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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1673/1999

千六百七十二話 ヴィクタリオスとの戦いに<光穿・雷不>

 <四魔具術・魔界混成陣>か。

 すると、ヴィクタリオスを乗せている魔獣が「グォルルゥ」と鳴き声を発した。

 頭部は鷲のような猛禽類に近い。

 陰影深くの眼窩には、八つの鮮やかな赤い眼があった。

 八つの赤い眼から膨大な魔力が渦を巻く、瞳孔は深淵のように闇を湛えていた。

 首から背はダッチドラフトのような筋肉隆々の大型馬に近い。

 長い尻尾は蒼白い炎を発している銀色の毛に包まれている。

 銀色の尾の炎は、月光を溶かし流したかのような蒼白さだ。

 その炎が揺らめくたびに周囲の空気が凍てつくように震えていた。


 その魔獣が、すべての赤い眼で俺と黒虎(ロロ)を凝視すると、(くちばし)が開いた。


「グオォォ~」


 魔声を響かせると、その口から蒼白い息を吐いてきた。

 上下の(あご)の骨の表面が角質化した嘴が少し凍り付いていた。


 ――<経脈自在>と<根源ノ魔泉>と<仙魔奇道の心得>を意識し、発動。

 全身から<血道第一・開門>を活かし、血を流していく。

 ――<生活魔法>の水も活かし、足下に水を撒いた。


『閣下!』

『大丈夫だ』


 相棒はすぐに「にゃごァ――」と口から紅蓮の炎を吹き、扇状に展開、蒼白い息を迎撃した。

 蒼白い息は凍てつく息か――。

 黒虎(ロロ)の紅蓮の炎が、蒼白い息を防ぐと吐き出している紅蓮の炎を吸うように消す。と、何かを噛んでいるように咀嚼音を響かせながら少し頭部を前後させる。


 蒼白い息の魔力を食べた?


『ロロ様がいると頼もしい!』

『あぁ』

『あの魔獣も炎怒のババラートスを乗せていた炎を纏う大型のラマのように強そうですね』

『そうだな』


 ヴィクタリオスは、

 

「レブートの不意を狙う<凍てつく息吹>に反応し対処するとはな――」


 レブートという名の魔獣が直進。

 そのレブートに騎乗しているヴィクタリオスが業火の魔剣を突き出してくる。


 黒虎(ロロ)は「ンン――」と鳴きながら胸元から触手を伸ばし、その触手の先端から出た骨剣が業火の魔剣を捉えて弾いた。

 

 ヴィクタリオスは右下腕の手が握る魔斧を突き出す。

 左上腕の手が短く持った魔槍を振るってきた。


 ――魔槍杖バルドークを斜め下に構え――。

 穂先で魔斧を払いつつ左に魔槍杖バルドークを動かし、螻蛄首を魔槍の穂先に衝突させ――すぐに右から左へと魔槍杖バルドークを振るう竜魔石で<豪閃>を繰り出す――。


 ヴィクタリオスを乗せた魔獣はバックステップして退き、<豪閃>の竜魔石を避ける。

 ヴィクタリオスの右上腕から出ている魔鎖は俺たちを攻撃せず、ハンカイのほうに向いたままだった。

 

 退いたヴィクタリオスは三腕の武器を消し掌で、魔獣の頭部を撫で回している。魔獣の八つの眼がこれでもかと動き回って楽しそうだ。

 それを見ながら、


「四兵魔将とは、魔永破壊のバレライン、魔破霊メティクスハイマの部下か?」

「名が知れた大眷属に、将軍がすべてではない……」


 と語るとヴィクタリオスは一つ眼で俺を見ながら、


「お前の名を聞こうか」


 他の三眼が左右に動いて警戒を強めている。


「名はシュウヤだ。光魔ルシヴァルを率いている」

「ほぉ……シュウヤに光魔ルシヴァルか……」


 ハンカイは金剛樹の斧を<投擲>できるポジションを取っていたが、右斜め前方の新手たちの魔素を把握したように視線を寄越した。

 ハンカイとアイコンタクトを行う。

 そのハンカイは湾曲した斧大剣の新・金剛樹の斧に変化させた。

 湾曲した斧大剣をハルバードやランスを彷彿とさせるような扱いから新手の方角に切っ先を向ける。

 ハンカイを乗せている黄黒虎(アーレイ)は繊維状の角閃の瞳をギラつかせ「にゃご」と鳴いた。

 黒虎(ロロ)も「ン、にゃおん」と応えている。


 黄黒虎(アーレイ)も頷くと右斜めの方角に頭部を向け、大きい前足と後ろ脚を前後させ歩き出した。 黄黒虎(アーレイ)とハンカイはヴィクタリオスから距離を取った。

 ヴィクタリオスは、闇属性の魔鎖の先端をハンカイから俺に向け直し、


「斧使いと共に俺を襲わないとは、意外だな。二対一でも俺は構わないのだが?」


 と、喋り四眼で睨み付けてくる。


「俺もサシの勝負が好きなことはハンカイも理解しているさ」

「ほぉ……俺と一対一を望むか、いい度胸だな」

「そっくりそのまま、その言葉を返しておく」

「フッ」


 ヴィクタリオスは武人タイプか。

 と、俺の背後から、鯨波(げいは)と喚声が響きまくっていた。


「だが、状況次第では、サシの勝負はナシだな、背後には眷族たちがいる」

「……<血魔力>を有する眷族たちか……」


 マモモルとバフーンが背後の十字路で、敵と戦っている。

 その後方にユイ、キスマリ、ヴィーネ、フー、クレイン、メル、ベネット、ヴェロニカ、ミスティ、クナ、ルマルディ、ルビア、エトア、ママニの順に大暴れ中か。


 その背後にはファーミリアが率いるヴァルマスク家の<筆頭従者>たちの魔素を察知。

 アドリアンヌとシキとキュベラスが率いる【闇の教団ハデス】たちもママニとメルとフーの動きに合わせ、左翼に展開していると分かる。


 そして、古の魔甲大亀グルガンヌの近くの地面に降りていた光魔魔沸骸骨騎王ゼメタスとアドモスたちが率いている約一万の沸騎士軍団が前進を開始したように凄まじい鬨の声が此方まで響きまくっていた。


 既に、破壊の王ラシーンズ・レビオダと憤怒のゼアの連合軍と戦争が始まっている。

 

「……」

「ならば参る――」


 ヴィクタリオスが突っ込んで来た。

 左下腕の手に絡み付いている魔鎖を俺たちに伸ばすと自らも<魔闘術>を強め迅速に前に出ながら、左上腕の手が握る魔槍を突き出してきた。


 黒虎(ロロ)の触手から出た骨剣が、魔鎖を防ぐ――。

 <握吸>を発動させて、魔槍杖バルドークの握りを強めつつ、


「相棒、魔雅大剣を――」

「ンン」


 黒虎(ロロ)の触手の一つに魔雅大剣を召喚させ渡しつつ――。

 魔槍杖バルドークを右に掲げ、ヴィクタリオスの魔槍の突きを柄で防ぐ――。


 そのまま魔槍杖バルドークを右斜め前に出すように動かし、ヴィクタリオスの右上腕の業火の魔剣の斬撃を柄で受け流す――柄の上を滑る業火の魔剣から火花が散った。


 ヴィクタリオスの右下腕が持つ魔斧の突き上げも、短く持ち直した魔槍杖バルドークを下ろし、紅斧刃の峰で、魔斧の刃を叩き落としてから<握式・吸脱着>で魔槍杖バルドークの柄を滑らせて握り手の位置を変化させつつ<杖楽昇堕閃>――。


 魔槍杖バルドークの右から左下への薙ぎ払いの竜魔石の打撃が、ヴィクタリオスの上半身に向かう。

 ヴィクタリオスは竜魔石の打撃を、


「――チッ、斧槍が生きているように動きまくる――」


 と、言いながら、右下腕を前に出し魔斧を盾として竜魔石の<杖楽昇堕閃>の初撃を防いできた――。

 左から右上への紅斧刃の峰の振り上げの<杖楽昇堕閃>の二撃目も業火の魔剣に防がれた。

 構わず<山岳斧槍・滔天槍術>を活かすように<龍豪閃>を繰り出す。


 魔槍杖バルドークを縦に回転させた紅斧刃の一撃がヴィクタリオスの頭部に向かう――。

 が、左下腕の魔鎖が真上に出て<龍豪閃>を防ぎながら絡ませてくる。

 更に業火の魔剣と魔槍の柄と魔斧を突き出してきた。


 <雷光ノ髑髏鎖>を意識し発動し、両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出。

 雷光に輝く二つの<鎖>は魔鎖とヴィクタリオスの上半身に向かう。

 魔槍杖バルドークに絡んでいた魔鎖が解かれたが、二つの<鎖>は魔鎖に防がれる。

 同時に黒虎(ロロ)は左前に出て、その三腕の突きを避けると同時に魔槍杖バルドークを真横から振るう<血龍仙閃>を繰り出した。


 ヴィクタリオスの背を紅斧刃の<血龍仙閃>が取ったかに見えたが、魔鎖がまたも防いできた。

 <無方南華>と<沸の根源グルガンヌ>を発動、重ねた瞬間、相棒ごと周囲の空気が震え、大地が共鳴するかのように低く唸った。

 魔力が交錯する度に、大気そのものが歪み、色を持ち始めたかのような幻視が広がっていく。

 眉間に浮かぶ仙魔奇道の魔印が月光を纏ったような青白い輝きを放つ。

 太古の力の漆黒と紅蓮の光が交錯し、生命を持つかのように全身の血脈と経脈を這いずり巡る。

 その膨大な魔力が体内の隅々まで浸透していく過程で、脳髄が溶けるような灼熱を帯びるが、それすら力の証として受け入れた。

 更に、<始祖古血闘術>と<魔闘術>系統の水神とホウシン師匠由来の<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>と<闘気玄装>と<龍神・魔力纏>を連続発動。


 原初の力を土台の影響で、視界の端が漆黒と紅蓮に染まりそうになるが、構わず<血道・魔脈>を起動。

 続けて水神由来の<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>を重ねると、神秘的な共鳴が起きる。

 光魔ルシヴァルの血統故の十六大経脈の青白い光を放つ。

 ――人族や魔族でもない、俺たちだけの血の回廊。

 前と同じく雲門(うんもん)から神門(しんもん)へと至る魔点穴のすべてが意思を持ったかのように律動していく。

 それらの全身から噴き上がる無数の魔力と経脈に流れる内の魔力を<経脈自在>を意識しつつ、<血脈冥想>を発動させて落ち着かせた。


「ハハッ! <魔闘術>系統を強めたところで、無駄だ、<四魔具術・魔界混成陣>は崩せまい――」


 そのヴィクタリオスを乗せた魔獣が、「グォォ」と吼えながら駆けてきた。


 ヴィクタリオスが業火の魔剣から火球を飛ばし、魔槍を突き出す。


 黒虎(ロロ)も横に移動しながら魔雅大剣を振るいつつ触手を伸ばす。

 火球を触手骨剣で貫きつつ、咥えている魔雅大剣を振るい、ヴィクタリオスの魔槍と衝突させて払う。

 相棒の黒虎(ロロ)との呼吸は既に一つに溶け合っている。触手から伸びる骨剣が俺の魔槍の動きを完璧に補完しているように、古より伝わる武神の舞のように、俺と相棒が織りなす攻防は芸術的な軌跡を描いていく。


 が、ヴィクタリオスの四腕から繰り出される攻撃は荒れ狂う嵐かっ――。

 絶え間なく襲いかかってくる――。

 

 業火の魔剣が描く軌跡は空間そのものを焼き切り――。

 魔槍は風を切り裂く咆哮を上げ――魔斧は重力すら無視したような威力で振り下ろされる。

 これが、<四魔具術・魔界混成陣>か――。

 その凄まじい攻撃の渦中だが、黒虎(ロロ)との気持ちが共有が高まる。

 太古の舞踏を共に躍るような完璧な調和を奏でていった――ヴィクタリオスと何十合と打ち合った。

 隙を見て、魔槍杖バルドークで<血刃翔刹穿>を繰り出す。


 <血魔力>を有した右腕ごと槍になった如くの魔槍杖バルドークの紅矛と紅斧刃が、ヴィクタリオスの胸元に向かうが、ヴィクタリオスは魔斧と魔槍を胸元に掲げるように、二つの柄を盾にされ、最初の<血刃翔刹穿>は防がれた。


 ヴィクタリオスは、


「所詮は二腕の騎士よ――」


 と、言いながら業火の魔剣と魔鎖の攻撃をしようとしたが、紅矛と紅斧刃から<血刃翔刹穿>の無数の血刃が噴出していく。


「げぇ――」


 と、ヴィクタリオスは、無数の血刃を上半身にまともに喰らう。

 魔獣から離れ吹き飛ぶ。

 瓦礫が積まれた箇所に衝突したヴィクタリオスだったが、まだ生きている。


 即座に追うが、ヴィクタリオスを乗せていた魔獣が嘴を広げ、凍てつく息吹を――。

 俺を乗せた黒虎(ロロ)は後退――。


 俺たちの地面に氷霜が走る。


「相棒、そこの魔獣を頼む――」

「にゃお――」


 黒虎(ロロ)から右に離れながら、地面を蹴って、前進――。

 吹き飛んでいたヴィクタリオスを追った。

 体から血飛沫を発しているヴィクタリオスは傷を回復させながら立ち上がっていた。


「――お前の<血魔力>は光もあるのか! が! <四魔具術・魔界混成陣>が敗れた訳ではない!」


 と、左下腕の手に絡み付いている魔鎖を伸ばしてくる。

 その魔鎖を左手首の<鎖の因子>から出した<鎖>で迎撃――。

 魔鎖と<鎖>が衝突。

 キィィンと甲高い音が響いた。威力は俺の梵字に光る<鎖>が優るが、魔鎖のすべては貫けない。

 ――ヴィクタリオスは光属性にも対応しているということだ。

 ヴィクタリオスは<四魔具術・魔界混成陣>の魔具術の幻影を背後に生むと、

 手放していた、四腕に武器を生む。


「<産砂ノ魔霊>――」


 と、足下から砂状の魔力を展開させて、俺に向かわせてきた。

 体内を巡る魔力の流れを一気に加速させ、<無方南華>と<闘気玄装>の相乗効果を引き出す。

 全身の魔点穴と経絡が光を放つように熱を帯び、<魔闘術の仙極>が覚醒するように発動した。

 最後に<血液加速(ブラッディアクセル)>――。

 <血道第三・開門>の発動と同時に、体内の血脈が龍のように唸りを上げ、十六大経脈が青白い光を放ちながら脈動し浮かぶ、この光は人族でも魔族でもない、光魔ルシヴァルの神秘の血の回廊だ。

 雲門(うんもん)から神門(しんもん)へと至る秘孔の魔点穴が星座のように輝きを放つ。


 加速状態で、砂の魔力の<産砂ノ魔霊>を避けながら、俺の加速力に合わせてきたヴィクタリオスは、


「喰らえ<魔王・砂牙連穿衝>――」


 足下の砂が細かな刃と成りつつ、己の四魔具を大身槍に変えて突いて――連続的に突いてきた。

 <水月血闘法・水仙>を発動させて避けながらも、ヴィクタリオスは「<四魔具術・混極>――」と、頭上と、俺の左右からも武具を転移させたのか、遠距離攻撃も加えてきた。


 さすがに<水月血闘法・水仙>は効かず――。

 が、左手に八尖魔迅両刃槍を召喚し、膨大な<血魔力>を八尖魔迅両刃槍に込めつつ<導想魔手>に夜王の傘セイヴァルトを召喚し、その傘を開く――。


 八尖魔迅両刃槍の周りの魔力が渦を巻くように光と闇の力が交差していく。

 槍身からは古の神々の叙事詩が刻まれたような紋様が浮かび上がり、その一つ一つが魔力を帯びて脈動を始めていた。

 

 夜王の傘セイヴァルトは闇そのものを布地として織り上げたかのように展開し、魔力の結界を形成していく。背の攻撃をその夜王の傘セイヴァルトですべて防ぎながら――。

 両手に<勁力槍>を発動させる。

 更に右手の魔槍杖バルドークで<塔魂魔突>――。

 周囲の空気が圧縮されたような、ドッとした音を響かせながら迅速な魔槍杖バルドークの<塔魂魔突>が、大身槍を持つ右上腕と下腕を穿つ――。


「げぇあ――」


 そこに右足の踏み込みから左手が握る八尖魔迅両刃槍を至近距離から<投擲>――。

 <八尖魔迅・烈把>を繰り出した。

 光と闇の八尖が生まれ出てはヴィクタリオスの体を貫きまくる。

 回復も追いつかないほど穿ち抜いた八尖魔迅両刃槍は、束状に重なり一つの八尖魔迅両刃槍となった――。


 ヴィクタリオスだった肉片と骨に残っていた脊髄に破壊の王ラシーンズ・レビオダの魔印が浮かび、体の再生が始まるが、そこに魔槍杖バルドークから神槍ガンジスに変えてすぐに<光穿・雷不>――。

 

 ※光槍流技術系統:光槍奥義※

 ※<光穿>と<光神の導き>が必須※

 ※<光槍技>に分類、光神ルロディスの失われた八本の神槍が一つ、名は雷不※

 ※別名、光涙の八矛。光神ルロディスが光の大精霊を失ったさいに流した八つの涙が、雷を帯びつつ集結し光槍となったとされる※


 突き出た神槍ガンジスから天道虫の幻影が現れ散る。

 八尖魔迅両刃槍の穂先は振動しつつ、魔印と脊髄を穿つ。

 が、すぐに破壊の王ラシーンズ・レビオダの幻影が出現し、翼を有した姿なのか。

 更に、神槍ガンジスの周囲に出現していた天道虫が破裂した。

 そこに八支刀の光が連なるランス状の雷不が、神槍ガンジスの真上に出現。

 八支刀の光が描く軌跡は、光神ルロディスの涙が紡ぐ天命の糸のように輝きを放ち、その一閃一閃が破壊の王の幻影とヴィクタリオスだった肉片すべてを浄化するように消し去っては、天道虫の幻影も復活すると、太古の光の記憶そのものが具現化したかのように、神々しい輝きを放ちながら空間を切り裂いていく。


 光の奔流は、天空の彼方から注ぎ込む神々の祝福のごとく、清浄な輝きを帯びていった。

 戦場に満ちていた殺気が一瞬にして消え去り、まるで時が止まったかのような静寂が訪れる。

 光の余韻だけが、かすかな波紋となって空気中を揺らめいていた。


『素晴らしい! 閣下の勝利!』

「にゃおぉぉぉぉん」


 黒虎(ロロ)の声が、戦場の静寂を優しく震わせる。

 八つの眼を持った魔獣を倒した証拠のように、頭部を頭上に放り投げては、触手を真上に繰り出し、触手骨剣を、その魔獣の頭部に突き刺している。


『神獣様も勝利ですね、しかし、先程の雷不は凄かった! 光魔ルシヴァルの血統が示した、浄化の光の極致と言えましょう。ヴィクタリオスの<四魔具術・魔界混成陣>すらも昇華させる光――』

『おう』


 常闇の水精霊ヘルメと闇雷精霊グィヴァの念話に答えるように静かに頷く。

 まだ体内を巡る魔力が、経脈の端々まで熱を帯びていた。


 背後から、ユイたちが寄ってきた。

 その足音だけが、戦場に残る清浄な光の余韻に溶け込んでいく。

 <握吸>を使い、八尖魔迅両刃槍を左手に戻した。

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ヴィクタリオスは油断や慢心、かな?
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