千七百十話 魔神殺しの蒼き刃――神座への道標
――憤怒のゼアの放つ<炎槍・炎破壊神贄>と神獣ロロディーヌの紅蓮の炎が衝突。
ドッとした衝撃波が周囲に伝わる、衝突の余波が凄まじい――。
二段、三段と、巨大な魔力の渦が地下層の空気を震わせ、相反する力がせめぎ合いながら拡大していく。憤怒のゼアが繰り出している炎槍も神槍ガンジスで払いつつ――。
――<闇透纏視>を発動。
左右上下に飛翔をしつつ、炎槍を避け――。
憤怒のゼアを凝視、分析していくが――。
魔力の質は高いぐらいしか分からない――それにしても、炎槍の飛来は多い――。
右に跳び柱を蹴って身を捻りながら皆を見つつ<水の神使>の恒久スキルを意識し、発動。
続けて、王級:《氷命体鋼》を発動した。
氷の魔法の装甲部が〝霊湖水晶の外套〟と闇と光の運び手装備の表面に展開される。
同時に、頭上に水神ノ血封書を出して浮かばせた。
刹那、殺氣が憤怒のゼアから発せられたのを感じた。
憤怒のゼアは左上腕を相棒に向け<炎槍・炎破壊神贄>を繰り出した状態で、
「『――我の前で水神と吸血神の気配を重ねるとは――<憤怒ノ絶衝撃――>』」
神意力と共に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>ごと衝撃波を受けて吹き飛ばされ、柱と背が衝突し、背に痛みが走る。
すぐに目の前に炎槍が迫った。
己の心、精神と丹田に<魔界諸行>の恒久スキルを感じながら、――神槍ガンジスで<光穿>を繰り出す。
突き出た方天画戟と似た穂先が、炎槍の先端の点を突く。
そのまま炎槍を真っ二つに貫き、二つに裂かれた炎槍だった物は左右の二の腕を擦りながら、背後の柱に激突した。
ズゥンと音が響く。
頭上の水神ノ血封書は無事だったが、なんて反応だ――。
そのまま、
『――皆、《氷竜列》から《王氷墓葎》を繰り出すから、水蒸気爆発か、憤怒のゼアの反撃に備えてくれ』
『『はい』』
目の前の皆からの血文字を貫くように飛来してきた炎槍を左斜め上に上昇し、避けた。
左手に堕天の十字架を再召喚し――。
次に飛来してきた炎槍を見ながら神槍ガンジスで<魔皇・無閃>――堕天の十字架で<豪閃>を使いながら、連続的に飛来した炎槍を叩き壊す。
次に飛来してきた炎槍には堕天の十字架を振るい<刃翔刹閃>のスキルを繰り出し、柄で炎槍を潰した。
破片が闇と光の運び手装備と〝霊湖水晶の外套〟に衝突しまくる。
旋回しながら、またも飛来してきた炎槍を上昇し、天井を蹴って急降下しながら避け、そのまま飛翔し、またも飛来してきた炎槍を右に移動して避ける、次に飛来した炎槍を凝視、その炎槍を見ながら横に傾けた神槍ガンジスで<豪閃>を繰り出した。
炎槍を方天画戟と似た穂先で、バターでも斬るように真っ二つに両断し、憤怒のゼアの左側に回り込む。
憤怒のゼアは半身となって相対。
右上腕と下腕の腕先を俺に向けている。炎翼の一部が変形し、巨大な炎槍に変化しては、メイラとエラリエースたちの後衛へと山なりの軌道で送り込んでいた。
同時に、正面から吐き続けている相棒の紅蓮の炎を<炎槍・炎破壊神贄>の業火の炎で押さえ込んでいた。
相棒はかなりがんばっている。
ラホームドの<大脳血霊坤業>や<不死乾坤術>とは異なるスキルで、エネルギー源が増えたのかな。
しかし、憤怒のゼアに素直に半身で相対されると、遠回りするように宙空を飛翔して移動している分、損した氣分になる――。
そんな憤怒のゼアへ《氷竜列》を発動――指先から、氷の巨大な龍頭の群れが発生。
氷龍の頭は瞬時に、黒狼馬ロロディーヌのような氷のドラゴンを生むように誕生させる。それら竜の群れが列と成って憤怒のゼアに直進した。
憤怒のゼアは右上腕を上ると、その腕の十数メートル前の宙空に熱波のような炎の波動が展開された。
その熱波に触れた氷のドラゴンは溶けながら爆発を繰り返しつつ、炎の波動を乗り越えて憤怒のゼアに近づいたが、右上腕から飛び出た炎の魔剣に、氷竜列のすべての氷のドラゴンが貫かれ、爆縮が起きたような閃光を発しながらも爆発は起きず、蒸発したような魔力に変化し、炎の魔剣に吸い取られて消えた。
その憤怒のゼアは、
「先程の<仙魔術>と似た防御魔法といい詠唱を省略した上位の神級に近い魔法か――」
と、炎の魔剣から出た炎の塊に炎槍も飛来してきた。
それを左に移動し避ける。
「――そこの獣の炎も、我の炎をここまで防ぐとは驚く、だが――」
と語ると、体から放出されている業火の炎が強まった。
炎の翼も拡げ分厚く成り、アムシャビス族の秘密研究所の封印扉と衝突していた。
<炎槍・炎破壊神贄>の威力が高まって相棒の紅蓮の炎が押され始めた。
すると、天井と壁から〝紅の閃光の環〟が生成され、それが憤怒のゼアの炎の翼や体と鎧に纏わり付いていく。
『<翼紋結界>! 事前に憤怒のゼアが何かをしていたようですが、メリディア様とメンノアの秘策が炸裂です』
『さきほど作動させた魔法陣か』
『はい、秘密研究所特性でしょう、魔命の勾玉メンノアの秘策は憤怒のゼアに効いている火脈を封じたかもです』
『おぉ』
古の水霊ミラシャンの指摘通り、憤怒のゼアの相対的な炎と魔力が減退していた。
続けて、憤怒のゼアの足下から爆発が起きた。
相棒の紅蓮の炎が押し込んでいく。
その憤怒のゼアの体にヴィーネの光線の矢が複数突き刺さる。
レベッカの蒼炎弾が連続して衝突。
「……ぐぉ、邪魔な――」
幾つかは右上腕と左上腕が持つ炎の魔剣に切断されたが蒼炎弾は途中で形状を変化させ憤怒のゼアの体に衝突を繰り返していく。
そして、憤怒のゼアの体に刺さった光線の矢から、緑色の蛇の群れが憤怒のゼアの体の中へと侵入した直後、緑の閃光と緑の蛇の幻影が光線の矢が刺さった箇所から発生し、そこが爆発を繰り返した。爆発は小規模、傷を受けているように見えるが、炎に覆われる。
「魔毒の女神ミセアだと! くそな蛇女の顔を思い出す……」
更にエヴァの白皇鋼の金属刃が憤怒のゼアの体に突き刺さった。
憤怒のゼアは、
「げぇ……これも<血魔力>が混じって我の体を……」
皆の遠距離攻撃に嫌氣がさしたように、炎の翼で己を守るように前方に回し、防御を固めた。
魔界騎士ハープネス・ウィドウの左手の甲からドラゴンの牙のような魔刃が飛来していく。
そのドラゴンの牙は、憤怒のゼアの炎の翼を貫き、胴体に刺さっていた。
「チッ」
憤怒のゼアはハープネスを睨み、数個の炎の魔剣を召喚。
複数の炎の魔剣をハープネスに繰り出していく。
「<導魔術>にも見えるが、炎の魔神なだけはあるな――」
と発言しては魔槍を振るい、炎の魔剣を弾き避けていく。
その分、周囲に生み出していた炎槍の数が減る。憤怒のゼアはハープネスに集中している。
そんな憤怒のゼアの横から間合いを詰めていた死海騎士ヘーゼファンが、「借りを返してもらうぞ――」と発言し魔槍を突き出した。
憤怒のゼアは、「光と連む死に損ないが――」とヘーゼファンの足下から火山が噴出したような溶岩が炸裂。
不意打ちだったが、ヘーゼファンの魔槍から出ていた暗青色の魔力が溶岩と対消滅しながら爆発を繰り返し、ヘーゼファンは吹き飛ぶだけで傷を受けていなかった。
その間にも炎槍は追尾してくる。
その炎槍を上から下に振り降ろした堕天の十字架で叩き潰す。
飛来してくる炎槍の数は減少しているが、
ダメージを負いながらも憤怒のゼアは不自然に動いていない。
すると、「小賢しい蠅ども、我の邪魔をするな――」と、相棒の紅蓮の炎を負かす勢いで<炎槍・炎破壊神贄>を強めてきた。
更に、ユイの<バーヴァイの魔刃>が連続的にヒット。
「死神の幻影だと――」
ユイに向け炎槍を送る憤怒のゼア。
ユイは跳躍し、身を捻って炎槍を避けた。
そこに、ミスティの魔導人形のゼクスが振るう光剣から出た光の魔刃とイシュラの魔眼から放たれた光線が、憤怒のゼアに直進。
憤怒のゼアは、炎の翼を拡げた。その炎の翼が守れていない足と体の部位に連続的に衝突していく。
「チッ、次から次へと――」
憤怒のゼアの体から炎の衝撃波が発生し、ミスティはゼクスごと「きゃ」と吹き飛ばされる。
憤怒のゼアは半身を左右に動かしながらも退くことはしなかった。
その直後、メンノアの三眼が煌めく。
霧状魔力が幾つも憤怒のゼアの周囲に発生していく。
憤怒のゼアが放っている様々な炎と炎の形状の武器をも吸収していく。霧は、時折、紅色に輝きを帯びた。
『メンノアの<紅ノ魔吸霧>でしょう。霧の領域の【紅光の霧】でアムシャビス族が学べると聞いたことがあります』
『へぇ』
古の水霊ミラシャンは古い【魔命を司るメリアディの地】と【レイブルハースの霊湖】のことなら結構知っているか。
「ぐぉぉ……」
憤怒のゼアのくぐもった声が地響きのように地下層に響いた。
憤怒のゼアの足下の炎の亀裂と魔法陣が寸断されている。
小形の魔法陣が次々に破壊された。
火脈への繋がりを断つことに成功したか。
封印扉のダイヤル錠と似た丸い円が逆方向に回り始め、無数の多孔が逆再生をするように収縮していった。
憤怒のゼアは、
「くっ、アムシャビス族と関係した者たちがいるとは――」
と発言、魔命の勾玉メンノアに怒りを向け、前に動くと同時に炎の魔剣をメンノアに飛ばす。
その憤怒のゼアに両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出――。
二つの<鎖>は憤怒のゼアの周囲に浮かぶ無数の炎槍に防がれていく。
そんな憤怒のゼアは相棒に<炎槍・炎破壊神贄>の炎を繰り出し続け、皆の遠距離攻撃を喰らい、防ぎながら、巨大な魔法の炎剣を生み出し、それをメンノアへと飛ばす。
メンノアは素直に後退した。
地下層が広いお陰でメンノアには巨大な魔法の炎剣は当たらないが、柱の数本は巨大な魔法の炎剣により切断されていた。
その憤怒のゼアは<炎槍・炎破壊神贄>を強める。
神獣ロロディーヌの紅蓮の炎も勢いを増したから、二つの炎は先程と同じく拮抗し、激しい気流を巻き起こす。
ネックレスのメリディア様の秘石がかすかに振動。
その振動は相棒とメンノアのことを褒めるように感じた。
同時に、黒狼馬ロロディーヌの背後に、薄らと、橙と漆黒と紅蓮の魔力のグラデーションが美しい戦神イシュルル様と魔裁縫の女神アメンディ様らしき幻影が出現している。
相棒の紅蓮の炎は、単なる業火を超えている。
神界と魔界の力を合わせた光魔ルシヴァルの炎だろう。
相棒の紅蓮の炎が強まり、憤怒のゼアの<炎槍・炎破壊神贄>の炎を押し込んでいく。
「――獣めが、神界と魔界の神々の加護まで得ているとは――」
<炎槍・炎破壊神贄>が強まって押し返す。
魔神の一柱の憤怒のゼアの業火の炎は凄まじい。
凄まじい熱波と、炎と炎のせめぎ合い――。
あまりにも圧倒的な光景は、神話の一場面を想起させた。
相棒の本気の紅蓮の炎をここまで防ぎ押し返そうとしている<炎槍・炎破壊神贄>とは、とんでもない炎だ。
まさに、魔神の一柱たる魔界の炎。
十層地獄の王トトグディウスも、このような炎を放てるのだろうか。
俺たちに飛来してくる炎槍の数がまた増えてきた――。
水神ノ血封書の<始祖ノ古血魔法>の<水血ノ断罪妖刀>を狙うが、隙がないし、味方も多い、今は止めておくか、水神ノ血封書を消す。
皆の遠距離攻撃の数も単発になってくる。
反撃に左手首の<鎖の因子>の印から<鎖>を射出。
《氷竜列》を再び繰り出すが、炎の魔剣が飛来し、
「――先程の魔法か、神級と呼べる威力のようだが一度見れば対処は楽、無駄だ――「『<憤怒ノ絶衝撃>――』」――」
神意力を有した衝撃波の<憤怒ノ絶衝撃>で<鎖>ごと《氷竜列》がまたも防がれた。<鎖>の一部が欠損した。
その<鎖>を消して再び、憤怒のゼアの斜め横から――。
両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出していく。
<光条の鎖槍>を五発繰り出した。
二つの<鎖>と五つの光の槍が重なり合うように憤怒のゼアに向かうが、
「『<憤怒ノ絶衝撃>――』」
またも衝撃波のゼアゴラムに防がれる。
光属性をも消し飛ばす<憤怒ノ絶衝撃>とはなんだよ――。
まさに、神の一撃だ。
憤怒のゼアは左上腕から噴出している<炎槍・炎破壊神贄>を維持しながら前進し、
「火脈を封じたとて、我も憤怒の名が付く炎の魔神、獣の炎に負けていられぬわ!」
と叫び、<炎槍・炎破壊神贄>を弱めながら右下腕に生み出した炎の魔槍を相棒に<投擲>――。
その相棒は紅蓮の炎を吐きながら旋回。
大丈夫と思うが、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を送り、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で憤怒のゼアの炎の魔槍を弾き飛ばした。
その憤怒のゼアへと、左右から死海騎士ヘーゼファン・ロズナルドと魔界騎士ハープネス・ウィドウが近づくのを把握、俺も正面から、間合いを詰めた。
ハープネスとヘーゼファンの魔槍と同時に神槍ガンジスで、<血刃翔刹穿>を繰り出した。
憤怒のゼアは余裕の間で、右上腕と下腕に握る炎の魔剣を左右前後に出し、神槍ガンジスの穂先とヘーゼファンとハープネスの攻撃を弾く。
神槍ガンジスの穂先から迸る血刃も、炎の魔剣と体から発した炎の礫で相殺された。
構わず、堕天の十字架で<戦神流・厳穿>を繰り出す。
憤怒のゼアは「ハッ、我に接近できただけでも褒めてやろうか」と、下段の堕天の十字架の<戦神流・厳穿>は衝撃波で軌道をズラされた、同時に、炎の魔剣で、ハープネスとヘーゼファンの魔槍と数合打ち合っている。
憤怒のゼアは、二人の魔槍から出ている魔刃を寄せ付けていない。と、時折上昇し左上腕が炎になっている<炎槍・炎破壊神贄>を維持し続けている。
皆の攻撃の気配を感じ退いた。
ヘーゼファンとハープネスも、俺の呼吸に合わせたように、憤怒のゼアの炎の魔剣の斬り払いを屈んで避けながら退いた。
そこに、「ん、ロロちゃんをいじめるのダメ!!」と魔導車椅子から離れて骨の足状態のエヴァの姿が見えないほどの白皇鋼の金属の刃が憤怒のゼアに降り注ぐ。
いつもより金属の数が多い、滂沱の勢いだ。
そして、<闇透纏視>で見なくても分かるほどに表情がいつものエヴァではない、<筆頭従者長>エヴァの本気モードか。
一瞬で、防御に回しただろう、憤怒のゼアの炎の翼が消し飛ばされていた。
「なっ!?」と、驚いた憤怒のゼアは、金属の刃に全身を貫かれるまま吹き飛ばされた。
「ぬごぁぁ――」
憤怒のゼアは驚きのまま左上腕と繋がっていた炎の<炎槍・炎破壊神贄>が消える。
「エヴァ、すごい!」
「「はい」」
「ここです、皆様――」
「「おぉ」」
相棒も「にゃ……」と声を発したが、元氣がない。
紅蓮の炎を止めると力をだいぶ消耗したように四肢をだらんとさげて、降下していく。
当然か、ずっと紅蓮の炎を出し続けてくれた。
その相棒の前に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を送りつつ、吹き飛んだ憤怒のゼアに直進――背後から、
「「「ロロ様――」」」
「「「ロロちゃん!」」」
ヘルメたちの声が聞こえた。
相棒は皆に任せよう。
吹き飛んだ憤怒のゼアに、ユイがイギル・ヴァイスナーの双剣から<バーヴァイの魔刃>を飛ばす。
ヴィーネも翡翠の蛇弓で光線の矢を射出。
ヘーゼファンは魔槍を掲げ何か呪文を唱えた。
ハープネスは十文字槍の穂先が煌めかせ、その魔槍を<投擲>。
灰銀色の魔力が零れていく、次元属性を備えた<魔槍技>の<投擲>技か?
俺も、憤怒のゼアと味方の位置を確認してから、王級:水属性の《王氷墓葎》を発動――。
右腕から先の扇状の世界を無数の注連縄を腰に巻く子精霊が踊り狂う氷の盛況が支配した。
ドッとした音が響くと凄まじい冷気が周囲に発生――。
――巨大な氷の墓標を伴う氷の道が憤怒のゼアに直進。
冷気がびゅうと谺する。
秘密研究所の封印扉ごと破壊してしまうかもだが――。
憤怒のゼアは、ハープネスの魔槍を<超能力精神>のような魔法を繰り出し、眼前でハープネスの魔槍を止めながら、
「『<憤怒ノ業殻螺>』」
炎を宿した巨大な貝殻骨、そのような巨大な塊を髪と体の一部から生み出した。
その<憤怒ノ業殻螺>が、直進し、ハープネスの魔槍を弾きながら、氷の墓標の《王氷墓葎》と衝突すると、巨大な氷の墓標を伴う氷の道はすべて粉々に砕け散った。
<憤怒ノ業殻螺>は憤怒のゼアの体の中に消えていく。
憤怒のゼアも結構消費したような表情となっている。
そこにレベッカの<血道第二・開門>の<光魔蒼炎・血霊玉>の勾玉が衝突すると、憤怒のゼアは体を歪めながら「ぐぇ」と吹き飛ぶ。
が、上空に転移。
憤怒のゼアは見下ろすように、こちらを凝視。
レベッカは構わず、蒼炎の球体を周囲に撒いていく。
ラホームドを封じた蒼炎か。
「『……我に傷を……このままで済むと思うなよ、我の火脈支配の力を――』」
憤怒のゼアの詠唱が響き渡る中、四本の炎槍から放たれる業火は地下層の空間そのものを焼き尽くさんとするかのような威力を帯びていく。端正な顔立ちは業火に照らされ、より神々しさを増していた。
「『古の炎よ、我が槍に宿れ――』」
術式の詠唱に応えるように、地下層の床から火脈そのものが噴出。盛り上がった。紅の閃光が走る中、古代の魔法陣が次々と共鳴していく。
「閣下、翼紋結界が――」
「「「「「ギャァァァァ」」」」」
メンノアの警告が完了する前に、古代アムシャビス族の結界を構成していた幾何学的な魔法陣が次々と崩壊していく。紅の光芒を放っていた結界の表面には亀裂が走り、そこから漏れ出す魔力は血の雨となって降り注ぎ、地下層の空気を赤く染め上げていった。憤怒のゼアの火脈支配による力が、古の魔法文明の壁をも打ち砕いていく。更に、次々と憤怒のゼアの眷族たちが生まれ現れ、その断末魔が地下層に響き渡る。一部の眷族たちを犠牲にした?
憤怒のゼアの火脈と繋がった魔力は、身内の眷族すら焼き尽くしていく。
「にゃごぉぉ――」
元氣を取り戻した黒狼馬ロロディーヌが、皆を振り払い、こちらに突っ込んでは口から紅蓮の炎を吐いた。神獣の純粋な紅蓮の炎は浄化の光を伴い直進。
盛り上がった地面から憤怒のゼアの眷族たちを現れたが、その眷族たちを燃焼させる。
触手から放たれる骨剣は、憤怒のゼアの足下に向かう。
だが、憤怒のゼアの繰り出した炎槍と交錯し、防がれていた。
ラホームドもカッと見開いた双眸から<血魔力>の光線を憤怒のゼアに繰り出すが、炎により防がれる。
神槍ガンジスに<血魔力>を纏わせ、堕天の十字架を消し、左手に持ち替えながら前進。
右手に魔槍杖バルドークを召喚。
すぐに<光魔血仙経>と<覇霊血武>を連鎖的に発動させる。肩の竜頭装甲ハルホンクが「ングゥゥィィ」と古代の竜の咆哮のように呼応した。
魔槍杖バルドークから溢れ出る魔力が液体の鎧のように俺の体の節々を包み込み第二の皮膚のように一体化。
魔力経路が一斉に目覚め、体内の魔力が共鳴していく。
その時、メイラとエラリエースの声が響く。
「メンノア、私たちの光の力を! シュウヤ様も!」
「姉さん! この光を」
神界の加護を帯びた光の魔力が、床に浸透した。
同時に
「閣下!」
「御使い様」
ヘルメとグィヴァからメンノアの足下の紅の閃光を発している魔法陣に水と雷の精霊の魔力が浸透。
「翼紋結界が強化され再発動しました」
メンノアの言葉と共に、古代アムシャビス族の結界が完全な輝きを放つ。
「ハッ、無駄だ。光を強めた結界とて、所詮は、メリディアが造り上げた魔界の術式――」
憤怒のゼアは嘲笑を浮かべるが、その表情に僅かな焦りが見える。
結界の光が憤怒のゼアの炎の一部を押し返し始めていた。
その隙を突くように、ハープネスとヘーゼファンが両側から接近。魔界騎士の魔槍と死海の魔力を帯びた死海魔槍レゼラフィが、憤怒のゼアの防御を左右から崩そうとする。
炎槍と魔剣を左右に飛ばすが、ハープネスとヘーゼファンは払いながら魔槍を突き出した。
「クソッ! このような――」
憤怒のゼアは無数の炎の魔剣を盾にし、魔槍の突きを防ぐが、言葉が途切れた瞬間――。
ヴィーネの放つ光線の矢が炎の翼を貫く。
それは単なる攻撃ではなく、魔毒の女神ミセアの力を宿した蛇の幻影となって憤怒のゼアの魔力を蝕んでいるようにも見えた。
「げぇ――」
その瞬間を逃さず、レベッカの蒼炎とエヴァの白皇鋼の刃が憤怒のゼアに襲い掛かった。
チャンス――。
「今だ!」
「にゃご」
相棒の黒狼馬ロロディーヌが最大の紅蓮の炎を放つ。
その炎は神獣の浄化の力そのものが具現化したかのような輝きを帯び、憤怒のゼアが周囲に生み出した炎槍を押し返し、ハープネスとヘーゼファンが退いた中央を直進した。
相棒の紅蓮の炎をもろに浴びた憤怒のゼアは天井に張り付けになった。
すかさず<血道第三・開門>――。
<血液加速>を再発動。
<血道・魔脈>を発動。
<水月血闘法>を発動。
<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>を意識し、発動。
魔槍杖バルドークから風と紅光と紅の稲妻と血の<血魔力>に漆黒と紅蓮の炎などが行き交う。
そのまま<始祖古血闘術>と<経脈自在>を発動させる。
下の宙空から、天井に張り付け状態の憤怒のゼアに近づく。
相棒は紅蓮の炎を吐くのを止めた。
途端に憤怒のゼアは前のめりに動く。
肌は熔解された金属のように煌めいているが、一部の体の再生は極端に遅い。
右足の踏み込みから、魔力を込めた神槍ガンジスを突き出すフェイク。
槍纓が蠢き、憤怒のゼアの右目が反応。
そのまま魔槍杖バルドークで<魔雷ノ風穿>を放った。
※魔雷ノ風穿※
※魔槍雷飛流技術系統:武槍技※
※魔槍雷飛流技術系統:極位突き※
※雷炎槍流系統:上位突き※
※闇雷槍武術系統:上位突き※
※風槍流技術系統:最上位突き※
※豪槍流技術系統:上位突き※
※悪愚槍流技術系統:上位突き※
※塔魂魔槍流技術系統:上位突き※
※女帝槍流技術系統:上位突き※
※獄魔槍流技術系統:上位槍突貫※
※魔竜王槍流技術系統:上位突き※
※豪槍流技術系統:上位突き※
※独自二槍流技術系統:上位突き※
※独自三槍流技術系統:上位亜種突き※
※独自四槍流技術系統:上位突き※
※太古の闇に通じる槍の極位突き※
※闇神アーディンの愛用突き※
※様々な槍武術の突き技を得た者が獲得できる『武槍技』※
※『魔槍技』と似ているが異なる※
※闇と雷が強いが、風属性を得たようにも見えるだろう※
※風をも穿つ魔雷の武槍技※
動揺したような憤怒のゼアは、「くっ」と魔剣を伸ばすが、それを弾く。
紅矛と紅斧刃は、右上腕を穿ちながら肩から頭部に向かうが、憤怒のゼアの下腕が弾けながら炎に変化、その炎により、魔槍杖バルドークの軌道をズラされる。
構わず神槍ガンジスで<光穿・雷不>を放つ――。
刹那、メリディア様の秘石が強く振動し、胸の<光の授印>が光を放つ。
「な!?」
憤怒のゼアの動きが一瞬止まる。
右上腕は再生しかけ右下腕が炎の腕剣に変化しているが、それを弾きながら、憤怒のゼアの腹に神槍ガンジスの穂先が突き刺さった。
神槍ガンジスの柄の真上に、<光穿・雷不>が出現。
八支刀の形を成した光が光神ルロディスの涙のように煌めきながら憤怒のゼアに向かって疾駆する――。
<光穿・雷不>の刃が、憤怒のゼアの体から迸る業火の炎と激しく衝突したが、八支刀の形を成した光芒は天界からの裁きのように、炎ごと憤怒のゼアと天井の一部を貫いた。
憤怒のゼアは体が蒸発するように点滅、一部が欠損し、体の一部が消えながら降下していったが、まだ安心はできない。
「にゃごぉぉ!」
心の声に応えたように黒狼馬ロロディーヌが触手を伸ばす。
憤怒のゼアの残りの体に、触手から出た骨剣が突き刺さり、頭部をも貫いた。
憤怒のゼアはしぶとく、攻撃を受けながらも、
「『光槍技……ぐぉぁぁ』」
と、神意力を発した。
残りの炎の体から膨大な魔力が噴出し、溶岩のような軟体を再生しながら地面に衝突し、床を転がった。
そこに相棒が口を拡げ、「にゃごぁぁ」と紅蓮の炎を吐いた。
魔神の放つ業火すら浄化せんとする威力を帯びている。
が、憤怒のゼアは体の一部を溶かしながらも、立ち上がる。
「『――邪魔をするなッ!』」
憤怒のゼアの足下の亀裂から真上に現れた四本の炎槍から、更なる業火が迸った。
憤怒のゼアは、足下の火脈からエネルギーを得ているように体を急速に回復させていく。
同時に周囲に衝撃波と炎を繰り出した。
その炎は地下層の空気を焼き尽くさんばかりの熱量を放っていた。
相棒は後退。
<超能力精神>で衝撃波を弾く。
「――明らかに消耗しています!」
メンノアの声に応えたように「はい!」とヴィーネが翡翠の蛇弓から光線の矢を放つ。
その光線の矢が、再生したばかりの憤怒のゼアの炎の翼を貫いた。
同時にレベッカの<光魔蒼炎・血霊玉>が、魔神の左腕を直撃。
「ぐあぁっ!」
憤怒のゼアが一瞬の隙を見せた刹那、死海騎士ヘーゼファンの死海魔槍レゼラフィが閃く。暗青色の魔力を纏った一撃が、魔神の右腕を捉えた。
「フハハ! それだ、光魔ルシヴァルの仲間たちよ!」
魔界騎士ハープネスの声が響く。
「はぁぁぁっ!」
ユイの放つ<聖速ノ双剣>が憤怒のゼアの防御を更に崩す。イギル・ヴァイスナーの双剣から放たれる光の刃は、古の聖戦士の威光を帯びていた。
そこに、ヘルメが<滄溟一如ノ手>――。
無数の水の滄溟の手が憤怒のゼアの炎を消し去る。
グィヴァが、<暗雷大剣グィヴァ>――。
巨大な雷状の大剣が、憤怒のゼアの胴体に突き刺さり、突き抜けた。再生するが、憤怒のゼアはフラつく、が、周囲に無数の炎の魔剣を生み出し、魔剣乱舞のような強烈な反撃を繰り出してきた。
ヘルメとグィヴァは、憤怒のゼアの前後に移動。
神槍ガンジスと魔槍杖バルドークで魔剣を払い、魔刃を跳躍し避ける。皆も、華麗に動き炎の魔剣と魔刃を避けた。
憤怒のゼアは口から炎を吐いたが、相棒のビーム状の紅蓮の炎と相殺。
そこに、憤怒のゼアの体にエヴァの白皇鋼の金属の刃が突き刺さる。
「ぐえ」
と上昇して逃げようとしたが、常闇の水精霊の《水幕》と闇雷精霊グィヴァの<雷裳陣>が交錯し、憤怒のゼアを囲う強力な魔法陣が展開されていた。憤怒のゼアは強引に突き抜けようとするが、レベッカの蒼炎弾とミスティの<血礫・貫通>を喰らい、髪の毛が<雷裳陣>に触れて燃えると、落下してくる。
「主! 今です!」
ラホームドの声を合図に魔槍杖バルドークに<血魔力>を込める。
その間にも憤怒のゼアは、メンノアから白と紫の魔刃を喰らい、死海騎士ヘーゼファン・ロズナルドの<投擲>された魔槍の一撃も防げず、下半身が吹き飛ぶ。
「――くそが……」
憤怒のゼアは下半身を再生させるが、右上腕が、ハープネスの<魔皇・無閃>のような攻撃を喰らい、消し飛ぶ。
そんな状態からも業火を放つ。
ハープネスとメンノアと、レベッカと、ミスティが吹き飛んでいた。
相棒の触手が動いて、レベッカとミスティとメンノアを救う。そこに憤怒のゼアの炎の魔剣が皆に、飛来――。
その炎の魔剣を魔槍杖バルドークで払い退ける。
憤怒のゼアは左側に炎の盾を生み出しているが、既に皆の攻撃によって、守りには、たしかな綻びが生まれていた。
「ンンン!」
そこに、相棒の黒狼馬ロロディーヌの口から、紅蓮の炎が放たれた。憤怒のゼアも口と左右の両腕を業火に変える。
「『――魔神を舐めるなよ……<憤極炎我>』」
途端に、憤怒のゼアの両腕の業火が、相棒の紅蓮の炎を弾き飛ばす。
距離を詰めていた死海騎士ヘーゼファンも吹き飛ばされた。俺も衝撃波を喰らう――。
痺れる!?
神槍ガンジスで、床を突き――衝撃波と痺れに抵抗する。
コンマ数秒後、黒狼馬ロロディーヌ以外の皆が吹き飛ばされていた。
痺れは回復したが、<憤極炎我>の――目に見えない、なんだ――。
神意力の熱波のような、不可思議の力により、体が非常に重い。重力か?
構わず、<沸ノ根源グルガンヌ>と<魔闘術の仙極>に<煌魔葉舞>などを次々に発動させた。
少し楽になったところで、強引に両手首から<鎖>を射出――。
二つの梵字に<鎖>は途中で止まる。
と「『<憤怒真因果>』――」
<鎖>は溶かされ始めた。すぐに消す。
「ん!」
「なによ、これ――」
「負けません」
「にゃご」
「くそが」
「ここにきてこのような力を……」
皆、それでも、こちら側にゆっくりと来る。
憤怒のゼアは、
「『……ふむ、<憤極炎我>を浴びても尚も動けるとは、我をここまで消費させることはある。しかし、まさかここまで火脈を、これでは本末……惜しいが、戦闘に特化している光魔ルシヴァル故か――』」
発言すると、体が揺らぐ。
四腕二眼の四腕を人の手に変化させ、その右上腕と左下腕の手を額、目元に当てた。
人差し指と中指を揃えて、薬指と小指を揃えて、その間に二つの揃えた指の間に、炎の二眼を生み出す。
炎の魔眼か、嫌な予感、<脳脊魔速>――。
「『<憤怒ノ極我想・反炎>――』」
刹那、炎の魔眼から放たれる業火は、空間そのものを焼き尽くすかのように歪ませながら拡がっていく。
<脳脊魔速>以上の速度か――。
が、<脳脊魔速>以上の速度加速技はない――。
強引に、魔槍杖バルドークで<紅蓮嵐穿>を発動。
その炎は単なる熱ではなく、魔神の意志が具現化した因果律をも焼き切る破滅の炎に見えた。憤怒のゼアの分身は半透明のまま、因果の炎を纏いながら、物理法則すら無視するかのように瞬時に距離を突き破り、<紅蓮嵐穿>を通り抜けるように、超えてきたァ――。
氣付いたら、半透明の炎の魔槍が腹に突き刺さって吹き飛ばされていた。
魔槍杖バルドークが宙空に飛ぶ。
「「げぁ――」」
「「きゃぁ――」」
「「うぎゃぁ」」
――柱に衝突、皆の腹にも半透明の炎の魔槍が突き刺さっている。腰の魔軍夜行ノ槍業は無事だが、その腰の魔軍夜行ノ槍業に魔力を送った。
『弟子、私を囮として使うべき』
『ふむ、弟子にはまだ秘策があるはずだ』
『<ラシャガンバルの魔次元波動>のような攻撃だったな、魔神は、強い……』
『シュウヤ様、私を囮に!』
『我もいる』
『ミラシャンとシュレは後だ』
『はい』
『ハッ』
「にゃごぉ……」
「大主様に主様!!」
相棒には無数の炎の魔槍が刺さっていた。
ラホームドだけは無事か。<脳脊魔速>が消える。
俺の腹を貫いた、この半透明の炎の魔槍を潰すように掴む。
闇と光の運び手装備と〝霊湖水晶の外套〟をぶち抜いている。
痛すぎるが……即座に<血道第五・開門>――<血霊兵装隊杖>を発動。
続いて<霊魔・開目>を意識し発動。
更に<血道第六・開門>――。
<血道・明星天賦>を発動。
<血道・九曜龍紋>を発動。
<煌魔・氣傑>と<黒呪強瞑>と<魔仙神功>を発動――。
――体中の血道・魔脈と連結している魔点穴が熱く滾る。
無数の開いた毛穴から<血魔力>が溢れ、深紅の霧となり、蒼白い光へと変化。
<魔仙神功>の真髄が全身の神経網に染み渡って、力を得ながら、半透明な炎の魔槍を抜き――立ち上がった。左手に金漠の悪夢槍を召喚――。
<雷光ノ髑髏鎖>を発動し、金漠の悪夢槍に絡める。
魔槍杖バルドークを右手に<握吸>で引き寄せる。
消して、魔槍ハイ・グラシャラスを右手に召喚。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を再召喚し、憤怒のゼアの右前に送る。憤怒のゼアは反応し、複数の炎の魔剣を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に衝突させていく。
「――驚きだ、魔力が噴き上がっている。ここにてきて攻防力も増しているような印象だ。しかも、血の龍を体から発し……我の<憤怒ノ極我想・反炎>を受けて動けるとはな……」
続けて<血道・神魔将兵>を発動。
数体の血霊衛士のような血道・神魔将兵を突撃させた。
憤怒のゼアは「『無駄だ――』」と叫び、皆に致命的な攻撃を繰り出していた炎の分身体を己の本体に戻しながら、炎の衝撃波を飛ばし、血道・神魔将兵を消し飛ばす。
骨装具・鬼神二式と雷炎槍エフィルマゾルを右前に放るように出し、
『――シュリ師匠とトースン師匠、一瞬の囮を頼みます。あとは俺がやりますから』
『『了解――』』
憤怒のゼアはシュリ師匠とトースン師匠に注意を払う。
「――武装魔霊か?」
「そこ――」
起き上がっていたレベッカが、蒼炎の球体と蒼炎弾に<光魔蒼炎・血霊玉>を憤怒のゼアに付着させていた。
「にゃご――」
「チッ」
相棒も口から細い、螺旋状の紅蓮の炎を吐いた。
憤怒のゼアは四眼の内の二眼の魔眼を煌めかせつつ、片腕を消すように片腕を業火の炎に変化させ、相棒の細い紅蓮の炎と相殺させるが蒼炎弾を次々に体に喰らって、一部の体が消し飛んでいく。
トースン師匠とシュリ師匠が、
「<闇神式・練迅>――」
骨装具・鬼神二式が煌めいた。
骨の魔槍と両腕のアサルトライフル型の骨装具・鬼神二式から雷を纏う骨刃を噴出させる。
雷炎槍エフィルマゾルを持つシュリ師匠も<雷炎縮地>から、<雷炎槍・瞬衝霊刃>を繰り出した。
憤怒のゼアの体は、消えたように炎が収縮するが、再生し、その再生した体は、雷を纏う骨刃によって貫かれまくる。
その憤怒のゼアは、「『<憤極炎我>』」と神意力を伴う衝撃波を繰り出し、シュリ師匠は吹き飛ばされた。
『主、私も!』
『おう』
右手の爪から古の水霊ミラシャンが放った<水晶銀閃短剣>は、虹色の軌跡を残しながら憤怒のゼアの体に突き刺さる。
短剣は憤怒のゼアの体内で光の結晶となって砕け散り、その破片が無数の蝶のように舞い散る。
『<水晶群蝶刃>!』
光の蝶は一斉に憤怒のゼアの体内へと飛び込み、その内部から魔力の流れを寸断していく。古代の水霊術と水晶魔術が織りなす美しくも残酷な一撃は、憤怒のゼアの体の再生を一瞬阻害した。
「くっ、<水晶魔術>とは――」
その隙を逃すまいと、金漠の悪夢槍と魔槍ハイ・グラシャラスに<血魔力>を膨大に込めながら刹那、二つの魔槍を<投擲>――。
<白夢と悪夢>を繰り出した。
――宙を直進した金漠の悪夢槍と魔槍ハイ・グラシャラスの周囲の宙空が歪む。
それを見ながら前進――。
「チッ、それはまさか! <炎槍・炎破壊神贄>――」
憤怒のゼアは両腕から膨大な業火の炎を発した。
刹那、二つの魔槍の間から薄らと拡がった、【白銀の魔湖ハイ・グラシャラス】の幻影が<炎槍・炎破壊神贄>を吸収――そこから血が混じり滂沱の闇と<血魔力>と白銀が融合し、溶け掛かったような複数の魔刃と――。
闇に輝く金釵の糸刃が出現――。
それらが、月光と漆黒の闇が交錯するように伸びて、憤怒のゼアの体から出掛かった半透明の体ごと、本体を貫き、アムシャビス族の秘密研究所の【メリアディの命魔逆塔】の床ごと貫くように床に突き刺さる。
二つの魔槍は直進し、憤怒のゼアの本体を突き抜け、床に突き刺さっても爆発が数度続いた。
爆発の影響で白銀の魔力が紡ぐ光条が揺らめく。
「ぐえぁ……ぬかった……お前たちはそうだ、悪夢の女神……」
血濡れた白銀の刃と金釵の糸刃に憤怒のゼアは貫かれながらも生きているが、回復は異常に遅い――。
そこにエヴァの<血魔力>が内包された金属の刃とサージロンの球が、憤怒のゼアの頭部と体に突き刺さり、凹む。
雷を纏う骨刃も突き刺さるのを見ながら、前進――。
炎を体から噴き出してくるが<無方南華>を発動
そのまま炎を吸収しつつ右手で<無式・蓬莱掌>を繰り出した。
憤怒のゼアの胸が掌の形に窪む。
皆の位置を把握しながら<血鎖の饗宴>――。
体から出た無数の血鎖が、憤怒のゼアごと、白銀が融合し、溶け掛かったような複数の魔刃と――闇に輝く金釵の糸刃を貫きまくる。
――同時に、魔槍ハイ・グラシャラスと金漠の悪夢槍を回収。
憤怒のゼアの再生が追いつかなくなるまで前進し地下層の端のほうにまで移動したところで<血鎖の饗宴>を止める。
「ぐおぉ――そのままさせると――」
掌の<シュレゴス・ロードの魔印>が鼓動を刻むように輝きを放つ。
『主、最後の一撃、私にも参加を!』
『おう、頼む!』
<シュレゴス・ロードの魔印>から漆黒の影となって<鬼塊>が誕生。
異空世界の生命体は憤怒のゼアの体から零れ出る業火の魔力を貪るように吸収していく。その姿は古の魔界に伝わる死相の獣を思わせた。
「な、まさか旧神系か!?」
憤怒のゼアの驚愕の声が響く中、<鬼塊>は吸収した業火の魔力を内包したまま憤怒のゼアの胸元へと突進。そこで凄まじい魔力の爆発を引き起こす。
「ぐあぁっ!」
その隙を突くように、即座に右手に魔槍杖バルドークを召喚し、<血霊魔槍バルドーク>を繰り出した。
右腕ごと前に出た魔槍杖バルドークの穂先が紅光を放ち憤怒のゼアの炎と再生途中の体を突き抜ける。
「げぇ」
そこから紅蓮の炎を纏ったような血霊状の魔槍杖バルドークが飛び出て、直進し、憤怒のゼアの炎のすべてを吸収すると膨大な炎を撒き散らしながら
<血霊魔槍バルドーク>は、血の気配を纏いつつ、空気を切り裂く轟音響かせながら憤怒のゼアの再生した頭部をぶち抜いた。<血霊魔槍バルドーク>は閃光を発し神霊を現すように綺麗な女性を模りつつ魔力の嵐となって魔槍杖バルドークに収斂されると、魔槍杖バルドークの柄には古の魔法文字が浮かび上がり、その一文字一文字が血の色を帯びて脈動する。収斂された魔力は新たな神性を帯びた存在として再構築されていく。蒼白い炎と真っ赤な炎を纏った半透明の女性は、まるで新たな女神の誕生を予感させるかのような威厳を放っていた。
その女性は産声をあげるように、顔を上向けながら、無数の蒼い刃に変化し、真上に上昇――。
憤怒のゼアだった半透明なモノは『「なにぃ――新たな魔神だと!?」』と神意力を飛ばしてきたが、無数の蒼い刃に貫かれて、ボッ、ボボボッボボボボッ――と奇怪な音を発しながら炎上を繰り返す。そのまま、憤怒のゼアの霊体らしきモノがあった宙空に、〝魔神殺しの蒼き連柱〟が発生した。
天井の無数の孔からその〝魔神殺しの蒼き連柱〟の閃光が突き抜けていく。
膨大な魔力を得たが、同時に魔力などが魔槍杖バルドークと、半透明の女性に吸い寄せられていく。
ピコーン※称号:槍ノ神威※を獲得※
※称号:神座:神眷の寵児※を獲得※
※称号:炎ノ最上級魔神ヲ討伐せし者※を獲得※
※称号:神魔ノ女神ヲ産ミ落トセシ者※を獲得※
シュレゴス・ロードが、
『ふむ……主、今、真の神殺しの刃を手に入れたのだな。〝魔神殺しの蒼き連柱〟だが、あの蒼き連柱は、新たなる神座への道標。しかし、魔神の業火を浄化し、血の力と神威を交錯させ、そして新たな女神すら産み落とすとは――が、これはまだ序章にすぎませぬな……神座の道は、更なる高みへと続いていますぞ』
HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミック版発売中。




