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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1783/2000

千七百八十二話 六秘宝の〝ルグナドの灯火〟の効果

 さっそくに、常闇の水精霊ヘルメが、「おめでとう~シャナちゃん~」と、頭を下げているシャナに祝福の水をプレゼントして、背から尻を輝かせていく。


 ほぼ同時に、縁側で訓練しているキサラたちが騒ぐ。

 

 シキとアドリアンヌとキュベラスとルンスたちの声も聞こえるから、一部は奥座敷の見学だけをして戻ったようだ。


 奥座敷も広い庭もあるからな。


 この庭だけでも【源左蛍ノ彷徨変異洞窟】、【緑王玉水幢ノ地下道】、【コツェンツアの碑石】、【開かずのゲイザー石棺群の間】、【源左ミーロの墓碑】、【立花弦斎の羨道】、【源左ゼシアの命秘道】とした土地名が付くように、かなり広い。【ローグバント山脈】にも通じている。

 

 過去のマーマインとの戦いでは、ケーゼンベルスと相棒と一緒に、外の庭を突っ切って【ローグバント山脈】のほうに駆け抜けたことは記憶に新しい。


 そして、シャナに、

 

「頭を上げてくれ」

「はい」


 <従者長>のシャナは頭部を上げた。

 輝く血を帯びた金髪がプラチナに見えた。

 金髪のキューティクルさが増したように、艶がある。

 その薄らとした<血魔力>は金髪の中に消えていく。


「……<従者長>シャナ、これからも宜しく頼む」

「はい」


 シャナの角膜と瞳孔などの虹彩は緑の色素に富んでいる。

 ところどころにヘルメの印のような水滴の形をした紺碧の粒のようなキラキラとした色素もあった。

 そのキラキラとした緑の瞳に、血の<血魔力>が重なっている。

 緑を基軸にしながらも、非常に美しいグラデーションとコントラストさの虹彩となっていた。


 新種の翡翠の宝石を思わせる。


 そして、凝視したら、普通の眼球に思えるが……。

 レンズ状の透明な構造体は、人族、魔族、エルフとも微妙に違うのかも知れない。そんな美しい瞳を持つシャナを見ていると心臓が高鳴った。

 すると、


「素晴らしい! <血道・ルシヴァル聖印(ルシヴァル・シジル)>!」

「はい! <光ノ血道>も<血道・光魔聖晶(こうませいしょう)>に進化したのですね」


 ヴィーネとキサラがエラリエースを祝福している声が聞こえてきた。

 そのエラリエースたちが、縁側から大広間に戻ってくる。

 

 シキと霊魔植物ジェヌに漆黒アロマとアドリアンヌとキュベラスとイヒアルスたちも一緒だ。ドマダイとヒョウガとベルハラディとデルとラヒオクとレスールに眷族化の候補でもコジロウたちも居ない。


 ドマダイたちはロターゼたちと源左砦から離れ山を下りたかな。

 そして、そんな皆に、己の光魔ルシヴァルの<筆頭従者長(選ばれし眷属)>になったことなど、進化の報告をしていたエラリエースは、畳の部屋にいる俺たちに歩み寄り、持っていたシャナに処女刃を


「――シャナさんも<従者長>、おめでとうございます、そしてこれを」

「あ、はい、これが……」


 シャナは処女刃の腕輪をマジマジと見て、俺に視線を寄越すと、

 

「では、処女刃を腕に嵌めて、私も、エラリエースと同じく<血道第一・開門>の獲得を目指します」

「了解した」

「はい、。皆に血文字の報告を速くしたい!」


 元氣なシャナ、喉元の歌翔石が光を帯びる。 

 そのまま、エラリエースが先程まで入っていた大きい盥の前に移動した。結局、盥には血は溜まっていないが、槍訓練をしていたはずのヴィーネが、

 

「ご主人様、エラリエースは元神界騎士団の〝捌き手〟の一人なだけあります。いきなり血道のスキルを幾つか覚えたようです」

「おう」


 キサラも、


「そのようですね、光魔ルシヴァルとエラリエースの親和性の高さは予想していましたが」


 頷いた。クナは、


「枢密顧問官ベートルマトゥルがエラリエースを実験体に選んだ理由も納得です」


 ……なるほど、エラリエースの体の特性があるからか。

 ヴェロニカが、エラリエースを見てから、


「光魔ルシヴァル様の眷族になる時は、わたしやビュシエみたいに元々の吸血鬼としての経験が役立つことが多い。そして、エラリエースは神界と魔界での永く生きて生活をしている。そこで培ったものが血の触媒の効果を特に高めて、エラリエースに影響を深く影響を与えたってことかな」


 と分析していた。その言葉にビュシエも頷き、


「はい、 神界と魔界、相反する世界で刻んだ永い永い時が彼女の中で血の触媒をかつてなく活性化させたということでしょう」


 皆がヴェロニカとビュシエの分析に頷く。

 そして、次に眷族化を予定しているファーミリアが、


「……そのようです。今まで神界騎士団の〝捌き手〟は恐怖の対象でしかありませんでしたが、エラリエースの眷族化で、印象が変わってきました」


 その言葉に頷いた。

 ミスティは、


「新しい血道の能力とブラッドクリスタルは素直に羨ましい」

 

 と、発言した。ブラッドクリスタル生成は、己が獲得できれば魔導人形(ウォーガノフ)のゼクスに流用できるだろうからな。


「ゼクス用に実験もできるからね」


 レベッカの言葉にミスティは頷いて、


「そう、でも、まぁ、ブラッドクリスタルは大量に作ってもらって、既にゼクスに活かしているんだけどね」

「うん」

「ん、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>と成ったエラリエースの新しいブラッドクリスタルの<血道・光魔聖晶(こうませいしょう)>は、今までのブラッドクリスタルよりも高性能っぽい」

「うん、だからエラリエース先生に期待よ」


 とミスティの言葉にエラリエースは笑顔で、「ふふ、はい。ミスティさんに新しいブラッドクリスタルを――」と、既に数十個の新しいブラッドクリスタルを作ったようで、木箱ごとミスティに渡していた。

「ふふ、さすが氣が効く! 血の姉妹のエラちゃん大好き~!」


 と、ミスティがレベッカのように興奮している。

 既に色々な魔界の素材を取り込んでいる魔導人形(ウォーガノフ)のゼクスだが、その魔改造は更に進みそうだ。


 そこでファーミリアを見て、


「次はファーミリアの眷族化を行おう。こちらに来てくれ、そして、ラムーも」 

「はい」

「あ、はい」


 ラムーは察していたのか、霊魔宝箱鑑定杖を取り出し、その杖に<血魔力>を送っていた。


 大部屋の畳を歩いてくるファーミリアとラムーを見ながら〝ルグナドの灯火〟と〝宵闇の指輪〟を取り出した。


 ファーミリアは、


「あ、〝ルグナドの灯火〟……<血魔力>、<血魔術>などの<血道・>系のスキルやアイテムを強化するアイテムですが、形が前とは異なるので、アイテム効果が変化した可能性があると?」


 期待を寄せるような言葉だ。

 レベッカたちも興味深い眼差しで、俺が取り出したアイテム類を見てきた。


「そうだ。宵闇の指輪の回数が回復するかな~とした淡い期待もある」

「なるほど!」

「宵闇の指輪とルグナドの灯火の融合とか、あり得るかも」

「……」

「うん、期待~」

「ん、それは氣になってた」

「あ、戦場だったけど、吸血神ルグナド様に、宵闇の指輪のようなアイテムがあれば、下さい~って言えば良かったかな」

「ファーミリアたちのこともあるし、氣まぐれでプレゼントしてくれたかも」


 レベッカとサラの言葉に頷いた。


「あぁ、が、あの時は状況が状況だしな」

「ん、たられば、仕方ない」


 と会話している間にも〝ルグナドの灯火〟の鑑定を終えたのか、ラムーは、「……凄い……」と呟いている。

 

 ラムーは魔鋼ベルマランの鉄仮面のような兜を装着しているから、くぐもった声だったが、聞こえてきた。

 そのラムーは、


「……六秘宝の〝ルグナドの灯火〟ですが、<血魔力>、<血魔術>などの<血道・>系のスキルやアイテムを強化するアイテムの回数が、かなり増えたようです。ひょっとしたら無限かもです……次に、吸血神ルグナドと光魔ルシヴァルの宗主との絆の効果で、この〝ルグナドの灯火〟を使用した吸血鬼(ヴァンパイア)たちに、わずかな光属性に対する強度を増す効果もプラスされる……そして、神座を得た光魔ルシヴァルと宗主が直に使うことで……様々に吸血鬼(ヴァンパイア)と関連したアイテムとの連携効果が増えるようです……更に、〝シュウヤとファーミリアのヴァルマスク家たちよ、宵闇の指輪と合わせて、光魔ルシヴァルの眷族化の儀式に、この、我の神性の一部を込めた〝ルグナドの灯火〟を使うといい……今回だけのヴァルマスク家だけの特別な恵みとなるだろう……ふっ、内実は神眷である光魔ルシヴァルのシュウヤだからこそ可能なのだがな?〟 そして、〝これは槍使いシュウヤ……お前の、我に対する貸し作る健げな行為に対する礼と、心得よ……〟、〝そして、共同眷族の道も見えることなるだろう。色々と楽しみだ。共に闇神リヴォグラフの連中を仕留めようぞ……〟……と言った内容です。シュウヤ様とファーミリアたちを想う吸血神ルグナドの愛と、同盟の強い気持ちが込められているようですね」

「「「「「おぉ」」」」」


 驚いた。

 吸血神ルグナド様と俺が触れた時の影響か。


「あの時、シュウヤと吸血神ルグナド様は共同作業を行った」

「「「あぁ」」」

「では、吸血神ルグナド様も先を見越して……」

「ご主人様の律義が吸血神ルグナド様に通じたのでしょう」

「……え、それって、ヴァルマスク家ごと光魔ルシヴァル入りを正式に認めたってこと?」

「そうですね、凄すぎる……」


 皆、それぞれに驚きのまま、言葉を発していた。

 ラムーは続けて、

 

「吸血神ルグナド様は、シュウヤ様の影響も受けたことは勿論ですが……過去に、戦神たちや光神ルロディスを含めた光の女神たち、神界騎士団との戦いで、何度も浴びた光属性の傷、それを糧にできるような特殊なスキルがあるようです。弱点を完全に無くす効果ではないようですが……」

「「「へぇ」」」


 納得だ、魔界と神界の戦い。

 光属性が完全な弱点なら、とうに滅ぼされているだろう。


「それにしても凄いさね」


 と、クレインも驚きのまま語っている。


「シュウヤ様の、ファーミリアとヴァルマスク家に対する行為、そして、宵闇の指輪があることはビュシエとヴェロニカのことで知っていますから、それをファーミリアに使わず、魔界にいる吸血神ルグナド様の顔を立てて、まずは律義に交渉を行って挨拶をしてからと、その仁義が、吸血神ルグナド様の心に響いたんだと思います」

「うん、魔界セブドラで幾星霜と生きている魔神の一柱の吸血神ルグナド様。己の大事な血脈、眷属、眷族を重に理解しているからこそ……」


 皆の言葉に頷く。


「うん」

「はい、ご主人様が、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>としての格を大事しているからこその行為です」


 ヴィーネの言葉に皆が満面に笑みを浮かべた。


「痺れますね……」

「「「はい」」」

「……凄すぎて泣けます……」

「……あの時、吸血神ルグナド様の表情を思い出すと……はい……」


 ルビアとエトアは泣いていた。

 ビュシエも吸血神ルグナド様と俺との会話の時を思い出しているのか、「……」頷きながら泣いていた。


「うふふ」


 クナも涙目となって微笑む。

 ファーミリアは涙を流していた。

 <筆頭従者>ルンスと<筆頭従者>ホフマンと<筆頭従者>アルナードも涙を流していく。


「では、ルグナドの灯火と宵闇の指輪に眷族化を同時に?」

「「うん」」

「そうね」

「わくわく」

「ん」

「では、〝ルグナドの灯火〟と〝宵闇の指輪〟のアイテムと、ファーミリアの眷族化の儀式を同時に使う」

「「「「「はい!」」」」」

「ファーミリア、こちらに、宵闇の指輪とルグナドの灯火を俺と一緒に触れながら眷族化の儀式を行う」

「はい」 


 宵闇の指輪も戦闘型デバイスのアイテムボックスから取り出した。

 宵闇の指輪とルグナドの灯火を右手に持ちつつ、傍にきたファーミリアを抱き寄せる。そのファーミリアと頷き合った。

 ファーミリアも宵闇の指輪とルグナドの灯火を触る。

 

「行くぞ、ファーミリア、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>に迎えよう」

「はい!」

「<光闇の至帝>――」


 ファーミリアは衣装を薄着に変更した。

 白い肌が露わになると、同時に体から赤銅色に近い血の<血魔力>が噴出した。そのまま堰を切ったように溢れ出す滂沱の血が、ファーミリアを包み込み、天井から床まで大広間全体を染め上げていく。


 宵闇の指輪とルグナドの灯火が、俺とファーミリアの手の中で共鳴するように輝き始めた。

 二つのアイテムから放たれる光は、混ざり合うことなく、赤と漆黒と紺青の光線となって交差しながら、螺旋を描いていく。


 血の海の中で、ファーミリアの姿がぼやけ始めた。

 彼女の瞳から紺碧の光が溢れ出る――。

 彼女の肌に浮かぶ血管が、古代の文字のように浮き出ては消え神秘的な紋様を描き始めた。


続きは明日、HJノベルス様書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミック版発売中。

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