千五百四十話 皆と大騎士スレーと闇炎の串刺し公アルグロモアたちとの戦い
武術街の門が左の先に見える。
その武術街の出入り口の門と俺たちが居る大通り側にかけて武術街互助会のチームとオセべリア王国の衛兵隊が数多く居た。
その真上にアドゥムブラリが浮遊している。
背後には半透明な魔法防御の膜が展開され、孔はどこにも存在しない。強度が保たれたままだと分かる。だから、武術街は特に何事もないと分かるが、一方、こちら側の大通りには死体だらけだった。
魔人の死体とオセべリア王国の衛兵隊に白の九大騎士の兵士たちと冒険者に商人たちの死体も転がっていた。
馬車も幾つか転倒している。
『残酷ですが、古都市ムサカの戦いよりはマシですね』
『あぁ、あそこの戦いは焦土戦術が行われた直後の都市って印象だからな』
『はい』
「ンン」
ヘルメと念話をしていると微かな喉声を発した黒豹が、足を止めた。
黒豹は武術街の通りの門の反対側の東の建物を見ている。鼻をクンクンと動かし、
「カカカッ」
クラッキング音を響かせながら警戒を強めていた。
<闇透纏視>でその方向を凝視。
妖しい魔素は分からないが……右手に義遊暗行剣槍を召喚。
ミスティは、
「ロロちゃんが警戒している!」
と、ゼクスの肩から降りてはゼクスを急浮上させる。
ファーミリアはサンスクリットの血霊剣を召喚し、
「シキたちを追跡してきた炎極ベルハラディかも知れませんわね……<血円察>と<血探知>でも、分からないですわ。潜んでいる存在は優秀な<隠身>に<魔絶>などに、次元に干渉するスキル、魔法、アイテムを持っているのかも知れないです」
と語り、少し浮遊する。
シキは腕の周りに細かな魔法球を幾つか発生させる。
と「<ヴィゲルの魔変結界>」と呟きながら指パッチン。
無数の魔法球は瞬時に立体的な防御層となって、俺たちの周囲に展開された。
「……シュウヤさんたちと合流を果たした時にも、ロロ様はクラッキング音を響かせていました」
【闇の教団ハデス】のバフラ・マフディと戦った時だな。
「あ、シュウヤ様、シキたちを追撃していた炎極ベルハラディを倒しただけでも報酬を上乗せしますので」
「前に魔人アルケーシスと闇炎の串刺し公アルグロモアと魔公ディフェルと、【御九星集団】のキーラと盾使いコンマレと他の最高幹部と兵士を倒せば、報酬をくれると言ってたアレか」
と聞いた。
「――はい、手持ちのアイテムと血法院、【大墳墓の血法院】の保管庫の中の品。血魔術保管層や、血銀行、血植植物園、そこの中には、私たちが集めた様々なアイテムがありますの。そのアイテムの幾つかを進呈したいと考えております。うふふ」
地下オークションの代わりって意味でもある?
氣を効かせてくれるのはありがたい。
「それは期待ができる」
「ファーミリア……【大墳墓の血法院】に他種族のシュウヤ様を招くつもりなの?」
「当然です、シュウヤ様の夜の瞳は素敵ですし、今後のための縁は大切にしたい」
「……」
シキは俺をチラッと見ては、
「それはたしかに……」
と頷いていた。
シキとも友好は築けたら嬉しいな。
アドゥムブラリの幼なじみの件がスムーズに進む。
周囲を見ると、そのアドゥムブラリが寄ってきた。
「――主、宗教街での戦いは順調だったか。お? 神獣に仮面を? あ、もしかして聖魔術師の仮面を入手した関係で?」
「その通り」
黒豹を見ると、黒豹はアドゥムブラリが寄っても挨拶をしていない。
「ンン、カカカッ」
黒豹がまた警戒音を響かせる。
「東に怪しい気配を察知しているようだな、追い掛けていないからあくまでも感覚だけか」
アドゥムブラリの言葉に頷いた。
「あぁ、相棒的には獲物が掴まえたいのに掴まえられない気持ちをカカカッと現している。だから、怪しい存在が居ることは居るってことだろう」
「神獣の嗅覚が辿れない相手か……」
「うん、でも、ロロちゃんは神殿前の戦いでも大活躍だったのよ」
ミスティの言葉に、アドゥムブラリは黒豹を見て、
「あぁ、神獣は強いからな!」
「ンンンっ」
と喉音を響かせつつ長い尻尾で地面を叩いて返事をしている。
よほどに、妖しい存在が氣になるか。
クリムがここに居る?
ルーク国王がここに居たら驚愕する自信がある。
シキは、
「……妖しい存在が炎極ベルハラディならば、不意打ちの火炎はかなり強力です」
「だから、<ヴィゲルの魔変結界>か?」
「はい。そして、シュウヤさんが居るので、キーラの【御九星集団】の盾使いコンマレは出てこないと思いますが、もし出てきて戦いとなったら、防御が硬いので気を付けて。更に、【闇の教団ハデス】の闇炎の串刺し公アルグロモアと魔公ディフェルも強い……」
「闇炎の串刺し公アルグロモアか、魔槍使いと分かるが、魔公ディフェルとは、武器はなんだろう」
「魔剣師です」
頷いたがが、シキの表情は厳しい。
そのシキは、
「眷属を一人失いましたから、借りは返したいところです」
と発言をし、魔法球を周囲に生み出して浮遊。
しかし、キーラの【御九星集団】と【闇の教団ハデス】などの組織は宵闇の女王レブラ様に喧嘩を売ったか。駆け引きの一端の襲撃だと思うが……。
周囲を見渡し、血文字で、
『ユイ、今武術街の手前でアドゥムブラリと合流した。だが相棒が足を止めてクラッキング音を響かせてきたんだ。通りの東に怪しいのが居るとして、魔人キュベラスの位置はどうなってる?』
『ロロちゃんの警戒モードね。たぶん、わたしたちを追跡している魔人連中の強者たちに反応しているんだと思う。魔人キュベラスたちの反応はペルネーテの西門付近に移動している。魔族殲滅機関のレングラットとチャンヴァルとケキミラたちも近くよ。まだ倒されていない』
では、近くに居るのは、魔人キュベラスではないのか。
『了解した。魔人キュベラスたちは陽動部隊。武術街と家は大丈夫なんだな』
と血文字をユイに送る。
ユイの血文字が直ぐに、
『ここは平和、聖鎖騎士団の一部は魔造家のテントを複数設置し休んでいる。ヴァルマスク家たちのアルナードとビュシエとヴェロニカとメルとエラリエースとハミヤで色々と会話していた。そして、厩舎に居た法魔ルピナスとヒューイに、ファルス殿下が興味を持ったみたい。あ、エヴァとレベッカとキサラとルマルディたちも無事に此方に向かっているからね、紅茶売りのベティさんたちも一緒』
『分かった』
腰にぶら下がるフィナプルスの夜会を触り、魔力を送った『来い、フィナプルス!』と呼ぶ。
腰からフィナプルスが飛び出て、周囲を見回してから、着地したフィナプルスに、
「フィナプルス、ここは武術街で、黒豹が近くで何かを察知しているようだから、少し調べてみようかと思ってな」
「はい」
大きな<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を召喚。
続けて魔軍夜行ノ槍業を触り、
『偵察が得意な師匠は居ますか?』
『塔魂魔槍流のセイオクスと妙神槍流のソーと雷炎槍流シュリだろうな』
『では、シュリ師匠、出てきてくれますか』
『勿論~』
魔軍夜行ノ槍業と<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>が魔線で繋がるとその魔線が環状に変化。
その異次元の空間に繋がっていそうな環状のゲートから出現したのは頭部と両腕を有した半透明のシュリ師匠。
そのシュリ師匠に戦闘型デバイスに仕舞ったままの雷炎槍エフィルマゾルを取り出して手渡した。
「皆、家にミライが来るまで、相棒に周囲の探索を任せる形となると思うが、少し付き合ってもらうぞ」
「了解♪ お弟子ちゃんの眷属ちゃんに、ファーミリアとシキもよろしくね~師匠の一人雷炎槍のシュリよ、魔界では、魔界八槍卿、八怪侠に、魔城ルグファントの守り手などと呼ばれていたから、よろしく♪」
『『復讐の怨嗟に燃え滾る、異形の魔城の守り手!』』
『『『われら、八大、八強、八怪、魔界八槍卿の魔槍使い』』』
『『われら、八鬼、八魔、八雄、魔界八槍卿の魔槍使い』』
われら、魔城ルグファントの八怪卿の魔槍使い。
われら、かつての異形の魔城の守り手!
われら、唯一無二の魔界八怪卿なり!
シュリ師匠に合わせて魔軍夜行ノ槍業から七人の師匠たちの叫びが俺に響くが、皆には聞こえていないはず。
「にゃお~」
「了解――」
「おう」
ファーミリアが口に手を当てて驚いている。
そのファーミリアが貴族女性が頭を下げるようにドレス状のスカートに変化させて、スカートの端を両手で掴みながら会釈してから、
「……はい、シュリ師匠様、初めまして、よろしくですわ」
シキも額とチョークと四蜘蛛王審眼など使い色々と観察しているようだが、片目の白眼が充血して困惑してから、深呼吸をしてから、
「……分かりましたわ、シュリ師匠様、宜しくお願いします」
と発言し頭を下げてはファーミリアと目を合わせて、両手を左右に広げるジェスチャーを行う。
ファーミリアは笑顔満面となって口を片手で隠す仕種を取って微笑む。
手には魔力が内包されたオペラグローブと似たアイテムを装備していた。
「では、行こう。相棒、頼むぞ」
「ンン、にゃおお~」
神獣猫仮面を被る黒豹は先を駆けた。
「「行きましょう」」
「「おう」」
大通りの右側の建物と路地を<闇透纏視>で確認しつつ相棒の長い尻尾を追い掛ける。
その黒豹は「ンン――」と喉音を響かせながら跳躍し、屋根の上に軽やかに着地。
相棒の感覚に任せるか――。
<武行氣>で飛翔しつつ屋根の上に着地――。
<闘気玄装>を発動。
<ルシヴァル紋章樹ノ纏>を発動。
<水神の呼び声>を発動。
<滔天仙正理大綱>を発動。
<滔天神働術>を発動。
<黒呪強瞑>を発動。
水飛沫と体から傷を発生させて魔刃のような魔力を無数に放ちながら屋根の上を蹴って前方に飛翔していく。
黒豹は時折動きを止めて頭部を左右に動かしていた。
俺たちを見張っていた獲物が見えている?
フィナプルスは左上空を先に進む――。
黒豹は屋根の上を蹴って、斜め前方に華麗に跳ぶ。
結構離れている屋根の上だが、地続きで、都市の円に沿うように建物も建築されていることが多いから、実際の距離は短いかな。
――俺たちも屋根の上を低空飛行で進んだ。
シュリ師匠は俺の斜め右前方を飛翔する。
アドゥムブラリは俺の左斜め上を飛翔していく。
ミスティは横を飛翔――。
魔導人形のゼクスは、そのミスティの真上を飛翔していた。
光剣が陽に反射してかなり目映い。
ファーミリアとシキも屋根に時折足を付けて跳躍するように飛翔を繰り返す。
どうやら俺たちを見張っていた存在も移動しているようだ。
すると黒豹が足を止めた。
突如として仮面が光る――。
その仮面から猫の目の形をした強い明かりが真っ直ぐ照射された場所の空間が歪む。
と、そこに居た大騎士風の格好をした二人と闇炎を放つ魔槍を持つ魔族と魔剣師の魔族が現れた。
「「「え?」」」
「マジか」
「「おぉ!」」
『おぉ~、ロロ様の神獣猫仮面により探知の神眼を入手したのでしょうか!』
『きっとそうですよ!』
「「「な!?」」」
「――チッ」
皆が驚く。
「闇炎の串刺し公アルグロモアと、魔剣師が魔公ディフェルです! 逃がさない――」
シキが無数の魔法球を四人に飛ばす。
魔法球は一部がクリスタル状の刃に変化を遂げた。
四人は後退し、得物を振るう。
シキの魔法球のクリスタル状の刃を切断していく――。
その直後、四人の背後に飛翔していたシキの魔法球が空間に浸食するように消えるや否や、その空間が漆黒の異空間に変化に遂げた。
グゥゥゥンと重低音が響き渡る。
<闇透纏視>で漆黒の異空間を見ると、あの中に別種の巨大生物が蠢いていると分かった。
建物の屋根も漆黒の異空間に削られるように消えている。
「ふふ、久しぶりにソレを見ましたわ」
「ふっ」
ファーミリアは<龕喰篭手>と<血液魔防装具>を装着している。
そのファーミリアはシキの漆黒の異空間を見たことがあるようだ。
異空間の表面は宇宙的な幻影が発生していた。
シキの結界魔法かスキルで四人の逃走経路を塞いだらしい。
シキは先ほどの<ヴィゲルの魔変結界>といい、様々に魔法かスキルを持つ。
ファーミリアに負けていないな。
そして、二人の大騎士と目される存在は、背後を断たれたように見えるが微動だにしない。手首の腕輪に魔力を込めた二人は半身のまま此方を見た。
魔力操作も淀みがない、確実に強い。
白い布で口と喉が覆われている。視線は鋭い。
男が蒼色の瞳で女が黒色の瞳か。白い布で鼻から下は覆われている。
大騎士のエンブレムマークが刻まれている白い甲冑を装着している。
第三王子クリム側だとしたら、補佐の大騎士序列:第三位のスレーだろうか。
右手の魔槍は光属性が多いから聖槍か神槍か。
剣師のほうも神剣か聖剣かもしれないな。
相棒が少し前に出ながら、
「ガルルゥ」
と唸り声を発した。
大騎士たちに義遊暗行剣槍の切っ先を向けて、
「大騎士のスレーか? 名を聞こうか、俺の名はシュウヤ。俺たちを見張っていたか?」
「……さあな」
「……」
隠密任務だ、答えるつもりはないか。
女の大騎士っぽい存在が気になる。
すると、魔公ディフェルと目さされる四眼四腕の魔族が、
「我らの退路を断ったつもりか!」
と叫ぶと魔刃を魔剣から飛ばしてきた。
一斉に皆が回避行動――。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を二人の大騎士に直進させながら正面から前進――。
魔公ディフェルの魔刃を吸収して魔力を得た。
<メファーラの武闘血>を意識し発動。
<水の神使>を意識し、発動させる。
<水月血闘法>を発動。
<経脈自在>を発動。
<滔天魔経>を発動。
<魔闘術の仙極>を発動。
<霊魔・開目>を発動。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>は二人の大騎士とは衝突せず、漆黒の空間と激突し跳ね返る。
と――。
転移したのか、左右から大騎士の男女が槍と剣を突き出してきた。
<夜行ノ槍業・召喚・八咫角>を消す。
男の右手が握る槍から龍の幻影が現れている。
女の右手が握る剣からは炎が発生し、炎が赫いていた。
〝義遊剣槍師レドマルコの仮面〟を装着。
体に義遊暗行甲冑が瞬くに装着される。
<義遊ノ移身>を発動させて慌てず退く。
蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣を召喚すると、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣が浮きながらスレーと思われる大騎士に直進した。
そこに右斜めからアドゥムブラリが、<魔弓魔霊・レポンヌクス>から無数の<魔矢魔霊・レームル>の魔矢を放ち、二人の大騎士に向かう。
スレーは斜め後方に退きながら槍の柄を振るってアドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>の魔矢を防いでいく。一本も当たらない槍の技術は高い。
<義遊暗行・想念>で蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣を操作した。
左に居る女の大騎士は、退いた俺を追ってきたが、斜め左から、その女の大騎士にフィナプルスが近付いていた。
――フィナプルスは背の両翼を畳ませると加速、体がブレる。
「――げぇ」
と黄金のレイピアの<奇怪・宵魔斬剣>が女の大騎士の炎に赫く剣を弾きつつ脇に突き刺さった。
そこに加速した黒豹が、
「にゃご――」
女の大騎士の胴体を相棒が喰らう。
続けて、前足と後ろ脚の連続とした爪掻きのような斬り払い攻撃を浴びせると、後ろ脚の蹴りを女の大騎士の体に喰らわせた。
女の大騎士は全身がズタズタに裂かれながら上空に錐もみ状に回転していく。が、その体は一瞬で修復された。
左手に槍を召喚し、「くそが、私の体は――」と叫びながら相棒に直進していく。
黒豹は余裕に後退。
黒豹が居た屋根に、女の大騎士が繰り出した槍と剣の攻撃が連続的にヒットし、屋根がその度に吹き飛んでいく。
衝撃波で、その建物が沈んだように崩れた。
女の大騎士は退いた黒豹を睨み付けながら直進――。
対する黒豹は体から無数の触手骨剣を伸ばし、女の大騎士の迎撃を行った。無数の触手から骨剣が飛び出る。女の大騎士は槍と剣を構え直しながら触手骨剣の攻撃を槍と剣で弾き続けながら直進したが、ガトリンガンから放たれるような無数の触手から伸びる骨剣の連続攻撃に押され動きを止めて防御を意識した。
そんな女の大騎士の側面をフィナプルスの黄金のレイピアが突く。
<奇怪・異人突き>の黄金のレイピアが女の大騎士の兜ごと頭部を貫通していた。
女の大騎士は悲鳴も上げられず吹き飛んでいた。
ファーミリアとシュリ師匠は左右から闇炎の串刺し公アルグロモアを押し込む。
雷炎槍エフィルマゾルが闇炎を穂先から発している魔槍を左に弾く――。
そこにサンスクリットの血霊剣の薙ぎ払いが串刺し公アルグロモアの体に決まる。
シュリ師匠は雷炎槍エフィルマゾルを斜め下に振るい、石突で串刺し公アルグロモアの足を狙うが、闇炎の魔槍の柄で弾かれた。サンスクリットの血霊剣の突きも闇炎の魔槍が弾くと、闇炎がアルグロモアの両腕から噴出し、二人に襲い掛かっていた。
二人は側転してから宙空に飛翔し闇炎を避けていた。
刹那、シュリ師匠の体がブレると闇炎の串刺し公アルグロモアとの間合いを潰すと、雷炎槍エフィルマゾルが振り下ろしから連続とした<刺突>系統を繰り出した。
闇炎の串刺し公アルグロモアはシキが繰り出した漆黒の異空間に押される。
雷炎槍流と名が付くようにシュリ師匠の幻影と体から雷炎のような魔力が噴き上がっていた。ファーミリアも闇炎の串刺し公アルグロモアの胴にサンスクリットの血霊剣の突きが決まる。
シキとミスティとゼクスは魔公ディフェルを戦う。
シキの魔法球のクリスタル刃と溯源刃竜のシグマドラの刃の遠距離攻撃と、ミスティの暗器械から放たれたミニ鋼鉄矢に気を取られたのか、魔公ディフィルの片足がゼクスの光剣に斬られていた。
男の大騎士のスレーは槍を振るいながら蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の攻撃と<魔矢魔霊・レームル>の魔矢の攻撃を弾きながら横移動を繰り返していた。
そのスレーに<鎖>を左に《連氷蛇矢》を無数に連続的に放つ。
<光条の鎖槍>も二発――。
周囲に建物があるが構わず《氷竜列》――。
スレーは蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の斬撃を体に喰らう。
速度が遅い。
腕先から出た《氷竜列》の氷の龍頭は螺旋回転しながら直進し、複数の氷竜が連なった《氷竜列》となって拡大した直後スレーに直撃。
蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣も一瞬氷漬けになった。
スレーと思われる男も吹き飛びながら凍り付く。
が、そのスレーの白い甲冑が赫くと右に跳躍し――。
体から<血魔力>を放出させながら、全身から戦神と目される幻影を発した。
加護持ちか――。
スレーは、
「お前が、【天凛の月】の!」
と言いながら俺に向け直角に加速してきた。
氷漬けが溶けた蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の斬撃とアドゥムブラリの<魔矢魔霊・レームル>の無数の魔矢を避けつつ俺との間合いを詰めてきた。
動きは見事。
「<龍追風穿>――」
<義遊ノ移身>を活かすように風槍流『異踏』を実行し、横に移動しスレーの槍の突き<龍追風穿>を避けた。
衝撃波もあるようだが――。
<義遊ノ移身>効果の分身が消えるだけで、本体の俺には当たらない。
蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣を<義遊暗行・想念>で意識しつつ、スレーの側面から――。
右手の義遊暗行剣槍で――。
左足の踏み込みから<暁闇ノ幻遊槍>を実行し、<血刃翔刹穿>を繰り出した。
血刃を無数に纏う義遊暗行剣槍の大笹穂槍かグラディウスソードのような穂先がスレーの腹に向かう。
義遊暗行剣槍と似た無数の槍が周囲に出現。
スレーは槍の柄で義遊暗行剣槍の<血刃翔刹穿>の一撃を防ぐ。
が、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の<飛剣・柊返し>は手足に喰らう。
「ぐぇ――」
鮮血が迸る中、防いだに見えた義遊暗行剣槍の穂先から無数の血刃が迸った。
無数の血刃はスレーの白い甲冑を貫きまくる。
スレーは吹き飛びながらも漆黒の異空間ではない家の壁と衝突し、壁を何個も破壊してから、槍を横の大きい母家に突き刺し衝撃を殺していた。
体は再生していると分かる。
『ヘルメとグィヴァ、左の闇炎の串刺し公アルグロモアの戦いに参加してくれ』
『はい――』
『分かりました――』
両目からヘルメとグィヴァを飛び出ていく。
直ぐにスレーに近付いた。
そのスレーは前傾姿勢と成った。
合わせず、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣を向かわせる。
<血道第三・開門>――
<血液加速>――。
加速状態から右手に持った義遊暗行剣槍を<握吸>で握り<血魔力>を膨大に込めて<投擲>――。
直進した義遊暗行剣槍を追うように前進しながら右手に魔槍杖バルドークを召喚。
<握吸>と<勁力槍>を発動。
スレーは反応し、槍の柄で義遊暗行剣槍の<投擲>を防ぐが脇腹を貫通した。
「――げぇぁ」
悲鳴などは聞かないと言うように――。
蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣で<黒呪仙剣突>を繰り出す。
<仙魔・龍水移>――。
スレーは槍の柄で、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の<黒呪仙剣突>を防ぐ。
「なに――」
スレーの右に出たところで魔槍杖バルドークを振るう<血龍仙閃>――。
スレーは反応し槍を左に傾け紅斧刃を弾く。
が、蒼聖の魔剣タナトスと義遊暗行師ミルヴァの短剣の<飛剣・柊返し>は防げない。斬撃を喰らった。
スレーは「げぇぁ」と体が仰け反る。
左手に神槍ガンジスを召喚。
左手で<血刃翔刹穿>――。
スレーはなんとか槍の柄で神槍ガンジスの<血刃翔刹穿>を防ぐが、方天画戟と似た穂先から迸る無数の血刃を体に喰らいまくる。スレーの体の傷は再生力が高い、傷は瞬時に回復するのを見ながら、至近距離の右手から魔槍杖バルドークで<紅蓮嵐穿>――。
俺の<血魔力>を吸い上げる秘奥が宿る魔槍杖バルドークは次元速度で直進し――魑魅魍魎の魔力の嵐がスレーを喰らいながらスレーの槍を弾き、スレーの体を穿ち抜く。
手応えはあったと振り返った。
スレーと目される下半身が残る。再生しようとしているが、させない。横に、異次元の環が出現するが、構わず――。
前傾姿勢でスレーと目される下半身に近付いて<悪夢・烈雷抜穿>を繰り出した。
魔槍杖バルドークが、そのスレーと目される下半身と異次元の環をぶち抜きながら、通り過ぎた。
スレーの下半身と異次元の環をぶち抜いたその魔槍杖バルドークを左手で掴む。
――良し、男の大騎士のスレーは倒したか?
女の大騎士はまだ生きていたが突如、異次元の環のようなモノが、女の大騎士の背後に出現すると、女の大騎士は、異次元の環のようなモノに引っ張られるように吸い込まれて消えた。スレーの体の傍にもいきなり環のような物が出現したから、逃げるための保険用のゲートか、何かか。
闇炎の串刺し公アルグロモアと魔公ディフェルもこっぱ微塵に破裂するところが見えた。
凄まじい<血魔力>の雨のような血剣が周囲に舞っている。
ファーミリアが何かしたようだな。
続きは明日。
HJノベルス様から書籍「槍使いと、黒猫。1~20」発売中。
コミックス1巻~3巻発売中。




