千五百六十八話 ユイとヴェロニカとのキスと魔族殲滅機関の隊員と合流
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レガランターラとサラとエヴァとレベッカとファーミリアたちの魔素を察知。
レガランターラが先頭でサラたちは低空を飛翔しながらやってくる。
やや遅れてベリーズとレザライサとビュシエと聖鎖騎士団団長ハミヤと魔族殲滅機関の面々がやってきた。魔人キュベラスを見た皆は驚く。
ドラゴンのヴァルアの騎魔獣は、
「ギュァァ」
と鳴きながら体を動かした。ぐわりと揺れながら正面をレベッカたちに向ける。
正面に居るレガランターラとビュシエは少し驚きつつヴァルアの騎魔獣を見て、
「シュウヤ様、ご無事でなにより!」
「シュウヤ様が、魔人アルケーシスを倒し、魔人キュベラスを仲間にしたとは本当だったのですね」
レガランターラとビュシエの言葉に頷いた。
「そうだ、魔人キュベラスの降伏を受け入れた」
「はい」
「分かりました!」
エヴァはキュベラスの前に移動し、
「ん、キュベラス、わたしはエヴァ。シュウヤの<筆頭従者長>の一人。シュウヤに降伏した理由を聞きたい。いい? 後、手を出してほしい」
「はい」
と、魔人キュベラスは、エヴァに右手を出した。
「ん、シュウヤを裏切るつもりはない?」
「はい、裏切ったら、即殺されますし、二度と戦いたくありません」
「ん、分かった。シュウヤのこと気に入った?」
エヴァは担当直入だな。
魔人キュベラスは、俺をチラッと見ては頬を朱に染めつつ、
「……は、ぃ」
小声で肯定していた。
「ん、分かった、キュベラス、今後ともよろしく」
「はい、よろしくお願いしますわ ふふ」
エヴァも笑みを浮かべてからキュベラスと握手していた。
エヴァは、俺たちが乗っているヴァルアの騎魔獣に寄って、俺に向け、
「ん、キュベラスは大丈夫。クナっぽい」
「だろうな」
「クナと意見が合うなら……」
と、クナの言葉を聞いていた魔人キュベラスは、
「クナ……闇リストのあのクナさんですね」
「知っていたのか」
「えぇ、はい」
クナは武術街の屋敷に居るが、今度聞いてみるか。
「にゃおぉぉぉ~」
「――ロロちゃんも勝利宣言しているし、キュベラスは本当に降伏したようね」
と、レベッカがヴァルアの騎魔獣の角を触りつつ、その角に居る黒猫の鼻先に人差し指を当てている。黒猫はレベッカの白魚のような指先で頬を当て擦り始めていた。
レベッカは、その黒猫の頭部を撫でて片耳を引っ張る遊びをしている。
レベッカは魔人ザープにも挨拶をしてから、
「シュウヤ、エヴァが聞いて安心したけど、【黒の預言者】の降伏を受け入れるって相当よ?」
「ん、【セブドラ信仰】のカリスマでもある魔人キュベラスが【天凛の月】入り?」
キュベラスは、俺の【天凜の月】に入りたいってことか?
「【天凜の月】入りか、後々だな」
「【セブドラ信仰】は瓦解するかもね」
「ご主人様は、魔界の神々に恩寵や加護を受けていますから、【天凜の月】に魔人たちが入りたがるかもです。その受け皿として、魔人キュベラスの【セブドラ信仰】を利用できればと、ご主人はお考えでは?」
ヴィーネは聡明だ。
頷いた。
「あ、そっか。それもそうよね。魔界セブドラでは領地を持つ、魔君主の一人がシュウヤだし」
「ん、ナロミヴァスの事といい、今後の平和に繋がるから納得した」
「そうだ」
ファーミリアも、
「うふふ、【黒の預言者】の魔人キュベラスの降伏と受け入れ。闇の界隈の重要人物の事実上の一本釣りの登庸ですから、驚きを禁じ得ません、本当に見事です」
「ん」
「そうね」
「はい」
ファーミリアの言葉に、皆も頷いた。
ファーミリアは、
「黒の預言者は【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】のカリスマですから、二つの組織には大打撃ですね、ヴァルマスク家も【天凜の月】に入ったことで、【闇の枢軸会議】も大きく影響しそうです。ただ魔人キュベラスたちの行為がペルネーテに匪賊を生む切っ掛けを作ったことに変わりないので、ファルス殿下は許さないでしょう」
と、発言した。
レザライサも、
「許さないとは思うがアホではないからな。清濁併せ呑む気質はあるはずだ。闇は闇、毒には毒の使い用がある。また、それこそ、闇と光の光魔ルシヴァルが主軸に居るからこそ可能な行為となろう」
と【白鯨の血長耳】の盟主らしく語ると、ファーミリアと魔人キュベラスとハミヤと魔族殲滅機関の一桁と二桁の隊員を見ていく。
レガランターラとビュシエも頷きながら異界の門を見てから、魔人キュベラスたちを見る。
ヴァルアの騎魔獣の隣の席に座っていたヴィーネが、俺の太股に手を置いて、
「昨日から続いた戦争はオセべリア王国の勝利、ペルネーテの脅威は去った。そうですよね、ご主人様?」
「あぁ、そうだな」
「はい、ふふ、魔英雄のご主人様の近くで戦えて非常に光栄です――」
とヴィーネは俺の頬に唇を当ててキスしてくれた。
柔らかい唇を唇で追おうと思ったが、ヴィーネはサッとした身軽な動きでヴァルアの騎魔獣から離れた。続いて、
「ふふ――神聖ルシヴァル大帝国の名がオセべリア王国を上書きする日は近いですね――」
「御使い様の名はオセべリア王国に響きますね!」
ヘルメとグィヴァが俺の唇を奪うようにキスを繰り返してくれてから離れた。
ヴェロニカとユイも、
「鼻の下が伸びた総長の唇を頂き! ふふ――」
「ふふ、ひとまずは――」
ユイに両頬を持たれて無理矢理振り向かせられる。
ユイの潤んだ瞳には熱があった。
そのユイは自らの小さい唇を――俺の唇に軽く当てて押してくる。
と、俺の上唇を挟むと、唇を貪るように吸い付きながら舌を入れてきたから――。
そのユイの舌を吸いながら口内のすべてを貪るように<血魔力>と唾液を交換する。熱意のあるディープキスの流れとなった。<血魔力>を得るたびにユイは心臓が高鳴り体がビクッと数回揺れては、体中の筋肉が弛緩していた。
そのユイの柔らかい唇の感触を唇で得ているだけで幸せだなと――。
「――ちょっと長すぎる!」
と、背後からまだ降りていなかったヴェロニカから髪の毛をワシャワシャと弄られるまくる。
はは――ユイも笑みを浮かべてながら唇を離すと、
「――ふふ、交代♪」
と、ウィンクをしてから唇を突き出し俺の額にキスをしてから離れた。
「あぁ、一応の勝利だからな」
と言いながら振り向くとヴェロニカに「うん、油断はしないけど――」と唇を奪われた。
ヴェロニカとも<血魔力>を互いの口内で交換した。
唇を離すと、やや物足りなさをアピールするように体を一度寄せてから半身の俺を細い手で抱き寄せてから耳元で、
「……アルケーシスに両腕ごとシュウヤが倒されてしまう瞬間は、トラウマになりそう……だから、今度の夜には、そんな光景を忘れるぐらいには……うふふ♪」
と耳に息を吹きかけつつ耳朶を噛まれる。
そのヴェロニカは「ふふ、噛んじゃった~」と言いながら俺から離れた。
「ンン、にゃ~」
と鳴いた黒猫が頭部に頭突き。
片耳を押し当てるように背中を当ててごろんごろんしながら肩の上に転がってきた。
「ンン」と喉声を響かせながら直ぐに立ち上がると耳たぶを肉球パンチされる。
相棒の呼吸と息遣いと日向の匂いが可愛い。
黒猫の頭部を撫でてから、ヴァルアの騎魔獣から降りる。
ヴィーネたちは、飛来してきたレガランターラとサラとレベッカとファーミリアとハグを繰り返して、
「「「一先ずの勝利――」」」
「「「はい――」」」
皆は、またも抱き合う。
レベッカはヴァルアの騎魔獣をチラッと見てから「シュウヤ、勝ったのね!」と抱きついてきた。レベッカの細い体を優しく抱き返しながら、
「――おう、無事でなにより、良かった勝てて」
「うん」
レベッカの温もりとシトラスの香りを楽しんでから離れた。
レベッカは、
「アルケーシスは強かった。動きも速くて<バーヴァイの魔刃>が当たらないし、動きを遅くしたと思ったら大きな鎌で<バーヴァイの魔刃>を弾き返してきたし、炎と雷の球体状の魔法攻撃を繰り出しては、異界蜘蛛なんとか? の爆弾も投げてきたの」
だろうな。かなり強かった。
「蜘蛛の名は異界蜘蛛ブルルヴェイチュかな?」
そう言いながらエヴァたちを見やる。エヴァたちは全員が頷いていた。
聖鎖騎士団団長ハミヤと魔族殲滅機関の隊員も頷いている。
エヴァは、
「ん、その名もあった。異界蜘蛛ナスリラもあった」
「へぇ、魔人アルケーシスは異界蜘蛛使いの面もあるのかな」
そこで魔人キュベラスに視線を向ける。
キュベラスは頷いて、
「はい、先程の<異界の門>から異界の軍事貴族の異界蜘蛛を多数使役していました」
「だからか」
「はい」
魔人キュベラスは少し緊張しているようだ。
六眼四腕の豹獣人っぽいヒョウガと大妖怪ドマダイと頭部がないイヒアルスは沈黙している。
魔族殲滅機関の面々は、魔人キュベラスたちをジッと見ている。
時折、睨んでいる面々も居る。不審顔を露わにしている者も居た。
かまわず、
「レベッカ、魔人アルケーシスが持っていた、倒した証拠の異界蜘蛛ブルルヴェイチュの大鎌だ――」
とレベッカに回収した異界蜘蛛ブルルヴェイチュの大鎌をあげた。
「――ちょ」
レベッカは異界蜘蛛ブルルヴェイチュの大鎌の柄を掴む。
少し慌てながらも石突で地面を突いて皆に異界蜘蛛ブルルヴェイチュの大鎌を見せた。
ツヴァイハンダーの魔剣もあるレベッカだが、ま、預けとこう。
「「「おぉ」」」
「俺たちが何十と攻撃を往なされていた大きな鎌だ!」
「「あぁ!」」
「本当に魔人アルケーシスは討伐されたのだな、素晴らしい、聖者であり聖王様の証明」
「「凄い!」」
魔人アルケーシスが愛用していただろう。異界蜘蛛ブルルヴェイチュの大鎌の反応は当然か。
昨日の夜から今の昼過ぎまでの戦い続けた魔族殲滅機関の隊員たちもがんばった。
魔人or魔族の【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】と戦いを挑んだ回数は相当な数のはず。
すると、魔族殲滅機関の隊員たちが、ざわざわとし始める。
「キュベラスが……降伏……」
「〝黄金聖王印の筒〟の聖王様が魔人キュベラスと縁を結ぶとは……」
先頭の金髪のレングラットが柏手を放つ。
と、魔族殲滅機関の隊員たちは静まった。
「魔人キュベラスたちの降伏。にわかに信じられないのは分かる。だが、見た前、現に魔人キュベラスは大人しい。胸元に手を当て、こちら側に頭を垂れたままだ……」
と、レングラットが語ると、魔族殲滅機関の隊員たちは沈黙した。
「……」
魔人キュベラスは皆に会釈。
そのキュベラスは、衣装変換魔道具を持つのか、頭を垂れながら衣装を変化させる。
ハイネックから胸元が露出したローブに変化。
炎を発しているインナーとドクロの形をした細かな魔力と<血魔力>を放出している下着か。
そして、魔族殲滅機関の隊員は、俺を見てから目を輝かせつつ各神妙な顔つきとなって胸元に指先で十字架を作る。
レングラットは魔人キュベラスの模様替えに気付いたが、構わずハミヤに視線を向ける。
ハミヤはダクラカンの聖剣を掲げて、皆を見据える。
そして、
「シュウヤ様と皆様は魔族殲滅機関を救いに動いたのです。それだけで十分でしょう? 今はシュウヤ様を信じましょう」
聖鎖騎士団団長ハミヤの言葉を聞いた魔族殲滅機関の隊員は胸元に手を当てて、頷いていく。
レングラットは、
「……皆、分かったようだね。聖鎖騎士団団長ハミヤの言葉に嘘はない。昨夜の〝黄金聖王印の筒〟の奇跡を僕たちは体感しているんだ。だから魔人キュベラスにヴァルマスク家を受け入れた聖者様と聖王様の判断を疑うべきではない。これは光神ルロディス様の導きだと信じている」
魔族殲滅機関の一桁、レングラットの語りに、魔族殲滅機関の隊員たちは顔を見合わせて頷き合う。
「「「……あぁ」」」
魔族殲滅機関の隊員たちは頷き合う。
同じ魔族殲滅機関の一桁のチャンヴァルが、
「そのようだな。魔人アルケーシスは闇神リヴォグラフの眷属に近い印象だったが、それは討伐なされたことは我らの魔族殲滅機関の精神と同じ、聖王シュウヤ様は光神ルロディス様に導かれている!」
と発言。
「「「あぁ!」」」
「――闇を払い地上に光を齎す、我らの聖者様――」
「「聖者様!」」」
「「「――聖王様!」」」
と、魔族殲滅機関の二桁の灰銀デュモル・ゲラルド、猛火ラビンラン・ケスファンビン、速滅リヨ・アスシッド、夷剣ヤン・ムエシチオン、刹滅コガ・モザリランザたちが一斉に俺に向け、肩膝で地面を突いて頭を垂れてきた。
「皆、いいから立ってくれ。では、手っ取り早く記憶の共有だ。ファーミリアは残念ながら飲んではだめだからな」
「……はい、いつか飲ませてくださいませ……」
「おう、宵闇の女王レブラ様と吸血神ルグナド様に期待しよう」
「はい」
◇◇◇◇
その後、皆と〝知記憶の王樹の器〟で記憶の共有を行いながら<異界の門>の説明と、その異界の門を利用し、サケルナートが居るか、転移してくる【幻瞑暗黒回廊】の部屋に向かうことなどを説明。