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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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1593/1998

千五百九十二話 【大鳥の鼻】のガイと戦闘に<闇魔伝秘孔針>

 ユイが左から前に出て重心を下げると、


「ガイだっけ? 随分となれなれしい、状況を理解しているのかしら」


 神鬼・霊風の鯉口を握る左手の人差し指が鍔に掛かり鞘を内側に捻り込み、右手は柄巻の目抜きを握っていた。


 ヴィーネとレベッカが前に出る。

 レザライサとアドリアンヌとシキにブルーとギュルブンたちが、俺たちの傍に来た。侯爵シャルドネとファルス殿下の傍に寄る。


 すると


「【大鳥の鼻】は何を考えている?」

「……さぁ、【御九星集団】のキーラに弱みでも握られているのかしら」


 背後でレザライサがアドリアンヌに話しかけたようだ。

 すると、前に居るヴィーネもユイと同じように重心を下げると、ガイに向け


「【天凜の月】の、はぶりが良いから、なんだというのです」


 と、向け発言。ガドリセスの柄に手を置き、アズマイル流の居合い剣法の構えをとった。

 鞘の根元に竜の彫刻が施されて、ほとんどが赤い鱗で覆われ<血魔力>が宿っている。

 その赤い鱗は何層にも重なった造りで、それは魔法のハンマーで何度も打ち込まれたような頑丈な表面となっていた。少々無骨な印象はあるものの非常に味わい深い鞘がガドリセスの鞘だ。


 レベッカは、


「そうそう、やっかみとかダサすぎる、だいたいお金は、ぜーんぶ! シュウヤががんばったお陰で自然と付いてきた物なのよ? それを、メルたちが数倍以上の成果にしたからの、大金のようだけど! だいたいさ、女々しすぎるのよ!」

「はい!」


 背後からエトアも声が響く。

 レベッカは半身で、此方を見て、ガッツポーズ的に、〝ナイス、エトア~〟と言うようにエトアに向け笑顔のままグーフォンの魔杖を掲げていた。


 そして、左手に持つ城隍神レムランの竜杖を掲げながら、ガイたちを見ては、ヴァルアの腕甲・暗器刀キルシュナを嵌めている左腕を前に出していた。


 暗器の暗器刀キルシュナをいつでも射出できる構えだ。

 その前に居るユイ、ヴィーネ、レベッカの三人の<筆頭従者長(選ばれし眷属)>はジリジリとガイに近付くと、


 ガイの背後から影使いのヨミ――。

 斧と盾を持つドワーフ――。

 魔杖の先端を此方に向けているハーフエルフの魔術師風の女性に――。

 小柄の槍使いの人族の男性――。

 四つの魔法の短剣を頭上に浮かせている、頭が禿げた男性――。

 四眼四腕の魔族の武者――。

 眼球を複数浮かばせている魔術師――。

 指が無く<導魔術>で魔杖を数本浮かせているドワーフ。


 そして【大鳥の鼻】の盟主バメルが魔剣を数本眼前に浮かせながら、多数の最高幹部たちを連れて寄ってきた。

 バメルは<導魔術>系統の使い手か。

 

 ガイは俺たちを見て、


「……ハッ、いちゃもんを付けたくもなるだろうがよ、オークションを荒しやがって」

「……ダサっ、競合に負けまくった嫉妬の腹いせ?」

「死の女神、調子に乗るなよ? もう中立期間は終わったんだぞ?」

「はぁ……脅しているつもり? 浅はかすぎる」

「おうおう、言ってくれるじゃねぇか、強者とて、ここで戦えばどうなるか分かるだろうに」

「……室内戦? だから何? あ、頭が七色に輝きすぎて、阿呆に成った?」

「……あぁ”」


 ユイの挑発に乗ったガイは声を荒げ前に出た。

 片目が大きくなって怒りの感情を露わにした。


 レベッカが、


「やる気満々のようだけど、問題は右後方の連中よね」

「はい、【大鳥の鼻】は、そこの【御九星集団】と【髑髏鬼】と手を組んだのでしょうか」


 ヴィーネが聞くと、ガイは舌打ちをしてから頭部を振る。

 そして、


「……あ? 組んでねぇ、それよりも何故、魔人たちの狂乱の夜の首謀者と目される魔人キュベラスがそこに居る。そして、オセべリア王国の第二王子と女侯爵もだ……お前らが意図的に政変を起こし、その政変をお前たちがもみ消したってことか? 裏ではトップ同士が繋がっていて、一部の王族に連なる商会と闇ギルドの金儲けのためだけに国民を疲弊させ消費させたのか? クソな王族たちの資源独占のための、狂乱の政変で、民の虐殺か?」


 と、発言しては大太刀の柄巻から刀身に魔力を通したのか、七色に刀身が輝く。


 あぁ、キュベラスが仲間になったことが氣に食わないか。

 そりゃ分かる。


 そして、他にも今のガイの意見には、【大鳥の鼻】の各メンバーと【ベイカラの手】のアコニットたち、【雀虎】リナベルたちの中にも同意見がちらほらと居るようだ。


 魔人キュベラス、魔人アルケーシス、豪脚剣デル、魔人モスヒート、飛影ラヒオク、闇速レスール、炎極ベルハラディ、イヒアルス、ドマダイ、ヒョウガ、バフラ・マフディなどの【闇の教団ハデス】最高幹部たちは悪側として相当なことをしてきたはずだ。


 が、過去は過去。

 そして仲間と成った以上は【天凜の月】に殉じるだろうし、その行為を一度は信じるさ。


 その思いのまま、


「……ユイとヴィーネにレベッカ、そいつは俺が相手をしよう。キーラと、【御九星集団】の連中を見とこうか」

「「うん」」

「はい」


 ユイ、ヴィーネ、レベッカは出入り口付近に居るアドゥムブラリの横に並びキーラたちと対峙。


 背後の第二王子ファルスを守る位置にレムロナとフランとコジロウとレグとフーが居る。


 キサラとベリーズとサラの背後にはエトアとラムーが居た。

 ラムーは槌と片手斧を左右の手に持つ。

 サザーもイスパー&セルドィンを抜いている。

 半身になりながら、皆の位置を魔素で把握しつつ――。

 右手に魔槍杖バルドークと左手に魔杖レイズを召喚し、魔力を通す。


 魔杖レイズの放射口から――。

 ブゥゥゥンとオレンジの魔刃が音を響かせながら伸びた。


 目の前のガイではなく、キーラの表情が愕然とする。

 セラで闇神リヴォグラフの重要な連絡役だったであろうサケルナートことルキヴェロススが消えたことを理解できたかな。


 が、まずは【大鳥の鼻】のガイたちに、


「勘違いするのも分からんでもないが、【天凜の月】は途中からファルス王子を守っていただけだ。で、一々説明するのもアレだ、文句があるなら、そこの連中と一緒に手っ取り早く俺たちと戦おうか? 闇ギルドらしくな、それにポルセンたちとの借りもある。今度は俺とサシで勝負しよう」


 と、一歩、二歩、前に出る。

 魔杖レイズのオレンジの魔刃から、かすかにバチバチとチリチリとした音が響いてくる。


 ガイは蒼い双眸に魔力を込めた。


「……」

「どうした? 俺たちを潰せば地下オークションで入手したばかりの品をまるまる獲得できるチャンスだぞ?」


 と、<魔闘術>の<闘気玄装>と<黒呪強瞑>を発動。


「……」


 ガイはかすかに左に動く。

 キーラは此方側を凝視したまま小形の魔法陣を発動しまくっていた。

 【御九星集団】最高幹部の盾使いコンマレを含めた【御九星集団】のローブを着た連中はそれぞれの手に魔槍と魔剣を召喚している。


 と、血文字が浮かぶ。

 俄に振り返りつつ、血文字をガイたちから隠した。


『――シュウヤ様、自宅は無事ですが、武術街の上空から敵襲です。骨の翼を有した魔族、ガーゴイル系モンスターが現れました。魔法防御の膜が一部切り裂かれたようですが、互助会と【血星海月雷吸宵闇・大連盟】の一部の兵士たちだけで、すべてを倒しました。冒険者連合と【幽魔の門】とリヒターと【ゴリアテの戦旗】と諜報組織【鬼鮫】の人員が追撃に出ています』

『了解した』


 ヴィーネたちと目配せ。ベリーズがビュシエたちに血文字を返している。

 シキは魔法球を浮かばせて霧魔皇ロナドと骸骨の魔術師ハゼスに連絡。

 ファーミリアも円盤状のアイテムを手元に召喚すると、<筆頭従者>アルナード、ルンス、ホフマンと連絡を取った。

 やはり襲撃準備を整えていたようだが、闇神リヴォグラフ側の戦力を、今のペルネーテで運用するのは悪目立ち過ぎる。

 直ぐにすべてが鎮圧されるだろう。

 【大鳥の鼻】のガイに、


「……説明しとくと、魔人キュベラスたち【闇の教団ハデス】と【セブドラ信仰】は狂乱の夜で俺たちと戦った。魔人アルケーシスを倒し、キュベラスも数度殺したが蘇ってきた……」


 キュベラスは胸元に手を当て頭部を少し下げた。その様子を少し見てから、


「……そのキュベラスと交渉して今がある。魔族殲滅機関(ディスオルテ)たちを救う形となった戦いの後に、とある理由もあって、まだ生きていたキュベラスと【闇の教団ハデス】を仲間に引き入れただけだ」

「「おぉ」」


 周囲がどよめく。

 ガイも少し狼狽えたように手元が震えた。そして、


「……んな、【闇の教団ハデス】ごとだと……童戯(どうぎ)じゃあるまいし……」

「ハッ、遊びも本気だろ。で、本当に女々しく聞こえてくるが、タイマンで戦おうと言っているんだが……それとも盟主を女に譲ったようだから、その際に漢の大事な気概と、キンタマも失ったか?」


 と、半笑いで発言しわざと得物を消した。


「おい、さすがに舐めすぎだろ」


 と、ガイが発言。

 

 <闇透纏視>で、そのガイの三陰三陽の縦横に走る十二経絡の魔力操作と体内の魔点穴の位置は把握した。が、人族とは異なる正経、魔脈、経脈か。

 魔族の血が強いようだな。

 そして肩の竜頭装甲(ハルホンク)を意識した一瞬で、


「ングゥゥィィ」


 と、義遊暗行甲冑に着替えを終えた。


 ガイは、かなりの手練れだろう――。

 タンダールやセナアプアで【影翼旅団】と【白鯨の血長耳】と戦い続けていただけはある。


 ガイは「……その衣装……」とギュルブンたちをチラッとみてから「ハッ、なるほど……が、面子が優先だ――」と発言。

 俺を見ては表情に力みが消えた刹那。


 重心を下げたガイの体が七色に輝くと、前に出た。


 即座に<血道第三・開門>――。

 <血液加速(ブラッディアクセル)>で加速――。

 七色に輝いているガイは大太刀で剣突を繰り出してきた。


 ――大太刀の長い刀身を活かす剣突か。

 その剣突を左斜めに出て避けつつ義遊暗行剣槍を右手に召喚――<握吸>で握りを強める。


 ガイは、俺の挙動に合わせて素早く大太刀を振るってきた。

 

 <闘気玄装>と<黒呪強瞑>と<血液加速(ブラッディアクセル)>の加速力について来られているということ――。


 即座に<メファーラの武闘血>を発動しながら――。

 〝ゴルディクス魔槍大秘伝帖〟と〝髑髏魔人ダモアヌン外典〟に載っていた何千種類の槍武術と〝天魔女流白照闇凝武譜〟の一部を想起しつつ――。


 <ゴルディクス魔槍大秘伝>を意識し恒久スキルを発動。

 <魔手太陰肺経>をも発動し、右腕を上げ、義遊暗行剣槍を盾にした。

 ガイが振るってきた大太刀と義遊暗行剣槍の穂先が衝突――。

 ガイの左半身を<闇透纏視>で魔点穴を凝視しつつ、左手に召喚したコグロウの大針に魔力を送りながら<握吸>を発動させ、そのままガイの体目掛けて左腕を突き出すように<闇ノ一針>を繰り出した。

 一瞬で左腕が前後したようにブレまくる。複数回、コグロウの大針がガイの鎧を突き抜けるとガイの左半身に輝いていた魔闘術系統の光が不自然に消失した。

 ピコーン※<闇魔伝秘孔針>スキル獲得※


 おお!

 キサラが使っていた<白魔伝秘孔指>と似たようなスキルだが、針を使った新スキルを得た!

 大太刀を落としたガイは、体が動けないようで時折、体が震えていた。

 その首に向け、義遊暗行剣槍の刃を当てて寸止めにした。


 暫し、静寂な空気が流れる。


「「おぉ」」

「すげぇ」

「ふふ、シュウヤ様は確実にあらゆる方面で成長している」

「知秘孔はクナも知っていますからね」

「はい」

「「……な」」


 と見学していた【シャファの雷】のギュルブンに【雀虎】の盟主リナベルたちが驚くように声を発していた。


「「「……」」」


 するとヨミが、


「ガイ……【天凜の月】の盟主の気まぐれで、命を救われた、これ以上は……」

「………」

「ガイ、気持ちは分かるけど退いて」

「……」


 ガイは身動きが取れていない。

 義遊暗行剣槍を消しつつ、魔力をコグロウの大針に込める。


「ガイ、今、解放するから動くなよ?」


 ガイは瞬きもできないが目力だけで返事をしたように見えた。

 そのガイの体を縫うようにコグロウの大針で再度、魔点穴を突く。


「ぐぉ……はぁはぁ」


 と、突いた途端、ガイは、呼吸をいきなり乱しながら体がフラついて片膝の頭で地面を突く。

 そのガイは、


「参った……負けだ」


 と発言し、ガイは大太刀を拾い、刀身を鞘の中に戻してから、俺に大太刀を差し出してくる。


「要らんから退け」

「……分かった」


 ガイはそそくさと後退。

 代わりに前に出たのは【大鳥の鼻】の盟主バメル。


「……【天凜の月】の盟主シュウヤ様、ガイがすいませんでした。【大鳥の鼻】は、【血星海月雷吸宵・大連盟】と事を構える気はさらさらありません。そして、【大鳥の鼻】は中立を宣言します。では、どこにも触らず、どこも触れず、消えますよ、ガイ、いいわね?」

「……了解」


続きは明日。 HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 知らない仕方ないが、勘違いで突っ掛かり瞬殺されたガイ…何もいえねぇw(<闇魔伝秘孔針>は無力化にも使えるな) [一言] >「……ハッ、いちゃもんを付けたくもなるだろうがよ、オークションを荒…
[一言] 【大鳥の鼻】のメンバーもかなり強そうだったが、会合時に連れていた影使いヨミと七色長太刀使いガイの二人は、他の最高幹部より実力があっただろうに、その一人をこうもあっさり無力化するとは‼︎ <…
[一言] 毎日更新お疲れ様です!七色の光を纏うガイさんの初登場シーンが懐かしく感じます〜そのガイも一瞬で無力化するシュウヤはほんと強くなりましたね! 強さだけでなく仲間や領地(若しくは領域?)、富、名…
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