千七百九十六話 オガサワラとの激闘
オガサワラは黒い霧を放つ魔刀を突き出す。
同時に体がブレると黒いオガサワラの分身が持つ魔刀も伸びてきた。
<導想魔手>が握る聖槍ラマドシュラーを突き出し、オガサワラの本体の魔刀の突きと黒い分身の魔刀の突きを、穂先と螻蛄首で防いだ。
連続した硬質な音が宮殿内に反響し、火花が穂先と螻蛄首から散った。赤みがかった光の中で、火花が一瞬、黒い大理石のような床を照らした。
即座に<無方南華>と<無方剛柔>に<水月血闘法>を発動――。
『ヘルメは一応<精霊珠想・改>と、グィヴァは<闇雷蓮極浄花>の準備を』
『『ハイッ』』
『シュレは<鬼塊>の準備を』
『承知した』
『お弟子ちゃん、見守ってるからね』
『うむ、サシで勝負じゃろう』
同時に<血道第一・開門>で、体から血を放ち、<生活魔法>の水も撒きつつ左手の武器を白蛇竜小神ゲン様の短槍から神槍ガンジス変化させ、<柔鬼紅刃>を意識し、紅矛と紅斧刃を嵐雲に戻しつつ右手の魔槍杖バルドークで<戦神流・厳穿>を放った。
オガサワラは右手が持つ魔刀を下げる。
下段の嵐雲と似た穂先を受け、右へと流しながら前に出て、引いていた左手の魔刀で胴抜きを狙ってきた。
その薙ぎ払いを<握吸>を強めた聖槍ラマドシュラーを斜めに下げながら柄で防ぐまま<握吸>と<勁力槍>を発動し、左腕と神槍ガンジスに魔力を込めてから、その神槍ガンジスで<刃翔鐘撃>を繰り出した。
右腕にも<血魔力>を込めつつ魔槍杖バルドークで<魔仙萼穿>を繰り出す。
オガサワラは中段と下段の防御の構えで<刃翔鐘撃>と<魔仙萼穿>の連続突きを防ぎ、少し後退。即座に<導想魔手>の聖槍ラマドシュラーで<血龍仙閃>を繰り出し、オガサワラの胴を狙った。
オガサワラは武器で受けず、素直に退き――。黒い大理石のような床の上を滑るように後退すると、体から漆黒と赤と青紫の魔力を宮殿の奇妙な光の下で纏うのが捉えた。重心を下げ二刀を鞘に仕舞う。
居合いのモーションを見せた刹那――。
オガサワラは空気を震わせるほどの速度で前に出て、二刀を高速に振り抜く――。
数段階、加速した居合い斬りを<導想魔手>の聖槍ラマドシュラーの柄と魔槍杖バルドークの嵐雲と似た穂先で、受け止める――キィンと硬質な音と共に無数の火花が受けた箇所から散った。
火花が黒い大理石に落ち、ジッと音を立てて消える。
分身体の居合斬りも聖槍ラマドシュラーと魔槍杖バルドークで防ぐ――。
反撃に、左手の神槍ガンジスで<断罪刺罪>を繰り出したが、オガサワラは、魔刀を上げ、刀身で方天画戟と似た穂先の<断罪刺罪>の一撃を防ぐまま、もう片方の魔刀を下から上へと逆袈裟を行うように振りあげてきた、それを魔槍杖バルドークの柄で防ぎ、指斬りを狙ったオガサワラだったが、その魔槍杖バルドークの手を<握式・吸脱着>で離し、指を離している。
オガサワラは、柄の表面のなで斬りをしつつ、左手の魔刀を振り下げてきた。
それを魔槍杖バルドークの柄で防いだ。
<柔鬼紅刃>を発動させ、紅斧刃と紅矛に穂先を戻しつつ<導想魔手>の第三の腕の手が握る聖槍ラマドシュラーで<魔仙花刃>を繰り出した。
オガサワラの足を掬うことを狙ったが、跳躍。
「――互いの場中三尺ってな――」
ドリル的な蛇鎌刃は、空ぶった。
宙空のオガサワラは体から紫の魔力と閃光を体から放つ、俺の視界を潰す。
が、潰れない、オガサワラは前転し上から下へと二つの魔刀を振るう――。
魔槍杖バルドークをあげ、その振り下ろしを防いだ。衝撃で足元の黒い大理石のような床がわずかに軋む。オガサワラの回転は止まらない。
前転からの二本の魔刀の振り下ろしがまた迫った。
分身体も出現し<舞斬>のようなスキルを繰り出してきた。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを上げたまま、その斬撃の嵐のような連続攻撃を、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの柄で防ぎきった――。
火花が散りまくる。両指に火花が当たるが<無方剛柔>のお陰で平気だ。熱い金属片が黒い大理石のような床の上を跳ねる。
オガサワラの動きが宙空で止まったかと思いきや着地をせず、浮いたまま懐に魔刀を仕舞い、高速の居合いを繰り出してきた。
なんて攻撃だよ――初撃を神槍ガンジスの柄で防ぐ。
影のようなオガサワラの幻影、分身体も居合のモーションで斬り払いを繰り出してきた。
――二人、三人、四人の、オガサワラを相手にしているような氣分だ。
無数の剣舞のような連続攻撃を、聖槍ラマドシュラーと魔槍杖バルドークと神槍ガンジスで受け止め、捌き、防戦一方となった。
こりゃ、強い――。
数十の居合の斬撃を受け止め、あるいは弾き、凌ぎ切ると、オガサワラは、
「チッ、硬い――」
舌打ちしながら発言し、宙空に足場でもあるように左、右へと転移するような速度で移動しつつ、魔刀を紫電の勢いで振るい――。
俺の側頭部と頸と脇腹と鼠径部を狙うような巧みな斬撃を振るってきた。
<始祖古血闘術>と<魔闘術の仙極>を発動。
速度を上昇させ、聖槍ラマドシュラーと神槍ガンジスで、そのオガサワラの無数の左右の揺さぶり斬撃を防ぎ――。
反撃に魔槍杖バルドークで<闇雷・一穿>を繰り出す。
――が、「おっ」とオガサワラは余裕の間合いで、右手を掲げ、その手に握る魔刀の柄に<闇雷・一穿>は防がれた。
即座に、<導想魔手>が握る聖槍ラマドシュラーで<龍豪閃>――。
神槍ガンジスの<刃翔鐘撃>を繰り出す。
オガサワラの黒い瞳に魔力が集中した。
目が右に動くと右手の魔刀を少し上げ<龍豪閃>を刀身で防ぎ下げ、神槍ガンジスの<刃翔鐘撃>をも刀身で巧みに弾きながら後退した刹那――黒い大理石のような床を強く蹴り右腕が伸びたような魔刀を突き出してくる。
俄に聖槍ラマドシュラーを上げ、鋭い一撃を防ぎ、後退。
宮殿の広間に甲高い金属音が響く。
オガサワラは先程と同じモーションのまま左腕の魔刀を突き出す。
俄に神槍ガンジスを下げ、螻蛄首で、その突きを防いだ。
威力の高い下段突き、神槍ガンジスから激しい火花が散る。火花が宮殿の薄闇を裂き、黒い大理石のような床に焦げ跡を残すのを横目で捉える。
オガサワラが持つ左手の魔刀は刀身が伸び、黒い霧と紫と赤の魔力を放っていた。それらの魔力が、周囲の赤みがかった光と混じり合い、禍々しい色彩を壁面の幾何学模様に投げかける様は不気味だ。
しかも、刀身の幅も広がっていた。
オガサワラは、
「――ハッ、なんて反応速度だ――」
硬質な金属音が響き渡ると、袈裟掛けを仕掛けてきた。
その斜めに振るわれる魔刀の動きを見ながら、わずかに後退。
オガサワラは構えを崩さず、「これもか……」と発言し、俺を睨む。
「先程の下段突きは、上段と勘違いしたらおだぶつ、鼠径部を穿たれていただろう」
と、素直に告げると、
「……冷静に語られると、イラッとするぜ」
「こういう戦いでは、そういうもんだろう」
「……チッ、大抵は喰らうんだがな……」
「マナブやタケバヤシに黒き戦神などがいただろう?」
「あぁ、人間失格野郎などか、そいつらはお前と同じく別格だ。が、強かった隠花植物のような女は一撃であの世に送ったんだよ」
「へぇ」
「……必殺の<紫螻蛄突き>をあっさり対処してきやがって……」
指先が微かに震え、声に含まれる苛立ちが露わになる。
「この世だ、避ける奴はそれなりにいると思うが」
「ハッ、それを言うか」
オガサワラの目が細められ、過去の記憶に浸るかのように一瞬だけ遠くを見た。
「十年前の黒き夜、戦場にもなった東の旧王都ガンデで三百の命を刈り取った技だ。お前のような反応速度を持つ者は、あの夜にも……いや、どうでもいい……」
「イーゾン王国の旧王都の名か、そこも戦場だったんだな、そこの戦場も強者揃いだったか」
オガサワラの頷いてから、唇が歪み、
「ハッ、リリシズムに溢れた世だからなァ!」
と喋る、体がブレる。
右手に握る魔刀を突き出す。その魔刀から漆黒と紫の螺旋状の魔力を繰り出した。魔刀の突きを後退し、避けた。
漆黒と紫の螺旋状の魔力は衝撃波か――<無方南華>に闇属性の魔力は吸収する、風を感じた程度。
「ハッ、今のも簡単に対処するか……」
と、言うオガサワラの瞳には狂気と共に何かの悲哀が燻っていた。
そして、俺の得物に第三の腕などを見てから、
「強さこそが美しさだ。弱きは滅び、刃に映る最期の光景を見るだけよ。お前のような例外がいるからこそ、この世界は面白い」
<紫螻蛄突き>は必殺技か。
オガサワラは魔刀を仕舞う居合のモーションを見せた刹那、体がぶれる。いつもの癖だろうか、右眉が微かに吊り上がり、顎の筋肉が緊張する。彼の流派特有の前兆だ。
居合ではなく黒い分身体から黒い魔刃を飛ばしてきた。
その黒い魔刃を左に跳び避けた――。
<水月血闘法・鴉読>を発動させ、右に跳び――。
刹那の黒い魔刃の遠距離からの連続攻撃を避けていく。視界の端で、黒い刃が、背後の宮殿の壁面に突き刺さり、幾何学模様の一部を砕くのが見えた。
複数の水鴉が、足下から浮き上がって俺を守るように黒い魔刃と衝突し消えていった。
「これも避けるか! がっ」
オガサワラは黒い魔刃を放ちつつ前傾姿勢のままブレる転移級の速さで黒い疾風の魔刀を突き出し、払っては魔刃を至近距離で繰り出し、必殺の<紫螻蛄突き>を連続で上下に打ち分けてきた――。
冷静に<霊魔・開目>と<煌魔葉舞>を発動。
俄に魔槍杖バルドークの<山岳斧槍・滔天槍術>を活かし――。
神槍ガンジスと<導想魔手>が持つ聖槍ラマドシュラーで無双級の剣舞からの必殺を受けて避けて、防ぎきり、後退を続けた。
「――くっ、<無心刹煉刃>からの<紫螻蛄突き>を避けきるか……お前も、加護持ちは確定か――」
と、間合いを潰してきたオガサワラは魔刀を袈裟掛けに振るってきた。
それを見るように後退し、避ける。
オガサワラは動きを止めた。体に黒い刃の魔印が幾つも浮かび上がった。
額から黒と紫の筋が発生していく。
「お? <黒呪強瞑>のような<魔闘術>系統か?」
「その通り……」
オガサワラは肯定すると、そのオガサワラの体がブレる。
またも加速、速度を上昇させ、二つの魔刀を振るってくる。
それを敢えて、前後に動かし、スウェー気味に避けると、オガサワラは魔刀を突いては、また振るい、剣舞を繰り出してくる。
タイミングを見て魔槍杖バルドークを少し下げ<夜行ノ槍業・弐式>を実行した。神速の勢いで持ち上がった紅斧刃と突きの魔刀が衝突。
魔刀は重低音を響かせながら持ち上がり、衝撃波が発生、オガサワラは胸元を晒す。そこに<夜行ノ槍業・弐式>の竜魔石のカウンターの突きが決まった。
「ぐぁ」
オガサワラは蹌踉めく。
そこに神槍ガンジスで<血刃翔刹穿>を叩き込んだ。
オガサワラの体から紫と赤の魔力が噴出し、分身を発生させ、それを置き去りにするように本体は後退、方天画戟と穂先の<血刃翔刹穿>の最初の突きを見事に避ける。
更に、分身を作りながら右と左に移動を繰り返す。
神槍ガンジスの穂先から迸る血刃の攻撃を「――右転左転習いありってな――」と発言しながら避けていくと「無数の血刃とは畏れ入るぜ――」と、先程の黒い魔刃を繰り出しながら加速、前進、左右の魔刀で突いてきた。
黒い魔刃を聖槍ラマドシュラーで弾きつつ、左右の突きを魔槍杖バルドークの螻蛄首で受けながら、左腕ごと槍と化す勢いの神槍ガンジスで<断罪ノ血穿>を打ち出した。
方天画戟と似た穂先から血が蒸発し、閃光が発生、反応が遅れたオガサワラは横に移動、その右腕をわずかに捉え斬った。
オガサワラを追うように身を右に開くまま、<導想魔手>が持つ聖槍ラマドシュラーで<杖楽昇堕閃>を繰り出した。
オガサワラは最初の払いを屈んで避けたが、二撃目の聖槍ラマドシュラーの石突は避けきれず、左右の魔刀を盾に横に吹き飛ぶ。
「くっ」
すかさず、<魔銀剛力>と<光魔血仙経>を連続発動させ、<血魔力>を込めて魔槍杖バルドークを<投擲>。
「――ぐっ」
<血魔力>を込めた魔槍杖バルドークの<投擲>は左右の魔刀を盾に防ぐが重い一撃だ、オガサワラは苦悶の表情を浮かべた。
そのオガサワラとの間合いを潰すように左手の神槍ガンジスで<闇雷・一穿>を発動、双月刃の先端で魔槍杖バルドークの後端に嵌め込まれた竜魔石を突いた。
「な!?」
魔槍杖バルドークの威力に押されて後退したオガサワラ。
続けて神槍ガンジスをも<投擲>し、魔槍杖バルドークの石突部の竜魔石へ再び衝突させる。キィンと奇妙な音波が響き、二つの槍が一直線に連結したような形になった。構わず、<導想魔手>が持つ聖槍ラマドシュラーを右手で掴むや、その石突で神槍ガンジスの石突に<刺突>を繰り出し、押し込んだ――。
「げぇ」
三連結した槍の威力に、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスに押されたオガサワラは後退。
前進し、右手の聖槍ラマドシュラーでオガサワラの足下を狙う<龍豪閃>――。
オガサワラも体から銀色の魔力を生み出し、加速、速度を上げ、跳躍。
オガサワラの奥の手か――。
<導想魔手>を拳にし、浮いたオガサワラを殴りつけながら聖槍ラマドシュラーを消し、落下した魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを両手に掴み、宙空にいるオガサワラに<水極・魔疾連穿>を繰り出した。
無数の連続突きによりオガサワラの魔刀が溶ける勢いで火花が散る。
分身を即座に消していく<水極・魔疾連穿>の連続突きにより、オガサワラは体中に傷を受けていく。そのオガサワラの両腕が膨れると、視線が鋭くなる。
カウンターか、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの<水極・魔疾連穿>を途中でキャンセルし、手放すと、オガサワラの両腕が高速に開く挙動で魔刀が幾重にも増えながら斬撃を繰り出してきた。
カウンターが炸裂した。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジスは吹き飛び、斬撃で髑髏模様の外骨格甲冑と衝突していくが、<握吸>で両手で魔槍杖バルドークと神槍ガンジスを引き戻し、魔槍杖バルドークで<断罪刺罪>を繰り出した。
カウンターにカウンター――。
が、オガサワラは影を残し消える。
と、背後からオガサワラが魔刀を――それを感じるまま<水神の呼び声>と<魔仙神功>を発動し、横に移動し避け、「なっ!?」脇を斬られたが、半身のまま<双豪閃>――。
魔刀を上部に掲げたオガサワラは魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの<双豪閃>を防ぎながら吹き飛ぶ――。
影のような魔力から分身体を作るが本体を逃がさず、<超能力精神>――。
「!?」
オガサワラは驚くが、視線は鋭く双眸に光芒が起きる。
魔眼か? オガサワラの額にも魔印が浮かぶと、突如として、俺の横から魔剣が現れた。それを、紙一重で避けた直後――。
オガサワラは<超能力精神>での拘束を、何重にも重なっている分身を活かしたように強引に離脱、転移――。
俺の右横から、
「<魔剛一ノ太刀>――」
を繰り出してきた。
<暁闇ノ幻遊槍>と<断罪ノ半化身>を発動。
同時に魔槍杖バルドークを縦に硬い床を刺し、分身と共に魔槍杖バルドークを残し、体を浮かせ避け、宙空から神槍ガンジスで<光穿・雷不>を繰り出した。
オガサワラは左手の魔刀を掲げ、双月刃の<光穿>を受け防ぐ。
が、振動した双月刃は天道虫の光の魔力を放ちながら直進、魔刀を破壊し、オガサワラの鎖骨辺りに神槍ガンジスが突き刺さった直後――。
<光穿・雷不>が出現。
八支刀の形を成した光芒の刃が煌めきながらオガサワラの上半身を突き抜け、下の黒い大理石のような床を溶かすように穿ち抜く。溶けた石材は高熱の蒸気を上げた。
神槍ガンジスを消す。
オガサワラはなにかの神の加護があるようだ。
無事な下半身から圧力染みた魔力を放つ。
上半身は再生しかかる。
虚空から紫と赤の魔力の糸が集まり、まず脊髄を形作り始めた。
その柱からは幽玄な光を放つ肋骨が扇のように広がり、やがて筋繊維が血のような赤い霧から編み上げられていく。
内臓は漆黒の球体から変容し、心臓が鼓動を始めると同時に頭蓋が魔力の結晶から成形されていった。
その再生の様は神話の創造を思わせる。
彼の背後には、うっすらと幾つもの影が揺らめいているように見える。禍々しい角と翼を持つ魔神の姿、戦いの炎を纏う亜神の面影、そして名も形も知れぬ旧神の気配が幾重にも重なり合っていた。
これほどの速度で肉体を再構築するには、並の神託や加護では足りない。複数の神の思惑が彼の存在に絡みついているのだろう。
顔の輪郭が魔力の線で描かれ、皮膚が薄い膜のように形成される過程で、不吉な予感が背筋を走る。彼は単なる剣士ではない、何か遥かに深い因果を背負った存在なのかもしれない。
が、今はそんな思索に耽る暇はない。重心を下げつつ右手に魔槍杖バルドークを<握吸>で引き寄せ、再生が速いオガサワラを見ながら<脳脊魔速>を発動――。
そのままオガサワラ目掛け魔槍杖バルドークで<紅蓮嵐穿>を放った。
<血魔力>を吸い上げる秘奥が宿る魔槍杖バルドークは虚空を裂き、次元の境界を超えてオガサワラをぶち抜く。
軌跡は冥界の門が開いたかのような魔力の嵐となり、広間の空気を掻き乱し、天井のクリスタルを揺らしながら、オガサワラを下半身と再生しかかる上半身を消し飛ばしたと理解。
――膨大な魔力を得た。
振り返ると、オガサワラの片方の魔刀が宮殿の黒い大理石のような床に突き刺さっているのみだった。刀身からは、まだ魔力の残滓が陽炎のように揺らめいて見え、彼岸花のような光源の赤い光を反射していた。
「お見事!」
「はい!」
「ん、大勝利! でも奥に百足高魔族ハイデアンホザーの王女がいる!」
続きは、明日、HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミック版発売中。
今回シュウヤが使用したスキル
※霊魔・開目※
※霊魔闇神流<霊魔>系統:闇神闘技<闇迅霊装>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<霊魔闘刹>と<霊迅雷飛>を纏った闇神アーディンから魔槍雷飛流のあらゆる攻撃を<経脈自在>を持つ使い手が喰らい続けた結果、神々の纏さえ視ることが可能となる魔点穴が開通し、一瞬で昇華、才能が開花したことにより<霊魔・開目>を獲得※
※霊魔系高位戦闘職業と<魔人武術の心得>と狂怒ノ霊魔炎と<魔闘術>系系統など、色々な効果を高める※
※闇雷の槍使いの戦闘職業には必須※
※煌魔葉舞※
※煌魔葉舞流<煌魔闇雷>系統:闇神闘技<魔闘術>に分類※
※魔人格闘術技術系統:上位技術※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統:二十四魔氣練魔舞術※
※悪式格闘術技術系統:上位技術※
※魔槍雷飛流を扱う闇神アーディンから直に闇神闘技の<煌魔葉舞>を学び得た存在は希少※
※近接戦闘能力が上昇※
※<霊魔・開目>があると効果が上昇※
※紅蓮嵐穿※
※魔竜王槍流技術系統:魔槍奥義小~不明※
※<魔槍技>に分類、魔槍杖バルドーク専用、<嵐穿>系に連なるスキル※
※魔槍杖バルドークと精神が繋がった使い手は能力が活性化し、魔竜杖バルドークが吸収してきた魔力を纏う。しかし、使い手は精神と魔力の一部を魔竜杖バルドークに喰われる※
※その魔槍杖バルドークから、身の毛もよだつ紋章や、獰猛な魔竜王などの、今まで吸収した無数の魑魅魍魎の魂が魔力の嵐として異常に噴き出す。その魔力の嵐は使い手の腕をも喰らうように周囲に吹き荒れると、使い手は突きのモーションのまま標的へと次元速度で加速し、標的の中段へと魔槍杖バルドークの紅色の嵐雲の矛を喰らわせる※




