千六百七話 第三王子クリムの討伐!
<闘気玄装>と<武行氣>と<無方南華>を維持し<四神相応>と<魔闘術>系統を解除。
<血道第四・開門>の<霊血装・ルシヴァル>を解除。
「「閣下ァ」」
ゼメタスとアドモスは、グロムハイム城の王の間の横から外に飛ぶ、もう天井はない。宙空から名剣・光魔黒骨清濁牙と名剣・光魔赤骨清濁牙を振るい、骨剣から<バーヴァイの魔刃>を繰り出した。魔刃がクリムに向かう。
魔刃は速いがクリムには当たらない。
<バーヴァイの魔刃>には追尾性能が若干あり、念を込めると少し機動が曲がるのは確認ずみだが、あまり意味はない。
クリムは先を行くキュベラスと俺たちにも黒い閃光を飛ばす。
水神ノ血封書を出しながら目の前に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚し、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>をクリムに送った。
クリムの腕先から宙に弧を描く軌道で迫ってくる<黒い遺物>の黒い閃光と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が宙空で衝突しドッとした重低音が轟いた。
直ぐに<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が輝いて、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>から出た魔線が飛来し、俺の体と重なると魔力を結構得た。
クリムは、
「君たちには<黒い遺物>が効きにくいのは分かっているが、魔力の糧になってしまうのはムカつくな!」
と言いながら赤黒い魔刃をキュベラスの前方に飛ばし、俺たちから離れるようにキュベラスを追う。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が回転し運ばれてくる。
<闇透纏視>で逃げるクリムを視ながら<武行氣>を発動――。
腰と足下から魔力を放出し推進力を得て左斜めへと上昇し、クリムを追った。
「ハルホンク、闇と光の運び手装備に切り替える」
「ングゥゥィィ」
一瞬で闇と光の運び手装備を展開。
蓬莱飾り風のサークレットと額当てと面頬装備を砂漠烏ノ型に変化させた。
クリムが追い掛け逃げているキュベラスは第三王子邸に移動中だが、クリムが皆に狙われやすいような行動を時折してくれていた。
それでも着実に第三王子の邸宅へと案内しようとしてくれている――。
そのキュベラスはグロムハイム城の城閣を蹴って斜め左の壁に跳躍し、その壁を駆けて歩廊の屋根に跳び移り、制動もなく、前進し忍者のように駆けていく。
と、屋根から左側の溝に飛び降りて、樽を蹴飛ばしながら跳躍し、前転しながら狭い壁と壁の間を通り抜けた。
そのまま狭いところを駆け、低い壁を跳び越えた。
クリムは、そのキュベラスの巧みな動きに混乱したように俺たち側に赤黒い魔刃と雷状の刀を飛ばしてきた。
それらを<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を使い防ぎつつクリムに向かう。
クリムは逃げながらキュベラスを追う。
キュベラスは、塔から塔に跳び移るように跳んでいた。
壁際に掲げられた旗の横にある鉄棒を片手で掴み、その勢いで前転をしながら斜め上に跳躍する。空中でふわりと浮遊を行いつつグロムハイム城の岩壁に着地し、背後から追跡してくるクリムに合わせ、走り始めると、斜め左上に再び跳び上がる。修繕中の足場に降り立ち、途切れた部分を越えて前方の太い鉄板へと飛び移る。その鉄板を駆け抜け、次の鉄棒へ軽やかに飛び移ると、狭い棒は上下に揺れた。キュベラスはバランスを取りながら重心を低くし、力を込めて高く跳び、狭い足場に見事に着地する。振り返って片手を挙げるキュベラスは、人差し指をほっぺに当てている、その姿がとても優雅で可愛らしかった。
カリスマ的な人気を得る理由も納得だ。
クリムは、何かを叫び、キュベラスに鎖状の魔刃を飛ばしていた。
キュベラスは笑ってから、端に移動し、鎖状の魔刃を避ける。
が、キュベラスがいた狭い足場は鎖状の魔刃と衝突し、崩れた。
キュベラスは飛翔も可能だから構わず、そこから左の手首から出た鞭を伸ばし、鞭の先端を遠い岩から出ていた鉄棒にくるくると回し絡ませ前に跳ぶ、ターザンのように鞭のしなる機動を活かし前の城壁と鉄の棒が並ぶ場所に移動していた。
キュベラスはかなり遠い鉄棒の上に身軽に着地した、華麗だ。
パルクール的な挙動で、面白い。
クリムは、
「ちょこまかと! 裏切り者!」
と、言いながら肉の礫を飛ばす――キュベラスには当たらない。
キュベラスは側転しながら、
「――まったくどの口がほざく……裏切り者は貴方でしょう――」
と言いながら斜め上に急上昇。
するとクリムが、<投擲>した肉の礫がめり込んだ壁や石畳の地面から急激に肉の樹木が育ち、肉の枝から無数の大柄の六本腕を擁したモンスターが出現していた。
「ゼメタスとアドモスに、一部はここに残って、あのモンスターを倒しておいてくれ!」
「「「「「はい!」」」」」
キュベラスは構わず、グロムハイム城の一番外側の掘を跳び越えた。
そのまま急角度な動きで横に移動し、石橋の下に潜り込むように駆けた。
クリムは、その逃げるキュベラスにもう一度赤黒い魔刃を飛ばす。
キュベラスには当たらず、赤黒い魔刃はハイム川と衝突し、水柱が発生した。
飛翔中のクリムの行き先を先読みしながら――。
グロムハイム城の地形と魔素を把握し、<夕闇の杭>を発動。その闇の杭に混じらせるイメージで上級:闇属性の《闇環》を発動――。
《闇環》は闇のチャクラムを連想させる。
環の縁からプロミネンスのような無数の刃が出て、その刃から宙空へと、本当にプロミネンスのような闇の炎刃が放出されている。
かなり格好いい。
それが一つの遠距離攻撃として直進していく。
クリムはキュベラスを追う、その飛翔する方向は先読みしたが、それ以上の加速でクリムは上昇しては急降下――<夕闇の杭>と《闇環》は当たらなかった。
地面に抉るように穴を作り出す<夕闇の杭>と《闇環》。
飛翔しながら水神ノ血封書に魔力を込めつつクリムを追い掛けた。
右手に血魔剣を召喚し血魔剣から<血獄魔道・獄空蝉>と<バーヴァイの魔刃>を連続的に繰り出す。
が、これまた飛翔しているクリムには当たらない――。
<血獄魔道・獄空蝉>は城閣に衝突。
<バーヴァイの魔刃>は石畳と衝突し、掘と衝突していく。
掘は破裂し石垣の上部が破壊されてしまう。
瓦礫がハイム川に落ちていった。
結構な文化財に見えるから自重したくなるが、そんなことは言ってられないか――。
飛行が可能な皆もついてくる。
クリムは皆の飛び道具を避けつつ――。
キュベラスに向け鎖状の魔法や<珠瑠の花>のような輝く紐を伸ばして捕らえようとしているが、キュベラスには当たらない。
アドゥムブラリとメルとヴィーネとシキとファーミリアとレベッカとエヴァの遠距離攻撃がクリムに向かう。
クリムは螺旋回転しながら、複数の半円形の魔法の盾を生成すると、それらの魔法の盾を活かして、皆の攻撃を防ぎながらキュベラスを追い掛けた。
<導想魔手>のように使える魔法の盾か。
かなり便利そうだ。グロムハイム城から離れた――。
もう街だ。
多数の住民たちが行き交う王都グロムハイムの低空を皆で進む。
低空飛行をしながらキュベラスを足止めしようと必死なクリムだったが、途中で、王都グロムハイムの街道にいた人族の女性を掴む。
女性は一瞬で干からびて皮すら塵となって消えた。
「――なんてこと!」
ヴェロニカが無数の血剣を繰り出そうとするが、ここは人通りが多いから止めていた。皆の遠距離攻撃が途端に少なくなった。
加速したクリムは、通りを歩いていた男性たちを吹き飛ばし前進。
ドワーフの商人を何のためらいもなく掴んでは生命力を吸い取る。
前方にいた次の男性も掴んでは、その体が干からびて骨ごと消えていた。
左手に神槍ガンジスを召喚し――<龍神・魔力纏>を発動。
「クリム、お前は――」
と、叫びながら<メファーラの武闘血>と<魔闘術の仙極>を再発動。
<滔天魔経>と<雷飛>を発動し、加速しながら前進。
通りを行き交う人々を傷つけないように地面を左右斜め前に跳ぶ。
<砂漠風皇ゴルディクス・イーフォスの縁>を活かすように風に乗りながら、低空から地面を滑りつつ、新たな女性を掴んでいたクリムとの間合いを零とした。
すかさず、左腕ごと神槍ガンジスを突き出す<龍異仙穿>――。
「な――」
驚くクリムは女性を掴んでいた手を離しながら魔杖を振るうが遅い。
右手で女性を掴んでからクリムの魔杖を持つ左腕ごと横腹を神槍ガンジスの双月刃がぶち抜いた。
「ぐぇぁ――」
悲鳴を発したクリムは吹き飛びながら体が上下に分かれた。
が、分かれた体は一つのクリムに吸収されるように集結は、させない――。
助けた女性を通りにおくように前進してから神槍ガンジスを消す。
と、同時に<魔戦酒胴衣>を意識。
肩の竜頭装甲は「ングゥゥィィ」と反応。
自然と、芳醇な酒の香りを漂わせる武道着系統の<魔戦酒胴衣>と成る。
光と闇の魔力が渦巻くような陰陽の印と槍と酒の印が胸にあるシンプルな柔道着のまま<ルシヴァル紋章樹ノ纏>を発動、前進――。
続けて闘霊本尊界レグィレスのネックレスの、レグィレスだけを意識して<闘霊本尊界術>と<空数珠玉羅仙格闘術>の恒久スキルを意識し、発動。
闘霊本尊界レグィレスのネックレスのクリスタルの中の数珠玉と酒器が融合すると漆黒の魔力と<血魔力>を有した大きい数珠玉に変化し、それが、両拳の武器と籠手と成ったところで、<無方剛柔>を発動し、<髑髏武人・肘膝回し蹴り>を繰り出した。
右回し蹴りで、クリムの血肉を潰し、続けて、膝蹴りをクリムの再生途中の血肉と魔力の流れに喰らわせて霧散させるが、クリムの再生力はかなり高く、周囲に血肉が固まりながらキュベラスを追うように移動していく、逃さない。
左拳で<蓬茨・一式>を繰り出す――。
突き出た左拳と左腕から紫電の魔力が周囲に吹き荒れた。
無数のクリムの血肉の塊を潰した。
紫電は茨の形となって宙空に残像を生んでいた。
数珠玉にも紫電のような魔力が激しく絡み付き放電が起きている。
それらの数珠玉と触れたクリムの血肉は、一瞬で、炭化。
が、他の血肉の塊が、通行人の人族に入り混んでいたように、その通行人が、クリムに変身を遂げる、「フハハ、残念!」と嘲笑しては、跳び、キュベラスの方角に移動していく。周囲に散っていた無数のクリムの血肉と魔力粒子が、そのクリムの背中側に吸収されていく。
なんて、言えば良いのか分からないが、強いなクリム――。
今のクリムの血肉と骨の再生に、一般の方への取り憑きか? 分からないが、<闇透纏視>で、魔力の流れはある程度把握できたが、かなり高度な魔法技術で、此方側の魔力を視ることの妨害をするようなモノが展開されているように思えた。
キュベラスを越えるような再生能力の高さだ――。
直ぐに、<無方剛柔>を解除し、飛翔しているクリムを追い掛けながら――。
上級:闇属性の《闇環》を発動。
クリムは半身から右手の掌を翳し、《闇環》を吸収していた。
――魔法はあまり通じないか。
――川沿いに倉庫街か。
前方の気配を確認してから<水血ノ断罪妖刀>のスキルを発動させた。
神々しい水血の太刀が出現。
水血の太刀の刃が真一文字に一閃――。
逆袈裟斬りの水血の刃の二閃――。
垂直斬り上げの水血の刃の三閃――。
袈裟斬りの水血の刃の四閃――。
振り下ろしの水血の刃の五閃――。
クリムはキュベラスを追い掛けつつ背を見せ、上下左右にバレルロールを行う動きであっさりと<水血ノ断罪妖刀>を避けてくる。
水血の太刀の刃が衝突した石畳は大きく真っ二つ。
ハイム川が流れている土手と堤を切断し、建物の一つを切断してしまう。
やば、<破邪霊樹ノ尾>を発動し、土手と堤を光属性の樹で修復――。
キュベラスたちとクリムが視界から少し外れるが、建物に向かう。
事前に分かっていたが、確認――細断された建物の中には人はいない。
が、凄まじい食欲を誘う匂いが漂う。
中は食料庫だったようで、大量の干し肉が散乱し、瓦礫の山となっていた。
落ちていた看板には『ロムイルの美味しいお肉』と刻まれていた。
忘れないでおこう――。
まだぶら下がっていた干し肉を食っては、戦闘型デバイスに一度に周囲の干し肉と燻製肉を大量に回収。
跳躍しながら、モグモグと、おぉぉ、美味すぎる!
最高級のベーコンか! ハムエッグとごはんを食べたくなった!
何処となく<武行氣>が強まった感がある。
そのまま加速し、クリムを追い掛けた。
直ぐに皆を追い越して――、
「――羅、また力をかしてくれ」
『はい、<瞑道・瞑水>』
加速して、王都グロムハイムの郊外に出る。
キュベラスは、ハイム川の崖沿いだ。
その前方に、豪華な建物の外観が見えてきた。
あそこか!
宙空にいるクリムは、キュベラスを止めようと様々な遠距離攻撃を仕掛けているが、キュベラスには当たらない。
同時に此方側の、レベッカの蒼炎弾とサラの<バーヴァイの魔刃>とフィナプルスの<奇怪・霊魔刃>は、クリムに当たらない。
続けてアドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>も無数にクリムに向かった。
クリムはそれらを飛翔しながら避けつつ魔法の盾も巧みに使い、防ぐ。
ヒョウガの咆哮の衝撃波と、炎極ベルハラディの火球と、シキの額の魔印から迸る魔光線もクリムは避けた。
というかシキの額のサークレットは武器にもなるのか。
アドリアンヌの銀に輝く鞭と、メルの<バーヴァイの魔刃>も避けたクリム。
ミスティの礫とミニ鋼鉄矢とキッカの<バーヴァイの魔刃>と、エヴァの白皇鋼の刃とサージロンの球と、ベリーズの聖十字金属の魔矢と、ファーミリアの<血道・礫>と<龕喰篭手>と、ベネットの聖十字金属の魔矢を防ぎつつ、体から黒い閃光を放つ、続けて、クリムを起点に円状の魔刃を連続的に周囲に繰り出した。
それを、皆の前に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を出して防いだ。
クリムは、
「また、それか! 僕の<黒い遺物>を防ぐ盾! そして、僕のホムンクルスを倒したのは、その中にいる魔槍使いたちだな――」
と、<魔闘術>系統を強めたクリムは肉の塊を数個、俺たちに投げつけながら、キュベラスを追う。
肉の塊は先程とは異なる、二眼四腕の大型のモンスターに変化した。
「また巨人系の召喚とは!」
「シュウヤ、こいつらは俺たちに任せろ!」
「はい、任せてください」
「ん、シュウヤは、キュベラスを守って、あのクリムを!」
ファーミリアとハンカイとシキとサラとエヴァが、大型モンスターに攻撃を加えていく。
ヴィーネとキサラとアドゥムブラリとレベッカとユイが、先を駆けるキュベラスと黒猫を守るように前方に回り込んだ。
クリムは、キサラのダモアヌンの魔槍を魔杖から伸ばした赤い魔刃で防ぐ。
そのクリムの背後に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を向かわせた。
クリムは衝撃波のような<黒の遺物>を放つ。
キサラをも弾き飛ばすと、上昇し、ヴィーネたちに向け、貴族服の懐から、黒いカプセルのようなアイテムを投げつけた。
黒いカプセルから無数のカマキリの怪物が現れる。
カマキリの怪物たちは複眼から光線を放った。
ヴィーネとアドゥムブラリは上下左右に動いて光線を避ける。
光線と衝突した地面の一部は硬質化していた。
また石化効果か。
<腐ノ石魔喰>と同じような能力がクリムは得意なのか?
――そのカマキリの怪物の数体を<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で潰しながらクリムに向かわせながら駆けて、先を駆けるキュベラスを視認、キュベラスは、豪邸の庭に着地し、屋敷内から現れた戦闘用のメイドたちを<魔晶力ノ礫>の衝撃波を喰らわせて吹き飛ばして倒してから、扉を魔杖から伸ばした魔刃で切断。
その扉の内部に侵入していた。
「あぁぁあぁ!!!!」
クリムは加速しながら豪邸に戻る。
俺たちも豪邸の庭に着地したが、クリムは此方に向け、
「<クーガネの大魔槍>――」
魔法系統の、大きい魔槍を召喚し、その<クーガネの大魔槍>を<投擲>してきた。
前に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を向かわせる。
レベッカたちが左右に逃げる。
<クーガネの大魔槍>と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>と衝突した。
<クーガネの大魔槍>は消えたが、<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>は回転しながら走ってくる俺の近くに戻ってくる。
クリムは、ヴィーネとアドゥムブラリの遠距離攻撃を避けながら身を翻し、
「――チッ<クーガネの大魔槍>も効かないのか! 『魔界九槍卿』と『風槍流』に『八咫角』の文字が憎たらしい!」
と俺たちに向け<黒の遺物>を連続的に放出してくる。
<血道第三・開門>――。
<血液加速>――。
続けて<魔闘術>系統の<水月血闘法>を再度、発動させて、加速しながら、<黒の遺物>の黒い閃光を避けまくった。
そのクリムにヴィーネの月迅影追矢ビスラが刺さったかに見えたが、クリムは残像か、転移するように第三王子邸の内部に消える。
直ぐに、<仙魔・龍水移>を利用し、俺も転移――。
クリムは死んでいるメイドたちは気にせず、普段はエレベーターがあるような縦穴に飛び込む。その縦穴に飛び込むように突入した。
「キュベラスめが、まてぇぇぇ」
下に居るクリムが叫ぶ。
遙か下にいるキュベラスは、
「――ふふ、残念~? あのエネルギー源を昔から――」
「あぁぁぁぁ」
クリムの悲鳴を聞きながら、俺たちも着地。
クリムはキュベラスが、<魔晶力ノ礫>を使って破壊しただろう硝子容器に魔機械に切れたチューブと巨大な硝子容器だったであろう残骸を見てから、キュベラスを見ては体が震え、
「おおおおおまエェェ」
と、奇声を発して、キュベラスに赤黒い魔刃は飛ばす。隙だらけ――。
魔槍杖バルドークを召喚した刹那、キュベラスが「――<無残斬り>」と振り向きざまに繰り出した一閃のような斬撃が、クリムの頭部に決まる。
まさに一刀両断、クリムの輪切りにされた頭部は地下施設の真上に飛ぶ。
キュベラスの位置を確認し、切り札の<脳脊魔速>を発動させる。
ノーモーションで<紅蓮嵐穿>を繰り出した。
体から放たれた龍の形をした<血魔力>と魑魅魍魎の魔力の嵐が融合する魔槍杖バルドークを構え、次元速度で直進。
魔槍杖バルドークごと無数の魔力嵐がクリムごと地下施設の様々な魔機械と壁、岩をも突き抜けた。膨大な魔力を帯びた魔槍杖バルドークは、唸るような音を響かせる。
魔槍杖バルドークはクリムの魂を含む無数の魂を喰らったか。
<脳脊魔速>の効果を実感しながらバックステップを行う。
魔槍杖バルドークを戦闘型デイバスに仕舞う。
俺が通過した地面は凄まじい熱の塊が一直線に通り抜けたような跡が残っていて一部は溶けていた。左右の横には、意外と無事な魔機械が多いかな。
だが<紅蓮嵐穿>が通り抜けた魔機械のチューブは鋭利なナイフが通り抜けたかのような断面を露わにしていた。
クリムの血肉は見当たらない。
良し! 第三王子クリムを滅したようだな!
魔槍杖バルドークの<紅蓮嵐穿>が、先程の再生力を活かす前にすべてを穿ったか。漆黒と血色と紫色の魔力を呼吸するように吐いては吸収している魔槍杖バルドークの柄に浮かんでいる『呵々闇喰』の魔法文字がキラキラと輝いているのを見ながら……自然と、<脳脊魔速>の制限時間が終了した。
キュベラスが、
「お見事です、クリムの魂ごと滅したようですね」
「おう」
「ご主人様! おぉ、第三王子クリムの討伐! おめでとうございます!」
「ンン、にゃおおお~」
「ん! 大勝利!」
「やった、最後が見たかったけど、それは贅沢か~」
黒猫の大きさに戻った相棒を抱きしめているエヴァを見て、皆の声を聞いて笑顔となった。
と、地下施設の右、頑丈な鋼鉄扉の先に幾つか人型の魔素を察知。
上にいた戦闘メイドたちか? それとも……。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




