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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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百六十九話 幕間エヴァ

 お父様とお母様は、わたしのことがきらい。

 わたしはふつうじゃないから、へんな足を持つから……。

 だから、こんな骨足なんてきらい……。



 ◇◇◇◇


 わたしはペルネーテの北西ホルカーバムの西のナイトレイ地方の男爵家の娘として生まれた。

 葉脈墳墓が近くにある。

 先祖帰りという魔族の血が色濃く残る紫の目と……。

 奇形な骨足を生まれながらにして持った異常な幼子。


 そんな奇形な骨足の代わりなのか、わからないけど……。


 <紫心魔功パープルマインド・フェイズ>と<念導力>の二つのエクストラスキルを生まれた時から持っていた。

 <紫心魔功パープルマインド・フェイズ>は手で触れた相手の心を読めるという特殊なスキル。

 <念導力>はわたしの魔力を使い、近くにある物を動かせたりする特異な力。


 父は、わたしが幼い頃……。

 脹ら脛と骨だけの異常な足を見て、不憫に思ったのか、鍛冶屋とさらに錬金術師でも高名だったドワーフ一家マセティノに大金を払い、わたし専用のトンファー武具と魔導車椅子の作成を依頼してくれた。


 最初は嬉しかった。

 でも作業が進むうちに嫌になっていく。


 特別な椅子を作るための素材として、髪の毛、血、爪、皮膚の一部が必要だからと、鉈で体の一部を切られたからだ。

 わたしだけが動かせる専用コアに必要なのだと言われても……。

 幼いわたしは何の事か解らない。

 だから恐怖でしかなかった。

 グドラ樹製で、金剛樹、白命鋼、錬魔鋼、霊魔鉱を掛け合わせると、ドワーフの一人が言ってた。

 けど、頭に入らない。


 そんなトラウマな生活が続いた時……。

 リリィがわたし専属のメイドで雇われて一緒に生活をするようになった。


「おじょうちゃまっを、わたぢが守るっ」

「ん、ちっさい」


 当時のわたしはこの言葉の意味が分からなかったけど、学校には行けなかったから友達ができたと思って嬉しかった。


 家にあるドワーフの作業場に向かうのが、リリィのお陰で少し楽になった気がした。


 それからリリィとは一緒に遊び回るようになる。

 そして、誰にも言わなかった事を打ち明けていた。


「りりぃー、わたし、気持ちがわかるの」

「きもちですか?」

「うん、心の一部だけ」

「すごいです、嬢様っ」

「でも、皆には内緒、リリィだけ」

「はいですっ」


 リリィのお陰で、毎日ちゃんとドワーフの作業場へ向かう事が出来た。


 時間が経ち、特殊なトンファー杖と魔導車椅子が完成。

 ドワーフ一家は仕事をやり遂げると、次の仕事がある西の帝国領へ向かい去っていった。


 父から、『この魔導車椅子を操作できるようになりなさい』と、厳しく言いつけられる。

 更に、高度な魔法も扱えて、近接の戦闘職業を持つクレイン・フェンロンという美人なエルフの先生も専属で雇われて、色々と魔法と武術の修行を行う事になった。


 この頃に、わたしの骨足が普通でない事に気が付く。


 足に魔力を溜めると、骨の表面に刻まれた不気味な紋章が輝いた。

 骨足を地面につけると、地面にある金属が、わたしの骨へと吸い寄せられて、奇形の剥き出しの骨足が鉄の足へと変化を遂げる。


 同時に<魔工士>という戦闘職業を得ていた。


 魔力をかなり消費することに驚いたけど。

 足が分厚い金属の足になるなんて、最初は……凄く怖かった。

 でも、もう骨の足は嫌いじゃない。

 わたしの新しい足……昔のように忌み嫌ってばかりではいけないと、そのお陰で学ぶことができた。

 勿論、足は普通じゃないけど、わたしの成長を促してくれる大事な骨の足。


 だから、ガイアの神に感謝。


 月日が経ち……。


 金属を足に吸着させることを、何回、何百回も繰り返していると……。

 <金属融解>というスキルを得た。

 金属の種類がある程度分かるようになった。

 この骨足に吸着だけでなく金属を精錬しつつ加工も出来ることを学んだ。


 炉を使わずに、この足を使えば金属をインゴット化させることも出来る。

 ん、凄い。と自然に声が出ていた。

 

 属性が土なのも関係あるのかもしれない。

 だから、先生に報告してみた。


「エヴァ、その才能は素晴らしいよ」

「ん、本当?」

「あぁそうさねっ、貴族の証明証拠だよ。専門の魔金細工師には及ばないが、土や金属を精製できたうえにその武器になる足。素晴らしい武器になる」


 先生に褒められて凄く嬉しかった。


 専門の人には敵わないけど、土や金属の精製だけなら、わたしにも出来る!

 元六大トップクランのメンバーだった先生から言われると嬉しい。


 先生の手を触って、確認したから本心だと分かる。


 それからは実際の金属足を含めた、大切な足にもなりえる杖であり特殊なトンファーの二つの金属棒を中心に武術の訓練も行っていく。

 先生も二本のトンファー金属棒をメインに使用している方だったので、わたしには好都合だった。


 父が最初から狙って先生を探していたのは後になってから知った。


 なので、自然とわたしも金属棒の扱いを学ぶ。

 <足使い>、<速舞士>、<足技使い>の戦闘職業、<軽棒術>スキルを得た。

 魔力操作も学び、魔法の勉強も行い、<魔法使い>、<魔道士>、<魔導使い>という戦闘職業を次々に得ていった。


 魔力の消費が激しいけど、鋼鉄足を使う武術は楽しい。

 骨足に合う鋼鉄義足を使う専用クロスボウも研究して作る。


 そうこうしているうちに……。

 戦闘職業が融合して<鋼魔士>という戦闘職業になって、<念導力>の紫魔力の扱いにも慣れた。

 そして、ついに、魔導車椅子にある魔導コアを反応させる事に成功した!


 自由に魔導車椅子を操作出来るようになった。

 変形して立ち上がる事も可能になった。

 ふふ、恒久スキル<金属融解>も、この車椅子のメンテナンスに利用できることを知る!


 車輪に様々な金属が収められる作りになっていることも知った。

 紫の魔力で金属を浮かして、操作、遠隔攻撃が出来ることも学ぶ。


 クレイン先生に、紫の魔力を見せたら、先生は魔力が備わった目でわたしを見つめながら、


「導魔術に近い技術だが、わたしは見たことがない。冒険者の中でもかなりレアな能力だね。迷宮都市で長らく活動していたが、鉄球使い、光斬糸、闇斬糸使いと同じぐらいに貴重な能力だと思う」

「ん、先生みたいに活躍できる?」

「それは実際に経験してみないと分からない」


 先生は笑顔でそう言ってくれた。

 また訓練を再開。


 でも、こうした修行の日々は唐突に終わりを告げた。


 父が政変に巻き込まれたからだ。

 わたしは父から命令を受けて、料理長のディーと召使いのリリィを伴い、当時、ナイトレイ家が出資していた料理店がある迷宮都市ペルネーテに避難させられた。


 父は貴族籍を吸収される形で土地を他の貴族に取られてしまう。

 そして、夜盗に狙われて命を落とした。

 母と執事も同じ。

 先生は多勢に無勢だったようだけど、なんとか逃げ切り、その知らせをわたしに聞かせてくれた。


 ……わたしはそれを聞いて、泣いた。

 父ショーン、母マリナ、執事ハギ……皆、死んでしまった。


 生きているのは、料理長ディー、召使いのリリィのみ。


 リリィとディーはそんな悲しむわたしを優しく見守ってくれた。

 先生は責任を感じているのか、金の切れ目が縁の切れ目なのか、わたしたちを置いて旅に出ると言って迷宮都市から去った。


 だけど、先生を恨むとか、父の仇を討とうとかは思わなかった。


 わたしのエクストラスキル<紫心魔功パープルマインド・フェイズ>で父と母の内面を幼い時から知っていたからだ。


 父がわたしを厳しく育てた理由は、愛ではなく貴族としての体面のためだけ。

 でも、それでも、大金を使って装備を調えてくれたのは、感謝している。


 だけど、母はわたしのことを忌み嫌っていた。

 表面はいつも優しく接してくれていたけど、足が気持ち悪いといつも心の中で愚痴をこぼしていたからだ。


 幼い時は、どうして両親は愛してくれないの……と、嘆いていた。

 そんな言葉を聞いていた、一緒に育ったリリィがわたしの手を握りながら、


「わたちは、嬢様をあいちてますっ」


 と、優しく話をしてくれて、それが本心と分かると、すごく心が温かくなり嬉しかったのは覚えている。


 ディーは甘い料理をいつも修業の後に出してくれた。

 優しいコックのお爺さん。そして、隠れた武術家であることは知っている。

 リリィと稽古しているところを見ているからだ。


 そのディーにも心が読めることを打ち明けていた。


「お嬢様、ありがとうございます。決して他言いたしませぬ」


 ディーは真剣な顔だった。


 そうして、ディーとリリィと三人で迷宮都市ペルネーテで、第二の生活を送ることになった。

 わたしは冒険者になった。

 料理長のディーも〝迷宮名物料理屋リグナ・ディ〟として新たな料理店をオープンさせた。

 召使いのリリィもわたしを追って冒険者となった。

 だけど、まだ数回しか一緒にパーティを組んでいない。


 わたしはなるべく、他の人と組みたい。


「お嬢様、今日こそはパーティを組みましょう」

「ん、駄目」

「えぇー、なんでですかっ」

「こないだ一緒に組んだ」

「もう一度です! わたしがお嬢様をお守りするのですからっ」


 リリィが手を握ってきた。


『お嬢様を守りたい、昔の誓いは忘れませんっ』


 リリィの気持ちは伝わってくる。


「ん、今日だけだからね」


 昔と変わらないリリィに嬉しくなったので、つい許可をしてしまった。



 ◇◇◇◇


 そんな生活を始めて、数年、いつの間にか、他の冒険者たちからは死の車椅子、死神のエヴァとか呼ばれて忌み嫌われてしまっていた。

 降りかかった火の粉を払っただけなのに。


「お嬢様、気にしてはいけません、お嬢様が強いから妬んでいるんですよっ」

「ん、ありがとう、リリィ」


 いつもリリィはわたしを支えてくれる。いい子。


「ん、メンテナンスして、店のために、迷宮へ行ってくる」


 今日も、魔導車椅子のメンテナンスを行う。

 これは、必ず毎日やるのが日課。


「はい、ついていくのは……駄目ですよね」

「駄目」


 リリィを危険な目には遭わせたくない。


「分かりました、待っています」

「ん」


 わたしは笑顔で頷いて、車椅子を操作。

 店を出てギルドでいつものように食材と魔石の依頼を受けて、迷宮へ向かう。

 鉱山の奥に、銀ヴォルクが湧いている依頼もあったが、奥には行かずに手前で、目的の鉱石を採り加工してすぐに出れば、銀ヴォルクに会わずに済むはず。


 わたしは二階層へ向かい、順調に狩りを行う。

 しかし、その途中、銀ヴォルクに遭遇してしまった。

 戦うしかない、こいつは守護者級と同クラスと呼ばれている初心者キラー。


 骨足の切り札を使いなんとかダメージを与えるが……。

 反撃を喰らってしまった。

 リリィ、ディー、ご、ごめんなさ、い……。



 あれ、わたしは死ななかった。

 背の高い、黒髪黒瞳で平たい顔だけどカッコイイ、冒険者に助けられた。

 不思議と吸い込まれそうな綺麗な瞳を持つ人……。

 ん、赤く光った気がする。


 わたしはその男の人に抱っこされていた。


「……ん……な、何?」


 考えがすぐに伝わってくる。


『黒髪が綺麗だ、シャンプーは何を使っているんだろう』

『身体が柔らかいし、綺麗な肌だなぁ、紫の瞳だって、凄く綺麗で黒髪にマッチして美人さんだ』

『小さい唇にキスしちゃいたいなぁ、ちゅちゅっと……』


 そこからはえっちぃなことばかり考えていた。

 リリィが言ってた通り男の人の考えはこんな事ばかり……。


「起きたね。大丈夫かな?」

「……」


 あれ、急にえっちぃな事はなくなった。


『まだどこか、怪我があるのか?』

『さっき回復魔法をかけたのに、心配だ。柔らかい身体だし、こんな若くて美人な子が……』


 彼は偽りの無い本心で、わたしのことを心配してくれていた。

 さっきのえっちぃなことも偽りの無い本心なんだ、本心で、わたしの容姿を褒めてくれていた……。

 不思議と心地いい気持ちになった。


「目は覚めてるよね?」

「……はぃ……」


『なんだ、顔を赤くして、俯いて、声が小さいぞ……』


「ごめんなさい……」


 そう返事をしていた。


「とりあえず、その車椅子に乗せればいいかな?」

「……」


 わたしは恥ずかしくて、頷くのみ。

 魔導車椅子を操作した。

 この男の人は優しい、丁寧に車椅子へ降ろしてくれた。

 そこに銀ヴォルクの死骸が目に入る。


「あなたが……アレを……銀ヴォルクを」


 銀ヴォルクを彼が倒したらしい。

 強い人のようだ。迷宮の帰りみちで本当に強いことを知る。

 槍使い、魔槍使い? しゅっしゅっしゅっと器用に凄い槍技と体術。

 ロロちゃんも凄かったけど、シュウヤのことが気になって、彼の横顔ばかり見ながら迷宮を脱出していた。



 ◇◇◇◇



 助けられたからちゃんとお礼をしたい。

 精算をすぐに終わらせて、彼をギルドの外で待つ。


 あ、きた。


「よっ、待っていたのか?」


 恥ずかしいけど、誘う。


「ん、そう……来て」


 少しして、


「エヴァ、どこに連れてく気だ?」

「ん、あっちよ」


 彼は不安気な表情だったけど、構わずに先導して店に案内した。


 リリィに食事を頼むと、


「さっき、お嬢様と呼ばれていたが?」

「ん……今は違う」


 ナイトレイ家の事はあまり話したくない。


「そか……」

「……ん」


 シュウヤはきょろきょろし始めていく。

 お礼をちゃんと言わないと……。


「――シュウヤ。来てくれてありがと。助けてくれたお礼をしたかった」

「おう、俺も食事は嬉しいよ。ありがとな」


 彼の笑顔を見ると凄く嬉しくて、これからも連面と重なるようにシュウヤと一緒にいたくて、どうしようもなくなっていた。

 リリィも手伝ってくれて、パーティを組んでくれとシュウヤに嘆願していた。


 最初は断られた。

 目の前が灰色に覆われたかのように感じて、凄くショックだった。


 ん、だけど、その瞬間、わたしは自分自身の心を知る。

 強くて助けてくれたシュウヤの事が、好き、好きなんだと。


 彼と離れたくないという思いが胸に木霊して苦しくなってきた。


 彼は闇ギルドと関わり合いがあるので断ろうとしてきたが、でも、わたしは素直に心の気持ちに従った。


 何とか説得していたらシュウヤは笑顔でこれからもパーティを組むことを約束してくれたっ、どきっと胸が鳴る。


 嬉しい。自然とシュウヤに抱き着いていた。


 明日もまたパーティを組む。

 楽しみ。可愛い黒猫(ロロ)ちゃんにもまた会いたい。

 けど、シュウヤの方がもっと会いたい。


 不思議と部屋が暖色に包まれたような、愛の女神様が光臨してくれたような気がして、凄く幸せな気分になった。


 早く明日にならないかな。



 ◇◇◇◇



 パーティを組んで、レベッカ、ヴィーネとも知り合った。

 ヴィーネは奴隷。最初はシュウヤに歯向かうような心持ちだったので、シュウヤに忠告すると同時に、わたしの大事な心を読む力を告白していた。


 彼はわたしの心読む力を知っても怖がらずに、尊敬の意思を示してくれて、美人だとか可愛いとか、気持ちを伝えてくれた。


 ふふ、嬉しい。

 わたしもシュウヤが大好き。


 でも、わたしの警告は意味がなかった。


 どうやら、心を読み間違えたみたい。


 シュウヤの事が好きだから、女、美人の女性に対して、いやな気持ち、狡い気持ちで見ていたのかもしれない。


 それに彼女はダークエルフ……。

 普通の心情とは異なっていたことも大きい。


 彼女は奴隷から解放されていた。

 シュウヤはヴィーネを信じているので、わたしも信じてみる。


 それから何回か偶然を装ってヴィーネに触れても、彼女は反抗どころか、わたしとレベッカにさえ、尊敬の意思を見せてくれた。

 シュウヤには尊敬を超えたある種の信仰に近い物凄い熱を帯びた感情が向けられていることも知る……。


 ヴィーネはシュウヤのことを愛していると、この時知った。


 わたしも負けていられない。

 チャンスを待つ。


 そんな事を考えて過ごしていたら、最近は夢にまで出てきて、シュウヤが耳元でえっちぃなことを囁いてくる変な夢を見るようになった……。

 でも、嬉しかったりする。


 そして、魔宝地図に挑むことになった。

 魔宝地図の場所は、迷宮の五階層。


 シュウヤは念のために戦闘奴隷を買ったりした。

 わたしたちを守りたい故の行動だと思う。


 大きな家も買っていた。


 ん、ディーとリリィには悪いけど、ここでシュウヤと住みたいな……。

 次の日に、迷宮、魔宝地図に挑む事になり、レベッカと一緒に帰った。


 帰り道の途中で魔道具店に寄り、魔物の本も買う。

 ん、今日は本を読んで五階層に湧くモンスターの勉強をしよう。皆の役に立つ。



 ◇◇◇◇


 ディーとリリィに話してからシュウヤの家に向かった。


 そこで予め、入念に戦術が話し合われる。


「驚くと思うが聞いてくれ。俺の左目には精霊ヘルメがいる。そして、指輪型魔道具の闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトで沸騎士が呼べる」


「ん、精霊様?」

「えええ!?」


 レベッカも興奮して騒いでいた。

 奴隷たちも凄く驚いていた。

 わたしもびっくり。


 ん、シュウヤなら十分ありえると思ったので、すぐに納得。


 シュウヤは、誰が前衛で、ワントップのフォワードだとか、ボランチが司令塔とか、エンドウがどうとか、パスワークが大事だとか、ゴールキーパーは吹き飛ばされないように頭をツルツルにしなければいけないとか、良く分からない事を言っていたけど、なんとなく通じていた。


 こうして、入念に戦術の話し合いを行う。


 わたしたちイノセントアームズは、ギルドで依頼を受けてから五階層へ飛んだ。


 五階層に湧いている様々なモンスターを倒し、順調に進むことができた。


 途中で、他のパーティと遭遇。

 彼らはトップクランの一つだった。


 でも、毒炎狼(グロウウォルフ)の大軍にメンバーの一人がやられてしまい、その炎毒を胸に浴びて苦しんでいた戦士を介抱しているところだった。


「周りの死骸から分かるように暴走湧き(スタンピード)に遭遇したようね。それに、あの怪我は毒? 中々厳しそう……」


 ん、レベッカが怖がってる。確かにあの毒は怖い……。


「ん、毒炎狼(グロウウォルフ)の炎毒」


 わたしも気を付けなきゃと思いながら話していた。


 そんな苦しんでいる人を見たシュウヤは駆け寄って話しかけていた。

 助ける気らしい。


 そして、本当に助けていた。


 ん、あんな水属性魔法も使えるシュウヤは本当に凄いっ。


 地図にある二つの塔の真下へ行く。

 二つの塔の下でも、シュウヤは守護者級のモンスターにやられそうになっていた一人の戦士を助けて、パーティを救っていた。


 シュウヤに攻撃をした守護者級の死皇帝(デスリッチ)は強かった。

 ん、皆でダメージを与えてもすぐに回復する。


 だけど、シュウヤが本気を出したっ!

 見たことのないっ紅い鎖を出していたっ!

 かっこいいっ、死皇帝(デスリッチ)が丸くなって潰れてしまった!

 なんという強さなのっ!


 すごい、紅い鎖、しゅしゅっしゅしゅー、わたしも使いたいっ。


 血を放出しているシュウヤのもとにレベッカと一緒になって、自然と駆け寄っていた。


「ほんとに大丈夫?」


 レベッカは心配しているみたい。


「あぁ、平気だよ」


 シュウヤはいつもの笑みだ。

 わたしは興奮した胸の内を伝えるっ。


「シュウヤ、さっきの凄かった! しゅしゅしゅしゅーっと、紅い鎖、新しい技?」


 ん、トンファーで真似をするっ。

 先生も凄かったけど、シュウヤも凄い! もっと上手くなりたい。


「そそ、これで守護者級は倒せたな」

「ん、魔石を回収しないと」


 シュウヤは笑ってくれた。

 自然と微笑んでしまう。


 シュウヤは……本当に優しくて強くて頼りになる。


 休憩後。



 魔宝地図を設置。

 金箱が出現して、もの凄い数のモンスターを、皆で一致団結して挑んだ。

 守護者級はシュウヤが一人で片付けた! 

 そこからは皆で、怒涛の勢いで、ほかのモンスターたちを狩る。

 シュウヤが買った高級奴隷たちは、優秀。


 金箱はヴィーネが開けた。

 ヴィーネは優秀な鍵開け師の実力を持つ。そして、アイテムを確認した。


 シュウヤはアイテムの独占をしない。

 欲しいアイテムを選ばせてくれた。


 髪飾りも貰う。


 そして、宝物の真珠のネックレスの争いになった。


 レベッカ、ヴィーネ、わたし、の三人でじゃんけんすることになる。


 わたしは負けたくない。

 少し狡い事をしてしまった。

 何回か、二人へ向けて手を伸ばして、体に触りながら心を読んでじゃんけんをして、わたしは勝利っ。


 ふふ。狡いけど、愛の女神様も許してくれるはず。


 そして、愛の女神様が許すどころか、チャンスをくれた。


 シュウヤが真珠のネックレスを掛けてくれたのだ。


 見逃さなかった。

 ん、わたしの高ぶった想いの丈をぶつける。

 えいっと、確固たる思いで、顔を上げて彼の頬へキスをした。


 シュウヤの頬は柔らかくて、剃った髭の感触も少しあった。

 わたしはもっとその感触を味わいたい、と思ったけど、離れてしまう。


 レベッカとヴィーネが叫ぶが知らない。

 わたしはわたしなりにシュウヤへ愛情を伝えるために努力をする。


 こうして魔宝地図も終わり、新武器を試しながらモンスターを倒して水晶体へ移動し地上に帰還。


 鑑定をしてもらっていると、シュウヤは貝殻の水着をわたしたちに着せたいと言っていたので、わたしは了承した。


 えっちぃなシュウヤ。

 でも、シュウヤだけえっちぃは許す。


 レベッカも驚いていたけど、負けないんだから、と小声で言ってから


「――わたしも着るわよっ」


 と宣言をしていた。


 わたしだって負けない。

 ただ、ヴィーネは勝ち誇っている態度だった……。


 確かに彼女は美人でプロポーションも良い。

 ……負けたくないけど、自信をなくしちゃう。



 ◇◇◇◇



 家に毎日きていいとシュウヤが話していた事を、ディーとリリィに相談したら、リリィが泣き出してしまった。


 “ついに、わたしを置いて男に走るのですね、ショックです”


 そんなことを連呼して、わたしを困らせてきた。

 ん、でも、ディーがリリィを嗜めて静かになったので事なきを得た。


 そして、シュウヤの屋敷に向かったら……彼は留守だった。

 シュウヤの側にはヴィーネがいる。

 彼女を伴って出かけたらしい。


 今度はわたしがショックを受けて泣きそうになった。


 胸中に一抹の不安がよぎる。

 妄想してしまう想いが浅ましいけど、黒い感情が渦巻いた。


 普段は気持ちをあまり顔に出さないと自覚しているけど、冬の寒さのように身の凍る醜い感情が表に出てしまう。


 レベッカも遅れてシュウヤの家にやってくる。

 いつものように強気な態度で、家にいた高級戦闘奴隷たちと話していた。


 泣きそうな顔を浮かべては怒ったりして、憂う蒼い目の内心はイライラしているのが、手に取るように分かった。


 ん、でも、蒼炎が時々瞳に現れるのは何だろう。

 彼女も嫉妬の炎が燃えているのかもしれない。

 わたしと同じように……。

 シュウヤがヴィーネとだけ一緒に出ていったのが悔しいらしい。


 ん、同士。

 そんな彼女の顔を見ていたら、少し元気がでた。

 レベッカが奴隷に当たり散らすように話していたので、わたしも加わる。


「シュウヤに会えないで寂しい、残念」


 彼に伝えておいてと念を押す。


「エヴァッ、今日は一緒にお出かけしましょ、こないだ話していたお店とか」

「ん、賛成」


 彼女と一緒にシュウヤの家を出ると、見知らぬ女性がシュウヤの家に入っていくのが見えた。

 頭にバンダナを巻いてしな垂れた髪が綺麗な女性。

 少し気になるけど、レベッカと一緒に様々なお店巡りをした。

 魔法書が置いてある古めかしい魔法店に入り、迷宮や大草原に出現する未知のモンスターが詳しく載っている怪しい羊皮紙本を買ったり、美味しいパン屋へ案内したり、卵のお菓子を作る店に案内されたり、屋台に売っていた干しブドウ入りの綿菓子を一緒に食べながら散策して、一時の寂しさを紛らわすどころか、逆に楽しく過ごす事ができた。


「エヴァ、たまにはこういうことしない? わたし楽しい」

「ん、わたしも楽しい」

「よかった、昔は友達もいたんだけど、悪い噂が付きまとうようになると、自然と、疎遠になってね……エヴァとは一緒にパーティを組んで、何回か一緒にお買い物をしたりして、今更だけど、エヴァのこと、友達だと思っていい?」


 レベッカ……。

 リリィ以外に初めて、嬉しい。


「……ん、嬉しい、わたしもこの都市に来てから友達はいない、だからよろしく」

「わーい、エヴァ、大好き、優しい表情の笑顔も好き」

「……ありがと、レベッカも可愛い、蒼い目も綺麗」

「あはは、ありがと」


 今日はシュウヤとは会えなかったけど、レベッカとはちゃんとした友達になれた。


「エヴァ、話は変わるけどさ、シュウヤ、ヴィーネと一緒だよね」

「……うん」


 ん、やっぱり同じ事を考えていた。

 触らなくても気持ちは分かる。


「どうも、最近、ヴィーネの勝ち誇る顔が気になるのよ……」

「ん、確かに……」


 いやな予感がする。彼女は従者と言っていたけれど。

 シュウヤに触りながら質問すれば、心の表層が分かるけど、シュウヤの場合、気に入った相手は基本好意の塊だから、判断が難しい。


「……わたし、負けていても必ず挽回するから……あ、エヴァ、友達だけど、シュウヤの気持ちはわたしが先に奪うからねっ」


 はっきりとした宣戦布告に、目を見張ってしまった。

 レベッカも本気でシュウヤのことを……。


「……ん、当然。でも、わたしが、また勝つ」

「あー、この間のじゃんけんね? でも、恋にじゃんけんはないから、ふふん」

「ふふ、わたしとシュウヤには秘密があるから、必ず勝つ」

「えぇぇ、ひ、秘密って、何よっ!」


 レベッカは焦った表情を浮かべて挙動不審になった。


 可愛い。


「ん、教えない、友達でも、恋は別――」


 わたしは機嫌よく、車椅子を回転させて前進っ。


「あぁー、逃げるなーっ」

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