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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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千六百三十八話 光魔沸夜叉将軍ゼメタスたちと作戦会議

 このままで魔命を司るメリアディ様は負ける可能性が高い、負けて死んでも復活が可能のようだが、リスクは高いだろう。


「一ヶ月と聞いたが、破壊の王ラシーンズ・レビオダが【アムシャビスの紅玉環】で進めている計画だが、メンノア、あと何日で魔力の蓄積が完了する?」

「今では、あと十五日前後と推測します」

「時間はない……」

「……精鋭部隊を優先するか」


 ハンカイの言葉に皆が頷いた。

 アドゥムブラリは視線を強め、「あぁ」と語る。


 アドゥムブラリは故郷と関連した幼馴染みの件もある。


 故郷と元アムシャビス族のアドゥムブラリには、負けられない戦いだ。


 骨鰐魔神ベマドーラーや大厖魔街異獣ボベルファを上手く誘導できれば、戦いは楽になりそうなんだが、巧手四櫂のイズチ、インミミ、ゾウバチ、ズィルに魔犀花流派の一団はかなり優れた戦闘集団だ。明櫂戦仙女ニナとシュアノと神界側の南華仙院の戦士団も強い。


 明櫂戦仙女ニナとシュアノは、南華仙院の女子の一般戦士より薄い緑色で腰の帯は白で素敵な仙女たちだった。あの皆を【マホロバの地】に送る約束もあるんだが……しばらくは、【レン・サキナガの峰閣砦】と【サネハダ街道街】に【源左サシィの槍斧ヶ丘】や【メイジナ大平原】などで、レンとサシィと魔皇獣咆ケーゼンベルスや<筆頭従者長(選ばれし眷属)>バーソロンに、三腕の<従者長>ラムラントに<従者長>アチたちと<筆頭従者>チチル、<筆頭従者>ソフィー、<筆頭従者>ノノたちとも協力してもらうか。


 そして、メンノアの使命に乗るとして……。

 ゼメタスとアドモスと合流を早めよう。


 そこで、指輪の闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトをメンノアに見せつつ、


「メンノア、俺たちのことは知っていると聞いたが、改めて説明しておこう。俺の配下には、この闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトと神霊を帯びた楔が結ぶ合同の魂魄として繋がっている光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスという名の部下が居る」


 メンノアは〝列強魔軍地図〟の南東の【グルガンヌの滝壺】に人差し指を置き、


「はい、魔界のグルガンヌの東南地方【グルガンヌの滝壺】の領域を得ている。セラ側から魔界への楔として狭間(ヴェイル)をも越える絶対的な縁を持つのが唯一無二の配下ゼメタスとアドモスなんですよね」


 頷いた。

 メンノアは、


「彼らは、黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズとゼガの魔コインを滝壺に使い、上等戦士ゼアガンヌを得て、魔コインを大量に得たのち、上等戦士の軍団を得た。領域を確保し拡大、そして、魔族女性の助けを得ながら魔公アリゾン、魔界騎士ホルレインの軍と戦い防衛を続けている」

「おう、その通り」


 やはり、魔命の勾玉メンノアは俺たちを知っている。

 ゼメタスとアドモスのステータスには……。


 ※魔界沸騎士長・召喚術※

 ※光魔ルシヴァルの<血魔力>と融合したプレインハニーを取り込んだアニメイテッド・ボーンズと融合を果たした沸騎士たちは、魔界黒沸騎士長ゼメタスと魔界赤沸騎士長アドモスに進化を果たした※

 ※魔界のグルガンヌの東南地方に帰還した魔界黒沸騎士長ゼメタスと魔界赤沸騎士長アドモスは、グルガンヌの滝壺に移動し、魔界騎士クラスとなった能力を誇示するように、自らの頬骨と肋骨の黒獄アニメイテッド・ボーンズと赤獄アニメイテッド・ボーンズを外し、滝壺から拾っておいたゼガの魔コインと自らの頬骨と肋骨を滝壺に付けて、上等戦士誕生の儀式を行った※

 ※上等戦士ゼアガンヌを獲得※

 ※闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトの上部に小さい樹状突起のようなモノが出来上がる※


 と載っていた。


「では、一旦、ゼメタスとアドモスを呼ぶ」

「ん」

「「「「「はい」」」」」

「「了解」」

「そうだな」

「おう」


 メンノアに指輪の闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトを見せるように触り魔力を送った。


 メンノアは知っているように頷く。


 闇の獄骨騎ダークヘルボーンナイトから瞬時に魔力の糸のような魔線が(ほとばし)り床に付着し、床から沸騰音が響く。


 と、その床から魔力の煙か蒸気のようなモノが大量に噴出した。


 ――デデデン、デンッ、デデン。


 と、音がなるように出現した光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが片膝を突けて頭を垂れて現れた。


 二人の愛馬となった大型馬ドールゼリグン、名はヒョードルとゼレアドはこの場には、いない。


 ゼメタスとアドモスは、


「閣下!」

「閣下ァ~」


 と発言しつつ全身から魔力を噴出させた。

 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが羽織る星屑のマントが揺れる。


「おう、ゼメタスとアドモス出番だが、ここは見ての通り、小屋の中。魔霧の渦森で、ゾルの屋敷だ」

「「はい」」


 ゼメタスとアドモスの返事に頷きながら――。

 アイテムボックスから〝知記憶の王樹の器〟を取り出した。


 それに<血魔力>を込める。


 と、一瞬で〝知記憶の王樹の器〟の内部から湧き水が滲み出るように器の中に神秘的な液体が現れて溜まる。


 そこの神秘的な液体に指を入れ――。

 再び、その神秘的な液体に<血魔力>を注ぐと神秘的な液体の中に不思議な海馬体のようなモノが出現、その海馬体のようなモノを触り、俺の記憶を操作していく。

 

 ラムーの素顔は見えないように工夫を凝らすように記憶操作を行った。

 美人さんだから皆にみてもらいたい氣分はあるが――。


 ラムーたち魔鋼族ベルマランの誇りは大事だ。

 イモリザとエトアとルビアが、ゼメタスとアドモスに寄る。


「――ゼメちゃんとアドちゃん、お帰り~」

「ゼメタスとアドモス様、こんにちは~」

「ゼメタスとアドモス様、ルビアです。あの、わたしは<筆頭従者長(選ばれし眷属)>に成りました」


 とルビアが体から<血魔力>を放出させた。

 額の白銀と漆黒の鴉の印が輝かせて、金色の髪を靡かせる。


 ゼメタスとアドモスはルビアを見て驚いて、


「「おぉ~」」


 と、言いながら眼窩の炎を強める。

 ゼメタスとアドモスに、


「よう、ゼメタスとアドモス、ここは見ての通り小屋、戦場ではない。手っ取り早くこれを飲んでもらう」

「「――ハッ」」

 

 と、ゼメタスに〝知記憶の王樹の器〟を渡した。

 ゼメタスは〝知記憶の王樹の器〟に入った神秘的な液体を飲む。

 頭蓋骨系の兜に光の筋が発生。

 そのまま双眸の炎が揺らぐと、漆黒が貴重な兜の前立てと頭頂部の一部が日の出を得たように旭日が輝いた。

 モノトーン調を崩さないが、グラデーションが美しい前立てと成る。


 外骨格も煌めき、黒い魔力が体から噴出した。


 そのゼメタスは、


「閣下の記憶を得ました。お見事な眷族増やし! その前の血銀行では、閣下は<始祖古血闘術>と<始祖ノ血槍術>と<始祖ノ触枷>と<断罪血穿ルグナド・スピアー>を得られ、大幅に<血魔力>を得た……そして、ヴィーネ様とレベッカ様の<血道第二・開門>獲得、強化に……フー様も大幅に強化された。<血影ノ銀爪瞬刃>による攻撃は素敵でした。そして、ハンカイ殿と戦闘し、友情を活かした感動的に眷族と成られた。クナ殿とルビア殿とエトア殿とラムー殿の眷族化もめでたい! そして、ここは魔霧の渦森で、元天魔帝メリディア様の歴史を知る、魔命を司るメリアディ様と閣下の共同眷族の魔命の勾玉メンノア様の誕生ですな! 更に、我らの【グルガンヌ大亀亀裂地帯】が大きな戦場になろうとは! 心が滾りまする――」


 ゼメタスは、皆を見ながらも、アドモスに〝知記憶の王樹の器〟を渡した。


〝知記憶の王樹の器〟を受けとったアドモスは「――ふむ!」と気合い声を発しつつ左手に持った〝知記憶の王樹の器〟を持ち上げ、口に運び、豪快に飲む。


 <闇透纏視>でアドモスを凝視。

 喉元はすべて骨と鋼鉄で構成されているような見た目だが、閃光を発した。

 それが脳幹辺りに移動し、ゼメタスと同じように前立てが煌めく。

 兜の横から槍烏賊の防具が少し伸びて回転した。

 

 甲冑の内部が煌めくと、光の筋が発生していく。

 途端に、強化外骨格のような甲冑のふしぶしから赤い炎のような魔力と赤い蒸気のような魔力が噴出した。

 

 まいどのことだが、ぼあぼあだ。


 俺の記憶入りの神秘的な液体を飲み終えたアドモスは、


「閣下、同じくすべてを理解、皆様の眷族化の新しい家族の誕生、おめでとうございます!」


 と、〝知記憶の王樹の器〟を返された。

 それを戦闘型デバイスのアイテムボックスに仕舞った。

 ゼメタスは、


「魔界側ならば愛盾・光魔黒魂塊と、魔コイン力を用いた<光魔ノ魂魄道>で、閣下たちを【グルガンヌ大亀亀裂地帯】に呼ぶことは可能ですぞ」

「うん、まだわたしたちはだれも試していないけど、それが可能なら、魔界セブドラ側に移動した瞬間に<光魔ノ魂魄道>で【グルガンヌ大亀亀裂地帯】に移動すれば、速やかに作戦は実行できる」


 ユイの言葉に皆が、頷いた。

 アドモスは、


「そして、グルガンヌの東南地方の大半を支配する魔公アリゾンと魔界騎士ホルレインとの対策に我らが動くのですな。また、メリアディ要塞に迫る憤怒のゼアの軍およそ十万の援軍にも、我らか、閣下たち光魔ルシヴァルの眷族衆が向かい対処すると」


 発言。


「そうなる」

「「はい」」

「ん、〝知記憶の王樹の器〟の情報共有は便利」

「はい、閣下が〝メリアディの三眼鏡〟を地面の魔法陣に押し当てた瞬間の劇的な地震のような瞬間は、わくわくドキドキでした!」


 と、ゼメタスとアドモスは甲冑の魔力の噴出具合を、ハートマークに変えている。

 

「ん、ふふふ、ぼあぼあが可愛い~」


 と、エヴァは笑顔で、ハートーマクのぼあぼあを右手で触って笑っていた。

 エトアとルビアたちも触りに向かう。


 そして、先程、メンノアは、


『はい、ですから元、天魔帝メリディア様の一派が襲われ秘宝の欠片が奪われる前提の予想です。現在はそれが完遂されている可能性もあります。そして、嘗ての天魔帝だったメリディア様の意識が完全に消えると、アムシャビス族の紅光の力も弱まり、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】は地下に眠る天魔帝メリディア様が押さえていたとされる噂される〝古代骨沸魔神グルガンヌ〟が復活、または、その力と破壊の王ラシーンズ・レビオダと憤怒のゼアが共鳴を起こし、魔界セブドラの、【魔命を司るメリアディの地】や【グルガンヌ大亀亀裂地帯】に大規模な次元の歪みを引き起こす可能性が……』


 と、発言し、続けて、


『……優秀な魔王級を超えていると言われている魔永破壊のバレライン、魔破霊メティクスハイマなどがいますからね。蓄積が完了すれば【メリアディの命魔逆塔】に移動し、そこで眠る古代の魔法陣を利用して、元天魔帝メリディア様の意識が残る秘宝の欠片を完全に消滅させようとしているはずです』


 破壊の王ラシーンズ・レビオダと戦うとなったら、その配下の魔永破壊のバレライン、魔破霊メティクスハイマが強敵か。


 更に、


『はい。そして憤怒のゼアは、破壊の王ラシーンズ・レビオダの行動に合わせて、【無間地獄】に集結させた十万の軍勢を、グルガンヌの東南地方を支配する魔公アリゾンと、魔公爵ゼン、魔界騎士ホルレインなど諸勢力と連携し、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の魔命を司るメリアディ様のメリアディ要塞に向け進軍させようとしています。恐らく混乱に乗じての進軍でしょう』


 と、重要な情報を告げていた。


 そこで皆を見ながら、


「破壊の王ラシーンズ・レビオダの【アムシャビスの紅玉環】での魔力の蓄積が一ヶ月以内、いや、十五日以内に、それを阻止に【魔命を司るメリアディの地】に乗り込めば、魔永破壊のバレライン、魔破霊メティクスハイマなどと戦いこともなるな」

「はい、既に元天魔帝メリディア様の一派を率いる大眷属のクーフーリンが襲われ、秘宝の欠片が奪われている可能性もあるようですね」


 ヴィーネの言葉に頷いた。


「クーフーリンは強いようだから、時間を稼いでいる可能性もある」

「「はい」」

「ん」


 ヴィーネたちは頷いた。

 ハンカイは顎髭を己の手で掻きながら、


「……うむ、クーフーリンとやらは、秘宝の欠片をだれかに託し、これみよがしに、その秘宝のレプリカを翳しながら、孤城落日を覚悟の囮として、孤立している可能性もある」


 と渋く語る。


 元天魔帝メリディア様の精神、意識の一部が入っている秘宝の欠片を誰かに託しての、自らは囮か……十分可能性はある。


 が、破壊の王ラシーンズ・レビオダが優秀なら、その両方を看破してくる可能性が高いだろう。

 そして、羅将軍ハンカイの考えは重要だ。

 友として<筆頭従者長(選ばれし眷属)>に迎え入れることができて良かった。

 

 【ベファリッツ大帝国】から独立する際、羅将軍ハンカイとして【ラングール王国】で特殊黒寿千人隊を率いていた経験は大きい。


 キサラは、


「はい、【アムシャビスの紅玉環】での魔力の蓄積が完了次第、破壊の王ラシーンズ・レビオダは【メリアディの命魔逆塔】に移動し、元天魔帝メリディア様の意識が残る秘宝の欠片を完全に消滅させることを狙う、とした情報も重要です」


 皆が頷いた。

 俺は、


「元天魔帝メリディア様の意識が完全に消滅したら、紅光の力も弱まり、俺のアムシャビス族の<空の篝火>と<勁力槍>が弱まる可能性があるってことだな」

「「はい」」

「……魔命を司るメリアディ様の母様は救いたい」


 アドゥムブラリが呟く。皆が頷いた。

 今の情報を伝えてくれた魔命の勾玉メンノアも頷く。

 ゼメタスとアドモスも頷いた。


 皆を見ながら、


「繰り返すが……元天魔帝メリディア様の意識が残る秘宝の欠片を救えないと、破壊の王ラシーンズ・レビオダの【メリアディの命魔逆塔】で古代魔法が作用し、メリディア様は完全に消滅してしまう……【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の地下に眠るとされている、天魔帝メリディア様が押さえていた〝古代骨沸魔神グルガンヌ〟が復活か……または、その力と破壊の王ラシーンズ・レビオダと憤怒のゼアが共鳴を起こせば、【魔命を司るメリアディの地】や【グルガンヌ大亀亀裂地帯】に大規模な次元の歪みを引き起こすと……」


 と、先程のメンノアが語った重要な情報を語った。

 皆、神妙な顔付きだ。

 

 【魔命を司るメリアディの地】と【グルガンヌ大亀亀裂地帯】は広大な土地。それでいて【魔命を司るメリアディの地】はアドゥムブラリの故郷。

 破壊されているとはいえ、故郷は故郷だ。


 そして、ゼメタスとアドモスを呼んだが、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の南東には、ゼメタスとアドモスと俺の領域が存在している。


 ゼメタスとアドモスの故郷だし、次元の歪みなどは阻止したいところだ。

 だから、時間的にファーミリアの樹海探索は後回しかな。


「メンノア、まずは、この〝列強魔軍地図〟に触れて魔力を送ってくれ」

「はい――」


 メンノアが〝列強魔軍地図〟に触れる――。


 と、瞬く間に、【魔命を司るメリアディの地】と周辺地域の情報が刷新。

 ぼやけていた土地が立体的に詳細に描かれた。

 【紅玉環の大峡】の隣に【エルフィンベイル魔命の妖城】と【一角獣の谷】と【エメイン・マハの古城】が出現した。

 続いて【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の北西に【メリアディ要塞】などの土地が追加される。


 主に【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の土地名と立体的な高低差は変化せず。

 北西の【魔命を司るメリアディの地】との隣接地域だけが事細かく立体的に描かれた。


「【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の【メリアディ要塞】は、建築されてばかりで、歴史は浅いのか」


 俺の言葉にメンノアは頷いた。


「はい、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の歴史は浅いです。魔命を司るメリアディ様の本来の土地は【魔命を司るメリアディの地】です。先程もいいましたが、押されている影響で【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の北西に本拠を構えるに至っています」


 メンノアの語りに納得顔を浮かべる皆。

 

 〝列強魔軍地図〟に載っている【魔命を司るメリアディの地】と隣接している悪夢の女神ヴァーミナ様の支配領域と魔公アリゾンと魔界騎士ホルレインの所領と狩魔の王ボーフーンの支配領域、【陰蛾平原】、【業魔雷平原】、【魔神血沼】、【大平原コバトトアル】、【血沼地下祭壇】、【ライランの血沼城】、【大いなる滅牙谷】、【リルドバルグの窪地】、闇神リヴォグラフの闇渦の領域、魔公アリゾンの支配領域、吸血神ルグナド様の支配領域、魔毒の女神ミセア様の支配領域の境界線がくっきりと描写された。


 魔界王子ライランの居城【ライランの血沼城】の西と北西と南西が暴虐の王ボシアド様の支配領域だ。


 南方の【大平原コバトトアル】はかなり広大だ。

 北の様々な土地を横断するように魔公爵ゼンの支配領域などと隣接している。


 その【大平原コバトトアル】南方に【ブラックヘブン城】などがある。


 近くに鬼魔人傷場があった地域だな、魔界王子ライランの所領、神々たちが争って、魔界王子ライランは打撃を受けた。


 そして、その南側に【魔城ルグファント】がある。


 鬼魔人のザンクワが色々と語ってくれた。

 大厖魔街異獣ボベルファに乗って魔界セブドラを南下中。


 魔界セブドラの北側の土地が一気に理解できた。

 そして、〝列強魔軍地図〟に記されているゼメタスとアドモスが活躍している【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の地方を注視し、


 【ヘイバトリクス死丘】。

 【ヒメリウスの魔岩街】。

 【リュバの把針沼】。

 【ホルレインの雨霊】。

 【コーネリアスの智恵】。

 【バシニア地獄火門城塞】。

 【ホルレイン愚烈兵城】。

 【ホルレイン平原】。

 【ホルレイン山】。

 【アリゾンの棚岩場】。

 【アリゾンの虎口谷城塞】。

 【アリゾンの氷竜列城】。

 【アリゾン平原】。

 【アリゾン氷列の孔場】。

 【グルガンヌの森】。

 new:【メリアディ要塞】。

 【グルガンヌ湖】。

 【グルガンヌ砂漠】。

 【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】。

 【ライベガの篳篥村】。

 【グルガンヌ山脈】。

 【グルガンヌの大草原】。

 【グルガンヌ中亀裂群】。

 【グルガンヌ瞑道】。

 【グルガンヌの骨場】。

 【グルガンヌの滝壺】。

 【テフカンドラゴンの毒沼】。

 【大河ハレゼレル】。

 【魔剣師デボロアの墓】。

 【魔沸骨洞窟】。

 【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】。

 【ゴールデンアックスの狩り場】。

 【獅魔金斧ゼガの廃城】。

 【大骸骨ドス・ボル霊廟】。

 【ソンリッサの子唄】。

 【ソンリッサの滝泳】。

 【ソンリッサ小草原】。

 【ソンリッサの群れ丘】。

 【ソンリッサの誘い谷】。

 【ソンリッサの宮ノ原】。

 【ソンリッサの群れ森】。

 【ソンリッサ山脈】。

 【巨大ソンリッサ伝説の地】。

 

 と、いった名の土地を見ながら【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】に指を当て、


「メンノア、ここの【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】の地名なんだが、先程の〝古代骨沸魔神グルガンヌ〟とは、同一な存在か?」

「はい、同一の可能性は高いです。私の情報を得ても変化がないようですから、〝列強魔軍地図〟に記されている魔沸骸骨騎王グルガンヌが本当の名で、真の地名なのでしょう」

「はい、魔沸骸骨騎王グルガンヌが眠っている、地下には巨大な魔力、魔素があり、古墳の周りにも、上等戦士よりも強いスケルトンの騎士が常駐し、直ぐに湧く。我らの前身の魔界沸騎士長のような存在が多数居ます」

「はい!」


 ゼメタスとアドモスがそう発言。

 【魔沸骸骨騎王グルガンヌ古墳】の地上と地下はヤバそうだ。


 皆が頷いた。

 真の地名だとしても地方ごと、個人の記憶ごとに呼び方は異なる場合があるはずだからな。


 そして、既にアドゥムブラリとエトアとゼメタスとアドモスの魔力と記憶を得ている〝列強魔軍地図〟の情報のほうが正確だということだろう。


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスは【グルガンヌ大亀亀裂地帯】で暮らしているんだから当然か。


「……了解した」


 すると、レベッカが、


「部隊を分ける?」


 その言葉に皆が頷く。

 メンノアも、三眼が柔らかな光を放ち、霧状の体が静かに揺らめいた。


「はい、主様たちには【アムシャビスの紅玉環】と【メリアディの命魔逆塔】での戦いを見据えた上で、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】で光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスたちと合流し、魔公アリゾンたちの軍を牽制していただきたいのです」


 アドゥムブラリが一歩前に出て、金髪を靡かせながら、


「主、どちらに向かうかわからんが、俺は行くぜ」


 その声には強い決意が滲んでいた。背中の黒い翼が小刻みに震え、部屋の影がその動きに合わせて揺らめく。

 ヴィーネが銀色の虹彩を輝かせ、


「わたしも参ります。ご主人様と共に」


 その声には迷いがなかった。

 ユイも無言で頷き、右手に神鬼・霊風を構える。

 エヴァとレベッカも戦意を露わにし、クレインは魔酒の杯を掲げ、ルビアは双眸で状況を見極めるように周囲を観察していた。

 <従者長>ブッチは片手斧を上げ、<従者長>サラも反ったカトラスのラ・グラスを上げた。


 眷族たちの決意に頷く。

 メンノアに向き直り、皆に、


「……作戦だが、魔界入り後、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>バーソロンに連絡し、光魔騎士ヴィナトロスを経由して、悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様と連携が取り、もし、可能ならば……【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の戦いに参入してもらうとしよう」


 メンノアの霧状の体が喜びに震えるように揺らめき、三つの眼から涙のような光の粒が零れ落ちる。


「はい! ありがとうございます、シュウヤ様!」


 その瞬間、窓から差し込む陽光が強まった。

 メンノアの体から放たれる光と重なり、部屋全体が幻想的な輝きに包まれる。


 アドゥムブラリの故郷である【アムシャビスの紅玉環】、そして魔命を司るメリアディ様の領域を守るため、新たな戦いの準備に入ることを決意した。


 その決意は、眷族たちの心にも確かな覚悟として響いたように感じた。


 これからの戦いは、単なる勢力争いを超えて、大切な絆を守るための戦いとなるだろう。

 

「では、具体的な作戦を立てようか」


 〝列強魔軍地図〟を再度展開させた。

 皆が〝列強魔軍地図〟を注視した。


「まず、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】での布陣だが、光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスの部隊は、どの程度なんだ」


 ゼメタスとアドモスは、〝列強魔軍地図〟の【グルガンヌの森】に指を当て、


「この森から、沸騎士長に昇進したゼアガンヌが率いる上等戦士軍団が三千と騎兵が二千ほど運用できまする……」

「あぁ騎兵もいたか。そして、その上等戦士軍団はスケルトンの兵士として、倒されても復活は直ぐに可能か、騎兵はさすがに無理かな」

「騎兵もソンリッサは大量にいますのでいつでも補充は可能。捕まえたソンリッサは、【グルガンヌの森】に各地の厩舎に格納済みです。また騎兵は、エヴァ様が〝ルクツェルンの暦〟で大勝利して得られた戦利品の、我らの載っている大型馬ヒョードルとザレアドの……黒馬バセルンと黒馬ドールゼリグンの他、黒き大魔獣ルガバンティ、合計三十頭が組み込まれておりまするぞ」

「ん、やった、カードゲームに勝って良かった」

「あぁ、たしかに」

「「あぁ!」」

「そうだった、エヴァっ子は、ほんと重要なんだから!」

「ん、ふふ」

 

 と、レベッカとエヴァがいちゃいちゃし始める。

 面白い。


 キサラが、


「では、ソンリッサが普通の騎兵として……黒馬バセルンと黒馬ドールゼリグンの他、黒き大魔獣ルガバンティに乗る騎兵はエリート騎兵ということでしょうか」

 

 ゼメタスとアドモスは、体から蒸気のような魔力を噴出させて、


「「はい!」」

 

 と力強く返事をした。

 ゼメタスは、


「ゼアガンヌは、私たちがいない時の光魔沸夜叉軍の騎兵長として活躍してもらっておりまする」

「「へぇ」」

「また、上等戦士たちですが、二度倒されて消えても、【グルガンヌの骨場】と【グルガンヌの滝壺】と【グルガンヌの森】から永続的に補充し続けます。また、アニメイテッド・ボーンズの効果で一度倒れても、その場で復活し、両腕や片腕の破壊がされたら自動的に骨が再生もされますので、ゼアガンヌは、その上等戦士よりも強い。また、上等戦士のスケルトンも普通の上等戦士ではない骨剣と骨盾を扱います。特に骨槍部隊は強いです」


 へぇ、骨槍部隊がいるのか、俺の<血魔力>が影響している?


「それは頼もしいスケルトン軍団だ」

「ハッ」

「ハイ!」


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスが甲冑から魔力を噴出させた。

 皆と〝列強魔軍地図〟を見て、


「……では、この【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の西側の平原に、魔公アゾリンとホルレインの軍の主力がいそうだが……とりあえずゼメタスとアドモス、サクッと〝列強魔軍地図〟の上で、いいから皆に、地元の紹介を頼む」

「「ハッ」」


 ゼメタスは、立体的に描かれている〝列強魔軍地図〟の指を西に動かし、【グルガンヌ湖】に指を当ててから、


 【グルガンヌ湖】の見た目はエメラルドグリーンでかなり綺麗だ。

 船着き場も多数あるし港と整備された街道もある。

 村と町も立体的に描かれているから、ズームアップして異世界探訪記を始めるように、探索したくなるが……すぐにズームアウト。


 顎をクイッと動かし、ゼメタスに説明を促した。


 ゼメタスは眼窩に宿る炎の目をボッと音を発して強めると頷いて、〝列強魔軍地図〟の立体的な地表を触るように、指をごかし、


「……西に【グルガンヌ湖】と【ホルレイン平原】と【ホルレイン山】に【アリゾン平原】と【グルガンヌの大草原】がありまする。【ホルレイン山】と、【アリゾン平原】の北西以外は平坦な土地が多く、軍の運用にはちょうど良い……ここでは数度、魔公アリゾンと我らは戦っておりまする」


 と発言、続いてアドモスが、


「はい、閣下の予想通り、ここに魔公アリゾンと魔公爵ゼンと魔界騎士ホルレインの主力部隊の重装歩兵部隊と重装騎兵部隊がいるはずですぞ……常時動かせる軍は一万の規模のはず……魔傭兵ではないところがまた、強い。重装歩兵には、二眼四腕の魔族が多い。得物は多種多様。アリゾン本人も二眼四腕の魔族、人型です。両手剣の魔大剣レツビュルトは中々の威力でした。が、愛盾・光魔赤魂塊と進化した今なら、あまり効かないと思いますが、昔の赤骨塊魂だった時に攻撃を受け止めた際は腕が痺れました。魔界騎士ホルレインは魔剣と魔槍を扱う強者、大型魔馬バルンドドアに乗る強者で、何回か、斬られて倒されたことしかありませぬ。また魔公爵ゼンとは戦ったことはありません。三衝軍の一部隊を率いる名の知らぬ眷族と戦い屠った程度です。そして、魔公アリゾンと魔公爵ゼンと魔界騎士ホルレインの三者の連合軍ですが、魔公アリゾンの主力が多いはずです。重装騎兵部隊は最低でも五千~一万は居るはずです、当然、ランスアタックは強力です。その分、我らの騎兵部隊鍛え上げられましたが、フハハ!」


 アドモスは豪快に笑いながら体中から赤い蒸気の魔力を噴出させて見えなくなった。直ぐにその魔力を吸収して、見えたが、星屑のマントを煌めいて靡かせていた。


 しかし、魔大剣レツビュルトの使い手の魔公アリゾンか。


「了解した、結構な戦力だな、此方は、光魔ルシヴァルの眷族衆に光魔沸夜叉将軍ゼメタスとアドモスとゼアガンヌが率いる三千の上等戦士団の歩兵と二千の騎兵、合計五千の兵士か。そして、名の知らぬ魔族女性も居るか」

「はい、皆様は一騎当千。威力偵察だけでも相手は混乱するはずです」

「「「ふふ」」」


 ヴィーネたちは微笑む。

 アドゥムブラリが、


「俺たちは強い、神々と戦える集団だ。が、油断はしない」


 皆が頷く。


「ふむ……戦いとは数で決まる……が、此方は光魔ルシヴァルの猛者たちだ。一点突破で司令官や隊長クラスを狙うように倒せば、案外早く戦いは終わるだろう」


 ハンカイの言葉に頷いた。


「我が一人で、魔公アリゾンを討ち取ってやろう」


 と、<従者長>で六眼キスマリの言葉に皆が注目。

 珍しく壁際に寄り掛かって黙って、ホフマンやアルナードにサラとブッチたちと同様に俺たちを見続けていた六眼キスマリ。

 

 左上腕の魔剣ケルと右上腕の手が持つ魔剣サグルーを両肩に当てるように持っている。左右下腕は腹付近で組んでいた。

 魔剣アケナドと魔剣スクルドは抜いていない。


「戦場にキスマリが居れば心強い」

「……うむ、主のため、敵将を討ち取ってみせる……」

 

 案外ありえるからな。


「使者様、わたしもがんばります~」


 イモリザの言葉に頷く。

 そのイモリザは<魔骨魚>を生み出して、その宙空に佇む<魔骨魚>の上に腰掛けている。


「おう」


 クレインも数回頷いた。

 メンノアも三眼を煌めかせながら同意した。


 ルビアとエトアは黙って見守っている。


 光魔沸夜叉将軍ゼメタスは甲冑から魔力を噴出させながら、


「説明を続けますぞ……【アリゾン平原】は北西から南と東に続いて広大。【メリアディ要塞】は北西の先です」


 皆が、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の北に位置する【メリアディ要塞】を注目した。ゼメタスは、


「また【大河ハレゼレル】が跨がるように【グルガンヌの大草原】にも続いており、その【グルガンヌの大草原】も広く、皆と東へと続いています。その東には【グルガンヌ山脈】があり、【グルガンヌ中亀裂群】、【グルガンヌ瞑道】、【グルガンヌの骨場】、【テフカンドラゴンの毒沼】などがある。ここは地形が険しく防衛に有利。そして、【ソンリッサの滝泳】と【ソンリッサ小草原】に【ソンリッサ山脈】が続いていまする。【ソンリッサ山脈】のどこかに【巨大ソンリッサ伝説の地】がありまする。また、東南に【グルガンヌの滝壺】がありまする。ここが我らの本拠地……【ソンリッサ山脈】と地続きの南側には、【ソンリッサの群れ丘】と【ソンリッサの誘い谷】に【ソンリッサの宮ノ原】と【ソンリッサの群れ森】がり、大きい【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】を囲う。更に、【ゴールデンアックスの狩り場】と【獅魔金斧ゼガの廃城】、【大骸骨ドス・ボル霊廟】、【ソンリッサの子唄】がありまする」


 と説明をしてくれた。

 そこで、メンノアに、


「魔命の勾玉メンノア、【メリアディ要塞】の魔命を司るメリアディ様が率いる部隊は、兵士数はどれくらいかな」


 と、聞くと、メンノアは頷いて、


「魔命を司るメリアディ様と、四眼四腕の魔命精霊牙のミラガ・ママラ様が、指揮官として、将軍の魔命ノ拳ポポラと魔命の剣師アカサスと魔命の弓兵ラメランがいます、歩兵と騎兵と弓兵を合わせて、数にして三万と少しです」


 三万も居るか。


 〝列強魔軍地図〟に立体的に現れている【アリゾン平原】と、【メリアディ要塞】の【グルガンヌ大亀亀裂地帯】を塞ぐ形の位置を見てから……。

 再び、西の【グルガンヌ湖】と【ホルレイン平原】と【ホルレイン山】に【アリゾン平原】と【グルガンヌの大草原】の地形も見ていく。


 そうして、【メリアディ要塞】を見て、


「……三万なら安心感はあるな」

「「はい」」

「でも、【魔命を司るメリアディの地】の【無間地獄】に集結させた軍勢は十万と聞くし、もっと数は多いかも、わたしたちが加勢しないと不利は不利よ」


 レベッカの言葉に頷いた。


「そうだな、で、その【メリアディ要塞】に乗り込む眷族部隊も必要。その三万の兵と共に【魔命を司るメリアディの地】の【無間地獄】の北から迫ってくる憤怒のゼアと大眷属の炎怒のババラートスの十万の大軍に備えるとして……また、南の魔公アリゾンと魔界騎士ホルレインの軍による前後の挟み撃ちにも備える必要があるか……逆に、【メリアディ要塞】から三万の半分の兵士が、南に打って出て魔公アリゾンたちの部隊を急襲も狙えるかもだ……または……ゼメタスとアドモスたちの部隊が駆け抜け、わざと、魔公アリゾンたちに敗走するとみせかけ……【グルガンヌ山脈】や【グルガンヌ中亀裂群】、【グルガンヌ瞑道】、【グルガンヌの骨場】、【テフカンドラゴンの毒沼】に逃げるふりを行い、敵の吊り出しを狙う……そして魔公アリゾンたちの軍の進行予測の難所に伏兵を事前に仕込み……その伏兵で誘い込まれた敵軍に襲い掛かるか……または、【メリアディ要塞】へと、逃げるふりをして、【メリアディ要塞】と【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の間に伏兵を仕込みつつ、魔公アリゾンたちを【メリアディ要塞】に誘い込み、その背後と側面を伏兵に襲撃させ混乱させたところに、【メリアディ要塞】の三万の軍も逆に撃って出れば……金床作戦のような挟み撃ち作戦も狙えるか? 魔公アリゾンたちを囲めば、その魔公アリゾンと魔界騎士ホルレインの部隊の殲滅、根絶やしも狙えるだろう」


 と、戦場の行方を予想しながら発言をした。

 平坦場所が多いが、【アリゾン平原】と【メリアディ要塞】の間には、隘路が数カ所ある。進路予測による、そこに伏兵を仕込めば、奇襲は可能。

 そして、破壊の王ラシーンズ・レビオダが【アムシャビスの紅玉環】での魔力の蓄積が完了するまでの十五日の間にここでの戦いが終わらせられるか。また、この【メリアディ要塞】の硬さを利用し、戦いを続けてもらい、直に【アムシャビスの紅玉環】に乗り込むほうが手っ取り早いか。で、倒した後、帰り際に、憤怒のゼアの軍を背後から強襲する案もある……。


 皆、少し考えているのか静まった。


「……ご主人様は軍師ができます」

「「「……はい」」」

「ひゅ~」


 クレインが口笛を吹く。

 ハンカイが、


「見事な作戦だ。地形から導線を活かした、戦いの展開を先読みか」

「そうだが、ゼメタスとアドモスの上等戦士団の騎兵部隊の囮が重要になってくるかな。また、北側の十万が問題だ。そこは眷族たちの力技が必要だろう。ま、伏兵を用いずとも、皆の力があれば、案外普通に行けるかもだ、そして、、破壊の王ラシーンズ・レビオダは、【アムシャビスの紅玉環】での魔力の蓄積をさせない方向で行くなら、少数精鋭で挑む作戦もある」

「はい」

「少数精鋭もクーフーリン次第で、現地で人数を分ける必要があるわね」


 レベッカの言葉に頷いた。


「あぁ、では、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の主要地域の西部戦線としようか」

「「「はい」」」


 皆の返事を聞き、見ながら、南の【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】を見て、


「【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】の魔傭兵は魔公アリゾンの勢力とみていいのかな」

「はい、数にして、千人の魔傭兵。大魔商フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスが支配している街、大魔商フルヴァドも魔公アリゾンと連むことが多く、雇われている者は多いですが……近くに【ゴールデンアックスの狩り場】などの狩り場がある。名の通りゴールド、魔力が豊富な金塊の斧のような鶏冠と前爪を持つ二足歩行の大きいドラゴン型のモンスターが湧く。そのゴールデンアックスを狙う者が大半です。我らの領域に入ってくることは滅多にありません」


 へぇ。魔公アリゾンの軍がここにいる可能性も考えて、背後の憂い用に兵を回す必要がありか?


「……了解した」

「メンノア、他に情報は?」


 メンノアは三眼を輝かせながら〝列強魔軍地図〟の西を指で差し、


「はい、皆様の情報通り……【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の【アリゾン平原】と【グルガンヌ湖】と【ホルレイン平原】と【ホルレイン山】と【グルガンヌの大草原】のどこかで、魔公アリゾンと魔公爵ゼンと魔界騎士ホルレインの軍と戦いつつ【メリアディ要塞】を巡る戦いになると予想できます。そして、北側に拡がっている【魔命を司るメリアディの地】から【メリアディ要塞】に憤怒軍の憤怒のゼアの大眷属の炎怒のババラートスが率いる十万の軍が南征してきますが、それが誘導の場合も考慮すべきかと」

「憤怒のゼア自身が精鋭部隊を率いて、【メリアディ要塞】に攻めてくることもありえるか」

「はい……」


 メンノアは暗い顔で答えた。

 皆も神妙な表情を浮かべている。


 メンノアは、東南部を指し、


「……そして、【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】の魔公アリゾンと結びつきの強い商業都市も注意かと思います。転移するように、憤怒のゼアと破壊の王ラシーンズ・レビオダと、その別動隊が現れたら、厄介です」


 皆が頷いた。

 アドゥムブラリが地図を指さしながら、


「魔命を司るメリアディ様のメリアディ要塞の軍と連携する。主の案に乗ろう。だが、俺は精鋭部隊として、破壊の王ラシーンズ・レビオダの【アムシャビスの紅玉環】での魔力の蓄積の阻止を早く狙いたい。同時にクーフーリンを助けよう」


 と発言した。

 一日、二日で、速攻で乗り込むのもありか、偵察しながらの強行となるが。

 頷いた。そして、ヴィーネが銀髪を靡かせながら、


「まずは、同盟を用意するべきかと。悪夢の女神ヴァーミナ様の領域は、【アリゾン平原】と【グルガンヌの大草原】に隣接している。先程ご主人様も言われましたが、光魔騎士ヴィナトロスに頼み、<魔次元の悪夢>を用いて、悪夢の女神ヴァーミナ様と悪夢の女王ベラホズマ様に支援を要請しましょう」

 

 と告げた。そうだな、味方を増やせるなら増やす。それが正解。

 キサラも、


「ヴァーミナ様は、シュウヤのためなら<魔神ノ超越格>、<魔界セブドラの神格体>、<セラへの識格>、<狭間(ヴェイル)の理>などを失うリスクをかけて……<魔神大格者>と<魔界騎士大認可>を使い、シュウヤ様を認めたんですから、絶対にきますよ」

「「「「たしかに」」」」


 女性陣がハモる。

 思わず笑った。

 そして、


「了解した、纏めると、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の西部で、魔公アリゾンの主力軍と激突が濃厚、【グルガンヌ大亀亀裂地帯】の北方では憤怒のゼアの十万の軍勢が、【メリアディ要塞】目掛け、【魔命を司るメリアディの地】から南征の進軍準備中か進軍中……そして、俺たちが、北方の【グルガンヌ大亀亀裂地帯】を空から乗り越えて、直に【アムシャビスの紅玉環】方面に乗り込んだ場合、破壊の王ラシーンズ・レビオダと配下の魔永破壊のバレライン、魔破霊メティクスハイマと激突が濃厚ってことだな」

「「「「「はい」」」」」


 皆が返事をしながら頷き、

 

「……先程の伏兵だが、〝列強魔軍地図〟だけの空論。実際に、【グルガンヌ湖】、【ホルレイン平原】などの西部戦線を見てからだな、で、最初は、悪夢の女神ヴァーミナ様への支援要請をしよう。次に、ゼメタスとアドモス四千の上等戦士軍団で防衛線構築しつつ、俺たちの眷族の小隊で魔公アリゾンの軍の規模や配置の威力偵察を行う線が濃厚か、同時に、魔公アリゾンと結びつきの強い商業都市の【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】の手前にも、眷族部隊と千の兵を回そうか、その次に、俺を含めた精鋭の機動部隊で【アムシャビスの紅玉環】へと速やかに移動し、偵察を強めつつ生きていたらクーフーリンと接触し連携、破壊の王ラシーンズ・レビオダの計画阻止&秘宝の欠片の保護を狙う作戦がいいと思うがどうだろう」

「ん、賛成」

「そうさね、【魔命を司るメリアディの地】側に乗り込む精鋭部隊は、状況次第だが、元天魔帝メリディア様の大眷属クーフーリンに接触し、秘宝の欠片の保護組と破壊の王ラシーンズ・レビオダの本人が居る場所に乗り込む部隊に分けるのも良いだろうね。そして、わたしの部隊配置は、シュウヤに任せよう」


 クレインの言葉に頷いた。

 さすがはエメンタル大帝の血脈で庶子。

 戦術作戦も学んでいる、そして、個人戦の<朱華帝鳥エメンタル>は強力だ。


 レベッカは、


「わたしは、破壊の王ラシーンズ・レビオダがいるだろう【魔命を司るメリアディの地】の土地に乗り込むほうに立候補しとく」


 頷いた。


「シュウヤ様、精鋭部隊に立候補します」


 キサラの言葉に頷いた。


「わたしも精鋭部隊に立候補するわ」


 ユイの言葉は頼もしい。

 続いて、ハンカイが、右手に召喚した金剛樹の斧を上げ、


「俺も行こう」

「ん、わたしも【魔命を司るメリアディの地】に向かう」

「了解」


 エヴァの言葉に頷いた。


「にゃ」


 相棒の黒豹(ロロ)は俺の足下でごろにゃんこ、腹を見せてきた。

 可愛い。


 アドゥムブラリは、


「その作戦でいいだろう、俺も【魔命を司るメリアディの地】に乗り込む」


 頷いた。

 そこで、ルビアたちを見て、


「ルビアとエトアとラムーも【魔命を司るメリアディの地】に向かおうか、魔命の勾玉メンノアと<光魔王樹界ノ衛士>ルヴァロスも」

「は、はい!」

「はいでしゅ!」

「はい!」

「はい」


 フィフィンドの心臓があるから、ラムーに鑑定してもらうかな。


「ご主人様、わたしは、ゼメタスとアドモス様の上等戦士軍団で防衛線構築のメンバーか、眷族たちによる強硬偵察部隊に立候補します」

「おう、ママニとフーとブッチとサラとメルたちは、ゼメタスとアドモスたちと連携してもらう」

「血銀行組のサザーとミスティとルシェルとベリーズとベネットを呼ぶか」

「そうね、詳しい人選は魔界入りしてからでも大丈夫そうだけど、わたしは、防衛戦構築組に回るかな、そして塔烈中立都市セナアプアとサイデイルの眷族たちは、さすがに無理か」


 ヴェロニカの言葉に頷いた。

「そうだな、塔烈中立都市セナアプアの上界には、魔塔ゲルハットと七草ハピオン通りの【天凛の月】の縄張りもあるし、下界は【天凛の港要塞】と【血銀昆虫の街】の縄張りもあるからな」

「うん」


そこでメンノアに、


「天魔帝メリディア様の大眷属が率いている一派の居場所は分かるか?」


 と聞くと、メンノアは〝列強魔軍地図〟の【魔命を司るメリアディの地】の地方に指を当て、


「はい――この【エルフィンベイル魔命の妖城】か【一角獣の谷】か【エメイン・マハの古城】に【魔命妖精シーマークの森】などの土地を巧みに移動することが多い。先程ハンカイが言いましたが、囮として、【エルフィンベイル魔命の妖城】に残っている可能性もあります」


 と教えてくれた。


「了解した。【魔命を司るメリアディの地】に乗り込んだ際の、道案内はメンノアに頼む、アドゥムブラリも知っていると思うが、破壊され占領されているから環境も変化しているだろうからな、が、アドゥムブラリにも頼むかもだ」

「無論だ」

「【フルヴァド・ゴウン・ザーメリクスの街】への潜入も考えたほうがいいだろう」

「「はい」」

「そして、メリアディ要塞との連絡手段は眷族たちの血文字があるから大丈夫として西部戦線の撤退径路だが、東の【グルガンヌ山脈】の間と【グルガンヌ中亀裂群】に【グルガンヌ瞑道】にしようか。そしてそこに伏兵も用意しよう。次に、緊急時の合流地点の候補だが、【グルガンヌの滝壺】が無難かな?」

「「はい」」

「ん、賛成」

「あと、ゼメタスとアドモスに協力している魔族女性とも会っておきたい」

「はい、ラシーヌですな」


 ラシーヌさんか、会うのが楽しみ。

続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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