千五百八十七話 アドゥムブラリたちと意見交換
相棒は【闇の教団ハデス】の魔人と魔族たちを降ろす。
と、黒猫の姿に成った。
「プボプボォ」
「ワォ~ン!」
厩舎のほうからポポブムと銀白狼も駆け足で寄ってきた。
「ンン」
喉声を鳴らした黒猫もトコトコと歩きながら銀白狼に近付いて頭部を突き出すように見上げる。
銀白狼も「ワォン」と鳴きつつ頭部を下げて、黒猫と鼻キスの挨拶を行った。
銀白狼は頷く素振りを見せてから、俺を見て、「ウオン!!」と吼えてきた。『おかえりだワン』だろう。
銀灰虎がやや遅れて、
「にゃァ~」
と鳴きながら駆けてきた。
「ニャァ」
と鳴いた黄黒猫と、
「グモゥ~」
と鳴いた子鹿も寄ってくる。
白黒猫も「ニャオ~」と鳴いて、後ろ脚で首下をカキカキしてから黒猫たちが集まっているところに寄ってきた。
皆で鼻キスを行ってから黒猫と楽しそうにじゃれ合った。
「にゃお、にゃぁ~」
「にゃァ~」
「ワォン!」
「グモゥ~」
「ンン、ニャァ~」
「にゃお~」
「プボプボ~」
「にゃォ~」
黒猫を中心に、銀灰虎と銀白狼と白黒猫と黄黒猫と子鹿とポポブムが、体を寄せ合いながらトコトコと歩いて石畳から芝生に移動していく。
動物たちが共に歩いていく姿は面白い。
銀灰虎も途中から銀灰猫に変身し、黒猫の横を歩き尻尾と尻尾を絡めていくのは可愛かった。
そこにレグ・ソールトとコジロウも低空を飛翔しながら寄ってきた。
右膝の頭で石畳を付いて頭を下げてくる。
「「閣下!」」
「ただいまだ。殿下も地下オークション第二部で珍しいアイテムをゲットしたいと思うから、お前たちも来てもらうことになるだろう」
「「ハッ」」
レグとコジロウの背後からレムロナとフランがやってくる。
「シュウヤ、もうそろそろミライが来る頃か」
「おう」
「殿下と共に第二部にも参加します」
「閣下!」
「御使い様~」
ヘルメとグィヴァが、ファルス殿下たちの傍から離れてやってきた。
ヘルメの指先から出ている無数の<珠瑠の花>の輝く紐に体が拘束されているテツ・リンドウと西方フロング商会東リージョナル支部長モラマンと【外部商会】の本部の最高幹部ペイシェルも宙空に浮いた状態だ。
皆、【闇の教団ハデス】の面々と俺たちを見て驚いている。
「ヘルメとグィヴァ、まだ暫くは、そいつらの拘束を頼むと思う」
「はい、お任せを闇神側にとって捨て駒の範疇だと思いますが、オセべリア王国には重要な証人ですからね」
「あぁ」
「はい、何らかの手段で逃げたら足を斬りますが、よろしいですか?」
涼しい顔色のままグィヴァが、そんなことを聞いてきた。
片腕を雷状の剣に変化させる。
背後で<珠瑠の花>で体が拘束されて浮いているモラマンは、あまりの恐怖からか、股間からオシッコを漏らしていた。
「死なない程度にな、裁判があるなら、口も必要だ」
「はい」
「グィヴァ、死なない程度は冗談だ。あまり痛めつけてはだめだぞ?」
「ふふ、はい、大丈夫です」
少し安心した。すると、メルが、
「総長、機密文書を見たリンドウとモラマンとペイシェルはすべてを諦め、色々と口を割っていますし、証言は録音済みです」
と魔通貝のようなアイテムを見せて、クリドススを見やる。
クリドススも会釈し、
「シュウヤさん、色々とお疲れさまでした。その魔通貝は録音が可能な、〝魔通録音貝〟と呼ばれている魔機械ですヨ、ワタシが持つ魔通録音貝でも、ペイシェルたちの証言を録音済みです」
レザライサも、
「セナアプアの正義の評議宿と【白鯨の血長耳】では結構頻繁に利用している。オセべリア王国内では迷宮産の録音が可能な魔機械が一部流通しているが、我らはエセル界からの魔通貝のほうが使い勝手は良いからな」
無線のような魔機械が魔通貝と認識している。
録音用も色々とあるか。
「了解した。証拠もあるし裁判云々も殿下たちは考えているかもしれないが、地下オークションが終わったらルークたちの首を狙うつもりなんだが」
「ふっ、【闇の教団ハデス】の施設で重要な情報を得たか。それならそれでいい」
レザライサの言葉に皆が頷いた。
「おう、そうだ」
と言うと、副長メルは、
「殿下的には、捕まえて国民の前でルーク国王の罪を公表しつつ、ギロチンか何かで公開処刑が効果的だと思いますが」
それはキツイ死だな。
「だが、ルーク国王の体には闇ノ淫魔獣グレバロスが棲んでいるようだからな、戦いとなれば、その怪物もろとも戦うことになる。そして、宮廷魔術師サーエンマグラムと闇神リヴォグラフの大眷属ドクルマズルとルビコンも傍に居るだろうから、そいつらとも戦うことになるだろう。更に第三王子クリムも本体が生きている可能性があるからな」
「え、あ、はい」
「「……」」
レザライサはクリドススとソリアードを見やる。
俺は、闇神ハデスのステッキを持ち上げ、
「【闇の教団ハデス】の施設で色々と新たな情報を得たんだ」
「「「なるほど……」」」
メルたちは、俺が持つ闇神ハデスのステッキと【闇の教団ハデス】の最高幹部たちを順繰りに見て、納得顔を浮かべる。
ヴェロニカとベネットも頷いていた。
メルは、
「どちらにせよ、オセべリア王国国民に対する大罪は決定的です。王政を担う王の手ゲィンバッハと宮廷魔術師サーエンマグラムと中央貴族審議会の高級官僚の信用の失墜は決定的となりましょう」
と、発言。その言葉に、頷いた。
王の手ゲィンバッハは敵ではないような話も出ていたが……〝王の手〟という役職だからな、王族が敵と内通し自国民を殺す側に回っていたのは非常に罪深い、国民感情では、マリーアントワネットどころではないだろう。国民の王党派vs議会派のピューリタン革命のようなことになりかねない。
そして、エヴァとファルス殿下とフィナプルスとベニーとカズンと<光魔ノ秘剣・マルア>のマルアとゼッタと<光邪ノ使徒>のイモリザが母家から現れる。
ルル&ララとロバートと元暗殺チームのトオも現れた。
皆で庭に居る【闇の教団ハデス】の魔人&魔族たちの行動を見守るように並び出す。
黒猫は、「ンン――」と喉声を発しながら魔導車椅子に座っているエヴァの近くに移動し、
「ロロちゃん~」
「にゃ~」
エヴァの股の上に跳躍した黒猫は、エヴァの胸に両前足を当てながら見上げ、
「ンン、にゃ、にゃお、にゃぁ~にゃおぉぉ~」
と、黒猫なりに【闇の教団ハデス】の施設内で起きた事象の説明をしている。
エヴァは微笑を浮かべて、
「ん、いっぱい色々なことがあったのね」
と言いながら黒猫の両前足の脇を持ちつつ抱き上げる。
黒猫と視線を合わせながらニコニコ顔と成った。
そのエヴァは黒猫の頭部にキスをして抱きしめていた。
相棒もエヴァも可愛い。
さて、エヴァたちにも闇神ハデスのステッキを見せつつ――。
「早速だが、炎極ベルハラディを含めた魔人と魔族たちが、ここに居る理由を含めた【闇の教団ハデス】の施設で、起きた事象の記憶を共有しようか」
「はい」
「うん、皆もヴァルマスク家たちには悪いけどね」
「あぁ」
ファーミリアは、チラチラと俺の持つ闇神ハデスのステッキに腕を向け、ルンスとアルナードたちと複数の<従者長>と<従者>たちに【闇の教団ハデス】の施設で起きたことの説明を既に開始している。
ホフマンはアドゥムブラリの近くに居た。
エヴァは頷いて、
「ん、重要なこと!」
「おうよ、此方も言っとくが、キュベラスのヒョウガとイヒアルスとホフマンと仲良くなったぜ」
と、アドゥムブラリが語る。
頭部が異界の片腕のサージルと融合しているイヒアルスが、
「あぁ、アドゥムブラリとは魔煙草を吸う中となった」
と語る。
ホフマンも、
「はい、邪霊槍イグルードを有したシュミハザーに四天魔女キサラ様を襲った経緯などを少しアドゥムブラリ様たちにも説明をしてました」
「ほぉ~」
ヴァルマスク家の<筆頭従者>ホフマンも語った。
イヒアルスは魔煙草をどうやって吸ったのか、気になる。
サージルの腕と首は離れたんだろうか。
だが、ホフマンの部下、シュミハザーはアドゥムブラリを武装魔霊として捕らえて使用していた経緯があるし、俺も知らないからも多々あるから、気になるんだが。
ホフマンの千年王国樹立のための<未来視>系の能力か不明を使い、シュミハザーたちで、俺を試し、俺ならば吸収するだろうと読んで寄越したんだろうとは推測しているが……。
キサラも俺と同意見か、ジッとアドゥムブラリとホフマンを見てから俺を見て、微かに頷いていた。
ま、それは後回し――。
〝知記憶の王樹の器〟を取り出した。
早速、皆に〝知記憶の王樹の器〟を飲んでもらい、記憶の共有を行った。
更に<暗黒魔力>を皆に見せつつ――。
闇神ハデスのステッキの経緯を説明――。
<闇神ハデスの愛>を使用し、闇神ハデス様を顕現させた。
「「「「「「おおおお」」」」」」
「闇神のステッキから本当に闇神ハデス様がぁぁぁ」
「すげぇ」
「「なんてことだ……」」
皆を驚愕させる。
聖鎖騎士団団長ハミヤも驚愕。
聖鎖騎士団の重騎士たちの中には気を失う者が出た。
パーミロ司祭とキンライ助祭は憮然としている。
魔族殲滅機関のレングラットとチャンヴァルとケキミラと魔族殲滅機関の二桁の灰銀デュモル・ゲラルド、猛火ラビンラン・ケスファンビン、速滅リヨ・アスシッド、夷剣ヤン・ムエシチオン、刹滅コガ・モザリランザは、動じず。
さすがに経験が豊富か、魔神に諸侯クラスの一部がセラに顕現するのは見たことがあるような印象だ。
そして、闇神ハデス様の自己紹介の後――。
直ぐに闇神ハデス様は元の闇神ハデスのステッキ状態に戻るまま飛来してきた。
先程は相棒の触手が掴んでいたから戻ってこなかったのか。
と、その闇神ハデスのステッキを<握吸>で握りを強めてから、<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>を意識し実行――。
「「「おぉ――」」」
「瞳が朱と銀に光って、あ、本当にステッキの穂先が変化しました」
「それが銀朱螺旋槍ディヴァニティ、闇神ハデスのステッキの真の姿!」
「おう――」
「なるほど、闇神ハデスのステッキと【闇の教団ハデス】の定紋の真価が、今の螺旋状の<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>のなのですね――」
メルの言葉に頷いた。
一通り説明を終えたところで<光邪ノ使徒>イモリザが〝知記憶の王樹の器〟を飲み終えて返してきた。
〝知記憶の王樹の器〟は聖鎖騎士団とレングラットとチャンヴァルとケキミラたちとシキの部下の一部など、この場に居る全員が飲んだ。
そのイモリザから、
「凄すぎる~ヴァルアの騎魔獣のスタチュの真価が見たいです。後、使者様の<暗黒魔力>は、<魔神式・吸魔指眼>と相性が良さそうに思えます。魔杖レイズに、腰ベルトの無数の魔杖を活かした魔王versionの使者様も素敵だと思います!」
その発言に、頷いた。
「ふふ、闇神ハデスのステッキの銀朱螺旋槍ディヴァニティは<悪夢・烈雷抜穿>にも合いそうです」
ヘルメの言葉に頷きつつヴァルアの騎魔獣のスタチュに魔力を込めた。
スタチュは一瞬でヴァルアの騎魔獣に成長した刹那――。
背後に見知った魔素を察知。ミライだ。
構わず、上級:闇属性の《闇環》と王級:闇属性の《暗黒銀ノ大剣》を取り出して、
「あ、覚えるのね」
「おう、皆、魔法書を入手したから俺が覚えていいかな」
「「はい!」」
「うん、はい!」
「ご主人様なら使いこなせるはず!」
「シュウヤ様なら魔法を活かした戦いも上手いですから、賛成です。魔界ではノノに覚えてもらいましたが、今回の王級は中々有能な予感があります」
キサラの言葉に頷いた。
《闇環》と《暗黒銀ノ大剣》の魔法書を読む――。
と、一瞬で二つの魔法を覚えた。二つの魔法書は塵となって消える。
よし!
続きは明日。
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