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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1627/2032

千六百二十六話 ハンカイとの戦い


 皆と一緒に庭に移動した。

 相棒とクナとエヴァとレベッカとビュシエとキッカとヴィーネはシャルドネとキーキとサメとリヒターと【ゴリアテの戦旗】と諜報組織【鬼鮫】の面々と合流。


 レザライサたちも続いた。

 シキとファーミリアとキュベラスとヒョウガたちも、庭に居る【血月布武】の皆と――。

 パーミロ司祭とキンライ助祭と聖鎖騎士団の方々――。

 【海王ホーネット】のブルーたち――。

 【星の集い】のホワインたち――。

 【シャファの雷】のギュルブンとナキュたち――。

 【闇の教団ハデス】のイヒアルスたち――。

 【ベイカラの手】のガロンなど【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の面々と団欒的に会話を行う。

 

 シャルドネはキーキと、はしゃぐように嬉しそうな声を発していた。

 ルーク国王が死に新しい王には第二王子のファルス王子が就く。

 第二王子派だった彼女も嬉しいだろう。


 すると、ハンカイは相棒を見てから石畳の上で、


「ここで昔、よく訓練をしたな」

「にゃ」

「おう、トフィンガの鳴き斧でな」

「ふっ、あの頃が懐かしい」

「にゃお~」


 ハンカイは頷くと、ハンカイの右足に頭部を寄せていた黒猫(ロロ)は甘えてから、ガブッと甘噛みを行う。


「ぬおっ、神獣! 俺の足はクプルンの根野菜ではないぞ!」

「にゃお~」


 と、直ぐにペロペロとなめていく黒猫(ロロ)

 ハンカイは、「がはは、ロロよ……」と言いながら、黒猫(ロロ)の頭を撫でていた。黒猫(ロロ)も嬉しそうに目を瞑りながらハンカイの掌に自らの頭部と背を当てていく。


 はは、和む。


 黒猫(ロロ)はハンカイから離れて、見守っているユイたちの下に戻った。

 ハンカイに向け、


「……今でも斧先生は、ハンカイ先生だ」

「あぁ、いつでも教えてやるさ……。眷族となれば、斧武術はもっと伸びる」


 ハンカイは金剛樹の斧を右手に召喚し、見つめた。

 少し遅れて、両腕に嵌まっている大地の魔宝石を見つめる。

 ハンカイの体と装備は最初の頃に比べたらかなり違う。

 ミスティ&クナによって改良が施されてある。

 手首と腰のベルトのアイテムボックスは変わらず。


「おう、期待している」


 ハンカイは俺を見て、


「しかし、オセべリア王国を救うことになろうとはな」

「あぁ、当初を考えたらな」


 ハンカイは魔迷宮に捕らわれ続けていた。

 ハンカイは頷いて、


「たしかに魔迷宮で救われて本当に良かった……」

「その後も色々とあったが」

「ハッ……ありすぎる」


 と、一度笑ったハンカイはレザライサたちを見やった。

 レザライサたちも苦笑する。

 ハンカイは会釈し、俺を見て、


「光魔ルシヴァルの眷族に成る前に……俺の真の主と成るシュウヤ……お前にすべてをかけて挑みたい」

「すべてか……」


 ハンカイは頷く、金剛樹の斧を増やすように左手に召喚し、


「……悔いがないように俺と戦ってくれないか。無論、本気を出しては困るが……」

「……了解した」


 <魔戦酒胴衣>を発動――。

 右腕の戦闘型デバイスを仕舞うことを意識。

 肩の竜頭装甲(ハルホンク)は「ングゥゥィィ」と反応。

 芳醇な酒の香りを漂わせる武道着系統の<魔戦酒胴衣>と成る。

 胸には光と闇の魔力が渦巻くような陰陽の印と槍と酒の印の意匠が施されてある。

 肩の竜頭装甲(ハルホンク)は、右腕の戦闘型デバイスのアイテムボックスを吸い込んでいた。


「では、魔槍杖バルドークを使う」

「おう、当然だ。<闘気玄装>や第三関門だったかは、使ってくれていい……そして、少し(・・)は俺の斧に付き合ってもらおうか――」


 と、金剛樹の斧を<投擲>してきた――。


「少しか――」


 手加減してほしいってか? <闘気玄装>を発動しつつ――。

 直ぐに魔槍杖バルドークの柄を掲げて金剛樹の斧を弾いた。

 重い一撃――。

 <滔天仙正理大綱>も発動させる。


 ※滔天仙正理大綱※

 ※滔天仙流系統:恒久神仙技<神仙霊纏>に分類※

 ※水の法異結界と大豊御酒に<魔闘術>系統と<魔手太陰肺経>の一部と<闘気玄装>と<召喚闘法>と<経脈自在>と<羅仙瞑道百妙技の心得>と<仙魔奇道の心得>に高水準の魔技三種が必須※

 ※霊獣四神と玄智の森の恵みが詰まった大豊御酒を飲んだことで水属性が強化され、新たな魔力活力源を獲得、滔々と流れる大河を心に宿した者、それは滔天仙流の開祖の証しだ※

 ※魔技三種の能力が上昇※

 ※近接と<投擲>の武術技術系統が向上※

 ※大豊御酒と水の法異結界を得ている使い手は<霊仙酒槍術>など様々な酒から功能が得られ、<霊仙酒豪槍鬼>などの戦闘職業が得られるようになるだろう※


 ハンカイは前進し、その弾いた金剛樹の斧を左手で掴むと右から迫る。

 左右の手の甲の大地の魔宝石を煌めかせながら右腕の手に握る金剛樹の斧を振るってきた。


 魔槍杖バルドークを下に傾け柄で、金剛樹の斧を弾く――。

 ハンカイは右に移動し、左手が握る金剛樹の斧を突き出してきた。

 魔槍杖バルドークをかすかに上げ――。

 その金剛樹の峰の打撃を柄で弾くまま左の前に出て魔槍杖バルドークを右に振るう<豪閃>を繰り出した。


 ハンカイは右腕の手が握る金剛樹の斧で金属音を響かせながら<豪閃>を防ぐと、体から黄色の魔力を発した。


 やや送れて、腹と両手に嵌まる大地の魔法石を輝かせると両腕がブレる。

 両腕の手首から甲と金剛樹の斧に、土と風の属性の岩のようにな物が無数に張り付くように出現していた。

 ハンカイは、


「<風地魔命打>――」


 その硬そうな金剛樹の斧を魔槍杖バルドークを左下に出して柄で防ぐ。

 <風地魔命打>は――かなり重い一撃だ。

 ハンカイは迅速に右に移動しながら左腕を振るう。

 両手の甲と魔線で繋がっている金剛樹の斧が煌めく。

 魔槍杖バルドークを下に傾け<風地魔命打>の重い一撃を柄で防いだ――。

 手応えを得るまま<刺突>を反撃に繰り出す。

 ハンカイは横に移動し<刺突>を受けず避ける――。

 追うように右手を引き、左足を前に出して体を右に開きつつ魔槍杖バルドークで<豪閃>を繰り出した。


 ハンカイは、<風地魔命打>で見た目が変化している金剛樹の斧で、下へと紅斧刃を叩くように<豪閃>を防いだ。

 そのまま魔槍杖バルドークを、金剛樹の斧で押しながら右前に出たハンカイは左腕を突き出す。金剛樹の斧の<刺突>と呼ぶように突き技を繰り出してきた。即座に<血道第三・開門>――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>を発動。

 

 加速し、金剛樹の斧の突き技を避けるまま――。

 左に出て魔槍杖バルドークを振るう<龍豪閃>の石突を繰り出した。

 ハンカイは右手が持つ金剛樹の斧で<龍豪閃>を防ぐと、反撃に左前に出ては、左手に握る金剛樹の斧を振るってきた。それを魔槍杖バルドークの螻蛄首で防ぐと、ハンカイは右へとジグザグに動きながら連続的に金剛樹の斧を振るってきた。

 

 その<風地魔命打>の斧舞を風槍流『上段受け』と『中段受け』で防御し――。

 後退するが一撃一撃が重いからか魔槍杖バルドークが時々振動してくる。

 ハンカイの甲から漸増する黄色の魔力線が金剛樹の斧を操るようにも見える。

 斧武術は前よりも進化している。


 <生活魔法>で水を周囲に撒きながら、両手の指に力が入るが、その柄越しに伝わってくる手応えを<握吸>で押さえた。


 そして、手首と前腕と肘を柔らかくさせるように<無方南華>を意識、発動――ハンカイの力の金剛樹の斧の斬撃へと螻蛄首を押し当てるように防ぐ。


 そのままハンカイを魔槍杖バルドークに乗せるように振るって前方に無理やりに押し出す。


 後退したハンカイは「ぬぉ――」と言いながら両手に持つ金剛樹の斧を振るって魔槍杖バルドークを弾く。


 その魔槍杖バルドークを引きつつ<牙衝>を竜魔石で繰り出した。

 ハンカイはわずかに右後方に移動し<牙衝>を避けた。

 その後退したハンカイの足下へ――魔槍杖バルドークの<龍豪閃>の紅斧刃を送った。ハンカイは左から右に移動する紅斧刃を見ながら――。

 右手の金剛樹の斧を斜め右下へと動かし、<龍豪閃>を防ぐ。

 

 と、体から黄色の魔力を発し、


「<風地魔命打>を防ぐか……では、これはどうだ?」


 と言いながら前進し――左腕を突き出す金剛樹の斧で「<地炎樹突き>――」を繰り出してきた。


 え?

 金剛樹の斧から土の炎のような金属の刃が伸びた。

 俄に魔槍杖バルドークを斜めに構え、その不思議な金属の刃を魔槍杖バルドークの柄で防ぐが<魔戦酒胴衣>の右腕の衣装が少し斬られた。


 衣装の布から魔酒の匂いが漂う。


 ハンカイは「やはり、効かぬか――」と言い前に出た。

 <地炎樹突き>の金属の刃は左手の金剛樹の斧に戻りながら、今度は右腕の金剛樹の斧を振り上げるように「<山突き>」を繰り出した。

 

 下から斜め上へと、かちあげ気味の<山突き>――。

 それが魔槍杖バルドークの柄と衝突し、柄ごと持ち上がるが――。

 <メファーラの武闘血>を発動させ、力で金剛樹の斧の<山突き>を押さえるように防いだ。


 そのままハンカイに近づき魔槍杖バルドークの柄を押し出す。

 ハンカイは「ぬっ力が増えた――」と言いながら少し後退――。

 そこを狙う<杖楽昇堕閃>――。

 横から紅斧刃がハンカイの胴に入り、ハンカイが浮いたかに見えた。

 が、右腕の金剛樹の斧を少し前に出し、紅斧刃を防いでいる。

 宙空に浮いたままのハンカイの左の肩口を狙うように<杖楽昇堕閃>の二撃目も、ハンカイの左腕に持つ金剛樹の斧で防がれた。

 

 魔槍杖バルドークを引く。

 ハンカイは<魔闘術>系統を強めつつ着地し石畳を蹴った。

 前進してきたハンカイの足を払うように魔槍杖バルドークの<龍豪閃>を繰り出した。


 ハンカイは「――見える!」と言いながら跳躍――。

 <龍豪閃>を避ける。

 体から黄色い蒸気のような魔力を噴出させる。


 <魔闘術>系統を強め大上段に構えたまま海老反りの体勢に移行し、


「そこだ! <鬼颪(おにおろし)>――」


 と、二振りの金剛樹の斧を一気に振り下ろす。

 <魔闘術の仙極>と<黒呪強瞑>を発動させて、その二つの斬撃を魔槍杖バルドークの柄で受けた――。

 

 ※黒呪強瞑※

 ※<黒呪強瞑>技術系統:基礎、<魔闘気>に分類、上位系統は無数に存在※

 ※獲得条件に〝黒呪咒剣仙譜〟の理解と少量の魔刃を精神に浴びることが必須※

 ※体に、黒い剣状の魔印や波紋が刻まれる。筋肉が活性化し動きが加速することであらゆる行動力が上昇※

 ※<魔闘術>などの魔技三種に他の<闘気霊装>とも相性が良い※

 ※使えば使うほど強化され魔力消費は大きくなる※

 ※<黒呪強瞑>の開祖は、魔界の神々や無数の諸侯の内の誰かと言われているが不明※


「ぬ! 力なら力か――」

「それはどうかな――<魔手回し>」


 と、ハンカイの左右の手が握る金剛樹の斧を纏めて、ぐわわりと回し、無理やり奪取を狙うが、ハンカイは金剛樹の斧を一つに戻す。

 が、そのハンカイの一本の金剛樹の斧を紅矛と紅斧刃の間に引っ掛けるまま<魔手回し>を連続的に繰り出す。


 ハンカイは、


「ハッ、それは知っている!」


 と、左腕を前に出しつつ体を<魔手回し>の機動と同じく回転させて<魔手回し>を防ぐと右腕に再出現させた金剛樹の斧を下から上に振るってきた。


 それを魔槍杖バルドークの柄で防ぐ。


 更に、「防御が硬いのも知っている!」とハンカイは金剛樹の斧を土色に燃焼させると、その金剛樹の斧を迅速に振るってきた。


 魔槍杖バルドークの柄で防ぐ。


 が、土色に燃焼した魔力が岩に変質し魔槍杖バルドークにこびり付いた。


 構わず反撃に<刺突>を繰り出す――。

 ハンカイは両腕の金剛樹の斧で<刺突>を防ぐ。


 引いて連続的に<刃翔鐘撃>を繰り出した。

 

 ハンカイはまたも両腕の金剛樹の斧をクロスさせて「――重いが」――と<刃翔鐘撃>の重い<刺突>系の一撃を防いだハンカイは後退。


 ハンカイを追って<血龍仙閃>――。


 左から右の<血龍仙閃>を左腕の金剛樹の斧を盾にして防ぐと横に吹き飛びながらも、地面を蹴って前進してくる。


 <勁力槍>を発動しつつ、そのハンカイに<断罪刺罪>――。

 ハンカイは両腕を掲げ防御するかと思ったが、地面を滑るまま体勢を低くしつつ<断罪刺罪>を避けてきた。

 直ぐに魔槍杖バルドークを消し、魔槍杖バルドークを再出現させながら<龍豪閃>の下から掬う機動でハンカイを弾き飛ばそうと狙うが、ハンカイは、右腕を振るうフェイクの後、左に跳ぶ。


 身軽に<龍豪閃>を避けつつ下手投げで金剛樹の斧を<投擲>してきた。


 煌めく金剛樹の斧を叩くように魔槍杖バルドークの柄で防ぐ。

 ハンカイは前進してくる。そこを<魔仙萼穿>で迎撃――。

 が、ハンカイの眼前に岩と大地の山々の幻影が突如出現。

 <闇透纏視>で辛うじてハンカイの動きが見えたが、


「そこだ――」


 ハンカイは幻影を打ち消しながら両腕を突き出す。

 土と風の魔力が強まっている金剛樹の斧から紋用が浮かぶ。

 と、金剛樹の斧から炎が発生していた。

 魔槍杖バルドークの柄で金剛樹の斧のダブルの炎の突きを防ぐ。

 すると、魔槍杖バルドークから土色の刻印が煌めき、その煌めきに呼応した金剛樹の斧からテルミット反応のような反応が起きると金剛樹の斧から炎が噴出――。


「な!」


 全身が炎に包まれ熱くて痛い驚きのまま――。

 <無方剛柔>と<火焔光背>を実行し、魔力ごと炎を吸いながら炎を防ぐ。


 ハンカイは後退。肩で息をしていた。

 今のスキルは結構、魔力を消費するのか。

 魔槍杖バルドークの紅斧刃越しにハンカイを見る。


 ハンカイは、


「……ぐっ、……強い、本当にシュウヤは強い……<大地ノ幻惑>と<大地ノ烙印・炎突>の連携がすべて対処されるとは、初見でもシュウヤなら防ぐとは思ってはいた、が、もしかしたらと期待していた秘策を……」

「対処はしたが、炎は喰らったからな。<大地ノ幻惑>と<大地ノ烙印・炎突>は見事だぞ」

「……ふむ」


 ハンカイは、そこでヴィーネとミスティたちを見た。


「今のスキルは、今までの経験の集大成でもある?」

「そうだな、ヴィーネとミスティと魔霧の渦森での経験、サイデイルでのデルハウトたちと訓練、無数の戦闘経験などの結果が、先程の大技、<大地ノ幻惑>と<大地ノ烙印・炎突>だ。魔槍杖バルドークに付けた<大地ノ烙印>をも見破られたことになる」

「あぁ、あの土の刻印か」

「うむ……見事だ」


 と、少し肩を落としながら語る。

 少し発破を掛けるか。


「ハッ、ハンカイ、まだまだ、俺の知らない成長した成果はあるんだろう? それとも、もうお終いなのか? 斧先生」

「ハッ、言うなァ?」

「おうよ、俺の紅斧刃も斧刃に飢えている、ふっ」

「ガハハハッ! 望むところだ、俺の金剛樹の斧をたらふく味わってもらおうか! そして、今までの成長した成果は、まだまだある――」


 と、全身から蒸気のような黄色の魔力を噴出させると、金剛樹の斧が、刃状の鋼が無数に付いた湾曲した斧大剣に変化。


 そのまま前進しながら、湾曲した斧大剣の新・金剛樹の斧を振るってきた。

 その重い斬撃を魔槍杖バルドークの柄で防ぐが、勢いよく後退。

 ハンカイは<魔闘術>系統を強めて加速し、速度を上昇させながら、連続的に湾曲した斧大剣を突き出し、振るってくる。


 斧連舞を繰り出してきた。

 風槍流『中段受け』で二合の打撃を受け、押される。

 <水月血闘法>と<経脈自在>と<煌魔葉舞>と<滔天魔経>を発動するがまま、十合ほど防御に専念した。

 腕が痺れているし、魔槍杖バルドークの柄から血飛沫のような紫色の紋用が柄に出ている。

 魔力を送ると何事もなかったように柄は綺麗になったが、ハンカイの今の攻撃は凄まじい威力だ。


 ハンカイは息を荒くして、動きを止めると、後退した。

 

「……<大地星魔ノ極>と<巌剛斧・連牙把>も防がれたか」


 湾曲した斧大剣の新・金剛樹の斧を、元の金剛樹の斧に戻していた。

 

「必殺技も増えたな」

「おう、ミスティやクナのお陰で、かなり増えたんだが……」

「まだまだ余力はあるんだろう?」

「勿論だ……」


 と、ハンカイは金剛樹の斧に黄色の魔力を溜めている。

 風槍流『右風崩し』の構えのまま左の掌をハンカイに見せ……。

 左の掌を上下させるように、ちょんちょんと動かした。

 

「なら、戦おうか、武人ハンカイ……」

「おう」


 ハンカイは金剛樹の斧の片方を<投擲>――。

 そのハンカイは前進し、右腕の金剛樹の斧を振るってきた。

 <投擲>された金剛樹の斧を柄で防ぎ、石突の竜魔石側で、金剛樹の斧を防ぐ――そのまま反撃に<髑髏武人・鬼殺閃>――。

 ハンカイは、右前に金剛樹の斧を放り、魔槍杖バルドークの<髑髏武人・鬼殺閃>を宙空で無理やりに防ぐと跳躍していたハンカイは上から金剛樹の斧を振るってきた。


 金剛樹の斧の刃から下にドリル状の刃が無数に発生していた。


 これも新技か――。

 その金剛樹の斧のドリル状の刃を柄で防ぐ。

 が、幾つかのドリル状の刃は分離しながら、俺に降り注ぐ。

 両肩と胸元にそれが当たるが、<無方剛柔>で体は無事、<魔戦酒胴衣>は破れるのみ。ハンカイは<投擲>し弾かれていた金剛樹の斧を左手に引き寄せながら、それを突き出す。

 風槍流『中段受け』で防ぐと、ハンカイは金剛樹の斧を振り上げ振り下げてくる。それを防ぎながら反撃の<血龍仙閃>を下から上に振りあげた。

 ハンカイは、金剛樹の斧刃を傾けた。

 <血龍仙閃>を往なし、その<血魔力>の威力を己に変えるように、火花を発生させ、体勢を屈めながら懐に潜り込んで、


「――<烙連岩蹴>――」

 

 と、回し蹴り!?

 ――速い右回し蹴りに、うあっ――カポエラ!?

 しかも、両足が、ハンカイの両足が――。

 大地の魔宝石の欠片でも付くように無数の岩が付きハンマーの足に変化していた。魔槍杖バルドークの<山岳斧槍・滔天槍術>ですべてを往なすが――驚きだ。

 そのハンカイは魔槍杖バルドークの動きを追いながら側面に移動し、両足を元に戻すように両手の甲の大地の魔宝石に両足に付いていた魔宝石を戻すと、両腕をだらりと垂らし、下段の構えのままゆらりと、前進。


 そのハンカイに怪しさを感じたが、<断罪刺罪>――。

 ハンカイは、しめた、と言わんばかりに両腕の金剛樹の斧から膨大の魔力を放出させる。そのまま<断罪刺罪>の魔槍杖バルドークに絡み付いた魔力は繊維状に変化しつつ二つの金剛樹の斧と固まって床に付いた。


「な!」


 驚きのまま金剛樹の斧を離したハンカイは全身から黄色の魔力を蒸気の噴出させて「ぬぉぉぉ――」と前進し頭突きを行う。


 その頭突きを魔槍杖バルドークを離した右前腕で受ける。

 ハンカイは前転し、背の鎧の打撃を繰り出した。

 その背の打撃を左前腕で防いだが、かなり重い。

 更に「<岩龕沓落とし>――」の踵落としを繰り出してきた。

 大地の魔宝石の影響で硬質化している踵落としを、右前腕で受けた直後、激しい痛みと共に右前腕が窪む。


 ボキッと音が響いて腕が折れた。

 <無方剛柔>の強化を超えてきたか――。

 ハンカイは岩が張り付いている左腕の拳を突き出してきた。

 無心のまま<無方剛柔>から<無方南華>に切り替えつつ<魔手太陰肺経>を意識し発動し、自然な動きで左腕の甲をハンカイの左手首から肘辺りに当てつつ、その腕を左上へと小さい円を描くように回しながらハンカイの左の二の腕を左手で掴み、その腕を左へと引っ張るように側に回す。


 ――ハンカイは「ぬおぁ――」と左側にぐわりと回る。

 ハンカイの胴体はガラ空きだ――。

 その胸元へ、無心のまま<滔天掌打>を繰り出した。

 ドッと鈍い音を響かせる。

 ハンカイの胸に<滔天掌打>の掌底が決まった刹那、背中側に大きい掌の形をした魔力が飛んで散る。

 と、ハンカイの胸が掌の形の窪みながら吹き飛んで石畳に転がっていく。


 ピコーン※<無式・蓬莱掌>スキル獲得※


 おぉ、スキルを得た。

 

「「「「おぉ」」」」


 皆の歓声が耳に衝いた。

 と、ハンカイが立ち上がる。

 血飛沫を発した体だが、タフだな。

 そのハンカイは、


「……参った……シュウヤ……」


 と、武人ハンカイに急いで近付いて――《水浄化ピュリファイウォーター》を発動。綺麗な半透明の水球が破裂し、ハンカイに降り注ぐ。

 同時に《水癒(ウォーターキュア)》も連続発動。

 《水癒(ウォーターキュア)》の水の球体も弾けてシャワーとなって、ハンカイに降り注いだ。


 ハンカイの体は回復。


「主のシュウヤ、俺を<筆頭従者長(選ばれし眷属)>にしてくれるか」

「あぁ、当然だ、<筆頭従者長(選ばれし眷属)>に迎えよう」

 

 <光魔の王笏>――。

 全身から血飛沫が迸る。



 

 

続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻発売中

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
ドワーフがカポエラ!?w
このハンカイの戦いは眷属入りを了承したものの、シュウヤと対等な友でいたいという気概の表れなのかな
初期から登場していたハンカイもとうとう、眷属入りか‼︎ ハンカイも知らない間に随分と成長している。 ハンカイの腹部にある大地の魔宝石も、クナやミスティによって完全に力を取り戻していたのか。 金剛樹…
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