千五百七十五話 <銀河闇騎士の絆>と魔杖レイズと魔杖ハキアヌス
深いダークのマインドをも鍛えろ、か……
アオロ・トルーマーさんは<銀河騎士の絆>の同士だ。
戦闘型デバイスから幻影の精神体が現れるが既に肉体は滅んでいるかもしれない偉大なマスター、そのアオロ・トルーマーさんは魔神パルパディに対して怒りを抱いている。
そして<銀河闇騎士の絆>は<パディラの証し>として時魔神パルパディが俺を認めた証しだろう。それは同時にアオロ・トルーマーさんたち銀河騎士の敵側のダークのマインドを持つ銀河騎士たちの最上位の銀河闇騎士と同じ側面を持つ存在ということになる。
しかし、アオロさんは俺が<パディラの証し>を得るきっかけとなった闇に輝く紋章入りのバッジに魔力を込めることを止めなかった。そう、それはまるで魔力をバッジに送ることは最初から織り込み済みで既に計画に含まれているように感じだった。
『須く弱き者を尊ぶ、かの者たちの守護者の証し』の<銀河騎士の絆>は<銀河闇騎士の絆>と、光魔ルシヴァルの場合は相反しないということか。
また、それが俺のことを黄金比を齎せる者と呼ぶ理由なのだと分かる。
闇に輝く紋章入りのバッジから魔線が真上に伸びていた。
この魔線に触れたら転移をするかもだ。
過去、戦闘型デイバスから得られた報酬の中にフォド・ワン・プリズムバッチがあったが、そのバッジに魔力を込めたら惑星セラの何処かに不時着しているだろうETA端末ロッドを有したフォド・ワン・XーETAオービタルファイターの前に転移すると聞いている。
だから、この闇に輝く紋章入りのバッジから出ている魔線に触れたら闇騎士用のETA端末ロッドを有したオービタルファイターのような銀河帝国の特殊宇宙船の下に転移するかも知れない? 遙か遠い銀河の彼方から……アウトバウンドプロジェクトの一環で惑星セラにやってきたゼン・ゼアゼロを密かに追跡していた銀河闇騎士が居るかもだ。
しかし、今俺たちが居る異界の館〟は【幻瞑暗黒回廊】の内部に存在する。この闇に輝く紋章入りのバッジから出ている魔線に今触れたとしても転移はしないかもな、と、考えていると――。
カーボン系の戦闘装束と魔杖レイズと魔杖ハキアヌスと闇のクリスタルと紅色のクリスタルとオレンジ色のクリスタルの数十個が、飛来し、目の前に浮かぶ。
「あの紅極魔水晶は……」
と、キュベラスは紅色のクリスタルのことを指摘してきた。
そのことではなく、とりあえず皆に、
「闇に輝く紋章のバッジに魔力を込めたら<銀河闇騎士の絆>を獲得できた。これは時魔神パルパディに闇騎士の一員として認められた<パディラの証し>だろう」
「「「「おぉ」」」」
「閣下は<銀河騎士の絆>を持つ。それが光という意味ならば<銀河闇騎士の絆>の獲得も納得できます」
ヘルメの言葉に頷いた。
「そうだな、闇と光の絆を得たということだ」
<珠瑠の花>で拘束されている女性は無言のままだ。
「ん、<銀河騎士の絆>と<銀河闇騎士の絆>は、光と闇と時空属を持つ光魔ルシヴァルだから獲得できた。ヴィーネも言ってたけど<光闇の奔流>は黄金比でもある」
「たしかに」
ヴィーネが、
「<銀河闇騎士の絆>の獲得おめでとうございます。いずれはナ・パーム統合軍惑星同盟と戦っているだろう銀河帝国の<銀河闇騎士>を仲間にすることも可能になったということでしょうか」
頷いてから、
「可能だろう。だが、惑星セラは、どちらの勢力にも遠い星系だからな。当分先かもだ」
「はい、しかし、ビーサとハーミットの件もありますから、案外……」
たしかに……。
ヴィーネの言葉に皆が頷いている。
「……あぁ、惑星セラのどこかに銀河帝国とナ・パーム統合軍惑星同盟の人員が居るのかも知れないな」
「はい」
ヴィーネは返事をしつつ、戦闘型デイバスの上に小さく浮かんでいるアクセルマギナを見た。
アクセルマギナは俺たちに敬礼をしてくれる。
宇宙的なBGMが良い。
「闇も光に転化させることも可能ってことよ。だから、わたしたちも黄金比と中庸が大事ってこと」
ヴェロニカの言葉に皆が頷く。
そして、
「前にも話をしたが、光魔ルシヴァルの宗主の俺が、恒久スキルを得たということは、血道と同じく、皆も恩恵を得られることでもある。そして、ビーサが銀河戦士だったように、皆も銀河戦士であり銀河闇戦士ってことだ」
「「うん」」
「「「はい」」」
「なるほど~」
エヴァたちは納得。
その皆に、
「先程、<銀河闇騎士の絆>を得た時、アオロ・トルーマーの幻影も出現したんだ。そして、アオロ・トルーマーは俺に向け、優しく……〝優しき愛の水の受容性を持つ選ばれし銀河騎士よ、深いダークのマインドをも鍛えるがいい〟と念話で気持ちを伝えてくれたんだ、嬉しかった」
と、<銀河闇騎士の絆>を獲得した直後に聞こえてきたアオロ・トルーマーさんの念話を伝えた。
「ふふ、幻影のアオロさんは時魔神パルパディの闇の深淵と時空の銀河闇騎士と、その<パディラの証し>に対して怒っていたようだけど、認めてくれていたのね」
ユイの言葉だ、皆が頷く。レベッカも、
「うん、時魔神パルパディたちとは、争っているようだけど、闇を完全に否定はしていない」
「ん」
「それに、時魔神パルパディに立ち向かって、ムラサメブレード・改のようなエネルギー刃を振るってくれた。実際に時魔神パルパディの幻影を退けて空間を元に戻していたし、凄かったわ。あれは精神のエネルギー刃が出ていたのかも知れない」
精神のエネルギー刃か。たしかにそんな印象ではあった。
「ん、<超能力精神>のような、あ、銀河八天狗流のようなサイキック剣術の一つをアオロさんは使用していた? コジロウは目に見えない物を斬ると言ってた」
銀河八天狗流か。
エヴァは<超翼剣・間燕>を覚えてくれていた。
「あぁ、言ってたなぁ……言い得て妙な部分もあるいとは思うが、サイキック剣術も結構多彩だからな」
ムラサメブレード・改に進化した際に<超翼剣・間燕>を得た。
あの時、幽体の黒髪の銀河騎士と重なった。
そして『超翼ヲ、延バシ、間断ナク、銀河騎士ヲ、斬ル』と念話を得ながら体が自然と動き<超翼剣・間燕>を得られたんだった。
あの時に、<超翼剣・間燕>を伝授してくれた銀河騎士のマスターは日本人だ。
※超翼剣・間燕※
※超翼剣流技術系統:上位亜種斬り※
※<超能力精神>と<銀河騎士の絆>が必須※
※古の銀河騎士マスターの一人、ホウゲン・キイチが編み出した銀河八天狗流を源流とするサイキック剣術※
「光と闇のわたしたち……」
「おう、光と闇は相反しているが表裏一体な面もある。何事も偏らず陰陽太極図のように陰と陽が交わってこその黄金比……とアオロ・トルーマーさんは言いたいのかも知れないな」
「ん、シュウヤの中庸こそが大事と似てる」
「……うん、さっきも言ったけど、総長が教えてくれた中庸! <光闇の奔流>といい愛と水に黄金比もだけど、シュウヤの哲学と色々と合うし、深いわね」
ヴェロニカの言葉に皆が頷いた。
ビュシエは、
「はい、時魔神パルパディに対して怒り覚えていたアオロ・トルーマーですからシュウヤ様が<パディラの証し>を得て、怒っているのかと思いましたが、納得できました。光と闇があるから光魔ルシヴァルの私たち、納得です」
と、語る。納得顔だ。
ファーミリアも、「……光魔ルシヴァルは色々とウラヤマシイ……ルグナド様……」と小声で発言。
ファーミリアはいずれ眷属にしたいところだ。
「では、目の前の戦闘装束と魔杖レイズと魔杖ハキアヌスと、闇のクリスタルと紅色のクリスタルとオレンジ色のクリスタルの数十個だが、もらっていいかな」
「「はい」」
「了解」
「うん」
闇と光の運び手装備を解除。
「――では、魔線は触れず、闇に輝く紋章入りのバッジごと肩の竜頭装甲銀河闇騎士の戦闘装束を吸収していい――」
「ングゥゥィィ!!」
と、漆黒系の戦闘装束と闇に輝く紋章入りのバッジを肩の竜頭の口に押し当てた。肩の竜頭装甲は、己の口から銀河闇騎士の装束と闇に輝く紋章入りのバッジを吸い込んだ。
取り込んだ直後、意識して、<銀河闇騎士の絆>を発動。
一瞬で全身に銀河闇騎士の戦闘装束が展開され、未来的な軍服を思わせる戦闘装束が完成した。左胸に闇に輝く紋章入りのバッジが装着されている。
薄い装甲が渋いが、肉体側は柔らかくできるからかなり動きやすい。
「「「おぉ」」」
「ガトランスフォームとは違って軍服のようで渋くて、悪側っぽい!」
「……ふふ、これはこれで素敵です」
「うん、【天凜の月】の盟主らしさもあるし、いいじゃない」
ヴェロニカの言葉に皆が頷いていた。
「この魔杖レイズと魔杖ハキアヌスも装備しよう――」
と両手に魔杖レイズと魔杖ハキアヌスを掴む。
魔力を通すと、ブゥゥゥンと音がかすかに響く。
レッドとオレンジのエネルギー刃が伸びた。
半身から右に出て、右手に持つ魔杖レイズの袈裟懸けから――。
<飛剣・柊返し>――。
「「おぉ」」
「……シュウヤの剣術もかなり成長しているわね……」
「にゃおぉ――」
真顔のユイに言われると嬉しい。
そして、魔雅大剣を咥えている黒豹ロロディーヌも前方に跳躍をしながら逆袈裟斬りを敢行し、昇竜拳のごとく上昇しては、竜巻旋風脚を思わせる横機動からの魔雅大剣の振り降ろし、体を縦回転に移行させる。そのまま地面を斬るように魔雅大剣を振るって、本当に地面を魔雅大剣で裂いていた。
黒豹も先ほどの戦いでは、魔雅大剣で活躍してくれていた。
感謝だ。と、魔雅大剣を俺に返すように地面に置いてきた。
持っていた魔杖レイズと魔杖ハキアヌスを横の地面に置いてから、魔雅大剣を拾って戦闘型デバイスにしまう。すると「ンン、にゃお」と自慢げに鳴いた相棒の頭部を撫でてから――耳を後頭部に引っ張るように撫でる。相棒の両目が細まり、口の両端も引っ張れて歯牙を晒した。
「「ふふ」」
「ロロちゃんの変顔~」
「はは」
俺も笑った、ロロの顔がエイリアンっぽくなってしまうが、これはこれで可愛くて面白い。と、ロロディーヌで遊ぶのはやめて、魔杖レイズと魔杖ハキアヌスを拾い直してから、ヴィーネとユイにその魔杖を手渡して、
「使えるかどうか試してみ――」
「あ、はい」
「あ、うん――」
と、普通のレッドとオレンジの魔刃をブゥゥンと魔杖レイズと魔杖ハキアヌスの放射口から伸ばしていた。
「「「おぉ」」」
「ん、闇属性だからこそ使える?」
「はい、使えます――」
とヴィーネは横に<黒呪仙炎剣>を振るう。
ユイは<黒呪仙舞剣>を披露してから、振り返って、レガランターラたちに渡していた。
「ふふ、試させていただきます――」
レガランターラとエヴァも魔杖レイズに魔力を通すと、赤のエネルギー魔刃が伸びていた。
レベッカとヴェロニカもビュシエも普通に使えている。
「総長、魔杖ハキアヌスを少し使わせて~?」
「おう、ヴェロニカにあげよう」
「やった~、では皆に! ビーサに連絡しとく――」
とヴェロニカは血文字を送ろうと、血文字が出現しなかった。
「あれ?」
「あぁ、ここは【幻瞑暗黒回廊】の一部だからな」
「【幻瞑暗黒回廊】でも、惑星セラ側に近ければ血文字も可能と思いますが……【幻瞑暗黒回廊】ですからね」
「多数の異世界にも通じている多次元通路で狭間の穴のようなところもある【幻瞑暗黒回廊】ですから、血文字が使えないのも分かる氣がします」
「逆に、それだけ時魔神パルパディが凄いということか」
「確かに……あ、【幻瞑暗黒回廊】は魔界の神々に有利に働く?」
「そうかもです。【幻瞑暗黒回廊】は魔界セブドラ側の次元世界に近いのかもですね」
魔人キュベラスの言葉に皆が頷いた。
ビュシエに元吸血神ルグナド様の<筆頭従者長>の一人の知見を聞くように、
「ビュシエ、時魔神パルパディの名はバーヴァイ地方では、あまり聞かないが、魔界に所領などを持つのかな?」
ビュシエは頷いた。
「放浪魔神との説もありますが、あることはあるようです。魔地図に〝時魔神パルパディの地〟と〝時闇の銀河街パディラ〟などが一定期間載る場合があると聞いたことがあります」
「一定期間か、あることはあるのか」
「はい、しかも魔地図から消え記憶からも消えることもあるようですね。噂が残っているので、記憶が消えていない方も居るのでしょう。また、記憶が共有できるアイテムは色々とありますから」
「なるほど、ありがとうビュシエ」
「ふふ、はい」
レベッカはエヴァたちに、
「でも、吸血神ルグナド様よりも、時魔神パルパディに会うとはまったく考えつかなかった」
「ん、わたしも驚いた」
「はい、闇神リヴォグラフの眷属だと思いました」
「そうそう、【幻瞑暗黒回廊】で起きている【異形のヴォッファン】の軍隊と【魔術総武会】の争いは見えていたしね」
レベッカの言葉に頷いた。
ヴェロニカは、
「ところが、時魔神パルパディだからね。でも、総長は昔から戦闘型デイバスを愛用していたし、総長の記憶を体感すると良く分かるわ。アクセルマギナちゃんとガードナーマリオルスを造り上げたナ・パーム統合軍惑星同盟の魔科学力は古代の黄金都市ムーゴで繁栄した暁の帝国と同じかそれ以上の文明力を持っていると思うし、宇宙船を持つハーミットもいる」
キュベラスたちも驚いている。
そのキュベラスと目が合うと、キュベラスは胸元に手を当て、
「……サケルナートが時魔神パルパディと通じているとは知っていましたが、今、接触してくるとは思いませんでした。銀河闇騎士、パディラガトランスの資格も得るとは、凄すぎる経験です」
「すべてが驚きの連続だぜ、闇神リヴォグラフ大眷属ルキヴェロススは、時魔神パルパディの直の眷属ではないようだが、弟子のような語りようだったからな」
キュベラスとイヒアルスの言葉に皆が頷いた。
レベッカは、
「闇神リヴォグラフ大眷属ルキヴェロススことサケルナートは大物……【幻瞑暗黒回廊】を自由に移動できていた理由にも納得……それが魔法学院ロンベルジュ魔法上級顧問のサケルナートでもあった……怖すぎる……あぁ……わたし、よく生きてた……」
レベッカは魔法学院ロンベルジュの学生時代を思い出しているようだ。そこで、キュベラスたちをチラッと見てから異界の館に視線を向け、
「あの中に、行こうか、異界の軍事貴族の人形が残っているなら回収を急ごう」
「はい!」
「おう!」
「キュベラス様、行きましょう」
「ふむ!」
キュベラスとイヒアルスとドマダイとヒョウガは嬉しそうだ。
その皆と、異界の館の玄関に向かう。
周囲を<闇透纏視>で観察したが、何事もなし。
玄関の前にあった赤い紋用とかすかな漆黒霧を発生させている眼球をモチーフとした石像があったがキュベラスの「――<闇外連斬り>」で三つに斬られて破壊された。
異界の館の玄関口の扉が自然と開く。
皆で中に入った。
廊下はなくいきなりのリビングルーム。
と、中央の長い机には、色々なアイテム類があった。
魔法紋が記された書類に……。
と、キュベラスたちは足早に、リビングルームの左壁の奥にある扉を開けて、次の部屋に行っていた。
「ん、シュウヤ、ここは物色しておくから、キュベラスたちに付いていって」
「はい――」
と、エヴァとヴィーネの言葉に頷いた。
ヴィーネは分厚い書籍を持ち上げている。
タイトルは〝闇神の種類と多彩な属性と関係が深い真の闇〟か。
続きは明日、HJノベルス様から「槍使いと、黒猫。1巻~20巻」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。
 




