二千九十六話 魔伯爵カイムとの戦い
キルアニスを穿った<光穿・雷不>の衝撃波が回廊を震わせる。陥没した岩盤の底が眩く光った。
自然と胸元の<光の授印>が反応し、光る。
と、底の光の矢印を意味するように光属性の魔力が溢れて、俺の胸元と繋がった<光神の導き>か。
更に<聖刻ノ金鴉>を意味するだろう、黄金の鴉と十字架の模様が浮かびながら光った箇所に集結していくが、確認は後――。天蓋の鍾乳石が爆ぜる。
その鍾乳石を蹴っては、転移するように、次の鍾乳石に移動しているローブを着た男は、闇の鋼糸を宙空に展開し、皆の<バーヴァイの魔刃>を防ぐ。
俺も《氷命体鋼》を発動、《連氷蛇矢》を連射した。
だが、ローブを着た男は速い。
《連氷蛇矢》は掠りもしない。
ローブを着た男はまた天蓋を蹴っては、宙空に跳び、高速に飛翔し、静止。また直ぐに反転、上下左右に素早く動きつつ闇の鋼糸を繰り出しながら漆黒の巨大な礫を幾つも生み出し、ラライセたち【血の守護騎士団】を狙っていく。
「陣形維持ッ! 砦へ入れッ!」
ラライセの号令と共に【血の守護騎士団】が後退。
ビシュエが組み上げていた<血道・石棺砦>の陰に身を隠し、漆黒の礫をやり過ごす。
ヴィーネの光線の矢、エヴァの白皇鋼の刃、レベッカの蒼炎弾。それらすべての迎撃を、カイムは闇の鋼糸と手にした魔剣で叩き落とし、不敵な笑みを浮かべる。
ローブ男のマントの一部を漆黒の<鎖>と魔刃の連なりに変化させ、宙空に広げた。皆の遠距離攻撃がことごとく相殺される。
俺の<鎖>も防ぐ魔刃の連なりの強度は確か。
更に、網状の闇の鋼糸が的確な反撃となって味方陣営へと迫る。それは俺たちにはあまり効かないが――。
ラライセ【血の守護騎士団】たちには脅威、<血道・石棺砦>から離れた一部の吸血鬼たちは闇の鋼糸により斬り刻まれていく。
その出本のローブ男にヴィーネの光線の矢が向かうが、当たらない。エヴァの白皇鋼の刃、レベッカの蒼炎弾、ベネットの<血剣・跳弾>によって、ローブ男の動きが阻害されたところに《連氷蛇矢》を狙ったが、それも魔剣により防がれた。
聖十字金属の魔矢が掠め、ヴィーネの光線の矢が、左足に突き刺さり緑の蛇がその足に浸透、爆発し、血飛沫が迸るが、ローブ男は横に跳び、闇の鋼糸をヴィーネに向け転移しては回復し、ヴェロニカの斬撃を魔剣で防ぐ。
そのローブ男は、マントの一部を漆黒の<鎖>と魔刃の連なりに変化させて、宙空に展開。
皆の遠距離攻撃を相殺し、皆に向けて的確に反撃を繰り出している。
そのマントを羽織った男の怒声が響き渡った。
「――お前がキルアニスをッ!」
怒りのマントの男は指先から無数の闇の鋼糸を網状に広げようとするが、それをヴィーネたちが許さない。
ヴィーネが翡翠の蛇弓の光線の矢、レベッカの<光魔蒼炎・血霊玉>が闇の鋼糸を解かすと、そこを突いたナイトオブソブリンの稲妻が直進し、マントに直撃、マントを着た男は吹き飛ぶ。
キサラがダモアヌンの魔槍を<投擲>。
<補陀落>を繰り出す。
ローブ男が喰らったか分からないが、鍾乳洞の天蓋の一部はくり抜かれたように消える。と、甲高い音が響き、ローブの男が爆風の中から飛び出て、反対側に飛翔しているのが見えた。
ヴェロニカの無数の血剣とエヴァが操作する緑皇鋼の遠距離攻撃も向かう。
ミスティのゼクスが、光剣から光の剣刃を繰り出す。
確実に、男の制空権を奪い去っていく。
闇の鋼糸による範囲攻撃の数は減った。
反撃を試みるたび、皆の波状攻撃がその起点を粉砕し、男は防戦一方のまま空間を逃げ惑う。
相棒は、その頭上を行き交うマントの男に紅蓮の炎を吐くが、相棒の紅蓮の炎のタイミングで遠くに逃げていた。
その黒猫は深追いはせず、ラライセたちを身を挺して守る。漆黒の魔獣死人と岩石百足の突撃を体を大きくして阻害し、一氣に巨大化、そのままのし掛かって、己の体重で、複数の魔獣死人と岩石百足に異形の魔族を潰して倒す。
【血の守護騎士団】は一人一人が猛者、的確に、ビシュエの<血道・石棺砦>を活かして盾にしている。
小隊、中隊が防壁の間から突出し、異形の魔族を斬り払ってから、素早く後退し、<血道・石棺砦>の砦に入る。
確実に闇神リヴォグラフ側の戦力を屠っていく。
と、一部突出した部隊がいたが、ラライセが「防御――」と叫ぶと、【血の守護騎士団】の面々は、バイキングの如き盾の陣形を敷き、鉄壁の壁を構築していた。
盾の隙間から繰り出される血の魔刃の連射が、押し寄せる闇神リヴォグラフの異形軍を容赦なく射抜く。
その陣形の横を――。
相棒と共に駆けた。
師匠たちも風となって駆け抜けていく。
トースン、イルヴェーヌ、シュリ、ソー、グラド、レプイレス、グルド――。七人の槍の師匠たちが描く穂先の軌道は、まさに死の旋風。
それに続くサラ、ベネット、フー、ママニ、メル、ホフマン、アルナード、沙、羅、貂らも各々の得物を振るい、ゼメタス、アドモス、ヘルメ、グィヴァ、ミラシャン、バフハール、シャイナスと共に異形の軍勢を次々に解体していく。
そして、転移を繰り返すローブ男に対し、ラライセとファーミリアが肉薄する。
ファーミリアは<血道・吸魔把握>によって、転移の予兆となる魔力のかすかな揺らぎを看破したように<血剣歩法・瞬血>による超高速の踏み込みで、出現したばかりのローブ男の懐を捉えるや否やサンスクリットの血霊剣が炸裂。
甲高い音が響いたようにローブ男は防ぎ後退。
「レヴェルフォード、今日こそは――」
ファーミリアは<龕喰篭手>を<投擲>。
怪物の頭部と融合しているガントレット状の<龕喰篭手>が、ローブ男が振るう不気味な魔剣と数度衝突、大氣が悲鳴を上げるように衝撃波が幾つも発生。
あのローブ男がレヴェルフォードか。
ファーミリアは、空間を埋め尽くす血の剣の檻を形成。
追撃の<血道・血剣烈陣>か。
逃げ場を失ったかに見えたレヴェルフォードだったが、転移し、血剣の群れを避けていた。
ファーミリアは構わず<血剣・血霊斬>を繰り出す。
深紅の閃光となって奔った剣閃が、レヴェルフォードと衝突。
体が、ローブ、鎧ごと斬り刻まれていくが、レヴェルフォードは一瞬で装飾品ごと体を回復させる。
レヴェルフォードは己の分身と闇神リヴォグラフの幻影を生むと、ラライセ【血の守護騎士団】に斬りかかる。
吸血鬼たちの盾の陣を易々突破。
そんなレヴェルフォードの横っ腹にハンカイの<大嵐旋斧>が衝突し、レヴェルフォードは転移できずに、巨大な岩柱まで吹き飛ばされていたが、そこで転移。
宙空に<闇の血魔力>を展開させながら幾重にも己の分身を生み出し、その分身と共に<バーヴァイの魔刃>のような魔刃を連続射出。
ハンカイたちは後退した。
激突する金属音と魔力の爆ぜる音。
視界の端から黒豹が「にゃご――」と、レヴェルフォードに向け大量の触手を向かわせる。
そこから出た骨剣が何重と出現したレヴェルフォードの体を貫いていったが、すべて幻影か。
相棒は氣にせず、触手の骨刃を振り回しながら残存する異形の軍勢を文字通り掃除していた。
戦場の混沌の只中、エヴァとクレインの動きが重なった。
エヴァは白皇鋼の無数の刃とサージロンの球で、男の機動を阻害しつつトンファーを高速旋回させ、相対した、大柄の魔獣死人と異形の魔族を撃破。
クレイン直伝の、金属の足の鋭い回し蹴りと、一転集中で放たれるトンファーの連打が、次々に、異形の魔族の体に決まる。
一体ずつ潰すように倒す。
異形の闇神リヴォグラフ側の戦力は数を減らしていく。
かつて師匠から授かった棒術と足技の理合を戦場の熱の中で極限まで研ぎ澄ませていた。
そのエヴァの挙動のわずかな継ぎ目を埋めるようにクレインがトンファーを閃かせる。
師の突きが敵の守りを崩し、弟子の打撃がそこを叩き潰す。 言葉もアイコンタクトも不要。
二人の間にあるのは、かつての鍛錬で骨の髄まで刻み込まれた、絶対的な連動の記憶のみ。
レヴェルフォードが死に物狂いで不気味な魔剣を振るい、次元の裂け目へと逃げ込もうとした刹那、クレインがその本質を顕現させた。普段は隠されている頬の象徴が、ベファリッツ皇帝の、エメンタル大帝の血脈に呼応して皮膚を焼き裂かんばかりに激しく発光する。
銀火鳥覇刺と金火鳥天刺――。
二つの得物を胸前で鋭く交差させ、瞬きよりも速く魔力を臨界まで練り上げた。
「――<朱華帝鳥エメンタル>!」
放たれた巨大な火鳥が、地下回廊を白熱の白へと染め抜く。 転移の出口を完全に先読みした劫火の帝鳥が、出現したばかりのレヴェルフォードをその翼で抱き込み、空間ごと蒸発させる勢いで業火を叩きつけた。
熱波が吹き荒れ、岩壁が溶け落ちる。
だが、<隻眼修羅>と<闇透纏視>が、その炎の奥で蠢く闇の鋼糸を捉えた。カイムだと思われるローブを着た男が放った闇の鋼糸が焼かれながらもレヴェルフォードを守るように展開されている。土煙が吹き飛ぶ。そこには分身を身代わりにし、カイムの鋼糸によって救出されたレヴェルフォードの姿がある。
と、いきなり左側から闇の鋼糸が飛来した。
それを魔槍杖バルドークで弾く。
マントからも魔刃が連なって飛来した。それを左に移動し、避け、再び飛来した闇の鋼糸を<超能力精神>で宙空で止める。
大本のマントを着たカイムに近付きながら背後と左右に闇属性の闇壁を生み出し、逃げ道を塞ぐが、破壊された。
「チッ、闇神リヴォグラフ様たちが懸念されるわけか――」
ローブを着た男は、大量の闇の鋼糸と<闇の血魔力>と融合した魔刃の連なりを周囲に展開。
それを視ながら全身から<血魔力>を放出させ、<血鎖の饗宴>――無数の血鎖で、巨大な波頭のような闇の鋼糸と魔刃の連なりを溶かすように消滅させていく。
<闇透纏視>と<隻眼修羅>は維持。
<メファーラの武闘血>を発動。
<龍神・魔力纏>を発動。
<源左魔闘蛍>を発動。
<魔技三種・理>を意識し<仙血真髄>を発動――。
<血鎖の饗宴>によって霧散していく闇の鋼糸の残滓を突き抜けて一氣に間合いを詰める。
ローブを着た男も<魔闘術>系統を強め、
「――速いが――」
と前に出て魔剣を横一文字に払い、闇の魔力を衝撃波として放つ、それを<血龍仙閃>を両断――。
近付くローブを着た男は魔剣を突き出す。
それを魔槍杖バルドークで受け下に流しながら左手に召喚した神槍ガンジスに<血魔力>を込め、<光穿>――。
光を帯びた神槍ガンジスの双月刃が、ローブから出ていた魔刃を破壊したが、魔剣と衝突。凄まじい火花が散った。
刹那、目前の二眼が不気味に煌めく。
そこから放たれたのは殺意の魔線――。
即座に神槍ガンジスを消し、<隻眼修羅>で軌道を見切り、<風柳・異踏>を発動。怪光線を視るように真横へと滑り、回避する。
追撃の魔剣が迫る。それを魔槍杖バルドークの柄で受け<魔手回し>を行うが、くるくると回ったローブを着た男は<魔手回し>を破り、魔剣を柄の上を滑らせ、俺の指や手を狙う――。
<握式・吸脱着>を使い、手を離し、それを避け、<握吸>で柄を掴み直し、<龍豪閃>――の柄の打撃をローブを着た男に向ける。
「チッ――」
ローブを着た男は魔剣を盾に魔槍杖バルドークの柄による<龍豪閃>を防ぐ。
ローブを着た男は、
「お前の名は?」
「シュウヤだ。お前はカイムか?」
「あぁ、私が魔伯爵カイム――」
と、左手からまた血濡れた魔剣が生え、突出してくる。
仰け反って魔剣を避け、魔槍杖バルドークの柄で上に弾くと同時に<血龍仙閃>を繰り出す。魔槍杖バルドークの柄による打撃に近い攻撃は、斜めに出された魔剣の平に阻まれた。
衝撃が地下回廊の空氣を震わせ、岩壁から砂塵が舞い落ちる。
魔剣が横に広がりつつ、カイムの体から魔刃が幾つも突出――。
横に出て避けると、カイムのマントの一部が蠢きながら、触手のように幾重にも分かれて迫る。
それらを<超能力精神>で宙空で縫い止め止め――膨大な<血魔力>を込めて魔槍杖バルドークを<投擲>。
カイムはマントとマントから出た触手のようなモノで魔槍杖バルドークを包もうとしたが間に合わず、カイムを突き抜けたかと思ったが、カイムは真上に転移――。
魔剣を振り下ろしてくる。
<握吸>で魔槍杖バルドークを引き寄せながら、左手で持つ神槍ガンジスを掲げ「ハッ――」と、振り下ろされた一撃を螻蛄首が防いだ。
鼓膜を震わせる金属音が炸裂し、重い――。
カイムの全身から噴き出す闇の魔力が重圧となって俺を押し潰そうとする。だが、複数の<魔闘術>を重ね掛けしている状態――この程度の力押しで屈することはない――。
戻ってくる魔槍杖バルドークを避けたカイム、同時に神槍ガンジスを斜めに傾け、魔剣の威力を逃がすと同時に<神聖・光雷衝>――。
掌から光雷の衝撃波が電気を帯びたスプライトのように広がる。
カイムは驚愕、ローブの一部が防御層を作るが、それが燃えて蒼炎のエフェクトを残しながら吹き飛ぶ。
すると、
「にゃごぁ――」
背後から相棒の紅蓮の炎が吹かれたゴォォォッとした音が響く。
氣にせず、カイムを凝視。
焼けたローブの残滓を蒼い火の粉に変えながら、地下回廊の壁面へと激しく叩きつけられていたが地面を蹴り、転移、追撃を恐れ分身をあちこちに発生させながら転移を繰り返していく。
左に本体のカイムが現れる。
壁に陥没した岩盤の中から、「くそが……」とカイムが呪詛を吐きながら身を乗り出す。 奴の顔面半分は光雷に焼かれ、爛れた皮膚から闇の魔力が煙のように立ち上っていた。
だが、さすがは魔伯爵。
その瞳に宿る殺意は衰えるどころか、更に禍々しく膨れ上がっていく。
カイムは幅広な魔剣を浮かせる。
両腕から闇の鋼糸を出さず、左右の腕を消し飛ばす?
否、その消し飛んだ魔力が複数の漆黒の騎士に変化、他の異形の魔族とは異なる。そして、一瞬で、両腕を再生させる。
現れた新手は、頭部が闇神リヴォグラフの赤目だけ、甲冑と左右の腕は槍と魔剣で二つの足の人型。漆黒甲冑騎士たち陣形を取る。
カイムは浮遊し、魔剣からまた魔刃と衝撃波を繰り出してきた。
「「閣下ァ」」
光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスと漆黒甲冑騎士たちに突撃していくのを見ながら、魔刃を魔槍杖バルドークの<刺突>で貫いて防ぎ、神槍ガンジスの<魔仙萼穿>で、衝撃波を往なし、<雷炎縮地>――。
カイムは上昇し、鍾乳洞を飛翔、<雷光瞬槍>と<雷光跳躍>――。
一瞬で、カイムの真下に移動したが、カイムは待っていたように――。
カイムは待っていたように、醜く焼けた口端を不敵に吊り上げた。
「――かかったな、シュウヤ。ここがお前の墓標となるッ!」
カイムが叫ぶと幅広な魔剣が周囲の闇を吸い込むようにして急速に膨れ上がった。巨大化した魔剣が天蓋を削り逃げ場を塞ぐ巨大な断頭台と化す。
鍾乳洞全体にカイムの魔声が反響する。
時の流れが変化、天蓋を埋め尽くすほどの数百の赤目が発生し、それらが俺を凝視する。幾つかの鍾乳石の先端が果実が熟して割れるように弾け、そこから闇神リヴォグラフを象徴する、おぞましい赤目が幾つも剥き出しになる。
視界が歪む。岩肌がドロリと溶け出し、現実の境界が曖昧になっていく。
<隻眼修羅>と<闇透纏視>が、空間そのものが闇に書き換えられ、逃げ場のない檻が完成しつつあるのを捉えた。
機動を修正しようとするが、数百の赤目から放たれる呪縛の魔線が、俺の自由を奪わんと絡みついてくる。その直上からは巨大化した魔剣が空氣を断ち切り、俺の体を真っ二つにせんと迫っていた。
魔力の圧が皮膚を焼き、心象世界が完全に閉じるまで、下にいるゼメタスとアドモスが漆黒甲冑騎士の猛攻に足止めされ、援護は間に合わない。
絶体絶命に近いが――。
極限まで加速した思考が、停滞しかけた世界を再び動かす。
<脳脊魔速>を発動。
灼熱する神経系が、心象世界の呪縛を強引に振り払った。
右手の魔槍杖バルドークの形態を瞬時に書き換える。
魔槍杖バルドークを霊槍ハヴィスに変化させ――。
銀白色の輝きを放つ霊槍ハヴィスへと変化させると同時に、左手の神槍ガンジスを横一文字に薙ぐ<血龍仙閃>――。
螺旋を描く血の龍が天蓋にびっしりと張り付いた赤目どもを次々に両断し爆散せず、爆風をも止まって見える。
そのまま直上から迫る巨大な魔剣の刃に対し、逃げず、霊槍ハヴィスを正眼に構えて、真上に直進――。
全魔力を穂先に一点集中させ<神槍・烈業抜穿>――。
魔力の粒が集積しているような光の刃の穂先が、巨大な魔剣を切っ先と衝突、激しく振動した穂先は、次元を削る音を立て金属音さえ置き去りにする衝撃音を響かせつつ、巨大な剣をバターのように裂き、そのまま俺と共に垂直に上昇。
天蓋付近に浮遊しているカイム本体へ超加速のまま肉薄し、霊槍の穂先が、その両足を消し飛ばし、股間、胴体と脳天を容赦なく貫く。肉片が周囲に飛び散った。
魔伯爵のローブが槍撃の余波によって裂かれ、おぞましい異形の血が噴き上がったが、直ぐに蒼い炎に包まれていく。完成間近だったカイムが繰り出した心象世界は、ガラス細工のように脆く崩れ始めた。
ドロリと溶け出していた壁面が剥がれ落ち、元の鍾乳洞の光景が激しい魔力の余波と共に戻ってくる。
<脳脊魔速>を終わらせると、
「げぇ――」
レヴェルフォードの悲鳴が響く。
相棒と皆が仕留めたか。
続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。
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