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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1680/2001

千六百七十九話 破壊の王ラシーンズ・レビオダと憤怒のゼアに空戦

 ◇◆◇◆


 薄暮の魔界セブドラの空で、アムシャビスの紅玉環から放たれる膨大な魔力が紅い稲妻となって、破壊の王ラシーンズ・レビオダを中心に交錯していく。その光が魔界の大気を染め〝紅光塔〟を擁した開放的な建築が美しい翼紋回廊を不気味に照らし出していた。

 

 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、翼紋回廊の中心にて六枚の翼を広げて浮かぶ。

 左右の四腕の手を胸元で合わせている。

 その腕は太くグリフォンの翼に生えているような太い毛により膨よかだ。

 その掌の中で<超神魔力>を錬成し、〝レビオダの破壊紅宝〟を一つ完成させる。

 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、魔力増幅装置付きの古びた高層建築〝紅光塔〟の内部に浮かぶアムシャビスの紅玉環から膨大な紅い魔力を吸収していた。


 その破壊の王ラシーンズ・レビオダは黄緑が中心の四眼の内の二眼で、憤怒のゼアの幻影と、その憤怒のゼアの大眷属ビスマルクに拷問を受けている傀儡使いグンナリの様子と、その右上に浮かぶ立体的な映像を見ていた。

 その映像には、古の魔甲大亀グルガンヌが映る。

 【アムシャビスの紅玉環】の空域に侵入し、咆哮を轟かせているところだった。


 破壊の王ラシーンズ・レビオダが、


「『魔街異獣の侵入、あの魔命を司るメリアディと悪夢の女神ヴァーミナが手を組み、我らの目的阻止に動くとは……』」


 憤怒のゼアの幻影は揺らぎながら、

「『【メリアディ要塞】を巡る敗北により我らの計画は一部破綻した』」


 と、語ると、巨大な溶岩の塊から人型の燃焼した体を持つ二眼四腕を模る憤怒のゼア。

 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、


「『……ふむ。次元を歪ませている古代の力、グルガンヌの作用か。本来の目的を達成すれば、その古代の力も要らぬだろう』」


 憤怒のゼアは、


「『だが、長年争い合っていた諸侯たちが手を組み、魔命を司るメリアディに向かう絵図が、悪夢の女神に倒されるとはな、まったく、予想していなかったのだが……』」


 と、念話と言葉を発した。

 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、すぐには答えず、巨大な魔法陣に押さえ付けられているグンナリの拷問を見る。


 グンナリは体の一部が潰され内臓と溶岩の魔法陣が無理矢理融合させられている。


「『それは我もだ。悪神デサロビアに闇神リヴォグラフなどと争うヴァーミナ……だが、セラの傷場に、そのセラに拡がっている邪教を持つ故か。直接的な贄の儀式も多用と聞く。悪夢の魔力はかなり得ているはずだ。して、そこのグンナリだが……』」


 幻影の憤怒のゼアは、


「『見ての通りグンナリは約定の一つ。その前に、〝レビオダの破壊紅宝〟は出来ているのだ。もったいぶらず、それをさっさとビスマルクに渡せ』」


 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、三眼を見開き、


「『焦るな、約定の一つは果たす。が、グンナリの情報を得るほうが先であろう』」


 幻影の憤怒のゼアは、


「『ビスマルク、レビオダに正直にすべてを伝えろ』」


 ビスマルクは、粘液にも見えるように塊を動かし、


「ハッ!」


 と返事をしては、塊の表面に蒼い炎を有している無数の複眼と、歪な口をニュルニュルと、複数個生み出すと、


「<炎獄浸食>の結果、幻魔ライゼンの魂の行方は掴めず。こいつの最後の記憶は幻魔ライゼンを裏切り、背から急襲したが、逆に倒されている」


 ビスマルクの言葉に破壊の王ラシーンズ・レビオダは三眼から魔力が零れて怒りを露わにした。

 アムシャビスの紅玉環から魔力を吸収しつつ憤怒のゼアの幻影を見て、


「『使えんな。では、まだ、この〝レビオダの破壊紅宝〟は渡せない』」


 幻影の憤怒のゼアは、


「『幻魔ライゼンの魂の行方など、どうでもいい、お前が周囲の紅玉環をすべて吸えばアムシャビスの魔法体を得られ、【メリアディの命魔逆塔】でメリディアの魂の完全破壊が可能なんだろう?』」

「『可能だが、魔命を司るメリアディは、【メリアディの命魔逆塔】が埋没する前、秘密裏に幻魔ライゼンと秘密研究所の封印扉で取り引きを行っていたのだ。その影響でメリディアの魂を破壊し、アムシャビスの紅玉環の魔力と古の術式を我が得ても、塔の力を使った魂の操作も中途半端な物になるだろう』」

「『その鍵がメリアディの敵側であった幻魔ライゼンの魂で保険とは憎い手段よ、どちらにせよ、ビスマルクと我が其奴を捕らえ、そこに運んだのだ。それで約定の一つは果たしたことになる、それを破れば、どういうことになるか、分かるだろう、破壊神(・・・)」』


 憤怒のゼアの幻影の言葉と念話に、

「『ハッ、脅したところで、我は共闘せねばならぬだろうに――』」


 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、〝レビオダの破壊紅宝〟を憤怒のゼアの大眷属ビスマルクに放った。

 ビスマルクは体の一部を宝箱のように変化させると、蓋が開く、その開いた宝箱の中に〝レビオダの破壊宝玉〟が納まった。ビスマルクの体の一部でもある宝箱は自然と閉じると、ビスマルクは、


「たしかに受け取りました。ゼア様、送りまする」

「『おぉ! 共闘は当然だが、ふっ、我も強化すれば、お前の力になれるのだからな!』」


 幻影の憤怒のゼアが嬉しそうに語る。

 その幻影の前に、ビスマルクの体の一部の歪な塊が出現し、宝箱の形に変化。

 その宝箱が空くと、そこには、【アムシャビスの紅玉環】で破壊の王ラシーンズ・レビオダが渡したばかりの〝レビオダの破壊紅宝〟が入っていた。


 破壊の王ラシーンズ・レビオダは、


「『約定は果たした』」

「『たしかに!』」


 憤怒のゼアは、その〝レビオダの破壊宝玉〟を掲げると、豪快に飲み込む。

 途端に体の一部が溶解し、腕が六本に背には炎岩の翼が生えていた。

 

 幻影の憤怒のゼアは、


「『素晴らしい……アムシャビスの紅玉環の魔力とお前の魔力は、これほどか! 地獄の炎の極意、魔炎神ルクスや炎神エフィルマゾルなどは超えただろう……。ふはは……後は完全な火脈支配をするために【メリアディの命魔逆塔】を確保と……幻魔ライゼンの魂の行方に、そこの魔街異獣の乗っている諸勢力に悪夢の女神ヴァーミナへの対処だな……ヴァーミナは単独で動く気配がありと、我の生き残りの眷族から報告があがっている』」


 憤怒のゼアの語りと念話に破壊の王ラシーンズ・レビオダが頷き、


「『……魔力の吸収には、まだ時間が掛かるが、進軍速度と、その強さから、一時中断せねばなるまい』」

「『……ふむ、我はヴァーミナに当たろう』」

「『我は魔街異獣側の軍団を潰すとしよう』」


 破壊の王ラシーンズ・レビオダがそう語ると、憤怒のゼアの大眷属ビスマルクはグンナリを潰し、


「では、レビオダ様、私はゼア様の下に」

「『ふむ』」


 頷いた破壊の王ラシーンズ・レビオダはアムシャビスの紅玉環から魔力を得て二足の太股の筋肉と毛が増加し、二つの足のような翼にも見える太い肉体が生まれかけている。


 ビスマルクは溶岩のような体の一部から熱波の魔力を放出すると、その熱波に包まれながら消えた。


 破壊の王ラシーンズ・レビオダの四方を囲うアムシャビスの紅玉環は、長い戦争の影響で一部が欠損しているが、この土地名にあるように宙域に影響を及ぼし続けている魔法力の源で、破壊の王ラシーンズ・レビオダが吸収を続けていても、その魔力は健在で豊富だ。


 アムシャビスの紅玉環は、アムシャビス族の元天魔帝メリディアが、他の宇宙次元の天帝フィフィンド・アブラナム・ハルモデラと右帝アラモと左帝ホウオウを通じ、紅光魔法体系を獲得し、〝輝翼紋様式〟の理を完成させたからここそ作成できたと言われている。


 他にも秘めた理由もあった。

 それは、三帝の魔力を一部を受け継いでいる娘の魔命を司るメリアディを祝福するためメリディアが<超神魔力>を基軸に、<是光ノアムシャビス>に<アムシャビスの紅光>などを込めて造り上げたのが、アムシャビスの紅玉環だ。


 アムシャビス族の魔法体系の源でもある。

 

 破壊の王ラシーンズ・レビオダの真下には、歪な極星大魔石の塊が構成する巨大な魔法陣が設置されており、時折、そこから白銀と漆黒の魔力が放出されて破壊の王ラシーンズ・レビオダの二つの足に吸収されていた。


 ◇◆◇◆



 沸騎士軍団の魔弓部隊が魔矢を射出。

 無数の魔矢の群れが黒や赤を基調とする四枚翼の魔族たちへと襲い掛かる。

 

 それを見ながら旋回機動を取り、《(スノー)命体鋼(・コア・フルボディ)》を発動。


 エヴァが、サージロンの球を前方に伸ばし、四枚翼の魔族たちが放った赤黒い魔刃を貫き、魔族の体を四枚翼ごと貫く。

 そのエヴァは俺の横を飛翔しながら、<念導力>で操作した無数の緑皇鋼(エメラルファイバー)白皇鋼(ホワイトタングーン)の金属の刃を操作し、四枚翼の魔族たちを貫いていった。


 一度に数十人の四枚翼の魔族たちが倒れていく。

 俺も《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を繰り出しつつ両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出し、的確に一人一人の頭部をヘッドショットで倒していく。


 他の四枚翼の魔族たちが、


「かかれァァァ」

「あの紫の魔力を放つ女に気を付けろ!」

「鎖を放つ黒髪の野郎を殺す!」

「「「殺せェェェ」」」

「<血魔力>を扱うぞ!」

「しかも光属性を持つ!?」

「げぁ、魔刃が――」

「あぁ、アムラが!!」

「――破壊の王ラシーンズ・レビオダ様に近づけさせるな!」

「「「グォォォォ」」」

 

 と、叫びながら、魔槍と魔刀に衝撃波のような魔声を発した。

 魔弓部隊が放った魔矢を破壊し、エヴァのサージロンの球を弾く。

 更にルマルディたちにも赤黒い魔刃を飛ばし始めた。

 赤黒い魔刃を避けるように飛翔していく。

 ルマルディとアルルカンの把神書にも当然、当たっていない。

 

 そのルマルディは、宙空で身を捻りながら<血魔力>を有した<円速・虹刃>を繰り出した。

 宙を直進した、血と虹色の魔刃の<円速・虹刃>の浴びせた魔族たちは体が両断。


 <筆頭従者長(選ばれし眷属)>のルマルディの傍にいるアルルカンの把神書は<魔霊術アルルカン>を発動している。

 

 その効果もあってルマルディの<円速・虹刃>などの威力が跳ね上がっていた。


 更に、<刹把鮫・血喰>を使用したルマルディ。


 アルルカンの把神書の頁から放射状に魔線が出るや否や、その魔線が、大きな鮫の頭部に変化を遂げる。

 その鮫が、口を広げつつ濃密な魔力を内包した魔息を吐きながら突進し、破壊の王ラシーンズ・レビオダの空軍の魔族たちを喰らう。


 歯形状に変化した魔族たちの体はそれぞれに爆発、体の肉片が周囲に飛び散っていた。


 またもルマルディは<円速・虹刃>を使用。

 

 ルマルディとアルルカンの把神書は息の合った連携で敵を翻弄する。

 <魔霊術アルルカン>の効果で増幅された<円速・虹刃>は、まるで血と虹の舞踏のように敵陣を薙ぎ払っていく。


 数千とまではいかないと思うが、魔族兵士がゴミのようだ。

 

 空極のルマルディ――。

 強すぎる。


 ユイたち側の戦闘も、少し見えたが、手前を飛翔していたサラとキスマリとフーとブッチとハンカイとアドゥムブラリから<バーヴァイの魔刃>が吹き荒れた。


 <バーヴァイの魔刃>は四枚翼の魔族たちの得物を弾き、体を突き抜けていくと、一部の四枚翼の魔族たちは墜落、体の再生が間に合う魔族は逃げるように引き返す者が続出。

 

 更に、ドッと破裂音、キサラの<補陀落ポータラカ>が敵空軍が展開した魔法陣ごと数百人をぶち抜いて倒していた。


 が、敵の数はまだまだ多い。

 そして、黒豹(ロロ)が、


「にゃごぁぁ――」


 橙色の魔力と漆黒の魔力が混じる紅蓮の炎を吐いた。

 大きな波頭を思わせる膨大な炎に呑まれた四枚翼の空軍魔族たちの数は一気に減った。


『凄まじい!』


 常闇の水精霊ヘルメの念話に頷く。

 右手に魔槍杖バルドークと左手に神槍ガンジスを召喚。


 俺を狙ってきた数百、数千の四枚翼の魔族たちが一斉に赤黒い魔刃を飛ばしてきた。

 視界に無数の魔刃が迫る光景は、対処ができると分かっていても恐怖を覚える、<煉霊ノ時雨>を意識した刹那、


「グォォォォン――」


 古の魔甲大亀グルガンヌの咆哮が、世界を揺るがす。口から出た輪状の波動と轟音は紅光塔の尖塔まで届いたように、幾重もの反響となって周囲の雲を押し広げていく、輪状の波動は、神々の裁きのように空気を切り裂きながら拡大した。

 その波動が俺たちに触れた瞬間――体が軽くなったような感覚と共に加速力が上昇。

 一方で、波動は赤黒い魔刃と触れると赤黒い魔刃は、ガラスが砕けるように閃光を放ち消滅していた。


 輪状の波動は、数千の赤黒い肌の四枚翼を持つ魔族たちを次々と飲み込んでいく。

 雲のように果てしない数がいるが、グルガンヌの波動に触れた者たちは意識を刈り取られたように次々と墜落していく。


 戦場に満ちていた殺気が薄れたように静寂が訪れる。


『凄まじい! これが伝説の魔甲大亀の力!』


 常闇の水精霊ヘルメの念話に同感だ。

 グルガンヌの一撃で、戦場の様相が一変だ。

 が、敵は多い。

 隊列を成している四枚翼の魔族を凝視。


 そいつらに《氷竜列(フリーズドラゴネス)》を発動した。


 前方の気温が急激に下がる。

 指先から上咢と下咢に氷の歯牙を生やす氷の龍頭が発生――。

(スノー)命体鋼(・コア・フルボディ)》効果もあり、《氷竜列(フリーズドラゴネス)》の龍頭から氷竜への進化のスピードが速い。そして、周囲の稲妻のような紅い光を受け、竜の鱗のように重なり合う氷の結晶が輝きを放つ。

 氷竜の咆哮は周囲の空気を白く凍らせ渦を巻きながら拡がり、四枚の翼を持つ魔族たちと衝突。

 一瞬で、宙空の一面がダイヤモンドダストと化した。

 遠い四枚翼の魔族たちの一部は氷の彫像となって墜落しているのが見えた。

 数百の魔族を一度に倒せたように膨大な魔力を得た。


 右手に魔槍杖バルドークと左手に神槍ガンジスを召喚し、<握吸>で握りを強める。

 

 と斜め上空にいた四枚翼の魔族の部隊が、赤黒い魔刃を飛ばしてきた。


 それらを避けながら両手の<鎖の因子>から<鎖>を飛ばして、赤黒い魔刃ごと、二つの<鎖>が四枚翼の魔族たちを貫いていく。


 と、そこに、俺たちに向け魔槍を<投擲>してきた頭部を二つ有した魔族がいた。


 その魔槍を避けず――。

 魔槍杖バルドークに<血魔力>を込めて<投擲>――その魔槍杖バルドークと衝突した魔槍を弾くと、直進し、二つの頭部を持つ魔族の腹をぶち抜く。


 その魔槍杖バルドークを<握吸>で吸い寄せた。

 ユイ側の方角に味方の位置を把握し、爆破の範囲を予測しながら――。

 もう一度、《氷竜列(フリーズドラゴネス)》をぶちかました。

 巨大な氷竜が溶岩のようなモノの体を持つ魔族たちと衝突し、宙空で爆発、やや遅れて水蒸気爆発と似た爆風が起き進んでいくが、魔力の差異で、爆風が収縮しているところもあった。


 魔界セブドラの大気も惑星セラや地球と似ているところがある――。


 すると、破壊の王ラシーンズ・レビオダ側の眷族と思われる大柄の翼を有した魔族が直進してきた。


「――破壊の四腕ガミアが参る!」

 

 と<魔闘術>系統を強めたガミアはいきなり四腕を巨大化させ、上下の腕を交互に繰り出してきた。


 <闇透纏視>で凝視。


『なかなかの強者!』

『はい、背後の破壊の王ラシーンズ・レビオダがいるだろう施設を守る眷族と予想します』


 ヘルメとグィヴァの思念に頷きつつ――。

 

 上腕からの突きを神槍ガンジスで受け流しながら、下腕からの掴み技を魔槍杖バルドークの紅斧刃で払う。四本の腕が織りなす攻撃は速い――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>を発動しながら十合打ち合う。

 

 その四腕を動きを凝視しながら隙を窺うと、


「動きを速めたが、これならどうだ<破壊の翼風>――」


 と、ガミアは四枚の翼を大きく広げると、その翼から放たれる魔力から礫のような刃と衝撃波を寄越す。


 同時に周囲を空気を震わせる。

 俄に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を使い、すべての礫を防ぎつつ、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を向かせた――。


「チッ」


 ガミアは舌打ちし、大きな駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を大きな拳で横に弾くと、加速し、急激にまた速度を上昇させながら、近付いてきた。


 <滔天魔経>と<滔天神働術>を連続発動させて、速度を上昇させながら、巨大な四腕の振り払いを避けた。

 反撃に、魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの<血刃翔刹穿>を繰り出す。

 が、突きと無数の血刃を巧妙に後退し、避けてきた。

 宙空を自在に舞う――。


 その姿は破壊の王の名に相応しい眷族のそれだ――。

 

 が、<闇透纏視>で段々と――。

 鎧内部のあらゆる魔力操作から動きが読めるようになった。

 ガミアが直進してくる間合いを読み切る。


 四腕を突き出してきたタイミングで神槍ガンジスに魔力を込めつつ<血穿・炎狼牙>を繰り出した。

 

 ※<血穿・炎狼牙>※

 ※血槍魔流技術系統:最上位亜種突き※

 ※水槍流技術系統:上位亜種突き※

 ※影狼流技術系統:亜種突き※

 ※ルシヴァルの魂を宿した力が、影狼流最後の弟子としての思いを経て、血の炎としての狼を体現化※

 ※<霊血の泉>と連動可能※


 身に纏った血が、うねり、せり上がる。

 狼のような咆哮を轟かせながら狼の姿に変身。

 血の炎を纏う狼は神槍ガンジスと一体化――。

 狼の頭部と重なった双月刃が四腕の拳を貫く。

 ガミアは、「げぇぇ」と悲鳴を発しながらも体で、血狼の牙を受け止めようと体から漆黒の魔力を繰り出すが、それすらも<血穿・炎狼牙>の血と炎の狼は喰らう――。

 血と炎の狼は、ガミアの魔力との相克の中で一層強大な姿へと変貌を遂げながらガミアを貫いた。


 血と炎の狼は、他にも獲物を求めるように咆哮を轟かせた。

 

 その轟音は古の魔甲大亀グルガンヌの咆哮の余韻のように、戦場に響き渡る。

 背後の四枚翼の魔族たちは、その咆哮に戦慄を覚えたかのように、一瞬その場に立ち尽くした。


 そんな四枚翼の魔族たちに、容赦なく血の炎を身に纏う大きな狼は直進、勢いが止まらない。

 そのまま複数の四枚翼の魔族たちを追跡し、口を広げたように噛み付いては、天地を喰らうように喰らっていく。


 血の狼は輝く血霧となって消えていった。

 


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― 新着の感想 ―
古の魔甲大亀グルガンヌ強。メリディアも殺せないから封印した可能性有りかな?
毎日更新、ありがとうございます。 魔界セブドラの神絵巻に載る破壊の王レビオダとの直接対決の時が近付いてきた‼︎ アドゥムブラリの話では、傀儡使いグンナリが裏切ったのは、幻魔ライゼンではなく魔公アリ…
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