百九十二話 コレクター
2020/12/19 21:58 修正
2021/03/09 23:50 色々と修正、ぶっぱ~
2022/04/27 19:36 エマニエル婦人を追加(笑
無事に地上に帰還し、解散となった。
もう夜だが、円卓通りは魔法の光源があちこちに浮き同時に松明の明かりも混じり合うので非常に明るい通りになっている。
売り子の声も煩いのは夜だろうと変わらない。
一応、盲目少女を探すが……見当たらなかった。
そのままギルドに向かい精算を済ませ報酬をもらった。
カードには達成依頼:五十と記される。
よし、暴走湧きで大量に集めた中魔石をアイテムボックスに入れる!
ギルドの右端の待合室にある高椅子に座りながら、アイテムボックスの◆へと――。
が、
「にゃおんにゃっ」
黒猫が魔石を納めるのを邪魔しようと、前足を伸ばしてきた。
しかし、レベッカがその伸ばした黒猫の前足をゲットし、押さえてくれたから大丈夫だった。
「ふふっん、ロロちゃんのお腹は、わたしがいただいた~ふはは~」
黒猫は、机に上で腹をだらんと広げられて、万歳ポーズ。
可愛いへそ天だ。
相棒はだらしない恰好をさせられると、柔らかい腹をレベッカにキスされまくっている。
あはは、面白い。
そのまま、好き放題やられているが、やられるがまま、だ。
「かわいい! わたしもする!」
「なんてカワイイらしいおっぱいなんでしょう!」
「ん、ピンクの蕾が可愛い」
「指ズボ~! ははは」
黒猫の腹を楽しむ皆。レベッカさんの発言が少しエロいが、気にしない。
ユイ、ヴィーネ、エヴァ、レベッカ、ヘルメたちの美女軍団に弄られまくる。
そんな何とも言えないヤラシイ?
光景を楽しみながら、アイテムボックスに魔石を納めた。
◆:エレニウム総蓄量:691
―――――――――――――――――――――――――――
必要なエレニウムストーン大:91:未完了
報酬:格納庫+60:ガトランスフォーム解放
必要なエレニウムストーン大:300:未完了
報酬:格納庫+70:ムラサメ解放
必要なエレニウムストーン大:1000:
未完了 報酬:格納庫+100:小型オービタル解放
?????? ?????? ??????
―――――――――――――――――――――――――――
皆でギルドを出た。
円卓通りに戻ると、コレクターの依頼人を中心として、青腕宝団たちを含めた一流どころの冒険者たちが、また集まっていた。
頭部に角がある女性ゴルディーバ族の召し使いもコレクターの傍に控えていた。
「また、依頼でもやるのかしら?」
「どうだろう、ボードを見ていなかったから、分からないが。もしかしたらまた行くのかもしれない」
「ん、青腕宝団、結構タフ」
「わたしたちも疲れていないし、挑戦できる!」
そう気合いを見せたのはユイ。
腰に差してある刀の柄を握りつつ元気よく語る。
「おう。ま、あそこに行こうか」
すると、そのコレクターの女性が召し使いを伴って、青腕宝団との話を切り上げたのか、近寄ってくる。
集まっていたのは依頼ではないのか。
しかし、なんで俺のとこに……。
「こんにちは、槍使いと、黒猫さん。そして、イノセントアームズの皆様。私はコレクターです」
「……」
コレクターさんは沈黙。召し使いさんは頭を下げてきた。
そんなおっぱい大魔王。いや、コレクターを凝視。
V字ネックの高級ブラウス。
血管が薄く張った巨乳さんがハッキリと見えた。
女性らしい細い肩の上には、黒色の品のいい肩ケープを羽織っている。
腰には骨のチェーンベルト。そのベルトの節々には、小道具のアイテムがぶら下がっている。丈の長い黒色のロングスカートも似合う。
太腿は、中華風ドレス的な縦の切れ線が入っていた。
むちむちな太腿さんこんにちは!
見事な網タイツさんに、見事な生足さんだ。
「……こんにちは」
「どうも」
「コレクターさんですか」
「閣下に何か?」
「ん、こんにちは」
「――にゃお」
俺がイヤラシイ目線で見ていると気付いた<筆頭従者長>と黒猫が、俺の前に立ち塞がる。
コレクターに挨拶していた。
そのコレクターは、<筆頭従者長>たちの行動に少し面を喰らったような表情を浮かべていたが、
「そうです。この度は私の依頼にご参加して頂きありがとうございます」
そう喋ると、丁寧に頭を下げてくれた。
俺も礼に礼を――。
コレクターの彼女に対して、頭を下げた。
そして、おっぱい、いや、コレクターの表情を見ながら、
「……いえいえ、こちらとしましても、大金の報酬を得ましたし、ハンニバルから紹介されて参加したのですが、参加を決めてよかったです」
「あら、ハンニバルさんからとは珍しい。そうでしたか」
「はい。二枚の魔宝地図を解読してもらいました」
その言葉を聞いたコレクターは、首を縦に振り納得した様子で口を開いた。
「……それはそれは納得です。青腕宝団、草原の鷲団の方々が、貴方たちの仕事ぶりを褒めていましたよ。嫌な噂の女がメンバーにいるが、それはただの噂だったと。仕事がスムーズに素早く済んだのはイノセントアームズの殲滅速度のお陰もあったと。カシムさんが嬉しそうに語っていましたよ」
コレクターは包容力がある笑顔を浮かべる。
だが、その双眸が一瞬、魔眼らしきモノに変化したのを見逃さない。
一瞬だったが、俺の全身をしっかりと捉えていた。
四角形の魔法陣のようなモノが急回転。
精神波ではない。
鑑定眼的なモノだったのかも知れない。
コレクターの傍らにいる召し使いも俺のことを見つめてきた。
美人な召し使いの視線に乗っかる。
「……コレクターさん、側にいる彼女はゴルディーバ族ですか?」
思わず、師匠との繋がりがあるのか知りたくなり、自然と口から出ていた。
「あら、砂漠地方【アーメフ教主国】の出身なのかしら」
コレクターはそんなことを語る。
「いや、違うが」
「……シキ様、ごにょごにょ……」
角持ちの女召し使いさんは、コレクターをシキと呼び、耳元でひそひそ会話をしている。
「そうね……」
「はい」
アロマと呼ばれた召し使いはコレクターの耳元から離れた。
そのままコレクターは俺に視線を向けてくる。
「皆さん、わたしの店に来てくれませんか?」
「店ですか? なんでまた」
「ここでは、他のクランの方々との視線もありましょう?」
確かに、青腕宝団のメンバーとか、黄色鳥の光、草原の鷲団、蛍が槌の面々が俺たちとコレクターの会話に聞き耳を立てるように注目をしていた。
「皆さま、シキ様は特別にご褒美を用意してくれるのですよ。特に、槍使いに興味があるのです」
コレクターの情報を補足するように巻き角を頭にもった女召し使いアロマが、そんな情報を語る。
褒美か。気になる。
そこで仲間たちへ視線を向けた。
ヘルメとヴィーネは黙って頷く。
レベッカは綺麗な金髪を揺らしながら頭を左右に振る。
エヴァは紫の瞳でじっくりとコレクターの顔を見ていた。
ユイはあまり興味がないようで、膝を折り、黒猫の頭を撫でている。
「……店とはどこですか?」
「こっちです。すぐ近くですよ。第一の円卓通りにある小さき店ですが」
「私がご案内します、付いてきてください」
召し使いのアロマさんが、そう話して頭を下げ素早く上げると、踵を返し、円卓通りへ歩いていく。
俺が歩き出すと、皆も歩き出す。
黒猫もユイと遊びながら付いてきた。
「ちょっと、大丈夫なの?」
小走りで俺の隣に走りよるレベッカが小声で聞いてくる。
「大丈夫だろ、この円卓通りにある店なんだし、ただ、あのコレクターの目にある瞳は見つめない方がいいかもしれない」
「瞳? わかった。気を付けるわ」
レベッカは気付かなかったようだ。
「俺の後ろにいた方が、無難かもな」
「う、そんなこというと、怖くなってくるじゃない」
レベッカは俺の真剣な顔付から顔色を青ざめていた。
「レベッカ、シュウヤなら大丈夫。わたしも守ってあげる」
「ふふ、エヴァの顔を見たら安心してきた」
俺では安心できなかったと……。
地味に傷つきながら、コレクターと女召し使いの後を追う。
彼女たちは、スロザの古魔術屋の近くの小さい店の前で止まる。
こぢんまりとした印象だ。
コレクターは無垢の焦げ茶色の扉を開けて、中に入った。
召し使いさんは前に出て、古びた焦げ茶色の扉を片手で押さえつつ、
「皆さま、こちらです」
と、店に入るように促された。
「では」
扉を潜り店の中へ入る。
選ばれし眷属たちと黒猫も続いた。
店内は豪華絢爛。
縦に広い空間で不思議な奥行き感がある。
床は黄金色に輝く床。
天井には、無数の硝子細工の光源があった。
豪華で、古そうな扉の見た目と違う。
俺たちに近い天井の硝子細工はマンゴー的なハート型が多い。
その硝子の中では、黄色の炎の光と青い白い炎が、男女を演出するように重なり合って燃えている。
<筆頭従者長>たちは頬を朱に染めていた。
他にも、硝子細工と細かい針金アートがある。
その針金と硝子細工は放射状に広がって、上に段々と窄まった造りで、頂点に、大きな鷹が構成されていた。下の方は六つの鷹の脚を模った造りだ。
工芸の極みといえる魔道具か?
クリスタルの中に魔力が内包していて非常に明るい。
右の奥には、カウンターバーがある。
壁際には高価そうなアイテムが棚に飾られてあった。
「奥の間に行きましょう」
アロマに誘導された。
アロマは、魔力を帯びた指輪を翳した。
その魔力を帯びた指輪と、連動しているのか、魔法陣が宙空に浮かぶと、カウンターの机が自動的に左右にパカッと開いた。
奥の棚も自動的に左右に移動した。
本当に奥の間が出現。
その奥の間は密室とはまた違う。
更なる驚きの光景が待っていた。
黒マントを羽織りつつ骸骨の長い杖を持つ魔術師が左にいた。
そんな骸骨の魔術師の部下のような骨の剣士たちが、その背後にズラリと並んでいた。
骸骨の魔術師の隣には、目が血走って、顔が青白いヴァンパイアと思われる男もいた。
ヴァンパイア男の隣には植物を足から生やす女……彼女の顔はホルカーバムの司祭ペラダスに似ていたが、足が植物という……。
そして、植物女の隣が全く未知なる存在。
人型を保っているが、白煙、霧だけの謎な物体だった。
その霧の生命体の隣には、頭が禿げた妙ちきりんな顔を持ち、修行僧的な人物といえた。
妙ちきりんな顔を持つ男の全身には紅い魔法陣の入れ墨が刻まれていた。
彼の周りには、その魔法陣と連携していると思われる血が滴る歪なシックルが漂っている。
そんな怪しい奴らの中心、赤絨毯が敷かれた奥にある、扇型の女帝が座るような豪華な長椅子に腰掛けているコレクター。
しかもあの椅子の飾りには、魔力を漂わせている生きた眼球が蠢いている。
何かの防御型マジックウェポンを備えた椅子かもしれない。
そんな骸骨のひじ掛けがある椅子に腰かけているコレクターは、着ている衣装が悩ましい姿へ自動的に変わり、尊大な格好で周りで控えていた骸骨の魔術師へ細い二の腕を伸ばし、ネイルの爪が綺麗な指先を伸ばす。
骸骨の魔術師はそのコレクターの手を握り、手の甲へ骸骨の口を当てキスを行っていた。
コレクターの手甲には魔法陣が浮かんでいる。
さっきまでの姿は仮か。
「……どうぞ、お入りになってくださいな。何もしませんことよ、アロマ、ハゼス、ロナド、簡易な椅子と机、御飲み物をお出しして」
「はい」
「はっ」
「……ハイ」
ハゼスは骸骨の魔術師の名か、ロナドは霧の人型、アロマと一緒に、彼らは赤絨毯の上に人数分の机、椅子を設置してくれて飲み物を用意してきた。
「……閣下、この中は、狭間が薄い場所となります」
ヘルメが忠告してきた。
「だろうな」
王宮の謁見の間的な雰囲気がある。
周囲に控えているコレクターの部下たちは確実に強者だろう。
が、非常に興味が湧いた。
流し目のイケメン的なヴァンパイアらしき男がいる。
「行こうか」
「怖いけど、入るのね」
「ご主人様についていきます」
「不気味……けど、周りの人たちは様子見? 攻撃するって顔つきじゃない」
皆、俺の後ろからついてくる。
俺たちは背丈の高い椅子に座った。
赤色の絨毯の奥に背もたれが付いたラタンと似た素材の椅子に座る美人なコレクターと向き合った。ザ・女帝が座るような豪華な椅子だ。
エマニエル婦人を彷彿すると言ったほうが良いか。
「……それでは、信頼の証しとしてコレクターである、わたしの名前を教えておきます。シキが本当の名前です。そして、今、御飲み物を運び持っているのがアロマという名前です」
「――はい、皆様どうぞ。これは迷宮産の黒甘露水と他にあまりないピューリ水を掛け合わせた美味しい飲み物ですよ」
コレクターであるシキさんの言葉に、アロマは元気よく反応。
可愛らしい声を上げると、小さい机の上に黒甘露水が入った陶器製のコップを置いていく。
ピューリ水というのは何だろう。
「にゃおんにゃぁ」
黒猫が喜びの声を発した。
相棒用に大きい皿が用意されていた。
早速、相棒は、大きい皿に頭部を突っ込む。
舌を器用に使いながら、ピューリ水を飲んでいった。
「わ~口の中で液体が弾ける!? しゅぱっ、ポッ、として~美味しい~」
怪しいのにレベッカも飲んでいた。
弾ける!?
そのフレーズから、まさか……。
俺も飲んじゃうか?
ま、毒は効かないはずだ
陶器のコップを口に運ぶ。
並々と揺れている黒甘露水を飲み込む。
おおお、炭酸ジュースじゃないか。
色合いも完全なるコーラだ。
ただでさえ、甘露水で喉越しがすっきりするのに、炭酸で、更に爽快感が増している。
「ぷはぁ、旨いっ」
「ふふ、喜んで頂いて嬉しいわ、アロマ、ハゼス、ロナドご苦労様」
「いえ、シキ様」
女召し使いアロマは頭を軽く下げて、コレクターことシキさんのもとへ移動していく。
「はい」
「……ハイ」
骸骨の魔術師ハゼスは元の横にいた位置に戻り、霧の人型ロナドも赤絨毯の端横に移動していた。
さて、俺も名乗っておくか。
「……シキさん、美味しい飲み物をありがとうございます。名前はシュウヤ・カガリと申します」
「ご丁寧に、シュウヤさんですか。では、早速本題に……このお店に来ていただいた理由は、仕事をお早く済ませて頂いたお礼の――他にも理由があるのです」
シキは女帝椅子の隣にあった金貨が入った音を立てる袋を持ち上げる。
腰を屈めた骸骨の魔術師が仰々しく、その金貨袋を受け取ると、骸骨の魔術師は腰をあげて金貨袋を持ちながら俺の前に移動。
そのままどっしりと音を立てる金貨袋を赤絨毯の上に置いてきた。
この眼窩が赤く光る骸骨の魔術師は魔界から呼び出した沸騎士とは違う部類なのか?
それとも見知らぬ種族だろうか。
シキさんは微笑を浮かべていた。
「……その理由とは?」
俺の問いに、シキの魔眼がキラリと輝く。
「……魔界ゼブドラに住まう永遠の女王、宵闇の女王レブラ様をご存じかしら」
宵闇の女王レブラ……。
魔界ゼブドラの神絵巻で見たことある。
「知っていますが、その神様が何か?」
「無礼なっ」
隣にいたアロマが怒り、
「むむ!」
髪の毛が禿げて、妙ちくりんな顔を持つ人物が唸り声を上げた。
「無礼だぞ! 黒髪男!」
「生意気な小僧……」
周りのコレクターの部下たちが凄んできた。
しかし、俺の隣に座る宵闇の水精霊ヘルメが、赤絨毯に降り立つと
「――角娘、以下、周りの穀潰し共ォ! 生意気な態度はどちらですか! 閣下に対して、そんな口と目を向けるとは万死に値します! 皆を、氷で潰しますよ?」
ヘルメは水飛沫を全身から発生させて、怒りながら語っていた。
……尻は突き刺さないらしい。
尻のことを言わないということは、怒っていると見せかけて、実は冷静に駆け引きをしているのかも?
「ひぃ……精霊!? 精霊様……お許しを……」
アロマはヘルメの怒った顔に怯えてしまい、シキの背後に隠れているが、
「何、精霊だと?」
骸骨魔術師はヘルメの正体に気付くと、骸骨の杖を構えた。
「……強烈な殺気」
植物女は全身を茨で囲う。
すると、妙ちくりんの男は、
「精霊様とて、シキ様とやるならば……」
そう喋りつつ血塗れたシックルから魔法陣のようなモノを宙空に無数に出現させてきた。
「……ブブ、フソン」
煙の人型は、聞き取れない音声を上げる。
「……」
ヴァンパイアのイケメンは、一瞬たじろぐ。
後退し、膝を突こうとするが、その途中でシキの顔を見て、無言のまま体勢を直した。
目尻の皮膚の上に血管を浮き彫りにさせつつ、両手から鋭い爪も伸ばしていった。
「……あら、珍しい、精霊様だったのですか。服を着ているように見えたので人族の方だと思っていましたよ……」
コレクターは驚いているだけだった。
「当たり前です。それよりコレクター、さっさと用件を閣下に述べなさい――」
常闇の水精霊ヘルメは、水の煌きを見せ、蒼い葉のお尻をぷりぷりとさせながら腕をクロスさせるポーズで、指を差した。
「ふふっ、その目その容姿、心が湧き立つ思いを感じる。素晴らしいわ、えぇ、語らせてもらいますとも……シュウヤさん、女王レブラの使徒になりませんか?」
精霊ヘルメに促されたせいか、ストレートな言い回しだ。
ま、断るが。
「……神の使徒なんかには、ならないよ」
「あら、お早い、考えることもしませんのね」
シキは残念そうに顔を少し沈ませる。
同時に剣呑さが増した。
「――貴方たち誤解をしないように、彼は“本物の強者”。わたしの命令なしに動いても、滅されるのは貴方たちですからね?」
コレクターは部下たちを諫めた。
「はいっ、畏まりました」
「分かりました。静観します」
「……ショウチ」
「シキ様の言われている通り、強者です。鑑定が弾かれるわ。しかも、全員……確実に尋常ではない強者たち。シキ様、このような者たちを本部に招き入れて大丈夫なのですか?」
全身に植物を纏う女が目元に魔力を溜めながら魔法陣を展開させて、そう語っていた。
シキは植物女を見て頷き、
「ジェヌ、いいのよ。信頼を得るために、此方からお誘いしたのですから――それで、シュウヤさんどうしても駄目なのですね?」
「……すまん、そういう話には必ず裏がある。もう経験済みなんでね」
周りの様子を窺いながらも、俺は普通に語る。
「なるほど。強者な上に用心深い。あまり深くは探ろうとしないのですね。共感を覚えますわ……その精神性も強者たる所以と判断しました。わたしの四蜘蛛王審眼が通じない訳です」
「魔眼か」
「はい……レブラ様から授かった力が全く通じないのは、シュウヤさんを含めて、イノセントアームズの方々が初めて……ですので」
シキは瞳を変化させながら語る。
四蜘蛛王審眼。
小さい四角系の模様を中心に幾何学模様に小さい蜘蛛が、瞳と光彩を構成する。
光芒の彩りが実に鮮やかだ。
一種の万華鏡にも見える。
小さい蜘蛛の群れが、大きな蜘蛛を兼ねたトリックアートにも見えた。
その蜘蛛の群れが光彩を縁取っていた。
秒針を加速させたように光彩模様が急回転。
カザネのアシュラーの系譜とはまた違う系統。
そういえば……。
魔毒の神ミセア様を思い出す。
あの時はコイン型だった。
が、蜘蛛の魔眼を使っていたな。
その時はヴィーネは見えていたようだが、今回はそのヴィーネを含めた皆の鑑定を弾いたらしい。
光魔ルシヴァルの真祖の血を受け継いだ、選ばれし眷属の<筆頭従者長>たちも、鑑定を寄せ付けないようだ。
あの額にある印も気になるし、聞いてみるか。
「……その額にある印も宵闇の女王レブラの恩寵かな?」
「はい。額も瞳もレブラ様の御寵愛を頂いた結果です」
シキは片手で額にあるサークレットをずらして、魔力を帯びた六芒星のマークをよく見せてくれた。
「独特な魔法陣。レブラの瞳の中にあったのと同じか……」
俺のさりげない言葉にシキと部下の全員が、瞠目しては、目を見開いていた。
「えっ」
「……」
「何と」
「なにっ」
「まさか、レブラ様とご面識があるのですか?」
コレクターは身を乗り出して驚く。
「いや、とある物を使い、見たことがあるだけだ」
「と、とある物を使い……見たことがあるだけ……ふふっ、ははははは、なんて素晴らしい。素晴らしい神話級のマジックアイテムを持っているのかしらァ?」
耳を覆う叫喚めいた、途中から囃す感じの笑い声だ。
「――シキ様?」
「シキ様がここまで興味を……」
側に仕えているアロマ、骸骨魔術師ハゼスも、シキの突然な囃すような笑い声に驚いている。
シキは上唇を舌で舐めて、俺自体を、もの欲しそうに見つめてきた。
「……どうした? そんなにオカシイのか?」
「あ、い、いえ。瞑合たる神々のアイテムをお持ちのようで、興奮し、取り乱してしまいました……」
蒐集家としての血が騒いだのか?
と、なると、確実に神絵巻は特殊なアイテムだろう。
あれはクナが持っていた物、昔の地下オークションで買った代物なのかもしれない。
しかし、興奮しているシキには悪いが、もう帰ろ。
「それじゃ、俺たちはそろそろ……」
「あ、はい。もう行ってしまわれるのですね。この出会いを大切にしたいところです。シュウヤさん」
シキは魔眼を止めていた。
黒曜石のような瞳で俺をまっすぐと見つめてくる。
女の熱を帯びた、欲情を感じさせる視線だ。
そして、巨乳を強調させるように……。
身を乗り出している。
「えぇ、はい」
俺は、素直におっぱい委員会に所属する研究会を反応させる。
ヘルメが視線を鋭くさせながら、
「ふん、生意気なおっぱいです。おっぱい女賢帝と名付けてみたくなりました」
そんな可笑しなことを発言。
おっぱい研究会が疼く。
が、同時に<筆頭従者長>からの氷河を起こす視線も同時に感じた。
視線は逸らしておこう……。
シキは俺が視線を少し逸らしたことに、残念そうな表情を作る。
またルージュな上唇を舌で舐めると、
「……ふふ、また、是非、魔宝地図の依頼を受けてくださいね? アロマ、お送りして」
「はい、シキ様」
ゴルディーバ族のアロマさんは、
「では、こちらへ」
そう喋ると、カウンターと棚が左右に開く。
扉を潜った。
視線のやり場に困ったところで、無難にヴィーネを見て……。
うひゃ、冷然とした表情。
初めて会った頃に見せていた表情だ。
シキを睨んでから、俺を見つめ直してきた。
「……ご主人様、帰りましょう」
ヴィーネは優しい表情に戻っていたが、銀色の瞳は、静かな怒りを感じた。
「あぁ」
俺がそう返事をすると、頬に細い指の感触が――それはレベッカの白魚のような指の群れだった。
「――ちょっと、わたしも見なさいよ!」
レベッカは金色の髪を揺らしつつ、蒼色の瞳を近づける。
俺を間近で凝視。
綺麗なブルースカイ。
「はは、悪かった。だが、今は、ちゃんとレベッカの綺麗な瞳を見ている」
「う、うん」
レベッカは嬉しそうに頬を真っ赤に染める。
カワイイ。
「ん、わたしもっ」
エヴァがそう言うと、レベッカと同様に、俺の両方の頬を両手で掴むと、むりに俺の頭部を振り向かせてくる。
「エヴァ」
「シュウヤ、ん」
エヴァは大胆にも、目を瞑り、皆がいる前でキスを求めてきた。
「こらっ――エヴァは真面目だけどどこか、抜けているところがあるのよね」
ユイのツッコミ。
刀の鞘によるツッコミをエヴァではなく、俺の頭部に入れてきた。
そのまま隣に移動したユイは、俺の腕に手を回して胸を当ててくる。
ユイの柔らかいお胸様もいい!
「ん、シュウヤがぶたれた?」
「皆さんは、仲が宜しいことで……」
シキさんは笑いながら話している。
部下たちからの視線は、一向に厳しい状態だが、気にはしない。
「それじゃ」
そう短くコレクターに別れを告げてから、椅子を降りて、赤絨毯の上にあるコレクターがくれた金貨袋を回収してから踵を返し、奥の間から皆を連れて外へ出る。
明るいカウンター前の空間に出ると、左手にある扉をアロマさんが開けて待っていてくれた。
「皆さん、どうぞ」
彼女のゴルディーバとしての身の上話には興味があるので、
「アロマさん、貴女はゴルディーバ出身ですよね?」
「祖先はそうなります」
「祖先ですか? ラ・ケラーダ」
懐かしのポーズを取り確認。
「ラ・ケラーダッ、古き言葉を……ゴルディーバ族をよく知っているのですね。南マハハイムでは数は少ないはずですので、やはり砂漠地方に伝があるのでしょうか?」
やはり共通した言葉はあるようだ。
「砂漠じゃないけど、知り合いの家族たちがいるんだ」
「……砂漠以外にも居るところには居るのですね」
この感じだと、高原地帯にいるゴルディーバの里とは無縁か。
「そのようだ」
「はい、では、またのお越しを……」
「うん、また」
彼女にお礼を言って頭を下げてから、コレクターの店から外へ出る。
「ふぅ……少し緊張しちゃった。コレクターには部下も含めて注意が必要ね」
「はい。あの周りにいる普通ではないモノたちは殺気を帯びていましたし……なによりも、コレクターは、ご主人様を口説こうとしていました」
通りを歩きながら、レベッカとヴィーネは頷き合う。
「うん。注意どころか、危険よ。あの舐めるような視線は絶対にシュウヤを落とそうとしている女の視線」
「ん、シュウヤもまんざらではなかった、あの、おっぱいを凝視していた」
ユイとエヴァはそんなことを言いつつ、しっかりと、俺の手を強く握りながら歩いた。
「……閣下がモテるのは当たり前ですが、あのコレクターは魔界の神に連なる者、女としてではなく、違った意味で注意が必要かもしれません」
「にゃお」
先を歩くヘルメの言葉に足下にいた黒猫が鳴いていた。
「ロロ様も、同じ考えなのですね」
「ンン、にゃおん」
黒猫は、姿勢を屈めたヘルメの肩に乗って、頬の皮膚をぺろっと舐めてから、また、跳躍して、降りると、俺のところに戻ってくる。
「ふふ、ロロ様。可愛らしいキスをありがとうございます。今度、お返しに水をいっぱい、あげちゃいます!」
黒猫は、ただ、ヘルメとコミュニケーションを取っただけだと思うが、指摘はしなかった。
魔法の光源を発生させて第一の円卓通りを南に進み、武術街へ向かう。
寄り道はせず家に帰還。
大門を開け中庭へ進むとイザベルたちが出迎えた。
イザベル、アンナ、クリチワの美人メイドたち。
「ご主人様、お帰りなさいませ、食事に致しますか? お風呂に致しますか?」
「食事で」
「畏まりました」
「バルミントはどうしてる?」
「はい、肉、野菜、豊富に食べておりました、僅かですが姿も大きく成長しているようです」
おぉ、僅かでも成長したのか。
かわいいバルミントについて会話をしながら、皆と一緒に本館へ戻り、着替えを終えてからリビングで食事タイムとなった。
「最近、食事が毎回楽しみなのよねぇ」
「ん、豪勢」
「はい、こないだの魚料理は凄く美味しかったです」
「シュウヤが金持ちでよかった。今日はなんだろう」
運ばれてきたのはチーズが豊富なラザニア風の料理と伊勢海老の丸焼きのような海老料理だった。
机の上に置かれていく。
更に、前にエヴァの店で奢ってくれた四角い器に入っている海苔の佃煮“特製プッコ”も置かれた。
最後に蜂蜜酒とパンも並べられる。
「ン、にゃぁ~ん」
黒猫も専用の台に載った海老を見て、嬉しそうに鳴いている。
元気に食べる黒猫。
可愛いが、俺も嬉しくなる。相棒、いつも元気な顔をありがとうと、感謝しつつ――。
俺もラザニア風の料理へスプーンを差し込んだ。
その表面にある焼けたチーズを割く!
そして、ラザニア風の中身を、スプーンで掬って、口へ運んだ。
美味し!
そんな調子で、食事をしつつ――。
あーだこーだと、今日の魔宝地図戦での結果から、コレクターの勢力について予想分析を行った。
その最中に、ミスティが家に帰ってきた。
「今日は遅かったな」
「そうなのよ~。魔法学園で行事があるの……色々とこれから少し忙しくなるわ」
学園の行事といえば、学園祭とか?
イザベルたちが過ごしていた寄宿舎学校同士も色々と競い合っていたようだし、杖に乗って空を駆け巡り、環の中へボールを投げ込む競技とかあるのかもしれない。
或いは、単にチーム戦、個人戦で戦うのかもしれない。
文化祭的なものだと、屋台とかありそう。
冒険者育成も兼ねているからないか。
「……行事か、生徒同士で戦いとか?」
「うん。個人戦、チーム戦があるの、こないだパーティを組んでいた子たちも戦うから気になってしまってね……少し贔屓気味に見てしまうから、まずいことだわ……」
ミスティは先生の顔になっていた。
「……そっか。あまり無理はするなよ」
「うん、分かっている、だから冒険者の方はあまり付き合えないわ、珍しい物がでたら取っておいてね、特に金属」
ミスティは人差し指を出しながら金属の部分でウィンクをする。
「ん、大丈夫、わたしが金属をチェックする」
「了解、エヴァなら任せられる。金属の仲間同士。ふふっ……でも、何かいい匂いね~」
彼女は笑顔でそう言いながら丸焼きの海老料理を見ると、持っていた書類を机に置く。そして、余っていた海老の白身を一つ摘まんで口へ運び、笑顔を浮かべながら食べていた。
「美味しい~。さて、まだ仕事が残っているから、またね」
ミスティは指を悩ましく舐めてから、書類を纏め直し、玄関から出て中庭にある研究室へ去っていった。
「食事あれだけ? 痩せてしまいそう」
「ん、血があるから大丈夫」
因みにカルード率いる高級戦闘奴隷たちも、まだ迷宮から帰っていない。
そして、食事を終えた俺たちは自由行動。
ヘルメはリビングの端で瞑想タイムに入り、エヴァ、レベッカ、ユイは買い物のガールズトークをしながら部屋へ戻っていく。
俺は黒猫とヴィーネを連れ自室の部屋へ戻り、少し大きくなったバルミントへ魔力を与えた。
「きゅっきゅぃぃ」
バルミントは嬉しそうに四枚の小さい翼膜を広げながら、足に抱き着いてくる。
だが、勢い余って俺の足に衝突して、こけていた。
カワイイ。
「にゃぁ、にゃんお」
その幼い可愛いバルミントを黒猫が母たる顔を見せて、ぺろぺろとバルミントの全身を舐め首根っこを優しく咥えると、俺が作った木製の家に運んであげている。
一緒に丸まって寝るらしい。
バルミントは、母の黒猫に任せるか。
俺はベッドにダイブ。
「ふふっ、ご主人様」
ベッドでごろごろしていると、銀のワンピース一枚だけという、太腿が大胆に見える恰好で俺の傍に寄ってきた。
所謂、裸に、ワイシャツ一枚だけという素晴らしい格好に近い。
「なんだ? ヴィーネ……」
彼女に語り掛けながら、青白い太腿の上に頭を乗せる。
そう、これは……ハーレム至高の七神器の一つ、膝枕という女子の神秘な溝を活用させてもらう、大いなる技の一つなのだ。
「あっ、ご主人様、太腿が好きなのですか?」
「好きな部位ではある、膝枕というおっぱい研究会の下部組織にある膝枕臨時委員会があるのだが……」
変態な蘊蓄を垂れていくが、ヴィーネは嫌な顔をせず、黙って優しく微笑む。
頷いてくれていた。
ありがとうヴィーネ。
部屋でヴィーネの膝枕を堪能。
他にも、ごにょごにょ、ぶっぱ~――。
と、まったりと過ごしてから、二階の陶器風呂へ<筆頭従者長>と共に入る。
ここでもぶっぱ~な、やることをやってから、この日は休むことに。
◇◇◇◇
ここ数日は、神獣ロロディーヌと一緒に空の散歩で鯨狩りを楽しむ。
更に、千年植物の実をバルミントにあげたり、ヘルメが欲しがったので、ヘルメにもあげたり、千年植物のラッパーが煩いので、思わず殴ってみたら壊れたラジオの音程になってしまい、何故か心地よい音に包まれたり、槍と剣の訓練を兼ねた模擬戦をユイとヴィーネと行ったりして過ごした。
結局は槍メインの訓練になってしまったが……。
そして、今日はBランク昇進試験のため、ギルドへ向かう。
試験とやらを楽しんでやろう。




