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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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2089/2132

二千八十八話 地底旅行と黒猫の誘惑

 ハッチが重厚な音を立てて閉鎖される。

 直後、節々から勢いよく蒸氣が溢れ出した。

 シューッという高圧の排氣音と共に古びた油と魔石の爆ぜるような匂いが鼻腔をくすぐる。

 蒸氣は直ぐに天井のダクトの中に吸い込まれて換氣されたように消えた。


 外の淀んだ空氣は完全に遮断されている。

 レールの継ぎ目を叩く音が、どこか心音にも似たリズムを刻み始める。

 その音が消えると、少し浮いた感覚を得て、代わりに黒皇魔骸鋼の装甲に守られた静謐で力強い空間が俺たちを包み込んだ。


 すると前の方にドワーフたちの幻影が出現。

 バブーシュも現れると、その足下の床が変形。

 コントロールパネルのような物とハンドルが出る。

 そこに誘われるように移動した。


 デムラの心核晶と似た物が出現すると、自動的に半透明な膜が出現し、膜の中に地下道の地図と、次の駅らしき光景が出現。そこの端に指のマーク点滅しながら出現。

 バブーシュの幻影がそれを押す素振りをしてから他のドワーフたちと共に、そのコントロールパネルの中に消えた。

 膜には、様々な出力メーターを説明するように文字が踊っていく。

 その大半は魔導回路の仕組みに関する難解な解説ばかりだが、十字ボタンとBとAがある。面白い。

 そして、――<翻訳即是>のおかげで、一応は読める。

 だが、専門的な記述が多すぎだ。わけわかめ~と言いたくなるところも多々あった。

 同時に、眺めているだけで脳の裏側が痒くなってくる。とはいえ……この複雑な魔線の走りは見ていて飽きないし、指の動きに連鎖して動く細かなドワーフたちの動きが面白い。上上下下、左右左右、BAを押したくなる。


 次の駅には自動的に進むようだ。あ、ハンドルの中心のボタンを押せばいつでも止まれる仕組みか。

 もう、この黒い列車の黒皇魔骸鋼列車は動いているように見えたが……本格的な出発はまだか。

 そして、この膜に表示されている次の駅の光景を押せば、本格的に、黒皇魔骸鋼列車の地底旅行が始まるというわけか。


「皆、コントロールパネルに出た、この膜の中の光景が、次の駅らしい。そして、このボタンを押せば、この列車は本格的に前進を開始する」

「「はい」」

「うん」

「「了解」」


 皆の返事を聞きながら、


「西の向かうのは確実だろう。古代ドワーフたちの末裔たちの独立都市の中にある駅だと思う。現在もあるかは不明だが、外の一直線に続いているレールと地下洞窟からして、駅が存在するのはたしかだろう」

「途中で、レールがないとか、あるかもだけど、ロロちゃんなら助けてくれるでしょ?」

「にゃおぉ」


 と、黒猫(ロロ)は巨大な黒猫に変化した。

 一瞬で、目の前が黒い毛に覆われ、


「「きゃ」」

「ロロちゃん~」

「これはこれで――」


 皆、相棒の毛と柔らかい体に包まれて、楽しんでいるが、肉厚の相棒の体を押されて壁に……相棒の体が列車の一部を埋め尽くしている。


「ロロ、今は大きくならんでいい」

「ンンン――」


 と一瞬で、小さく変化した黒猫(ロロ)

 皆、相棒の毛と肉厚に包まれていたが、衝撃をうけたように前のめりに倒れていた。黒い抜け毛が、宙空に舞う。


「「「おぉ」」」


 ラライセたちからは喜びの声が溢れている。

 相棒の黒い体毛と柔らかい肉厚に包まれると、嵌まるからな。

 氣持ちは分かる。

 そんな皆に、


「では、出発する、このボタンを押すぞ――」

「「はい」」

「「「了解」」」

「押しましょう~」

「うん、行こう!」


 皆の了承に頷いてから、人差し指で、膜の表面に出現中の次の駅の光景を、指の腹でポチッとな。と、押した。


 すると、直後、黒皇魔骸鋼列車がかすかに震え――。

 滑らかに加速を開始する。


「ンン、にゃ~」


 黒猫(ロロ)は真っ先に一番前の座席に飛び乗り、特等席を確保したようだ。赤い瞳を細め、窓の外――といっても猛スピードで流れる暗闇と時折すれ違うドワーフの『防衛ルーン』が描く光の線を楽しそうに追いかけては、また視線を戻し、光の線を「ンンン」とややクラッキング音を響かせるように鳴いて頭部を右から左に動かしていく。


 ヴィーネが「ふふ」と言いながら、そんな相棒の背を撫でてから、振り向く。


「……これが、数千年前の古代ドワーフたちの技術。転移門のような不確かさがなく、大地そのものを掴んでいるような安心感があります」

「そうだな」

「ンン――」


 相棒の返事をしているようで、外の光景に夢中な頭部の動きが面白い。

 ふと、テレビ中継の前にいる猫の動画を思い出す。

 テニスか卓球のボールが上下に行き交う様子を、一生懸命に追い掛けている様子は面白かった。


「はい」

「閣下、天井の魔線の動きも芸術品です」

「あぁ」


 黒曜石と似た極大魔石が嵌まっているが、その周りを光が走っている。ヴィーネも「はい、今も動ける仕組みなことも、本当に凄いですことです……」と、車内の内装に触れながら感嘆の息を漏らす。


「うん、あ、皆これを見て。壁の刻印……ただの装飾じゃないと思う」


 レベッカが壁面に刻まれた緻密なレリーフを指差した。

「はい」

「魔力や魔法にも反応しているようですね」


 ヴィーネとヘルメが<血魔力>と水の魔力を内装に当てていた。その当てた部分は反応がある。

 そして、そこには無数の針を背負った巨大な針鼠――針鼠神ドレッドンの姿と、それを取り囲むように歯車を回すドワーフたちが描かれてあった。


 ファーミリアが、


「地下の、古代ドワーフたちには、針鼠神の信仰者が多かった。そして一部の支族は、穴を掘ることに命を懸けていたようです」


 その言葉に、ザガが、


「うむ、その通り、地下に留まった我らの祖先たち。祖先に対する信仰もあるが、神界、魔界、旧神と様々、更に、機械仕掛けの神デウス・エクス・マーキナ様への信仰者も多いぞ」

「エンチャ……」


 ザガはボンと頷き合う。

 ザガは、


「魔法で空間を飛び越えることを嫌った面もあったようだ。自分たちの手で掘り、杭を打ち、世界を物理的に繋ぐことこそが、神への信仰だったようだ。だから、この列車も『走る祭壇』と呼んでいたかもだ」


 ザガの言葉に皆が頷く。

 そのザガは、


「地上のドワーフ仲間には、鉱脈掘りの達人がいてな、そいつは、『転移なんぞは軟弱な空論!』と言葉を飛ばす者がいた」

「なるほどな」

「あぁ、そして、外の岩盤の強度に緻密な設計と、この列車の振動計算もだが、やはり、すべて機械仕掛けの神デウス・エクス・マーキナ様との信仰も関係があるかもだ。バブーシュの紋章も見事だが、ところどころに神々への信仰もある」


 信仰か、車内は、無骨な黒鋼の美学で統一されていた。

 座席には魔導布と魔獣の皮を合わせた漆黒のシートが並び、天井の四隅には、バブーシュの紋章を象った魔導灯が琥珀色の柔らかな光を投げかけている。


「……信じることに加えて祭壇か、信仰によってドワーフ支族に恩恵がある?」

「あるだろう。支族ごとの祖先の恩寵もだ。俺たちが今、こうして安全に西北へ向かえるのは、そうしたことと、かつての彼らが一掘りごとに命を懸け……大地を、地下の穴を、膨大な量の魔鋼で縫い合わせてきたからだな」


 ザガの額の『第三の目』が黄金色に輝き、列車の深部で唸りを上げる巨大なピストンの動きを捉えているようだ。


 その傍らでは、ボンが黒猫(ロロ)の隣に座り、楽しげに虹色の魔力を指先から弄んでいた。


「エンチャント~、エンチャントゥ~♪」

「ンン、にゃお?」


 ボンが黒猫(ロロ)の尻尾に微かな光の粒子を振りかけると相棒は不思議そうに自分の尻尾を追いかけてぐるぐると回り出す。

 その微笑ましい光景に、エトアとルビア、シャナ、そしてイモリザが身を乗り出した。


「ふふ、ロロちゃんの尻尾がキラキラしてる!」

「これ、バブーシュの魔力と混ざってるの? ボンのエンチャント、いつもよりノリがいいわね!」


 エトアが瞳を輝かせ、ルビアが身を乗り出してボンの手元を覗き込む。シャナも珍しく興味津々な様子で、


「……この振動、体の芯に響きます。なんだか、戦う前から力が湧いてくるみたい。ね、イモリザもそう思うでしょ?」

「……そうですか? あ、なんか言われてみたら、そんな氣が……大地の鼓動が、この鋼を通じて伝わってくる。不思議な感覚です♪」


 イモリザが楽しさげにスキップ。


「ふふ」

「総長~この列車、なんか楽しい!」


 ルビアとヴェロニカもスキップしていく。

 頷き、列車の壁にそっと手を添える。


 賑やかな彼女たちの声が車内に広がり、古代の鉄獣に新しい命が吹き込まれていくような、そんな錯覚さえ覚えた。


 エヴァは魔導車椅子を消して、座席に座る。

 両手を拡げ胸を張るように背もたれに背を預け、「――ん、座り心地もいい」と笑顔で発言。


 頷きながらエヴァを見る。

 背もたれに体を預けた際、ワンピースの布地越しでも分かる豊かな胸の曲線がゆったりと揺れた。普段は隠されているその柔らかな重みを視界に捉え、思わず喉を鳴らしそうになる。


 そんなエヴァは「ん――」と俺に手を伸ばす。


 そのエヴァは掌を握り返すと、「シュウヤはここ――」とぐいと腕を引かれ、座席の隣に誘導してくれた。

 そのままエヴァの隣の背もたれに、背をゆったりと預け、少しまったりとしていく。エヴァは右肩に頭を預けてくれた。


 可愛い。預けられたエヴァの頭の重みが、心地いい。

 ヘルメも横に座る。

 ワンピース越しに伝わる彼女の体温が心地いい。

 ふと、相棒の背を撫で終えたヴィーネと目が合った。


「ヴィーネ、こっちに来い」

「はい、ご主人様……」


 彼女を呼ぶと、ヴィーネは頬を微かに赤らめながら、ヘルメが退いた空いたスペースに滑り込んできた。

 銀髪から漂う清涼な香りと、エヴァとはまた違う、しなやかな肢体の感触が左腕に伝わる。


 ヴィーネは俺の腕をそっと抱きしめ、幸せそうに銀虹の瞳を細めた。 エヴァの柔らかく豊かな重みと、ヴィーネのしなやかで張りがある双丘。左右から押し当てられる異なる弾力が腕を熱く包み込む。


 そこへ、少し寂しそうにしていたヘルメも、水滴が弾けるような気配で膝の上へと身を寄せてきた。

 

 彼女たちの体温が、列車の微細な振動と混ざり合い、脳を蕩けさせていく……これが、古代ドワーフの技術がもたらした最高の特等席か。

 

 ミスティが、向こう側の座席に座り、


「――マスター、この高速で移動する鋼の入れ物、黒皇魔骸鋼列車だけど、神具台よりも高度な技術だと思う」

「あぁ、結構な大きさだし、レールの上に超伝導のような技術で、浮いての加速だからな」

「うん、加速してのこの安定度、魔法、魔石、鋼の技術、それらがすべてないと、ね……。まさに、世界の各地に神具台を作れた理由よ」

「「たしかに」」


 皆でハモる。

 すると、座席が回転も可能で背の角度も変化できることを知る。


「ふふ、マスター座席だけど一つに――」

 

 と、向こう側の座席から、ミスティが身を乗り出す。

 彼女は長い足をゆったりと組み替え、テーブルの下で俺の足先をツンツンと突いてきた。


「高度な黒皇魔骸鋼列車の内部、この魔導回路の話いいけれど……今は、こっちの繋がりを確かめたいわ」

「あぁ」

「ふふ、最高の地底旅行ね、ネモ船長? 大きい手に、掌にある槍たこも好き……」


 ミスティは俺の手を顔に寄せ、愛おしそうに指先で槍たこをなぞってくる。


「……はは、前に話をした小説のことか。あいにく俺の潜水艦はノーチラス号じゃなく、この黒鋼の鉄獣だがな」

「そうそう~でも、私にとってはシュウヤが船長よ」


 その指先から彼女の深い愛情と地底世界の旅を楽しむ強かな氣概が伝わってきた。


 賑やかな彼女たちの声と肌に伝わる確かな温もり。

 

 古代の鉄獣の腹の中で、俺たちは一つに溶け合うような安らぎを噛み締めていた。座席の角度を微調整し、更に密着を深める。

 ヴィーネとエヴァの乳房の柔らかさを左右の掌で交互に確かめれば、彼女たちの甘い吐息が耳元を熱く撫でていった。


 そこに、


「しゅうやーん」


 レベッカが甘い声で身を乗り出してきた。

 彼女のいたずらっぽい瞳が至近距離で見つめてくる。


「まったりの時間~」


 レベッカが俺の膝に手を重ね、上目遣いで甘えてくる。

 その細い指先が、太ももをじりじりと這い上がってきた。

 そこへ、背後からメルのひんやりとした、だが情熱を秘めた指先が首筋を愛撫する。彼女は座席の背もたれ越しに首に腕を回し、顔を寄せてきた。


「……総長、共有資料の整理は終わりました。次は、私の番です」


 メルは無表情を保ったままだが、至近距離で見つめるその瞳の奥には、隠しきれない熱い期待が揺れている。頬に触れるメルの肌は、最初はひんやりとしていたが、次第に俺の体温を吸い上げるように熱を帯びていくのを感じた。

 そのかすかな熱の伝播が彼女の静かな独占欲を物語っているようで、背筋に心地いい刺激が走る。


「総長~」


 浮遊していたヴェロニカが、上からのしかかって抱きついてきた。

 ユイもエヴァと位置を交換し、ぎゅっと握り締めてくる。


 前にはレベッカの期待に満ちた瞳、後ろにはメルの吐息、両隣にはユイとヴィーネの肉感――。


 クナも寄ってきた、エヴァも戻ってくる。

 皆と楽しんだ。

 不思議と、これだけの美女に囲まれているが、卑猥な感覚は薄い。


 ただ、互いの存在を慈しみ、労い合うような……体だけでない魂を労うような、温かな魔力……優しい氣が車内に満ちていく。


「ん……優しい。シュウヤと皆の愛が、肌を通じて伝わってくる……」

「うん……」

「総長は優しい~」

「「「はい」」」

「「ふふ」」

「温かい愛……スペシャル珈琲は必要ないですね♪」

「ンン――」


 相棒がユイとヴィーネの隙間に強引に頭を突っ込んできた。


「きゃっ」

「ロロちゃんも仲間入りね?」


 黒猫(ロロ)は、そのユイとヴィーネとレベッカの首筋をペロペロ舐めてていく。イチャイチャに参加か。


「ロロちゃんの後ろ脚ゲット~」

「「ふふ~」」

「はは、強引に押っ広げ~」


 強引に脚を広げられているし。

 ま、その……なすがままな、相棒もまた可愛い。


「ロロちゃんなすがままなのがいい!!」


 黒猫(ロロ)はエヴァに抱き上げられて、メルに頭部を撫でられていく。その柔らかいお腹にはレベッカがキスをしていた。

 

 俺も黒猫(ロロ)の後ろ脚の片方の肉球をギュッとした。

 感触が可愛い。

 

「あぁ~ロロちゃんのお腹を取られた~」

「可愛い~」


 眷族たちの甘い吐息と、相棒の温もりが混ざり合う。

 この黒皇魔骸鋼列車の前部は至福の空間へと変貌していた。


 賑やかで楽しい地底旅行だな。


 だが――その後方の区画。

 そこは琥珀色の光が届かない、暗がりの境界線を見やる。


 賑やかな前方の熱氣が、彼女たちの座す境界線でピタリと遮断されている。


 圧倒的な静寂と共に冷徹なまでのラライセ率いる【血の守護騎士団】の赤が鎮座しているのが見えた。


 エヴァたちの笑い声さえも吸い込まれるような、凍てついた空氣。

 ラライセたちの深紅の甲冑が車内のわずかな光を反射して、血のような鈍い輝きを投げかけてくる。


 一糸乱れぬ動作で座席に収まり、手にした大槍や魔剣の柄に手をかけている。


 すると、ラライセが、手にした大槍の石突きを「ゴンッ」と鋼の床に鳴らした。その硬質な音は加速する列車の轟音を裂くように広がる。

 近くにいるポイシャルやメカザサ、アルディンといった騎士たちの背筋を一際鋭く伸ばさせた。


 歴史を感じた。


 ラライセの蒼い瞳は、那由他の時を越えて西北の闇を射抜いていた。

 

 かつて自分たちが血を流し、死地を突破したあの戦域を一人の冷徹な指揮官として再現しているんだろう。


 その瞳の奥に宿る血の騎士団としての誇りが加速する列車の轟音さえも静寂に変えていくように思えた。


 そこに寄ると、ラライセは俺を見て、


「……シュウヤ様、このような物を他に悟られる造り上げる古代ドワーフの技術力は、我々の認知外でした」

「そうだろうな。ドワーフたちの能力は凄まじい」


 ラライセたちは皆が頷くが、少し顔色が悪い。

 

「あぁ、お前たちが嘗て争った相手には、ドワーフたちもいたんだったな」

「……はい、独立都市ヘルキオスからエイジハル血院までは、ファーミリアたちと進みました」


 ファーミリアも頷く。


「そこでは【暗夜十三の執行者】などとも戦いましたよ。そして古代ドワーフの軍隊とも戦った」

「……はい、魔界セブドラの傷場の争いからドムラピエトー家の傷場に戻り、そこから独立都市ヘルキオスへの転移。その独立都市ヘルキオスから地下大動脈を通り、その百六十七番の地下道に突入し……闇神リヴォグラフ側の連中と激突。更に、あの小うるさいドワーフの陣形を食い破り、闇神の異形どもも同時に、屠って進んだ戦域は、エイジハル血院の西側にあたる……」


 ラライセの声は低く、だが鋼のような自負が宿っている。

 隣に座るファーミリアも遠くを見やる。その蒼い眼には<血魔力>が宿っている。奥に、那由他の刻を越えて見据える静かな闘志を感じた。

 かつて血を流し、主ルグナドの道を切り拓いた誇り高き「赤備え」の記憶か。


 その冷徹なまでの闘志が肌をチリチリと刺激してくるように感じた。


 そのファーミリアは、


「……ラライセたちと共に魂を削り、あの地を駆け抜けました」


 ファーミリアの言葉に、ラライセは力強く頷く。

 共に死力を尽くして闇神リヴォグラフ側たちに抵抗を示した記憶。

 ヒミィレイスを助けようとした記憶が彼女たちに流れている。


 そして、外の光景、洞窟の移り代わる壁をチラッと見てから、


「この高速の速度なら、一日か、二日もあれば、すぐに西北の『大動脈』に近付きます。それでもエイジハル血院の東辺りに止まるはず。そして、この列車が止まるところが、古代ドワーフの拠点となれば、私たちの存在は、向こう側には脅威になる。戦いを仕掛けてくる可能性が高いです」

「戦いとなったら仕方ないが、まぁ、俺が全面に出る。吸血神ルグナド様の誇りもあるかとは思うが、戦いはなるべく止してくれ」

「……分かりました。全面的に従うので、何かあれば、ご指示をお願いいたします」

「了解した」

「はい、私たちの主は吸血神ルグナド様ですが、今、現在の主は、シュウヤ様とも考えていますので」

「「「ハッ!!」」」


 騎士たちの唱和が車内に響き渡る。

 直後、列車の減速が始まり、重厚なハッチから蒸気が吹き出した。

続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻-20巻」発売中。

コミック版1巻-3巻発売中。

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