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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1722/1998

千七百二十一話 魔命の塔頂 、狂王の眷族の降臨

 【魔命を司るメリアディの地】の空を行き交う紅の閃光が、〝魔神殺しの蒼き連柱〟の余韻と共に虚空を震わせている。その輝きは、先ほどの戦いの証であり、同時に新たな戦端の幕開けを告げているようだ。


 黒と白の布を纏った魔剣師たちが群れをなして空を埋め尽くしていく。

 彼らの兜に付いた角の装飾が禍々しい輝きを放ち、顔を覆う薄布の下からは狂気の王シャキダオスへの信仰を示す紫の紋様が浮かび上がっている。その数は数千を下らない。それは闇を織り込んだパズルのように、魔界の空間を埋め尽くしていく。

 

 と、【メリアディの命魔逆塔】の天辺付近で、魔竜ハドベルトの姿を捉えた。魔剣師たちの攻撃を受けながら、炎を吐いて応戦しているが見えた。

 その様子から、既に相当の消耗を強いられているのが見て取れる。血文字で、


『アドゥムブラリ、そこからこちらの状況は見えていると思うが、メリディア様に、<座標転移>は戦っている俺たちだけを選んで、敵を無視して<座標転移>が可能なのか、聞いてくれ』


 と、血文字を送りながら、魔剣師たちに《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を繰り出した。


 《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を詠唱した瞬間、周囲の温度が低下し、空気中の水分が結晶となって舞い散る。蒼白い光を放つ氷の矢は生きた蛇のように蠢きながら標的へと突進していく。


 飛翔している魔剣師たちは四腕や二腕に持つ魔剣を振るい、その魔剣や魔剣に関係なく、黄が基調の魔刃を繰り出してくる。


 ゼメタスとアドモスが、最初に結構な数を屠ったと思うが、魔剣師の数千以上はいる――。

 やはり、更なる高高度に魔剣師たちを召喚しているような大本がいるか。


 【メリアディの命魔逆塔】の天辺付近では、悪夢の女神ヴァーミナ様の気配もある。


『<座標転移>だが、それは無理だそうだ。敵ごと転移しかけない。魔剣師たち、狂気の王シャキダオスの眷族たちの掃討を頼みます。とのことだ。そして、エヴァとレベッカとハープネスとハンカイとヘルメ様とグィヴァ様も外に向かった』

『了解』


 アドゥムブラリに血文字を送りつつ、黒と白の布に角の装飾が目立つ兜を被る魔剣師たちを凝視。そして、その魔剣師たちへと連続的に《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を繰り出し続けた。


 《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》は三日月の形の魔刃に相殺され、円盤状の魔刃には負ける。


 三日月と円盤の魔刃は<血魔力>のような血と黄が基調で白が混じる<狂魔気>の魔力で構成されている。

 魔剣師たちの大半も、その黄の<狂魔気>の魔力を纏うように放出している。


 魔剣師たちの黄が混じる魔刃は強い。

 神座:神眷の寵児を得た俺の魔法は、かなり強化されていると思うが、相殺され負けることが多い。


 魔界セブドラの眷族、その軍隊の人員は、やはり普通ではないな。


 左に移動しながら、三日月の魔刃を避けた。

 

 黄の円盤状の魔刃目掛け――。

 闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの指輪に魔力を込め<雷光ノ髑髏鎖>を発動し、両手首の<鎖の因子>の印から<鎖>を射出した。

 

 宙を直進した二つの<鎖>から雷光と漆黒と紅蓮の魔力が宙を貫く閃光に見えた。

 

 二つの<鎖>は黄の魔力が宿る円盤状の魔刃を貫いた。


 <鎖>の威力が優った。

 だが、黄の円盤状の魔刃の手応えは強かった。


 《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を効かなかったように黄の円盤の魔刃は結構な威力だ。


 次に飛来してきた魔刃も黄の円盤状――。

 直にぶった斬ろうか――<握吸>を発動。

 魔槍杖バルドークの握りを強めながら、右腕を柄に絡めるように肩に魔槍杖バルドークを載せ――前傾姿勢で、前に出ながら、魔槍杖バルドークを振るう<龍豪閃>を繰り出した。

 

 右斜め上から左斜め下へと振り降ろされた魔槍杖バルドークの紅斧刃が黄の円盤状の魔刃を捉え、それを斜めに両断――そのまま斜め横へと旋回しながら【メリアディの命魔逆塔】を背後に戦場を見渡していく。


 大通りの左からも怪しい魔素の集団を察知した。

 大通りの前と空から、魔剣師集団か。

 

 右側は、古の魔甲大亀グルガンヌと骨鰐魔神ベマドーラーを中心にした、俺たちの軍。


 左下の【メリアディの命魔逆塔】側からユイとヴェロニカも上昇しながら得物を振るい抜き、魔剣師たちが繰り出した魔刃を切断しながら、俺と同じく左側から上昇している。


 そのユイとヴェロニカの下から――。

 星屑のマントから魔力粒子を散らしながらゼメタスとアドモスが上昇してきた。


 隣には、()()(テン)たちもいる。


 葉の守袋から蔓と青白色の実を伸ばし、上下に組み合わせながら周囲に展開し、急加速し、上昇していく。

 高度を一瞬で超えると、魔剣師と近づいた()は袈裟掛けに神剣を振るい、<水神霊妙剣>を繰り出していた。


 魔剣師の右上腕ごと頭部と胸元を両断し、見事に倒していた。


 (テン)も神剣を振るい<水風・白鶴剣>らしき剣撃を繰り出して、魔剣師の魔剣を払うと、()が、「ここです――」と発言し、羅仙瞑道百妙技<仙羅・絲刀>を繰り出して魔剣師の全身を魔刃で貫いて拘束するように動けなくした。


 「はい!」と呼吸を合わせた(テン)の<傾角畏狐刀>らしき剣技が、()の羅仙瞑道百妙技<仙羅・絲刀>の魔刃ごと魔剣師の肩口から胸を両断して倒していた。


 魔杖から赤い魔刃を生み出しているキュベラスもいる。


 サンスクリットの血霊剣を握るファーミリアも上昇しながら<血剣>を複数生み出し、魔剣師たちに飛ばしていた。

 ヴェロニカのようなスキルは当然使えるか。

 

 ルマルディもアルルカンの把神書と共に飛翔し、<円速・虹刃>を繰り出しながら上昇している。


 光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスは、メルたちに、魔界沸騎士長たちの軍の指揮を任せたかな――。


 その沸騎士軍団の、前線、ルシヴァルの盾を組み上げた一団、魔剣師たちと衝突、戦況は互角に見えたが、その前線の横から、聖槍シャルマッハを持つミレイヴァルが光線になったように直進し、側面を衝かれた魔剣師たちを吹き飛ばしていた。

 

 <一式・閃霊穿>を繰り出したか。

 

 更に、レガランターラとキスマリとゼアガンヌが右から前に出た。レガランターラは、魔剣師が繰り出した魔剣を跳躍し、避けるまま横に払った乾坤ノ龍剣レガランターラで、魔剣師の首を刎ねる。ゼアガンヌの魔剣が、その頭部を失った魔剣師の胴を抜いて、吹き飛ばすように倒した。

 キスマリが、二人の前に出て魔剣師の魔槍を魔剣ケルと魔剣サグルーで払い、魔剣アケナドと魔剣スクルドで、魔槍を突き出していた魔剣師の腹と腕を斬る。そこにレガランターラが目の覚めるような一閃を繰り出し、魔槍持ちの魔剣師の首を刎ねていた。


 レガランターラの体から龍の幻影が発生している。

 見事だ。


 アドリアンヌも、左の宙空から魔神魚を突進させる。

 左側の魔剣師たちを吹き飛ばしていた。

 更に、青い魔杖を巻き上げるようにして、黒い火球を繰り出している。あれは見たことがない、その黒い火球の軌跡が美しい放物線を描きながら魔剣型モンスターと衝突していた。


 真向かいから魔塔の間から現れた敵軍の中に、魔剣型のモンスターを生み出している存在もいるようだ。


 と、いた。魔剣師たちか。


 複数の陣形を組んだ魔剣師たちは、地面に魔力を送り、メリディア様が発動させた紅色の閃光を発した床を攻撃しては、爆発をさせ、その地面に、新たな歪みを作っていく。

 そこから、古代の契約のような呪印を持つ魔門が表面に現れ、その魔門から数十体の魔剣型モンスターが漆黒の魔力を纏いながら出現していた。


 と、あまり下を見ていられない――。

 黄の円盤状の魔刃が<鎖>を掻い潜り上昇してきた、俄に魔槍杖バルドークを上げ、柄で、その黄の円盤状の魔刃を防ぐように横に弾き飛ばす。

 <握吸>を発動して柄の握りを強化しているが、手応えはかなり硬い。

 

 その魔槍杖バルドークの柄から古の魔法文字が浮かび上がっていく。<血霊魔槍バルドーク>は使ってないが、神魔の女神が宿っていると分かる。

 すぐに両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出し、魔剣師たち狙った。そして、


「――ハルホンク、装甲を意識した闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備に切り替えるぞ」

「ングゥゥィィ――」


 <魔戦酒胴衣>の胴衣から闇と光の運び手(ダモアヌンブリンガー)装備へと切り替える。

 体内を駆け巡る魔力が鼓動のように脈打つ。

 髑髏模様の外骨格甲冑が肌を覆うように展開される。 第二の皮膚や筋肉を得るような感覚に近い、より、深い力があらゆるところに活きると理解できた。

 サークレットと額当てと面頬も砂漠烏ノ型の兜に変更。


 そのゼロコンマ数秒の間にも、魔剣師たちは魔剣を振るい、魔剣を飛ばし、《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を防いでいる。


 俺に飛来してきた魔剣は普通に右に飛翔し避けた。

 そこに<鎖>を混ぜた《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を魔剣師たちに繰り出した。

 

 無数の《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を魔剣で防ぐ魔剣師たちだったが、二つの<鎖>は防げない、次々に頭部を穿っていく<鎖>――。

 

 よし――。

 

 そのまま<鎖>を大蛇が獲物を喰らうように操作――。


 頭部を貫いた魔剣師の体を何度も二つの<鎖>が突き抜けていく。魔剣師は再生力が高いが、強引に体を穴だらけに処した。

 そのまま大蛇が体に巻き付くように、再生途中の体に絡ませた<鎖>を内に絞るように扱い、魔剣師を潰すように倒した。


 その間にも俺に飛来してくる黄の魔刃が多い――。

 上下に飛翔を繰り返し、黄の魔刃を避け、魔槍杖バルドークで払い斬りつつ、二つの<鎖>を操作し、他の魔剣師たちを狙い、確実に魔剣師たちを屠り続けた。


 ユイの背後に五人組の魔剣師が迫るのを確認した瞬間、左手に神槍ガンジスを召喚。


 <水月血闘法>を発動させると、体内の魔力が血液と共に脈打つように駆け巡る。加速する意識の中で、五人組の魔剣師の一人の背後を捉え、魔槍杖バルドークで繰り出した<闇雷・一穿>が闇と雷を纏って魔剣師の体を貫く。その流れのまま、左手の神槍ガンジスで放った<龍異仙穿>が後頭部を穿つ。


 即座に神槍ガンジスの柄に魔力を込めると、槍纓の蒼い毛が風を切り裂く刃となって変化する。その蒼い刃は魔剣師の体を細断し、古の神獣の牙のように無慈悲に肉を裂いていく。

 その場で<血鎖の饗宴>を発動――。


 全身から無数の血鎖が迸り、その無数の血鎖の<血鎖の饗宴>で、頭部を失いながらも回復しようとしていた魔剣師の体を蒸発させるように倒す。


 <血鎖の饗宴>を消す。


 ユイは三刀流の半身のまま、二人の魔剣師の八本の斬撃を避け防ぐ。前に飛翔し、魔剣師の片方に近づいた。

 

 その魔剣師は振り向きながら、俺に魔剣を振るう。


 少し後退して魔剣師の一撃を避けると、奴は執拗に俺に間合いを詰めてくる。その動きには狂気の王シャキダオスの教えを思わせる無機質さがあった。


 ユイと一人の魔剣師との対峙を確認しながら、左手にムラサメブレード・改を召喚する。


 四本の剣が一斉に繰り出される剣突を、水の流れのように躱しながら、ムラサメブレード・改の鋼の柄巻に魔力を送り込む。


 放射口から青緑の魔刃が月光のように広がっていく。

 青く輝く魔力が刃となって具現化する様は月光を湛えた水面に見えてくる。


 その瞬間、魔槍杖バルドークで<刺突>の構えを見せ、相手の意識を釘付けにした瞬間――魔槍杖バルドークを魔剣師へと放り投げた。


「――なに、得物を!?」


 驚愕の声を上げる魔剣師。右と左の上腕が持つ魔剣で慌てて払い、そのまま前進してくる。その動きこそが狙い――。


 瞬時に右腕の〝光紋の腕輪〟に膨大な魔力を流し込むと、巨大な魔法防御陣が虚空に浮かぶ。

 それは月を背にした雲のように、魔力が幻想的な光を放つ。


「――げぇ!」


 咄嗟にすべての腕を上げて防御に回る魔剣師。

 その一瞬の隙を逃さず、ムラサメブレード・改の青緑の魔刃を閃かせる。<超翼剣・間燕>が晒された腹を貫くように裂き斬り、同時に<握吸>で魔槍杖バルドークを引き寄せ、掴み直した瞬間に<龍豪閃>を放つ。

 横に回転――。

 横回転する体の律動に合わせ、魔槍杖バルドークの後端にある竜魔石が、魔剣師の繰り出す剣撃を悉く叩き落としていく。回転の勢いを保ったまま魔槍杖バルドークを消し去り、ムラサメブレード・改の刃で<飛剣・柊返し>を描き出す。


 左上腕から胸元までを撫で斬るように薙ぎ、そのまま武器を変化させる。鋼の柄巻はトフィンガの鳴き斧となり、右手には<魔神ノ遍在大斧>により〝黒衣の王の魔大斧〟が漆黒の炎を纏って具現化する。


 <双豪閃>――。


 回転を重ねる度に、トフィンガの鳴き斧と〝黒衣の王の魔大斧〟が魔剣師の体を切り裂き、潰していく。

 魔力の渦は黒い炎と銀の月光が交錯するかのように、魔剣師の存在を飲み込んでいった。

 ユイが、


「ありがと――」


 と言いながら俺の左横を前進した。

 

「おう」


 ユイは口に神鬼・霊風を噛み持ち、両手にイギル・ヴァイスナーの双剣を持つ。

 その三刀流のユイは加速し、俺の背後を取ろうとしてた魔剣師の腹を薙ぎ、首を斬ると、一瞬で三枚下ろし。


「お、ありがとう――」

「ふふ、うん、左」

「あぁ――」


 半身のまま俺たちの左上に移動していた魔剣師へ<鎖>を向かわせる。<鎖>を左下腕が握る魔剣で弾かれた。

 構わず<鎖>を消しながら、ユイが前に出る間を作る。


 ユイは、阿吽の呼吸で前に出た。


 <魔神ノ遍在大斧>の〝黒衣の王の魔大斧〟から黒い炎を発している魔大斧を右籠手の防具を備えた斧槍に変化させ、トフィンガの鳴き斧を仙王槍スーウィンに変化させる。


 ユイはイギル・ヴァイスナーの双剣による左右の斬撃を魔剣師に繰り出したが、魔剣師は右上腕と右下腕の魔剣で防ぐ。


 即座にユイの背から出るように上昇し、魔剣師の頭上から、黒衣の王の斧槍を振り降ろす<血龍仙閃>を繰り出した。


「――ぐっ」


 魔剣師は左上腕の魔剣で<血龍仙閃>をなんとか防ぐ。

 見事な防御、すぐに黒衣の王の斧槍を消しながら仙王槍スーウィンで<白炎明鬯穿>を繰り出した。

 仙王槍スーウィンの穂先の水の膜から銀色の炎が発生。


 ※白炎明鬯穿※

 ※仙王流槍武術系統:奥義※

 ※白炎王山流:上位突き※

 ※水槍流技術系統:最上位突き※

 ※血槍魔流技術系統:最上位突き※

 ※白蛇竜小神流技術系:上位突き※

 ※仙鼬籬ノ森技術系統:上位突き※

 ※仙王槍スーウィン専用※

 ※水神アクレシスと相性が良い※

 ※武王厳流や武双槍流に玄智武暁流と玄智炎槍流にも活かせるだろう※

 ※子精霊(デボンチッチ)と連動する場合あり※


 ※白炎王山の明鬯白炎ノ滝場で、スーウィンがまだ仙王になる前、白蛇竜大神インが白炎を己の体に取り込みながら上昇するところを見て、スーウィンが、己の槍武術に活かそうと、流れ落ちゆく明鬯白炎を全身に浴びながら、白炎王山と明鬯白炎に向けて<刺突>を五百年打ち続けて<白炎明鬯穿>を獲得。崑崙王家ハヴィスも驚愕、その槍は後に仙王槍スーウィンと呼ばれるようになった※

 ※スーウィンは<白炎龍天穿>をも獲得している※


 その仙王槍スーウィンの穂先が、魔剣師の頭部から右の肩口を溶かすように突き抜けた。

 魔剣師の体は一瞬で銀色の閃光染みた炎に包まれながら悲鳴を発せず蒸発し消える。


「凄い威力!」

「おう、仙王槍スーウィンは、神界セウロスの白炎王山と関係する」

「うん!」


 と、黄の魔刃が飛来――。

 ユイは左に移動していく。俺に近づいてきたのは、三人の魔剣師か。上下に突き出た角の装飾が他と異なる。


 他の魔剣師と同じく薄い布で顔が隠れているが、顔の刻まれている紫の模様から紫と黄の稲妻のような魔力が外に放出されていた。


 その角あり魔剣師たちはトライアングル陣形を組む。

 遠距離が主体か? 武器を消し、右手に魔槍杖バルドークを再召喚。


 三人組は、螺旋状の陣形を組みながら左側へと飛翔し、四腕に握る魔剣を振るいつつ直進してきた。

 《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を繰り出した。

 左手首の<鎖の因子>から<鎖>も射出した。

 

 黄の魔力を纏う剣刃が《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を消し飛ばすように斬り、<鎖>も斬るように弾いてきた。


 角あり魔剣師は強者か。


 すぐに<仙羅・絲刀>と<仙玄樹・紅霞月>を繰り出し<魔神式・吸魔指眼>も発動した。


 ※魔神式・吸魔指眼※

 ※魔神流吸魔指眼技術系統:極位※

 ※指先から思念で操作が可能な漆黒色の粘着力もある先端が鋭い魔力を放てる※


 魔剣師たちは、魔糸の刃と三日月状の魔刃を斬る。

 <魔神式・吸魔指眼>の指先から出た漆黒の溶液か粘体のような遠距離攻撃をも、四腕の魔剣で斬ってきた。

 すぐに、魔槍杖バルドークで<バーヴァイの螺旋暗赤刃>を繰り出した。


 螺旋状の陣形を崩さない三人は上昇し、螺旋状の魔刃の<バーヴァイの螺旋暗赤刃>を避けた。


 螺旋状の魔刃の<バーヴァイの螺旋暗赤刃>はそのまま宙を直進し、他の魔剣師たちの体を貫いていった。

 

 三人は間合いを詰めてくると思ったが、俺の上下左右に移動した。すると、その魔剣師に一人にサザーの<バーヴァイの魔刃>が向かう。その<バーヴァイの魔刃>は魔剣で防がれた。


 ユイとヴェロニカは、右と左の魔剣師に向かう。


 サザーは、法魔ルピナスから離れて上の魔剣師に飛び掛かった。

 そのタイミングに合わせ、<鎖>を消しながら<血道・魔脈>を発動、<沸ノ根源グルガンヌ>と<龍神・魔力纏>をも発動し、爆発的に加速、右に移動し、魔剣師との間合いを槍圏内としたところで――。

 サザーの<血現・鮫殺し>を防ぎきった魔剣師は、俺の挙動に対応が遅れ「なっ!?」驚く。


 魔槍杖バルドークで<血龍仙閃>を繰り出した。

 <血魔力>を纏う紅斧刃で魔剣師の肩口を薙いだ。

 傷口は浅いが、サザーが見事にイスパー&セルドィンの剣刃で、「<飛剣流・鬼条斬り>――」を繰り出した。

 魔剣師の体を数度突いてからの流れるような袈裟斬りから逆袈裟が決まる。イスパー&セルドィンの血の斬撃が魔剣師の体を細断にしていた。


「見事――」

「はい!」

「パキュゥ~」


 サザーを褒めるように鳴いた法魔ルピナスが、飛翔していたサザーの足下に移動して、サザーはそこに着地。


「閣下――」


 と、下から飛来してきたヘルメが《氷槍(アイシクル・ランサー)》を連射しながら上空高いところにいる魔剣師たちを牽制しながら合流してきた。


 ハンカイとグィヴァは地上戦に乱入か。

 ハープネスも飛来して「シュウヤ殿、お、魔竜ハドベルト!」


 と、言いながら、右上のほうに飛翔し、魔剣師の群れと戦っている魔竜ハドベルトに近づいて「お前ら、どこのもんだ、魔竜ハドベルトに傷を!!」と怒っていると、思ったが、半笑いのまま、「ハッ、お前ら、その傷はしらねぇぞ――」と発言。


 魔竜ハドベルトは「ガォォ!」と吼えると、傷口から大量の緑色の毒煙を広範囲に繰り出した。

 時折、蛇と薔薇の幻影が発生している。

 魔毒の女神ミセア様の力か? 

 敵対している様子だったが、まぁ色々とあるんだろう。


「ヘルメ、左目に」

「はい――」


 ヘルメは一瞬で体を液状にするとスパイラル回転をしながら、左目に突入してきた。

 そのヘルメを左目に納めるまま上昇。


『閣下、いつでも<精霊珠想>は可能です』

『おう』

 ヘルメの魔力を得て、共鳴したような氣分で奮えた。


 ヘルメを宿した左目から魔力の脈動を感じながら上昇を始め、魔槍杖バルドークで<魔皇・無閃>を繰り出していく。紅蓮の閃光となって夜空を染める勢いで、<血龍仙閃>などを連発し、立ち塞がる魔剣師たちを容赦なく薙ぎ払っていく。


 【メリアディの命魔逆塔】の頂は、戦いの渦中にあった。悪夢の女神ヴァーミナ様とシャイサードの姿が、魔剣師たちと異形の魔族を相手に舞っている。その光景は、混沌と秩序が交錯する異界の縮図のようだった。


 深淵から這い出してきたかのような異形の存在が、虚空を歪ませながら蠢いている。その姿は、闇そのものを固めて作り上げたかのような漆黒の肉体を持ち、その存在自体が現実を侵食しているかのようだ。

 

 朱に染まった黒衣を纏った老婆の姿は、邪悪な尼僧を思わせる。その存在が放つ魔力の波動は、見る者の魂を凍えさせるほどの威圧感を漂わせていた。


 だが、最も戦慄すべきは魔剣師たちの背後に控える存在——人の形を模しながら、決定的に人ならざる者の姿か。


 その肢体は不自然な角度で幾度も折れ曲がり、人体を歪んだ芸術作品へと昇華させたかのよう。

 先端には獲物を求めて蠢く触手が、虚空を這うように伸びている。中心には空洞が穿たれ、剥き出しになった肋骨が異様な造形美を描いていた。

 その胸腔には深紅に輝く無数の眼球が蠢き、見つめられた者の理性を溶かし込むような狂気の視線を放っている。頭部の代わりに首から天を突く触手には、この世のものとは思えない眼球が備わり、異界を見通す触覚のように揺らめいていた。

 それは、この世ならざるものを感知する、異次元の触角に思えた。


「槍使い、いいところにきた!」

「おぉ~」


 悪夢の女神ヴァーミナ様の声が、戦場の喧騒を切り裂く。黒兎シャイサードも喜ぶように声を発した。

 そこに近づくように【メリアディの命魔逆塔】の頂上に着地――。


「はい――魔剣師たちは下にもいますが、狂気の王シャキダオス関連でしょうか」

「うむ」


 悪夢の女神の声が重く響く。


「眼前の肋骨剥き出しの異形、無数の眼球を宿すその姿――」


 と、黄色の魔刃が飛来。

 その魔刃をあっさりと避けた悪夢の女神ヴァーミナ様は、その魔刃を繰り出した怪しい存在を睨みながら、


「あいつが狂気の王シャキダオスの大眷族、バブルシャーだ。他にも正体の定かでない諸侯たちが、そこにいる。通りの左にも潜んでいるようだ」


 空気が重く沈み、狂気そのものが実体化したかのような威圧感が漂っていた。

続き、明日はHJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミック版発売中。

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― 新着の感想 ―
デサロビア関連もそうだが、異形過ぎる眷属持つ存在とはよく敵対するな。まぁ利害の不一致や生態が違いすぎて相互理解出来ない影響もあるんだろうが。
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