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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1774/1999

千七百七十三話 交差する縁、吸血神ルグナドとの邂逅

 吸血神ルグナド様は高い鼻の孔を少し窄め拡げる。

 と、<血魔力>に赤らめていた双眸が、蒼と金を基調とした神秘的な瞳へと変化した。


 荘厳さを帯びたその視線。

 見る者の魂を見透かすような鋭さと同時に底知れぬ深みを湛えている。

 スカートの形状を流麗に変化させながら、月光を浴びたように煌めく細長い生足にハイヒールのような黒い靴を身に着けた。

 その靴からは暁闇の霧が湧き上がり、不気味に蠢きながら赤く眼が光る蝙蝠や鴉の形へと変容していく。


 神の威厳と女性としての妖艶さを併せ持ち、畏怖と魅了をも、同時に呼び起こす。


「槍使い、お前が、光魔ルシヴァルの宗主、シュウヤだな」

「はい、吸血神ルグナド様ですね」

「さよう、我がルグナドだ」

「ンンン――」


 そこに黒豹(ロロ)が飛翔しながら寄って来た。

 更に、ビュシエにファーミリアとヴェロニカたちが「ルグナド様!」と叫びながらこちらに飛翔してくる。


 吸血神ルグナド様は、チラッと皆を見てから……。

 俺の足下で、エジプト座りを行って、見上げている黒豹(ロロ)を見て、微笑み、犬歯を見せ、


「ふっ、そなたが神獣ロロディーヌか」


 吸血神ルグナド様の声には微かな興味と古の力を持つ生き物に対する敬意が混じっていた。

 その瞳は<血魔力>の他に様々な魔力の光が内包している。

 神獣の真の姿を見通そうとするかのように、深く黒豹(ロロ)を注視していた。


「にゃ」


 黒豹(ロロ)は堂々とした佇まいのまま、右の前足を優雅に持ち上げて返事をした。

 その仕草には猫らしい気まぐれさと、神獣としての威厳が同居していた。


 肉球から橙と漆黒の炎の魔力が微かに漏れ出している。

 

 吸血神ルグナド様は、ジッと黒豹(ロロ)を観察し、魔力の流れを読み取るように視線を細めた。


 一瞬、両者の間に無言の対話が交わされたかのような緊張が走る。

 やがて吸血神ルグナド様は、微笑み、


「肉球から橙と漆黒の炎の魔力とは……古の混沌を秘めているようだな」


 指先で、己の細い顎を撫でながら


「まぁ良いだろう。槍使いの相棒として相応しい力だ」


 その言葉には、認めたという以上の、何か秘めた意味が込められているようだった。


 と、吸血神ルグナド様は、俺を見てからビュシエと断罪槍とファーミリアとシキとハビラとキュベラスに元神界騎士団の面々を見やる。

 神魔の女神バルドークと魔命の勾玉メンノアに魔皇メイジナ様を見て、


「……名の知らぬ女神たちに、魔命を司るメリアディの眷族でもある光魔ルシヴァルの眷族とはな……」


 と呟く。

 神魔の女神バルドークと魔皇メイジナは無言。

 メンノアは、額の第三の目に<血魔力>を集積させ、光魔ルシヴァルの眷族であることをアピール。

 銀と紫の長髪が背の上に靡いた。

 シキにハビラとアドリアンヌとファーミリアとルンスとホフマンは片膝の頭で地面を突いていた。

 ドマダイたちも一斉に片膝の頭で床を突け、頭を下げた。

 吸血神ルグナド様は、ビュシエをじっと見つめると、その瞳に一瞬、懐かしさと共に何かが煌めいて見えた。

 

 魂に刻まれた古の契約の痕を探るように視線を細め、


「……魔王、否、ビュシエ・エイヴィハン」


 その名を呼ぶ声には、かつての眷族への複雑な思いが混ざっている。

 ルグナド様の瞳に、ビュシエの姿に宿る。

 ビュシエの瞳に、俺の<血魔力>を感じたのか、俺を見てから溜め息を吐き、「だが、生きてこそ……」とボソッと呟いてから、すぐに表情を和らげ、


「……うむ。そして、ファーミリアにハビラ、また会えて嬉しいぞ」


 その言葉には、失ったものへの惜別と、新たな縁を認める受容が同居していた。


「「はい!」」

「ハッ」


 <筆頭従者長(選ばれし眷属)>のファーミリアと、宵闇の女王レブラと吸血神ルグナド様の共同眷族のハビラは声を揃えて返事をした。シキはハビラとルグナド様を交互に見ている。

 ビュシエは頭を下げつつも、背筋に、嘗ての魔王としての誇りを保っていると分かる。

 かつての主であり、今は別の道を歩む存在への敬意と覚悟を示していた。

 そして、俺への<筆頭従者長(選ばれし眷属)>としての忠誠と、自らの選択に後悔はないという意思表示が、その姿勢に表れている。


 吸血神ルグナド様はファーミリアたちを見て、


「……しかし、なぜ、ファーミリアたちに宵闇の女王レブラのシキも魔界にいる……槍使い、お前が、無理に連れ回しているのではないだろうな?」


 と、聞いてきた。

 すると、ファーミリアが、頭を上げ、


「ルグナド様――」


 すると、吸血神ルグナド様は、


「ファーミリア、お前には聞いていない。そこの槍使いに聞いている」


 怒ったように全身から<血魔力>を噴出させた。

 ファーミリアはすぐに頭を垂れて「ハッ」と返事をした。


 ファーミリアは女帝の雰囲気は辛うじて保っているが、やはり、吸血神ルグナド様のセラ側の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の一人なんだと実感。


 すると、魔猪王イドルペルクの手勢と戦っていた一人の女性眷属が瞬時に近づき、俺たちに魔剣を差し向け、


「――跪いていない者、無礼であろう、今すぐ跪け!」


 と叫んだ。

 吸血神ルグナド様は、


「ゲービス、下がれ、お前はイーヴァルたちと暴れていろ。どうやら、双月神の復活と消滅には、我の槍使いが起因するようだ。そして、ここには魔界の神々(セブドラホスト)の眷族たちが多いのだからな」


 ゲービスという名の女性眷族は、体をビクッと震わせ、俺を見ては目を見開く。そして、吸血神ルグナド様を見る。

 吸血神ルグナド様は、目だけで、『……はやく行け』と語るように視線を強め、細い顎先を横にズラす、綺麗な長いプラチナブロンドの髪が揺れた。


 ゲービスという名の女性眷族は、


「ハッ、失礼を、では――」


 と、胸元に手を当て、頭を下げてから、すぐに<血魔力>を体から発し、他の眷族たちが暴れている方角へ向かう。


 そこで、吸血神ルグナド様に向け……。

 当初予定の手土産が少ないが、予定通り、


「ファーミリアを連れている理由ですが、俺の、光魔ルシヴァルの眷族に成ることの許可を得ようと思いまして」


 と、素直に述べた。

 吸血神ルグナド様は眉間に皺を作り、睨み


「……わざわざか……」


 と、発言し、元<筆頭従者長(選ばれし眷属)>のビュシエを見ては、シキの部下のハビラに、ヴェロニカとメルとベネットが着ている〝血宝具カラマルトラ〟を見ては、フーの白い爪を確認し、跪いているホフマンにルンスとハビラたちを順繰りに見てから、俺を見て、ファーミリアを見て、


「……ファ、否、ファーミリア・ラヴァレ・ヴァルマスク・ルグナドはどうなのだ……」


 吸血神ルグナド様の声は、母なる大地から湧き上がる清泉のように慈愛を含みつつも、その底には絶対的な権威が宿っていた。場の空気が一瞬で凍りつき、すべての視線がファーミリアに注がれる。


 ファーミリアは両肩をビクッと動かし、ヴァルマスク家の女帝としての誇りと、眷族としての忠誠の狭間で僅かに揺れたように見えた。

 ファーミリアの指先が震え、紺碧の瞳には決意と恐れが交錯している。すると、顎を上げ、ファーミリアの顔には決意が浮かび、


「……は、はい、光魔ルシヴァルに入りたいです」


 かすかに震える声だが、単なる願望ではないだろう。

 長い思索と決断の末の告白に思えた。

 そして、ファーミリア・ラヴァレ・ヴァルマスク・ルグナドとしての女帝の威厳が宿っていた。


 吸血神ルグナド様は一瞬だけ無防備な驚きを露わにし、美しい瞳を見開いた。千年を楽に超える魔神の一柱の表情に、予想外の展開が生み出した純粋な衝撃が走ったと、理解。


 そして、俺を見て、


「……槍使い。お前は、我の因果律を……とことん舐めているようだな……」


 ヤヴァッ……怒らせたか。

 

「……その点に関しては肯定も否定もしません。ただ、今俺たちがこの場にいて、こうして会話をしている。それだけで説明ができませんか」

「……言うではないか。お前は、運命神アシュラーを超えていると言いたいのか?」

「とんでもない、有為の奥山今日越えて、そんな因縁果のような精神のままです」


 と、静かに語ると、吸血神ルグナド様は驚いたように瞳孔を拡げ縮めては、その双眸を揺らすと……間を空けてから、微笑む。


「……ふふ。しかと理解した。我らもまた有為に因縁生起か」

「はい、吸血神ルグナド様とも縁となり得る」


 <始祖古血闘術>を再度発動させ、わざと<血魔力>を外に出した。


 吸血神ルグナド様は、「ふっ」と笑みを見せてから、ファーミリアとビュシエとヴェロニカたちを優しげな表情で見つめてから、頷いた。そして、何か考えるように達観したような表情を浮かべ、


「……律義な……光を有してはいるが、我と似た<血魔力>に、眷族衆を持つだけはある。そして、神界どもと連むのは氣に入らないが……ファーミリアたちを、お前の眷族として迎えることを承知しよう」

「「「「おぉ」」」」


 皆が歓声を発した。

 吸血神ルグナド様は皆を見てから「分かっていると思うが、打算もあるのだぞ」と言いつつニコニコしながら片腕を泳がせる。


 皆は静かになった。

 吸血神ルグナド様に、


「ありがとうございます」

「「「ありがとうございます!」」」


 ファーミリアとルンスとホフマンとアルナードの返事に、吸血神ルグナド様は満足そうな表情を浮かべてから、俺を見て、


「……それで、我との縁だが……」


 様々なことを期待している視線と言葉だ。

 吸血神ルグナド様の<血魔力>の炎を有した美しい瞳に、


「……はい、南マハハイム十二樹海の地の古代狼族と話をし、ファーミリアたちへの樹海のハーヴェストの泉、キュルハ様とレブラ様の同盟の血碑と血の陰月の大碑の立ち入り許可をもらおうかと」


 と発言。

 同時に断罪槍を握る手に力を込めながら刻印が浮かぶ槍身を通して流れる古の魔力を感じつつ、


「または、そこの土地を譲り受けてもらいに交渉しようかと思います。両界を繋ぐ血脈の地として新たな秩序を築くために」


 吸血神ルグナド様は細い指で唇に触れながら、<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスと断罪槍を交互に見つめた。

 その瞳の奥では無数の思惑と千年の計画が渦巻いているように思える。

 やがて吸血神ルグナド様は片眉を上げ、わずかに顎を持ち上げ、


「……既に槍使いは南マハハイム十二樹海の地を得ていると考えていたが」


 その声には微かな驚きと、興味が混じっている。


「セラの古代狼族との話などが必要なのか? それとも、お前はより深い絆を結ぼうというのか」


 頷いて、断罪槍を上げ、


「はい、それも、また縁」

「……ハッ……なるほど」


 と、吸血神ルグナド様は楽しそうに笑って犬歯を見せる。

 美しい笑顔に魅了された。


「合縁奇縁……【大墳墓の血法院】とハイム海を繋ぐ血銀行に、我の血の祠を復活させ、<フォーラルの血道>を開通させた理由も、縁だな」

「はい、同時に闇神リヴォグラフとは、戦いになってます」


 吸血神ルグナド様は、途端に表情を険しくし、視線を眷族たちが悪神デサロビアの眷族衆と戦っているところを見てから、


「……それは我らもだ」

「はい、闇神リヴォグラフ相手には、共闘ができます。闇遊の姫魔鬼メファーラ様に悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様に魔命を司るメリアディ様に知記憶の王樹キュルハ様とは深い縁がありますので、戦いはできません。また宵闇の女王レブラ様とも縁を持とうと考えています」


 と発言し、神魔の女神バルドークと魔皇メイジナをチラッと見た。

 二人は頷く、吸血神ルグナド様も俺たちを見てから、


「闇神リヴォグラフ相手に対して、その点だけは素晴らしい。またキュルハとレブラは、周知の通り、同盟の仲だ」

「はい、そして、縁ですが、吸血神ルグナド様の南マハハイム十二樹海の地の地下にあるとされている傷場。魔界セブドラ側と惑星セラの両方の傷場の奪還に貢献できる縁でもあります」

「おぉ、それは願ってもないが、それほどの……」

「それも、また縁です」

「……ふふ、ははは、言うなァ? 槍使い……」

「えぇ、はい」


 吸血神ルグナド様は視線を強めて<闇透纏視>のような魔眼を発動しては、俺をジッと見つめてきた。


「……本当に、我に貸しを作る気概なのか?」

「はい」


 素直に告げると、「……」吸血神ルグナド様は、体を少し揺らす。頬から首筋にかけての皮膚が、斑に赤く染まっていく。


 その吸血神ルグナド様に、


「……ルグナド様、縁のついでに――」


 と、〝ルグナドの灯火〟をアイテムボックスから取り出した。


「それは〝ルグナドの灯火〟か、我の<血魔力>が切れている」

「はい、これにルグナド様の<血魔力>を再度込めて頂けたら嬉しいです」

「いいだろう、寄越せ」

「はい、近づいても?」

「無論だ」


 すぐに吸血神ルグナド様の息が聞こえるほどに近づいて、〝ルグナドの灯火〟を渡した。


 吸血神ルグナド様は、〝ルグナドの灯火〟を持ちつつファーミリアたちを見る。ルンスたちは、「……」沈黙。まだ緊張しているようだ。ルグナド様は頷いてから、


 〝ルグナドの灯火〟を細い指で優雅に掲げつつ、その瞳を半ば閉じた。

 唇がわずかに開く。と、その唇がかすかに震え、音波が、魔歌か? 不思議な魔歌が紡がれ、同時に真紅の魔力が指先から紡ぎ出ては、〝ルグナドの灯火〟へ流れ込んでいく。


 周囲の空気が凝固したように――。

 世界の音が消え去ったような静寂が訪れた。

 と、灯火の中心の芯が脈動を始め、生命を得たかのように伸長し太さを増していく。

 巨大な<血魔力>の芯へと成長を遂げると血の月のような深紅の輝きを放ちはじめた。


 やがて<血魔力>の炎が渦を巻きながら周囲に拡がると通常の火とは異なり、生命の根源を思わせる神秘的な赤銅色の光を放つ。炎は時折、蝙蝠や鴉などを形作っていた。


 吸血神の意思が宿ったことを示しているんだろう。


 吸血神ルグナド様は満足げに微笑むと、


「これで完成だ」


 神秘の力を宿した〝ルグナドの灯火〟を手渡してきた。

 ルグナド様の指が触れる。

 バチッと光を有した<血魔力>と闇が濃厚な<血魔力>が反撥して蒸発したが、ルグナド様は悲鳴をあげずに、深呼吸を繰り返すと、指先だけが淡く光を帯びた。驚きだが、吸血神ルグナド様が、光を受け入れたのか? 途端に、吸血神ルグナド様と俺の<血魔力>が共鳴し合うような微かな波動が走る。

 吸血神ルグナド様も「ぁ」とかすかな喘ぎを声を発した。


 が、すぐに誤魔化すように、


「……これでいいか?」


 と離れて


「はい、ありがとうございます」


 と、〝ルグナドの灯火〟を戦闘型デバイスのアイテムボックスの中に仕舞う。


「ルグナド様、恐王ノクターとの争いですが……」

「我の飛び地、類縁地を巡る争い、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>レカーが守る地だな」

「はい、その調停ができればと考えています」

「恐王ノクターは搦め手を使うが、光魔ルシヴァルの槍使い、シュウヤならば、可能なのだな?」

「可能と宣言したいところですが、挑戦はできる立場は得ています」

「よかろう、挑戦してみよ」

「はい」

「そして、そこで見ている闇のごろつき――」


 と、吸血神ルグナド様は右の上空に向け、膨大な<血魔力>を有した血槍を<投擲>した。


 直線状に血の軌跡が生まれながら宙空を貫く。

 と、そこに膨大な<暗黒魔力>の漆黒の闇魔力が拡がり、複数の眼球が生まれた。その中心に、白い眼帯に漆黒の甲冑を身に着けている魔界騎士と、禿げた頭に魔印が複数刻まれている爺がいた。胸元に金のペンダントをぶらさげて、黒いローブを着ていた。


「あれは闇神リヴォグラフの?」

「そうだろう……」

「……シュウヤ様、吸血神ルグナド様、あの二人は魔界騎士メイアールと、闇賢老バシトルターゼです」

「ふむ、お前は……【闇の教団ハデス】の魔人キュベラスか」


 吸血神ルグナド様はキュベラスを知っていた。

 キュベラスは緊張した面持ちで、


「え、はい……」


 と発言。

 吸血神ルグナド様は、


「ハッ、南マハハイムの闇社会はある程度は知っているが、シュウヤよ、キュベラスもまた、お前の縁、因果律の虜なのか?」


 と指摘すると、キュベラスは恥ずかしそうに頬を朱に染める。


「……そうです、彼女もまた眷族に迎え入れる予定です」

「ハッ、ファーミリアも受難よな、否、もうこれだけの数の眷族がいるのだからそれも覚悟の上か」


 ファーミリアはキュベラスたちを見てから、


「……はい」


 返事をしていた。

 すると、闇賢老バシトルターゼが禿げた頭の魔印を激しく脈動させながら両腕を天に掲げた。周囲の虚空がひび割れ、その裂け目から漆黒の闇の魔力が溢れ出す。


 <暗黒魔力>とは異なる闇の魔力か?

 爺は、


「ここで、あの槍使いとはな。覚悟してもらおうか。そして、吸血神、お前もだ、お前らの血を、ここで枯らしてくれようぞ」


 魔声は岩を砕く雷鳴のごとく響き渡る。

 魔界騎士メイアールも魔剣を抜く。

 眼帯の下や漆黒の甲冑の節々から<暗黒魔力>のオーラような魔力が溢れ出ては背後に<暗黒魔力>が広がる。その中に複数の赤い目が出現していく。

 闇賢老バシトルターゼが、


「覚悟せよ! 闇神リヴォグラフの御名において!」


 叫ぶ。長い白い髭が揺れていた。

 一瞬で形成された膨大な<暗黒魔力>は、夜の闇そのものを凝縮したような巨大な塊となって彼らの目前に現れた。その暗黒魔力の塊は禍々しい咆哮と共に降下してきた。空気を切り裂きながら落下してくる暗黒の塊か。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>をぶち当てるか?



続きは、明日、HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミック版、発売中。

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― 新着の感想 ―
ファーミリアの件は大丈夫で良かった。ルグナドに対して手札が有ったお陰でもあるな。
ルグナドとの邂逅は、一瞬不穏な空気が流れたけど、無事に終わって良かった。 ルグナドが直々に<血魔力>を補充した〝ルグナドの灯火〟には、最初の使用のみ特別な効果がありそうだし、自分に使っても良さそう。…
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