千七百九十二話 ハミヤの恥じらいの夜
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椅子を作り、そこに座りながら盥に両足を入れ数時間後――。
「あっ――」と発言したハミヤ。
まだ盥にはハミヤの血が溜まっているが、徐々に血は減る。
そのハミヤの血がみるみるうちに減り、両足と盥の底がすぐに見えた。
すべての血をハミヤが吸い取ったか。
ハミヤは嬉しさのあまり、両手を口に押さえている。
「おめでとう、第一関門の獲得かな」
「はい、やっと、<血道第一・開門>を獲得できました」
「あぁ、皆に血文字も送れる」
「はい!」
ハミヤは早速、血文字を皆に送っていく。
返事の血文字もすぐに、
『これでいつでも連絡は取れますね、おめでとう』
『ハミヤさん、おめでとうございます。あ、私はバーソロン様の<筆頭従者>ノノと言います、バーヴァイ城に来たら、会いたいです。そして、これからも宜しくお願いいたします』
『元バリィアン族のラムラントです。同じく<従者長>ですから、色々仲良くしたいです』
『ハミヤ、おめでとう、血の眷族として、戦力として期待している』
『第一関門の獲得おめでとうございます』
『おめでとうございます、これから血文字の活用を含めて、聖鎖騎士団の秘話なども聞けたら嬉しいです』
『『血文字の獲得、おめでとう~』』
正確には、血文字ではなく、<血道第一・開門>で、略して第一関門だが、まっ血文字が殆どだからな。
『宗教国家ヘスリファートの連中はいわずもがな、セラに残っている聖鎖騎士団の連中が何を思うかだな~』
皆の血文字が、ハミヤの前に次々と浮かんでは消えていく。
そして、アドゥムブラリの血文字はごもっとも。
光魔ルシヴァルの光と闇、〝黄金聖王印の筒〟の現象が起きているからだいぶマシだとは思うが、魔族殲滅機関たちもいるから、一部の狂信者に襲撃される可能性は高いとは考えている。
が、ハミヤたちは、ゴルディクス大砂漠を越えるために大変な旅をしてきた。
何事も真摯に取り組むことだろう。そのハミヤは盥から外に出た。
その盥に触りながら<邪王の樹>を使い、盥を消す。
すると、
「あ、あのシュウヤ様……」
ハミヤが体を寄せてくる。背に抱きつき、腰に手を回してきた。
ハミヤの乳房の形が脇辺りに当たる。
腰に回していたハミヤの片腕を左手で握り引っ張り、右足を引き、体を開くようにハミヤの背に片腕を回しながら胸に「あっ」と抱き寄せた。
「……」
ハミヤは顎を持ち上げ、唇を震わせながら上目遣いを寄越すと、ゆっくりと目を瞑る。
望み通り――。
ハミヤの唇に己の唇を当て親愛の感情を乗せた優しいキスを行った。
柔らかい唇から唇を離し、頭部を引き、ハミヤから離れる。
ハミヤは、瞬きを行った。
己の唇に指先を当て、少し不安げな表情を浮かべつつ、「唇に……」と呟くと頬は一気に朱に染まり、また見上げながら「私……」とまた呟く。蒼い双眸は揺れていた。
光の騎士としての矜持と、血の従者としての新たな感情が交錯しているようだ。
慣れていないだろうからな、無理はしない。
笑みを意識し、少し距離を取る。
と、ハミヤは「……」無言で俺の片腕を掴み、
「シュウヤ様……」
その声には必死な感情がこもっている。
「離れたくない、でも、今までの光の教えが……」
教皇庁中央神聖教会や聖鎖騎士団の教えか。
人それぞれの信念はあるだろうからな。
言葉に詰まるハミヤの肩に手を置き、
「ハミヤ、これからずっと、俺の大事な血の家族で眷族のままだ。だから焦ることはない。これからゆっくりとお互いを知っていけばいい」
「……はい、でも、シュウヤ様の血は、私の体の中に流れている、この温かい血の力は、しっかりと息づいています」
「あぁ」
「……更に、眷族になる前からの想いもあります……対決し負けた直後からです。シュウヤ様の行為を見て……心が揺れて、ときめきを強めていました。そして、眷族と成ったことで、シュウヤ様への深い忠誠と愛情が……溢れ出て、もう、止まりません」
ハミヤの正直な告白に頷いた。
光魔ルシヴァルの血の力は単なる力ではなく、絆を深める不思議な力を持っている。
「了解した。正直、嬉しくなる言葉だ、ありがとう」
ハミヤは微笑んで「あ、私もです、ふふ」と小声で言うと、頷く。
落ち着いたように見えたが、その眼差しは真剣だ。
色の感情などが混ざり合っているように見えた。
その手は俺の胸に置いたままで、細い指先はわずかな震えていた。
勇気を出しているんだろう。
そのハミヤは蒼い双眸に力を込め、震えていた指先と手を俺の背に回し、
「……では、他の皆さんのようにお願いします――」
ハミヤも、己の顔を俺の体に押し付けるように、強く抱きしめてくる。
胸元の薄着は開いているからハミヤの吐息がダイレクトに胸に感じた。
長い金髪は艶があり、美しいプラチナブロンドの髪だ。
肌も以前より透き通るような白さを増していた。
ハミヤの背に両腕を回し、
「おう――」
と抱きしめを強くした。
「ありがとう、良かった。安心しました」
「あぁ」
と言いながら『すまん、不安にさせるつもりはなかった』と謝るようにハミヤの背を少し撫でた。ハミヤは聖鎖騎士団団長だった、教皇庁中央神聖教会の規律などは知らないが、敬虔な信徒の生き方ってのはある程度想像できてしまう。
ま、それも一方的な俺の見地に過ぎないか。
レッテル張りに繋がりかねないから、なんとも言えないな。
そして、人それぞれ、千差万別につきる。
と、考えていると、ハミヤは、また上向いて、目を瞑った。
ハミヤの小さい唇は少し開いて、何かを囁いた。
そのハミヤに応えるように、再び唇を重ねる。
今度は唇を強めに吸い、より深くハミヤの口内を唇で感じた。
ハミヤの体が一瞬こわばり、すぐに柔らかくなっていく。
と、ハミヤは俺の唇ごと唾液を吸ってきた。
ハミヤの鼻息の息遣いが早くなり、胸の高まりが俺の胸に押し当てられる。
互いの鼻でもキスをするようにハミヤの前歯を舌で撫でると、ハミヤは俺の舌ごと吸い付いてきた。そのまま唇を離すと、彼女は熱に浮かされたように息を荒げ、
「ぁぁ……もっと……シュウヤ様……」
と、お望み通り、またハミヤの唇を奪う。
今度は唇で、ハミヤの唇のマッサージ。
ゆっくりと<血魔力>と唾液の交換を行った。
ハミヤの<血魔力>を感じるたび、煩悩と刺激を得た――。
ハミヤも同じように体をビクッと揺れている。
激しいキスを行って、唇を離す。「ぷはぁっ」と俺の唇を追おうと唇を突き出してきた、その唇に合わせ、また唇を重ねる。
そのハミヤの上唇を押してキスを強めてから、唇を離し、細い顎にキス。唇を離し、首筋のラインを沿うように唇を滑らせていく――。
「あぁぁ……」
鎖骨を吸うようなキスをしてから動きを止める。
ハミヤは、俺の両腕に体を預け、弓反りに細い体を反らしていたが、腹筋を活かすように体勢を直し、抱きついてくる。
「――シュウヤ様のことを、もっと知りたいです」
「おう、俺もだ」
ハミヤは言葉ではなく、小さな頷きで答えた。
その純粋な反応に煩悩が刺激された。
ハミヤの手を取り、奥の小部屋へと導き、障子を閉めた。
薄明かりの中で、布団にいるハミヤの姿を見つめる。
薄着は既に崩れて、首筋から肩にかけての白い肌が露わになっていた。
障子に背を預けたハミヤに近づき、首筋に唇を寄せる。
わずかに残る血の香りが俺の感覚を研ぎ澄ませた。
そこに優しく吸いつき、軽く歯を立ててみると、
「あぁっ」
と切なげな声が漏れる。
「痛かったか?」
「い、いえ、その……気持ちが昂ぶって……」
言葉にならない感情を抱えるハミヤの姿に胸が熱くなる。
ハミヤの襟元に手をかけ、ゆっくりと肩から腕へと衣を滑らせていく。
露わになる白い肌には、既に光魔ルシヴァルの血による変化が見え始めていた。
淡い銀色の筋が透けて見え、神秘的な美しさを醸し出している。
「美しい……」
俺の言葉に、ハミヤは恥じらうように視線を逸らす。
「聖鎖の騎士が……このような――」
迷いの言葉を口づけで封じた。
薄着のすべてを脱ぎ、素肌を晒したハミヤを抱き寄せた。
互いの体温が溶け合い鼓動が共鳴する。
ハミヤの体を抱き上げ、布団からはみ出る。細い腕に嵌まる金の腕輪が煌めき、畳の上に優しく横たえ、乱れた髪が輝く。その蒼い瞳は今や情熱に満ちていた。
「シュウヤ様……私を導いてください」
その言葉は騎士の誓いのようでありながら、女としての願いも秘めていた。
彼女の上に覆いかぶさり、耳元で囁く。
「あぁ、それは俺の言葉でもある。そして、喜んで、光と闇を共に生きよう」
素肌を重ねる。ハミヤの柔らかな体が俺の下で震える。
初めての感覚に戸惑いながらも、純粋な情熱で応えていくハミヤは健げで美しい。
光の騎士の威厳と、今目覚めた女性としての官能が入り混じった表情が、俺の本能を刺激した。
「あぁ……シュウヤ様」
二人の体が一つになり、ハミヤの背が弓なりに反る。
聖剣を振るう腕が俺の首に回され、力強く抱きしめられた。
――互いの呼吸が荒くなり、動きが激しくなっていく。
「ハミヤ……」
名を呼ぶと、彼女の体が強く震えた。
光魔ルシヴァルの血によって高められた感覚が、彼女に新たな悦びをもたらしている。時を忘れて二人は重なり合い、互いの存在を確かめ合った。
光と闇が交わり、新たな絆が生まれていく――。
ロロディーヌが呆れるほどの情事となった。
ハミヤは俺の胸に頭を預けて息を整えている。
彼女の肌からは淡い光が漏れていた。<従者長>としての力が覚醒した証しだろう。
「シュウヤ様の心を体に感じて満たされました」
「あぁ」
「……あ、あの、でも、足りない、もっと……」
と、言葉を探すハミヤの額に、軽くキスをする。
「分かっているさ、少し休憩したらな」
「はい」
ハミヤは安堵したように微笑み、静かに目を閉じた。
そこから数時間、魔煙草タイムを含め何回かハミヤとエッチを楽しみ――。
ハミヤから<聖血の守護>の効果に、金の腕輪がアイテムボックスですぐに装備が展開できることも知った。聖鎖騎士団団長用の聖鎧も種類があるようだ。光の護符が仕込まれたブリガンダイン式もあるとか教わった。
更に、光の十字架と細かな光の十字架を頭上に生み出せる<光の精霊ウィロー>の加護と<光剣技>の<光剣ウィロー>や、<光剣・三刃>に、ダクラカンの聖剣専用<聖剣技>の<聖剣マクマロー>に<聖剣・烈巻返し>などの色々と在ることを教わる。
<神聖光衝>の使い方は、俺が使った方法と大差ないことも教えてもらう。
「聖槍と神槍の<聖槍技>と<光槍技>に<聖槍・烈牙>などを覚えて居ればシュウヤ様と訓練ができましたのに……勿論、嘗ての古の英雄でもあるミレイヴァル様には叶いませんが……」
「はは、いいさ、俺も剣術は成長途中、いつか学ぶこともあるだろう」
「はい――」
ハミヤは嬉しそうに発言すると、聖鎖騎士団団長の身体能力を見せる。
俺にのし掛かって馬乗りにされた。
そこからハミヤが「あぁん、ここからは、私が……」と言うが、さすがに――。
<黒寿ノ深智>の幻惑と叡智に<煌魔葉舞>と<性命双修>と<破壊神ゲルセルクの心得>と<滔天魔経>と、キュルハとメファーラの宇内乾坤樹の欠片と不可測の血布と霊湖の水念瓶の<水念把>と<魔布伸縮>を織り交ぜた<魔闘術の仙極>と<魔仙神功>を使った百五十を超えた御業の愛撫の連続技には、光魔ルシヴァルの体をもってしてももたず、快楽の表情を浮かべたまま氣を失った。
ハミヤを抱えながら《水浄化》と《水癒》を発動し、汗ばんだ体を癒やしてあげ、布団に乗せて毛布をかぶせてあげた。
そのままスヤスヤと眠るハミヤを起こさないように布団から出た。
畳の部屋から出て、板の間の廊下に出る。
さすがに皆は近くにいない。
上笠連長の忍者のような隠密部隊もいない。
静まった庭園と園側だけだから、ここは、日本か? と錯覚してしまう。
が、空を見たら、魔夜世界、〝魔神殺しの蒼き連柱〟の影響で、薄らと蒼い光を帯びた空のままだ。そんな空を見ながら縁側で<武行氣>を発動し、浮遊しながら庭を進む。
足に肩の竜頭装甲を意識し、アーゼンのブーツを装着させ、着地。
庭園を歩き池に向かう。その前方に相棒の気配があった。
と、縁の岩にいる黒猫が池の魔魚をじっくりと眺めている。
俺に氣付いた黒猫は、振り向いて、
「にゃおぉ~」
と鳴いてきた。
「よぉ、ロロまたせたな」
「にゃ」
相棒と不思議な会話を行うまま、相棒の傍に寄る。
黒猫の頭部の撫でてあげた。ゴロゴロと喉音を響かせる。
共に池の前の岩に座り、魔鯉のような魔魚を眺めては、時折、尻尾を池に垂らして釣りを楽しんでいた。燕の形をした橙色の魔力を放出している中、<月光の纏>を時々発動させているようで、月の形をした薄い魔力の波動を周囲に発生させている。
超音波効果でもあるのか、その<月光の纏>の効果で、魔魚の位置を把握しているように見えた。
「ロロさんよ、ここの池に住まう魔魚たちは採ってもいいのか?」
「にゃ、にゃ、にゃおぉ~」
と、鳴いていた。意味は分からないが、捕まえたい? かな。
そこで〝レドミヤの魔法鏡〟を取り出して、設置、魔力を注ぐ。
登録用の部分に指を当てると鏡から魔力が照射された。
地面に、その鏡の魔力が衝突すると〝レドミヤの魔法鏡〟の中に、【源左サシィの槍斧ヶ丘】の奥座敷の庭の光景が映り込む。文字も出現した。
〝レドミヤの魔法鏡〟の転移可能な場所は合計二十八カ所。
【メリアディの書網零閣】
【ルグファント森林】
【ヴァルマスクの大街】
【アムシャビス族の秘密研究所の内部】
【メリアディの荒廃した地】
【エルフィンベイル魔命の妖城の冥界の庭】
【メリアディ要塞の大広間】
【レン・サキナガの峰閣砦】
【骨鰐魔神ベマドーラーの内部】
【南華大山山頂部】
【ガルドマイラ魔炎城】の城主の間
【ウラニリの大霊神廟の遺跡】
new【【源左サシィの槍斧ヶ丘】の奥座敷の庭】
よし、記憶した。
そこで尻尾を持ち上げ、水飛沫を発生させている黒猫を見ながら、〝レドミヤの魔法鏡〟を仕舞った。
黒猫は「ンン――」と鳴きながら池の周りを走る。
【ウラニリの大霊神廟の遺跡】の双月の泉のところでは、魚が採取できたからな。
ん、泉と言えば、小月と神狼と銀獅子の泉か。
【ウラニリの大霊神廟の遺跡】の名のほうが強いようだが、あそこは、小月と神狼と銀獅子の泉でもあるはずなんだよな……。まだ近辺をちゃんと探せていないが、今は戦場か……。
黒猫は俺の隣の岩場に跳び乗ってくると、香箱座りに移行。
そこで、泉の水面に煌めく蒼い光を見ていく。
ふと、相棒とハイム川を景色を眺めている頃を思い出した。
あれから結構経ったな――と、黒猫の頭部と背を左手で撫でていく。ゴロゴロとした喉の音が響く。と、指をペロペロと舐めてくれた。
寝っ転がって相棒の前足をにぎにぎしながら眠りたくなってくる。
そんな安らぎの時を過ごしていると……。
突然、庭の遠くから聞こえてきた。
「あ~、シュウヤ~!」
「もう待てない~」
「ご主人様!」
「シュウヤ様~」
レベッカとユイとヴィーネとキサラの声だ。
「よう~」
「にゃ~」
と、庭から寄ってくる皆に手を上げる。
ヴィーネの背後にエヴァとミスティとフーの顔も見えた。
「ボォォン」
骨鰐魔神ベマドーラーも右の空に見えた。
闇鯨ロターゼも見える。
「総長~」
エヴァの背後からの声。
ヴェロニカとメルにルマルディも見えた。
エヴァは、池を見てから、
「ん、シュウヤとロロちゃん。ご苦労様、ハミヤは先に寝た?」
「あぁ、寝た」
「ん」
「ご主人様は、全員を同時に相手ができるほどの体力と俊敏を持ちますからね」
「そうね、<血魔力>を得ただけでも、感じちゃうのに、個人だけでは、もって数分のはず」
「はい、ハミヤ個人では、さすがに持ちません、しかし羨ましい」
「ん」
「<血液加速>も使うし、指先の動きも、絶妙なんだもん」
「マスターは、ほんと、色々と労ってくれるからね」
レベッカとミスティの言葉に、皆が強く頷く。
「たしかに! わたしたちを楽しませることに精一杯がんばってくれるから、その分、嬉しくて、興奮しちゃう」
「うんうん、その分、ハミヤも素敵な初体験だったと思う」
「ですね、同じ血の家族に女として、非常に嬉しく愛しく思えます」
「「「はい」」」
「でも、女として独り占めは禁止! と言いたい」
「賛成!」
ヴェロニカはレベッカの言葉に肯定し、背に、飛び掛かっては抱きついてくる。
そのヴェロニカの太股を両手で支えるようにモミモミと揉みしだき、おんぶをしていく。
ヴィーネは、ヴェロニカを止める様子はなく、「それは、はい。しかし……」と呟く。
一方、レベッカは、俺の背にいるヴェロニカを降ろそうと、ヴェロニカの手を掴んでは引っ張り始めた。
ヴェロニカは<血液加速>を強めたように、レベッカの腕を上手く叩き落とす。
「あっもう! ヴェロニカ、いつかシュウヤの背を奪った時にヴェロニカにすぐに譲るから、今の、そこの位置を交換しましょう」
「ふふふ、うん、取り引き成立~♪」
笑ったヴェロニカは、俺の後頭部の首にキスをしてから降りた。
くすぐったい――。
レベッカはすぐに跳躍し、俺の背に抱きついてくる。
そのレベッカの太股とお尻も、両手で支えた。
同時に、レベッカのお尻をモミモミと揉みしだく。
前に迷宮でお尻をマッサージしながらエッチなことを楽しんだっけ。
その想いのまま、魔力の流れと血流の流れを整えるようにマッサージをしてあげた。
「ぁん」
レベッカは体が震えては背に顔を埋めたまま静かになった。
「はーいレベッカは召天ということで、次はわたしの番、交代して~」
「……ぅん」
感じているレベッカは降りて、ユイと交代、ユイをおんぶした。
レベッカは足取りがふらついた。
急いで片腕で支えたが、レベッカは俺の腕を細い手で掴んでから
「アンッ、またッ」と、すぐに体を弓なりに反ってしまった。感じやすくなっていたか。
と、背におんぶしたユイの乳房をもろに感じた。
<死神ノ聖戦衣>ではない薄着の戦闘装束なこともあったか。
そのまま、片腕だけで支えていたユイのお尻にもう片方の腕の手を戻し、両手で掴むように支え、お尻の肉をモミモミと揉みしだく。
ユイの顔はここからでは見えないが、ユイの尻へと両手から<血魔力>も注いであげると、ユイは体をビクッと揺らして「ぁっ……」と感じ入り、俺の上半身に絡めていた両腕に力を込めながら顔を背に押し付けてくる。
その様子を真顔で見ている皆が、
「ユイにレベッカにヴェロニカも色っぽいんだから……」
「はい……目がハート……あぁ、逆に、ご主人様を独占したいです」
「それは、はい……」
「独占……」
「ご主人様はマッサージに詳しいですから、独占されたら……うふふ」
「ですね……おっぱい健康法に、足裏の健康法など、時折、笑わしてくれるのも素敵ですから、正直、嵌まりまくる……」
と、フーが色っぽく語る。
俺を悩ましい視線で見つめてきた。
「う、それはそう……」
「シュウヤ……独占は禁止と言いたいけど……」
「皆と女眷族同盟を結べる勢いで同意! けど、もう恒例行事だからね」
レベッカとヴェロニカは少し頬を膨らませている。
「皆、タイミングが合えばな。今回は、眷属化に伴う影響で、ハミヤの記憶を体感したことも、あるかもだ」
と言いながら、首筋にキスをしているユイを降ろした。
ユイは少し体勢を崩したが、エヴァとヴェロニカとレベッカに支えられていた。
ヴィーネは、
「記憶の体感とは、ルマルディを眷族した時のような?」
「あぁ、ルマルディのような幼少期はなかったが」
今にして思えば、結構な個人差があるということか。
「へぇ、では、ハミヤの聖鎖騎士団の初期の頃?」
レベッカの言葉に頷いて、まだ寝ているハミヤがいる奥座敷を見てから、
「あぁ、ザ・宗教国家ヘスリファートと呼べるような、巨大な大聖堂のような場所で、拝命式のようなセレモニーを体感した」
「にゃお~」
「「「「へぇ」」」」
「壮大な式典だったのかな」
「あぁ、かなり壮大だった」
「宗教国家ヘスリファート……聖戦の名の下に、人種差別と虐殺を平然とやる、腐ったあの国を抜ける時は、恐怖でしかなかったですが……教皇庁中央神聖教会側の立場で見ると、華やかさがあるのですね」
ヴィーネの言葉に頷いた。
「そうだな、ゴルディクス大砂漠の横断の旅の途中では、聖鎖騎士団の団員に死者が出ていた。それを弔うところでは結構……心にきた」
「「……」」
「……なるほど」
「……ん」
エヴァが俺の手を触り、紫の瞳を少し潤ませてから、頷いていた。
<紫心魔功>で、俺の記憶を体感したかな。
そのエヴァの手を逆に握り、笑顔を贈る。
エヴァは優しげに笑みを浮かべてくれた。
そこで、思案げの表情を浮かべている皆を見てから、
「では、ペミュラスたちと合流し、テーバロンテの王婆旧宮に向かおうか」
「はい、もう準備は終えてます」
「ミウも付いてくるようです」
ヴィーネの言葉に頷いた。
「ん、ペミュラスたちも装備は整ってる」
「皆、ケーゼンベルスにレンやサシィも付いてくるようよ」
「了解した」
「ンン」
皆で、池から離れて縁側に近づく。
ハミヤも畳の部屋から廊下側に現れた。金の腕輪が輝くと、一瞬で装備を体に展開した。
そのハミヤは、
「シュウヤ様、同行させてください」
「ああ、もちろんだ」
ハミヤは嬉しそうに頷く。
ハミヤは眼差しには先ほどまでの恥じらいはない。
光の騎士としての凛とした決意がある、<従者長>としての自覚と誇りか。
光魔ルシヴァルの血を受け入れ、新たな力を得たハミヤ。
彼女の力と聖血剣ダクラカンが、これからの戦いでどれほどの力を発揮するか、少し楽しみだ。
そこに「ウォォォン!」と魔皇獣咆ケーゼンベルスの声が響く。
エトアとレガナとアドゥムブラリが飛来。
荒鷹ヒューイと沙・羅・貂たちも飛来。
「ピュゥゥ~」
「器よ、褥タイムを予約したいが、テーバロンテの王婆旧宮に向かうと聞いた、共に行こうか!」
「了解、腕に来い」
「うむ!」
「「はい!」」
三人は神剣に乗って小さくなると、左手の掌の運命線のような傷の中に突入してくる。
ヒューイも普通に左手に入ろうしてきたから、急いで左手を引っ込めた。
「ピュゥゥ~」
ヒューイは俺の背後を旋回してから、
「ん、ヒューイ、こっち」
「ピュ~」
とエヴァが魔導車椅子に造り上げたヒューイ用の金属の棒にヒューイは着地。
そこに、シュレゴス・ロードとアルルカンの把神書とシャナとレンとサシィも奥座敷から現れた。
「主、我も魔印の中に。そして、フクナガの魔料理により、<角骨の甲刃>を獲得しましたぞ」
「<角骨の甲刃>?」
「はい、我の旧神系の能力が新たに目覚めたようです――」
シュレゴス・ロードは片眼鏡と、クリスタルのような長い髪が煌めく。
途端に、両手の前腕に小形の盾にも見えるが、先端は剣刃となっている武器防具が展開された。
剣刃には、桃色で、透けている蛸足集合体の魔力が展開されている。
「へぇ、フクナガの魔料理で、進化か。見た目通り近接用かな」
「はい、主に近接用と遠距離にも――。」
と<角骨の甲刃>の先端のロングソードのような剣刃が突出し、幾筋もの桃色の光条を引きながら地面に突き刺さった。剣刃に沿って透明な波動が伝わり、接地点から小さな魔力の波紋が広がっていく。<角骨の甲刃>は小形の盾か、殴るようのパイルバンカーにも見えてくる。その表面には古い旧神時代の文様が浮かび上がっては消え、シュレゴス・ロードの血統に秘められた古の力が目覚めつつあることを物語っていた。
「両方いけるのか、良い武器だ、おめでとう!」
「はい、ありがとうございます、では――」
端正の顔立ちのシュレは丁寧にお辞儀。
そして、一瞬で桃色の魔力粒子に変化し、その魔力粒子は俺の左手の掌の<シュレゴス・ロードの魔印>の中へ突入して消えた。
レンとサシィは、抱きついてくる。
サシィは、俺とハグをしてすぐに離れたが、レンは小声で「シュウヤ様、次は私を可愛がってくださいませ……」と耳元で囁いた。その息が耳朶をくすぐり、思わず背筋に快感が走る。
レンの豊かな乳房が薄着の右の二の腕に感じて嬉しくなった。
柔らかな感触と共に彼女の鼓動までも伝わってくる。
レンは意図的に胸を押し付けるように体を寄せ、すれ違いざまに腰に手を這わせてくる。
そのレンは少し体を引くと、艶やかな視線を送りながら太股の『血闘争:権化』と『血鬼化:紅』を消した。白い肌の太股が露わになり、その肌理の細かさが魔夜の光を受けて儚く輝いている。
これはこれで魅惑的だ。湿った唇を舐めながら上目遣いを寄越すレンに、
「了解、タイミングがあれば、楽しもう」
「はい!」
ファーミリアとエラリエースとも親好をもっと深めたいところだが、タイミングが合えばだな。
続いて、キュベラスとバーソロンとビュシエが、宙空を滑るように飛来。
ハンカイに魔皇メイジナ様とサザーとファーミリアとシキも空から現れる。
ペミュラスとベリーズと風の女精霊ナイアとベネットは、奥座敷の入り口のほうから普通に現れた。
そして源左の街で買ったであろう、ポップコーンが入っていそうな和紙製の小箱を持っている。
常闇の水精霊ヘルメと神魔の女神バルドークと白黒猫と銀灰猫と黄黒猫にヒューイと法魔ルピナスとエラリエースと銀白狼とキスマリと子鹿とミウたちは、庭の向こう側からやってきた。
古の水霊ミラシャンは、
「シュウヤ様、指先に戻ります」
「おう」
古の水霊ミラシャンは、体から水飛沫と水晶の欠片を周囲に生み出しつつ、体のすべてが、水色の魔力粒子に変化すると、それが飛来し、右手の指先の爪に入り込んできた。
「ンン」
黒猫は皆の帰還に合わせ、姿を巨大な黒虎に変化させた。
奥座敷を越える大きさだ。
一気に橙色の魔力で、周囲が明るくなった。
魔皇獣咆ケーゼンベルスも体を大きくさせる。その体から放たれる重厚な魔力が周囲の空気を震わせ、蒼い魔夜世界の空に渦を作っていく。
神獣ロロディーヌと魔皇獣咆ケーゼンベルスの巨大な腹の毛が空を占め、〝魔神殺しの蒼き連柱〟の光を受けて幻想的な輝きを放った。
皆の体に神獣の触手が絡まると、触手はその神獣の頭部と背に収斂され、運ばれていく。魔皇獣咆ケーゼンベルスの頭部へと運ばれていく。
話に聞いていたが、ミウにも絡めていた。
ミウは、ペミュラスの百足高魔族ハイデアンホザーを見て、少し驚いていたが、テーバロンテの王婆旧宮は興味があるようだ。【極門覇魔大塔グリべサル】が健在だった頃は、魔界王子テーバロンテがどの程度の力を持っていたのか、氣になるところだ。
――俺にも触手が飛来。
それを掴んで一気に相棒の頭部に運ばれた。
巨大な耳をかすけて、触手に引き込まれるまま、頭部に着地、ヴィーネとキサラとハイタッチ。
百足高魔族ハイ・デアンホザーの生体は百足系のペミュラス、見た目は、ザ・エイリアン。
全身を覆う漆黒の外骨格は光を吸い込むように艶やかで、節ごとに微かな紋様が浮かび上がっている。頭部はバイクのガソリンタンクの形状のままで、色合いはブラックカーボンで、硝子製にも見える。中身は液体金属が詰まっているようにも感じるが、頭部の中身は透けているようで透けていない。微細な氣泡が内部で踊るように動き、それが思考の動きを表しているようにも見える。
前にも考えたが、スケルトンタンク風の液体脳みその中には、量子の小宇宙があるのかも知れない。意識は、量子のもつれという理論もあったからな。
不思議な頭部に眼球らしきモノアイは変わらない。
神獣の右の眉毛の付近に立ちつつ、メルたち会話しているペミュラスに、寄って、
「ペミュラス、【テーバロンテの王婆旧宮】の【瘴気の樹森】だが」
「通り道は任せてくだされ」
頷いた。そこで、アイテムボックスから〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟を取り出す。
「これは出しておいたほうが良いかな」
ペミュラスは一瞬ギョッとした表情を浮かべ、上半身に生えている多脚を上下にわずかに動かす。
スケルトンタンク風の頭部の中に、四眼の斑点的な眼球を意味する部分と……。
口を意味する部分がある。驚きに合わせ、目と口の動きも変化していた。
と、すぐに、四眼らしき眼球を形成していた輝きを放つ物質は回転。
マンデルブロー集合の波形に変化していくから、眼球ではないのかも知れない……。
そのペミュラスは眼球と思われる四眼が強く星月夜のように煌めかせながら、
「……百足門を開ける時だけで良いかと。百足魔族デアンホザーと百足高魔族ハイデアンホザーを刺激してしまいます。ただ、畏怖をシュウヤ様に抱かせる効果で、むやみな戦闘を回避できるという面もあるかと」
と発言してくれた。
「了解した。なら、まだこの〝魔界王子テーバロンテの掛毛氈〟は仕舞っとく」
「はい」
「では、相棒出発しようか」
「にゃおぉぉ~」
神獣が跳躍し飛翔――。
源左砦を離れ、【源左サシィの槍斧ヶ丘】を離脱した。
「ウォォォン――」
巨大な魔皇獣咆ケーゼンベルスも同じように飛翔するように駆けている。




