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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千六百四十九話 魔界騎士ホルレインとの戦い

 虚空が歪み、捩れる。

 無数の亀裂から転移してくる魔剣と魔槍の<魔皇・千界葬>の攻撃。

 視認すら難しいほどの速度と破壊力。

 周囲に生み出された血の分身と水鴉は、一瞬の閃光と共に消滅していた。


 古の魔皇が残した奥義か、千の世界を滅ぼせるような印象を抱く――。


 と、赤と紫の魔力が構成する強化外骨格の戦鎧を着た存在が巨大な魔剣を振り降ろしてきた。


 素直に受けず、後退し避けた。


 巨大な魔剣が地面に衝突した瞬間、耳を潰すような轟音が響き渡る。

 大地が断層のように割れ、爆発の衝撃波が周囲の空気を振るわせる。鼻を突く硫黄の匂いが漂い、口の中に砂埃の味が広がった。


「グルガンヌに仕えし、古の戦長ギィルセルよ、今は我の力となりたまえ――」


 魔界騎士ホルレインの声が轟く。

 その声には、古の戦長の力を宿した者だけが持つ、底知れぬ重みがあった。

 

 と、赤と紫の魔力が構成する強化外骨格の戦鎧を着た存在はゴォォォッとした魔力のような鈍い音を発しながら徐々に半透明となっていく。


 古の戦長ギィルセルの鎧の一部が魔界騎士ホルレインの左腕の骨防具に吸収され、赤と紫の魔力を体から放出しながら左腕が少し膨れ大きくなると、全身の鎧も変化を遂げていた。

 

 魔装天狗系の装備でもあるのか。

 魔界騎士ホルレインの新しい甲冑の隙間からも赤と紫の魔力が噴出されている。


 古の戦長ギィルセルとは魔沸骸骨騎王グルガンヌの部下か。

 

 そして、【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】には、魔界沸騎士長のような存在が居るとゼメタスとアドモスが語っていた、が、あまり見ていられない――。


 閃くまま魔槍杖バルドークと神槍ガンジスが左右に動く。

 突如として現れた魔剣と魔槍が金属音と共に左右に弾き飛んだ。


 その余韻の中、まだ使用していない<魔闘術>系統の<龍神・魔力纏>を発動――。

 ――<ルシヴァル紋章樹ノ纏>も発動。


 加速、上昇したことで<魔皇・千界葬>の歪む空間から魔剣と魔槍が出現するところが、スローモーションでよく見えるようになった。


 ――<メファーラの武闘血>も発動させた。

 ――<魔闘術の仙極>も発動。

 ――<始祖古血闘術>を意識し、発動。

 <始祖ノ血槍術>を意識し、発動。

 ――<光魔血仙経>も発動させる。


 <霊血装・ルシヴァル>の面頬が活性し、首と鎖骨に血の鎖帷子が備わった。

 <血道第五・開門>の<血霊兵装隊杖>をまだ使っていないが、<光魔血仙経>と<霊血の泉>の強化コラボってことか。


 血道は奥が深い――。


 ――<闇神式・練迅>も発動。

 ――<仙魔・暈繝飛動(うんげんひどう)>と<水月血闘法・水仙>も連続的に発動した。


 <滔天魔経>などの今までの<魔闘術>系統の重ねも活かす――。


 加速力と速度を高めながら右斜めに後退し、魔力を込めた神槍ガンジスで目の前の空間の歪みごと<魔仙萼穿>で魔剣を潰すように破壊した。


 ――よっしゃ。


 すぐに真横の空間が歪むが、そこを魔槍杖バルドークの<断罪血穿ルグナド・スピアー>を繰り出し、魔剣を弾き飛ばした。


 矛と紅斧刃から<血魔力>が噴き上がりながら細かな血の刃となっていたが、武器破壊が可能な神槍ガンジスのような効果はないか。

 

 と、またも、突然に目の前に出現してきた魔剣の斬撃と魔槍の突きを避けながら《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を魔界騎士ホルレインに射出した。


 魔界騎士ホルレインを乗せた大型の魔馬バルンドドアは横に移動し、《連氷蛇矢フリーズ・スネークアロー》を避けるのみ。


 と、その間にも前と横から転移し、飛翔してくる魔剣の攻撃を――。

 上下に動かした神槍ガンジスの螻蛄首と魔槍杖バルドークの柄に衝突させ、魔剣をあらぬ方向へと弾き飛ばし、対処した。


 前方に魔剣と魔槍が湧く場合は――。

 空間が歪むから対処は楽なんだが――。

 背後と――足下の地面が爆ぜながら俺を貫かんとしてくる魔剣と魔槍の突きの攻撃は勘弁だ――。


 ――神槍ガンジスの柄と魔槍杖バルドークで、斜め前から飛来してきた二つの魔剣の突きを叩き落とし――。


 魔槍杖バルドークを背に回し、背を薙ぎ払わんとする魔槍の薙ぎ払いを魔槍杖バルドークの柄で防ぐ。そのまま体を捻って前後左右に移動を繰り返した。


 全方位から俺を攻撃してくる<魔皇・千界葬>の攻撃を防いでいった。

 またも地面からか――。

 爆ぜると無数の礫も飛来するから有視界の邪魔となるから厄介だ――。


 浮上しながら<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>の紫と赤の結界を見るように上昇――。

 すぐに<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍の突きが、出現――。

 転移速度が上昇しているような氣がする――。

 魔剣と魔槍の突きを神槍ガンジスの柄と魔槍バルドークを上下に振るい回して防ぐ。

 

 穂先と柄に連続的に衝撃音が響いた。

 そのまま<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍へと<豪閃>の魔槍杖バルドークをぶち当て、神槍ガンジスで<刃翔刹穿>を繰り出して、弾くように破壊する。と、目の前に転移してきた魔剣と魔槍の下部を叩くように<龍豪閃>で上へと弾き飛ばした。


 体を横に回転させながら、魔界騎士ホルレインを乗せている大型の魔馬バルンドドアと、古の戦長ギィルセルの強化外骨格のような戦鎧を見ながら水神ノ血封書を出す。

 

 ――<始祖ノ古血魔法オールドブラッドマジック・ファウンダー>を意識し、発動。

 

 <水血ノ断罪妖刀>を発動させる。

 空気が凍りつくような冷気が漂い、前方の空間に水と血が渦を巻きながら集束していく。


 その渦は次第に刃の形を成し、神々しい光を放ち、水血の太刀の刃として真一文字に一閃――。

 続けて、逆袈裟斬りの水血の刃の二閃――。

 更に、垂直斬り上げの水血の刃の三閃――。

 その次に、袈裟斬りの水血の刃の四閃――。

 最後に、振り下ろしの水血の刃の五閃――。


 <魔皇・千界葬>の空間の歪みから現れてくる無数の魔槍と魔剣の斬撃を五つの<水血ノ断罪妖刀>は溶かすように直進――。


 半透明だった古の戦長ギィルセルが現実化し、魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアを守るように前に出て、赤と紫に燃えている巨大な骨剣を突き出す。


 <水血ノ断罪妖刀>の一閃は、その巨大な骨剣と衝突し、激しい火花が散ったが、巨大な骨剣を押し込むように直進し、巨大な骨剣を切断し、古の戦長ギィルセルの物質化していた半身を両断し、魔界騎士ホルレインに向かう。


「――チッ、強引に<魔皇・千界葬>を破るつもりか――」


 魔界騎士ホルレインを乗せた大型の魔馬バルンドドアが横に跳躍し、<水血ノ断罪妖刀>の一閃をかわした。

 半身が切断された半透明の古の戦長ギィルセルは揺らぎながら魔界騎士ホルレインに付いていく。


 <水血ノ断罪妖刀>の一閃と二閃は地面を斬り裂いて見えなくなった。


 <水血ノ断罪妖刀>の三閃も大型の魔馬バルンドドアには速くて当たらない。


 <水血ノ断罪妖刀>の四閃も赤と紫の魔力が世界を構成するような<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>を切り裂くように、魔界騎士ホルレインと大型魔馬バルンドドアに向かっているが、魔界騎士ホルレインを乗せた大型魔馬バルンドドアは赤と紫の魔息を吐きながら尚も加速し、前進。


 <古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>を維持修復させつつ迅速な機動力で、四つの<水血ノ断罪妖刀>を避けたところで、体から、更に強い赤紫の魔力を噴出させ「――くっ、だが!」と気合いを込めながら魔剣と魔槍を振るい「<魔皇・剣槍壊破>――」とスキルの斬撃を繰り出した。


 振り下ろしの<水血ノ断罪妖刀>の水血の刃と触れると、


「――な!?」


 と、魔界騎士ホルレインは驚きのまま大爆発が起き、衝撃波も発生し仰け反る。


 半透明の古の戦長ギィルセルの幻影も大きく揺らいでいた。


 あの揺らぎと大きさからランプの精を彷彿させる。


 大型魔馬バルンドドアも衝撃波を浴びて体が横に傾くと「ブルルルルゥ――」と地を震わせる魔声が轟き渡る。


 その振動は足裏から体内に伝わり、内臓まで共鳴しているように思えた。

 水神アクレシス様の水と吸血神ルグナド様の血が内包しているとんでもないスキルが<水血ノ断罪妖刀>だから威力に驚いたか?


 が、魔界騎士ホルレインと大型魔馬バルンドドアは回転しながら<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>の中を駆け体勢を元に戻し、大型魔馬バルンドドアの四肢を地面に付けるや否や、蹴る――。


「<魔皇・千界葬>を受けながらの反撃は見事――」

 

 突撃してくるが、その<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍が目の前に出現し、俺に攻撃してくる、水神ノ血封書を消し、わずかに横へ移動しながら風槍流『上段受け』と――。


 斜め前に踏み込みながら魔剣を『中段受け』で受け流す。

 斜め左に後退しつつ、地を這うように飛来する魔槍に向け、柄を衝突させて、跳ね上げる。


 で、転移してきた魔剣と魔槍の攻撃を防いでいるところに魔界騎士ホルレインが突き出してきた魔槍へと、魔槍杖バルドークを衝突させ――その衝撃を利用し、横に跳ぶ。


 背後から迫っていた<魔皇・千界葬>の魔剣を避けた。


「――ヒヒィーン」

 

 大型魔馬バルンドドアは俺を追うように額から角刃を伸ばす。

 それを見ながら<武行氣>で浮上し、角刃を避けた。


「そこ――」


 魔界騎士ホルレインが、俺の足下を狙うように魔槍を真上に突き出してくる。

 その<刺突>系の突き技が迫ったが、魔槍杖バルドークを下に回して、突き出された魔槍の穂先を横に回し、<魔手回し>を使うわずに引っ掛けを狙うが、素直に弾き飛ばす。

 

 ――続けざま<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍が転移し、俺に飛来――。

 

 冷静に<山岳斧槍・滔天槍術>の恒久スキルを活かす――魔槍杖バルドークを前後に動かし、柄と竜魔石の石突で防ぎながら、紫の柄に魔力を通すと煌めくまま竜魔石へと魔力が伝搬していく。


 隠し剣(氷の爪)を発動させた。


 石突の竜魔石に魔力が伝わると、その竜魔石から氷が発生――魔界騎士ホルレインたちと距離があるが、そのまま竜魔石の後端から氷剣が如意棒の如く伸び出ていく。

 

 魔界騎士ホルレインに向かった。


「氷剣とは――」


 魔界騎士ホルレインの声に僅かな緊張が混じる。


「――それも普通ではない武器だな――」


 と言いながら魔剣を真上から振り降ろし隠し剣(氷の爪)を叩っ切っていた。

 

 その魔界騎士ホルレインを注意しながら、体を捻り、右腕を背に回して、魔槍杖バルドークの紅斧刃の峰で、俺の背を狙ってきた<魔皇・千界葬>の魔剣の突きを防ぐ――。


 神槍ガンジスを斜め前に出しながら上下に動かし、空間が揺らいだところから転移し直進してくる<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍の突きのような連続攻撃を柄と穂先で防ぎ続けた。


 <魔皇・千界葬>の無数の魔槍と魔剣の斬撃は転移するように現れ、その手数の多さも尋常ではない。

 が――対処は可能だ。魔剣と魔槍の攻撃を一つ一つ確実に弾き避けていく。


 ――衝突が続いている神槍ガンジスと魔槍杖バルドークの柄から火花が散った。

 

 数百は弾き、避けたか。

 腕の感覚は<握吸>のお陰で万全だが、全身の筋肉が焼けるように熱い。

 自然と<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>の影響か、呼吸が荒くなってきている。

 それでも、まだやれる。


 魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアを凝視した刹那――。

 その魔界騎士ホルレインが騎乗する大型の魔馬バルンドドアが突進してきた。


 ――周囲の<魔皇・千界葬>の無数の魔剣と魔槍が、その突撃に合わせるように飛来してくる。


 魔界騎士ホルレインは右の上下腕で魔剣を突き出し、左の上下腕で魔槍を振るう――。

 続けざまの刹那の連続技を――。

 魔剣を受け流しながら、脳裏に戦いの分析が走る。相手の動きは武人特有のソレだ。

 <魔皇・千界葬>の転移パターンさえ読めれば、次の一手が見える――。


 連続する斬撃の衝突で飛び散る火花が、暗がりを不規則に照らす。

 その明滅する光の中で、魔界騎士ホルレインの赤と紫の魔力が不気味な輝きを放っていた。


 刹那、<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせた聖槍アロステと魔星槍フォルアッシュで防ぎまくる。


「チッ、<魔皇・五連刹>を――」

「ブルルゥ――」


 大型の魔馬バルンドドアの角刃も神槍ガンジスの螻蛄首で受け防ぎながら両手の武器を引くと同時に体から<血道第一・開門>で血を大量に流し、即座に<血鎖の饗宴>を繰り出した。血は瞬く間に大海の波頭のように拡がって魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアに向かった。

 <魔皇・千界葬>の、空間の歪みごと、そこから現れる無数の魔剣と魔槍を溶かし、大型の魔馬バルンドドアの角刃をも溶かし破壊しながら、魔界騎士ホルレインごとバルンドドアを飲み込むかと思われた、


「ほぉ――」

 

 魔界騎士ホルレインは冷静に喋りながら遠ざかる、大型の魔馬バルンドドアは後退していた。


 ――<血鎖の饗宴>を活かす。

 無数の血鎖で、<魔皇・千界葬>が生む魔剣と魔槍と<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>の破壊を試みながら――。

 大型の魔馬バルンドドアごと魔界騎士ホルレインを狙うように<血鎖の饗宴>を前進させた。


「吸血神のような攻撃だな――」


 魔界騎士ホルレインは赤と紫を甲冑の隙間から噴出させながら、<ギィルセルの戦骨腕>を活かすように左腕を翳す。


 ほぼ同時に、半透明の古の戦長ギィルセルの幻影が生み出て、直進させ、血鎖の大波のような攻撃の<血鎖の饗宴>と衝突――。


 古の戦長ギィルセルの幻影は、なんの抵抗もなく血鎖の群れを通ってきた。

 更に、<血鎖の饗宴>の内側から無数の血鎖へと干渉を試みているように血の鎖を消しながら己の体として取り込み始めていた。

 <血鎖の饗宴>を消す。


『――驚きです、この吸収能力は迷宮の守護者を彷彿とさせます』

『はい、しかも光属性の血を吸収するのですから』


 眼窩の奥で、ヘルメとグィヴァの声が震えていた。


『あぁ、思い出すな……』


 記憶の底に沈んでいた戦いの感触が蘇る。 宝箱から出現していた守護者との死闘を……。


『器の<血鎖の饗宴>すら無効化するとは……古の戦長、恐るべき存在だ』


 冷静な分析の声。だが、その口調にも僅かな緊張が滲んでいた。


『古の戦長ギィルセルが【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】と関係があるのなら、器様と相性が良いのも頷けます』

『『なるほど』』

『『はい』』


 左目のヘルメと右目のグィヴァに、左手の運命線の傷の中の異空間に棲まう()()(テン)たちがハモるように念話を寄越す。


 すると、<血鎖の饗宴>を吸収していた古の戦長ギィルセルは、膨大な魔力を活かすような<血魔力>が溢れる巨大な骨剣を突き出してきた。

 

 即座に大きい駒の<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚し、その古の戦長ギィルセルに直進させた。

 

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と、古の戦長ギィルセルの<血魔力>を有した巨大な骨剣が衝突――。

 <血魔力>を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>越しに得ては、巨大な骨剣を押し込める。


 古の戦長ギィルセルごと魔界騎士ホルレインに向かわせた。


 が、古の戦長ギィルセルは現実化。

 <夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を押し返すと<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と共に<古の魔皇ビヴァルの紫壇ノ結界>の端の方に移動していく。


 <魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍を生む歪みを神槍ガンジスの<刃翔鐘撃>で貫き、聖槍アロステと魔星槍フォルアッシュを持つ<導想魔手>と<鬼想魔手>も、魔剣と魔槍の出現場所を狙い潰すように<血刃翔刹穿>と<髑髏武人・鬼殺閃>を繰り出し、魔剣を貫き、魔槍を弾く――俺自身は魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアに直進した――。

 

 右手に持つ魔槍杖バルドークで<血龍仙閃>を繰り出した。

 魔界騎士ホルレインは魔槍を掲げ、紅斧刃を防ぐと、「ブルルゥ――」と大型の魔馬バルンドドアが赤と紫の魔力を吹き出してきたから、退く。

 

 そこに<魔皇・千界葬>の宙空の歪みから生まれて出て、飛来してくる魔剣と魔槍を<導想魔手>と<鬼想魔手>に持たせた聖槍アロステと魔星槍フォルアッシュを振るい防ぐ。

 そのまま魔槍杖バルドークを主軸にしつつ、<魔皇・千界葬>の魔剣と魔槍に対処していく。


 そして、俄に左手の神槍ガンジスに魔力を通すと、神槍ガンジスの螻蛄首の槍纓の蒼い毛が上空に舞いながら無数の刃と化し、魔槍と魔剣と衝突を繰り返していった。

 蒼き槍纓の刃が躍るたび火花が連続的に散り、硬質な音を響かせる。


 これで一気に迎撃が楽になった。

 神槍ガンジスの螻蛄首の槍纓が戦局を制したのを確認し、<導想魔手>と<鬼想魔手>を解き、聖槍アロステと魔星槍フォルアッシュをアイテムボックスへと収めた。


 次なる一手として<神剣・三叉法具サラテン>の()()(テン)たちと<血想槍>の使用も視野に入れつつ、当面は神槍ガンジスと魔槍杖バルドークでの戦いを続けよう。

 ――魔界騎士ホルレインを乗せた大型の魔馬バルンドドアも強いし、速い――。

 

 魔槍杖バルドークと神槍ガンジスをも振るい回し、<魔皇・千界葬>による全方位攻撃を数百と往なし続けたところで、<血道第一・開門>を使いわざと大量の血を体から流し始め、<生活魔法>の水も周囲に撒きながら、魔剣と魔槍を体に喰らって――。


 地面に着地――。


 一瞬の静寂。

 魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアの姿が霞のように消え失せる。


「<空間跳躍>か――」

 その直感が走った刹那、背後から届いた声。


「――取った!」


 魔界騎士ホルレインの勝利を確信した声。だが――。

 <仙魔・龍水移>を実行し、魔界騎士ホルレインの頭上に転移を実行し、魔界騎士ホルレインの裏を取るがまま<魔仙神功>と<脳脊魔速>と<滔天魔瞳術>と<始祖ノ触枷>をほぼ同時に発動――。

 

 無数の血の蛇が蠢く。

 始祖ノ触枷が魔界騎士ホルレインと大型の魔馬バルンドドアの全身を縛り上げる。

 始祖ノ触枷に亀裂が走り、動こうとした魔界騎士ホルレインと魔馬バルンドドアに向け、


「アディオス! 魔界騎士ホルレイン!」


 <紅蓮嵐穿>の発動と共に、空気が震えた。

 <血魔力>を吸い上げる秘奥が宿る魔槍杖バルドークは次元速度で直進。

 更に鼓動を魔槍杖バルドークから感じ、


『人外ヲ喰ラワ、セロ』


 魔槍杖バルドークの念話が虚空に響く。

 血煙のような闇と紫と紅の魑魅魍魎の魔力の魔力嵐が旋風となって吹き荒れつつ、魔界騎士ホルレインに衝突しながら肩口に集約されると魔界騎士ホルレインの肩口から亀裂が走る。

 甲冑が、ろうそくのように溶解していく。

 魔力の渦に飲み込まれた甲冑と頭部が悪夢が溶けるように消失されていた。

 大型の魔馬バルンドドアの胴体も消し飛ぶ。


 と、最後までは見られず、魔槍杖バルドークの<紅蓮嵐穿>は地面を穿ち始めた。

 隆起していた岩盤を打ち砕きながら、更に深く、深く――。

 魔力の余波が収まるにつれ、眼前の地面が大きく崩れ落ちていく。


「え?」


 予想外の光景に息を呑む。

 古の遺跡を思わせる壮大な地下空洞が、まるで口を開くように姿を現していた。

続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻発売中

コミックス1巻~3巻発売中。

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