千六百二十四話 <断罪血穿(ルグナド・スピアー)>
ファーミリアは白と朱の魔法陣を見ながら周囲を見る。
すべての<魔闘術>系統を解除。
<闘気玄装>を纏い直した。
先程<始祖ノ血槍術>の恒久スキルは吸血神ルグナド様が使用した槍武術。<始祖古血闘術>があるから覚えられた。
<始祖ノ触枷>も共通し、拘束する枷が付いた血の触手か。
<始祖ノ血槍術>に派生した槍スキルはかなりありそうだ。
と考えつつファーミリアに、
「そのクリスタルを活かした白と朱の魔法陣は?」
「〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟です」
〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟か。
魔界に何かが起きたと言ったが、【フォーラルの血道】で、闇神リヴォグラフにダメージがあったってことかな。
過去、ファーミリアは、魔界側の【フォーラルの血道】に付いて、
『……闇神リヴォグラフに占領されて血の根源の大クリスタルの力は遮られている。狭間越えて血の銀行に作用する能力は封じられたままで、転移ができないのです』
と語っていた。
「その白と朱の魔法陣の作用で、【フォーラルの血道】のセラの楔は解放されたんだな」
ファーミリアは頷いて、
「はい、少し移動しましょう――」
俺の腕を掴んだファーミリアと共に右に移動した。
前方に崖がある。あの崖の下はハイム海の深海で、海溝かな。
血銀行はまだまだ続く。
ここも海底のような雰囲気だが、と、振り向く。
ファーミリアがクリスタルを嵌めて組み直した魔法陣は、白色と朱色の明かりを強めて点滅を繰り返している。
「魔法陣の点滅が早まっているが、まだ続きがある?」
「はい、それよりも今はあまり感じませんが、先程シュウヤ様から吸血神ルグナド様の気配を強く感じました、吸血神ルグナド様とコンタクトができたのですか?」
「コンタクトではなく一方通行の念話による導き、俺たちを見守っていた様子だった」
と、周囲を見ながら語る。
ファーミリアは、
「なるほど、だから血多蟲ダゴラムルが、あのように語っていたのですね」
「そうだ」
血多蟲ダゴラムルを倒す際……。
吸血神ルグナド様の思念が指摘したように血多蟲ダゴラムルのぶよぶよとした体のあちこちに血印が出現し、閃光が迸っていた。
血の刻印は宙空にも生まれていたな。
すると、ファーミリアが作り直した白色と朱色の光を放つ魔法陣、〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟の真上に<血魔力>と血印が浮かぶ。
「お?」
「はい、何れ〝ルグナドノ血石海臓器〟などが出来上がるはず」
へぇ。
血印の周囲の血銀行の血の液体に急流が発生し、渦もできていく。
周囲の赤い煉瓦と残骸が、その<血魔力>に吸引されて集積されていくと、そこに集まったモノが石の臓器のようなモノへと変化。
臓器の表面には浮き彫り状の血管も現れていく。
その血管がドクドクと脈を打ち、脈動と鼓動と似た重低音を響かせ始めた。
「〝ルグナドノ血石海臓器〟が、あの石の臓器か」
「はい、吸血神ルグナド様の神性を帯びた〝ルグナドノ血石海臓器〟です。直ぐに吸血神ルグナド様の神像と【吸血神ルグナドの血海の祠】がここに再建される」
「【吸血神ルグナドの血海の祠】か……なるほど」
「はい、更に、そこの〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟を使えば、上の【大墳墓の血法院】の大広間に転移が可能となるはず。しかし、<フォーラルの血道>の機能が一部復活するかは、まだ分かりません。魔界セブドラの【フォーラルの血道】の大クリスタルは依然と闇神リヴォグラフが封じていると思いますから……」
と、ファーミリアが語る間に吸血神ルグナド様の神像は出来上がった。
俺たちの足下にも煉瓦状のブロック状の石素材が次々に出現。
ポコポコ、ボコボコ、ポコポコ、ボコボコと韻を踏みたくなるリズムで石材のブロックが敷き詰められて床が出来上がっていく。
壁も徐々に積み上がっていた。
床の上に、複数の石棺も出来上がった。
吸血鬼たちの寝床か。
しかし、ブロック状が面白い。
自動Minecraftここにありと言いたくなった。
ファーミリアは吸血神ルグナド様の神像に向け手を組む。
お祈りをしていた。
血銀行の液体にファーミリアから漏れた<血魔力>が反応し、かすかに金色の光を発生させていた。
ファーミリアのスタイルの良さが、金色の光で露わになる。
そのファーミリアに魅了されながら、
「……〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟で【大墳墓の血法院】の大広間に転移できるなら便利だな」
「はい」
「では、【吸血神ルグナドの血海の祠】が完成しそうだし、血銀行の一部機能は復活したと考えていいのでは?」
ファーミリアは頷いた。
「そうですね、この血銀行を内包した吸血神ルグナドの神殿と【大墳墓の血法院】の機能の一部は取り戻せたと言えます」
「ファーミリアも先程言っていたが、魔界セブドラの【フォーラルの血道】に、何かが起きたと仮定ができるか」
ファーミリアは頷く、
「……はい、〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟が設置できたことが何よりの証拠……ただ、<フォーラルの血道>を用いた、王都グロムハイムへの転移は、魔界側の【フォーラルの血道】を占領している闇神リヴォグラフの戦力を排除しないかぎり難しいかと」
頷いた。
「十分だ、転移ならキュベラスの<異界の門>がある」
と言うと、ファーミリアの双眸に力が入る。
一瞬だけ片方の頬の表情筋が上にピクピクと動いていた。
嫉妬かな、可愛い。
「……はい」
その間にも、次々と煉瓦と似た赤系統の素材が俺たちの回りに集積され、積み上がっていく。
そうして【吸血神ルグナドの血海の祠】の建物が構築されていった。この辺りに散っていた赤煉瓦のような素材は、もともと【吸血神ルグナドの血海の祠】の一部だったのだろうか。
既に〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟と〝ルグナドノ血石海臓器〟、そして〝吸血神ルグナド様の神像〟は、建物の壁と石の扉によって覆われ見えなくなった。
暫し、呆気にとられながら、
「……見れば分かるが、【吸血神ルグナドの血海の祠】とはヴァルマスク家の休憩所でもあった?」
「はい、ここではヴァルマスク家の皆が<血魔力>を得て、休める場所でもあった。採集したアイテムを一時的に集めることにも利用をしていました。周囲に湧くモンスターも、この血海の祠には入って来られません」
「なるほど、血銀行の下層にある簡易基地みたいな印象か」
それでいて上の【大墳墓の血法院】に戻れるなら便利だ。
「はい」
「崖下も相当深そうだが」
「はい、崖の下も血銀行の下層。ハイム海溝にも通じている血銀行の範疇です」
「へぇ、崖の下の下層、ハイム海溝付近にも、血大鯱グワンザルクのようなモンスター、または古代の吸血鬼のなれの果てが、わんさか居るのかな」
「はい、わんさか居ます。半透明な血吸大魚ハリオチ、魚人魔族系、海竜メガアルファ、邪蛇系、大蛇系、血吸大蛇アバナガナ、蛸竜ボボ・ボルガン、烏賊多脚竜ババムトス、吸血魚ピラニア・オコチャ、海竜サーペント、更に強い大物に、大亀海王ラギルアル、鉄砲大魔魚スタム・ハンセン、烏賊魔帝ポニール、蛸魔海王メガテリ、大海竜パブラフューメル、古海竜ランジャス、古大海竜ドン・ラヴェス、海皇魔帝シャコルガなどがですね」
古大海竜ドン・ラヴェス、海皇魔帝シャコルガが強そう。
そして、蛸竜ボボ・ボルガン、烏賊多脚竜ババムトスと烏賊魔帝ポニールと鉄砲大魔魚スタム・ハンセンと、吸血魚ピラニア・オコチャが、ネーミング的に氣になった。
オコチャとか、実はサッカーの名プレイヤーかも知れない。
「……では、【吸血神ルグナドの血海の祠】の中に入り、皆が居る大広間に戻りますか? まだ修業を続けますか?」
魔槍杖バルドークを仕舞い断罪槍を出す。
「では、少しだけ、断罪槍を使って修業をしようかと」
「断罪槍……」
ファーミリアは断罪槍を見る。
魔軍夜行ノ槍業を触りながら、
『イルヴェーヌ師匠、準備は宜しいですか』
『無論だ、断罪槍の血印は双月神ウリオウ様への冒涜だが……吸血神ルグナドの血印は断罪槍に<血魔力>を与えている』
『はい、石突の角柱の血印はより輝きを増してますし、角度と傾きで螻蛄首の血印、紋章は消えるように見えていましたが、この血銀行に入ってからは、異なる。そろそろ何かのスキルを齎すかもと、予想をしていましたが……』
『ふむ、グラスベラと争っていたパインモースたちを倒した、かつての強国の主が吸血神ルグナドだ。わたしたちは小粒で、あまり氣に止めていなかったようだからな、その点は氣に喰わない。が、栄枯盛衰は世の習い……グラスベラは弱小だったのは事実だ。そして弟子を強化している側だ、受け入れよう。<始祖ノ血槍術>は嬉しいぐらいだ』
『はい、良かった』
『が、双月神ウリオウ様のほうが好きだから、少し不安はある』
『はい』
「ファーミリア準備はできた」
「はい、では直ぐに、行きましょう――」
と、ファーミリアと共に【吸血神ルグナドの血海の祠】から離れて、崖から更に下へと向かった刹那。
「早速、正面から半透明な血吸大魚ハリオチの群れです! すり潰しますので、余ったのをお任せです」
「了解――」
ファーミリアは<龕喰篭手>を振るい回して半透明な大きい魚型モンスター血吸大魚ハリオチを次々に潰していく。
頭部が怪物ガントレットはモーニングハンマーのような攻撃も可能で、当たれば確実に潰れるか、そして、囓られた傷跡から血飛沫を飛ばしながら途中で爆散していた。
ファーミリアだけでも倒せそうな勢いだ。
それらを見ながら<経脈自在>と<ルシヴァル紋章樹ノ纏>――。
<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動。
<魔手太陰肺経>を意識し、発動。
光と闇の運び手装備を少し外し、肩の竜頭装甲を意識して、胸元が開けた半袖シャツとズボンに変化させて半裸に変更――。
断罪槍を<握式・吸脱着>で浮かしながら――。
<血道・魔脈>恒久スキルを意識し、発動。
体中の血道・魔脈と連結している魔点穴が光を帯びていく。
全身を巡る魔力操作の練度が上昇したようだ――。
胸元の<光の授印>は少し光っている。
十字架に<光条の鎖槍>の鎖が絡んで、背景に黄金の鴉が印された壁画の模様に<古ノ聖戦士イギル・ヴァイスナーの絆>の模様と聖戦士の印と双剣が描かれてあった。
良し、半裸のシャツから直ぐに肩の竜頭装甲を意識し、光と闇の運び手装備に切り替えた。
蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備を、直ぐに砂漠烏ノ型へと切り替えた。
続いて<無方南華>と<闇神式・練迅>を発動。
覚えたばかりの殺氣を活かす<赤炎刹筋万>を発動。
<滔天魔経>と<黒呪強瞑>と<水月血闘法>と<光魔血仙経>と<魔仙神功>を連続発動していく。
丹田と心臓から凄まじい魔力が生まれ、それがうねりとなって全身を駆け巡る。
脳幹と大脳の神経網も増加していると理解できるほどに全身を巡る血流と魔力の流れが凄まじい。
<血液加速>もあるが――<血道・魔脈>恒久スキルも連携していると分かる。
<経脈自在>の効果で直ぐに調整し、同時に<血脈冥想>を行う。
平静感を得ながら断罪槍の柄を握る力を<握吸>で強めて<魔軍夜行ノ憑依>を発動――。
腰に付いている魔軍夜行ノ槍業から断罪槍のイルヴェーヌ師匠の魂が俺の体に入った。
『これが血銀行の液体、血海……吸血神ルグナドを直に、おあぁぁぁ――』
断罪槍の石突の血印が煌めく。
と、角柱に血の穂先が出来上がった。
金色と銀色が縁取る血の大笹穂槍とか、渋い。
『わたしはわたしだ、吸血神ルグナド! <百力冥想>に<魔銀剛力>――』
イルヴェーヌ師匠はスキルを使い吸血神ルグナド様の気配を断ちきろうとしているようだ。
前と同じく、<魔銀剛力>の<魔闘術>系統の銀色の魔力は出ないが、代わりに月虹の魔力が吹き荒れるように体から出た。
『弟子、この断罪槍を活かす――』
『はい――』
ファーミリアから斜め上に上昇して逃れた血吸大魚ハリオチを追う。一瞬で間合いを零とした。
『――吸血神ルグナド、お前を利用する! <断罪槍・月牙打>――』
と、石突を活かす打撃スキルを繰り出す。
そして、今は多角形の角柱から金色と銀色が縁取る血の大笹穂槍が伸びている。
その血の大笹穂槍が血吸大魚ハリオチの頭部を捉えるがまま、スパッと一気に両断――。
ピコーン※<断罪槍・月牙打>※スキル獲得※
※<断罪ノ血穿>※スキル獲得※
おぉ、スキルを得た!
『<断罪槍・月牙打>と<断罪ノ血穿>を両方得ました!』
『よくやった! わたしも<断罪ノ血穿>のスキルを得た』
『え? イルヴェーヌ師匠は吸血神ルグナド様にも認められたということでしょうか』
『あぁ……』
残りの血吸大魚ハリオチをすべて倒しきる。
すると、大きい蛇状のモンスターが十数体出現。
ファーミリアが左前に出ながら、
「血吸大蛇アバナガナです。遠距離攻撃が主体、毒を吐きます。貴重な素材は、頭部に多い、左の血吸大蛇アバナガナを攻撃します――」
「了解――」
とファーミリアが左の斜め下へと潜水するように突き進む。
俺も右側に移動しつつ<始祖古血闘術>を発動――。
血吸大蛇アバナガナの毒の液体の遠距離攻撃を避けまくる。
スムーズに血吸大蛇アバナガナに近付いて断罪槍の「――<断罪刺罪>――」を繰り出した。
血吸大蛇アバナガナの胴体を貫いた断罪槍――。
そのまま<断罪槍・薙躱斬打>を繰り出した。
断罪槍に魔力を込めるまま振るう。
片鎌刃で残りの胴体を斬り捨て、左から右に動かした断罪槍の柄の打撃で血吸大蛇アバナガナで潰すよう倒した。
イルヴェーヌ師匠の心身と合わせることを心掛ける。
イルヴェーヌ師匠と共に『良いぞ、わたしと心と体をもっと合わせるのだ――』
『はい!』
次の血吸い大蛇アバナガナを、毒を吐く前に倒す――左手首の<鎖の因子>から<鎖>を発射、空中を直進する<鎖>の先端が血吸い大蛇アバナガナの頭部を貫通――<鎖>と血吸い大蛇アバナガナの血肉と骨の感触から、その硬度が高く耐久性に優れた存在であることを理解し、その体に<鎖>を瞬時に巻き付けると同時に、<鎖>を収斂させた。
<鎖の因子>の印がある左手首に、勢いよく<鎖>が引き込まれ、それに絡み付いていた血吸い大蛇アバナガナも反動で一気に近づいてきた。
その血吸い大蛇アバナガナを見つめながら、
『<断罪槍・撫牙岩崩し>』
イルヴェーヌ師匠の声と共に、自らの体を前に押し出し、血吸い大蛇アバナガナに断罪の一撃を与えた直後、そのまま前方に一回転しながら断罪槍で斬り下ろし、血吸い大蛇アバナガナに豪快な力技を見舞った。
血吸い大蛇アバナガナは真っ二つにされた。
ピコーン※<断罪槍・撫牙岩崩し>※スキル獲得※
よっしゃ、素材の回収もわすれず――。
頭部だけを狙う――。
<断罪槍・薙螺砕>を繰り出す。
片鎌の刃で、腹を裂く。返すように、断罪槍の柄を繰り出す。
強烈な打撃で頭部の根元を破壊――そのまま宙空で爪先半回転と似た挙動で側転を行っている最中に<断罪ノ血穿>を発動し、<魔手回し>をも同時に使う――角柱の血の大笹穂槍で血吸大蛇アバナガナの頭部の根元を輪切り処した――。
その貴重な頭部だけを戦闘型デバイスに格納した。
そうして、近付いてきたすべての血吸大蛇アバナガナを倒しきった。
『見事だ!覚えたばかりの<断罪ノ血穿>で素材回収を狙うとは』
『はい』
すると、ファーミリアも血吸大蛇アバナガナを倒しきり寄ってくる。
『……ファーミリアは綺麗だな……』
と俺の心を識ったイルヴェーヌ師匠は淋しげに語る。
『はい』
ファーミリアはそんなイルヴェーヌ師匠を宿している俺にはみかみながら、
「シュウヤ様、まだまだ下層は続きますが、どうしますか」
「おう、一端戻ろうか、かなり成長できた」
「はい!」
ファーミリアは<龕喰篭手>とサンスクリットの血霊剣を消す。
俺も魔軍夜行ノ槍業を触り『では、<魔軍夜行ノ憑依>を解除します』
『……分かった。弟子、楽しかったぞ、次は【八峰大墳墓】だな?』
『そうなるかもです』
『うむ』
<魔軍夜行ノ憑依>を解除した。
イルヴェーヌ師匠の魂は俺から離れて魔軍夜行ノ槍業に戻る。
ファーミリアと崖傍に移動し、そのまま上昇――。
泳ぎながら<武行氣>を活かすように加速上昇。
<血液加速>の加速も凄まじい。
血銀行の機動は癖になるほどの速さ、同時に、何か脳髄を刺激するんだな、濃度が濃い吸血神ルグナド様の神性が、光魔ルシヴァルにも影響を与えているってことだろう。
普通の不死系の吸血鬼でさえも、氣が狂うことがある血銀行の修業はここまでだ。
と、崖上に戻ってきた。
赤煉瓦がまだ散らばっているが、寺院のような【吸血神ルグナドの血海の祠】の建物に戻った。
「こちらです――」
ファーミリアと一緒に赤煉瓦状の石畳を進む。
そのまま大きい赤い石扉をファーミリアは開けて共に入った。
吸血神ルグナド様の神像が奥に鎮座。
神像の足下の宙空には、蜘蛛の巣のような血管の群れに引っ掛かったように浮いている〝ルグナドノ血石海臓器〟が存在した。
ドクドクとした音が不気味だが、面白い。
〝ルグナドノ血石海臓器〟に絡んでいる太い血管は、天井と斜め横の壁のほうに伸びていた。
それらを見て〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟に向かう。
先に〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟に入ったファーミリアは、此方に、腕を向け、
「ここに入れば直ぐに大広間です、手を――」
「おう、了解した」
ファーミリアの手を握りながら、〝フォーラルクリスタル楔ノ魔法陣〟に足を踏み入れた。
「ぁ……」
ファーミリアは頬を朱に染める。可愛い。
そのファーミリアが、恥ずかしそうに微笑むと見上げた。
刹那、【大墳墓の血法院】の大広間に戻った。
百メートル先に大きい円卓があり、右側の殆どが巨大な硝子で覆われた血銀行があった。
円卓の傍では、教師役の、橙魔皇レザクトニアの薙刀を持ったキサラが先に動いて、魔槍斗宿ラキースを持ったヴィーネと、片腕を魔槍にしているヘルメと腕を剣にしているグィヴァが、キサラが繰り出している<刺突>系と薙ぎ払い系を連続して真似していた。
練習しまくっている。
ヴァルマスク家の方々が、それを見舞っていた。
一部の女性吸血鬼が魔槍を持って真似をしているし、面白い。
レベッカは魔導車椅子に乗っているエヴァと黒猫と一緒か。
レベッカが、魔導車椅子の取っ手を押しながら<血道第三・開門>を使って加速し、エヴァと黒猫共に大広間を駆けていた。
はは、楽しそう。
その皆の下に、ファーミリアと一緒に歩いて戻った。
「ンン、にゃお~」
「あ、閣下!」
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