千六百三十四話 イギル・ヴァイスナーの剣技
ラムーを助けるように片膝で地面を付きつつラムーの体を抱えた。
「ラムー、大丈夫か」
ラムーは瞬きを繰り返しながら見上げ「は、はい」と返事をした。
紺碧の虹彩に<血魔力>が宿る。網膜の無数の視細胞と視神経が活性化しているのか、紺碧を基調とする淡い煌めきが起きていた。その網膜に血の炎と槌の小形の魔印が発生し、それが網膜を時計回りに回る。血炎の魔眼の魔法陣が形成されていた。
白目には光を帯びた血の筋が幾重にも拡がっていたが血の筋は次第に消えていく。
と、旭が俺たちを照らした。いつの間にか一日が過ぎて朝か。
そして、ラムーは<従者長>の眷族として目覚めた能力の差異による混乱も少なそうに見えた、大丈夫そうだな。そのラムーを見ながら、
「立てるか」
と聞くとラムーは頷いて「はい」と立ち上がろうと体を前に動かした。そのラムーを片腕で支え、共に立ち上がった。
ラムーは、俺を見上げてくる。
紺碧の瞳に力が入る、その瞳から<従者長>の眷族として決意が伝わってきた。
頬と首が斑に朱に染まっていた。可愛い。紫を帯びた唇がダークエルフっぽい。
唇が開いた、ラムーは息を深く吸い込むと、
「……ありがとう……ございます、シュウヤ様……」
と言ってくれた。
美人さんだから、鋼鉄の兜、鉄仮面のような防具を被らず常に顔を見せていてほしいとは言わない。
魔鋼族ベルマランの誇りは大事にしたいだろう。
二人だけの時なら、こうして素顔を見ることができるようだからな。
そのラムーは金色の髪を仕舞うように頭部を傾け、長い髪を両手で纏めながらゴムのような物で一つの束の一房にして、その先端を胸の谷間に差し込むように鎧の下に入れていた。
そして、右手に銅色の魔鋼ベルマランの兜を出し、それを被り直す。
女性が髪を纏める仕種が魅惑的なんだよな。特に項が良い。
そのラムーは、腕の防具を外していた。
その間にアイテムボックスから処女刃を取り出し、
ラムーへと「皆と同じように挑戦してみるがいい」と処女刃を渡した。
銅色の兜を被ったラムーは「はい」と処女刃を受け取る。
「ラムー、顔だけ皆に見られてはダメなんだな」
「はい。他の防具もなるべくなら装着したままのほうが良いですが、顔だけですね。それで魔鋼族ベルマランの掟は守れます」
「了解した」
ラムーは頷きながら、処女刃の腕輪を素の二の腕に嵌める。
二の腕は女性らしく太くないが戦士系と分かるように結構な筋肉が付いている。
細マッチョだ。ラムーは、
「では早速、処女刃の腕輪のスイッチを入れます」
「おう」
ラムーは処女刃の腕輪のスイッチを入れて「痛ッ」と痛がった。
腕輪の内側の刃が突き刺さった影響で二の腕から血が滴り落ち、処女刃の下の輪にも血が溜まり、そこから大粒の血が垂れていた。
が、その大粒の血が逆再生するように上昇し、ラムーの二の腕に戻って消えた。
ラムーは「おぉ――」と興奮しつつ二の腕に嵌めた処女刃の腕輪を外す。
と、己の体から<血魔力>を放出させた。
「おめでとう、直ぐに<血道第一・開門>を得たようだな」
「はい! <血道第一・開門>を覚えました!」
頷いた。
ハンカイが、
「ラムーもか! クナにエトアもルビアも直ぐだったが」
「はい!」
「やはり〝知記憶の王樹の器〟の影響か、シュウヤの成長もあるのか、この分だとこれから新しくなる眷族も<血道第一・開門>は直ぐに覚えそうだな」
ハンカイとアドゥムブラリの言葉に頷いた。
「では、処女刃の腕輪を外し、お返し致します」
ラムーは処女刃の腕輪を外して、渡してきた。
それを受け取り戦闘型デバイスのアイテムボックスに仕舞う。
ラムーは右手に<血魔力>を集積させつつ「早速、血文字を――」とこの場に居る皆と、サイデイルの<筆頭従者長>キッシュと、セナアプアの<従者長>ペレランドラに血文字を送っていた。
「ラムーと閣下、<従者長>の獲得、おめでとうございます!」
「御使い様とラムーちゃんおめでとうございます~」
「ラムーもエトアもイノセントアームズ入りは確定~」
「ンン、にゃぉ~」
「プボプボ~」
「主ぅぃぃ~」
「「「「「おめでとうございます!」」」」」
「シュウヤ、まだまだ元気そう。なんか頼もしい!」
「うん、わたしとヴィーネの血のお陰?」
「ふふ、はい、そうに違いない!」
「ん、シュウヤ、わたしの血も飲む?」
傍にきたエヴァが少し嫉妬している、可愛い。
皆の言葉に頷きながら<血道第五・開門>を解除。
胸甲と鈴懸と不動袈裟風の衣装防具を消した。
「エヴァの血は吸いたいが、それは今度にしよう」
「ん」
微笑むエヴァの手をそっと握った。
エヴァは二の腕に頬を寄せて寄り添ってくれた。
エヴァの体の温もりから溢れる愛を感じ、心が温かく満たされた。
「では、衣装を変化させる」
「ん」
と、エヴァが少し離れたところで肩の竜頭装甲を意識し――。
ゴルゴダの革鎧服の素材とルシホンクの魔除けの素材と<神獣焰ノ髭包摂>の素材をミックスさせたインナーと上着とズボンに変化させて――。
イリアス神の聖遺骸布を模した外套を羽織る。
「ん、いつも思うけど、シュウヤはセンスがいい」
「ありがとう、ピンポイントは意識している」
「ん、それがいい」
「うん、色合いも微妙にグラデーションかかってるし、インナーのデザインとか即興でしょ?」
「あぁ」
レベッカはうんうんと言うように頷いて、指先で、俺の新衣装を触り、
「ピンポイントと言ったけど、ここ、ルシヴァルの紋章樹とロロちゃんの小さい模様が少しだけピンポイントに入ってのが、また良いのよね~」
「ん、そう、可愛い」
「はい、わたしもシュウヤ様のデザインは好みです」
「にゃ~」
キサラも気に入ってくれているし、相棒も同意するように鳴いている。
その皆の言葉と態度に照れながら――。
胸元に【闇の教団ハデス】の定紋と〝闇に輝く紋章入りのバッジ〟を付けた。
そして、
「ザガ&ボンの様子を見てくるか」
「了解」
「はい、古びた双剣と胸甲と右腕の防具と脚絆のような腿当てと足防具の修理ですが、意外に速く終わっているかもですよ、二人は優秀ですから」
ヴィーネの言葉に頷く。
メルも、
「王国最高の鍛冶場、白銀魔連二式皇高炉ラメゲゲですからね、期待は持てます」
「はい!」
ルビアも同意。<血魔力>を放出している。
白銀と漆黒の鴉の幻影も出現していた。
ルビア独自の能力か。
「そうだな、ま、挨拶がてらだ。相棒たちとキュベラスも準備はいいかな」
「にゃお~」
黒猫は一瞬キュベラスを見て、頷くように瞬きを繰り返してから、俺の肩に乗ってきた。キュベラスは頷いて、
「はい、<異界の門>の使用します」
「頼む」
と、頼みながらキュベラスに拱手を行う。
キュベラスも胸元に手を当てお辞儀をしてから、
「承知――」
返事をしてから頭を上げて、身を翻す。
キュベラスの胸元が開いたローブはコート系。
衿はそんなに高くないコートで、腰や背には剣帯として機能しそうな銀と黒のベルトが付いている。
キュベラスは石畳の訓練場から正門側に出て石畳のところに<異界の門>を展開させた。
「「「おぉ~」」」
「にゃァ~」
「ワンッ」
一部の者たちは巨大な石門のようなゲートの<異界の門>は見慣れていないから驚いていく。
銀灰猫と銀白狼が足下に来た。
黒猫が、左肩に移動し、銀灰猫と銀白狼を見ながら、
「にゃお~」
と話しかける。
俺の左足に頭をぶつけていた銀灰猫は見上げ、
「ンン、にゃァ」
と挨拶。
白い歯が可愛い。
隣にいるモフモフの銀白狼も俺を見て、
「ワォォン」
と鳴いていた。頷く。
子鹿はポポブムのところで、ミミたちと遊んでいた。
するとキュベラスが召喚した、<異界の門>を見た聖鎖騎士団の重騎士たちと聖鎖騎士団のパーミロ司祭とキンライ助祭と魔族殲滅機関の隊員たちが、
「……召喚の魔道具でもある異界の軍事貴族か、魔人キュベラスを従えしシュウヤ様は凄い……」
「あぁ、しかし、聖者様は宗教国家ヘスリファートにきてくださるのか」
「ふむ、〝黄金聖王印の筒〟の聖王様で聖者様だ。なすべきことは多々ある。私たちは素直にその行動を見守り、啓示として受け取り、更に身も心もすべてを聖者シュウヤ様に捧げるべきなのだ」
「「「「「はい」」」」」
「当分の間は、我らはシュウヤ殿の私兵としてオセべリア王国に貢献しよう」
「「あぁ」」
「迷宮都市ペルネーテに鉄角都市ララーブイン、王都グロムハイムと仕事は多いだろう」
「「「「おう」」」」
と、重騎士たちが語る。
「……はい、皆さんならお分かりと思いますが、シュウヤ様と神々との約定でもある魔境の大森林の傷場を巡るお話は……黒魔女教団の伝説と重なりますが、私たちの聖戦を終わらせる行為でもある。それが成ったら……どれほどの奇跡的な事象となるか……国の成り立ちそのものを変化させる、凄まじい歴史的転換点……北マハハイム地方の南方と中部と東部をまるまる平和的事象へと促す出来事です……とにかく、想像を超える奇跡です……それを考えるだけで、私は……あぁぁ、アーメン……そして、この場で喋らせていただけている光魔ルシヴァルの宗主でもあるシュウヤ様は、本当の聖人、聖者、聖王です。同時に闇と光の運び手の救世主でもありますが、私たち聖鎖騎士団の救世主でもあることが身が震えるほど嬉しくてたまらない……とにかく感謝……アーメン……」
聖鎖騎士団のパーミロ司祭が興奮した口調で涙を流しつつ語ってくれた。
「「「「「はい」」」」」
「「「まさに、奇跡……」」」
「……はい、シュウヤ様の記憶を見ることで知りましたが、闇遊の姫魔鬼メファーラ様と光神ルロディス様とシュウヤ様の繋がりである四神の預言書マーモティニクスも奇跡……そして、もし聖戦が終われば、パーミロ司祭が言われたように……宗教国家ヘスリファートとアーカムネリス聖王国に激震が走る……」
「「「「「「……」」」」」」
聖鎖騎士団の重騎士たちと魔族殲滅機関の隊員たちが胸で十字を切る。
「……そうなれば、アンデッド村の討伐もスムーズに行えるはずだ」
「……教皇庁中央神聖教会も大きく変わるだろう」
「我らの五課聖者・聖王探索局の大偉業ですな」
「トハドレ大司教にミデバ枢機卿たちも喜びます」
「それはそうだが、枢機卿たちの派閥争いも激しくなるか……」
「〝黄金聖王印の筒〟を持つ聖者様を見つけた我らの五課聖者・聖王探索局の権威は増す、今までの左遷扱いからは、大きく変貌するだろう」
「では、教皇庁第一課遺跡発掘局も復権するか?」
「あるだろうな」
「「あぁ」」
「はい、アーメン……」
「「アーメン」」
「聖者様……光神ルロディス様のご威光の下……聖戦を終わらせてください…アーメン」
「「アーメン」」
と、血の儀式を連続して見ていた効果もあるかも知れないが、泣いている方も多い。
「南マハハイム地方だが、クナ様も巨大転移陣と転移陣を各都市に繋げているし、【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の発展は凄まじいことになるぞ……」
「ふふ、当然ですわね」
「「はい」」
「ワォン、ワンワンッ――」
「「「「あぁ」」」」
「にゃォ~」
「にゃァ」
「……今はオセべリア王国だが、将来的には本当に神聖ルシヴァル大帝国が南マハハイム地方に出来上がるのでは?」
「「「「あぁ」」」」
「できるかもな」
「にゃァ」
「ふっ」
クナとシキとアドリアンヌとコレクターの部下たちとヴァルマスク家のアルナードなどが語り合っている。
銀灰猫と銀白狼と黄黒猫と白黒猫も交ざって鳴いていた。
その皆を見てから、メリッサとエラリエースとハミヤとレザライサに刹滅コガと速滅リヨを見て、
「メリッサ、ハミヤ、エラリエース、レザライサたちの眷族入りも考えているから、待っててくれ」
「はい!」
「はい! その言葉だけでも嬉しいです」
「優しいシュウヤ様、姉メイラのこともありますから、ゆっくりで構いません」
「……気長に待つさ。エルフは長命だからな、が、メリッサは人族だから、メリッサをさっさと眷族にしたらいいと思うぞ、そしてサーマリアに乗り込むなら、私を眷族化してくれたほうが良いと思うが、まぁそれは贅沢か」
レザライサの言葉に頷いた。
「あぁ、悪いな」
「とんでもない、血の消費に自らの能力を分け与えている現場を見てますから」
「はい、シュウヤ様の能力が回復次第、タイミングで構いません」
「うむ、【血月布武】の活動として、オセべリア王国を支えておこう、ファルス王も白の九大騎士を信用できないだろうし、優秀な私兵がほしいだろうからな」
頷いた。
アドリアンヌとシキとクナとルマルディとレガランターラとラファエルとエマサッドたちも頷いていく。
「ピュ、ピュゥ~」
と、ヴィーネの背に翼と化していた荒鷹ヒューイが鳴きながら急上昇。
そして、急降下してきたから――。
飛来してくるタイミングに合わせ<無方南華>と<無方剛柔>を発動した。
ヒューイの両足の爪が、俺の右肩を捕らえる、ヒューイが着地。
爪が肩の竜頭装甲の衣装に食い込むがゴルゴダの革鎧服の素材は頑丈だ。
そのヒューイの額の三つの麻呂眉を人差し指で触りつつ、
「――ヒューイも肩に乗って付いてくるか?」
「ぴゅ!」
と、可愛く返事をした。
すると、左手の掌の<シュレゴス・ロードの魔印>が反応し、
『主、ヒューイに魔力を……』
「了解」
左手の掌の<シュレゴス・ロードの魔印>から桃色の魔力が少し出る。
その桃色の魔力が絡む指先を荒鷹ヒューイに向けた。
ヒューイは、笑顔を浮かべるように嘴を拡げ、指先の桃色の魔力を吸い取るように食べてくれた。
そのヒューイは桃色魔力を平らげると、また笑うように嘴を拡げて、
「キュキュッ!」
笑顔を見せる。はは、可愛い。
∴の三つの麻呂眉を輝かせる。勾玉的な形でもあるか。
「もっと食べていいぞ」
「キュゥ♪」
荒鷹ヒューイは嘴で、掌から出た桃色の魔力を俺の指ごと突いて食べていた。
甘噛み的な噛みつき。
「よ〜しよ~し」
「ふふ、ヒューイちゃんの目目がくりくりしてますね♪」
「ん、ヒューイちゃん、こっちみて~」
「ぴゅっ」
とエヴァのほうを見て、エヴァの人差し指の<血魔力>を飲んでいた。
「ん、美味しい?」
「キュッキュ~」
と鳴くヒューイ。
エトアとマルアも、寄ってきた。
「ヒューイちゃん、今度はわたしの翼になって~」
「あ、わたしも~」
「きゅっ、きゅぅ~」
と、二人の指先を嘴で突いていた。
「では、皆、新しい国王の、ファルス殿下に謁見をかねて会いたい者も居ると思うから、王都グロムハイムに行きたい者は一緒に行こう」
「「「「「「「「「「「ハッ」」」」」」」」」」」
「「「「「「はい!」」」」」」
「はい、ファルス殿下も忙しくなりますから、今が良いタイミング」
副長メルも同意した。
「「「「「おう」」」」」
「「行きます!」」
「「「うん」」」
「私も挨拶してきますわ」
【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の皆も返事をした。
シャルドネも付いてくるようだ。
すると、胸元の<光の授印>が少し反応し、天道虫の幻影がガルキエフの遺体が眠る棺桶が鎮座している場所に向かった。そうだな、先輩の大騎士様だ、と、頷いて――。
ガルキエフの遺体が納まっている棺桶の傍に移動し、黙祷――。
肩に居る黒猫も黙っている、同じように目を瞑っていたら面白いが、そんなことを考えず、ちゃんと、ガルキエフを想い、オセべリアの平和を祈っておこう――。
黙祷を終えると、天道虫の幻影がまたも出現し、俺たちの周囲に舞ってから空に消えていた。頷いてからガルキエフの棺桶をアイテムボックスに仕舞った。
「ファルス殿下の下にガルキエフを返すのですね」
「あぁ、先輩のガルキエフならペルネーテの軍人の墓に眠りたいというかもだが、ファルス殿下の護衛の大騎士だからな、レムロナたちも手を回していると思うが、メル、まだ聞いていないだろう?」
「はい」
頷いてから、ヘルメとグィヴァを見て、
「両目に戻ってきてくれ」
「「はい――」」
ヘルメは一瞬で体を液体に変化させる。
その液体のまま左目に突入してきた。
やや遅れてグィヴァも体から放電の魔力を放つと一瞬で、体を雷状の魔力に変化させた。
その雷状の魔力は螺旋を描くように突入してくる。
「マルアも一時的にデュラートの秘剣に」
「はい――」
デュラートの秘剣として飛来し、それを掴んでアイテムボックスに仕舞う。
「フィナプルスとミレイヴァルも戻ってこい」
「はい」
「ハッ」
フィナプルスは翼を畳ませながら腰と太股に付いているフィナプルスの夜会の表紙に突入。
一瞬で、頭から異次元へと突入するようにスポッと消えるから面白い。
ミレイヴァルは綺麗な女性の型のままの銀色の魔力粒子となって腰に飛来し、魔軍夜行ノ槍業を掠めながらキーホルダーのような十字架と杭とチェーンに変化。
光魔龍レガランターラを見て乾坤ノ龍剣に変化させるかと思ったが……。
そのままでも良いか。
すると、キンライ助祭が、
「シュウヤ様、私はここに仲間の一部と留まり、【天凛の月】に協力します」
「了解」
「シュウヤ様、私もハミヤと共に、王都グロムハイムに行きたいです。そしてシュウヤ様が北マハハイム地方に向かうまでは、ファルス殿下の私兵でもなんでもして、オセべリア王国と【血星海月雷吸宵闇・大連盟】に貢献しようかと思います」
聖鎖騎士団のパーミロ司祭の言葉に頷いた。
魔族殲滅機関のレングラットとチャンヴァルとケキミラが、
「シュウヤ様、俺たち三人は、シュウヤ様が北を目指すまで、この屋敷に留まっていていいだろうか」
「「はい」」
「勿論だ」
「ありがとう」
「パーミロ司祭と一部は、共に王都グロムハイムに向かい、そこからは自由行動でいいかな」
「あ、はい、シュウヤ様が【宗都ヘスリファ】に向かう時はご同行させてください。連絡網はメリッサとディノさんに【血星海月雷吸宵闇・大連盟】と【鬼鮫】と【幽魔の門】と【ベイカラの手】も協力してくれるようです」
パーミロ司祭の言葉に、ブルーとアドリアンヌとギュルブンとガロンが頷いていた。
キュベラスの【闇の教団ハデス】も諜報部門は当然あるか。
【鬼鮫】と【幽魔の門】はいわずもがな、ガロンは【ベイカラの手】の最高幹部が全員倒れてしまっているが人員は居るだろうからな。あ、〝ベイカラ教団〟自体は無事か。
ガロンは、前にユイと接触して、
『特別なベイカラの神気を感じ取ったからです。神姫、神子、巫女、わたしはこの闇ギルドの立場を利用し無謬のベイカラの力を宿した者たちを集める役回りを担っているのです』
ベイカラ教団自体が、結構謎なんだよな。
そして、メリッサとディノさんの盗賊ギルド【ベルガット】が丸ごと【天凛の月】入りなことも大きい。
その諜報の観点からメリッサの<従者長>入りを早めたいが、今は、
「了解した、パーミロ司祭と一部の聖鎖騎士団と魔族殲滅機関の隊員は王都グロムハイム入りってことだな」
「「「「はい!」」」」
そのパーミロ司祭たちを含めた皆と共に大所帯で<異界の門>を潜った。
一瞬で、王都グロムハイムの【闇の教団ハデス】が利用していたセーフハウスの屋上に到着した。
『ミスティ、今、王都グロムハイムに戻った。ザガ&ボンと王たちにちょいと会ってから、魔霧の渦森に向かう、合流しとくか?』
『あ、メリアディの三眼鏡のことはエヴァたちから聞いて、興味深いけど、わたしは今のこの血銀行の中でチーム戦をしながら冒険を楽しんでいるから、結果を教えて、あ、ファーミリアたちの樹海には向かう』
『了解』
ミスティと血文字で連絡しつつ城と堀と大通りを眺められる端に移動した。
と、左肩に居た相棒が「ンン」と鳴いて跳躍し、空を浮遊しながら大通りの真上で神獣ロロディーヌに変化を遂げると同時に、体の至る所から無数の触手を伸ばす。
その触手を皆の体に絡めて己の体に収斂させ、頭部と背に乗せていた。
右肩に居たヒューイも釣られて飛翔していく。
大きさ的に神獣の小判鮫に見えた。
銀灰猫と銀白狼も「ンン、にゃァ~」「ワンッ」と鳴いて屋上を駆けて、先に跳ぶと、大通りの上で大きくなった。
その銀白狼に跨がって<武行氣>を使いながら浮遊しつつ――。
グロムハイム城へ向かう。
大きい城を囲う堀の石垣は美しい。
一瞬で、グロムハイム城の俺たちが戦った王の間が見えた。
体育館のような大きさだが、あそこだけ天井が無い。
地面がどこぼこな状態で、絨毯が敷かれてあるが丸わかり――。
新しい絨毯のところに急降下――。
「「あぁ!!」」
「「シュウヤ様たちだぁぁぁ」」
「「英雄シュウヤ殿!!!」」
「「英雄たち!」」
城の衛兵と白の九大騎士の兵士たちが騒ぎとなった。
直ぐに手前の者に、
「レムロナとフランにファルス殿下はどこかな、そして、白銀魔連二式皇高炉ラメゲゲの場所はどこだろう」
「ハッ、レムロナ様はファルス王と共に、新しく造られた執務室にて――」
「――シュウヤ!」
「シュウヤ~」
と走ってきたレムロナとフランが現れた。
「よ!」
と、片手を上げたところで、相棒が一気に連れてきた皆が王の間に降ろされていた。
レムロナは、
「司祭と聖鎖騎士団と魔族殲滅機関の隊員の一部か」
「おう、キンライ助祭と一部の聖鎖騎士団と魔族殲滅機関の隊員はペルネーテの武術街だ。皆、俺が宗教国家ヘスリファートに向かう前に、オセべリアや俺たちに貢献したいようだ」
「なるほど、シュウヤたちはザガたちのところだな」
「おう、古びた双剣と胸甲と右腕の防具と脚絆のような腿当てと足防具の修理はどれくらいかかるのかと思ってな」
「あぁ、それなら先程終わったようだぞ、ボンが双剣を振るって人形をばっさりと斬っていた」
へぇ。
と、レムロナの背後の渡り廊下側からザガとボンが現れた。
「お、シュウヤ、白銀魔連二式皇高炉ラメゲゲは優秀だ。修理は終わったぞ。しかも、工房の隣の巨大倉庫には、オセべリア領内で採取可能な鉱物類が数万も貯蔵してあった。そして工房の窪んだ場所では、魔導人形も数百と並んでいた。さすがは一大国家だな、バハフルドとレザトガという白の九大騎士の騎士は、機密情報が記された書類と貴重な錬金と鍛冶素材のアイテム類もわしらには見ても良いと言ってたのは驚きだった! とにかく、鍛冶屋には最高級の仕事場だろう」
「おう、良かった」
「エンチャント!」
ボンは大きい箱を抱えている。
その大きい箱には、双剣と胸甲と右腕の防具と脚絆のような腿当てと足防具が入っていた。
修理を終えたイギル・ヴァイスナーの装備類、白銀色が基調で薄緑色も多い、どれも光を帯びていた。
ボンは俺の前に大きい箱を置いた。
「ありがとう、ザガとボン!」
と、礼を言いながら、早速、胸甲に触ると、俺の胸元が光を放つ。
<光の授印>の印の光だ。
<古ノ聖戦士イギル・ヴァイスナーの絆>の効果で、その<光の授印>も変化を遂げた。
続いて<光神の導き>と<旭日鴉の導き>と<聖刻ノ金鴉>が連続的に反応した。
俺の胸の<光の授印>の十字架の印には鎖が絡み、霊廟と鴉も追加されている。
すると、すべての双剣と胸甲と右腕の防具と脚絆のような腿当てと足防具が浮かび、飛来してきた。
その双剣を両手で握る。光を帯びた双剣の刃は反っている。
波紋にはルーン文字のような文字が刻まれてあった。
肩の竜頭装甲を意識し、コートと上着の一部を消す。
「ングゥゥィィ」
牛白熊だけを上半身に纏った。
すると、古ノ聖戦士イギル・ヴァイスナー装備の胸甲と右腕の防具、脚絆のような腿当てと足防具が、俺の体に装着された瞬間、古ノ聖戦士イギル・ヴァイスナー装備から光輝く魔力が放出され、その魔力はイギル・ヴァイスナーの幻影を模り、壮大な古典叙事詩を思わせるイギルの歌声が響いた。
オセべリア王の征服
オセべリア王、ラドフォードを征服し
その気高き国土、海に至るまで
ベーマルアの城郭、白き石の壁
神剣バルハルテ、神槍カーナディアで打ち破る
征服の喜び、心の孤独
天頂の象神都市、レジーピック
光神を禁じ、地母神に仕え
闇神に祈りを捧げる王
災いが降りかかる、その時は来た
オセべリア王の前に、全てが崩れ去る
周囲から「「「おぉ!」」」と驚きと感嘆の声が上がった。
イギル・ヴァイスナーの幻影は俺と重なり、思念の声が響いた。
『新しき聖戦士の名を受け継ぐ者よ、お前ならば、光聖獣オリハルコンの中でも優秀な獣を使役できるだろう、そして――』
イギル・ヴァイスナーの幻影が前に出て、双剣を振るうモーションを見せる。
右から突きと左に袈裟斬りから右の一閃に左の突きの剣舞か。
これが、幻影の技なのか――。
――空気が震え、差し込む光すらを斬る、利用している!?
イギル・ヴァイスナーの幻影は双剣を振るいながら振り返る。
足下でクロスした双剣の刃から零れた風を受けた床の絨毯の一部が切断された。
「「「「おぉ!」」」」
またも皆も驚いている。
すると、イギル・ヴァイスナーの幻影は、
『我の行動を真似て、剣技、光聖の双剣技を学ぶのだ』
『あ、はい』
『もう一度、ついてこい――』
と、イギル・ヴァイスナーが駆けながら双剣を振るう。
『少し不安ですが……』
『ハッ、闇を持ちながら強い光を持つものよ、己の光に自信を持て、お前なら学べよう』
『分かりました、イギル師匠!』
と言いながらイギル・ヴァイスナーの剣技を真似ながら駆けた――。
イギル・ヴァイスナーの一振り一振りにイギル・ヴァイスナーの戦場での経験が不思議な光景と共に映像が浮かんでくる、その袈裟斬りから突きの連携を――光の双剣を振るい突いて――イギル・ヴァイスナーの剣技を再現するように学んでいく。
壮大なイギルの歌が、廃墟のような王の間に流れていく。
その王の間で、俺は双剣を振るいながら駆けていた。
一振りごとにイギル・ヴァイスナーの歴史が重なっていく――。
先の位置で足を止めたイギル・ヴァイスナーは、双剣を消して柏手。
ジィーンと音が響いた。
『見事……』
ピコーン※<光聖・迅双剣>スキル獲得※
おおぉ、学べた。
イギル・ヴァイスナーの幻影は魔力粒子となって飛来し、胸甲が吸収するように消えた。
スキルを授けてくれた。
イギル・ヴァイナー師匠に感謝――。
双剣を鞘に戻しながら、両手を下さげるようにクロスしての押忍の挨拶をしながら、頭を下げた。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




