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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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二千七十話 緑の剣帝キッシュとサイデイルの風

 膝を突く吸血鬼(ヴァンパイア)兵たちの姿を見届けるように頷いた。


「ご主人様、サイデイルに戻る前に、砂城タータイムは魔界のヴァルマスク大街の近くに展開させたままですが」

「あぁ、そうだったな」


 魔神槍・血河をアイテムボックスへと収納した。

 右腕に残る、熱く重厚な魔力の拍動。新スキル<光魔神技・穿ノ血河>の感覚を馴染ませながら、指に<血魔力>を込めてから、


「キッシュに連絡をしてから魔界に戻り、砂城タータイムをアイテム化してくる」

「あ、はい」


 すると、ハンカイが、


「シュウヤ、砂城タータイムはまだヴァルマスク大街の近くに置いとくのもありだと思うが」

「あぁ、闇神リヴォグラフ側の反撃の可能性か」

「悪神デサロビアや狩魔の王ボーフーンの魔神、諸侯にも魔公爵ゼンなどもいる」

「それはそうだが、砂城タータイムは色々と便利だからな。一度アイテム化して、またセラに戻るさ」

「了解した」


 そこで宙空に血文字を、


『キッシュ。地下のフレザガークを仕留めた。これより地上へ戻る。皆も一緒だ』


 即座に、サイデイルを守るキッシュから血文字が返る。


『了解した、シュウヤ。無事で何よりだ。サイデイルで待っている』


 視界に浮かぶ赤い文字に短く頷く。

 傍にいるヴィーネ、レベッカ、エヴァたちも血文字をキッシュや、セナアプアにいるペレランドラへと送り、コミュニケーションを行っていく。


「さて、では、魔界に戻って砂城タータイムを回収してくる」

「はい」

「「了解~」」


 閉まった直後の傷場に、魔霊のシンバルと魔王の楽譜を使用すると、傷場が開いた。

 魔霊のシンバルと楽譜を仕舞い、開いた傷場から魔界に戻る。

 

 そこで、砂城タータイムにいるルシェルに、


『砂城タータイムをアイテム化して、サイデイルに戻る。そのままザガやロターゼたちと中にいてくれていい』

『はい、分かりました。司令室にいます』

『おう』

 

 ヴァルマスク大街の中心に移動していた砂城タータイムを見上げる。

 四方の雷竜ラガル・ジン、炎竜ヴァルカ・フレイム、深淵のネプトゥリオン、地竜ガイアヴァストは、砂城タータイムの中に吸収されるように消えた。

 ここからは浮遊している白亜の城にしか見えない、無論、中身の司令室に〝星霜の運行盤〟と白銀のモニュメントは見えないが、意識。

 一瞬で白銀の道のが生成されるが、それには乗らず、白銀の道と砂城タータイムに膨大な<血魔力>を送ると、一氣に収束――。

 城塞が瞬く間に縮小し、手のひら程の精巧な模型へと姿を変える。


「「「おぉ」」」


 一部の吸血鬼(ヴァンパイア)たちが見ていたようで、歓声を発していた。

 手を上げてから、砂城タータイムをアイテムボックスに入れてから開いたままの傷場を潜って戻った。

 すぐに相棒が、


「ンン、にゃっ」


 と鳴いて、肩に乗ってくる。


「では、サイデイルには転移せず、キサラが言うように、地下洞窟の中層や上層にかけての地下道を探索しつつ十二樹海の地上を目指そうか」

「「はい」」

「そうだな、一度はちゃんと見ておきたい」

「オーク大帝国、旧神ゴ・ラード、魔神帝国の地底神連中の勢力が争い合う複雑怪奇な迷宮ですからね。ファーミリアたちには、古代狼族たちも加わる」


 ハンカイとキサラの言葉に皆も頷く。

 ファーミリアは、


「はい、私たちも当時から苦戦続きでした」


 獄魔槍流のグルド師匠と飛怪槍流グラド師匠も、


「あぁ、それらの連中とサイデイルの皆は戦っているんだ。俺たちの行動で、少しでも脅威が減るなら賛成だ」

「ふむ、闇神リヴォグラフ側の残党も地上を目指している可能性もある」


 と発言。

 更に、バフハールとシャイナスも、


「うむ。諸勢力も多い以上は、今の光魔ルシヴァル側の戦力で、この洞窟を調べながら進むのは定石だろう」

「はい、付いていきます」

「ラミドスラたちとラライセたちにここは任せ、わたしたちは地下道を調べて地上を目指しましょう!」


 ミスティの言葉に頷く。

 皆の同意を得て、広大な地下洞窟の探索を開始した。

 地下道を進むたび、モンスターと遭遇。

 岩竜の群れは、ファーミリアたちが速攻で倒していく。

 壁にくっついている青蜜胃無(スライム)たちを掃除するのは少し苦労した――。


 しかし、ラミドスラたちに預けた深層の拠点が心臓なら……。

 ここから地上へ続く道は、魔力と血が循環する血管そのものだな。


 ――骸骨兵の残党を発見。


「ん、敵」

「地底神セレデルの一派でしょう。ご主人様、先制攻撃の許可を!」

「閣下ァ、先陣はもらいまする!!」

「ハッ、我が先だ――」


 ルリゼゼが先陣を切って地を蹴った。

 四本の腕が複雑な軌跡を描いて踊り、四つの眼が戦場を冷徹に射抜く。

 左右の上腕に握られた曲剣が、暗がりの地下道で閃光を撒き散らした。

 下腕に構えた重厚な双頭の魔蛇槍ツイン・スネーク・ランスが空氣を切り裂く。

 まさに阿修羅の如き勢いで敵陣へと肉薄していく彼女の背中は、頼もしくも苛烈だ。


「ンン、にゃごぁ~」


 肩から跳躍した相棒が宙空で巨体を震わせ、神獣の矜持と共に紅蓮の炎を最大出力で吹き荒らす。

 地下通路を埋め尽くす骸骨兵たちが、その熱波によって一瞬で灰へと変わっていく。


「ハッ、神獣様! 遅れは取りません! ――<魔靭・鏡斬り(ルゼ・サソー)>!」


 加速したルリゼゼの四腕、否、八本にも見える曲剣の残像が、骸骨兵たちの放つ不浄な魔力刃を悉く切断し、弾き飛ばす。


 勢いは止まらない。

 ルリゼゼは闇神アーディン様の幻影を背後に揺らめかせながら、曲剣からバチバチと雷のような音を響かせ、敵の集団へと深く斬り込んだ。


「――<魔鳴(トーレインス)破雷落刀(ルグィアスソード)>!!」


 雷鳴が轟く一閃。

 四腕から放たれる圧倒的な手数の連撃が、骸骨兵たちの胸元を次々と両断し、魔力核を粉砕せしめる。


 かつて数多の戦場を潜り抜けてきた彼女の武技が、迷宮の血管を力強く掃除していく。


「ガハハ! 俺の斧も混ぜろィ!」


 ルリゼゼが切り拓いた道に、ハンカイが二つの金剛樹の斧を叩き込む。

 <戦浮・大巻斧斬>の衝撃波で残存する骨どもを粉砕する。

 ヴィーネの翡翠の蛇弓から放たれた魔矢が後方の術者を射貫き、レベッカの蒼炎が爆風と共に通路を浄化していった。エヴァも冷静に<霊血導超念力>を操り、白皇鋼(ホワイトタングーン)の刃で逃げ場を失った残党を精密に間引いていく。


「ビュシエ、ファーミリア、そっちの分岐を塞げ!」

「はい、お任せを――」

「はい! シュウヤ様。一匹たりとも逃がしません!」


 ビュシエとファーミリアが先頭に、ホフマンたちを従えつつ直進。

 二人は大きい白鴉と蝙蝠に変化。大型の熊と骸骨が融合したような魔獣モンスターが放った超音波のような攻撃を、<血魔力>の超音波のような攻撃で、弾くと

弾き返された不協和音が洞窟内に反響し、大型の魔獣たちは自らの超音波の直撃を受けてその巨体を大きく仰け反らせた。


 そこへ、急降下する白い鴉のビュシエと白い蝙蝠のファーミリアに続き、ホフマン、ルンス、アルナード率いる<従者>の兵士たちが、一糸乱れぬ動きで突撃を仕掛けた。


 彼ら<従者>の兵士たちは、<筆頭従者>アルナードの号令の下、洗練された連携を見せる。

 魔力を帯びた長槍が、ひるんだ魔獣の肉厚な皮膚と剥き出しの骨の隙間を、正確に穿っていく。


「今だ! 救世主様の御前である、誇りを示せ!」


 ホフマンの烈火の如き鼓舞に、<従者>の兵士たちが鋭い喚声で応じる。

 一斉に突き出された槍の穂先から、深紅の<血魔力>が爆ぜた。

 熊と骸骨が歪に融合した魔獣の巨体を、その内側から無慈悲に破壊していく。


 目の前で繰り広げられる一糸乱れぬ連携。

 砂城タータイム内で蜘蛛娘アキの部下アチュードとベベルガと人造蜘蛛兵士たちと共に訓練を続けていた皆が積み重ねてきた鍛錬の成果が、迷宮の闇を鮮やかに切り裂いていた。


「ふぅ……掃討、完了いたしましたわ、シュウヤ様」


 ビュシエが優雅に舞い降り、吸血鬼(ヴァンパイア)の姿へと戻りながら微笑む。

 ホフマンと<従者>の兵士たちも、槍を収めて俺に深々と一礼した。

 地下道の一部の掃除を終えた後も、地下道の中層から上層へに向かう。

 

 岩壁の狭い亀裂を強引に潜り抜け、外へと這い出す。

 湿り氣たっぷりと含んだ風が、肌を撫でていく。

 十二樹海(じゅうにじゅかい)の底、陽光すら拒絶する深い谷の出入り口。


 途端にジャングル特有の濃密な緑の匂いが、肺の奥まで満たしていく。

 地下の澱んだ死臭とは違う、生命の熱量を含んだ香りだ。

 

 切り立った岩壁には湿り氣を帯びた樹葉がびっしりと張り付き、見上げる先では大きい樹が太陽を奪い合うように枝を広げ、分厚い天蓋を形成していた。


 周囲に道はなく、足下は水分を多く含んだ深い泥濘(でいねい)となっていた。

 巨大なシダ系の植物が群生している。

 暑さもあるが、地下の死臭となんとも言えない圧力のようなモノに比べたら、肌にまとわりつくような湿氣のほうがマシ、というか、涼しい風もあるし、こちらのほうが良いか。


 するとエヴァも、


「ん、地上の空氣は良い。……落ち着く」


 発言。

 紫の瞳は、周囲の魔素の動きを鋭く捉えている。

 魔導車椅子(・・・・)に乗りながら、それを浮遊させている。


「あぁ。一度相棒に乗って、今の樹海の様子を上から確かめながら戻るとしよう」


「ンン、にゃお」


 言葉に応じた相棒は、一瞬で体を神獣の大きさに変化させると、触手を皆に繰り出して、頭部に乗せていく。俺も遅れて跳躍し、相棒の頭部に移動した。


 神獣ロロディーヌは、触手手綱を寄越すと、早速進む。


「ンンン――」


 背丈の高い樹の上すれすれの低空をゆっくりと移動し始めた。

 眼下には、見渡す限りの緑の海が広がっている。

 高低差があるから、山々のように思えるが、ま、山でもいいか。


 轟音を立てて水飛沫を上げる巨大な滝や、蛇のように蛇行する濁った川。

 そのほとりでは巨大な水棲魔獣(ライノダイル)の群れが蠢き、樹冠の隙間からは獲物を争うモンスターたちの咆哮が響いてくる。

 これらすべてがサイデイルを取り囲む天然の外壁。

 その険しさを改めて確認しながら進むと、前方にひときわ巨大な山と伐採された地域が増えてくる。開拓された土地に、サイデイルの城下町が見えた。


 山頂付近には精霊樹(ルッシー)の光の柱が天を突き、その周囲をルッシーの魔力が生み出す血色の霧が、幻想的なミストとなって山全体を包み込んでいる。


 山の麓には、かつての壕を活かして築かれた堅牢な城郭もあった。

 相棒は高度を保ち上空を進む。活氣溢れるサイデイルの城下町を見ながら山の斜面を上昇――。

 

 山城(・・)の中心部のモニュメントが見えたところで相棒は速度を落とし、その地面に着地――。女王(キッシュ)の司令室と、モニュメントを見ながら皆、相棒から降りていく。


 広場で遊んでいた子供たちが元気な声を上げて駆け寄ってくる。

 神獣(ロロ)は皆を下ろすと、神獣猫仮面を皆に見せるように、少し浮遊。


「「「わぁ~~」」」

「「神獣ちゃん様~」」

「主!!」


 子供たちから歓声が上がる。

 ビアも、少し大きくなっている蛇人族(ラミア)の赤ん坊を掲げていた。


 神獣(ロロ)は体を小さくさせ、黒猫に戻ると着地。

 

「シュウヤ兄ちゃん~」

「ロロちゃん、お帰りー!」

「ヴィーネ姉ちゃんにキサラ姉ちゃんもだ!」

「エヴァお姉ちゃん、ただいま!」

「……っ」


 子供たちは目を輝かせて、黒猫(ロロ)を触り出してく。

 相棒は逃げずに、子供たちに好きなように触らせていた。ゴロニャンコして、腹を見せると、


「はは~お腹~」

「可愛い~~」

「「ははは~」」

「もちもち~」

「「もふもふ~」」


 相棒も嬉しいようだな。

 だが、途中で逃げては、周りを飛び跳ねたりと大はしゃぎとなった。

 

 エヴァの下にも子供たちと、弟子のムーが寄り、その紫の瞳を和ませている。

 大瑠璃の小鳥も周囲を飛び回っていた。


「ん、ムーちゃん、元氣そうで良かった」

「……っ」


 ムーは頷いてからエヴァに抱きついている。

 <南華魔仙樹>で作った義手と義足を嵌めていて、少し汚れている〝愚王級魔人武術指南書〟を手に持っていた。


「ふふ」


 賑やかな子供たちの声に包まれていく。

 ムーが俺の傍へと寄ってきて、「……っ」と何かを訴えるように呼氣を漏らした。

 

「どうした、ムー?」


 問いかけると、ムーは上向く。

 恥ずかしげな笑みを浮かべた次の瞬間、「っ――」と荒い吐息と共に俺の体に抱きついてきた。


 少し背が伸びたムー。その柔らかな銀髪を、愛おしさを込めて撫でていく。

 手にした〝愚王級魔人武術指南書〟が、俺の腰の衣装をぎゅっと握りしめていた。

 その手の力から、彼女が日々どれほど懸命に鍛錬を積んできたかが伝わってくる。


「……訓練を続けているようで嬉しいぞ」

「っ――」


 と、ムーは〝愚王級魔人武術指南書〟を返してきた。


「もうこれを学んだか」

「っ!」


 と、数回頷くムーが可愛い。

 〝愚王級魔人武術指南書〟を仕舞う。


「ムー、キッシュたちとの話があるからまた後でな」

「……っ」


 と頷くムー。

 正面に構える女王(キッシュ)の屋敷へと視線を向けた。

 他の子供たちの頭を軽く撫でてから、報告のために扉へと足早に向かった。


 扉を開けると、中では、キッシュが羽根ペンを動かし、書類にサインをしていた。

 参謀のような位置には、ドココさん、そしてデルハウトとシュヘリア、トン爺が控えている。


「よ! キッシュ。デルハウトとシュヘリア、トン爺とドココさん、ただいま」


 呼びかけに、公務に励んでいた面々が一斉に顔を上げた。


「シュウヤ!」


 立ち上がったキッシュの姿には、以前にも増した威厳と氣品が溢れていた。

 頭部には、赤焔を宿した蜂式光魔ノ具冠ほうしきこうまのぐかんが鎮座している。

 重装甲の胸には、蜂の冠を抱いた鶴の紋様が、彼女の呼吸に合わせて生きているかのように翼を広げ、衣裳の表面を飛翔していた。

 薄緑の髪に混じる<血魔力>が生む梅染色と潤朱色のコントラストが、女王としての存在感をより一層高めている。

『ふふ、緑の剣帝キッシュ! 元氣そうで嬉しくなります』

『あぁ、そうだな』


 ヘルメの念話に同意だ。


「「陛下!」」

「ふぉふぉ、待ち人来ずではなく、来る。じゃの!」

「シュウヤ様、お帰りなさいませ!」

「はい、シュウヤさん。お待ちしておりました」


 トン爺、ドココさんがそれぞれに挨拶を返してくる。

 キッシュへと向き直った。


「地下の『傷場』を巡る騒動は片付けてきた。魔界のヴァルマスク大街の傷場も吸血神ルグナド様が取り返し、俺たちは自由に行き来する権利も得た。セラ側、ここの地下深くのヴァルマスク大街だった傷場の周囲には、闇神リヴォグラフ側の残党など地下のモンスターと地底神セレデルの眷族フレザガークなどが戦っていたが、それらを討伐し、ルグナド様の軍勢と共同で傷場の拠点を維持することにした」

「地下から樹海に出る地下道も探索し、敵対勢力を駆逐していたので、当分は安全のはず」

「しかし、地底神セレデル側は屠ったけど、オーク大帝国のオークたち、旧神ゴ・ラードの蜻蛉系モンスター、樹怪王の軍団は、地下から地上にかけての地下道では遭遇しなかったわ」


 皆の言葉にキッシュは、


「ふむ、構わないさ。樹海も広い、地上と地下を巧みに移動している勢力たちだからな。そして、どちらにせよ、地下の傷場が光魔ルシヴァル側に回ったことが重要。心配が一つ減ったことになる」


 その言葉に頷く。

 キサラが、


「闇神リヴォグラフ側の勢力は昔から、地上には這い出ては来なかったですからね」


 頷くとキッシュは、


「そうだ。樹怪王の軍団や地底神の連中に、オーク大帝国のほうが、この辺りの地下では強いということだろう」


 と、両手で机を突くように立ち上がると、机を迂回して前に出た。

 薄緑色の瞳に安堵の色が見え、


「ファーミリアと吸血神ルグナドとの関連もあるとは思うが、サイデイルは、またシュウヤたちに救われたことになる。本当に良かった」

「おう、順当に平和に近づいていることは確かだからな」

「……ふふ。そうだな。それで、ゆっくりとここで過ごせるのかな?」


 キッシュは、ファーミリアたちを少し見てから話をしている。

 

「ゆっくりと過ごすのは、後だな。狼月都市ハーレイアに向かう。樹海の【樹海のハーヴェストの泉】や【キュルハ様とレブラ様の同盟の血碑】の土地への出入りの許可を求めに」

「ふむ、〝血の陰月の大碑〟だったか」


 とキッシュが言うと、ファーミリアたちが頷き、


「はい、もう光魔ルシヴァルの<筆頭従者長(選ばれし眷属)>ですが、吸血神ルグナド様に連なる吸血鬼(ヴァンパイア)たちには、馴染みのある土地と碑です」


 と発言。

 

 キッシュは頷いた。

 司令長官として、そしてサイデイルを導く女王として、真っ直ぐに、俺の瞳を見つめ、


「了解した。所用が終わり次第、ここでゆっくりと過ごしてくれると嬉しい、愛しい友……」


 愛しいの部分で、瞳が潤んでいた。

 女王よりも一人の女の言葉だ。頷いて、


「あぁ、分かっている」



続きは明日。

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