千九百七十七話 八峰大墳墓の真実
女王ゴーレムが放つ絶対的な強者の氣配――。
その女王ゴーレムの双眸から魔光線が発射された。
光属性が強そうな印象――。
大型の蜘蛛モンスターの複眼から放出される魔光線とは異なる。
色が異なる光線、それを右に移動して避けた。
<闘気玄装>を強めて<血道第四・開門>――。
<霊血の泉>を発動。
空氣が一変し、鉄錆と濃厚な魔力の匂いが鼻腔を満たす。
大量の血の<血魔力>が周囲に広がり、足下の宙空の一部と、下の床に垂れていく<血魔力>が、まるで重力に逆らうかのように蠢き、瞬時に血の泉と化した。その泉からルシヴァルの紋章樹の幻影が陽炎のように立ち昇ると、小形の紋章樹の幻影が周囲に生まれ、燐光を放ちながら静かに垂れていく。
ヴィーネにも、女王ゴーレムからの双眸から遠距離攻撃が向かう。
ヴィーネは降下し避けた。即座に女王ゴーレムへと――。
左手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出したが、六本の腕から伸びた刃で<鎖>は弾かれた。<鎖の念導>で操作、<鎖>は宙空で弧を描くピュアドロップ型の先端を急角度で、女王ゴーレムの頭部に向かう。その<鎖>を六腕の刃がすべて叩くように弾いてきた。
肩の竜頭装甲を意識し、闇と光の運び手装備を展開させる。
装備の髑髏模様が赫い光を放ち、表面に『刹』のルーンが幾何学的に刻まれ、魔槍杖バルドークの柄も光を帯びた、俺と神経と直結した感覚を得た。
女王ゴーレムは、光線を発した双眸で俺を見る。
瞳は蒼白い。冷たい眼差し。
底知れない永劫の時が生み出したような威圧感がある。
すると、「フシャァァ!」と下から甲高い咆哮が響く。
皆と戦っている大型の蜘蛛モンスターか。
と、そこから魔線、光線が飛来した――即座に<血道第三・開門>――。
<血液加速>を使用し、加速し横へ飛翔――。
下からの魔線を避けたが熱を帯びた破壊光線、前髪を焼く。
焦げた匂いが鼻を衝く。
それが崩落してきた複数の岩と衝突、瞬時に灼熱の液体へと変えながら、天井に激突し、鼓膜を劈く轟音を立てて爆発した。衝撃で天井の装飾の一部が砕け散り、きらきらと硝子の破片のようなものが舞う。おかげで崩落が増えたが、大型の蜘蛛モンスターがいた場所の天井の穴が、更に無残に広がっていた。あの闇の向こうから侵入してきたということか。
数千年の時を経てもびくともしない堅牢な造りだとしても、このような戦いの前では、だが、岩盤を活かした作りだから、大丈夫か。
天井も頑丈で、崩れる氣配は皆無。
崩落してきた岩塊と鋼の欠片を、ヴィーネと共に――。
左右に移動し、避けていく。
すると、女王ゴーレムが、
「――脅威度判定、未知数、黒髪の高位魔力層を優先――」
と機械音声を発した。
やや遅れて胸元と肩幅が横に広がる。
そこから無数のカマキリのような巨大な刃が伸びてきた。
六本の腕からも複数の棒手裏剣を飛ばしてきた。
先に巨大な刃が上下、左右から迫る。
カマキリが持つようなギザギザな刃――。
魔槍杖バルドークと白蛇竜小神ゲン様の短槍を振るう。
柄とギザギザな刃を連続的に衝突させて防ぎ、棒手裏剣も柄で防いだ。
左右に魔槍杖バルドークと白蛇竜小神ゲン様の短槍を動かし、ギザギザな刃の連続斬りを上と下に弾いては、上昇し――。
女王ゴーレムの上半身から伸びてくるカマキリ刃は追尾してくる。
前転しながら両腕を回し、魔槍杖バルドークと白蛇竜小神ゲン様の短槍の柄のあらゆる場所で、ギザギザな刃の斬撃を防ぎまくった。
両腕の振動が止まらない――。
その回転運動中にも<月冴>と<月読>と<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>を連続発動させた。
<月冴>で精神を氷のように冷静に保ち、<月読>で敵の動きの僅かな未来を読む。
思考と感覚を極限まで研ぎ澄ませるように全身に<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>の水神由来の<魔闘術>系統を展開させ、肉体と魔力が一体化する全能感が湧き上がった。
更に<武行氣>を重ね――。
もはや飛翔というよりは空間を蹴り抜く感覚で――。
左斜めから右斜め下へと瞬時に移動。旋回の度に襲い来るGを捻じ伏せ、女王ゴーレムの無機質な動きの一瞬先を<闇透纏視>で見据え続けた。
そして、ギザギザな刃のタイミングの癖を読み――魔槍杖バルドークの紅斧刃と白蛇竜小神ゲン様の短槍の矛をギザギザな刃に叩き付け、跳躍しては、<雷光瞬槍>を使い斜め上に加速し、宙空から女王ゴーレムとの間合いを詰めた。
女王ゴーレムは背からジョット噴流のような推進力を発し、斜め右上から左下へと急降下、俺との距離を中間距離から遠距離に保つ、約百メートル前後か――すると、女王ゴーレムの右の腕の群れの先端から魚雷のような形の魔弾が射出される。
その魔弾は速い――。
<紫月>と<魔闘血蛍>と<ルシヴァル紋章樹ノ纏い>と<経脈自在>と<火焔光背>を連続発動。
加速力を上昇させ、魚雷の魔弾を見るように――。
魔槍杖バルドークを中段に構え後退――。
風槍流『中段受け』で魔槍杖バルドークの柄で、魚雷魔弾を受け止め、ぐっ――爆発――。
ピコーン※<風柳・中段受け>スキル獲得※
お、爆風の魔力は<火焔光背>で得た。
そして、風槍流の防御技術を初めてスキル化できた。凄い――。
早速に<風槍流・心因果律>の効果が発動か。
そして、加速を強めたヴィーネが<握吸>を活かしているだろう右の袈裟斬り<白炎一ノ太刀>を女王ゴーレムに浴びせていた。
続けて、左から黒炎を纏わせた戦迅異剣コトナギを振り抜く。
胴を薙ぐ加速を乗せた<黒呪仙炎剣>が女王ゴーレムの腕と腹を捉える。ガギンッ! と岩盤を叩き割るような衝撃が腕に走り、吹き飛ばしはしたものの、刃先に伝わる感触はあまりに鈍い。黒炎がその装甲を舐めるが、刻まれた傷はごく僅かだった。
女王ゴーレムは腕の幾つを分離させ、それをヴィーネに向かわせた。
その腕から霧状の魔力が展開させれた。
目眩ましか? ヴィーネの動きが鈍くなる。
宙空にいる女王ゴーレムの冷徹な双眸が煌めいた。
そこから光の魔光線が、俺に飛来した。
即座に<雷炎縮地>を使用し、魔光線を避けた。
霧状の魔力ごと薙ぎ払うように、魔光線がヴィーネにも向かう。
ヴィーネは<血魔力>と雷状の魔力を体から発しながら加速し、霧状の魔力を霧散させながら左に旋回していく。
<光魔銀蝶・武雷血>を発動させたんだろう。
そのヴィーネの動きに合わせ、<鎖>と《闇壁》と《連氷蛇矢》を連発し、旋回軌道を取り、空中から女王ゴーレムを追った。
対する女王ゴーレムは飛翔速度を上げて俺とヴィーネの動きに対応した。
だが、混乱したように、背から大きい蜻蛉の翅を生み出し、目にも留まらぬ速度のハチドリを超えた動きで羽ばたかせで上下左右を行き交うと、己の左右に白い霧状の魔力を発し、煙幕を展開し、有視界から消える。
が、魔察眼と<闇透纏視>で丸わかり。
ヴィーネも<弓眼・天花>を持つし、余裕で女王ゴーレムを見ているだろう。女王ゴーレムは宙空でホバリング状態となっていた。
その女王ゴーレムは、下に向け魔光線を放つ。
光属性の多い魔光線は大型の蜘蛛モンスターの巨体を掠め、多脚が溶けると、師匠たちの斬撃と突きを連続的に喰らい吹き飛び、壁と衝突。
「フシャァァ」
怒った大型の蜘蛛モンスターに、カルードの<暗刃>にレザライサの魔剣ルギヌンフの<魔血剣一体>の豪快な斬り払いと、レベッカの<光魔蒼炎・血霊玉>とキサラの<暁闇ノ跳穿>なども決まっていた。
大型の蜘蛛モンスター己の甲殻を脱ぎ捨てるように再生させる。
更に体から蒸氣を発し、レザライサたちを吹き飛ばす。
と、少し跳躍、低空を飛行し、回転しながら複数の複眼から稲妻螺旋のような魔光線を周囲に放つ――。
稲妻螺旋のような魔光線と衝突した箇所は溶けた。
「にゃごぁぁ」
相棒が紅蓮の炎を発し、その稲妻螺旋の魔光線を一部防ぎ、皆を守る。
だが、稲妻螺旋の魔光線は相棒の紅蓮の炎を避けるように横に移動。
ビュシエの<血道・石棺砦>も展開されていくが、稲妻螺旋の魔光線と衝突した石棺は一部が溶けて吹き飛んでいた。
稲妻螺旋の魔光線は、誰もいない女王の玉座に向かう。
と、それを溶解させ、玉座の一部を溶かし、壁ごと溶かしながら斜めに上昇し、壁に斜めの傷跡を残しながら上昇し、女王ゴーレムに向かう。
その稲妻螺旋の魔光線を繰り出している大型の蜘蛛モンスターの複眼に、ベリーズの<血烈吸剛矢>が突き刺さって複眼は破裂して、止まるが、すぐに気色悪い液体を放って再生されてしまった。
その複眼からベリーズに向け稲妻螺旋の魔光線が放たれる。
ベリーズは普通に跳躍し、稲妻螺旋の魔光線を避けた。そこの高台は溶けて消える。刹那、ユイの<銀靱・壱>から<死臓ノ剋穿>の神鬼・霊風の斬りと突きが、大型の蜘蛛モンスターに決まるが、多脚を再生させ、血飛沫を発しながら反撃をユイに繰り出していた。ユイは後退。
更に、大型の蜘蛛モンスターは、再生させた複眼から稲妻螺旋のような魔光線を再度放ち、それが斜めに宙空を横断してくる。
壁を溶かしながら俺たちにも迫った。
それを飛翔して避けると、稲妻螺旋のような魔光線は、天井の星図を削り取るように溶かした。
女王ゴーレムも俺と同じく飛翔し、下からの稲妻螺旋のような魔光線を避けつつ魚雷魔弾を大型の蜘蛛モンスターに繰り出し反撃、更に、俺たちを追跡飛翔しながら胸元から無数のカマキリ刃を寄越してくる――。
そのカマキリ刃を魔槍杖バルドークで防ぐ。
左手の武器を神槍ガンジスに変化させ、魔力を通し、槍纓を刃と化して、カマキリ刃に衝突させていく。
ヴィーネは両手の剣を翡翠の蛇弓に変化させ、光線の矢を女王ゴーレムに繰り出すが、体に刺さる箇所が少ない。
また両手に、戦迅異剣コトナギとガドリセスを召喚し直している。
下の眷族たちの戦いも混沌としていた。
ゴーレム軍団の進撃、蜘蛛が放つ魔力干渉性の糸、そして両者の間で交わされる破壊の応酬。三重の脅威が渦巻く戦場となっていた。
と、あまり見ていられない。
女王ゴーレムから魔弾が飛来した。
それを最小限の動きでいなし、ヴィーネと呼吸を合わせ女王ゴーレムに近づくが、女王ゴーレムは後退、体の穴から魔弾を複数射出――。
巧みに飛翔しながら魚雷魔弾をも射出してきた。
そして、双眸から魔光線を放つ。
女王ゴーレムの魔光線は少し蒼く光属性が強いから、<火焔光背>で吸収できた。好都合、問題は、それと同時に放たれる胸元のカマキリ刃、胸元から無限の勢いで突出してくる刃が厄介すぎる――。
魔弾と魚雷魔弾を避けながら魔光線をも避け、カマキリ刃を魔槍杖バルドークで弾く。魔光線は、大型の蜘蛛モンスターの稲妻螺旋の魔光線よりは、威力が低いから楽か、それを紙一重で回避しながら――<神解・天眼>と<隻眼修羅>を発動した。
女王ゴーレムの表層的な動きだけではなく――。
これで中身の〝理〟を見抜けるか、不明だが――。
『器よ、そろそろ妾たちの出番か』
『あぁ、使うかもだ』
『『はい』』
沙・羅・貂たちと念話をしつつ、瞬時に視界が変容を遂げる。
世界から色が抜け落ち、無数の魔力の流れが光の線となって網の目のように空間を走り抜けた。既に発動中の<闇透纏視>が他のゴーレム一体一体と女王を繋ぐエネルギー供給路を可視化し、<神解・天眼>が、女王の放つ防衛用の魔力と、蜘蛛が放つ解放に向かう魔力の根本的な流れと、その〝理〟の違いが視えた。
<隻眼修羅>で、数万、数十万通りもの先読みを行う――。
女王ゴーレムは、俺たちの氣配を察知し、複数のゴーレムを上昇させてきた。それらは飛行形態を取ると、飛来してきた。
即座に王級:闇属性の《暗黒銀ノ大剣》で迎撃――。
神槍ガンジスの前方に巨大な闇と銀に輝く魔法の大剣が出現――。
それが天井ごと斬るように直進――。
<間歇ノ闇花>の闇の花の幻影が周囲に発生した。
――《暗黒銀ノ大剣》は直進し、複数の飛行形態ゴーレムを破壊しながら直進し、女王ゴーレムと衝突、女王ゴーレムは吹き飛ぶ、――《暗黒銀ノ大剣》はそのまま壁と衝突して、突き刺さってから消えた。
重低音が響きまくる。
女王ゴーレムは、胸元のカマキリ刃を盾になんとか防いだようだ。飛翔している。その女王ゴーレムを追った。ヴィーネも移動している。
ヴィーネは、俺の向こう側を高速で飛翔し、女王ゴーレムの裏側に移動。
そのヴィーネと今日何度目か分からないアイコンタクトを行う。
断固たる決意は伝わっている。
そして、魔軍夜行ノ槍業越しに通じるか不明だが――。
『そのままゴーレム軍団の殲滅、お願いします!』
師匠たちへ念話を飛ばす。
その決断に、言葉は不要だった。
「「仕掛ける――」」
「ハッ、分かった!」
「「了解!」」
俺の意図を汲み取った師匠たちが加速状態に移行――。
グルド師匠の<獄魔破豪>が敵の最前列をまとめて薙ぎ払い――。
グラド師匠の<影導魔・星影>から放たれる無数の魔槍が、第二陣を串刺しにする。シュリ師匠の雷炎が舞い、ソー師匠の双槍が敵陣を切り裂く。
師匠たちの圧倒的な武威が下で戦う眷族たちにも伝ったように皆の動きがよくなった。
宙空にいる女王に移動してきたゴーレムの集団たちの動きが鈍くなる。
その一瞬の隙を見逃さない。
女王ゴーレムは、
「このような事は――」
と機械音で南マハハイム共通語を放った。
「ヴィーネ!」
「はい!」
<雷光瞬槍>を発動。
<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>を意識し、発動させて、風を読むように加速――。
ヴィーネもまた<光魔銀蝶・武雷血>を強める。
<霊血の泉>効果もあり、かなり速い。<月光の纏>を発動したヴィーネは、金属鳥を出し、それをフェイクに、ガドリセスを袈裟掛けに振るっていた。
女王ゴーレムは体から出したカマキリ刃を盾にそれを防ぐ。
と、至近距離で魚雷魔弾を破裂させ、ヴィーネを吹き飛ばし、己もダメージを負いながらも後退――同時に、俺に向け、魔弾も寄越す女王ゴーレム――そんな女王ゴーレムへと肉薄する。
女王の前に、空間そのものが歪んでできたかのような半透明の障壁――。
空間歪曲シールドが出現した。
だが、そのシールドが完全に形成される刹那――。
<風槍流・心因果律>を意識し、発動。
研ぎ澄まされた感覚が、シールド表面に生まれるほんのわずかな風の揺らぎ――空間の理が歪む一点を正確に捉え、『出ろ、<神剣・三叉法具サラテン>』
『承知!』
『『はい!』』
左手の運命線のような傷から<神剣・三叉法具サラテン>の三つに重なった状態の神剣が迸る。
神剣は、女王ゴーレムのカマキリ刃を避けるように、その根元の胸元を貫いて、直進し、一瞬で壁を貫き見えなくなった。
風孔を胸に開けた女王ゴーレムは体から無数の発条やバネ、カラクリの細かな部品が弾け飛ぶ。
そこで、魔槍杖バルドーク一本にしての<血魔力>を込めて、<神剣・三叉法具サラテン>たち、ヴィーネの位置、下の味方の位置を把握し――。
<紅蓮嵐穿>を発動――女王ゴーレムはわずかに反応し、横に飛ぶ。
体から放たれた龍の形をした<血魔力>と魑魅魍魎の魔力の嵐が融合する魔槍杖バルドークを構え、次元速度で直進。
魔槍杖バルドークごと無数の魔力嵐が女王ゴーレムの半身を貫いた。
地下施設の壁をぶち抜く。
膨大な魔力を帯びた魔槍杖バルドークは、唸るような音を響かせる。
手応えは十分、振り返った。
半身の女王ゴーレムは、コアのような物を宙空に露出させつつ、周囲のゴーレム部品を吸収して再生しようとしていた。まだ生きている。
その瞬間を待っていたかのように、大型の蜘蛛モンスターが、複数の複眼から稲妻螺旋のような魔光線を、俺と半身の女王ゴーレムに向け繰り出してきた。
「――させるか!」
<雷炎縮地>の加速から前進から、<仙魔・龍水移>の転移を使用し、稲妻螺旋の魔光線の出本に近づいた。
<血鎖の饗宴>を発動させ、稲妻螺旋のような魔光線に全身から迸った無数の血鎖で相殺していく。
稲妻螺旋のような魔光線を防ぎきる。
「――キサラ、ヘルメ、師匠たち、残りのゴーレムと、あの大型の蜘蛛モンスターを頼みます」
右手の魔槍杖バルドークと左手の神槍ガンジスを構えた。
そして、半身の女王ゴーレムは、回復しながらヴィーネの<血饌竜雷牙剣>を喰らって体が粉砕されているが、回復させている。コアは罅割れていた。
即座に、その女王ゴーレムとの間合いを潰す。
そして、<獄魔破豪>を発動。
女王ゴーレムの回復していた体とシールドを破壊するように貫いた。
続けて、神槍ガンジスで、<戦神震戈・零>を発動――。
体から神意力を有した膨大な魔力が湧き上がる。
※戦神震戈・零※
※戦神イシュルル流:<神槍技>※
※戦神イシュルルの戈魔力が<戦神震戈・零>と化す※
体から神意力を有した膨大な魔力が湧き上がり、酒の匂いが漂うと、煌びやかな戈が出現した。世界の一部が、その光の戈となったかの如く、そのまま神槍ガンジスと重なって前進――。
煌びやかな戈と神槍ガンジスの穂先が融合しながら女王ゴーレムとコアのすべてを穿ち抜くと、甲高い鐘の音が響く。
女王ゴーレムの体の内から凄まじい光が溢れ出し、すべてを白一色に染め上げる。
「オオオオオオオオッ!」
女王の巨体が内から弾け飛ぶ。
凄まじい衝撃波が広間を駆け抜け、壁に幾筋もの亀裂を走らせる。
連鎖するように周囲のゴーレムも断末魔の如き金属音を響かせながら機能を停止していく。
猛威を振るったゴーレム軍団が一斉に沈黙し、先程までの狂騒が嘘のような静寂が訪れた。動かなくなった鉄塊の群れが、まるで巨大な墓標のように立ち並んでいる。視線の先では、大型の蜘蛛モンスターがシュリ師匠の<雷炎槍・瞬衝霊刃>が決まり、キサラの<暁闇ノ跳穿>が決まったところだった。
大型の蜘蛛モンスターは煌びやかな魔線を放ち、爆発して散る。煌びやかな魔線は、天井の穴に向かった。
「……終わったか」
舞い散る金属の粒子が光を受けて輝く中、荒い息を整えながら、静寂を取り戻した広間を見渡す。その時だった。未だ熱を帯びて赤く光る、溶けた女王が鎮座していた玉座の下から地響きが起きた。
刹那、無事な壁に光の模様が幾つも発生し、そこから女王ゴーレムとそっくりなゴーレムが入った大きいカプセルが出現し始めた。
更に、玉座の下から、黒き環の一部の欠片と魔機械の門らしき物があり、中心は、漆黒の霧に覆われ揺らいでいた。
黒き環の簡易版か?
と、他の女王ゴーレムが入ったカプセルが開く。
中の女王ゴーレムたちが一斉に目を開けた。
俺たちは身構えたが、ゴーレムたちは一斉に片膝の頭で床を突き頭を垂れ始めた。
「「「え!?」」」
俺もだが、皆も驚愕。
「これは……しかし、シュウヤ様……ガンジスですら手を出さなかった、この大墳墓の真の姿は、この黒き環簡易版? 欠片と魔機械の門ですから簡易版ではなく異質な物だとは思いますが……」
「古代に、黒き環の技術に挑戦し、一部は成功していた存在がいたってことでしょう。そして、封印していた」
クナとミスティの言葉に皆が頷いた。
では、【八峰大墳墓】の奥に眠るという古の神々の伝説とは……。
この黒き環の向こう側にいるだろう異次元の存在なのか?
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