千五百九十六話 キーラとの激戦
爆風に押されて後退――。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジス越しにキーラの蒼い瞳が輝くのを見ながら――。
<仙魔奇道の心得>と<霊血の泉>を発動させた。
※仙魔奇道技術系統:基礎スキル※
※すべての高水準の能力と<仙魔術>、<仙魔術・水黄綬の心得>、<精霊珠想>、<玄樹・霧纏>、<仙魔・霧纏>が必須※
※額に仙魔奇道の魔印が浮かぶことにより、様々な<魔闘術>系統、<闘気霊装>系統の効果が上がる※
体から霊気を帯びたような血が噴出する。
その血が白炎の霧の魔力と混じりつつ周囲に拡がった。
※霊血の泉※
※<霊槍血鎖師>及び光魔ルシヴァル血魔力時空属性系<血道第四・開門>により覚えた特殊独自スキル※
※ルシヴァル神殿以外でも、本人の周囲に聖域と化す霊気を帯びた血湖の作成が可能。霊気漂う聖域内は、眷属たちの能力がより活性化。初期段階において既にルシヴァルの紋章樹精霊と連携が可能となる※注※さらなる発展の兆しあり※
※聖域では、あらゆる事象がルシヴァルの眷属たちに有利に運ぶ※
new※闇神リヴォグラフのルキヴェロススを屠ったことにより、光魔ルシヴァル宗主と眷属たちが成長し、<霊血の泉>は効果が倍増した※
new※近くに眷属たちが多いと独自の<血脈魔闘術>効果となるだろう※
おぉ、成長していたようだ。
「「ふふ!」」
「「ナイスタイミング!」」
キーラは少し驚き、
「ふふ、膨大な<血魔力>に神界に炎でしょうか、その源泉は……凄まじい<魔闘術>系統の種類と厚みで読み切れないわ、ふふ、非常に興味深い……ですが、夢魔の水鏡など捧げて得た、この、千載一遇の機会はもう二度とこない……ここで貴方を仕留めたら、南マハハイム、否、セラで絶対的な地位を築ける……ふふふ――」
両手を拡げながら語る。
指先に相棒のような紅蓮の炎が収斂し、複数の魔刃が畳まれながら収縮していた。
更に、一部の魔刃は蛇のように揺らめきながらキーラを守るように展開されている。
構わず更に、
「ハルホンク、玄智聖水を少し使用していい――霊獣四神朱雀の<朱雀ノ纏>と<朱雀ノ心得>を使う」
「ングゥゥィィ」
<四神相応>を意識、発動すると呼応した肩の竜頭装甲。
魔力を盛大に喰らうと、闇と光の運び手装備に合わせた棒手裏剣と手裏剣が多数装着された朱雀を模した装備に変化。
朱雀が『グォォォォ』と荒ぶる神気と思念を寄越す。
魔力を、その朱雀に吸われた。
キーラは、
「……何かを……底が知れないですわね……では、わたしも奥の手の一つ――<ドアチェの来祭>」
複数の魔杖と可愛らしい小熊の縫いぐるみを召喚――。
縫いぐるみは口から大量のポーションのような瓶が吐き出してきた。
構わず、霊獣四神朱雀と関係する<朱雀閃刹>を発動――。
※朱雀閃刹※
※霊獣四神朱雀投擲術:極位※
※霊獣四神朱雀の<朱雀ノ心得>と熟練度の高い<投擲>が必須※
※朱雀の魔力を宿した投擲術※
朱雀を模した装備類から棒手裏剣と手裏剣が火花を散らしながら螺旋突出――。
無数の棒手裏剣と手裏剣から迦陵頻伽のような朱雀の幻影が出現していく。
<朱雀閃刹>の無数の棒手裏剣と手裏剣は宙を切り裂くように直進し、ポーション瓶と魔刃を貫く。小熊のぬいぐるみも何かを吐き出すが、遅い、吐き出された物ごと小熊の縫いぐるみ突き抜けて破壊に成功しキーラに向かった。
キーラは、
「チッ」
と舌打ちを行うと、複数の魔杖から放射状の魔弾を無数に繰り出す。
指輪からも紅蓮の炎を目の前に波状に展開させる。
放射状の魔弾と紅蓮の炎の波頭が棒手裏剣と手裏剣と衝突し、大爆発。
キーラの前方で連続的に爆発が拡がって衝撃波が周囲に向かう。
眷属たちと【御九星集団】と【髑髏鬼】の生きている者も蹌踉けた。
キーラは、その大爆発を抜けて着地すると、憎しみを帯びた視線で俺を凝視、
「――旧神でさえ混乱するドアチェの数体を屠るとは、神界の霊獣でしょうか? 生意気ですわね……お前の体を穴だらけにして燃やしてあげましょう――」
と、小熊の縫いぐるみを、また生み出しては直進させてきた。
小熊の縫いぐるみの口から無数の瓶を生み出し飛ばしてくる。
更にキーラは、周囲に浮かせていた複数の魔杖からも、色の異なる魔刃を俺に伸ばしてきた。それらの魔刃が先に飛来していたポーション瓶を貫く。と、連鎖爆発を起こして爆風を伴った魔刃はしなりながら勢い良く飛来してきた。
その魔刃を魔槍杖バルドークの柄で受けながら衝撃と力を感じて押されて後退――。
――衝突している柄から火花と金属音が連続的に響きまくる。
「――ふふ、【天凜の月】の盟主は逃げるのですか?」
キーラが嘲笑しながら魔刃と炎を伸ばす。
剣状の魔弾と指輪からも髑髏の弾丸も飛ばしてくる――。
魔槍杖バルドークと神槍ガンジスの<豪閃>と<刺突>に――。
<双豪閃>から風槍流『案山子通し』を行う横回転から<杖楽昇堕閃>を繰り出して、複数の魔刃と爆弾ポーションを斬り、貫くが――爆発と炎は防げない。
爆風と炎に塗れる――。
キーラは「そこ――」と複数の魔杖から伸びた魔刃を一斉に突き出していた。
それらの魔刃は<闇透纏視>と魔察眼で普通に見えている――。
かすかに後退し、視界を埋める勢いで迫っていた魔刃の一撃を避けた。
俺が居た地面は一気に抉れて散り、粉塵が舞った。
「速いですが――」
キーラは髑髏の礫を寄越しつつ――。
いきなり空間を抉るような遠距離攻撃を繰り出してきた。
「げぇっ」
闇と光の運び手装備を削り、鎖骨と左顎に耳が消し飛ぶ。
キーラの攻撃は、〝地底神トロドの髑髏指輪〟と〝異界ノ指輪〟と〝空切ノ間〟などのアイテム効果か――。
更に爆風を伴う紅蓮の炎が迫った。
それらの紅蓮の炎と爆風の影響は<無方剛柔>のお陰か、ダメージは皆無に近い。と思ったが、痛ッ――。闇と光の運び手装備や<無方剛柔>の防御力を超えて直に皮膚を焦がし燃やしてきた――。
生活魔法の水は意味がない――。
<水神の呼び声>などの効果も消し飛ばす勢いか――。
「ふふ、ここで貴方を仕留めます――」
キーラは、俺の姿を見て勝ったような表情を浮かべつつ、複数の魔杖と可愛らしい小熊を周囲に召喚――。
魔杖から、それぞれ色の異なる放射状の魔刃を幾つも伸ばしてきた。
種類と属性と相性が異なる炎と魔刃が幾つもあるということか。
続いて、キーラの指輪か腕環から放出されていた炎と魔刃が飛来――。
「ぐあっ」
魔刃は何度も闇と光の運び手装備とハルホンクの素材を切り裂いてくる。傷と火傷は光魔ルシヴァルらしく回復はしているがっ――右に跳び、その炎と魔刃を避け続けた。と、その炎とは種類の異なる爆風が迫った。
小熊が吐いた爆弾ポーションも誘爆してくる――。
俄に上昇しながら、下から上に振り上げた神槍ガンジスで<龍豪閃>を繰り出す。
爆弾ポーションが連鎖して出来上がった爆風と紅蓮の炎を方天画戟と似た穂先が両断――。
入道雲を斬ったように見える。
「まぁ!」
<火焔光背>でそれらの爆風ごと魔力を吸収。
キーラも驚いているが、余裕だな。
レベッカの蒼炎弾を後退し避けては反撃に、地底神トロドの髑髏指輪から髑髏の礫を皆に繰り出す。
キーラは俺を見て、
「槍使い、貴方は強いですが、上には上が居ることを思い知りなさい――」
と喋りながら蛇のような炎と、鞭のような炎と、衣服の布を魔刃に変化させた魔刃と、体から生み出したエネルギー刃と火球など、無数の遠距離攻撃を俺に繰り出し続けてくる。
――斜め右上に生み出した<導想魔手>目掛け前転し、魔刃と蛇のような炎を避けて<導想魔手>を両足の裏で捉え蹴り、宙空ターンから側転を実行――。
「上には上が居ることは百も承知――」
と、エネルギー刃と火球に魔刃を避け、<仙魔・桂馬歩法>を実行し、宙空を跳ぶように移動し――<暁闇ノ歩法>を発動――。
視界が移り変わりながら小熊の縫いぐるみが吐いた複数の爆弾ポーションと、キーラが放つ魔刃とエネルギー刃のような炎の乱舞を避けまくった。
キーラに宙空から近付き神槍ガンジスで<龍豪閃>。キーラは<龍豪閃>を避けながら炎のエネルギー刃を寄越す。
その炎のエネルギー刃を見ながら避けて<導想魔手>を足下に生成し足場にし跳躍。
追尾してきた爆弾ポーションと魔刃を避けながらキーラの側面から間合いを潰し、魔槍杖バルドークの<血龍仙閃>を繰り出した。
キーラは「くっ、なんて機動!」と言いつつ身を捻りながら――。
<血龍仙閃>を避けつつ、右腕から螺旋状のフランベルジュのような魔刃を俺に繰り出してきた。
そのフランベルジュの魔刃目掛け――。
左腕を突き出す神槍ガンジスで<魔仙萼穿>を繰り出し、フランベルジュの魔刃を貫くが、神槍ガンジスの穂先の勢いは止まる。が、地面に着地するや否や<暁闇ノ跳穿>を実行――。
宙空で身を捻りながらのジャンピング<刺突>のような<暁闇ノ跳穿>だったが――。
キーラは左腕を翳し、左手の掌から小形の闇の紋章と光の十字架を発生させて、<暁闇ノ跳穿>の一撃を防ぐ。
が、キーラは「きゃ」と悲鳴を発して右に吹き飛んだ。
「だいたい戦いとは水物だろ? ナゾの上から目線で語るのは止してくれ、それとも優生思想に塗れて頭が逝ったまま、人や国に思想を見下すことしか、できないような思考に成っているのか? もしそうなら哀れだな」
と、発言しつつ、左手でキーラをように風槍流『右風崩し』の構えを取る。
キーラは、くるくると回転して地面に着地した。
肩で息をしてから、此方を見やる。
蒼い瞳が揺れている。
「ふふ、随分と高尚な言い方ですわね」
「すまん、言いたいことは分かるが、俺が言いたいのは、それぞれが一長一短と言いたいだけだ」
キーラは驚いたように俺を見てから、
「……ふふ、いいですわ、ただ、見下すのは当然だと思います。皆、思考と感情がありますから、優性の法則はあらゆることに当てはまりますし……随分と博愛主義なのですね……」
「博愛ではないな、俺も見下すことはある、ただ、なるべく仁義を貫きたいんだ、金や名誉のために生きたくはない。そして、皆も居る」
キーラの瞳孔が少し散大し収縮している。
「……ふふ、皆のための……仁者であり、仁義立てと……泣かせますわね、あぁ、黒魔女教団の……なるほど、先程の<刺突>系のスキルは、まさに四天魔女の〝暁闇を刺し貫く飛び烏〟でした。そして【黒の預言者】キュベラスを取り込むほどの闇に、聖鎖騎士団も味方に付ける光……まさに闇と光の運び手が槍使い……その光と闇に似合う哲学があるのですね……」
「あぁ」
「髑髏魔人ダモアヌンの再来との情報は本当でしたか……」
と、キーラが語り終えると頭上の灰色の世界が割れ始めた。
割れた世界の先は【幻瞑暗黒回廊】と分かる。
そこに<暗黒魔力>が包む赤い双眸が生まれていた。
が、その背後から凍てついた魔力を喰らったように赤い双眸は凍りついて消えている?
と、その奥に大魔術師アキエ・エニグマたちが、闇神リヴォグラフたちの軍隊と戦うのが見えた。【魔術総武会】もがんばっているようだな。大魔術師ケイ・マドールは大丈夫だろうか、魔塔ゲルハットの植物園は、あのまま放置しているんだがな。
と、キーラの表情に陰りが見え始める。
サケルナートことルキヴェロススが消えたことで、色々と連絡が途絶えている?
キーラは、「ふっ」と笑うと跳ぶような機動で後方に跳躍。
宙空に静止しながら両手を拡げた。
「さて、槍使い、改めてそりが合わないと認識しましたよ、わたしの欲望に飲まれて死になさい!」
と、衣服と体から生み出した複数の炎と魔刃を寄越す。
――しかし、分かりやすくて良い――。
「ハッ、欲望に飲まれて死にたくねぇな」
と、それらを躱し、避けては斬るが、キーラは、「ふふ、良かった♪」と、楽しそうに、複数の魔杖から魔刃を生み出す。小熊の縫いぐるみからも、無数の魔刃と爆弾ポーションと蛇やエネルギー刃にも見える炎の連続攻撃を繰り出してきた。
先程から手数が多すぎる。
が、手数なら、キーラを見ながら後退しつつ<仙玄樹・紅霞月>を発動――。
※仙玄樹流技術系統:自在強<仙魔術>※
※水神アクレシス、大地の神ガイア、植物の女神サデュラ、双月神ウラニリ、双月神ウリオウ、神狼ハーレイアなどの加護と神気に水属性と時空属性と<超脳・朧水月>、<月狼の刻印者>、<血魔力>が必須※
※仙玄樹ツキヨミが、魔界セブドラの魔人鮫ギジアスが跋扈する黒泥海ガサドラで、無謬なる<仙樹宝界>と<無量狼コタンギ>を用いつつ山葵・狼月延石の上で座禅の修業を行った際に、『蓮は泥より出て泥に染まらず、樹海八狼月伝は本物なり』という言葉を残して独自に開発したとされる※
俺の周囲に生まれている霧と白炎の魔力の外側から次から次へと三日月状の<仙玄樹・紅霞月>の魔刃が飛び出ていく。
三日月状の<仙玄樹・紅霞月>の魔刃と無数の魔刃が衝突し、幾度となく爆発が続く。
爆風がキサラとヴェロニカとサラとユイに影響していた。
紅のアサシンやドワーフの強者を倒したようだな。
と、皆と俺に爆弾ポーションが飛来。
爆弾ポーションに加えて魔刃や炎などの連続攻撃は厄介すぎる――。
小熊の縫いぐるみとも誘爆を繰り返す爆弾ポーションも厄介だ――。
いたるところで爆発を繰り返した。
三日月状の<仙玄樹・紅霞月>は爆弾ポーションを貫き、炎と相殺して消えた。
更に、キーラの体から出ていたエネルギー刃にも三日月状の<仙玄樹・紅霞月>は貫かれて消えていく。
霊獣四神朱雀の<朱雀閃刹>と<仙羅・絲刀>を連続的に発動。
<朱雀閃刹>の棒手裏剣と、魔糸の刃が、複数の魔杖から迸る魔刃と複数のエネルギー刃と炎と連続的に衝突を繰り返し、大小様々な爆発を繰り返した。
すべてが相殺するが、キーラの魔力は衰え知らず――。
またも小熊の縫いぐるみなどを生み出して、爆弾ポーションを此方に吐き出してくる。
<血想槍>で対処してもいいが、避けられる以上は余計な消費は避けとこう――。
それにしても<闘気玄装>と<黒呪強瞑>と<血液加速>と<メファーラの武闘血>と<ルシヴァル紋章樹ノ纏>と<滔天仙正理大綱>と<光魔血仙経>などの<魔闘術>系統に対応しているし、キーラは強い。
――俄に魔刃と爆風と炎を避けながら――。
<龍神・魔力纏>――。
<滔天神働術>――。
<滔天内丹術>――。
<性命双修>――。
を連続的に意識し、発動した。
脳と背骨と連なる神経と血管の先々まで熱く血がたぎる。
脳のセロトニンなどの神経伝達物質と腸脳ホルモンが急上昇。
丹田を軸に下丹田と横隔膜から小腸、腹大動脈、骨盤、インナーマッスル、腸腰筋など、体を巡る魔力が指先まで行き渡った。
体を巡る血流が躍動すると、体にフォースフィールド的な白炎が付着――。
無数の体内と体外の魔力がうねり、魔力の網のような経脈を活かすように体中の陰陽を活性化していく。神秘的な血流が体を巡る映像が脳内に浮かぶような感覚――。
――キーラの炎系の攻撃に触れてもダメージを受けなくなった。
が――エネルギー刃のような炎は鞭のように機動が変化するし、その白炎を削ってきやがった、非常に厄介だ。
反撃に魔槍杖バルドークから<バーヴァイの螺旋暗赤刃>を繰り出した。
小熊の縫いぐるみが吐き出した爆弾ポーションを数個貫き爆風を突き抜けて、複数の小熊の縫いぐるみを突き抜け、更に、蛇のような炎を貫きまくりキーラに直進した。
キーラは「チッ、手数と威力を上回るってくるとは――」と言いながら浮遊し――。
半円状の防御層を眼前に生み出した。螺旋状の魔刃の<バーヴァイの螺旋暗赤刃>を、その半円状の防御層で防ぐ。
同時に腕輪と指輪から生み出した炎の鞭で、エヴァやキサラの攻撃を跳ね返しては、俺にも寄越してきた。撓る、炎の鞭の遠距離攻撃を――右に左に体をわずかに動かし続け、避けながら左手に魔杖レイズを召喚し、その左腕を振るう――。
<バーヴァイの魔刃>をキーラ目掛けて繰り出した。
魔槍杖バルドークからも<バーヴァイの螺旋暗赤刃>を繰り出す。
キーラは半円状の防御層の層を強めて厚くする。
その防御層で、<バーヴァイの魔刃>と<バーヴァイの螺旋暗赤刃>の遠距離攻撃を防ぎまくったが、勢いに押されたように後退したところに、ユイが間合いを詰めていた。
――神鬼・霊風による<黒呪鸞鳥剣>が半円状の防護層を斬り刻む。
ユイの剣舞を間近で体感したキーラは「くっ」と言いながら右に後退――。
そこにサージロンの球と刃が大きくなったラ・グラスの斬撃が向かう。
ダモアヌンの魔槍の<投擲>も加わった。
キーラは連続的に生み出していた漆黒の盾で、なんとか皆の連携攻撃を防ぐが斜め後方へと吹き飛ばされていた。
巨大な猪と魔獣を屠った黒虎と、レザライサたちもキーラに向かう。
「にゃご――」
キーラは己の衣装から複数の魔刃を生み出して、地面にそれらを突き出して衝撃を殺すと姿を消して、分身を生み出す。魔人キュベラスもキーラに向かう。
「キーラ、覚悟――」
「死になさい――」
黒虎の前足の薙ぎ払いと、ファーミリアのサンスクリットの血霊剣の斬撃とレザライサの魔剣ルギヌンフの突きと、クリドススの魔双剣レッパゴルの斬撃とファスの閃光とサラの斬撃とキュベラスの複数の魔杖から伸びていた魔刃の剣舞と、キサラのダモアヌンの魔槍の<血烈叭槍>が繰り出されて、キーラの本体は傷だらけとなり、分身がすべて消えたが、キーラは異空間の中に消える。
やや遅れてアドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>の魔矢が見えた。
と、右に本体が現れたキーラは魔杖から放射状に無数の魔刃を繰り出す。
それらの魔刃で皆の遠距離攻撃を防ぐと、そのまま連射を続けた。
放射状に撃ちまくる魔刃に目掛け《闇壁》を幾つも発生させて魔刃を防ぐ。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>も相棒たちに向かわせて、キュベラスたちの盾にしてあげた。
魔刃の連射攻撃に押されて皆一時的に後退するが、レベッカが両膝を突けながら地面を滑り、魔刃を掻い潜る。キーラに近付いて、蒼炎弾を繰り出しては、左腕を掲げた。
ヴァルアの腕甲・暗器刀キルシュナを向ける。
キーラは「なに!」と驚きながらも跳躍し、暗器刀キルシュナも避けた。
驚いたが、キーラの蒼い双眸の眼前には魔法陣が幾つか浮いている。
魔眼効果か。
「なんて反応!」
「「速い!」」
「ん!」
レベッカも皆も驚いていた。
「【髑髏鬼】と【御九星集団】の最高幹部はすべて倒れています、あとはあいつのみ!」
「「はい」」
「がんばるのだ、皆!」
エトアとラムーたちの歓声が背後から響く。
そこに、エヴァのサージロンの球とベリーズとベネットの聖十字金属の魔矢がキーラに向かう。
キーラは多層に重ねた漆黒の盾で、皆の遠距離攻撃を防ぎながら、金色の針のような物を召喚し、皆に繰り出していく。
エヴァは金属の群れと魔式・九連環を使いながら後退し、金色の針を強引に押さえ込もうとするが、金属の壁が突破されていた。ベネットとベリーズは後退し、相棒の触手骨剣に守られた。
ラムーは飛翔して逃げている。シャルドネたちは近くには居ない。
キーラは強いな、仲間の最高幹部たちは、すべて倒れているが、関係がない。
そのキーラは、
「バゲィリ、コンマイ、マブラスも倒れましたか……しかし! <ゲヘラの波動>」
と、キーラは体から金色と銀色の衝撃波を何度も繰り出す。
ジィィン、ジンッジンッジンッジィィィンと、甲高い音が何回も響きまくる。
同時に半透明な魔杖がいたるところに出現し点滅を繰り返した。
空間を射貫いているような幻影があちこちに出現する。
「――くっ」
「あぅぅ~」
「――何、動きが遅くなった……」
「――きゃ、ご主人様……」
「……にゃご?」
相棒の周囲から発せられている〝アメロロの猫魔服〟と燕の形をした魔力が<ゲヘラの波動>に干渉しているように火花が散っていた。戦神イシュルル様と戦神ラマドシュラー様の魔力の加護効果か、戦乙女風の幻影が相棒を抱くように出現していた。
「チッ 総長、この攻撃は――」
「――もう! 前に進めない」
「――ぐお、なんだこれは……<ゲヘラの波動>とは神意力と似たプレッシャーでもあるのか……」
「――ん、皆、距離をとろう!」
皆が衝撃波に押されて近づけない――。
<ゲヘラの波動>には俺も押された。これが奥の手か。
「にゃごぁ――」
「――え!?」
相棒は<ゲヘラの波動>に押されず前進し、キーラに跳び掛かった。
キーラは驚きながらも闇状の大蜘蛛と大熊の魔獣を召喚し、相棒に衝突させると、宙空に錐もみ状に回転しながら体勢を持ち直す。
上服が斬られ、装備品が幾つか壊れていた。
「ガルルルゥ――」
――ナイスだ相棒。
黒虎は、大蜘蛛と大熊の頭部を喰らっている。
「……」
キーラは眉を潜めながら「これからです――」と、アイテムボックスから勾玉のような物を幾つか放る。それら勾玉は甲冑を着た五人の魔将となった。
四眼四腕の大柄の魔将は魔盾と魔大剣を持ったまま皆に向かう――。
<ゲヘラの波動>の効果で相棒以外は身動きが取れない。
直ぐに<水月血闘法>と<滔天魔経>と<煌魔葉舞>の<魔闘術>系統を発動。
動けるようになった――。
右手の武器を金漠の悪夢槍に変化させつつ、魔将の一人に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を衝突させて、魔将の一人を背後に移動させていく。
もう一人の魔将が振り上げた魔大剣を<水月血闘法・水仙>を使い――。
斜めに跳ぶように避けながら<悪夢・烈雷抜穿>――。
金漠の悪夢槍が魔将の腹を豪快にぶち抜く――。
加速し、魔将の横を抜けた。魔将を突き抜けた金漠の悪夢槍を右手で掴みながら、闇の獄骨騎に魔力を込めつつ、<超能力精神>で、二人の魔将を吹き飛ばす。
ゼメタスとアドモスが現れると、「「閣下ァァ」」と言いながら、魔将の二人に愛盾・光魔黒魂塊と愛盾・光魔赤魂塊を突き出しながら突撃し、魔将の魔大剣を受けていた。
即座に、
「ハルホンク、融合した衣装といこう」
「ングゥゥィィ」
<血道第四・開門>と<血道第五・開門>を連続的に意識し<血霊兵装隊杖>も発動させた。眼前に血の錫杖が生まれた。
闇と光の運び手装備は崩さず、光魔ルシヴァル宗主専用吸血鬼武装の一部を装着させる。胸甲と鈴懸と不動袈裟風の衣装防具が付いた。キーラは両手に持った魔杖と、周囲に生み出している魔杖から魔刃を伸ばしながら――。
間合いを詰めて、連続的に斬ってくる。
袈裟斬りから逆袈裟に<黒呪鸞鳥剣>のような連続斬りか。
金漠の悪夢槍ですべての斬撃を防ぐと、キーラは横移動からの衝撃波も繰り出してきた――。
背後に運ばれるが、引き戻していた<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>で、キーラの背を狙う。
キーラは気付いて上空に移動しようとしたが、足と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>の上部が衝突、キーラはつんのめったように回転。
そのキーラに金漠の悪夢槍で<血刃翔刹穿>を繰り出す。
キーラは回転しながらも漆黒の盾を眼前に生み出し、金漠の悪夢槍の穂先を防ぐが<血刃翔刹穿>の連続的に穂先から幾度となく放出されていく無数の血刃は防げない。
漆黒の盾を削りに削るとキーラの体を突き刺さっていく。
「げぇ」と悲鳴を発したキーラは吹き飛びながらも、炎の鞭のような攻撃を繰り出してきた。
俄に金漠の悪夢槍で上段受けから中段受けを使い炎の鞭の攻撃を防ぐ。
続けざまに飛来してきた火球とエネルギー刃をも金漠の悪夢槍で防いだ。
キーラは、
「……これで仕舞いです――<茫漠たる豪大剣リヴォグラフ>――」と、宙空から足下に巨大な魔剣を生み出していた。
俄に<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を盾にしたが――。
<茫漠たる豪大剣リヴォグラフ>の体長五十メートルの巨人が持つような超大剣の一撃は完全には殺せない。
衝撃波と共に粉塵を喰らうが後退は出来た――。
そして<茫漠たる豪大剣リヴォグラフ>が<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>に突き刺さっているように見えて地面に深くめり込んでいるが、無事だ。
キーラの足下にあった<茫漠たる豪大剣リヴォグラフ>は消えた。
キーラは両手の指に生み出した丸薬を飲み込んでいた。
直ぐに両手の武器を消し、右手に雷炎槍エフィルマゾルを召喚。
腰にぶら下がる魔軍夜行ノ槍業を触りながら『シュリ師匠、頼めますか』
『うふふ、勿論♪』
即座に<魔軍夜行ノ憑依>を実行――。
眼前に称号:<夜行光鬼槍卿>の文字が出現。
シュリ師匠の魂の精神体は魔軍夜行ノ槍業から外に出て、俺と合体、融合を遂げるとキーラは消える。
キーラは背後に転移してきた。
即座に<仙魔・龍水移>で、キーラの背後に転移しシュリ師匠と共に<血龍仙閃>――。
キーラは転移し消えると俺の背後に現れる。
<仙魔・龍水移>はせず前進し、背後のキーラの炎の攻撃と髑髏の礫と魔刃を避けて、反転しながらのシュリ師匠の熱い心を感じながら振り向きざまの<血龍仙閃>――。
「!?」
雷炎槍エフィルマゾルの<血龍仙閃>は炎と髑髏の礫と漆黒の盾ごとキーラの腕と胸元を切断。
ピコーン※<雷炎腹柵斬り>※スキル獲得※
シュリ師匠の雷炎槍流を体現するように上下鎌十文字槍の雷炎槍エフィルマゾルで上に振るフェイクから下段に振るう。
キーラが生み出した炎ごと左足を上下鎌十文字槍が斬った。
ピコーン※<雷払雲>※スキル獲得※
キーラは驚愕の表情のまま後退し、即座に失った足と手を生み出す。
が、斬られた衣服と装備は元に戻らず、装備品の幾つかは落ちていた。
『お弟子ちゃん、私に魂をもっと委ねてみて』
「はい――」
『ぁん、いいわ……うん、お弟子ちゃんの筋肉を感じる、両足をもっと、そう……』
キーラは「まだよ、まだ!!!」と鬼気迫る表情のまま、己の生み出したばかりの手を犠牲にしたように右前腕が潰れると、そこから――。
「させるか――」
シュリ師匠の幻影が体から滲み出るのを感じると自然と雷炎槍エフィルマゾルを突き出して、一、二、三、四、五、六――。
キーラの右腕に生まれ出た魔獣の頭部ごとキーラの胸から頭部を雷炎槍エフィルマゾルが穿ちながらキーラの横を抜けていた。
ピコーン※<雷炎六穿>※スキル獲得※
キーラをまだ生きている――。
と、振り向くと、キーラだった上半身は肉塊と化して下半身がふらつきながら、僅かに残っている上半身の心臓と連なっている漆黒の勾玉が煌めいていた。
漆黒の勾玉から闇神リヴォグラフの幻影が現れている。
キーラは回復しようとしている。
「『させない――』」
シュリ師匠と一体化したまま、加速転移するような速度で前進。
キーラだった勾玉の心臓部に雷炎槍エフィルマゾルを突き出す<雷炎槍・瞬衝霊刃>を繰り出した。
勾玉ごと、キーラの上半身の心臓部と下半身を穿ち消し飛ばした。
ピコーン※<雷炎縮地>※スキル獲得※
良し、雷炎槍流の代名詞の加速系スキルを得られた。
そして、魔将などはすべて倒されている。
キーラは強かったが、勝った。
「にゃおぉぉ~」
「「「「おぉぉ!」」」」
「ご主人様、お見事です!」
「シュウヤ様! 勝ちました!」
「ん、大勝利!」
続きは明日。
HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




