千七百二十五話 光の神の意思と聖女ペルソナ
淫魔の王女ディペリルが残したアイテムを戦闘型デバイスのアイテムボックスに仕舞う。
「「閣下ァ」」
光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスが低空を飛翔しながらやってきた。やや遅れて、「器、怪しい女たちと会話していたな!」と、沙・羅・貂とユイとグィヴァとアドゥムブラリがやってくる。
「おう、今の魔族女性は、淫魔の王女ディペリルと、その部下たちだ。インサークも美人さんだった。で、狂気の王シャキダオスの眷族兵の魔剣師たちは倒れたか」
「はい、まだ血肉に骨が散らばっていますが」
「我らに向かってくる人型の敵は、もういません」
「うん、動いている残骸はまだ少し残るかな、そして、狂気の王シャキダオスの魔剣師たちだけど、誰一人、逃げず立ち向かってきた」
「情報収集を兼ねた大部隊だった可能性もあるな」
それはあるだろうなと、アドゥムブラリの言葉に頷いた。
「ふむ、大眷属が倒れても退かず、妾たちを攻撃し続けていた」
「三人組と五人組で強さが異なりました」
「はい、魔剣士よりも高度な魔剣師たち、一人一人が熟練な剣士でした」
沙と羅と貂の言葉に頷くと、アドゥムブラリが、
「狂気の王シャキダオスも、巨大な転移魔法が使えるなら、バーヴァイ地方も気を付けたいところだ」
「そうだな、【メリアディの命魔逆塔】があるからこその巨大な転移魔法を用いた大隊規模の派遣だと思うが」
「ふむ、ヴァーミナ様もそれなりに魔力消費をしての大隊規模の移動だ。狂気の王シャキダオスも結構消費しているはずだぜ」
「あぁ」
「うん、バーヴァイ地方にいるソフィたちには、わたしもだけど、エヴァも血文字で連絡をしたから、魔裁縫の女神アメンディ様にも、ここの情報は伝わっている」
ユイの言葉に頷いた。
「狂気の王シャキダオスにはグィリーフィル地方での戦いもあります」
ゼメタスの言葉に、アドゥムブラリが、
「闇遊の姫魔鬼メファーラ様と争い合う魔神の一人が狂気の王シャキダオスだったな」
「あぁ」
グイヴァが、
「御使い様と魔皇メイジナ様が悪神ギュラゼルバンを倒したことで、協定も終わってますからね」
ヘルメが、
「なるほど、閣下を知っていた連中、狂気の王シャキダオスの大眷属バブルシャーに、眷族兵の魔剣師たちは、グィリーフィル地方の軍勢の一部ということでしょうか」
「そうかもだ、どちらにせよ、情報は共有されているはず」
「「はい」」
頷いた。
「協定の間はメファーラ様とシャキオダスは手を組んでいたようだが、もう組んでいない」
「うん、〝悪神打倒のエルレシア・シャキダオス・メファーラ協定〟だったけ」
ユイの言葉に頷く。
「そうだ、一時の同盟、もう、そのエルレシアとシャキダオスは闇遊の姫魔鬼メファーラの敵でもある」
「「はい」」
「うむ、闇遊の姫魔鬼メファーラは、【グィリーフィル地方】の地を巡るライバルの名として、その諸侯と魔神たちの名を述べていたな」
「はい、器様の記憶から、狂気の王シャキダオスは、その中で筆頭のようなニュアンスだったと受け取っています」
「はい〝知記憶の王樹の器〟で器様の記憶は得ています」
「はい、〝知記憶の王樹の器〟は便利です。器様、あとで、記憶の共有をお願いします」
「おう」
そこで、
「では、ヴァーミナ様とシャイサードと合流し、【メリアディの命魔逆塔】の地下に向かおうか」
「「はい」」
皆で魔塔の間を通りを戻る。
【メリアディの命魔逆塔】を目指した。
倒れた魔塔と聳え立つ魔塔、その間から逆三角形の【メリアディの命魔逆塔】の姿と、古の魔甲大亀グルガンヌと骨鰐魔神ベマドーラーの姿を確認できた。
仲間たちの魔素の多さを強く感じると、なんとも言えない安堵感を得るまま大通りに戻った。床のあちこちから綺麗な紅の閃光が発生している。
消えずに残る魔剣師たちの残骸は、紅の閃光を受けて蒸発するように消えていくのも残骸もあった。そして、結構無残、げ、まだ不気味に蠢いて再生しかかる血肉の塊もあるのか――その場所に向かい――。
魔槍杖バルドークを消し魔星槍フォルアッシュを右手に召喚。
蠢く血肉の塊へと、魔星槍フォルアッシュの穂先を差し向け、そのまま<牙衝>を繰り出し、ドッと、その血肉の塊と地面ごと穂先で潰すように倒した。
背後にいたゼメタスが、
「閣下、すみませぬ――」
「はい、我らもかなり後始末をしたのですが――」
アドモスにユイたちも、回復しかかる血と骨の肢体をすべて細断、蒼い炎となって粒子状に消えるまでを確認していた。
「氣にするな」
すべての処分には時間はかかりそうに思えたが、<闇透纏視>での見える範囲には、もう、不気味に動く血肉や骨はない。
憤怒のゼアの眷族やモンスター兵の残骸は、殆どが石像や岩石ばかり。
骨騎士や沸騎士の死骸もある。リスポーン可能な骨騎士たちとはいえ、限度を超えると倒れてしまう。か……が、光魔ルシヴァル側の骨騎士たちの骨の残骸は少ない。
改めて、光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスが率いる沸騎士たちの強さを感じつつ、大通りを進んだ。
アムシャビス族たちが嘗て利用していた看板に標識らしき物が散乱している。
と、ルマルディとアルルカンの把神書がこちらに飛来してくる。
その奥から沸騎士長ゼアガンヌとラシーヌが率いる数百人の沸騎士が駆けてくるのを見ながら【メリアディの命魔逆塔】の前に向かう。
「ンン、にゃおぉ~」
「にゃァ~」
「にゃォ~」
黒猫と銀灰猫と黄黒猫が尻尾を高く掲げながら駆けよってくる。
柔らかな毛並みが夜風に揺れ、その姿は戦場に咲いた可憐な花のよう。三匹の瞳には安堵の色が宿っているように感じた。
銀白狼と白黒猫に子鹿は、古の魔甲大亀グルガンヌの上かな。
黒猫と銀灰猫は肩に乗ってきた。
黄黒猫は右足に頭部を寄せてくる。
その黄黒猫を掬うように抱き寄せて抱っこした。
するとユイが、
「ルマルディたちは【メリアディの命魔逆塔】の周りを巡っていたから、その帰り、狂気の王シャキダオスの魔剣師たちはすべて倒してきたはずよ」
「了解した」
【メリアディの命魔逆塔】の出入り口の大通り前では、神界騎士の方々も集まっていた。
光神教徒ディスオルテが片手に持った環を掲げて、皆がお祈りをしている。中心が燃えている。
明櫂戦仙女ニナとシュアノと南華仙院の戦士団の何人かが、神界騎士団の方々と会話をしていた。
魔犀花流の一門は古の魔甲大亀グルガンヌの上か。
近くにはヴィーネにメイラとエラリエースたち悪夢の女神ヴァーミナ様とシャイサードたちもいた。ファーミリアたちは古の魔甲大亀グルガンヌの上にいる。
神界騎士の方々と悪夢の女神ヴァーミナ様たちが近くにいるが、また不思議。が、さすがに会話はしていないし、数名の神界騎士は睨み付けている。
そりゃそうだ。と納得するが、なんとも言えない緊張感だ。
ひやひやするが、神界騎士の方々は仲間の死体を燃やしているようだ。
燃やされているアーバーグードローブ・ブーと似たブーさんの死体は、少し興味深い。金属の知的生命体のような体が、蒼い粒子となって、ブー系の神界騎士が手に持つ光を帯びた環の中に吸い込まれていた。
相棒たちを連れて、ヴィーネとキサラとエヴァとレベッカの傍に近づいた。
「ご主人様!」
「にゃ~」
肩の黒猫が挨拶。
銀灰猫と黄黒猫は、「「ンンン――」」と喉声を響かせながら、ヴィーネたちの足下に自らの頭を寄せていく。
「シュウヤ様、奥のほうに向かわれていましたが」
「ん、お帰り」
「おう、ただいまだ、そこの通りを抜けた先で、淫魔の王女ディペリルと会った。同盟の提案をされた」
「ちょ」
「なんと、危険な相手だと思いますが、淫魔の王女ディペリルにも敵が多いようですね」
「……」
「淫魔の王女ディペリルにキスされてないでしょうね……」
レベッカの声には不安と嫉妬が混ざり合う。
そのブルースカイの瞳には切なさが宿る。
「あの魔族の誘惑は、神界の戦士すら堕としてきたと聞くわ」
「はは、ないから安心しろ」
「良かった……」
レベッカは安心したのか、黒猫を抱っこして、俺を見てくる。
「その淫魔の王女ディペリルから、友好の証しに、〝蒼赤ノ淫縄〟と〝紫霊玉ノ手鏡〟をもらった。〝蒼赤ノ淫縄〟は拘束用アイテムで、〝紫霊玉ノ手鏡〟は、淫魔の王女ディペリルと連絡が取れるアイテムのようだ」
「はい、追跡されるのでは?」
「されるかもな……」
「ご主人様……」
「危険ですが、何か考えががあるのですね」
ヴィーネとキサラの言葉に頷いた。
「縄の名前からして、怪しいすぎるんだけど、ね、ロロちゃん」
「ンン、にゃ?」
と、レベッカは黒猫の頭部にキスをしていた。
前足をにぎにぎされているが、黒猫は好きなようにさせている。
「あぁ、まぁ、あの状況で、俺を拘束してもな?」
「いつ何時、自動的にシュウヤを襲うための道具かもしれないのに!」
「ンン、にゃ~」
レベッカの声に反応したように相棒はレベッカから離れて、エヴァの足下に移動していく。
「アイテムボックスに保管したままだから、大丈夫」
エヴァは金属の足に黒猫が寄せても、ジッと、俺たちを見ている。アドゥムブラリはヴァーミナ様とシャイサードに会釈していた。
レベッカは、ぷんすか。と頬を少し膨らませているが、可愛い。
「淫魔の王女ディペリルに対しての懸念は分かるが、とりあえずは保留だ。淫魔の王女ディペリルは、王魔デンレガ、魔蛾王ゼバル、闇神アスタロト、魔界王子ライラン、偽善魔王ギンセルと争っている。そして、闇神アスタロトと魔蛾王ゼバルと偽善魔王ギンセルは、連合して、淫魔の王女ディペリルを攻めているようだな。その淫魔の王女ディペリルは、『……闇神アスタロトと魔蛾王ゼバルと手を組んだ偽善魔王ギンセルに奪われ、妾の領域は一気に縮小を余儀なくされた。更に魔蛾王ゼバルは妾が狙っていた傷場を得て、かなり強く、セラに進出している……』と、語っていた。偽善魔王ギンセルに関しては知らないが、闇神アスタロトと魔蛾王ゼバルは俺たちの脅威になるかもしれないと踏んでいる」
「シュヘリアとデルハウトが、嘗て仕えていた魔蛾王ゼバルですか、傷場を有している諸侯、神格を得ていると思いますから、既に魔神の一角、強敵ですね」
「はい、魔蛾王ゼバルは、当時のシュヘリアとデルハウトたちに、南マハハイム地方とヴァルマスク家の調査を命じていた。そのことから、魔蛾王ゼバルが、サイデイル、ペルネーテ、ヘカトレイル、セナアプアの各都市、オセべリア王国の王都ハルフォニアに眷族を送り、密かに地盤を固めている可能性はあります。また、惑星セラの地下は広大で、その地下勢力も魔界セブドラ以上に混沌を極めている。それらの勢力との連携があれば、地上に住む味方の脅威となります」
キサラとヴィーネの言葉に「あぁ」と返事をして頷く。
エヴァも
「ん、たしかに、地底神や旧神もいるから、キッシュとナロミヴァスたちだけでの対処は難しくなる」
頷いた。
「もし、魔蛾王ゼバルたちと、魔界側、もしくは、セラ側の傷場で、争いとなったら光魔騎士シュヘリアとデルハウトを、サイデイルの将軍から魔界セブドラに呼び込みますか」
「そうなるか、魔蛾王ゼバルと対峙したくないと言うかもだが」
「「……」」
皆、暫し沈黙。
すると、悪夢の女神ヴァーミナ様が、
「……グリム谷の領主の闇神アスタロトか、妾と急に不可侵条約を結んだ理由か。槍使い、悪いが、闇神アスタロトとは、現時点では、妾は争うことはできない。が、妾の子をほしがる闇神アスタロト故に、裏切る用意はある、本格的に争いとなったら、妾は槍使い側に付くからな……」
間を空けて、
「ただし、淫魔の王女ディペリルは氣に喰わんぞ」
ヴァーミナ様の瞳が鋭く光る。
「あやつのサキュバス能力は魔界随一。その誘惑の魔法は、古の魔神の血すら狂わせるほど。槍使いよ、気を付けるのだ」
と、発言してくれた。
「「「はい」」」
ヴィーネたちが激しく同意するように数回頷いている。
レベッカは俺の右手を握り、ぎゅっとしてきた。
「淫魔の王女ディペリルとインサークは美人さんだが、さすがに大丈夫だ。問題は、魔蛾王ゼバルのほうだろう。だが、それも傷場から、惑星セラの南マハハイム地方に侵略してくる兆しがあればの話」
「はい」
「……」
ヴィーネとキサラは頷く。ユイは、
「……可能性は低いとも言えないのが、なんとも、シュウヤが美人さんと誤魔化しているけど、保留と語る理由も分かるわ、実際に、デルハウトとシュヘリアたちを南マハハイム地方に送っていたからこその十二樹海の混沌の夜の争いに乱入してきたわけだし、そして、十二樹海の地下には、ヴァルマスク大街に繋がる傷場がある、吸血神ルグナド側が失った重要な場所でもある」
「それは……うん」
と、レベッカは俺の手を離して思考するようにエヴァの隣に移動した。
「あぁ」
「ん、淫魔の王女ディペリルはシュウヤを狙ってるけど、魔蛾王ゼバルも心配」
皆も頷いた。
「そうですね、淫魔の王女ディペリルは危険は危険ですが、その地域の友軍になりえる」
「うん、淫魔の王女ディペリルと敵対し、一緒くたの敵になって、傷場から南マハハイム地方に、魔族兵士が大量に押し寄せるなんて展開は勘弁だから」
「「……」」
「ん、ユイ、それは怖い予想……」
エヴァの指摘を受けたユイは頬を指で掻いて「あ、うん」と発言。
そこで、「では、【メリアディの命魔逆塔】の地下層、アムシャビス族の秘密研究所に戻ろうか、あ、その前に神界騎士に挨拶してくる――」
「あ、シュウヤ様、私が傍に」
「あ……」
メイラさんと神界騎士の三つ目の光神教徒ディスオルテに近づいた。
エラリエースはさすがに遠慮している。エヴァの背後に隠れていた。
光神教徒ディスオルテは、俺を見て、神界騎士の挨拶を行う。
背後にいる神界騎士の方々も一斉に俺に対して、ザッと音を響かせながら、挨拶をしてくれた。
俺もラ・ケラーダの挨拶を返す。
そのディスオルテは、三つの眼を輝かせながら、
「シュウヤ殿……貴方が倒した憤怒のゼアは、古より魔神として名高き存在。その討伐は、光の神々の意思とも言えましょう。我々光神教徒は、この勝利を祝福いたします」
と発言してくれた。
「はい、ありがとうございます。しかし……」
そこで、メイラとエラリエースを見てから、
「メイラとエラリエースのことでしたら、氣にせず。あの十層地獄の王トトグディウス王に傷を与え、裏切り者のグリダマを討ち取ったのも見ています……そして、シュウヤ殿が、神秘の……」
と、発言。
ディスオルテさんは、三つの瞳を揺らす。
頷いて、武器を堕天の十字架に変化させた。
途端に、堕天の十字架から血継武装魔霊ペルソナが現れる。
「……ペルソナなのか」
血継武装魔霊ペルソナの女性は頷く。その仕草には、かつての日々を想い出させるような懐かしさが滲んでいた。徐々に、淡い紅の光が周囲に漂い、空気そのものが神聖な雰囲気を帯びていく。
ディスオルテは震える声で語りかける。三つの瞳から止めどなく涙が溢れ落ちる。
「……ペルソナ、俺たちを許してくれるか? あの日、俺たちは……」
最後まで言葉を紡げず、ディスオルテの声が途切れる。
魂の深い傷が癒えぬままに残っていることを物語っているかのようだった。
血継武装魔霊ペルソナは慈愛に満ちた微笑みを浮かべるとディスオルテに近づいた。
<血魔力>の粒子となって輝きながらディスオルテの周りをゆっくりと一周する。
その軌跡は赦しの光の輪を描くかのようだ。再び女性の姿を模ったペルソナの表情には深い慈しみの色が宿っていた。堕天の十字架から眩い光が溢れ出す。その光は月光より優しく、太陽より温かい。胸元の<光の授印>からも神聖な光が漏れ出て、血継武装魔霊ペルソナへと注がれていく。
その瞬間、奇跡が起きた。
光の天使のような姿が血継武装魔霊ペルソナと重なり合い、<血魔力>の血の色から、現実の美しい女性の姿へと変化していく。その姿は神々の恩寵を受けた聖女そのものか。周囲の空気が一層神聖さを増し、立ち会う者たちの魂を清めていくかのようだった。
「ディスオルテ、氣に止まないで」
その声音には慈愛が満ちていた。
「悲しみに暮れる兄弟姉妹たち、主はあなたの涙を拭い、心を癒してくださる……」
光が強まり、その姿は一層神々しさを増す。
「私はこの御方に仕えて、<魔界諸行>を手伝い、光の道を歩きます」
ペルソナの声は清らかな鐘の音のように響き渡ると、眩い光に包まれ、ペルソナは<血魔力>の姿に戻る。無数の光の粒子となって、堕天の十字架の中へと静かに帰還していった。
その様は昇天する天使のようで、見守る者たちの心を浄化していくかのようだった。
堕天の十字架からは清らかな光が溢れ続け、その輝きは希望の象徴のように戦場を照らしていく。
ディスオルテは、
「……あぁ……〝光り輝く現象〟……そう、なのだな、神秘の十字架の、光がシュウヤ殿にも溢れている……ありがとう、シュウヤ殿は……なんという……」
と、膝から崩れて、嗚咽する声が漏れる。
神界騎士の方々もさすがにざわついた。
堕天の十字架を地面に刺して、
「……大丈夫ですか」
と、手を差し伸べた。
そのディスオルテは、俺の手を掴む。
立ち上がってもらった。
「……はい、シュウヤ殿……その<神印>は本物なのですな」
ディスオルテの胸元も光を帯びている。
「<光の授印>は、はい」
「……納得しましたぞ」
「納得ですか?」
「はい、魔界の魔命を司るメリアディが支配する紅の空を貫いて、光の帳が起き、神秘の光雨が降り注いだ……<光神の導き>の光神ルロディス様からの〝光あるとろこに闇ありし、あの<光闇の奔流>を持ちし光魔ルシヴァルの正義を信じよ〟と聞こえてきました。それは、〝魔神殺しの蒼き連柱〟以上の奇跡……この光神教徒ディスオルテは、一生忘れることはありません……」
「……はい」
そこで、神界騎士の方々から拍手が起きた。
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