千六百十三話 王都グロムハイムの王宮最下層の王の隠し部屋
《氷命体鋼》を解除。
王氷墓葎の書物も消した。
闇と光の運び手の装備は維持。
砂漠烏ノ型の兜のままで行こうか。
<闘気玄装>と<水神の呼び声>と<水の神使>と<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>も活かしたままだ。
そして、光の女神イリディア様と通じ合えた氣がするし、<光の授印>繋がりで<光神の導き>を意識し発動しておくか――。
螺旋階段を下りていくと――。
階段から上がってきたセンシバル風の獣人魔族が現れた。
腕の数は二つ、二足歩行。
頭部はそれほどでもないが、体の毛の量が多いし、目の数が異常に多い。
胸甲の鎧を着て、鎧から漆黒の霧のような魔力が放出されていた。
其奴らが、
「来たぞ、あいつらが光神ルロディスの結界を張り直した奴らだ! 隊長に知らせろ!」
「おう!」
「ルビコン様たちの知らせがこないが……」
「かまわねぇ、俺たちで押し潰そうぜ」
「「「おう!」」」
「人族をミンチにして贄にかえろ!」
「あぁ、闇神リヴォグラフ様の敵のすべてが贄!」
「「「「殺せ!」」」」
「「「殺せぇぇぇ」」」
「「闇神リヴォグラフ様の敵!」」
わらわらと、軽く数百は居るか。
紺碧の百魔族ではないが、目の数が異常に多い獣人魔族たちが叫んでいた。軍隊だな、グロムハイム城の地下から潰せる算段もあったということか。
それとも幻瞑神魔封石が一つ機能していたから光神の結界が作用上がってこれなかった?
そして隊長か、【異形のヴォッファン】のライゾウのような何番隊か不明な隊長かな。
と、その闇神リヴォグラフの眷族と目される獣人魔族たちが、右手と左手に持つ赤黒い斧から斧状の魔刃を飛ばしてきた。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を直進させ、その斧状の魔刃を防ぐ。
そのまま<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を直進させた。
「「「――げッ」」」
「「「ぐあぁぁ」」」
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で斧状の魔刃を防ぎつつ直進させた。
最初に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と衝突した獣人魔族は一瞬で潰れる。
次の獣人魔族は、床と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に挟まれるように潰れていた。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で獣人魔族をどんどんと押しのけていった――。
「押すな――」
「潰れぇ――」
「げぁ――」
「あぁぁ――」
「ひぁぁあ――」
ドミノ倒しの如く、目の数が異常に多い獣人魔族たちが倒れては吹き飛ぶ。
後列の獣人魔族は押しくら饅頭どころではないまま<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と仲間たちにもみくちゃにされながら潰れるように倒れていった。階段の端にいた獣人魔族は押されて落下。
逃げるように縦穴に跳ぶ獣人魔族もいた。
そんな獣人魔族が跳ぶ縦穴は、幻瞑神魔封石の結界が作動した証拠の光に満ちている。
天井から地下深く貫くような光。
光の女神イリディア様の光属性の魔法の結界だ。
光の槍にも見える。
それに触れた目の数が異常に多い獣人魔族の一部は体毛が焼け焦げたように燃えている。
が、一部は光に耐性があった。
平気な獣人魔族もいた。
しかし、皆、空は飛べないようだ。
飛べない獣人魔族はただの獣人魔族だ、獣人魔族は真っ逆さまに墜落していく。
横壁に衝突し、頭部がもげている獣人魔族もいて、血飛沫を発していた。
滑落し死ぬ山羊を彷彿とさせる。
思わず南無――とお祈りを送った。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を進ませていた先で重低音が響いた。
階段の上を進ませていた<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が壁と衝突し、めり込んで止まった。
その<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。
大きく窪んだ壁には目の数が異常に多い獣人魔族たちだった血肉と内臓と骨の塊がべっとりと付着していた。
血の一部は皆が吸収。
「「「おぉ~」」」
と、壁際を進むファーミリアたちが喜ぶ。
光の女神イリディア様の加護が強い縦穴の中央には近付いていない。
「「「怯むな!」」」
「「うぉぉ」」
と、闇神リヴォグラフの獣人魔族たちが階段の下から上がってくる。
ゼメタスとアドモスが、
「閣下ァ」
「ここは私たちに、お任せあれ」
と、叫ぶと兜の前立てと頭頂部の日の出のような旭日が輝いた。
「お任せアレェ~♪」
「にゃご~」
イモリザと黒豹が光魔沸夜叉将軍の真似をしている。
「おう、任せた」
「「ハッ」」
光魔沸夜叉将軍のゼメタスとアドモスは全身から魔力を噴出させながら階段の下を見やる。
星屑のマントが揺らぐ。
「光魔黒骨清濁牙で――閣下に貢献する!」
「我の名剣・光魔赤骨清濁牙で、敵を粉砕しよう!」
「――敵を塵に!」
「――敵を灰に!」
「――敵を魔素に!」
光魔沸夜叉将軍のゼメタスとアドモスは互いの愛盾・光魔黒魂塊と愛盾・光魔赤魂塊を骨剣で叩き合う。
名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙から無数の火花が散る。
兜は槍烏賊に変化させていないから、珍しく矛タイプで突っ込むつもりか。
眼窩に宿る炎を擁したゼメタスとアドモスは、螺旋階段を上がってくる獣人魔族の集団を見据えた。
獣人集団の先頭にいたリーダー格が、ゼメタスとアドモスに斧を差し向ける。と、背後の獣人集団は「「「おう!」」」と気合い声を発して一気呵成に階段を駆け上る。
眼窩の炎がギラついたゼメタスとアドモス。
二人はタイミングに合わせ階段の下へと跳躍――。
両腕を振り上げ、宙空からの大上段の構えとなった。
そのまま名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙を振るい落とすと、目の数が異常な獣人魔族の頭部を捉えた。
そのまま胴体を名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙がバッサリと通り抜け階段を切り裂く。獣人魔族を真っ二つにして倒していた。
残心が無いゼメタスは漆黒の甲冑から蒸気のような魔力が噴出すると「<黒南風もののふ>」と<魔闘術>系統を発動させて前方に加速、前進し、右腕の手が持つ骨剣を横に寝かせたまま「<月虹斬り>――」を繰り出した。名剣・光魔黒骨清濁牙を真横に振るう。
前後に居た獣人魔族の胴を抜く、獣人魔族の上半身はズレたように落ち、輪切りに切断されていた。
その横をアドモスが駆けて、愛盾・光魔赤魂塊を突き出し、
「<暗紅ノ盾打突>――」
を繰り出していた。
目の数が異常な獣人魔族の両手が持つ魔斧を、愛盾・光魔赤魂塊が弾き飛ばしては、その頭部を愛盾・光魔赤魂塊がぶち抜いて倒していた。
素直に強い。
ゼメタスとアドモスは数十と目の数が異常な獣人魔族たちを倒しきると、背後に跳躍、階段を上がって戻ってきた。
「ゼメタスとアドモス、強い」
「ん、格好良かった!」
「「「はい!」」」
皆に褒められたゼメタスとアドモスは、嬉しそうに全身から魔力を噴出させて、
「「おぉ、嬉しいですぞ!」」
と発言。するとヘルメが、
「見事な働きぶりです。しかし、獣人系の闇神リヴォグラフの眷族兵は、まだまだ上ってくるようですね、ですから閣下、あの死骸と水で、盛大な水の急流を作りたいと思いますが、よろしいでしょうか」
「おう、ヘルメの水の精霊としての力を魅せてくれ」
「はい!!」
気合いに満ちた常闇の水精霊ヘルメ。
全身から水氣と魔力を放ち薄い魔法の羽衣を靡かせながら浮上する。蒼を基調としたグラデーションが美しい水飛沫が周囲に虹のカーテンを造り出していた。
常闇の水精霊ヘルメは体から大量の水を放出する。その水は階段下に勢いよく流れ、高圧の水流が横壁と共に血肉を洗い流していく。
すると、螺旋階段を上がってきた目の数が異常に多い獣人魔族たちが、
「げ!」
「おぃぃぃ――」
「げぇぇ、ここに急流だと!?」
と驚く。
そのまま、先頭にいた目の数が異常に多い獣人魔族は無数の紫色の血肉と骨の流れと衝突し、次々と獣人魔族たちは紫色の血肉と骨の流れと衝突し、
「「「「うぁぁぁぁ」」」」」
と叫び声をも巻きこむような濁流となって階段の下へと流れていく。
水の流れに押され縦穴に流れ落ちていく者も多かった。
獣人魔族たちが少し哀れに見える。
だが、優秀な目の数が異常に多い獣人魔族は多いか。
壁に跳躍し、水の流れを避けた。
壁を蹴り三角跳びをしながら、宙空から、此方を見て、右手と左手に持つ赤黒い斧を振るう。
その斧刃から斧状の赤黒い魔刃を飛ばしてくる。
赤黒い魔刃は、皆、普通に移動して避け、ゼメタスとアドモスは愛盾・光魔黒魂塊と愛盾・光魔赤魂塊で防ぐ。
目の数が異常に多い獣人魔族たちは次々に右手から鎖を斜め上に射出――螺旋階段の階段と壁に突き刺す。
その鎖を右手の内部に収斂させ、手に引き込む反動でシュッとした音を響かせながら反対側の高い螺旋階段の上に移動していた。
俺たちを高台から挟み撃ちするつもりか。
優秀な獣人魔族の中には、俺のような<鎖>を扱うスキル保持者がいるようだ。複数の目から魔眼のような煌めきを放っている獣人魔族も居る。
「隊長クラスでしょうか」
「ふむ、【異形のヴォッファン】のか?」
ゼメタスとアドモスの発言に、
「どうだろう。数が多いから優秀な獣人魔族ってこところだろう」
優秀な獣人魔族は、また鎖を反対側の壁に射出し、宙空を移動していく。移動速度はかなり速いが、
「皆、遠距離から普通に仕留めるぞ!」
と言いながら、目の数が異常に多い獣人魔族に――。
「「「「はい!」」」」
《連氷蛇矢》を無数に放ち<鎖型・滅印>を発動。
続けて<光条の鎖槍>を五発放った。
《連氷蛇矢》に紛れて直進する二つの<鎖>に反応した目の数が異常に多い獣人魔族は、両手の斧で、魔法と<鎖>を見事に防ぐ。が、<光条の鎖槍>は防げない。
一人の目の数が異常に多い獣人魔族の体に五つの<光条の鎖槍>が連続的に突き刺さった、その獣人魔族を横壁に運ぶと、壁に縫い付けた。
その獣人魔族はぐったりとして動かないまま、<光条の鎖槍>の後部から光の網に変化した、その光の網に包まれ
ながら何もしない、すでに死んでいるか。
その獣人魔族の体に<光条の鎖槍>だった光の網が進入し、そのまま網目状の死肉を無数に造り出した。
「皆、続きますよ、撃ち落としましょう――」
「ん」
「了解」
「はい!」
「あぁ――」
キサラの仕込み魔杖から<バーヴァイの魔刃>――。
エヴァの五つのサージロンの球と――。
ベネットの聖十字金属の魔矢――。
フィナプルスの<奇怪・霊魔刃>――。
アドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>――。
「はい、元紅虎の嵐の副長として成果を!」
「お任せを!」
「【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の前に、【血月布武】としての力を見せる――」
レザライサは魔剣ルギヌンフを拾い、銀色の魔力を発しながら前進――。
獣人魔族が射出した鎖を右手で掴んでは、引っ張り、魔剣ルギヌンフにも巻き付けながら強引に獣人魔族を落下させると、魔剣ルギヌンフを上段に回しながら前転を行い、えび反り姿勢から一気に禹、魔剣ルギヌンフを振り降ろし、獣人魔族の体を肩口から斜めに両断し、倒していた。
そのレザライサの背後から、ハミヤたちが、
「光の女神イリディア様に感謝を!」
「「光あれ!」」
「「――聖王シュウヤ様に忠誠を!」」
「――光神ルロディス様に導かれし、聖者様は、またも奇跡を起こした、光の女神イリディア様のために!」
「――おうい、光の女神イリディア様の奇跡は、〝黄金聖王印の筒〟と同等の奇跡!」
「――闇神リヴォグラフを滅ぼす、光神教徒のシュウヤ様!」
「はい、シュウヤ様に愛されたい!」
「わたしも!」
ダクラカンの聖剣を振るい、光の魔刃を飛ばす。
一桁のレングラットとチャンヴァルとケキミラ
と魔族殲滅機関の二桁の灰銀デュモル・ゲラルド、猛火ラビンラン・ケスファンビン、速滅リヨ・アスシッド、夷剣ヤン・ムエシチオン、刹滅コガ・モザリランザたちが次々に光の剣の形をした武器を<投擲>。
愛されたいとか、然り気無く告白されたが、リヨとコガか?
レザライサたちは手裏剣のようなアイテムを<投擲>していく。
「光魔ルシヴァルの後衛に徹しよう」
「「ふふ――」」
「ハッ」
「「承知!」」
「ぬおお――」
「皆の遠距離攻撃は強力です――」
「はい、動きは素早いですが――」
「「「うん」」」
「「「はい」」」
ヴェロニカのベイホルガの頂から<バーヴァイの魔刃>と血の刃が飛翔していく。
クナの朱雀ノ星宿から魔刃――。
フーの《怒破刃潰》。
アドリアンヌの芭蕉扇のような武器から迸る風の魔刃――。
ヴィーネの月迅影追矢ビスラと――。
ルシェルは、見たことのない魔杖から雷状に鞭のように連なった魔刃が伸びていく。
あれもクリムの隠し部屋から入手した武器か。
ゼメタスとアドモスの<バーヴァイの魔刃>。
ユイとサラの<バーヴァイの魔刃>と――。
メルの紅孔雀の攻防霊玉を魔刀に変化させた魔刀からの<バーヴァイの魔刃>――。
ハンカイの金剛樹の斧の<投擲>――。
キュベラスの<魔晶力ノ礫>――。
レベッカの蒼炎槍――。
シキの<溯源刃竜のシグマドラ>――。
ベリーズの聖十字金属の魔矢――。
ヒョウガの咆哮の衝撃波――。
炎極ベルハラディの火球の群れ――。
エトアは皆を応援。
レザライサは魔剣ルギヌンフを<投擲>。
ラムーは鋼鉄の礫を<投擲>――。
俺ももう一度、《連氷蛇矢》――。
空を行き交う目の数が異常に多い獣人魔族たちの数は多かったが、皆の凄まじい遠距離攻撃を喰らうとあっけなく体が蜂の巣となって四散した。
そして、ファーミリアたちヴァルマスク家のホフマンたちは遠距離攻撃に参加していない。
階段の壁際に集まっていた。
ファーミリアは、
「シュウヤ様、すみません、ここは少し怖いです……」
「「「は、はい」」」
ヴァルマスク家には悪いと思いつつ、
「すまん、皆、上で待っててくれてもいいんだぞ」
「いえ! ついていきます、たとえ、光を受けて身が焦げても、シュウヤ様たちの血肉となりたい……」
ファーミリアの熱い言葉と表情を見て凄く嬉しかった。
「はい、私もシュウヤ様の力に!」
「はい……女帝が従う相手は、まさに我らの陛下です!」
「……我が君のままに」
ファーミリアの<筆頭従者>アルナード、<筆頭従者>ルンス、<筆頭従者>ホフマンたちが一斉にそんなことを言ってくれた。
「ありがとう、それでは光の女神イリディア様の光の結界になるべく入らない位置まで付いてこい」
「はい!」
「「「ハッ!」」」
ヴァルマスク家のいい返事を聞いて嬉しくなった。キサラは此方を見て微笑む。
そのキサラは仕込み魔杖を消し、右手の掌に魔槍斗宿ラキースを浮かばせながら左手の掌の上にも橙魔皇レザクトニアの薙刀の柄を召喚、直ぐに浮かばせている。
<握吸>と<握式・吸脱着>を覚えたようだな。
「キサラ、<握吸>と<握式・吸脱着>を覚えたのか」
「はい、無事に、覚えました。これで全体的に強化された。この魔槍斗宿ラキースは次だれが使いますか?」
「あぁ、槍使いは俺とキサラだけだからな。実戦だと中々難しいと思うが、挑戦する物は居るか?」
ユイとヴィーネを見てから、ハンカイたちを見る。皆は顔を見合わせ、「「……」」沈黙。
だよなぁ、じゃ、
「ヴィーネ、使う? <握吸>は剣術に活かせるし、正直、全員に覚えてほしいが、さすがに実戦での訓練は難しいかな」
「あ、はい、ですが、強い皆がいますし、翡翠の蛇弓や陽迅弓ヘイズを使わずとも大丈夫なはず、とはいえ、激烈な展開の時は、得意な得物に変更しますが」
「うん、ヴィーネが学べたら次はわたしが挑戦しようかな、<握吸>と<握式・吸脱着>があれば、三刀流もすこぶる進化しそうだし」
と、ユイの言葉に皆が頷いた。
ヴィーネは陽迅弓ヘイズを消して、キサラから魔槍斗宿ラキースを受け取る。
早速、透魔大竜ゲンジーダの胃袋に登録し、直ぐに右手に出現させていた。
「ふふ、ご主人様は最高の槍使いの先生ですから案外早く<握吸>を覚えるかもです」
「おう、槍使いヴィーネを育てようか」
「ふふ、はい……お師匠様」
冗談で言ったが、ヴィーネが身を寄せてきたから抱きしめてあげた。
直ぐに他の眷族たちから嫉妬の視線が来たから、ヴィーネの背を撫でて、ポニーテールの長い銀髪の感触を甲に受けながらヴィーネの体を離した。
そのまま皆で螺旋階段を下る。
また螺旋階段から上がってくる魔族の気配があった。
ヘルメは浮遊しながら降下し、俺たちを見て、
「まだまだ群がってくる獣人魔族は多いですね、閣下、わたしとグィヴァちゃんで豪快に倒しても?」
「うふふ、【幻瞑暗黒回廊】からの援軍はないはずですからここで一気に数を減らしましょうか」
「了解した、精霊様の二人に任せよう」
「ふふ、閣下、精霊様だなんて! ふふ」
「ふふ、御使い様、任せてもらいます~♪」
楽しそうなヘルメだったが、直ぐに、両腕を真っ直ぐ伸ばし両手を組む。
その両手を階段の下から上がってくる闇神リヴォグラフの眷族、モンスター連中に向けた。
グイヴァも浮遊しているヘルメの真下に移動し、両手をヘルメに合わせて突き出した。
ヘルメとグィヴァはキスしそうな勢いで顔を近づけ、
「<闇水雹累波>――」
「<雷狂蜘蛛>――」
常闇の水精霊ヘルメと闇雷精霊グィヴァのデュオのスキルが発動。
常闇の水精霊ヘルメの両手に絡んでいる<珠瑠の花>の輝く紐を起点に膨大な暗黒の闇と綺麗な水色の液体が前方に迸った。
闇雷精霊グィヴァの両手に魔法陣が生成され、その魔法陣が、ヘルメが造り出した暗黒と蒼の液体の表面を移動していく。
「「「「おぉ~」」」」
ヘルメとグィヴァの合体技に皆が歓声を発した。
グィヴァの魔法陣は暗い輝きを放つと、無数のナガコガネグモのように変化し、ヘルメの<闇水雹累波>の大きな波の表面を滑るように前進していく。
ナガコガネグモは分裂し増殖しなら複数の波頭を擁した大津波の表面にずらりと並んでいた。
そして、ヘルメの両腕から前方に出た光が大津波の内側に当たると、表面が一瞬窪み、水面が湾曲すると、内部に閃光が迸る。
<闇水雹累波>の巨大な波の内部に超新星爆発が起きているような閃光を幾つも生み出す。
と、岩群青色と黝色のグラデーションが生まれていく。闇と水と光が、相反しているようだ。
<闇水雹累波>は複数の大きい波頭を造りつつ直進し――目の数が異常に多い獣人魔族たち飲み込んだ。
刹那、爆雷が爆発したような爆発が<闇水雹累波>に起きた。続けて蜘蛛の形をした放電が、<闇水雹累波>の内と外を駆け抜けていく。
本当に<雷狂蜘蛛>と<闇水雹累波>が合体していた。
電気を得たような<闇水雹累波>の波頭に、虎の皮のふんどしを身に着けたヴェニューと似た小精霊たちが輪に連なった太鼓と手にばちを持っては踊っていた。
ヘルメとグイヴァの<闇水雹累波>と<雷狂蜘蛛>は螺旋階段を突き抜けるように獣人魔族たちを飲み込んでいった。
螺旋階段を上っていた、目の数が異常に多い獣人魔族は見えなくなった。
階段と横壁が削れているし、結構な威力だな。
凍り付いている階段の部分と焼け焦げている階段の部分もあった。
「「「「おぉ」」」」
「グィヴァ様の能力とヘルメ様の能力によって、今まで見たことのない新魔法を造り上げた!?」
「はい、ヘルメ様とグィヴァ様の合体技!」
「精霊様のデュオはとても神秘的で素敵でした!」
「はい!」
「常闇の水精霊と闇雷精霊の融合ですね、凄い!」
「精霊様たちも成長しています」
「はい、シュウヤ様の記憶で見た<闇水雹累波>とは威力が段違いです。二人の精霊様が守るための雷状の防御層を構築しているのは見たことがありますが、二人の意思を持った精霊様の必殺技は凄まじいですね」
皆が興奮。
俺が上で《王氷墓葎》をぶちかます以前から、緊張気味だった聖鎖騎士団団長ハミヤと魔族殲滅機関の隊員たちも、興奮したように喋り出している。
ヘルメたちを見て、
「あぁ、二人ともありがとう、皆、螺旋階段を一気に下りよう、階段を失ったところもあるが、そこからは飛ぶ」
「「「「はい!」」」」
「にゃ~」
皆で巨大な縦穴に付いている螺旋階段を下りていく。
光の女神イリディア様の幻瞑神魔封石の効果が発動中だから、巨大な縦穴は結構な明るさだ。
螺旋階段が途切れた。
そこで<武行氣>を意識し、巨大な縦穴ごと光源になっているようにも見える縦穴を見て、
「光が眩しそうだが、巨大な縦穴の真下に飛び降りよう! そして、真下に居るだろう闇神リヴォグラフの眷族たちを一気に仕留めようか」
「はい、皆の、足手まといに成らない範囲で、魔槍斗宿ラキースを使います」
「分かった」
ヴィーネなら案外いけると思うんだが。
「後ろからピンポイントでフォローする、蒼炎槍とグーフォンの魔杖で」
レベッカが右手の掌の上に浮かばせている蒼炎の槍の形は先端が細まり炎が螺鈿状に巻き付いているところもある。デザインが洗練されており、渋くて格好いい、グーフォンの魔杖の先端から迸っている朱色の炎は魔刃に見えた。
ミスティが、
「同じく後ろから攻撃予定、そして、この光、幻瞑神魔封石と連動している天井の魔法陣から真下に射している光は……光の女神イリディア様の神槍をモチーフにしているのかな」
あぁと、光を見ながら頷いた。
光の中に、槍を持つイリディア様の幻影が下に向かう様子が一瞬見えた。
「そうかもな、イリディア様が仰っていたが、カーナディア様は姉のようだから、オセべリア王国に代々伝わっている神槍カーナディアは回収したかった」
と、少し前に感じたことを皆に告げた。
「ん、クリムは再生力を有して素早いし、キュベラスに集中していたからね、シュウヤの倒し方は正解だった。神槍カーナディアなどの装備品は仕方ない」
エヴァの言葉にキュベラスは頷く。
ユイが、
「そうね、すべてがすべて都合が良い結果に終わるわけではないわ、威力とタイミング、<紅蓮嵐穿>の選択は見事だと思う。再生が異常に速いクリムに弱点はなかったし、再生させたら何してくるか分からない、クリムの首に喰らわせたキュベラスの紫電一閃も見事だった。そして、後で分かったことだけど、神魔の魂図鑑には、クリムの魂の欠片が仕舞われているからね、そんな本体クリムの魂を魔槍杖バルドークに喰わせるってのも最高よ」
「「はい」」
キサラとキュベラスが同意。
エヴァも、「ん」と頷いていた。
「にゃ」
黒豹はレベッカの前足を叩きつつ鳴いている。
「そうね、<空穿・螺旋壊槍>や<闇穿・魔壊槍>だと威力がありすぎて、ホムンクルスが入った硝子容器と魔機械ごと地下施設の大半を穿ったと思うし、むしろシュウヤの判断は絶妙だったと思うわ」
「はい、今だからこそ分かるシュウヤ様の戦闘センスです、最適解をあのゼロコンマ数秒で行えるんですから」
「うん」
皆の語りに頷いた。
と、横に居たクナとファーミリアが、
「……ぐふふ、皆の分析を聞いて、改めてシュウヤ様の強さに、痺れますわね」
「クナさん、同意ですわ、痺れて……ぁん」
ファーミリアと目が合うと、ファーミリアは体をビクッと揺らし体から<血魔力>を発しつつ、俺の右腕の二の腕辺りに体を寄せてくれた。
そのまま悩ましい上目遣いで「ふふ、シュウヤ様、私の鼓動が聞こえますか……」とおっぱいの膨らみで鼓動どころではないんだが、ファーミリアの頬から首と鎖骨と乳房の上部分の皮膚が斑に朱に染まっていく様子はエロかった。
「にゃ」
黒豹はそんなファーミリアと俺に、連続して頭部を寄せてくれた。
「ふふ」
ファーミリアに撫でられる黒豹はゴロゴロと喉音を響かせながらファーミリアの手を舐めていた。黒豹はちゃんと己の体から出ている炎を消していた、偉いな。
そこで、ハンカイを見つつ<血魔力>を体から発して、左手に雷式ラ・ドオラを召喚。
ダブル短槍の二槍流といこう。
「では、飛び降りようか、相棒と前衛組、ヘルメは空が飛べない組を<珠瑠の花>で掴んで丁寧に降ろしてあげてくれ」
相棒は見上げながら
「にゃご」
と、気合い声を発した。瞳は少し縦になって、口の歯牙を晒す、獣の顔だ。
尻尾はピンと立っている。
「「はい」」
「やるぜ!」
<経脈自在>と<水月血闘法>を発動。
続けて<握吸>と<煌魔葉舞>と<霊魔・開目>と<煌魔・氣傑>と<勁力槍>を連続発動。
右手と左手に握る白蛇竜小神ゲン様の短槍と雷式ラ・ドオラが鈍く光輝いた。
※煌魔葉舞※
※煌魔葉舞流<煌魔闇雷>系統:闇神闘技<魔闘術>に分類※
※魔人格闘術技術系統:上位技術※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※魔界セブドラ実戦幾千技法系統:二十四魔氣練魔舞術※
※悪式格闘術技術系統:上位技術※
※魔槍雷飛流を扱う闇神アーディンから直に闇神闘技の<煌魔葉舞>を学び得た存在は希少※
※近接戦闘能力が上昇※
※<霊魔・開目>があると効果が上昇※
※霊魔・開目※
※霊魔闇神流<霊魔>系統:闇神闘技<闇迅霊装>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<霊魔闘刹>と<霊迅雷飛>を纏った闇神アーディンから魔槍雷飛流のあらゆる攻撃を<経脈自在>を持つ使い手が喰らい続けた結果、神々の纏さえ視ることが可能となる魔点穴が開通し、一瞬で昇華、才能が開花したことにより<霊魔・開目>を獲得※
※霊魔系高位戦闘職業と<魔人武術の心得>と狂怒ノ霊魔炎と<魔闘術>系系統など、色々な効果を高める※
※闇雷の槍使いの戦闘職業には必須※
<魔闘術の仙極>を発動。
<黒呪強瞑>を発動。
<メファーラの武闘血>を発動。
<滔天魔経>を発動。
凄まじい魔力の群れを一本の巨木の幹に見立てるように丹田を中心に練り上げた。
<経脈自在>の効果で全身の血管に細胞が活性化、魔力が速やかに浸透する。
「おう! 金剛樹の斧で敵をかちわってやる」
「「「はい!」」」
「ンン」
前衛組と一緒に螺旋状の階段から飛び降りた。
光の槍のような光の中を急降下――。
あまりの高度で股間がキュンと絞まる。
巨大な縦穴の天井に出来たばかりの光の女神イリディア様の魔法陣の効果か不明だが、加護を得たような感覚を得た。
真下には、数体の大柄の魔族が居る。
そいつらが、俺たちを見上げながら、
「「やはり、光神の結界を――」」
と発言しながら黒い魔刃を寄越してきた。
黒い魔刃は光の影響で大半は溶けて消える。
魔刃は一部だけ上昇してきた。
光の中では、光の女神イリディア様の光槍が、闇神リヴォグラフの加護が掛かっている黒い魔刃を貫いている幻影が見えていた。
わずかな数だけ飛来してきた魔刃目掛け、白蛇竜小神ゲン様の短槍で<刺突>を繰り出す。
白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先は魔刃を突き抜ける。
直ぐに左手の雷式ラ・ドオラで<龍豪閃>を繰り出した。
二つの黒い魔刃を雷式ラ・ドオラの杭刃でへし折るように真っ二つに処した、そのまま後転から背と両腕から魔力を発した推進力の<武行氣>で急降下――。
真下の床が見えてきた。井戸の底を連想させる地面。
が、右に巨大な横穴がある。
絨毯が敷かれ、げ、女性の人族たちの死骸で出来た通路か?
しかも、奥に生きた人型の魔素が幾つかある。
構わず、大柄の魔族は目の数が多く四腕。
毛の量が多い。獣人魔族の親玉か?
赤いマントを背負った中央がお偉いさんか。
――【異形のヴォッファン】の何番隊の隊長か?
「中央の多眼四腕は俺が担当しよう――」
「にゃおぉ――」
「「「「「――はい」」」」」
「「「――おう」」」
皆の声が背に感じながら直進、マントを羽織る多眼四腕の魔族は、
「光の野郎共、多少は速いようだが!」
と言いながら跳躍――。
大柄に似合わぬ加速、跳躍から、身を捻りながら右上腕と下腕が持つ大斧の刃を突き出してきた。
右に飛翔し、その大斧の刃を避けた。
多眼四腕の魔族は「ぬかったな!」と左上腕と下腕が持つ魔剣を突き出してくる。
「ぬかった?」
と言いながら<血道第三・開門>――。
<血液加速>を発動。
真下に急加速し、二つの魔剣の突き出しを掻い潜る。
多眼四腕の魔族は「ぬぇぁ!?」と驚きの声を発した。
間合いを潰した刹那――。
白蛇竜小神ゲン様の短槍で<血刃翔刹穿>を繰り出した。
多眼四腕は右の上下腕の巨大な斧を振り上げた。
<血刃翔刹穿>の白蛇竜小神ゲン様の短槍を防ごうとしたが遅い――多眼四腕の右上腕の二の腕から肩を白蛇竜小神ゲン様の短槍が穿つ。
更に白蛇竜小神ゲン様の短槍の穂先から無数の血刃が迸り、多眼四腕に頭部と右半身に「げぇぁぁ――」と無数の血刃を喰らわせていく。多眼四腕の兜が弾け耳と首の半分と右の胸と右下腕と脇腹が弾け飛んだ。
吹き飛んだ多眼四腕の本体は血飛沫を発しながら、左下腕の魔剣を地面に刺し、衝撃を殺しながら此方を見た。
多眼四腕の回復は遅い。
天井から降り注ぐイリディア様の幻瞑神魔封石による光の効果だろう。
多眼四腕の魔族の傷を見ながら着地。
右後方と左後方から凄まじい剣戟音と魔法が炸裂し黒髪が一気に舞った。
皆の戦いは見ないでも分かる。
血濡れた多眼四腕は俺を見て地面に突き刺していた魔剣を抜き、
「……お前、闇神リヴォグラフ様の七魔将の一角を崩し、六魔将たちの計画を崩した、あの槍使いか……」
「そうだ」
多眼四腕は複数の目に魔力を集めて魔眼を発動させてくる。
俺には効かん。
<闇透纏視>で心臓部らしき物は分からないが、傷の回復が遅い以上は、強引に行けるだろう――。
右手の白蛇竜小神ゲン様の短槍を聖槍ラマドシュラーに変化させて前傾姿勢となる。
多眼四腕は俺の体勢に合わせ<魔闘術>を強める。
体勢を低めてきた。構わず血の加速力を活かす――前進――。
多眼四腕は左下腕の魔剣から膨大な闇の魔力を集積させて、
「<闇神魔剣グノースフィア>――」
とスキルを繰り出す。
即座に右に<雷炎縮地>――。
魔剣の刃と<闇神魔剣グノースフィア>の放出を避ける必要もなく多眼四腕の横についた。
多眼四腕は半身になりつつ無事な左下腕を動かすが、遅い。
<闇神式・練迅>を発動。
※闇神式・練迅※
※<闇神式>技術系統:奥義<魔闘気>に分類※
※<魔力纏>技術系統:極位※
※<魔闘術>技術系統※
※霊纏技術系統:上位<闘気霊装>※
※<魔闘術>などの魔技三種に他の<闘気霊装>とも相性が良い※
※使えば使うほど強化され魔力消費は大きくなる※
※闇神アーディンが大本とされる<魔闘術>※
※魔軍夜行ノ槍業の悪愚槍のトースンがよく用いていた※
加速を強めたまま右手の聖槍ラマドシュラーで戦神流<攻燕赫穿>を繰り出した。突き出ていく聖槍ラマドシュラーの穂先から燕の火炎魔力が迸る。
聖槍ラマドシュラーが多眼四腕の分厚い体の鎧を破り腹に突き刺さった。
刺さっている穂先と螻蛄首が見えない分厚い体からボッと音と響くと、異音が轟く――と、多眼四腕の魔族の体が急激に膨らんで内から大爆発を起こす。
「ぐああぁ――」
破裂した胴体から臓物と血飛沫を散らしながら空気を失ったゴム風船のように激しく動く、すると、聖槍ラマドシュラーの穂先と柄から噴出する赤い炎が、その動きを追いかけるように戦神イシュルル様を模りながら飛翔し、そのまま多眼四腕の肉塊に纏わり付くと、その体が燃焼し爆発を繰り返した。ボコボコとなった多眼四腕の体は内臓と腰骨などが露わになったが、無傷の眼球のいくつかが輝き放ちながら、此方を睨む、まだ殺意があるようだ。
その殺気ごと潰す。
前傾姿勢で前進し、肉塊のような多眼四腕の魔族との間合いを槍圏内にする。
そのまま迅速な右足の踏み込みから、左手ごと槍になる如くの雷式ラ・ドオラで<雷式・勁魔浸透穿>を繰り出した。
雷状の魔力を発しながら直進した雷式ラ・ドオラの穂先が多眼四腕の魔族を突き抜けると雷式ラ・ドオラから紫電旋風が吹き荒れる。
衝撃を受けた多眼四腕の分厚い体が、ぐわりと波打ち千切れながら爆ぜた。
――無数の血肉が周囲に散って重低音が周囲に響いた。
――良し、倒した。
半身になるように右を向き、背後と横でユイと相棒が見事に大柄の多眼四腕の魔族を倒すのを見ながら横穴へと駆ける。背後から続けて爆風が起きて重低音が響く、まだ多眼四腕の魔族は居たか、構わず――光の女神イリディア様の光が湾曲し突入している横穴に足を踏み入れた。
――横穴の地面は人族の皮の絨毯か。
壁には女性たち体が、食肉工場の豚のように吊されている。惨すぎる。
それらの女性たちの体を吊り下げていた刃を、<バーヴァイの螺旋暗赤刃>でぶち抜いてすべて破壊しながら奥に向かう。
「ンン」
「シュウヤ、うあ」
と背後から相棒とユイの声が響くが、前進した。
複数の燭台を擁した祭壇が見えてきた。
下に、光を失った黒い石と魔法書が落ちている。
血に染まっている魔布もあった。
と、左腕が無い女性が闇の鎖に繋がれて壁に貼り付けにされている。
しかもまだ生きていた。
そして、アーチ状の【幻瞑暗黒回廊】もあったが、光の女神イリディア様の光が膜が形成されて、【幻瞑暗黒回廊】の機能は失っていると理解できた。
壁にある積層型魔法陣と魔方陣だった物が溶けていた。
タペストリーの闇神リヴォグラフのシンボルと眷族たちの絵柄には光の筋が乱雑に刻まれて、破れていた。
急いで左腕を失っている裸の女性に近付く。
闇の鎖を慎重に聖槍ラマドシュラーの穂先で削るように横に動かし切る。
気絶している女性は「……」項垂れるように寄り掛かってきた。
息は辛うじてある。
急いで、水属性の《水浄化》と《水癒》を発動。
水神ノ血封書を出して<水血ノ混百療>も発動させた。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




