千五百八十 【闇の教団ハデス】の施設へ
魔人レグ・ソールトとコジロウと光魔夜叉将軍ゼメタスとアドモスがクリドススたちから離れて浮上しては低空を飛翔しながら寄ってくる。
「にゃ~」
「ロロ殿様と閣下! 私たちに新たな仕事を命じてください!」
「ロロ殿様と閣下~我らもお供しますぞ」
ゼメタスとアドモスの言葉に頷いた。
星屑のマントが煌めいては靡いている。
兜の前立ては旭日のごとく輝いていた。
そして、厳つい漆黒と紅蓮の甲冑の上半身から下半身にかけて月虹のグラデーションがかかり足下にいくほど暗くなっている。
<ルシヴァル紋章樹ノ纏>を実行しているんだろう。
「「「「おぉ」」」」
「ワン!」
「すてき~~」
「輝きが増している?」
「宗教街で武神と崇められていたようだからな……」
「「「光魔夜叉将軍……」」」
「エンチャント~」
「グモウ~」
「にゃァ」
「にゃぁ~」
「にゃォ~」
「プボプボォ」
シャルドネとキーキとサメとファルス殿下とリヒターと【ゴリアテの戦旗】に――。
アンナとイザベルとクリチワにミミたちと精神感応繊維魔装甲を着たエトアと――。
紺碧の百魔族のアジュールと【星の集い】と【シャファの雷】と【海王ホーネット】のアドリアンヌとファジアルとホワインとギュルブンとナキュとブルーたちと――。
【ベルガット】のディノとメリッサとポポブムに黄黒猫と白黒猫と銀灰猫と銀白狼と子鹿たち――。
<従者長>のフーとブッチとベリーズとサザーとサラとルシェル――。
<筆頭従者長>アドゥムブラリ――。
エマサッドとラファエルとラムーとボンとザガとルビアたちと――。
フランとシャルドネが呼び寄せた【幽魔の門】の幽剣のベイラーと、ミレイヴァルと、血のクリスタルをキッカに渡しているエラリエースと、その<筆頭従者長>キッカと、キッカに【迷宮の宿り月】の状況と冒険者ギルドマスターとクラブアイスのことを聞いていたシャナと、それに付いて何かを語っていた<筆頭従者長>ヴェロニカと、<筆頭従者>ベネットと【天凜の月】の副長で<筆頭従者>メルたちと――。
聖鎖騎士団の重騎士とパーミロ司祭とキンライ助祭たちと――。
魔族殲滅機関の隊員たちと――。
コレクターたちと――。
ヴァルマスク家たちと――。
それぞれから、どよめきが起きていた。
改めて凄い面子だが……。
眷属たちはゼメタスとアドモスに驚きというより楽しんでいる声が多い。
が、魔族殲滅機関の隊員たちには刺激が多すぎるか。
武器に手を置く者が続出した。
一桁のレングラットとチャンヴァルとケキミラは場慣れ感だ。
二桁だが灰銀デュモル・ゲラルドも慣れている印象で、かなり渋いおっさんだ。
名前も良い。
リヨ・アスシッドとコガ・モザリランザの美女組は口に両手を当てて驚きまくっている。
ゼメタスとアドモスは、俺たちよりも早くここに来ていたから、皆には鉢合わせているとは思うがゼメタスとアドモスは遠慮していたのかな。
体から機関車の吹き出る蒸気のような黒と赤の魔力噴射はしなかったのだろうか。
あまり派手なことをしてなかったんだろう。
と、聖鎖騎士団団長ハミヤが、友達のリヨとコガに何かを語っていた。
ハミヤもゼメタスとアドモスには慣れていないと思うが、笑顔で二人に『大丈夫だから』と語りかけて落ち着かせているようだ。聖鎖騎士団団長らしい。
が、正直怯えるならイヒアルスとドマダイのほうが、どう考えてもびびると思うが……。
イヒアルスは、頭が片腕の異界の軍事貴族が付いて、両腕が魔剣状態だ。
ドマダイはどう考えても人族ではない。
頭突きの特殊攻撃を持っていそうな大きい岩石坊主だしな。
魔人キュベラスの部下というカテゴリーで一括りにされているからか、魑魅魍魎なら遭遇しまくっているからか、あまり驚いていなかったことは少し意外だ。
どちらかと言えば、キュベラスのほうが驚いていた。
そして、ゼメタスとアドモスと魔人レグ・ソールトとコジロウは、俺たちの前で肩膝の頭で石畳を突き頭を下げた。
ゼメタスとアドモスは、
「――閣下、イヴァンカ様とルアラン様から『ゼメタスとアドモス様、宗教街の守りをありがとうございます。民たちは、新たな武神ゼメタスとアドモス様と慕って信奉者も出たようですが、戦神教団と義遊暗行師会と雷神会など、各神界セウロス側の武闘派の援軍が到着し、もっと数が増えてきています。ですのでシュウヤ様の下に戻られたほうが色々と良いかと思います。シュウヤ様によろしくお伝えください、近いうちに武術街のお屋敷に向かいます』と言われました」
「はい!」
と、語る。武闘派か、ゼメタスとアドモスの魔界騎士風の出で立ちから、戦いを仕掛けてくる神界の武闘派たちが居る可能性からの判断だろう。
武神とあるから、信者が取られて、お布施が減るみたいな、浅はかな考えのまま邪魔者を排除しようとする神界側の勢力も居るかも知れないな。
そして、イヴァンカとルアランさんか。
雷神ラ・ドオラ神殿の大神官ルアランさんは地下オークション第二部には出ないのだろうか。雷神ラ・ドオラ神殿には向かいたいところ。
雷式ラ・ドオラに何かが起こるかも知れない。
そんなことを考えながら、
「……了解した、二人にコジロウたちも立ってくれ、皆と共に宗教街を守ってくれてありがとう!」
と、ゼメタスとアドモスに寄って手を差し伸べる。
「「ハッ!」」
二人の手を握って立ってもらった。
ゼメタスとアドモスも頑丈な掌で、ごついが、なんか温かいから嬉しい。
「「おぉ……閣下の温かい心を感じる」」
と、二人もハモりながら語る。
眼窩の炎が揺らぎ、小さい炎を周囲に散らしていた。
炎のうれし涙? 面白いが感動だ。
そのゼメタスとアドモスの忠誠心と熱い心を直に感じながら、
「ゼメタスとアドモス、魔界に戻って自分の領地を頼む。だが、緊急時には毎度のごとく二人を呼ぶからな」
「「――承知!」」
ゼメタスとアドモスは元気に返事をしては黒と赤の魔力を噴出させると、消えた。
魔界セブドラに転移は前よりも高速に行えていると分かる。
黒豹が、「ンン」と喉声を発した。
ゼメタスとアドモスの頭部に触手を当てていたが、ゼメタスとアドモスが消えたことで下に触手をスカらせている。
そして、立ち上がっていた魔人レグ・ソールトとコジロウ・オガミに、
「レグとコジロウには、引き続きファルス殿下の用心棒を頼む」
「「はい!」」
正直、ここに居るメンバーは強者ばかりだから魔人レグ・ソールトとコジロウの護衛は必要ないかも知れないが……。
すると黒豹が触手を体に引き込みながら俺を見上げて、
「ンン、にゃ、にゃお~」
と、語るように鳴きながら頭部をクイクイと右の大門のほうに向けて前後させた。
「おう、【闇の教団ハデス】の施設には、キュベラスに案内してもらうが、まずは変身を頼む」
「にゃ~」
黒豹は頷くと、大門のほうに移動しながら大きい黒虎に変化を遂げた。
神獣の黒虎versionに、
「「「「出たァァ」」」」
「「「おぉぉ~」」」
「エンチャント!!!」
皆から歓声が上がる。
巨大な黒虎ロロディーヌは尻尾を上げて、大門に頭部を向ける。
大門の屋上に造り上げた魔塔のような建物に頬をこすり当てていく。
と、中に居た【白鯨の血長耳】と【天凜の月】の若い衆たちをびびらせる。
「ンン、にゃご~」
と、【白鯨の血長耳】と【天凜の月】の人員たちに気合い声を発してから「――ハックシュン!!!」と、突然な巨大なクシャミを行った。
大門の屋上に居た【白鯨の血長耳】と【天凜の月】の全員が黒虎の鼻水を浴びていた。
「……」
と、同時に体から伸ばした触手が、俺たちの周りに居る皆の体に絡まっていく。
「きゃ」
「あっ」
「逆に掴む!」
「ふふ――」
キサラとヴィーネとユイとレベッカは、
「「あれ~」」
と言うように相棒の頭部へと瞬時に運ばれていた。
やや遅れてクナとミスティとラムーとアドリアンヌとファーミリアとシキもやってきた。
フィナプルスとベニーとカズンと<光魔ノ秘剣・マルア>のマルアとゼッタと<光邪ノ使徒>のイモリザはここにはいない。【迷宮の宿り月】に居るルル&ララとロバートと元暗殺チームのトオたちと共に【天凜の月】の維持を兼ねた警邏かな。
普段では起こりえない地下オークション中の戦乱だからな、こういう時こそ【天凜の月】の活動はサボれない。普段はサボれる期間だから悪いとは思うが、【天凜の月】の若い衆たちにもがんばってもらおうか。
そこで、傍に居るシュレと沙・羅・貂たちに左手を差し向け、
「――シュレは左手に戻ってくれ。そして、沙・羅・貂たちも宗教街の守りをありがとう。左手に戻ってくれ」
「ハッ!」
「うむ! シークレットウェポンの運用だな!」
「「はい!」」
シュレゴス・ロードと沙・羅・貂たちは一瞬で俺の左手の掌に刻まれている運命線のような傷と印に吸収されるように戻ってくれた。
すると、クナが、
「シュウヤ様、私も【闇の教団ハデス】の施設に行きます、そして、エルフの見た目のハティア・バーミリオン魔導生命体は地下オークション後に調べるのですよね?」
「その予定だ、アイテムボックスに納められて良かったよ」
皆が頷いた。アドリアンヌはニヤリとしている。
地下オークション第一部に出す前にハティア・バーミリオン魔導生命体がアイテムボックスに入ることは確認済みかな。
ミスティが、
「うん、調べるのは当然として【闇の教団ハデス】の施設で何かを得るのは良いけど、地下オークションの第二部に間に合う?」
「そろそろ夕方だが間に合わせる。施設もそんな大屋敷でもないだろうし、同じ迷宮都市ペルネーテ内だからなんとかなるはずだ」
と、発言するとキュベラスたちは頷いていた。
更に、メルが、
「総長、普段ないことの連続ですからカザネたち【アシュラー教団】も地下オークション第二部の開始時間をわたしたちの活動に合わせて延ばすと思いますよ、ミライは総長に惚れているようですし? 夜の範疇なら大丈夫、余裕のよっちゃんだと思います」
メルの言葉に皆が頷いた。
よっちゃんって、だれの言い回しからの影響だよ? と、ツッコミは入れない。
メルは、冗談を言ったつもりか、両手の人差し指と親指を合わせるポーズを繰り出していた。
思わず笑う。そこでキュベラスを見た。
「【闇の教団ハデス】の施設は港街近くにあります。最悪、戦闘があっても夜までには終わると思いますよ、敷地も広くないです。目立ったら【天凜の月】の縄張りで、即座に潰れますからね」
そのキュベラスの語りに、庭に居る【天凜の月】の副長は勿論、関わるメンバーたちが頷いていた。
「あぁ、そうだな、分かった、なら余裕か」
「【闇の教団ハデス】の施設……入ったことはありませんので、非常に興味深い」
シキの言葉にファーミリアとアドリアンヌも頷き、
「そうですわね」
「はい、私もないですわ、しかし、敵方の要人だったキュベラスをこうして間近で見るようになるとは、本当に展開が読めません」
「たしかに、それを言ったら、私たちも一つになるとは考えもしませんでした」
「「「えぇ」」」
シキとアドリアンヌとファーミリアが語り頷き合う。
キュベラスは、
「ふふ、皆様、では、行きますよ、ロロ様も準備はよろしくて?」
「にゃおぉ~」
と黒虎はキュベラスたちの体にも触手を向けた。
俺にも飛来――。
それを掴んで、一気にヴィーネたちが居る相棒の頭部に乗った。
「ロロ、進んでいいぞ」
「にゃ~」
黒虎は通りに出た。
黒虎の触手に腰が絡んだまま前方に浮いているキュベラスは【闇の教団ハデス】の施設にある方角に腕を差して、
「此方です――」
「ンン――」
黒虎は通りを行き交う方々の邪魔に成らないように跳躍し――。
武術街を囲っていた魔法防御のバリアの膜を跳び越えて、宙空で加速すると、直ぐに港街に到着――。
キュベラスが慌てて腕の方向を真下に変えて、
「は、早い! あ、斜め右の壁が囲う、一軒家風が【闇の教団ハデス】の施設です」
と、本当にあった。左側が蒼色の建材で建てられてある。
「にゃご!」
と皆の体に触手を絡めた黒虎は次々に降ろしていく。
――黒虎の触手から手を離し、解放されたキュベラスを視界に捉えながら、その【闇の教団ハデス】の建物に近づいた。
続きは明日。HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20巻」発売中。
コミック版1巻~3巻発売中。




