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千五百六十六話 軍事貴族ヴァルアの騎魔獣の使役

 サケルナートが闇神闇神リヴォグラフの大眷属ルキヴェロススか。

 時魔神パルパディと通じているのなら時空属性を持つのは確実。


 時魔神パルパディは魔界の時空を司るのなら、神界セウロスの時空の神クローセイヴィスと敵対関係にあるんだろうか。


 そして、サケルナートが今のところ倒すべき存在筆頭だな。

 魔法学院ロンベルジュ魔法上級顧問の先生がな……一度会っている。

 まさか、人族の皮を被っているとは分からなかった。


 レベッカが昔から嫌っていた相手がサケルナート。


 レベッカはハイエルフ、蒼炎神エアリアルの加護がある。

 だからサケルナートを見た時に第六感のインスピレーションが働いて、サケルナートの中身に嫌悪感を抱いたのかも知れない。


 そして、クリムと同じくディアの兄の行方不明事件にも関わっていそうだ。


 すると、魔人キュベラスはドマダイに乗っている人物たちを見上げて、


「イヒアルス、ヒョウガ、良いわね?」

「――あぁ、お前がそのつもりなら、付き合うぜ」

「承知した」


 イヒアルスとヒョウガが返事をした。

 豹獣人(セバーカ)の六眼四腕がヒョウガか。

 イヒアルスは、口がどこにあるのか分からない。


 そのイヒアルスは跳躍し、大妖怪と似たドマダイの頭部から離れて俺の前に着地をしてから片膝の頭を突けて片方の魔剣腕で地面を刺す。


 頭部はないが頭部を下げた形。

 そのイヒアイスの首は鋭利な刃物でばっさりと斬られたように綺麗な切断面が見えていた。喉に食道か、この状態で生きているのは不思議すぎる。

 あの食道が口で声帯なのか?

 そして、両肩のアーマーが消波ブロックと似ていて、腕は魔剣状態は変わらない。


 すると、頭部が大妖怪のような見た目のドマダイも降下。


 大きい頭部の額を地面に突けた。

 ズンッと地響きが響く、土下座スタイル。


 豹獣人(セバーカ)は、そのドマダイの大きい頭部の上にまだ乗っていたが、イヒアルスと同じく地面に降りて片膝の頭で地面を突いた。


 魔人キュベラスも皆の行動に合わせ、片膝の頭で床を突き頭を垂れた。

 ヴェロニカは、


「サケルナートと闇神リヴォグラフに恨みがあるから、わたしたちに付くのね」


 魔人キュベラスは見上げ、


「はい」

「「「……」」」


 ドマダイとイヒアルスとヒョウガは応えず。

 命を捨てる覚悟に見えたイヒアルスも沈黙、ようするに肯定か。


 ヴェロニカは、


「でも、アルケーシスはシュウヤに倒された、仲間の恨みはあると思うけど、それでもわたしたちに付くの?」


 その言葉に、魔人キュベラスは頷いて、


「憤慨と悲しみはあります。しかし、刹那、刹那の判断力が問われる戦いの結果ですから、そして、先ほども言いましたが、私もシュウヤ様と戦い敗れて捕まったことも大きいです……」

「弱みを握られたまま、どちらにせよ、死ぬしかない状況だった訳ね」

「はい、アルケーシスは闇神リヴォグラフ様を信奉し、私以上に殺戮と魂を奪うことを好む。今回の作戦を強く望んだのも、またアルケーシスなのです。アルケーシスを慕う者は、今の私の判断に異を唱えると思いますが、ここに居る者たちは違うのでご安心を」


 皆が頷いた。


「なるほど、それでいて用済みの如くクリムに脳天ぶち抜かれて、一方のシュウヤは、冷静に対応する侠気に惚れちゃったってことか、理解したわ」


 ヴェロニカの言い方に少し笑ってしまう。


 そのヴェロニカはフランベルジュを消して、ドマダイとイヒアルスとヒョウガと魔人キュベラスを見てから、異界の門(いかいのもん)を見上げ、


「異界の門は、異界の軍事貴族(ぐんじきぞく)召喚(しょうかん)用の魔道具で契約も可能なスペシャルアイテムで正解? 【幻瞑暗黒回廊げんめいあんこくかいろう】にも通じていると言ってたけど」


 と聞くと、魔人キュベラスは、


「はい、そうです。異界の軍事貴族の召喚用の器具であり、魔道具で、正解です。<異界の門>のスキルも使用しての発動には、私の魔力などが多大に必要です。また、見た目の門の通り、【幻瞑暗黒回廊】と、何処かの世界にも通じている。何処かの異世界には【幻瞑暗黒回廊】のように移動はできませんが、そこの異世界からは異なるようです。そこから異界の軍事貴族が現れる。また、迷宮都市ペルネーテと西の戦争などで散った広範囲の魂を大量に(かて)にしたので……もうじき強い異界の軍事貴族が現れます」

「「「おぉ」」」

「また、ペルネーテは黒き環(ザララープ)ですから、邪界ヘルローネにも繋がっているので、ペルネーテで死んだ者の魂も当然吸われる場合がある。ですから、<異界の門>を使用した際に吸収した魂や魔力を察知した邪界側の勢力が、新しく生まれた異界の軍事貴族を奪いにくるか、殺しにくるかしれません……」


 頷いた。十天邪像を巡る争いは日常茶飯事。


「十の邪神の眷族たちも、この都市には居るからな、了解した」

「うん、最近は聖鎖騎士団と魔族殲滅機関(ディスオルテ)たちが居たから、都市の外に出ていることが多いわよ」


 ヴェロニカの言葉に皆が頷く。

 城壁の外にも、小さい村や街は無数にあるから人口は、へたしたら数百万人は超えているはず。


 キュベラスは、

 

「そして、この異界の門の運用ですが、異界の軍事貴族を産まずに、【幻瞑暗黒回廊】に入り、移動だけの運用も可能です。テレポーターの役割ですね。また【幻瞑暗黒回廊】内の私たちが基地として利用している〝異界の狭間預言の叡智部屋〟の前にも、瞬時に移動が可能です。そして、サケルナートが管理している〝異界の館〟にも行けます。その館のどこかに、私の異界の軍事貴族たちが人形状態で閉じ込められているはずです」

「なるほど……」


 すると、ヴィーネが、


「……キュベラス、ご主人様たちの交渉が失敗したら、新しく現れる異界の軍事貴族を切り札にしようとした?」


 その問いに、キュベラスは俺を見てから、


「……切り札にはなるとは思えませんわ。シュウヤ様の槍武術は底が見えない。また、その槍武術を根幹とした<血魔力>を活かした<導魔術>系統の、あの無数の魔槍と聖槍に神槍を宙に浮かせながらの連続攻撃は凄まじい。槍は自動的に攻撃をしているようでしたが、もう一人のシュウヤ様が居るようでしたからね……そこに本人が二槍武術を活かして突っ込んで来ることも可能なんですから……その時の気分といったら、もう、相対したら分かると思いますが、まさに絶望でしたよ、はい……体が幾つあってもたりません。更に水属性の魔法も王級、皇級、神級を無詠唱で繰り出せますし、魔人武王ガンジスの名は聞いたことありますが、その名を思い出しました。そして、異界蜘蛛ブルルヴェイチュをあっさりと屠った神獣様も居ますからね」

「……それは、そうですね」

「にゃ~」

 黒虎(ロロ)は魔人キュベラスの前に移動して、片足を上げる。

 肉球マークを見せていた。

「うふふ、神獣様の肉球ちゃんにも、降伏いたします」

「はは」

「「ふふ」」


 皆も相棒とキュベラスのやりとりに笑った。


 ヴィーネは翡翠の蛇弓(バジュラ)を下ろしているが、まだ警戒していると分かる。

 キュベラスに、


「新しい異界の軍事貴族だが、キュベラスが契約主なのか?」

「違います。その異界の軍事貴族が己の判断で選ぶことが常です。また最初に触って、魔力を込めた存在を異界の軍事貴族が気に入れば、契約主に成る場合があります。ですから、今回、私の降伏の貢ぎ物としてシュウヤ様に、新しく生まれ出る異界の軍事貴族を差し上げます!」

「「「おぉ」」」

「マジか、降伏貢ぎ物か……」

「それは……」

「にゃおおお~」


 黒虎(ロロ)が嬉しそうに鳴いた。

 銀灰虎(メト)銀白狼(シルバ)子鹿(ハイレッツ)の仲間が増えることが嬉しいんだな。

 黒虎(ロロ)のつぶらな瞳を見てだんだんと実感し、ワクワクしてきた、どんな姿だろう。


  しかし、西の戦場にペルネーテの魂や魔力を犠牲にしての誕生とはな。

 が、異界の軍事貴族に罪はない。


「「「……」」」


 ドマダイとイヒアルスとヒョウガは黙っている。最初から了承済みか。

 キュベラスは、


「ふふ、はい、マジです」

「なら、出てきたらもらっとこう。そして、異界の軍事貴族たちの解放も手伝おうか」

「はい! ありがとうございます」

「キュベラス様、槍使いが仲間になったのなら、サケルナートを直に排除することも可能!」


 と、嬉しそうに喋ったのはドマダイ。

 大柄の頭部の眼球と鼻と口は、大仏的でもあるし、岩石坊主的で、面白すぎる。

 すると、


「くぅぅ~ここにきてこれかよ! お前はだからなんだかんだで付いていく者が多いんだよな~」


 と、頭が無いイヒアルスも嬉しそうに語る。首の切断面の食道のような部分が、イントネーションに合わせて拡がり窄んでいた。

 

 あそこが口のようだ。

 面白い。

 キュベラスに、


「キュベラスの異界の軍事貴族が閉じ込められている場所に、サケルナートが居るなら討伐を兼ねて戦おう。その際、裏切り確定のキュベラスは真っ先に狙われるはず、心臓部の弱みは本当に自力で解けるのか?」

「はい、大丈夫です!」

「「ありがとうございます」」

「礼を言う槍使い殿……キュベラス様が従うのなら、我も従おう、我の名はヒョウガ……魔界セブドラ、蒼の魔森セブラの地が出身だ、魔族の名は魔豹セブラ族、豹魔族セブラと呼ばれることが多い」


 と、豹獣人(セバーカ)の六眼四腕のヒョウガが教えてくれた。


「了解した、ヒョウガにイヒアルスとドマダイもよろしく頼む」

「「「ハッ」」」

「閣下が受け入れるのなら、受け入れましょう。ですが、異界の軍事貴族が本当に生まれるのか、それを待ってからです」

「そうですね」

「はい」

「そうね、でも流れ的に信じるかな」


 ヴェロニカが信じたようだ。

 ヴェロニカは、魔人ザープたちを見やる。

 黙って見ているが魔人キュベラスの降伏はまだ信じていないかもだ。

 が、深い付き合いのようだから信じたかもだな。

 なんとなく元仲間の視線があるように思える。


 背後の義賊ホクトと盗聖サウラルアトも沈黙したまま此方と異界の門を見ては、周囲を見ていた。


 俺たちの南では、まだエヴァたちの戦闘は続いているようだ。


 サラとベリーズとファーミリアとレガランターラとレザライサとエヴァとビュシエとハミヤに魔族殲滅機関の隊員たちが居るから戦いは直ぐに終わりそうと思うが……。


 【天衣の御劔】と十二海賊団【鵞峰ヴァクプドー】と【ラゼルフェン革命派】の中にも強者が居たかな。


 するとヴィーネが、


「……シキたちを襲撃した【御九星集団】側に近い【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】には、その最高幹部の一人と目される炎極ベルハラディが居るはずですが、今はどこにいるのですか?」


 ヴィーネが聞いていた。

 魔人キュベラスは、


「キーラが手配した炎極ベルハラディとは別行動です。彼も強者で独自の炎に関する哲学を持ちます。シキを仕留め損なったのはショックだったのかも知れません。今、どこにいるのか分かりませんわ、そして、私の<轟印・魔造家>を発動した場合、ペルネーテのセーフハウスの<轟印・魔造家>の館が建ち、そこに【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】の最高幹部たちが、生きていたら集まりますので、その中に炎極ベルハラディが居たら、戦うこともできますわ」

「……そんなことが可能なのですね」

「はい、ただし、現状で使用しても負け戦ですから、【セブドラ信仰】と【闇の教団ハデス】も集まるか不明です」

「了解した。後ほど使ってもらうかもだ」

「はい」

 

 すると、


「にゃ」


 と、ドマダイの頷の動きに黒虎(ロロ)が少し反応していた。

 さて、


「キュベラス、〝異界の館〟に移動したら、サケルナートは必ず転移してくるか?」

「はい、【幻瞑暗黒回廊】の中では、今争いが起きているので、少し遅れるかもですが、必ず、私の反応を得て現れるはず」

「了解した」


 すると、黙って聞いていたヒョウガが、


「……はい、【幻瞑暗黒回廊】はどこも争いばかりですからな。そして、我らが〝異界の狭間預言の叡智部屋〟の出入り口に足を踏み入れたら、サケルナートは必ず転移してくるはず……槍使いのシュウヤ様は、それでも我らのためにサケルナートの排除に動いてくれるのですな?」

「あぁ、俺たちも色々と用がある」

 

 ディアに知らせたいが、兄のことを考えると、事後連絡のほうが良いかも知れない。すると、ユイが、


「……もう一度確認するけど、先ほどキュベラスが述べた<擬心波>と<覇轟ノ闇朔>で体に仕込まれている<魔札黄泉送り>、<魂魄使役術>、<魔札ノ魔神契約>、<魔札ノ偽造本契約>などのスキルによるサケルナートの監視を免れているのよね?」

「はい」

「我らにはありません」

「はい」

「ふむ」


 <魔札黄泉送り>、<魂魄使役術>、<魔札ノ魔神契約>、<魔札ノ偽造本契約>はキュベラスの心臓部だけに用いられているのか。

 それだけ、この異形の者たち【セブドラ信仰】のメンバーたちは、キュベラスのことを慕っていると分かる。

 同時に【黒の預言者】のキュベラスが俺たち側に付いたことで【セブドラ信仰】の仲間内で意見が割れて分裂するかもしれないな。


 すると、異界の門の中央の入り口には宇宙的な膜が張られているが、そこが光を帯びた。その中からニュルッと現れたのは、


「ギュオォォォォォ――」

 

 赤黒い角が無数に生えている。

 眼球は全部で六つあり、頭の左右に三つずつ配されている。頬骨の上の眼球は金色と黄色に輝いている。鼻唇挙筋、頬筋、咬筋が分厚く、下顎骨が強靭そうでティラノサウルスを思わせる。四つの前足は拳のようで、二つの太い後ろ脚には滑らかな鋼のような装甲の鱗が段々になっている。翼はなく、長い尻尾には四方に銀と金の刃のようなトゲが生えている。馬よりも大きな体格で、相当な迫力だ。その恐竜のようなドラゴンは、柔らかな声で「ギュオォ?」と鳴き、俺に頭部を寄せてきた。


「シュウヤ様、その異界の軍事貴族に触って魔力を送ってください」

「了解した」


 と、ドラゴンの鼻の真上に左手を置いて魔力を送った刹那――。

 

 ――<軍事貴族使役>が作用した。


 恐竜のようなドラゴンは小さなスタチューに変化を遂げる。

 アクセサリー用のチェーンまで付いているし、袋綴じまで生まれていた。

 和風の冊子か、なんだろう。


 ※ピコーン※<ヴァルアの騎魔獣>※恒久スキル獲得※


続きは、明日。 HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。

コミックス1巻~3巻発売中。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] キュベラスはいつからサケルナートやリヴォグリフに脅されていたのでしょうか?
[良い点] キュベラスはくだったか。まぁ、恨み有るなら今が一番のチャンスでは有るだろうからなぁ。 >同時に【黒の預言者】のキュベラスが俺たち側に付いたことで【セブドラ信仰】の仲間内で意見が割れて分裂…
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