千五百八十五話 闇神ハデス様の顕現と<闇神螺旋槍・一式>
今の念話は闇神ハデス様か。
「ンンン――」
『闇神ハデスのステッキの中に宿ったのですか?』
『はい、宿りました。しかし、直に闇神ハデスのステッキと一体化を強めます。そうなると念話はあまり出来なくなります。しかし、シュウヤ様が獲得した<闇神ハデスの愛>を使用するとシュウヤ様が魔力を消費する代わりに私が女体化。顕現召喚が可能と成ります』
『『『おぉ~』』』
『……闇神ハデス様の顕現とは驚きです、心が奮えます』
『驚き桃の木山椒の木! 妾たちにも闇神ハデスの可愛いらしい念話を感じたと思ったら女体化が可能とは!』
『眷属の方々ですね、始めまして闇神ハデスの魂の欠片です。はい、その女体化ですが、身体能力も低くスキルも限定的、召喚獣や精霊よりも大きく劣ります。あ、でも、シュウヤ様の称号や戦闘職業は高度だと思いますから……少しは戦えるかもです。闇魔法で可愛いロロちゃんをフォローできるかも知れません。倒されたら、闇神ハデスのステッキに戻るだけですから囮代わりに使って頂く方法のほうが良いかもです』
『『『おぉ』』』
『器様の戦いのバリエーションがまた増えたことになります』
『うむ、器の戦闘センスは極めて高いからな』
『瞬間瞬間の戦闘では、動き思考が可能な囮戦術は非常に効果的です!』
沙・羅・貂に完全に同意。
そして、闇神ハデス様とは、ヘルメとグイヴァが両目に納まった状態でも念話で会話が可能。
が、闇神ハデスのステッキと完全に一体化すると念話はあまりできなくなるのか。
皆に、
『<闇神ハデスの愛>を使うのは外に出てから使います。エヴァたちも驚くはず』
『ふふ、皆も驚くでしょう。炎極ベルハラディの驚く顔は、バフラ・マフディも見たかったはずです……』
頷いた。闇神ハデス様に、
『背後の扉は閉じてしまったんですが、どうやって外に出たらいいんですか?』
『シュウヤ様が入ってきた出入り口の壁に手を当ててください。手を触れたら自然と外側に嵌まっていた【闇の教団ハデス】の定紋が外れ扉が開きます』
『外れて、分かりました』
『ええ、【闇の教団ハデス】の定紋は重要なのですよ』
闇神ハデスのステッキを見ながら、
『定紋が、ただの鍵で、紋所のような印象だったのですが、重要なのですか?』
『はい、単なる【闇の教団ハデス】の盟主の紋章ではありません』
へぇ、八角形だったから<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>のように大きくなれば盾にもなるのかな? と考えつつ、
『重要とは、どの程度か、教えてください』
『ふふ、シュウヤ様が習得したであろう<暗黒魔力>を意識し、定紋に用いれば、その定紋がシュウヤ様が攻撃した対象を自動で追尾し、遠距離から攻撃を開始します。定紋の硬度は非常に高く、破壊されても再生するのです。思念操作も可能で、自然と周囲に漂いながら付いていきます。更に、【闇の教団ハデス】の定紋に<暗黒魔力>、を注げば、<闇の御使い>などの戦闘職業を得ることができるでしょう。そして、<間歇ノ闇花>の恒久スキルを獲得すれば、本人のみ闇属性の<言語魔法>を無詠唱で、<紋章魔法>を簡略化して使うことができるようになります』
『『おお』』
『驚いた』
『はい、器様は異界の館で魔剣、魔槍、衣服類、魔法ギルドのユニフォーム、逆さの十字架、そして<言語魔法>の闇の魔法書の上級:闇属性の闇環と、王級:闇属性の暗黒銀ノ大剣を手に入れました!』
『はい!』
『新しい魔法は器が習得すべきです』
『はい、<間歇ノ闇花>の恒久スキルを習得すれば、無詠唱が可能とは素晴らしいですね、闇神ハデス様の囮もですが、多様な戦術が展開できます』
興奮気味に念話を繰り返す沙・羅・貂たち。
そこで、黒猫を凝視、破壊した神像の欠片に猫パンチを行い、飛ばした欠片を追いかける遊びを繰り返している。食べている?
その黒猫を見ながら、
「【闇の教団ハデス】のロロ盟主? 外に出ようか」
黒猫は耳をピクッと動かし、「ンン」と喉声を発して、アイスホッケー遊びを止めた。
「ンン、にゃ、にゃおぉ~」
嬉しそうに返事をしてから、出入り口にトコトコと歩き始める。
俺も移動し、扉に手を当てると直ぐに左右に開いた。
扉から外れて宙に浮いていた、【闇の教団ハデス】の定紋が飛来して頭上の回りを周り始める。
二十四面体のような印象だ。
「「「「おぉ」」」」」
「キター! 出てきた!」
「ご主人様とロロ様お帰りなさい! 闇神ハデス様の幻影が出現したんでしょうか!」
「盟主のみで、神秘的な現象が起きる儀式ですから、何かがあったはずですわ!」
「はい、ハデス様と邂逅でしょう」
「奥の間は狭間が薄かったです」
「マスター、闇神ハデス様と会ったの?」
「盟主だけが修業が可能な部屋だったとか?」
「シュウヤの頭部を周り始めた定紋と闇神ハデスのステッキに内包されている魔力が増えているような」
皆の言葉に頷きながら、
「あぁ、闇神ハデス様と邂逅を果たし、<闇神ハデスの愛>と<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>のスキル獲得。<暗黒魔力>と<コード・ディヴァニティ>恒久スキルを獲得できた」
「「「「「「おぉぉ」」」」」」
外に居た魔人と魔族たちも【闇の教団ハデス】の施設、闇の聖堂のような建物に入ってきたのか。
「ンンン――」
黒猫が興奮し、黒猫のまま姿を大きくさせた。
「わっ、ロロちゃんのビッグサイズとか、破壊力ありすぎ!!!」
レベッカが興奮して大きい黒猫に抱きついていく。
太股と腹の毛のモフモフ具合が半端ないと分かるようにレベッカの体が黒い毛に包まれて見えなくなった。
「うふふ~まさに黒の預言者よ!」
と、興奮しているレベッカが、わけのわからんことを吼えている。
黒い毛だから、黒の預言者か?
見ていたキュベラスは『え?』と、俺を見てきたが、ヴィーネとキサラとユイとクナとミスティたちが笑っていたから冗談だと理解し、笑みを浮かべていた。
この【闇の教団ハデス】の施設の闇の聖堂に次々と、外から魔人たちが入ってきた。
やや遅れて、ビュシエとシュレも入ってくる
そして、ユイたちの眷属たちと、魔人キュベラス、炎極ベルハラディ、飛影ラヒオク、豪脚剣デル、闇速レスールの【闇の教団ハデス】の最高幹部たちと会話をしなあら新しくやってきた魔人たちと会釈していく。
多数の声が教会やモスク的な建物の内部に響きまくった。キュベラスが、皆に説明をしていくから、また騒ぎが起きる。
声の振動で共鳴現象が起きている?
寺の鐘の音も癒やしの効果があると言われていた。
周波数は、水や細胞に好影響を与える。
水は様々に記憶するからな。
癒やしの効果が得られるとかありそうだ。
さて、回っている【闇の教団ハデス】の定紋を掴む。
早速、
「皆、<暗黒魔力>を試す――」
「ちょ、見るから!」
「ンン、にゃ~」
相棒に抱きついていたレベッカがやってくる。
【闇の教団ハデス】の定紋に<暗黒魔力>を使用した直後――。
ピコーン※様々なスキル獲得により<闇の御使い>の戦闘職業を獲得※
定紋が黒曜石のように輝いた。
ピコーン※<間歇ノ闇花>※恒久スキル獲得※
――良し、これで、闇属性の魔法を無詠唱で使える。試そう、狙いは皆が居ない左側――。
闇属性の《闇壁》を意識、発動させる――。
狙った場所に闇壁が生成された。
「「え?」」
「「「おぉ」」」
「シュウヤ、今のは闇壁の魔法よね」
「<言語魔法>の無詠唱!?」
「おう、そうだ。【闇の教団ハデス】の定紋に<<暗黒魔力>を込めたら、<闇の御使い>の戦闘職業を獲得し<間歇ノ闇花>を得られた。この<間歇ノ闇花>は、闇属性の<言語魔法>の無詠唱と紋章魔法の簡略化が可能なんだ。総じて闇神ハデス様の恩寵と捉えていいだろう」
「「「驚き!」」」
「「凄い!」」
「……闇属性の魔法書は、つい先程得たばかり!」
「はい、闇の魔法書の上級:闇属性の闇環と王級:闇属性の暗黒銀ノ大剣!」
「シュウヤが覚えるべきよ」
「「はい」」
「ふふ、ご主人様がまた進化なされた!」
「おう、では、魔法書を読む前に、まだ試すことがある」
「え?」
「今度は何?」
闇神ハデスのステッキを掲げ、
「この闇神ハデスのステッキに関することだ」
「今言ってた、<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>?」
レベッカの言葉に、
「まぁ見てろ」
と、言いながら、<闇神ハデスの愛>のスキルを意識し、発動させた直後――闇神ハデスのステッキが俺の魔力を吸い取ってくる。
と、『あんっ』と感じたハデス様が宿る闇神ハデスのステッキが一気に女性と化して目の前に着地――。
「「「「「「おぉ」」」」」」
「「「えぇ」」」
『『『『『おぉ~』』』』』
「うあぁ」
「にゃおぉ~」
本当に闇神ハデス様が女性の姿になった。
シースルーの下着に漆黒の衣を纏い、その魅惑的なスタイルが露わになっている。
足はわずかに透けて見えていた。元の大きさに戻った黒猫が、おそるおそる、その透けた足の匂いを嗅いでいた。
【闇の教団ハデス】の最高幹部たちは、言葉を失って絶句中。
先にキュベラスが『ハッ』と、驚いた表情を浮かべてから片足の頭で地面を付く。
炎極ベルハラディ、闇速レスール、豪脚剣デル、飛影ラヒオクなどが続いた。
【闇の教団ハデス】の面々は倒れる者が続出した。
セラに神が降臨は狭間が存在する以上、得ないからな。
ユイたちに、
「<闇神ハデスの愛>と<暗黒魔力>と<コード・ディヴァニティ>の恒久スキルやスキルがあると、闇神ハデスのステッキの変化が可能となった」
「うん、驚き、神様をセラで出現させるって相当だと思うんだけど」
「うん、凄すぎて顎が外れそうになったわよ」
「にゃ~」
「はい、精霊様のように戦える?」
と、ヴィーネの言葉に頷いてから
「ヘルメたちのようには強くはないようだ」
「そうなのですね」
ヴィーネの言葉の後、闇神ハデス様に、
「聞いていましたが、本当に、<闇神ハデスの愛>で、ハデス様の顕現が可能とは驚きました」
「ふふ、先程も言いましたが、闇属性の魔法を使える程度であまり戦えません。時間も、残り数分です」
数分だけの女体化か。
「数分だけ人型に成れるスキルが、<闇神ハデスの愛>なのですね」
「はい、あくまでも一時的、本体は魔界セブドラの【闇神リヴォグラフの絶魔殿】で、捕らわれたままですから、シュウヤ様のお陰で、だいぶ楽になりましたが……」
「……闇神リヴォグラフは?」
「父の闇神鎖などは、おいそれと使えないので、暫くは大丈夫です。痛みからだいぶ解放されています、感謝ですよ、ふふ」
微笑が素敵だ。
「そうでしたか」
「はい、そして、他にも、私の魂の欠片を持つ父の大眷属が居るはずです。その者たちに近付けば闇神ハデスのステッキが反応します。その者たちを倒してくだされば闇神ハデスのステッキに私の魂の欠片が吸収される。闇神ハデスのステッキと<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>の性能が上昇します。そして……」
魂の欠片を持つ闇神リヴォグラフの部下たちか。
すると、闇神ハデス様は何かを言おうとしていたようだが、ふらついて、
「……あぁ……意識がディヴァニティと化してきました……では、シュウヤ様と皆……ここまです、キュベラスと炎極ベルハラディたち……シュウヤ様に従うのですよ? そして、シュウヤ様、いずれは……魔界騎士として【闇神リヴォグラフの絶魔殿】に居る私の本体を助けにきてくださいね……』
と発言した闇神ハデス様は闇神ステッキに変化。
闇神ハデスのステッキは地面に落下したが、<暗黒魔力>を右腕に使うと、右手に戻ってきた。
「おぉ、<握吸>のような使い方も!」
キサラの言葉に頷いた。
闇神ハデスのステッキに<暗黒魔力>を込めつつ風槍流『風軍』で前進――。
「皆、少し演舞を試す――」
「「うん!」」
「ふふ、楽しみです」
「最近はシュウヤの動きが目で追えるからね!」
レベッカの成長は頼もしい。
と、膨大な<暗黒魔力>を闇神ハデスのステッキに込めながら風槍流『案山子通し』を行う。
首後ろに闇神ハデスのステッキを通し両手を闇神ステッキに乗せながら横回転――。
槍使いたちに囲まれたことを想定し――。
左足を前に右足を後部に、半身を維持する。
二人の槍使いが繰り出した<刺突>を避けた。
更に右足を前に左足を後部に動かしながら爪先半回転を行ってから<コード・ディヴァニティ>を意識発動しつつ<血龍仙閃>――。
横に振るった闇神ハデスのステッキで数人の槍使いの首を刎ねた。と、想定しつつ斜め前にステップを踏んで、相手の<血龍仙閃>のような一閃を避けた直後に避けた直後に<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>を意識――。
闇神ハデスのステッキの先端から銀と朱が螺旋している穂先が伸びた。
「――螺旋魔槍と成った!」
キサラの言葉に頷きながら横から近付いた槍使いに<神聖・光雷衝>を発動。
怯んだところに<魔仙萼穿>を槍使いに喰らわせる――。
<銀朱螺旋槍ディヴァニティ>を発動――。
「「「きゃぁ」」」
「格好良すぎー」
レベッカたちから、歓声が上がる。
俺と闇神ハデスのステッキの銀朱螺旋槍ディヴァニティから膨大な魔力が吹き荒れながら直進。
右腕ごと前に出ている銀朱螺旋槍ディヴァニティの穂先が空間をえぐるような勢いのまま次元速度で聖堂の右奥に到達し、銀朱螺旋槍ディヴァニティの穂先が壁を突き刺しそうになったところで止まる。
ピコーン※<闇神螺旋槍・一式>スキル獲得※
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。
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