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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1716/1996

千七百十五話 紅玉の絆、幼馴染みベキアの帰還!

 風の精霊ナイアが入った指輪を掴む。

 

「この指輪を嵌めて、契約しても大丈夫ですよね」

「はい、シュウヤ様なら魔力を送るだけで、本契約となる。また、神座を得ているシュウヤ様ですから、皆様の大眷属方々に使えるようにもできるはずですよ」

「へぇ」

「「おぉ」」

「そうだった、シュウヤは<槍ノ神威>と<神座:神眷の寵児>を得た。そして魔槍杖バルドークが女神になったとも、俄に、神魔の女神のほうは、想像ができないが」


 ハンカイの言葉だ。


「うん、近くで体現したのを見届けたけど、あまりに神話的現象だったからね」

「はい」

 

 と、皆が会話していく。

 そこで、


「分かりました。では、早速、指輪に<血魔力>を送り、本契約をしちゃいます」

「「はい」」

「楽しみです」

「はい、わたしたちの癒やしの成果が」

「ふふ」

「既にシュウヤ様に懐いている印象の風精霊ナイア。楽しみです」

「ご主人様の精霊様」

「にゃ~」

「ンンン」


 黒猫(ロロ)は速くしろというように、俺の前足に頭部を寄せてくる。

 黄黒猫(アーレイ)も喉声を左のほうから響かせる。

 

 チラッと見ると、霊魔宝箱鑑定杖を使い鑑定作業を続けていたラムーの傍で、その様子を香箱スタイルで見守っていた。俺の視線を感じた黄黒猫(アーレイ)は、「ンンン」と喉声を発して、こちらによっては、黒猫(ロロ)と「「にゃっ」」と小声で会話し、鼻キスをして、頬を擦り合っていく。


 微笑ましい様子を見てから、指輪に<血魔力>を送る。

 ピコーン※<風の精霊ナイアとの絆>※恒久スキル獲得※

 

「<風の精霊ナイアとの絆>のスキルを獲得できた」

「「おぉ」」


 指輪から魔印と風の波紋が浮き上がると、目の前に、風の女精霊ナイアが出現した。

 

 髪には蒼さがあるが透けている。

 前の見た目と変化はない。

 眉毛も透けながらの蒼。

 双眸は金色でしっかりとしている。

 鼻筋は高く、細い唇は可愛らしい。


「シュウヤ様、ナイアです、よろしくお願いいたします。直前の記憶も皆様との繋がりからある程度得ています」

「おう、よろしく」

「はい、皆様もよろしくです、ナイアです」

「はい、ナイア、私は常闇の水精霊ヘルメです。これからは閣下と共に、光魔ルシヴァルに貢献をしましょう」

「はい!」


 ヘルメに続いてグィヴァや古の水霊ミラシャンも風の精霊ナイアに挨拶を続けていく。

 

 続いて、メリディア様とメンノアを中心に、秘密研究所のアムシャビス族の遺した魂の浄化と破壊の柱と次元干渉能力と意識の保存や消去システムを有した柱と魔法陣や装置に祭壇の解説を行っていく。


 宝箱を物色を再開していたハープネスたちもこちらにきていた


 レベッカも新しい魔杖を持ちながら、メリディア様の説明を聞いていた。

 すると、ハンカイが、


「魂の浄化だが、精霊様がいると、強力に浄化が可能となるのだな」


 と、聞いていた。


「はい、先程、私を復活してくださったように、次元干渉能力、ハルモデラの次元軸へのアクセスも強化されました。また、私の秘石とフィフィンドの心臓があったこその、ハルモデラの次元軸へのアクセスです。浄化の過程も、その通り」

「そこの意識の保存や消去システムの、記憶の祭壇ですが、知記憶の王樹キュルハ様は関係がないのですか?」

 クナが、右に設けられてある祭壇の真ん中に嵌まっている水晶のような透明な球体に指を向けていた。


 その中には、無数の光の粒子が渦巻いている。


 メリディア様は、


「ないです、アムシャビス族だけに特化した意識を保存するために作ったのが〝記憶の祭壇〟です。手をかざすと、過去のアムシャビス族の記憶や感情が、断片的に流れ込んでくる。しかし、その記憶は、時折、雑音が入り、途切れ、完全に消え去ってしまうこともある。あやふやな面が強い、ですからシュウヤ様が持つ秘宝の〝知記憶の王樹の器〟が、いかに特別かお分かりかと」

「「「へぇ」」」

「ん、〝知記憶の王樹の器〟はすごい」

 

 皆、改めて、俺を見て感心していく。

 その皆の視線を受けて、アドゥムブラリは、黒いローブの裾をそっと持ち上げ、メリディア様に向き直った。


 そこには、聞かずにはいられない思いが浮かんでいる。


「メリディア様、この『記憶の祭壇』には、俺の幼馴染み、ベキア・ラモレンの記憶も……」


 その言葉にメリディア様は静かに頷き、メンノアとルビアを見てから、記憶の祭壇に近づき、


「……アドゥムブラリとメンノアにルビア、こちらに来て、この記憶の祭壇に魔力を注いでください」

「「ハッ」」

「はい!」


 三人は近づいて一斉に記憶の祭壇に魔力を送った。

 メリディア様も腕を翳し、そこから魔力を記憶の祭壇の水晶体に魔力を送ると、水晶体に何かの情報が羅列される。メリディア様は数回頷いてから、こちらを見て、


「娘の重要な配下の一角、ベキア・ラモレン……地獄火山デス・ロウに近い領域を治めていた門閥貴族の一人。セラと通じているメンノアの血にも関係する」

「わぁ」

「やはり」

「あぁ」


 ルビアは感激し、メンノアとアドゥムブラリは目を合わせて頷き合う。もう何度も幼馴染みのことについて話をしていたようだな。


 ルビアは、


「お婆様、あの【アムシャビスの紅玉環】の近隣地帯で、アドゥムブラリさんが、一生懸命に何かを探して、そして、何か拾っていたと思うのですが……」


 アドゥムブラリはルビアを見て、


「ハッ、見ていたのか、言わなかったが、まぁ皆の戦線から少し離れながらだったが、さすがにバレているか」


 と語る。


「ん、氣付かなかった」

「うん……」

「ルビアは氣付いていたのですね、知らなかったです」

「はい」


 ヴィーネたちは氣付いていなかったか。

 俺はその時のアドゥムブラリを見ている。


 激戦だったが、たしかに、アドゥムブラリは、【アムシャビスの紅玉環】で何かを探していた。


 そのアドゥムブラリは、


「あぁ、わざわざ言うのもな、破壊の王ラシーンズ・レビオダと憤怒のゼアの軍との戦いの最中だったこともある」


 その発言に皆が少しざわついた。

 アドゥムブラリは、


「ヴィーネとキサラは破壊の王ラシーンズ・レビオダとの空軍と連中と衝突した時から、大眷属や眷族の将校クラスとの戦いの連続だったからな、知らなくて当然だ。俺も私事故に、語っていなかったし、皆の行軍には迷惑をかけたくなかった」

「「はい」」

「ん、格好いい」


 エヴァの褒め言葉に、アドゥムブラリはマントを払うように片腕を動かし、長い金髪を靡かせ、


「――ハハッ! 当然だ。<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の大眷属としての務めのほうが重要!!」

「ん」


 エヴァは、その元氣溌剌の言葉に頷いてから、魔導車椅子に座ったまま後退していた。


 アドゥムブラリは、エレガントでシックな男前だから映える。


 メリディア様は


「ふふ、では、アドゥムブラリ、その回収した品を活かしましょう。それらの品次第では、予想外に復活の可能性を早められるかもです。また、アドゥムブラリの幼馴染みの復活には、ラホームドに〝神魔の魂図鑑〟が必要になるかもです。そして、ここにいる最上級の称号持ち、神座を持つシュウヤ様の神格も必要になるかもですね……」

「神眷の寵児で、まだ幼い印象ですが、それでも?」

「はい、下級神ですが、成り上がりの特異神格とも言える称号です。十分すぎる」

「「おぉ」」

「閣下の神格が!」

「御使い様の神座:神眷の寵児が、ここにきて!」

「荒神反魂香やアムシャビスの光玉も要らずに?」

「はい」

「「「「「「おぉ」」」」」」


 なら、大魔商ドムラチュアとの交渉も要らずか?

 その場合はギリアムとミツラガは、レン・サキナガの一員になってもらおうか。そのレンも<筆頭従者長(選ばれし眷属)>に迎えないとな。


 唖然としているアドゥムブラリの翼が萎縮しぷるぷると震えていた。感情がこういうところに現れるのは、アムシャビス族特有か。


 その背を支えるように『良かったな』との想いで数回叩いてから、メリディア様に、


「……俺の神格が役に立つなら喜んで」


 アドゥムブラリは感動したように俺を見て、


「主……俺は……」


 瞳を震わせ、泣きそうになっているし。

 そのアドゥムブラリに笑みを見せ、


「まだ成功するかも不透明すぎる段階。それよりも早く回収していた幼馴染みの品をメリディア様に、俺たちに見せてくれ」


 促すと、アドゥムブラリは頷き、笑みを浮かべ、


「ハッ、そうだな!」


 と発言し、腰ベルトと腕環に魔力を送り、そのアイテムボックスから古い髪飾りとブローチに指輪を取り出した。


 家紋が刻まれてあるようだが、結構ボロボロ。

 小さな印章にも見えるブローチも傷付いている。

 それらすべてのアイテムに、ホイールのような環が二つとシャフトのような棒と壺ヤナグイの印が刻まれていた。指輪と光の柱は魔線ですぐに繋がった。


「紅の宝石の紅玉環ですね、なるほど、ふふ、感動を覚えますわ」


 メリディア様は意味ありげの笑顔で語る。


「その模様は、わたしの紋様と同じ」

「はい、娘が、アドゥムブラリと繋がりがある門閥貴族レサンビストを選んだことは偶然かと思いますが、セラに作られたメンノアの魔法陣には、その門閥貴族レサンビストの血脈、<血魔力>に魔力などが使われていたはず。魔法陣を印した者が、どのようにして、アムシャビス族の門閥貴族レサンビストの触媒を入手したのか謎ですが、それもまた縁でしょう」


 メリディア様の語りに、


「……はい」


 と、メンノアが返事、少し感動している。

 ルビアにアドゥムブラリも頷いた。


 皆も、


「ん、すごい話」

「たしかに、シュウヤとの出会って間もない魔霧の渦森だけど、運命が渦のように絡まりあってる」


 ユイの言葉に頷いた。


「にゃおぉ」


 相棒も何かを思い出すようにユイの片足に頭部を寄せた。

 ミスティも、


「驚愕よ、兄はたぶん……奥さんのシータさんを復活させようとあらゆることに尽力したからこそだと思う」

「……えぇ……その行いは、まさに、狂気の王シャキダオスでしたわ」

「「「「……」」」」


 クナの語りに皆が沈黙、本物のクナは、あの魔霧の渦森の地下で拷問されていた。そのクナの言葉は重い。ココッブルゥンドズゥ様の像もある。

 

「あぁ、魔霧の渦森……モンスターが湧く頻度が異常だったが、その分、斧修業のいい場所であり、素材蒐集にも最高な場所でもあった」

 

 ハンカイも語り、ヴィーネとミスティが強く頷いた。

 ヴィーネは、

 

「はい、地下にも様々な遺跡がありますし、地底神ロルガは倒れましたが、当時は、そのロルガと地底神キールーの争いが盛んで、呪神フグの眷属たちに遭遇し、オーク大帝国の基地もあり、大鳳竜アビリセンにも遭遇しました」


 皆が当時を思い出すように頷く。

 俺は、キサラとキッシュと共にサイデイルの復興に尽力していた頃かな。

 ヴィーネたちと一時離れた期間だった。西の象神都市レジーピックでは、ユイとカルードたちと合流もした。


 当時は、アドリアンヌたちの【星の集い】とも少し争ったな。


 メリディア様は頷く。


「ベキアの一族とメンノアの繋がりに、紅玉環との組み合わせにも特別な意味があります。」


 アドゥムブラリは、


「え、はい。魂の変容を得ている浄化と破壊の二重コア、光の柱とベキアの紅玉環が繋がったのは……」


 メリディア様は頷いて、ベキアの指輪の、紅玉環の輝きを凝視してから、アドゥムブラリと、記憶の祭壇に光の柱を見ている。光の柱は、浄化側だと思ったが……。

 あ、指輪の紅玉環には、ベキアの魂の一部が入っている?


「はい、既に魂の一部が呼応している。ベキアは紅玉環に相当な想い、己の魂の一部を載せていた。己が知っていたのか不明ですが……アドゥムブラリ? 貴方とベキアは過去に何かをしてますね?」


 と尋ねると、アドゥムブラリは、


「え……あ……<武装魔霊・バムソウル>と<魔弓魔霊・レポンヌクス>に<魔矢魔霊・レームル>は衣服と連動するために、たしかにベキアと共に、互いの魂と魂を合わせる秘術を用いて協力した……」


 と、語る。


「やはり……しかし、私は娘のメリアディに禁術に近い武装魔霊と一体化を促すことは禁止するように命じていた」

「……それは、その、俺が強引に……調子に乗ってまして、はい……禁術だろうとかまわず、己を強くしようと……ベキアを巻きこんだ結果です」

「ふふ、責めてはいません。どうやら、その武装魔霊と一体化しているアドゥムブラリだからこそ……この魂の定着に……シュウヤ様と巡り会ったようですからね」

「はい」

「だからこそ、これはチャンスですよ」

「ベキア・レサンビストの復活が?」

「はい」

「「「「おぉ」」」」


 俺もだが、皆が歓声をあげた。

 メリディア様は、記憶の祭壇の水晶体の横から三日月状の台をこちら側に展開させ、


「では、ここの台に指輪の紅玉環と、髪飾りとブローチなどを置いてください」


 と発言、なんかの医者に見えてくる。

 アドゥムブラリは、その台に髪飾りとブローチと指輪を載せた。


 <武装魔霊・紅玉環>の指輪と同じ形。


「これがあれば幼馴染みは……本当に、シキから入手した荒神反魂香は必要ではない?」

「はい、チャンスと言いましたが、要らない可能性がある。と、現在は言えるだけです。そして、<超神魔力>を注ぎ、別個に、アムシャビスの光玉が必要になったらすぐに私が用意しましょう」

「「「おぉ~」」」

「さすがの、天魔帝の実力か」

「ハンカイさん、元、ですから、今はアムシャビス族の、一介の輝翼術士と変わりません」

「メリディア様、それはいささか……光翼貴族と紋翼賢者の最高レベルの術式を扱えています」

「あら……翼は失っていますが、ある程度はいけるのですね」

「はい、強力な紅翼王位に準する紋翼賢者。やはり、メリディア様は、魔命を司るメリアディ様の母様です」

「ふふ、分かりました。では、紋翼賢者として、皆様に貢献しましょう」

「はい!」


 メリディア様とメンノアがアムシャビス族の魔法の階級の蘊蓄を語る。

 なんとなく意味は分かった。

 

「ふふ、興味深いですわ」

「うん」

「「はい」」

「バーソロンたちに連絡しとく――」


 クナたちも感心しながら発言していた。

 ミスティがバーソロンたちに血文字で連絡を始めた。

 ヴィーネは既にメルたちに血文字を送っている。


 メリディア様は、そのアドゥムブラリとメンノアとルビアを見て、


「では、調べてみましょう。今から三人の魔力を、その三つのアイテムを載せた台と『記憶の祭壇』の魔道具、魔機械の一種ですが、そこに魔力を注いでください」

「「「はい」」」


 メンノアとルビアとアドゥムブラリは交互に、髪飾りとブローチと指輪と『記憶の祭壇』の魔道具に魔力を注いでいく。


 髪飾りにブローチと指輪の紅玉環が柔らかな光を放つ。

 メリディア様も、『記憶の祭壇』に手をかざした。

 

 途端に、透明な球体の中で光の粒子が激しく渦を巻き始める。

 球体の中の光の粒子はメリディア様の手に反応するように、より速く、より激しく渦を巻いていく。やがて、その渦は一点に収束し、祭壇の上に幻影を結び始めた。


 メンノアは「素晴らしい……」と呟いて、三眼を見開き、その幻影に見入っている。


 幻影の中に現れたのは、綺麗な女性。

 髪の毛は金色かな、紅色の翼が特徴的か。

 幻影に見えないほどの高精細な映像となる。


 アドゥムブラリは涙を流し、


「あ、ぁぁ…………ベキア、ベキアだ」


 アドゥムブラリの幼馴染み、ベキアの姿か。

 メリディア様も嬉しそうに微笑み、


「ベキアが使用していただろう髪飾りに、ブローチと指輪の紅玉環も、ベキアさんの品で確定です。しかし、アドゥムブラリ、よく見つけましたね」


 アドゥムブラリは涙を流しながら、数回頷き、


「……【アムシャビスの紅玉環】の近くで手に入れた場所は、残骸だったが、あの地形はたしかにベキアの屋敷の通り前だった。ライバルの魔侯爵クトナブの屋敷に、友のハーキシャー一門の屋敷が並ぶ通り、その通りの越えた先の【紅ノ魔池】、アムシャビスの空岩の丘、紅光ノ彫刻道、モラニウス街道の名残があったんだ、ベキアの屋敷跡をくまなく探して、それを入手したんだ」

「そっか、【アムシャビスの紅玉環】は、というか【魔命を司るメリアディの地】はアドゥムブラリの故郷」


 と、俺が言うと、アドゥムブラリは頷いて、


「あぁ、俺たちは一家は魔侯爵。破壊された【地獄火山デス・ロウ】が本領地だが、当然、門閥貴族レサンビストムと同じく、紅玉環の近くの一等地を得ていた。宙空高くに魔塔を作ることは禁止されていたが、それでも、巨大で、綺麗な<超神魔力>のメリディア様とメリアディ様の<アムシャビスの紅光>などを浴びることのできる紅玉環は、大人気だったからな。そこでベキアと勉強をしては……庭で模擬戦を繰り返した、ハーキシャーの連中とクトナブの野郎とも模擬戦を繰り返したな……懐かしい」


 と語る。

 メリディア様は、


「アドゥムブラリとシュウヤ様、ベキアの魂の引き寄せはもうある程度確定で、〝神魔の魂図鑑〟も必要ないほどです。しかし、肉体の構築にはそれなりのスキルと準備が要ります」

「<血道・神魔将兵>でいいかな?」


 と、すぐに<血道・神魔将兵>を発動させる。

 血の甲冑を着た騎士が目の前に誕生した。


「わっ」

「シュウヤ、<光魔・血霊衛士>か?」

「その強化バージョンでしょう」

「おう、この間進化した、<血道・神魔将兵>だ。それよりも今は、メリディア様、話の続きを」


 メリディア様は、俺が誕生させた<血道・神魔将兵>を間近で見て、驚いていた。


「……おぉ……あ、は、はい、十分です。後は、わたしが言うタイミングで、ベキアの魂が定着しかかる場所、そのベキアの幻影にシュウヤ様が触るように魔力を送りつつ<血道・神魔将兵>を移動させて、その幻影に重ねてください。その後、また私が言うタイミングで、神座:神眷の寵児の意識しながら、スキルを発動するように、〝神〟として発動してください。そうすれば、たぶんですが、いけます」

「「「「おぉ」」」」

「……素晴らしい……」

「……うん、わくわくする」

「なんて展開……」

「うん、光の柱の魂の浄化をもたらす魔力も強まっている。そして記憶の祭壇へと送っているメリディア様の魔法力も、相当に効いていると分かる!」

「はい、魂の変容も……先程のメリディア様の復活といい、なんという……」


 最後のキサラの言葉に納得だ。

 メリディア様は、


「アドゥムブラリ、一応、荒神反魂香も、用意したほうがいいかもです」

「あ、はい。そこの台に置けば?」

「あ、すみません、念のためです。置かないでもたぶん、いけるはずです」

「はい!」


 アドゥムブラリは<血魔力>が自然を体から溢れて出て、金髪が舞っていた。

 メリディア様は、


「<武装魔霊・バムソウル>の防護服と<魔矢魔霊・レームル>と<魔弓魔霊・レポンヌクス>を使い装備し、記憶の祭壇に触れて魔力を送り、そこから、ベキアの幻影に語りかけ続けて魔力も送ってください。今からお願いします」

「分かりました――」


 アドゥムブラリが<武装魔霊・バムソウル>と<魔弓魔霊・レポンヌクス>と<魔矢魔霊・レームル>を次々に発動していく。


 立派な貴族衣装にも見えるが、俺たちには、アドゥムブラリのいつもの戦闘態勢に見える。


 アドゥムブラリは、そのまま記憶の祭壇に触れ魔力を送った。

 ベキアの紅玉環が強く輝き、ブローチや髪飾りも浮遊し、ベキアの幻影が向かう。

 アドゥムブラリは、その様子を嬉々として見ながら「ベキア、聞こえているのか?」と幻影に語り駆けながら、その幻影に魔力を送っていた。

 メリディア様は両手から魔力をアドゥムブラリとベキアの幻影と、光に輝く柱と闇に輝く柱にも魔力を送っては、記憶の祭壇にも魔力を送り続けている。額に汗のようなモノが見えた。


「シュウヤ様――お願いいたします」

「分かりました」


 <血道・神魔将兵>をベキアの幻影に移動させる。

 途端に、ベキアの幻影と血の甲冑を着た<血道・神魔将兵>が融合を始める。

 ベキアの魂が内包していた紅玉環から紅色に閃光を放つと、すべてが光に包まれた。


「シュウヤ様、神座をお願いいたします!!」

「了解した、行くぞ、アドゥムブラリにベキア、蘇れ――」


 神座:<神眷の寵児>――。

 

 一瞬、時が止まった感覚を覚えた直後。

 光の柱と闇の柱が共鳴するように明滅し、その波動は研究所全体を包み込んでいく。記憶の祭壇から放たれる光の粒子は、まるで天の川が地上に降り立ったかのように美しく舞い散る。


 アドゥムブラリの<武装魔霊>から放たれる魔力が、光の渦となってベキアの魂を包み込む。紅玉環は宝石の深奥から生命の輝きを放ち、その光は次第に人の形を成していく。


 メリディア様の魔力がそのすべてを繋ぎ止め、新たな生命の誕生を導く錨となった。


 そこから、紅色の翼が飛び出した。

 夜明けの太陽のような輝きを放つその翼が、光を吸収するように広がり、女性の背が浮かび上がり、そして一気に、金色の髪を持つ気品溢れる女性の姿が現れた。


「あれ、アドゥムブラリ? え? なにここ」

「お、おぃ……べ、ベキアなのか?」

「うん、当然!」


 アドゥムブラリは泣いている。


「「「おぉ」」」

「まさに、紅玉の絆、幼馴染みベキアの帰還!」

「はい、なんて奇跡」

「うん、神眷の奇跡よ……」


 

続きは明日、HJノベルス様から、「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミック版も発売中。

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― 新着の感想 ―
風の精霊ナイアは無事使役成功か。感じ的に前主の事は大丈夫そうかな? シュウヤからしたらアドゥムブラリの為に神格を消費するのはどうという事無い!(別に神格要らないしw) それになによりアドゥムブラリ良…
風槍流と相性の良さそうな風の精霊ナイアも無事に使役完了‼︎ 記憶も残っているようだし、謎の多かったトフカについても色々と話を聞けそうですね。 次は、〝茨の王ラゼリスの冠〟の浄化と薔薇の精霊の使役に挑…
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