で斜めに魔傭兵を両断。

 爪先半回転をしながら横に移動し、魔矢と魔弾を避け――。

 突っ込んできた二人の槍の魔傭兵の穂先と機動を完全に見切る。

 <龍豪閃>――。

 一人の首を撥ね飛ばし、返す刃の<豪閃>の柄で、もう一人の腹を潰すように横に吹き飛ばす。<握吸>で、雷式ラ・ドオラを引き寄せた。


「――レナガルを!」

「くそがッ――」


 仲間を殺された怒りか、鋼の柄巻を持つ魔剣師が間合いを潰してくる。

 その背後、魔矢を放ってくる射手と、こちらを凝視しているアンソムニアを把握しながら魔剣師の魔刃を左手の雷式ラ・ドオラを掲げ防ぎ、同時に、短く持った魔槍杖バルドークの紅斧刃を、魔剣師の魔剣を持つ腕に押し当てるように<魔皇・無閃>――。

 その魔剣を握る腕ごと、腹を紅斧刃が潰すように両断した。

 飛来した魔矢を魔槍杖バルドークの柄で防ぎながら前に出て、<仙魔・龍水移>――転移で射手の背後から雷式ラ・ドオラで<刺突>で、射手のジェットパックごと背を貫く。引き抜く雷式ラ・ドオラから血が流れた――

 刹那、右斜め前からのナギナタ刃の攻撃を魔槍杖バルドークを下げた柄で防ぎ、<武行氣>を使い腰を捻り、浮遊しながらの<悪式・突鈍膝>を用いた左膝を、そのナギナタ刃を扱った魔傭兵の頭部に喰らわせ、「げぇぁ」仰け反らせ、雷式ラ・ドオラで<雷式・血光穿>――。

 雷状の魔力を纏った穂先が無防備な魔傭兵の胸から背を貫いた。

 串刺しにしたまま雷式ラ・ドオラを振り上げ死体を吹き飛ばし、魔槍杖バルドークを構え、アンソムニアへと直進――。

 

 アンソムニアは「お前をここで――」と<魔闘術>系統を強めたツーハンデッドソードを突き出す。それを魔槍杖バルドークの柄で弾く。

 アンソムニアは半身の回転からツーハンデッドソードを振るい回し、俺の頭部と足下を狙ってきた。その斬撃連舞をスウェイの動きで避けきる。

 更に、足下が爆ぜたアンソムニアは加速を強めた。


 ツーハンデッドソードを振り下げてくる。

 それを見るように紙一重で避けると床と衝突したツーハンデッドソードの剣刃から火花が散る。と、アンソムニアはツーハンデッドソードを回転させ刃を上向かせ、カッと双眸が見開き、ガスマスク状の面頬から魔力の息を噴出させ、片手の内から短剣と霧状の魔力を放つ。

 見え透いた視界潰し――<仙魔・龍水移>と<ブリンク・ステップ>で転移を二回使用し、幻惑するように楽々と避ける。


 アンソムニアは、


「くそが、避けるんじゃねぇ!」


 と叫び、ツーハンデッドソードを突き出してきた。

 その突きを凝視――。

 右腕と右脇に挟んで持つ魔槍杖バルドークの風槍流『風読み』に近い構えを取り――。

 

 魔槍杖バルドークの柄で、突き出されたツーハンデッドソードの一撃を横に弾く。


 ピコーン※<風読み>※スキル獲得※


 アンソムニアはツーハンデッドソードを囮にしていた、左腕を突出。

 その左腕は伸び、掌から魔刃が飛び出ては、前腕と手首から無数の刃に変化――。


 無数の刃を魔槍杖バルドークの柄で弾く――。

 

 と、足下にアンソムニアの左足から伸びた魔刃が迫っていた。

 それを後退、引いて避けると、追撃に出たアンソムニアのツーハンデッドソードの刃が胸元に迫る。


 それを左手に持つ雷式ラ・ドオラの柄を盾にして防ぐ。

 アンソムニアは舌打ちを行うや否や、左腕の魔刃から、その魔刃が複数飛来した。


 半身で最初の魔刃を避け、跳躍し、避けながら<武行氣>で浮遊しながら体の一部に魔刃が衝突するが防ぐ。魔槍杖バルドークの柄でも魔刃を防ぎ、着地際のツーハンデッドソードの払いには、雷式ラ・ドオラを地面に突き立て、柄で防ぐと同時に<蓬莱無陀蹴>――。


 右回し蹴りが、アンソムニアの頭部にクリーンヒット――。


「げぇ」


 アンソムニアは呻き声を上げ、ボールのように吹き飛んでいく。

 背後の死体と魔機械の残骸と衝突し、瓦礫と火花に巻きこまれるようにして埋まった。

 が、その瓦礫はすぐに吹き飛ぶ。油断なく注視――。

 手応えはあった。頭蓋骨にヒビが入る感触。常人なら即死だが、どす黒い殺氣が膨れ上がって立ち上がったアンソムニアの頭部の窪みは元に戻る。回復スキル持ちか。

 ガスマスク状の面頬は砕け、下の素顔が半分覗いている。

 皮膚が焼け爛れ、そこから銀色の金属繊維が血管のように這い出して紫と漆黒の魔力が噴出し、そこから自然と魔法陣が浮かび上がる。

 胸の装甲にある紋章――『天翼ある蛇』が、心臓の鼓動に合わせて不気味に発光を開始する。


 修復が途端に速まって、


「……痛いな。だが、悪くない。エセル界の『蛇』が魔神コトヌスの加護に、ようやく馴染んできたか……しかし、エセル界とこの都市……の影響もあるのか……チッ……」


 アンソムニアは悔しそうに語り、自身の折れた首を無理やり手でボキリと戻す。

 その瞳は焦点が合っていないようで、しかし正確に俺を捉えていた。


『御使い様、あの魔法陣は魔界の魔神の加護と思いましたが、魔神コトヌスとは聞いたことがないです』

『主、我も聞いたことがない。推察だが、『天翼ある蛇』は、この塔烈中立都市セナアプアと通じている異世界の一つの神だろう。コトヌスは、サーマリア王国に関係している古い魔神かもですな』


 右目にいる闇雷精霊グィヴァと左手の掌にいるシュレゴス・ロードの念話に


『だろうな』


 と返事を送った。

 アンソムニアは前に出ながらツーハンデッドソードを突き出す。

 それを見ながら避けると、アンソムニアは己の体から紫の――。

 

 真横に跳び、後退した。

 俺がいた床が焦げ茶色に変色していた。アンソムニアは追撃をしてこない。

 ボコボコと筋肉が膨張し、装甲と融合していく。

 銀色の装甲板が皮膚を食い破り、新たな外骨格を形成する様は、羽化する昆虫の醜悪さに似ていた。左腕の仕込み魔刃は回転しながら魔槍に再構築される。


「【天凛の月】の盟主よ、お前にも見せてやろう。アレグションの長たる所以。我が異名『魔弾き』の……真の機能を」


 アンソムニアがツーハンデッドソードを宙に浮かばせ、その手の指から音が響く。

 瞬間、周囲の空間が歪みながら飛来――。

 それを見るように左に避ける。俺がいた床は抉れて消えていた。

 更に、アンソムニアの胸部のコアから放たれた紫黒の波動が飛来。

 <超能力精神(サイキックマインド)>――。

 その紫黒の波動を宙空で抑えていく。


 と、アンソムニアの中心とした半径数メートルがドーム状に包まれた。

 紫黒の波動が強まり、<超能力精神(サイキックマインド)>が全方位の圧力と相殺されていく。

 ――<鎖>と《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を射出。

 <鎖>の先端は直前で何かに滑るように軌道を直角に曲げられる。

 《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》も明後日の方向の床と衝突、凍り付く。


 アンソムニアの背後から瓦礫の中にあった無数の魔弾や折れた魔剣が重力を無視してふわりと浮き上がり衛星のように旋回し始めた。


「無駄――」


 紫黒の波動により<超能力精神(サイキックマインド)>は破られ、旋回していた魔弾と魔剣が一斉に射出された。

 雷式ラ・ドオラと魔槍杖バルドークで<風柳・上段受け>と<風柳・中段受け>を使い、防御するが弾こうとしたバルドークの刃が奇妙な反発力を受けてヌルリと逸らされる。


 ――厄介。

 触れるものすべてのベクトルを狂わされる感覚。防御の勘が通用しない。

 数発の魔弾が肩と太腿を掠め、肩の竜頭装甲(ハルホンク)闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備の装甲と衝突していく。


 <闇透纏視>と<隻眼修羅>で冷静にアンソムニアの体を探りつつ――。

 

 <経脈自在>を発動――。

 <水月血闘法>を強める。

 <月冴>を発動。

 斜め頭上に『月冴』と日本風の魔文字が浮かぶ中、体の剛柔を操る<無方南華>と<無方剛柔>を同時に意識し、発動。


 溢れ出す殺氣を制御し、<闘気玄装>を極限まで高めていく――。

 <魔技三種・理>を軸に、水神の神威を宿した<滔天仙正理大綱>と<滔天神働術>を重ね掛けし、<水神の呼び声>と<水の神使>を意識、発動。

 水と月の加護が体内を巡り、周囲の空氣が水と化すように水氣が増し、思考が澄み渡っていく。<紫月>を発動。

 紫色の月光を纏うような<魔闘術>の一つが瞬き、反応速度が加速した。

 あえて、雷式ラ・ドオラを消す。


 <源左魔闘蛍>を発動。

 <黒呪強瞑>を発動。

 <鬼神キサラメの抱擁>を発動。

 <仙血真髄>を発動。

 <魔闘術>系統の重ねに、武の直感を最大限に上昇させる。


「チッ、水の……権能、複数の加護持ちは噂通り、そして、その装備も神話(ミソロジー)級か――」


 と、アンソムニアは紫黒の波動を弱め、俺との距離を詰める。

 左の魔槍を上段から振り下ろす。魔槍杖バルドークの柄を右から左にわずかに動かし、弾きながら防ぎ、前に出て右から魔槍杖バルドークを振るう。

 アンソムニアの首を紅斧刃で狙うが肩から飛び出た魔剣の刃で防がれた。

 同時に複数の金属繊維の刃が飛来、頬を掠め血が出るが、構わず魔槍杖バルドークで防ぐと、アンソムニアのツーハンデッドソードも迫る。


 魔槍杖バルドーク一本の柄で、その重い一撃を防ぐ。

 左肩にまで刃の圧で押された。


「ハッ、さすがに魔力が尽きたか!?」


 肩の竜頭装甲(ハルホンク)を意識、


「――ングゥゥィィ」


 肩の竜頭装甲がツーハンデッドソードを噛み付く。


「な!?」


 同時に<風柳・案山子通し>を行い、勢いを利用、懸垂を行う仕種で力のベクトルを変え、下から内に魔槍杖バルドークを捻り上げ、アンソムニアの左腕の魔槍を左へとずらし、魔槍杖バルドークの柄で固め、横に動かし、アンソムニアの腹に柄を衝突させ打撃を与えた。


 鍔迫り合いに近い体勢となった俺とアンソムニア、


「ぐっ、離せ――」

 

 と言いながら蹴り技で俺の足を狙うが――。

 ステップを踏むように蹴りを避け、逆に膝で、アンソムニアの膝裏を押さえ力で押し込む。体勢を崩したアンソムニアだったが、体から紫と漆黒の魔力を噴出させて、左腕の魔槍を強引に振り上げ、俺を真上に放り投げてきた――。

 

 だが、その慣性のまま<武行氣>使い――<蓬莱無陀蹴>の蹴りをアンソムニアに喰らわせた。


 アンソムニアは怯むが「ヌゴァァ」と氣合いと共に、左腕の魔槍と体から生み出した金属刃を突き出しながら突進してきた。


 魔槍杖バルドークの柄を両肩で支える構え<風柳・案山子通し>を行う。

 魔槍杖バルドークと共に回転しながら前進。それらの攻撃を魔槍杖バルドークで、すべて往なしてからの風槍流『鳴鴉』を繰り出した。


 魔槍杖バルドークに<血魔力>を送りながら柄を蹴る――。

 蹴られた柄が撓って竜魔石の石突がアンソムニアの胸にヒット。

 ドッ、重低音を響かせる。


「げはっ」


 更に竜魔石から発生した隠し剣(氷の爪)の氷の両手剣がアンソムニアの装甲に突き刺さる。


 ピコーン※<風柳・鳴鴉>※スキル獲得※

 続けて<握吸>で魔槍杖バルドークを引き寄せ、前傾姿勢で前進――。

 左手に神槍ガンジスを召喚。


 <脳脊魔速>――。


 加速し、時間がゆるやかに感じながら魔槍杖バルドークで<刺突>――。

 アンソムニアの左腕の魔槍を弾き、

 更に<魔雷ノ風穿>――。

 アンソムニアの左腕の魔槍の根元を貫いて、<霊仙八式槍舞>――。


 左手が握る神槍ガンジスの双月刃がアンソムニアの胸の装甲を突く――。

 右手の魔槍杖バルドークの紅矛も胸を突いた。

 瞬間的な二連<刺突>系から横回転。

 流れるような足捌きと連動する神槍ガンジスを左に傾け引く。

 双月刃がアンソムニアの右腕と魔刃の群れと胸を抉り斬り――。

 右手の魔槍杖バルドークが斜め下へ――そのアンソムニアの体をぶった斬り、横回転し、神槍ガンジスの柄がアンソムニアと衝突、ドッという衝撃音が響く最中に横回転――魔槍杖バルドークの柄と穂先がアンソムニアの体を斬り衝突を繰り返す。

 更に神槍ガンジスの一閃がアンソムニアを斬った。


 そして、重心を下げて、動きを止めるモーションから――。

 魔槍杖バルドークの突きがアンソムニアの胸の亀裂に深々と決まる。 

 魔槍杖バルドークに回転を加えるように回し、消し、亀裂を破裂させ、<隻眼修羅>で見えている半透明の魔法陣と内臓の心臓を狙うように、左手に握る神槍ガンジスで<神槍・烈業抜穿>を繰り出した。

 

 方天画戟に似た双月刃が超高速で振動し、次元そのものを削り取るような異音を奏でる。

 金属音さえ置き去りにする衝撃と共にアンソムニアの心臓部と不気味な魔法陣を一点突破で穿った。アンソムニアの横をすれ違うように駆け抜け、アンソムニアの背中から飛び出した神槍ガンジスの柄を滑らかに掴み取る。


 <脳脊魔速>を終わらせると、一拍遅れて、アンソムニアだった肉塊が内側から弾け飛び、爆炎の中に消えた。



続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中

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