千七百二十四話 淫魔の王女ディペリルの提案
『カカカッ、主の怒りと慈悲は、風と陽の雨の如く……』
戦場に漂う硝煙の中、魔槍杖バルドークから不思議な声が響き渡る。
その声音は、これまでの嗤いとは異なり、より深い共鳴を帯びていた。<脳脊魔速>の効果が切れ、世界の動きが通常の速度に戻る中、夜空から無数の魔刃と黄金に輝く円盤状の魔刃が降り注ぐように飛来してきた。紅光と〝魔神殺しの蒼き連柱〟の影響で、魔刃の軌跡が、虚空に不吉な光の帯を描いていく。
それらを見ながら左に右へと移動し、魔刃と黄の円盤状の魔刃を避けた。
神魔の女神が繰り出した蒼い閃光によって、空の魔剣師たちの多くが倒れたが、空から墜落、降下してくる魔剣師たちはまだまだ多い。
が、さすがに消費した。
――<闘気玄装>と<滔天神働術>と<魔闘術の仙極>を維持し、他の<魔闘術>系統は解除した。
「ヘルメ、ナイスな氷の巨大な壁だった、そして、狂気の王シャキダオスの眷族兵の魔剣師たちを掃討しようか」
常闇の水精霊ヘルメは「はい」と頷いてから、右の大通り沿いと上空から降下している魔剣師たちを見て、
「狂気の王シャキダオスの大眷属が用意した転移魔法陣は消えましたし、魔剣師たちは味方に任せて、わたしたちで、通りの奥の魔塔にいるだろう隠れた存在に接触を試みますか?」
「そうだな、では、魔剣師たちの数を減らしながら隠れている連中に近づこう、逃げたら無視し、魔剣師たちを殲滅しようか」
「はい!」
ヘルメは返事をしながら【メリアディの命魔逆塔】天辺の端に移動し、そこから氷槍を魔剣師たちへと繰り出していく。そこで、ヴァーミナ様とシャイサードを見て、
「ヴァーミナ様とシャイサード、まだ魔剣師たちと、隠れている連中もいるようですが、一先ずは勝利です、援軍、ありがとうございました」
「こちらこそだ。シュウヤたちもよう戦った」
「はい」
「シュウヤ殿の戦いはとにかく凄かった。そして、皆さんも見事に戦った。我らとの同盟は、更に強固な物となったと確信があります」
シャイサードが真面目に語るか、頷いた。
悪夢の女神ヴァーミナ様たちは、光魔騎士ヴィナトロスとなった姉が俺の眷族になったこともあるとは思うが、悪神デサロビアとの戦いもあるというのに、俺たち、魔命を司るメリアディ様側に参加してくれた。
この礼には礼を返したい想いだ。
ラ・ケラーダの仕種を取ってから、
「……この後ですが、復活したメリディア様はじかに礼が言いたいと仰っていました。会っていただけますか?」
「無論だ」
「では、魔剣師たちを倒した後に、地下のアムシャビス族の秘密研究所にまで案内致します」
「うむ」
「では、魔剣師たちと、大通りの奥、魔塔が並ぶ奥にいる見ている存在たちに接触をしてから、また戻ってきます」
「ふむ、また戦いとなれば、すぐに向かおう、妾たちは周囲を見て、狂気の王シャキダオスか、他の者たちが【メリアディの命魔逆塔】に近づいていないか、見ておく」
「はい、お願いいたします」
「では、また後での! 愛しき槍使い、ふふふ――」
ヴァーミナ様とシャイサードは身を翻して、反対側のほうに向かう。
そこでヘルメとアイコンタクト――。
ヘルメは頷いた。
光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスに沙・羅・貂たちも躍動しているからな。
右の通りの空では、ユイとグィヴァとヴィーネとルマルディの姿を見ながら<武行氣>を強めた。足下と背から魔力が噴出する。
「閣下、通り側の魔塔付近にも魔剣師はいますね」
「おう、絡んできたら、対処しよう」
「はい」
ヘルメと共に【メリアディの命魔逆塔】の頂上から離れた。
<導想魔手>を発動し雷式ラ・ドオラを握った。
<鬼想魔手>を発動し白蛇竜小神ゲン様の短槍を握らせた。
左手に神槍ガンジスを召喚。
魔槍杖バルドークの柄を握る右手の<握吸>を強める。
柄の表面が少し煌めいた。
そのまま降下中の近い魔剣師たちに近づくと、
「あ、黒髪の二眼二腕の槍使い!」
「お前が、あの!」
「悪神ギュラゼルバンを倒したとされる!」
と、叫びながら魔剣を振るってきた。
ヘルメが「どこから閣下の情報を!」と言いながら、前に出ると、<滄溟一如ノ手>を繰り出した。
滄溟一如ノ手の蒼くて綺麗な複数の腕と手で、二人の魔剣師の魔剣を往なし、魔剣師たちの体を掴みながら、その体を「「うぎゃ」」と、へし折っていた。
俺は宙空から一人の魔剣師に近づく。
魔剣師は「そこだ!」と魔剣を突き出してきた。
<導想魔手>が持つ雷式ラ・ドオラで、突き出された魔剣を真上に弾く――。
速やかに右手の魔槍杖バルドークを突き出す<魔仙萼穿>を繰り出した。
魔犀花流の<刺突>と呼ぶべき紅矛と紅斧刃が魔剣師の胸を「げっ」と深く穿った。
魔槍杖バルドークを消し、右手に再出現。
続けざまに<血魔力>に溢れた神槍ガンジスで<血穿・炎狼牙>を繰り出す。
左腕ごと槍になったように直進した神槍ガンジスは血の炎狼の頭部が重なっていた。その双月刃の穂先が胸を失った魔剣師の下腹部を豪快に捉えぶち破った。
四方に魔剣師の手足だった物が散りながら血の炎に呑まれて消える。
神槍ガンジスの穂先から血の炎狼が飛び出た。
<血穿・炎狼牙>の血の炎狼は宙空を駆けながら魔剣師たちを次々に喰らっていく。
<闇透纏視>を発動し、<霊魔・開目>も発動。
<闇透纏視>と<霊魔・開目>が重なり合う。
視界の端々まで魔力の機微が浮かび上がった。
そのまま宙空を直進。
通りの向こう側に聳え立つ魔塔群に近づくにつれ、周囲の空気が重く沈んでいく。
幾つもの魔塔が紅色の光を放ち、その光は夜空に向かって無言の警告を発しているかのよう。魔塔の尖塔は闇を突き刺すように天を指し、その陰影は地上に不気味な影絵を描いていた。魔塔を越えた先の路地、あるいは魔塔の内部から、魔剣師たちとは質の異なる、より濃密な魔素の気配が複数漂ってきている。その存在感は、深い闇の中に潜む捕食者の息遣いのように感じられた。
そして、まだわずかに残る硝子の窓硝子だけを見れば都会のビルだが、造形はまったく異なる――。
そこに左の宙空から、
「――お前が、バブルシャー様を!」
「――狂気の王シャキダオス様に歯向かう者には」
「「くらえや!」」
「しねぇ――」
と、向かって来た紫の紋様を発している五人の魔剣師たち。
身を捻り、<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動。
宙空から魔剣師たちに加速し、間合いを詰めた。
手前の魔剣師は、「こなくそが!」と二つの魔剣を突き出す。
その、魔剣を左手が持つ神槍ガンジスを掲げ、穂先で斜め横に払う。
同時に<導想魔手>が持つ雷式ラ・ドオラで<血刃翔刹穿>を繰り出し、<鬼想魔手>が握る白蛇竜小神ゲン様の短槍を<投擲>――。
やや遅れて、右手の魔槍杖バルドークで、<闇雷・一穿>を繰り出した。
雷式ラ・ドオラの<血刃翔刹穿>が魔剣師の上半身を穿つ。
穂先の杭刃から無数の血の礫が後方の魔剣師たちに降りかかった。
「「「げぇ」」」
「うげあ――」
<投擲>した白蛇竜小神様ゲン様が目の前の魔剣師の頭部を穿ち、背後の一人の魔剣師の腹を「うげあ――」豪快にぶち抜いた。
魔槍杖バルドークの<闇雷・一穿>が、残りの魔剣師の頭部を貫く。
※闇雷・一穿※
※闇雷槍武術流技術系統:上位突き※上位系統は亜種を含めて数知れず※
※風槍流、王槍流、豪槍流、我流問わず、一槍に通じた槍、棍、長柄武器の高度な技術及び、魔王八卿流、魔公八卿流、魔界八槍卿などの技術が必須※
※雷属性と闇属性が必須※
※闇神アーディンが愛用するスキル※
※闇神アーディンから直に学び、このスキルを獲得し生きている者は他にいない※
※闇雷精霊グィヴァと連動する※
※迅速に標的を闇雷槍武術流技術系統の一撃で穿つ※
白蛇竜小神様ゲン様を<握吸>で<鬼想魔手>に引き寄せ握る。
背後から、魔素を察知。
即座に複数の円盤状の魔刃と把握しつつ<仙魔・龍水移>を実行――。
転移し、背後の魔剣師たちの背後を取ったところで、《氷命体鋼》を発動し、《氷竜列》――。
前方の気温が急激に下がる。
大気中の水分が複数の氷龍の頭部へと凝固し結晶と化しつつ巨大な氷竜へと成長し、遠雷のような咆哮を轟かせると蒼白い氷の刃を体から生み出し直進していく。
《氷竜列》の巨大な氷竜と、二眼二腕の魔族が大半の魔剣師たちは衝突すると凍り付き散り、ダイヤモンドダストのように散った。
大通りの一面が雪化粧と成った。
《氷命体鋼》を解除し、
振り返りながら周囲を見ては、ヘルメがいる場所へと低空飛翔で向かった。ヘルメは、魔塔の間で二人の魔剣師をレジーの魔槍を魔改造した腕槍で払い、至近距離で《氷槍》を繰り出し、二人の魔剣師を串刺しにしては、氷剣の腕で、細断にして倒していた。そのヘルメが、
「閣下、この奥の先からです」
「あぁ」
ヘルメと共に魔塔の間を通り進む。
すると、魔塔の間から、深淵が息を吐くように不自然な影が立ち上る。
大気そのものが歪むように見え、闇の魔力が渦を巻きながら一点に集中し始めた。その渦の中心から、あたかも異界の門が開かれたかのように人型の輪郭が浮かび上がってくる。魔塔の壁面を照らす紅の光が、その出現を幻想的に演出し、影絵芝居のような幽玄な雰囲気を醸し出していた。
濃密な闇の渦から姿を現したのは、紅玉のような瞳に妖艶な魅力を湛えた淫魔の王女ディペリル。
漆黒の長髪は夜風に優雅に靡き、その体からは高貴な魔力が溢れ出ていた。纏う衣装の一枚一枚が闇そのものを織り上げたかのように深い漆黒を帯び、その裾には魔界の紋様が金糸で丹念に刺繍されている。
その佇まいからは古の魔神の血を引く者としての威厳が漂い、艶めかしさの中にも凄まじい魔力の波動を秘めていた。
そんなディペリルの隣には、月光を纏ったかのように金の髪を煌めかせる魔族の美女が控えている。
更にその周囲には、漆黒の鎧に身を包んだ二人の魔界騎士が凛として立ち、地を這うように四肢で蹲る蒼炎の鎖付き首輪を嵌めた四腕の魔族が、獰猛な野獣のような気配を放っていた。
一人の魔界騎士の手には蒼白い炎を発した魔槍を持つ。
青炎槍カラカンに似ている。
魔塔の影から漏れる紅の魔力が、彼らの存在を幻想的に照らし出している。
淫魔の王女ディペリルの隣にいる美しい金髪の魔族は戦場では見かけなかったが、【メリアディの命魔逆塔】に近づいた俺たちを遠くから見ていた片方で間違いない。
淫魔の王女ディペリルは、拍手し始めると、その金髪の魔族も拍手を始めた。
「ふふ――」
淫魔の王女ディペリルの口元に浮かぶ微笑みには、どこか余裕めいたものが滲んでいた。
「槍使い、一時の戦いを制したようですね」
その声音には、蜜のような甘さと刃物のような鋭さが混ざり合っていた。
「貴方は、淫魔の王女ディペリルですか?」
「そうよ」
「……」
もう一人の金髪の女性魔族も喋らず。
胸元のブラジャー鎧がかなり目立つ。
ダークエルフのような肌もかなり美しい。
腹には怪しい魔印が刻まれている。
「あら、インサークがお好みなの?」
淫魔の王女ディペリルの声には艶めかしい魅惑が滲む。
「失礼しました。お二人とも美人ですからね」
と返すと、魔界騎士と目される二人が一斉に得物を構え、その刃先から禍々しい魔力が放たれる。だが、淫魔の王女ディペリルは優雅に細い指を上げ、
「ヴェルモットとリサマベル、止しなさい」
「「ハッ」」
二人は躊躇なく武器を下げた。その動きには絶対的な忠誠が垣間見える。
「ふふ、お上手ですわね、槍使い」
その微笑みには、何かを企んでいるような色が混ざっている。
「どうも、それで、担当直入に聞きますが、この交渉の目的は?」
「氣が早いわねぇ、勿論、友好的な話し合いよ♪」
その声音に合わせるように、ディペリルの指先から蒼い炎が優雅に生まれる。
それが生き物のように蠢きながら二人の間の空間に広がっていく。
「閣下……」
ヘルメが警戒の色を滲ませる。しかし、その蒼炎は次第に形を変え、どこかの地図の輪郭を描き始めた。
「あぁ、大丈夫だ」
「ふふ、ご安心を。この通り、地図。正確には<淫蒼想・大魔地図>です。【魔命を司るメリアディの地】と【グルガンヌ大亀亀裂地帯】に隣接しているわずかながらに勝ち得た、妾の領地ですわ」
蒼炎で描かれた地図は実際の地形を映し出す鏡のように精緻な輪郭を持っている。
「へぇ、で?」
軽く受け流すような口調で返すと、淫魔の王女ディペリルの紅玉の瞳が鋭く光った。その視線には古の魔神の血を引く者としての威圧が滲んでいる。傍らのインサークからは金色の魔力が噴出し、その圧迫感は空気を震わせるほどだった。
「……ふふ、では詳しく説明させていただきましょうか」
淫魔の王女ディペリルは蒼炎の地図に指を翳し、その指先が描く軌跡に従って地形が浮かび上がっていく。
「【グルガンヌ大亀亀裂地帯】から流れる【大河ハレゼレル】は、ご覧の通り、妾の領域まで悠々と水を湛えている。更に【ゼンの街道】、【魔将デグロの砦】、【ヴァルトルア烈火闘技場】、そして【トモラギの荒涼地】まで……」
地図上の各拠点が蒼い光を放ち、その輝きは次第に深い紫へと変化していく。
「王魔デンレガ、魔蛾王ゼバル、闇神アスタロト、魔界王子ライラン……皆が欲望の爪を立てる係争地よ」
その声音には、かすかな憤りが混ざっていた。
「そして、【魔城塞ギンセル】――」
ディペリルの紅玉の瞳が一瞬だけ険しさを帯びる。
「闇神アスタロトと魔蛾王ゼバルと手を組んだ偽善魔王ギンセルに奪われ、妾の領域は一気に縮小を余儀なくされた。更に魔蛾王ゼバルは妾が狙っていた傷場を得て、かなり強く、セラに進出している、でも……」
艶めかしい微笑みが浮かぶ。
「この度の【グルガンヌ大亀亀裂地帯】と【魔命を司るメリアディの地】の騒乱こそが、妾にとって千載一遇の好機。だからこそ、この場に立っているというわけですの」
「なるほど、それで俺たちと交渉を? 魔命を司るメリアディ様や、悪夢の女神ヴァーミナ様が近くにいますよ」
「ふふ、だからこそよ」
ディペリルは蒼炎の地図をゆっくりと消し、その仕草には計算された優雅さが滲んでいた。
「メリディア様の復活は、予想外でしたけれど……」
「復活したとどうして?」
「神座を得てなくとも、【メリアディの命魔逆塔】が可動しましたわ」
「あぁ、なるほど」
「はい、だから、娘の魔命を司るメリアディは健在なことも、色々と好都合。魔界の力関係が大きく動く時こそ、新たな同盟が生まれる機会なのですもの」
インサークが一歩前に出ようとするが、ディペリルは軽く手を上げて制す。
「槍使いさん、貴方には特に興味があるの。メリディア様の力を借りて二人の魔神を倒し、神座まで得た存在。そんな貴方と手を組めれば……」
「俺個人と?」
「ええ。もちろん、貴方の眷族たちとも。メリディア様やヴァーミナ様とも、ゆくゆくは良好な関係を築きたいとは思っているけれど……」
艶めかしい微笑みの奥に、底知れない野心が垣間見える。
「まずは貴方に、とある提案を――」
ディペリルは懐から蒼赤に燃えたロープと紫の魔力を発している手鏡を取り出した。
「友好の証しに、〝蒼赤ノ淫縄〟と〝紫霊玉ノ手鏡〟これを差し上げます」
「どんな効果が?」
「縄は、どのような生物、骨のモンスターであろうとも、一定の間、地面との間に蒼赤ノ淫を結ぶことになり、拘束が可能になりますの、しかも、魔力を奪う効果もある。鏡のほうは、わたしが持つ、〝紫霊玉ノ大手鏡〟と魔界セブドラ内であれば、連絡が取れる」
「へぇ」
「受け取ってくだされば、嬉しいですわ。そして、あなた個人と同盟を結びたいということです」
「なるほど……同盟か……メリディア様の配下でも、個人の動きはそれなりに自由だからな」
インサークが緊張したように身を強張らせる中、ディペリルは艶めかしい笑みを浮かべた。
「ええ、妾もそこを見込んでいるの。魔命を司るメリアディ側の一員でありながら、強い個を持つ貴方だからこそ」
「で、具体的には?」
「傷場の奪い合いに、妾と共に参加しませんか? 魔蛾王ゼバルたちが占拠している傷場、あれは本来、妾のものだったのですもの」
ディペリルは指先を翳し、蒼炎で新たな地図を描き出す。そこには複数の傷場の位置が浮かび上がっていた。
「こことここ、それに……ここ。順番に攻略していけば、【魔城塞ギンセル】の奪還も夢ではありませんわ」
「傷場と魔城の奪還か。随分と大きな話だな」
「ふふ、貴方なら可能だと思うの。そして、戦利品は山分けにしましょう。特に魔城近くにある傷場は、眷族たちの修行場としても申し分ない」
「いい話に聞こえるが……」
「閣下」
ヘルメの警戒の声が響く。同時に、遠くから漆黒と紅蓮の炎が立ち上る。光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスの気配だった。
「時間が来たようね」
ディペリルは〝蒼赤ノ淫縄〟と〝紫霊玉ノ手鏡〟を宙に放り投げる。
「妾からの提案、じっくり考えてちょうだい。連絡は〝紫霊玉ノ手鏡〟で」
言い終えるや否や、ディペリルの体が闇に溶けていく。
その紅玉の瞳だけが最後まで残り、ゆっくりと消えていった。インサークたちも同様に、闇の中へと姿を消していく。
続きは明日、HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
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